3月27日(火)

 午前3時。くそっ。こんなに早く目が覚めるなよっ!
 遠足の朝は、早く目が覚めるタイプだ。

 目が覚めた勢いで、『TOWN(仮)』の仕様書作り。

 午前10時。私、嫁、娘、孫姉&孫妹は喫茶店「らぴす」サンで、モ
ーニング・セットにカフェオレ。
「ジッジー、いっちょに食べようね!」
 単語しかしゃべれなかった孫姉が、どんどん会話になっていく。

 午後0時。私、嫁、娘、孫姉&孫妹は、東京駅へ。  きょうの東京は、肌寒い。

 今回の旅は、仕事モード、ゼロに近いので、案の定、天気予報は西日 本から雨である。  たぶん四国高松に着くころにちょうど雨が降るのだろう…。  心配性のA型家族は、東京駅に発車30分前に着いてしまう。  仕方なく、駅構内の「ベッカーズ」で、ロイヤルミルクティーを飲む。 「熱い!」  ロイヤルミルクティーの紙コップが熱い。  私が「熱い!」といったのを見て、2歳半の孫姉に「ジッジー、あち ゅいから、待ってね!」と言われる。  午後0時33分。東海道新幹線のぞみ87号岡山行きに乗車。  車中、私は『TOWN(仮)』の仕様書作りを続ける。  3番目の町のあとの前半の山場のシナリオも完成!  調子がいいぞ!  4番目の町のメッセージも書き始める。  娘&孫は、後ろの席。  ときどき「ジッジー!」と声がかかる。 「ジッジーは、お仕事中!」と嫁がいうと、納得する。  午後2時53分。京都駅に到着。  実は、娘&孫は京都で降りる。  四国高松まで子どもを連れて行くのは大変なので、京都のマンション で2日間待たせることにしたのだ。  しかもどうせならと、事前にこの時間に娘&孫が京都駅で下車するこ とを個人タクシーの宮本さんに伝えておいた。  京都駅の改札口を出たあたりで、娘&孫を拾って、京都のマンション まで届けてもらうことに。  これだけでも宮本さんに相当無理をしてもらうことになるのになんと!  宮本さんのほうから「乗ってる座席は、新幹線の何号車か教えてくだ さい。ホームまでお迎えにあがります!」というメールを送って来てく れたのだ。  やさしいでしょう?  本当の親戚でも、ここまでしてくれないよねー!  宮本さん自ら「京都の爺やです」と冗談めかして言ってくれる。  うちも宮本さんを「京都の親戚」と思っている。  新幹線のなかでは「ジッジー、バイバーーーイ!」と、さみしくなさそ う顔でホームに出て行った孫姉は、個人タクシーの宮本さんに抱かれて、 座席にいる私と嫁のほうを見て、けげんそうな顔。

 新幹線が発車した瞬間、孫姉が「びえーん!」と泣き出した。  やっぱり泣かれたか…。  娘&孫よ、2日後にまた会おう!  京都駅を発車しても、なお『TOWN(仮)』の仕様書作り。  田森庸介さんが描いた絵を持って来ているので、絵を見ているだけで アイデアが浮かぶ、浮かぶ。  アイデアが湯水のように湧いてきて、もっと早くキーボードが叩けな いものかと、イライラする。  午後4時2分。終点岡山駅に到着。  ここから在来線の瀬戸大橋線に乗り換える。  あれ? 何だかいつもの岡山駅と構内の感じがちょっと違うぞ!  リニューアルしたのか?  ゆっくり見て行きたいけど、乗り換え時間は12分。  とりあえず、銘菓「桃太郎伝説」だけでもデジカメしていく。

 ファミコン版の『桃太郎伝説』が発売される前からあったきびだんご の和菓子で、食べるとおいしい。  ゲームを作ってから、この和菓子の存在を知った。  著作権の問題があるので、アニメ化したときはこの和菓子の製造元に 許可を取ったことがなつかしい。  午後4時14分。岡山駅から瀬戸大橋線マリン・パノラマ45号高松 行きに乗車。

 やっぱり、雨が降っている。  そんなに激しい雨ではない。  今回の仕事は、岩崎誠がメインで、私は便乗して、ひさびさに本場の さぬきうどんを食べよう!という魂胆なので、私の晴れ男パワーは電池 切れ。私の晴れ男の法則は、仕事モードに入っていないと、簡単に崩れ る。  しかしこの列車、マリンライナーのはずなのに、キップにはマリン・ パノラマと書いてあるのはなぜ何だろう?  乗ってみたら、運転士さんのすぐ後ろ、一番前の座席だった!

 ひょっとしてこの席だから、マリン・パノラマ?  鉄道マニアなら、垂涎の席だろう。  いまも右隣りに明らかに、鉄道ファンの親子が緊張の面持ちで、背筋 を伸ばして、前方の景色を食い入るように見ている。  私は最近、どんどん高所恐怖症がひどくなっているので、こんな歓待 をされても困る。  瀬戸大橋を存分に怖がりながら渡るはめになってしまうではないか! 『TOWN(仮)』の仕様書を書いて気を紛らわそう。  児島駅で運転士さんが替わり、予讃線に入る。  瀬戸大橋を渡る。

 井沢どんすけから、電話が入る。 「いま、瀬戸大橋を渡っているところだ!」 「うず潮ですね!」 「それは鳴門! いったいおまえは何10年『桃鉄』をやっているんだ!」 「えへえへえへっ!」  午後5時8分。終点、高松駅に着く。  嗚呼! 高松に来るのは、5年ぶりぐらいだ。  あの頃、昨年の青森のように毎月、高松に来ていた。  青森県観光推進課のみなさんのときとおなじように、素晴らしい人と 出会って知り合いになった。

 FMマリノの酒井秀樹くん(土居ちゃんの大学時代の同級生)。現在 は岡山勤務。  安藤芳樹さん。映画『UDON』のトータス松本さんが演じた役のモ デルである。さぬきうどんのブームを作った「麺通団」の一員。 『貧乏が去る像』を作ってくださった三好石材さん。  JR四国の社長さん、梅原利之さん。  全日空クレメントホテル高松の総支配人だった宮本盛治さん、副支配 人の一色勉さん…。  あれだけ好きだった高松も、途中で当時ハドソンの宣伝部の人間だっ たロリコンKのせいで、急速に高松に来る気力が萎えて行った。  ロリコンKは『桃太郎電鉄11』にちなんで結成したモーニング娘。 みたいなアイドル・グループを結成して、いわゆる業界でいう「舞い上 がる」状態になってしまって、みんなを大変な目に合わせた。  何というテレビ番組だったか、名前も忘れてしまったけど、瀬戸内海 放送で番組を作り、プロデューサーのところにロリコンKの名前があっ た。ハドソンの一社員が何で、プロデューサーなんだ?  とにかく11人のアイドル志望の女の子たちにうつつを抜かしてすっ かり『桃鉄』の宣伝をサボりまくった。  みんなで「『桃鉄』を利用して遊ぶのをやめてくれ!」といったが、 「『桃鉄』の宣伝のためにやってるんじゃないですか!」と、逆ギレさ れた。  真相を話せば、ハドソンが潰れるような不祥事まで起こした。  嫌な思い出だ。  でも、よく考えれば高松で未成年の女の子相手にどんちゃん騒ぎをし ていたのは高松の人ではなく、東京の人間であるロリコンKのである。  わざわざ高松を嫌うことなどなかった。  高松のみなさんともその後も親交は続いている。  暴走族がスプレーで落書きした壁(高松)は、新しい塗料で上から塗 ればいいや!ということになって、こうして高松にやって来た。  新しい思い出を作れば、悪い思い出は消える。  えっ? 何?  嫁が「2003年に高松に来てるわよ」と言っている?  えっ? 何しに?  あっ。そうだ! 『桃の陣!西日本オニ退治道中記』のロケだ!  瀬戸内海放送の番組があまりにも素人芸だったので翌年、毎日放送に お願いして、『桃陣(ももじん)!』シリーズが誕生したのだった。  あのとき、高松と金比羅山に来た。  ゲストは、あの小倉優子ちゃんだった。  アイドルおたくのロリコンKに「おまえはロケに来るな!」と私が怒 鳴ったんだっけ。あの日から素人に仕事をさせないことを私は覚えた。  明るい話題に戻そう。 『桃の陣!西日本オニ退治道中記』のロケだ!  まだ覚えている人もいるかと思うが、小倉優子ちゃんの大ファンだっ た井沢どんすけに、うちの娘が小倉優子ちゃんのモノマネで「小倉優子 です!」と電話して、井沢どんすけがすっかり騙されたあの日だ。  はっはっは!  おまけに、ロケ現場に来れなかった井沢どんすけは、アシスタントの 山下慎一郎に、小倉優子ちゃんのDVDを持って行かせて「小倉優子ち ゃんのサインをもらって来い!」と命じたんだっけ。  その小倉優子ちゃんがサインした脇に、私のサインを入れて、井沢ど んすけをがっくりさせたあの日(2003.10.15←クリック!)だ。  はっはっは!  もう4年も経つのか…。  高松駅から、全日空クレメントホテル高松まで歩く。  雨はぽつぽつ降っているけど、傘を差さなくてもいい程度。  全日空クレメントホテル高松にチェックイン。

 チェックイン後、しばらくホテル周辺を、嫁と散策。  高松シンボルタワーのサンポートなど…。  土居ちゃん(土居孝幸)、岩崎誠たちが高松空港から、こっちに向か っているとの連絡が入る。  午後6時30分。全日空クレメントホテル高松に戻って、東京から飛 行機で到着の土居ちゃん(土居孝幸)と、ロビーで待ち合わせ。  岩崎誠は、ほかのホテルに宿泊。  土居ちゃんと談笑していると5年前、全日空クレメントホテル高松の 副支配人だった一色勉さんが挨拶に来てくださった。  いまや総支配人である。  1Fの喫茶店で、総支配人の一色勉さんにコーヒーをごちそうになる。  しばらくして、私の甥にあたる鈴木裕太郎(33歳)が到着。  この若者については、あとでもう一度語る。

 一色勉さんから、5年前総支配人だった宮本盛治さんの近況や、当時 JR四国の社長さんだった梅原利之さんがいまはJR四国の会長になり、 香川県観光協会の会長さんになっていることをお聞きする。  NHKの経営委員も兼任されているそうだ。  楽しかった頃の高松を思い出した。  と、そこへ読売広告の岩崎誠から携帯メールで「腹減った! 先に食 べてます!」との連絡が入る。  私と土居ちゃんは「桃鉄ハゲの黒幕」である岩崎誠の忠実なる僕(し もべ)である。  ロデム、ロプロス、ポセイドン…それは『バビル2世』の僕(しもべ)!  ハハハ! 絶対的権力者である岩崎誠の命令は聞かねばならない。  全日空クレメントホテル高松総支配人一色勉さんとの会話を切り上げ てまで、岩崎誠が待つお店に私、嫁、土居ちゃん、鈴木裕太郎は急ぐの であった。はっはっは! 「岩崎誠は、どのお店で待っているの?」 「一鶴!」 「えっ? いっつる?」 「一鶴(いっかく)!」 「ハゲの岩崎誠だから、一鶴(いっつる)だと思った!」  午後7時。「一鶴(いっかく)!」へ。  岩崎誠、読売広告の大崎孝太郎くん、ハドソンの内田拓郎くんが不機 嫌そうに待っていた(嘘)。

「総統! 遅れてすみませんでした!」 「さくまサン、そのパターン、やめてくださいよー!」 「私と土居ちゃんは、岩崎誠の言いなりだから!」 「やめてくださいよー! さくまサン、ハゲの黒幕っていうけど、ハゲ じゃ黒幕として目立ちすぎですよー!」 「それはいえてる! はっはっは!」

 岩崎誠に、鈴木裕太郎を紹介する。  この日記に初登場の鈴木裕太郎は、私の実姉の息子である。  私の甥にあたる。  12〜3年前、大学生だった頃、ゲームデザイナーになりたいと、私 に弟子入りしていたことがある。 『新・桃太郎伝説』の頃だったかもしれない。  土居ちゃんは当時の鈴木裕太郎をよく知っている。 「さくまサン、あの頃、裕太郎くんはおぼちゃっまクンのイメージだっ たけど、いまもそのままだね! ハハハ!」 「フランスの漫画タンタンのキャラみたいでしょ?」

 当時、うちは社員6〜7人の小さな会社だったんだけど、私の親戚と いうだけで、社員が甘やかすんだね。 『華麗なる一族』ほどではないけど、甥におべんちゃらを言って気に入 られようとする人間まで現れるのには驚いた。  どんな会社にも派閥を作ろうとするんだね。  鈴木裕太郎は、ゲームデザイナーなどにならなくても、持って生まれ た天性の人懐こい性格は、ほかの仕事に向いていると思っていたので、 「ゲームデザイナーには向いていない!」といって、私はやめさせた。  そんな鈴木裕太郎もいまは33歳になり、結婚して生後半年の子ども を持つ一児の父である。現在、外資系の医療関係の仕事で、広島の会社 で四国を中心に営業活動で回っている。  不思議なことに、わが家系は医学関係とマスコミ関係の二派に分かれ ている。  TBSのプロデューサーだった森勲さんもいれば、藤岡藤巻もいるが 大半は、医学関係の人で、薬科大学の総長だった人や、いまでも薬局を やっている家が多いらしい。  鈴木裕太郎にこの家系の話をしたら、知らなかった。  私もつい数年前、人形町の新世紀である「紬の橋爪商店」の佐々木君 枝さんから初めて聞いた。  その鈴木裕太郎が、知らずに医療系の仕事をしているのだから、人生 はおもしろい。  鈴木裕太郎は松山在住だが、四国じゅうを飛び回っているので「3月 27日は、どの辺にいる?」と連絡したら、なんと! 高松だというし、 宿泊先は全日空クレメントホテル高松だというので、こうして会うこと になった。  おっと! 岩崎誠様をそっちのけの話題をしてしまった。  岩崎誠がペルシャ猫をなでながら座っているイスのボタンを押されて、 私は消されてしまう〜。はっはっは!  いかんな。このパターンは、いまどこにいるのかわかりづらくなる。  高松市鍛冶屋町の「一鶴(いっかく)」である。  このお店は以前、高松によく来ていた頃にも食べに来た。  骨付き鳥が来た!  脂が煮えたぎっている。

 この食べ物は、高松のご当地グルメだ。  鶏のもも肉を特製のスパイスで味付けして、窯の温度300度でじっ くり蒸し焼きにしたもの。皮はぱりぱり、なかはジューシー。  骨付き鳥マニアは、皿に残った脂ギッシュなタレに、おむすぎをひた して食べる。  私も大好きだけど、健康を考えて、鶏肉をちょっと齧るだけにする。  最近、甘いもの以外のときの理性が芽生えつつある。えっへん。

<おすすめのお店> 「一鶴(いっかく)」 住所:香川県高松市鍛冶屋町フェスタII 5F 電話:087-823-3711 営業時間:平 日/16:00〜22:30      土日祝/11:00〜22:30 定休日:無休(年末年始を除く)。 おすすめ:骨付き鳥。

 午後8時。岩崎誠が今回、絶対行きたい!と言っていた「鶴丸」へ。  讃岐うどんのお店まで、私と土居ちゃんは岩崎誠の言いなりである。  はっはっは!  しかし、うどん屋に行く前に、脂っぽい骨付き鳥のお店に行くか?  岩崎誠は、翌日体重が2キロ増えていたそうだ。当然だ!

 雨があがった。  仕事好きな岩崎誠に会ったので、私も晴れ男に戻ったようだ。  私は晴れ男。  岩崎誠は、ハゲ男。 「岩崎誠、一鶴から鶴丸へ! ツルからツルに移動とは岩崎誠らしいじ ゃないか!」 「ハハハ! たまたまですよ!」 「鶴丸」は、午後8時開店時間という変則的なお店なのに、開店と同時 に1階も2階もお客さんで満員になる。  私たちも何とか席に座れたが、座ったとたん満員である。

 嗚呼! なつかしいなあ、「鶴丸」のカレー。  甘くて辛いカレールー、弾力のあるうどん。  一時期、日本一おいしいカレーうどんは、どのお店かと日本じゅうの カレーうどんを食べ回った時期があるけど、やっぱりこのお店が日本一 だなあ。

<おすすめのお店> 「鶴丸(つるまる)」 住所:高松市古馬場町9の34 電話:087-821-3780 営業時間:20:〜29:00 定休日:日・祝日 おすすめ:絶品のカレーうどん。

 午後9時。全日空クレメントホテル高松に戻る。  うわっ! この世で一番私に強い影響を与えた植木等さんが亡くなった。  う〜ん。数年前から身体を悪くされていたから、いつかはこの日が来て しまうと思ったけど、ついに来ちゃったのかあ…。  覚悟はしていたけど、ショックだなあ…。  とにかく私が尊敬する3巨星は、司馬遼太郎さん、すぎやまこういち 先生、ハナ肇とクレージーキャッツ(青島幸男さんを含めた上で)であ る。 『子連れ狼』の小池一夫さんは、私の師匠だから別格。  だからこの3巨星から受けた影響は、私のどの作品をナイフで切って も肉汁、果汁のように染み出てくる。 『桃太郎電鉄』の名産怪獣のウナギラスは、植木等さんへの完全なるオ マージュである。 『ジャンプ放送局』は、植木等さんが所属していたハナ肇とクレージーキ ャッツを活字化したようなものだ。  とにかく物心ついたときからクレージーキャッツが大好きでね。  当時、クレージーキャッツは毎年NHK『紅白歌合戦』に出て、その あと毎年、銀座の宝塚劇場でお正月公演というのをやっていた。  小学生だった私は、お年玉を貯めては、このお正月公演をひとりで見に 行っていた。値段の高い公演だったからお年玉がすべてこの公演で消えた。  それでも見に行った。そのくらい好きだった。  植木等さんの思い出を語り出したら、あの横浜ベイスターズ・三浦大輔 投手と食事した日の日記よりも長くなる。  ひとり哀しみを噛みしめよう…。  おっと! 平成のヒットラー、いやハゲテラー・岩崎誠に明日、午前9 時にホテルを出発しろ!と、命じられているので、早く寝よう…。

※SKY PerfecTV! 旅チャンネルCH277 『サイコロまかせ!桃鉄の旅』好評放映中!  再放送も多いのでチェックしてね!!!(番組表も載ってます)

 
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