12月1日(水)


 iモードゲーム『さくま式東海道五十三次』がきょうから配信
された。早くもランキングのほうで、放送作家の福本岳史くんの
名前や、prudenceくんの名前を見つけたと思ったら、もう数時間
後に記録を塗り替えられて消えてしまった。
 う〜ん。もっとチューニングきつくしておけばよかったかなあ。
想像以上に早々と好記録続出で、ちょっとあわててる。1回休み
のイベントが多すぎるとお客さんにテンポ悪いと思われるかなあ
と思ったから、イージー・チューニングにしておいたんだけど。
本当に人間の持つゲーム・パワーってすごいねえ!
 何はともあれ、新しいハードでのゲームが発進するのは、うれ
しいことだ。
 
 午前11時。ハドソン桃太郎事業部の梶野竜太郎くんが来る。
『桃太郎電鉄V』の宣伝状況を聞く。
 なんと、あのL'Arc~en~Ciel(ラルク・アン・シエル)が『桃
太郎電鉄』シリーズのファンらしい。コンサートで、「この街は
桃鉄で知ってるよ」と言ってくれてるそうだ。なんだかすごいねえ! 

 午後12時。嫁と梶野竜太郎くんと3人で、青山「ホームワー
クス」に行く。いつものテリヤキバーガー。
 ここで来年以降の桃太郎シリーズをどの順番で作っていくかと
いう話し合い。来年は新シリーズが立ち上がるかもしれない。ま
あ、さすがにくわしいことは言えないから、今後の日記でそれと
なく推理してね。

 午後2時。きょうは『さくま式人生ゲーム2(仮)』の会議。
 メンバーは、タカラの高田さん、土居(土居孝幸)ちゃん、宮路
一昭くん、VR−1の荒堀明弘くん、福本岳史くん。
 まず宮路一昭くんが、CD『桃太郎電鉄〜SOKOZIKARA〜』の
完成版を持ってきてくれた。
 作詞・篠原ともえチャン、作曲・関口和之、歌・大森玲子ちゃ
んの『いつかどこかで』をみんなで聴く。本当に名曲だ。
 もう10年前ぐらいに、いつかこの曲に歌詞をつけて、CD化
したいねえといっていた曲だけに、感無量だ。忘れずこの曲を引
っ張り出してきたカズ坊(関口和之)の粘り強さには、ほとほと感
心する。

『さくま式人生ゲーム2(仮)』のほうは、思った通り、メッセージ
のほうが全然埋まっていないことが判明。福ちゃんと、がんばろ
うと肝に銘じる。
 きょうはいよいよミニゲームも出来上がってきた。
 さっそくみんなで、チャレンジするが、難しい。
 今回アクション性の強いミニゲームは本気で難しいゲームばか
り取り揃える予定なので、これはこれで狙い通り。ちゃんとアク
ション性のないミニゲーム、ちゃんと用意してあるからね。
 
 午後4時。場所をVR−1さんに移して、『さくま式人生ゲー
ム2(仮)』の製作現場を見せてもらう。すでに名前入力の画面まで
完成していて、着実に作業が進んでいることがよくわかって、福
ちゃんとちょっとあせる。早くメッセージ作らないと。
 引き続き、本山博敏さんも加わって、『さくま式人生ゲーム
2(仮)』の打ち合わせ。

 午後7時。土居(土居孝幸)ちゃんと新宿高島屋の「つばめグリ
ル」で、ハンバーグステーキ。
 食後、12Fの喫茶店で土居(土居孝幸)ちゃんと打ち合わせ。
私は減量中なのに、土居ちゃんにそそのかされて、ついモンブラ
ンを食べてしまう。おいしいじゃないか!
 土居ちゃんは、うれしそうに、ふわふわリンゴとかいうケーキ
を食べている。
 今後の桃太郎シリーズについて、打ち合わせしているんだけど、
どうも土居ちゃんとだと緊張感がまったくない。
 けっきょく土居ちゃんにここのお店をゴチになって、来年はた
くさんお仕事しましょうで、終了。

 午後8時。帰宅。
『さくま式人生ゲーム2(仮)』のメッセージ作り。
 さらにiモードゲームの新作『 、…おっと、まだ題名言うの
は早いのかなあ? え〜と。完成したらいうからちょっと待って
てね!
 なんだか最近やたら仕事してるなあ。
 しかもまた12月15日から、今度は土居(土居孝幸)ちゃん、
宮路一昭くんの3人で、九州旅行に行くことがほぼ決定。また戸
田圭祐のホームページの掲示板をつかって、実況中継するかな。
今度はじじいばっかだから、のんびり旅行しそうだから書き込み
いっぱいできるだろう。お楽しみに。
 


12月2日(木)


 iモードゲーム第2弾のタイトルは、すでにリリースされてい
るので、ここでおおっぴらに書いてもかまわないそうだ。
『さくま式東海道五十三次』に続く、第2弾は『さくま式奥の細
道』だ〜!
 というわけで、朝から『奥の細道』を読む。ここ5〜6年ずっ
と『奥の細道』関係の本は、100冊ぐらい読んでいたから、楽
勝と思っていたけど、いざゲームにしようと思って読むと、読む
視点がまったく違うのがおもしろい…けど、つらいぞ。
 ちなみに第3弾は『さくま式西遊記』。いよいよ売れっ子放送
作家・福本岳史くんが、私のプロデュースでゲーム作家としてデ
ビューする予定。はたしてどうなる!? さらにジャンプアップ
するか? 海の藻屑と消え去るか? どっちでも楽しみ。ふっふ
っふ。

 午前10時30分。嫁と高円寺の整体さんに行く。
 ここのお兄ちゃんはよく私の日記を読んでくれている。前回来
たとき、治療のあと、私と嫁はおそばの「田中屋」に行くと言っ
て去ったので、どんな評価を下すか楽しみに見たら、なんと定休
日だったそうだ。
 それではリクエストにお応えして、おそばの「田中屋」へ行く
と言って、治療院をあとにした、私と嫁なのだが、あまりの寒さ
に目の前のラーメン屋「ザボン」に入ってしまう。お兄ちゃん、
ゴメンねっ!

「ザボン」は、以前夜しかやっていなかったので、きょうみたい
にお昼からやってくれると、やっぱり入りたくなる。
 本格派の鹿児島ラーメンで、たくあんといっしょに食べるとお
いしい。さつまあげを単品で注文。きょう初めてさつまあげをわ
さびと醤油で食べることを知った。けっこう合う。
 ねぎと炒めた天かすみたいなものが、かりかり歯ごたえがあっ
て、美味しい。
ザボン
    午後1時。新宿に出て、三越デパート1Fの喫茶店「銀座レカ ン」に入る。昨日、一昨日で、体重2キロの減量に成功した私は、 ショーケースにキャラメルムースを見つけると、つい注文してし まう。しまった。牽制球にひっかかったプロ野球選手みたいだ。    午後2時。カメラのさくらやで、ゲームを数本買う。おもしろ かったら、ここで取り上げるつもりだけど、言えるゲームは少な いからなあ。わざとくそゲーム買ってるという噂があるし、私は。 だってお勉強になるんだもん。 「成功に偶然あり、失敗に必然あり」といって、素晴らしいゲー ムっていうのは、けっこうスレスレのチューニングの上に繁栄し ている場合が多いから、あまり参考にならないのだ。 逆に失敗作は、絶対誰がマネても失敗になるから、とっても参 考になる。私だって、うっかりするとやってしまいそうな過ちの 宝庫なのだ。  だから私は率先して、くそゲームと呼ばれている作品を買って しまうんだなあ。だって、私はお仕事でゲームをやってるんだか らね。  午後2時30分。帰宅。  午後3時。読売広告の後藤さんが来る。後藤さんがキャラクタ ー物のホームページを立ち上げたので、うちと連動させながら、 いろいろ何かおもしろいことができたらいいねという話。  なので、できればみんなが後藤さんのホームページを見て、キ ャラデザインなんかに応募してくれると、私としては助かる。  それと後藤さんがお土産に不二家のホールケーキを持って来て くれた。今はダメだ〜。食べたらダメだ〜〜〜。不二家のケーキ は猫にまたたびだよ〜〜〜。  ふぃ〜〜〜い。意志強固! グルメ・バカ娘に食べさせよう。  午後5時。『さくま式奥の細道』の仕様書作り。コンセプトは 決まっているので、どちらかというと資料と内容をどう一致させ るかのほうが問題だ。すごろくゲームにしたいのに、松尾芭蕉さ んは、秋田県新庄を二度通ってたりするので、ひとつひとつのマ スをどう配置するかが大変。なるべく史実に忠実に作ろうとする と、地味になって、とっつきづらいゲーム内容になってしまう。  午後6時30分。昨日食べた「ナチュラル・ハーモニー」の玄 米ご飯がどうしても食べたくなって、家族3人で昨日に続き、も う一度行ってしまう。  自然食仕立てのお店だから、減量にいい。  むさらき芋のさくさくステーキがおいしかった。豆腐とちりめ んじゃこのサラダもメルシー。  やっぱり黒ごまをかける玄米がおいしいなあ。ぷつぷつと玄米 の粒に存在感があっていいなあ。  午後8時。帰宅。 『さくま式人生ゲーム2(仮)』のメッセージ作り。  ときおり『奥の細道』を読む。いかんなあ。『奥の細道』読む と旅行したくなってしまう。旅の本だもん。目の毒だよなあ。  夜、体重を計る。おっと! 0.5キロの増加ですんだ。 危ない、危ない。これから冬が来る。血圧高くなる。体重増える とさらに高くなる。ダメ、ダメ!
 


12月3日(金)


 午前9時。工務店の人たちが来て、ドアの取り付け作業。
 自宅の1階と2階にドアをつける。
 1階のドアは、寒いのを緩和するため。北海道の二重ドアから
思いついた。この冬、威力を発揮してくれるだろう。今後さくま
家を訪問する人は、ドアを開けたら、またドアがあるので、驚か
ないように。
 2階のドアは、別に2階が寒いからではない。
 お客さんが来る2階なのに、3階に通じる階段に、グルメ・バ
カ娘が私物を陳列して、何度言っても、片付けては、また陳列す
るので、とうとうドアで隠すことにした。
 所帯じみた情けない処置である。

 朝からドアの工事で、けっこううるさいので、昨日買って来た
ゲームをすることにした。朝食代わりに、やっぱり不二家のケー
キを食べてしまう。だったら昨日食べろよ。その通り!

 ゲームのほうは、まいった!
 3本やったけど、ひとつもここで名前を出せるほどではない。
 とにかくやり方がわからない。
 1本は最近話題の超大作RPGなんだけど、どうやら戦闘にア
クション性があるらしい。アクションゲームが苦手な人たちの支
持によって、RPGは栄えたのに、そのお客さんたちを捨てよう
とする。何だかゲーム業界は一生懸命、お客さんを捨てよう、捨
てようと努力してる気がしてならない。

 さんざんわけのわからないゲームをやって、目がしぶしぶにな
る。目薬をさしたとたん、工事の人たちがお昼休みに入るという。
いっしょの時間にこっちもご飯を食べに行かないといけないので、
嫁とあわてて食事にでかける。
 めざすお店の途中に、あれ? こんなお店あったっけ? そう
か。10日間も九州、京都を旅行してれば、お店のひとつぐらい
できるわいな。

 午後12時30分。家から、1分ほどのところに出来た、「大
熊猫屋」と書いて、「パンダや」と読ませる店で、豆腐と豚肉の
麻婆ランチ。
 もともとは中国茶を量り売りするお店だそうで、11月の初め
にオープンしたのだという。ぎょぎょっ。1ヶ月近いではないか。
家から100メートルぐらいのお店が開店したのも知らないなん
て。目線が死んどるなあ。

 午後1時。喫茶店「らぴす」さんで、コーヒー飲んで、帰宅。
『さくま式人生ゲーム2(仮)』をメモったアイデアノートをめく
っていたら、まだ整理していないほかのゲームのアイデアがたく
さん出てきて、その整理を始めたら、止まらなくなってしまった。
 大掃除のときに、本を読み出したら、止まらなくなるようなも
のだ。

 午後3時。『当方見聞録』でおなじみの、あべまきこサン、
汐崎隼さんが来る。
 自宅がドアの工事中なので、近所の「ユナイテッド・アロー
ズ」の喫茶店に行く。
『当方見聞録』終了に伴う、今後について話し合い。
 といっても、このあいだ日記に書いたことの繰り返しで、まず
『当方見聞録』に描く人がほとんどおなじ人になってしまって、
今後続けていても新鮮味がないこと、さらに作品を描くよりも、
一般社会人として、通用するような人間になることが漫画家とし
て大成する早道だということを話す。

 具体的にいうと、最近『当方見聞録』のメンバーを、弟子の原
口一也やなかむら治彦くんが誘って、勉強会したり、映画の試写
会に連れて行ってくれるようになった。
 こういう交流会のほうが大切だということ。
 で、「ずっと変わらずおもしろい人なら、弟子たちもずっと誘
ってくれるだろうけど、つまらい人間だと思ったら、呼ばなくな
る! 呼ばれなくなるような人の描いた漫画はつまらないでしょ!」
ということをふたりに伝えた。
 ほかのみなさんへもおなじことを言いたい。

 これは私がデビューしたときだって、先輩たちから私たちの知
らないところで判定を下されて来たことだ。
最初はものめずらしいから呼ばれるけど、そのうちこっちから
おもしろい話題を出せるようでなければ、飲み会に呼ばれなくな
る。呼ばれなくなると同時に仕事が来なくなる。
そういうものだ。
 いかに人から呼ばれつづけるような人間になれるか? それが
この世界、いや一般社会でも生きていけるかというバロメーター
だと思う。

 だから『当方見聞録』のメンバーたちが、原口一也や、なかむ
ら治彦くん、戸田圭祐のホームページの日記に、登場するような
ら彼女たちは成長し続けていると思ってください。

 午後5時。ムサシノ広告の伊東正義が自宅に来ているようなの
で、戻る。12月8日の出版パーティの打ち合わせ。まあ、ちょ
っとした来賓のスピーチぐらいにしてねと伝える。どうも大げさ
な見所たっぷりなイベントになると勘違いしてる人がけっこうい
るようだけど、ゴチになる会のちょっと大規模版なだけだからね。

 午後7時。工事も一段落して、家族3人で、グルメ・バカ娘絶
賛のお店「Y」に行く。このお店は納豆チャーハンが美味しいの
だ。でも私はどうしてもこのお店が苦手で、きょうもお店に入っ
て席に着いたにもかかわらず、お店を飛び出してしまった。
 このお店が悪いわけではない。

 私の悲しいトラウマの話をしなければならない…。
 ひゅうひゅ〜〜〜〜〜(バイオリンの音色)。
 高校時代、私は親との確執で、いつも外をほっつき歩いていた。
休みの日は、朝早く家を出て、新宿で映画ばかり見ていた。映画
館をはしごして、1日8本映画を見たこともある。
とにかく家にいたくなかった。
そんな調子だから、ご飯も自分のおこづかいで食べないといけな
かった。でも金がないからおいしい物も食べることができない。
行けるようなお店というと、おばちゃんがラーメンに指を突っ込
んで持って来るようなお店しかない。
 こういうお店のテーブルには、必ずビニールのテーブルクロス
が掛けられていた。タバコを落とした穴も必ずあるようなビニー
ルだ。
 このテーブルで、夏の暑い日に何を食べてたのかなあ…とにか
く、食べてると腕に「にちゃ〜〜〜」と、ビニールがへばりつい
て来る。肘をついたあとに丼を持ち上げると、「にちゃ〜〜〜〜
〜」とビニールがついて来る。
あのビニールのテーブルクロスが、高校もやめて、家出してどこ
か遠い街で誰も知らない新しい生活をしようと思った頃の象徴な
のだ。

 だから「Y」はグルメ・バカ娘が美味しいと絶賛するお店なん
だけど、ビニールのテーブルクロスがかかっているからダメなん
だ。あのやるせない気持ちが「ぐわあああああっ!」と、走馬灯
のようによみがえってしまうのだ。
 こういう思い出って、みんなには無いのかななあ…。あるわけ
ないか。私がいつも美味しい物を食べていたいというのも、実は
このテーブルクロスの怨念だったわけやね。ちゃんちゃん。

 けっきょくわがままをいって、「ゴチになる会」の二次会でお
なじみの「ブルドッグ」にしてもらう。
 とん平焼き、ねぎ焼きといったお好み焼きに、豚キムチなど食
べる。ブルドッグは飲み屋さんだから、どの料理の味が濃い。美
味しいけどね。

 午後9時。帰宅。
 ようやく『さくま式人生ゲーム2(仮)』のメッセージ作りに着
手する。
 遅々として進まない。というのも、夕方にもちょこっとゲーム
をやったせいで、目の焦点が合わなくなっている。首も痛くなっ
ている。ゲーム作るのは嫌じゃないけど、ゲームをやるのがつら
いというのは困ったもんだよなあ…。克服方法がない。
 


12月4日(土)


午前9時。きょうも自宅のドアの工事。昨日でほとんど工事は
終了しているので、きょうは壁紙を貼るだけ。午前中で完了した。
なるほど玄関にもう1枚ドアをつけただけで、ずいぶんと暖かく
なるものだ。

午後12時30分。渋谷ハチ公前で、グルメ・バカ娘と待ち合
せて、家族3人で、「ナチュラル・トレイル」で食事。きのこと
ミートソースのリゾット・ランチ。食後のケーキがおいしかった。

このあと東急ハンズで買い物して、原宿駅へ。
駅前の「コムサデ」でまたまた買い物。
いかにも土曜日の家族を演じる。

午後3時。帰宅。新しい靴でけっこう歩いたので、足首がへろ
へろ。
いろいろ読書をしていくうちに、うたた寝。

午後4時。放送作家の福本岳史くんと電話で打ち合わせ。『さく
ま式人生ゲーム2(仮)』のメッセージの直しがまったく進まない
ので、先にiモードゲーム『さくま式西遊記』を進めておいてと
指示を出す。

午後7時30分。嫁とふたりで、恵比寿のおそば割烹「翁(おき
な)」に初挑戦。庶民的な内装で、お店の人たちも気さく。
おそばを作る人がいかにも、仕事が大好きという技術者っぽい
顔。その顔で作る料理は、やっぱり繊細でおいしい。
とらふぐの子どもを焼いた物が美味しかった。
最後はもちろん、おそばが出てくるんだけど、鮮烈な味でGO
OD! きんきんに冷えたおそばの麺は芸術的。
ちょっと値段が高い点を除けば、申し分なのない出来。
思わずあまりの美味しさに、デジカメするのを忘れてしまった
ぐらいだ。

午後9時。原宿の「EATS」で、カフェラテを飲んでから帰
宅。いろいろ現在かかえている仕事に関する本を読み倒す。
それでもどこかで仕事を減らさないと、来年身体に出てしまう
もんなあ。どれも断れない仕事ばかりだし、困ったもんだ。
新しい仕事って楽しいしねえ。
自己管理も出来て初めて、プロ。
どうもこの言葉だけは、デビューして25年経った今もちっとも
守れない。
 


12月5日(日)


 午後12時。新宿駅南口サザンテラス。ここに広島物産館があ
って、広島風お好み焼きが美味しいので、家族3人で食べに行く。
しかし開店当初からの接客の悪さは芸術的で、きょうも席が満員。
その満員も4人掛けのイスに、ひとりだけというのが随所に見ら
れる。で、わが家族3人を「あちらへ!」と、2人掛けの席を指
さす。「すわれないでしょ、あそこじゃ!」「じゃあ、待たれま
すか?」
 しばらくしてどんどん後ろに行列が繋がる。いずれも3人とか
4人の人たちだ。店内では、ひとりで4人掛けの席で食べている
人が、3人も4人も目に入る。
 けっきょく後ろの人たちは次々にほかのお店をめざして去って
行った。わが家族もほかの店を探すことにした。
 このお店にはこうして、2回ぐらい連続で、入ることができな
い。これが3回目になったら、二度と行かないお店のリストのほ
うに入るんだろうなあ。

 この広島物産のお店の隣りに、宮崎の物産館がある。
「コンネ」というお店で、「こんね〜」と語尾が上がる宮崎弁か
ら来ている。正しい発音が聴きたければ、宮路一昭くんに教えて
もらってください。
 ここで豚汁定食、500円を食べる。
 これがうまいっ!
 いかにも田舎の人が親切に具をたくさんにしてしまったような
量で、ものすごいボリューム。豚肉もたくさん、こんにゃくもた
くさん、たまねぎも、ゴボウもたくさん。
 みそも宮崎産のお味噌で、いい味出している。
 ついでに、竹の子とシイタケのうま煮も1品注文して、家族で
つつく。このシイタケのうま煮がまた甘くて美味しい。
 この値段で、新宿駅の真ん前でこれだけ美味しい物が食べられ
るのは奇跡的である。
 調子に乗って、この家族は、かぼすシャーベットの「へべす」
アイスに、牛乳を長時間煮詰めたという甘乳蘇(かんにゅうそ)ア
イスも食べる。いずれも美味。へべすはちょっと酸っぱい。
 ほとんど駅の売店みたいな店内なので見落とすかもしれないが、
ここの豚汁定食の味はあなどれない。

 午後1時。新宿駅。あずさ59号。
 ま〜た、旅行に行くんか〜いと思うかもしれないが、旅行では
ない。八王子まで墓参りである。中央線で行け]ばいいのだが、や
っぱり「あずさ」で行くほうが楽チンなので、 乗ってしまう。何
たってひと駅なんだもん。
 ってことで、あずさ59号に乗り込んで、いつものようにアイ
デアノートを広げて、沈思黙考…するも、わずか、30分で♪八
王子〜、八王子〜〜〜! もう着いた! 早すぎるよ!

 午後2時。八王子延立(えんりゅう)寺。
 ここの住職さんもまた、月刊アウトの読者だった人。いろんな
ところで月刊アウトの読者には出会うのだが、自分のお寺の人ま
で読者とわかったときは驚いたものだ。
 
 午後3時33分。かいじ112号。新宿に向かう。
 午後4時8分。新宿駅着。早い。早すぎる。いつもオレンジ色
の中央線に揺られてごとごと都心に向かっていただけに恐ろしい
早さだ。

「マイシティ」で、グルメ・バカ娘がいろいろお買い物。
 私はいつものように『旅・王・国』の四国を買う。九州に続い
て、四国をそろそろ完全制圧しようと思っている。
 気分は豊臣秀吉!
 待っていろよ、長曾我部(ちょうそかべ)!

 午後5時。新宿東口の京懐石のお店「柿傳(かきでん)」で食事。
初挑戦。鯛のかぶと煮はなかなかの美味しさ。ひとつひとつの料
理も手間がかけられていて、なかなか見事。
 しかし京懐石のお店となると、どうしてもわが家族は青山「穂
積」というとんでもないお店を知ってしまっているので、がんば
っているお店を誉めてあげることができない。

 また最後にお店の人が「当店自慢の葛きりはいかがですか?」と
問うてくれうのだから困ったものだ。私と嫁は美味しかった料理
に敬意を表して、注文したが、グルメ・バカ娘は「いらない」の
ひとこと。性格の悪いガキである。
 その葛きりの味のほうだが、まあ、よくがんばってはいる。
 わが家族は、青山「穂積」を知っていることがかなり人生の損
になり始めている。

 午後6時30分。帰宅。
 何だか疲れた。八王子ぐらいでなぜ疲れる。
 どうも八王子と新宿の人ごみに疲れたようだ。
 いつの時代も、疲れる原因は人間なりか。

 きょうこそビデオ見ようっと。『地球防衛軍』だ。なつかしー!
 


12月6日(月)


 午前11時。銀座渡辺内科クリニックへ行く。
 先月の採血の結果は、すべて良好。うれしいなあ。
 血圧のほうも、145―92と、まだ高いながらも、ひさしぶ
りに前の月を下回った。これまたうれしい!

 うきうき気分で病院を出て、嫁と銀座を散歩。
 結果良好記念で、天ぷらでも食べるかと、天ぷらの近藤に電話
するも、満員。調子に乗るなというご神託であろう。

 午後12時。銀座6丁目。松坂屋の裏。業界的には、朝日ソノ
ラマの通り。洋食の「ムッシュS」に初挑戦。
 ご主人からして、典型的な洋食屋のコックさん顔。麻布十番の
「EDOYA」のお父さんに似ている。こういう顔のお店の洋食は美
味しい。
 小海老のカレーと、ハヤシビーフを注文。
 どちらも美味しいけど、ハヤシビーフは特筆すべき味。甘くて
まろやかな味。美味しさの基準である上品さも備えている。
 今度一度夜に来て、おまかせコースを食べてみたいと思わせる
ほどの味だ。いいお店を見つけた。
どっちがハヤシビーフだ?
    午後12時30分。銀座8丁目の喫茶店「コスモポリタン」で コーヒー。ここでコーヒーを注文すると、チョコレートが2枚付 いてくる。  ちょっと前まで、名うてのデブだった私は、この喫茶店のおま けのチョコレート2切れをとてもせこいと思っていた。チョコレ ートといえば、板チョコ。板チョコ1枚が、一人分のチョコの量 だと思い込んでいた。しかもチョコはデザートとかお菓子の類な ので、夕ご飯の前に板チョコ1枚くらい食べても平気であった。  デブ自慢しても仕方ないなあ。  さらに歩く。新橋駅の近くの和菓子屋に、カフェ大福なる珍し い食べ物を見つける。178円のカフェ大福を1個だけ買って食 べる。コーヒー牛乳のような下品な味の大福であった。好きな人 にはこの上なく病みつきになる味だと思う。とくにデブ系の人に は。誰とは言っていないけど、大福本岳史…、いい名前だなあ!  午後1時30分。新橋駅。京浜東北線に乗りたくなる。しかし いつまでたっても京浜東北線に電車が来ない。快速が通り過ぎて 行くだけだ。駅員さんに聞くと、夕方4時ぐらいまで、新橋駅に は電車が止まらないそうで、山手線に乗って、田町駅で、乗り換 えてくれという。なんじゃそれだ。  …と言われたとたん、駅の掲示板に午後3時47分まで、この 駅に止まらない旨の言葉が書いてあるのを発見する。どうしてこ ういうことって、言われたとたん見つけてしまうもんなんだろ う? そう思うでしょ?  午後2時。京浜東北線で1本だから、近いと思っていたんだけ ど、横浜関内駅は遠く感じるなあ。えっ? 関内という言葉だけ でもうどこに行くかわかるって? 当たり!  ずっとずっとずっとずっとずっと来ていなかった、関内セルテ 2F「ザ・ベイスターズ」に来たのである。  たしかに銀座からちょっと足を伸ばして、横浜関内までという のは、ガリバーが足を伸ばしたくらいの歩幅である。  まあ、すでに嫁は、私の新橋からすぐという言葉をどうでもい いと思って聞いていただろうけどね。  さて、ひさびさのベイスターズ・ショップだ、死ぬほど散財す るぞと意気込むが、まったく新製品が無くて、お金をつかうこと ができない。なんて悲しいんだ。しかも昨年の優勝グッズが、格 安の値引きでワゴンセールされている。これはもっともっと悲し い。あのときは品薄で全然変えなかったTシャツが、あんなに安 い値段で…。  1年の歳月ってのは、無情だねえ。  でもまあこうして、来年を迎えることができるわけだから、新 しい希望がいっぱいの横浜ベイスターズ・ファンにとっては、い ちばん楽しい季節がやって来ている。  それにしても、FAで入団するとか言っていた、ロッテの小見 山投手と広島の江藤選手は、どうなったんだいっ! こっちはず っと息をひそめて待っていたのに。なんだかふたりとも来ないよ うな雰囲気じゃないかっ!  けっきょくTシャツ数枚ほかグッズ数点を買って、退散する。 絶対ほしかった来年度のベイスターズ・カレンダーが手に入った から、まあいいや。  このあとせっかくだからと、横浜を散歩する。  馬車道から、大さん橋埠頭に向かって歩く。  月曜日なので、日本郵船歴史資料館とか、横浜開港資料館とい たところが軒並み休みなのが、残念。  でも途中、今話題の神奈川県警の前を偶然透りがかることがで きて、何だか得した気分。TVで見るより、はるかに大きくて立 派なビル。これはたしかに反感買うなあ。  嫁がデジカメで全貌を写そうとしたけど、入らない。
    海岸通1丁目あたりで、さすがにへばりもうした!  喫茶店「ジャックカフェ・イースト」に入る。いかにも横浜風 のマリーンっぽいお店で、雰囲気はいい。  カフェオレを飲んだら、カップがでかい!  しかも熱くて、なかなか冷めない。美味しかったんだけどな。
    少し休んでも、じんじんしている足は回復しないんだけど、無 理して歩く。いよいよ山下公園が見えてきた。  カモメの大群がすごい!
    餌をあげてる人のところに何百羽も集まってくる。  必死にホバリングして、餌をもらおうとするカモメの姿がおも しろい。  で、実はこの山下公園から、東京品川まで帰れる船が就航して はずと思ったら、これが無い! あるのは『行く年来る年』でお なじみの氷川丸と、湾内一周遊覧船があるだけ。  みなとみらい21のほうだったかもしれない。 午後4時30分。桜木町。 午後5時。渋谷。HMVで、ビデオを数本。昔々の日本のマイ ナー怪獣映画。 午後6時。西麻布の「内儀屋(かみや)」に行く。 自分としてはなんだかひさしぶりに来た気分。 その分、どの料理も美味しく食べることができた。このお店の 白いご飯はやっぱり美味しい! すぎやまこういち先生ご夫妻が見えられて、気に入られた話も 教えてくれた。こういう伝言が出来るお店の料理は、美味しいに 決まっている。お客を大事にする気持ちが料理に出るってことだ。 今まで、漫画とか、ギャグとか、ゲームとか、私は技術論を追及 してきたけど、けっきょくすべてはその人の人間性の良し悪しで すべてが決まってしまうのだという結論に落ち着くばかりだ。 精進せねばならんですのー、ご同輩方。 ご同輩とは、自分のことだと思った人は、素晴らしい人間性の 持ち主ですぞー。  午後7時30分。帰宅。 きょうは小旅行というより、けっこう本格的な旅行になってしま ったなあと少し反省。ちょっとゲーム作りのほうが煮詰まってい たので、気分転換にはなった。 
 


12月7日(火)


 午前6時30分。うっかり、クリアに目がさめてしまったので、
眠い目をこすりながら、いろいろたまっている小さなお仕事をぽ
つぽつと。

 午前10時30分。嫁と蔵前の「蔵人(くろうど)総合研究所」
に行く。ムサシノ広告の伊東正義もいっしょ。
 赤根豊くんとゲームの権利関係のお話と、会社の決算のお話。
 そこへ大福・本岳史くんから電話が入って「さくまサン、つい
にiモードの『さくま式東海道五十三次』で、5日が出てしまい
ましたよー!」という連絡。何〜!? 一体どうやったらそうい
う記録が出るんじゃあ!
 まったくディープなゲーマーのやることは、想像を絶する!

 午後12時。人形町「喜(き)寿司」へ、そのまま4人で行く。
何だかひさしぶり。
喜寿司 油井さん
    ここで伊東正義が、町会議員とか市会議員、区議会議員といっ たものに興味を持っていると聞いて、それはおもしろい、立候補 しろとそそのかす。  同級生が、議員になるというのは笑えるから、やれ、やれ!と 無責任に勧める。  ひさびさに楽しい話だ。まだまだ遠い先の話のようだが、この 年齢になって、目標を持てるってことは素晴らしいと思う。  午後12時30分。人形町の喫茶店「高久(読み仮名忘れた)」 で、カフェオレ。途中、伊東正義に電話が入って、銀座で打ち合 わせが入っているという連絡。 「いけね、打ち合わせあるの忘れてたよ。さくま、すまん、また 今度!」と去っていく。議員の道は相当遠いかもしれない。  いや、あのくらい大ざっぱでないと、議員は務まらないかもね。  午後3時。帰宅。『さくま式人生ゲーム2(仮)』のメッセージ直 し。とにかく今やってるゲームをひとつずつ片付けていかないと、 大変なことになる。  うんうん唸りながら『さくま式人生ゲーム2(仮)』のランダム・ メッセージ作り。思うように進まない。短い文章にしないといけ ないので、俳句を作るようなつらさがある。  以前作ったメッセージも、1文字、2文字減らす作業も、孤独 なランナーだ。  ゲーム作りをしていて、いちばん体力を消耗する場面だ。  午後7時。家族3人で、新宿の中華料理のお店「シェフズ」に 行く。このお店もすぎやまこういち先生ご夫妻に紹介していただ いたお店で、この季節は上海蟹が美味しいことでも有名。  きょうもすでに予約がいっぱいで、あいにく上海蟹の姿造りは もう終了していた。  それでも、上海蟹の豆鼓(トーチー)炒めを食べることができた。 上海蟹は小さいので、豪快に食べることができないけど、足をし ゃぶるように食べる。残ったところにご飯を入れてもらって食べ たら、これがまた美味しい!  上海蟹のみそシャーハンも食べる。もっと蟹味噌っぽいのかと 思ったら、あざやかな黄色で、口当たりがいい。  このお店は1年ぶりなのに、グルメ・バカ娘はちゃんとこのお 店の玉子とトマトが美味しいことを覚えていて、ちゃんと注文し たあげく、残った部分にご飯を入れて、混ぜご飯にしてほしいと いう。まったくこのガキは、お店で物怖じするということを知ら ない。  ほかにもナスの胡麻だれ、大根パイ、くらげキュウリ、そうだ、 ねぎラーメンが美味しかったなあ。  あっさり、さっぱり、すっきり美味しい味で、なんともいえな い。これだけ美味しいねぎラーメンはちょっと珍しい。  デザートの洋梨のコンポートも、甘い、甘い、上品に甘い。
    必死に、食べる量が増えすぎないように調節しながら、満足、 満足。このお店、来初めてから、3〜4回目だったけど、やっと こっちの態勢とお店のペースが合致したような気がする。  午後8時。帰宅。 『さくま式人生ゲーム2(仮)』のメッセージ作りの続き。  きょうはこの作業に没頭する予定。  明日はいよいよ出版パーティなので、早く寝て、体力を温存し ておかないと。
 


12月8日(水)



わずか2時間。 何100回頭を下げたかわからない。 25年前。 人に頭を下げるのが嫌で マスコミ業界を選んだ男が、一生懸命、 ありがとうございます!」 「ありがとう!」 「本当に今までありがとうございました!」 と、 何度も何度も人に頭を下げている。 でも、ちっとも 嫌な気はしなかった。 なぜなら  本当に心から頭を下げたい人たちがたくさん 集まってくれたからだ!   『さくまあきらの正体』 出版記念パーティ IN 新宿センチュリーハイアット・ホテル
パーティの写真が4ページあります。↑クリック!
   さあ、お待ちどうさま! 敬称を略したり略さなかったり、 説明を加えたり、加えなかったり、アイウエオ順が微妙にずれ てたり、ずれていなかったり! とにかく『さくまあきらの正 体出版記念パーティ』に来てくれた人たちを全員紹介しようじ ゃないか!              ア行  青木光恵さん(漫画家)、赤根豊くん(蔵人総合研究所)、浅野豊親 さん(カメラマン)、穴井夕子さん(歌手、タレント)、あべまきこサ ン(当方見聞録)、飯田孝さん(ヤングアニマル副編集長)、いし かわじゅんサン(漫画家)、石川亨くん(週刊ヤングサンデー編集部)、 石川正幸くん(ヘアストリート美容師)、石崎仁英くん(桃太郎事業 部)、石関秀行(シナリオライター)、イトセナオミさん(ミルキーカ ートゥーン)、イワタナオミさん(ミルキーカートゥーン)、岩下誠 徳さん(作家)、岩崎摂さん(漫画家、霊能者)、岩崎誠(読売広告)、 鵜飼泰隆くん(ポニーキャニオン)、×××××サン(本人の希望に より削除)(××××××事務所)、梅津実さん(おなじみ高円寺の 整体のお兄ちゃん)、江口貴博くん(プロスペック代表)、 榎本45歳(バナナグローブスタジオ社長、貧乏神のモデル)、 江波戸哲夫さん(作家)、えびなみつる(25年間ずっと相方のイラ ストレーター)、緒方源次郎(編集者、青木光恵ちゃんの夫)、 大里幸夫さん(ハドソン専務)、大沼弘幸さん(小説家)、 小川善美さん(インデックス)、小沢文彦くん(メディアワークス)              カ行 梶野竜太郎くん(桃太郎事業部GM、映画狂)、加藤誉昭さん(元 ヤクルト選手、現ベースボールマガジン社)、金子豊(広告代理 店・創芸)、神谷明さん(声優)、菊池晃弘(漫画家)、岸本好弘さん (ナムコ)、北之口太さん(ルポライター)、久保田滋夫くん(元ビッ グコミックスピリッツ編集長)、くぬぎふみたかサン(タカラ)、こ いでたく(漫画家)、小林千尋くん(ハートビート)              サ行  佐々木君枝さん(親戚、人形町の老舗呉服屋さん)、澤良一くん (イラストレーター)、三戸千鶴子さん(ウッドユース)、汐崎隼さん (当方見聞録)、篠宮勝さん(ユイ音楽工房)、柴尾英令くん(日本一 の酔っ払い、『レガイア伝説』作者)、島田秀平くん(お笑いコン ビ・号泣)、清水郁夫さん(教育開発センター代表)、ショッカーO 野くん(元社員、ラジオ・パーソナリティ)、新見和明さん(ビーア ールサーカス出版社長)、菅本順一さん(代々木アニメコミック科 主任講師、元小池一夫劇画村塾幹事)、杉沢義文さん(テンユウ・ プロデューサー)、鈴木勝裕さん(ヘアストリート社長)、鈴木千華 雄くん(京都タニヤマ無線)、鈴木秀人(まんだら社社長)、鈴木晴美 (実姉)、関口和之(サザンオールスターズ・ベーシスト、ウクレレ 伝道師、桃太郎チーム)、瀬戸龍哉(G、B代表)              タ行  大徳哲雄くん(元月刊アウト編集長、樹想社社長)、高田直幸さ ん(タカラ)、高橋信之くん(スタジオハード社長)、武田学くん(ハ ドソン事業部)、田森庸介さん(漫画家、『ポポロクロイス物語』 原作者)、塚田正晃さん(メディアワークス、TVタレント。)、土 居(土居孝幸)ちゃん(イラストレーター、桃太郎チーム)、とがしや すたか(漫画家)、戸田圭祐(最古のさくまにあ、日本通運)、戸田乃 三扇さん(バグジィ)、どんちゃん(井沢どんすけ、ジャンプ団)              ナ行  長尾良一(高校時代の後輩、東芝電気)、中尾淳(肩書き募集中)、 なかむら治彦くん(漫画家)、中本伸一さん(ハドソン副社長)、夏目 房之介さん(漫画コラムニスト)、沼辺国男(フジテレビ)、成沢大輔 くん(CBズプロジェクト代表、原口を呼べ! 待ち合わせ時間厳 守!)              ハ行  林正明(高校時代の同級生、会計士)、花見萬太郎さん(集英社、 元ロードショー編集長、恩人中の恩人)、原口一也(STFプロジ ェクト社長)、樋口由美子さん(インデックス)、ひろたたけし(『御 神楽少女探偵団』プロデューサー)、福本岳史くん(放送作家、デ ブ!)、藤岡孝章(おない年のいとこ、ソニー・ミュージック部長、 元まりちゃんズ)、藤田純二さん(東芝EMI本部長)、古沢彰一く ん(ライター)、細野環さん(漫画家細野不二彦くんの奥さん、横浜 ベイスターズ・ファン)、堀井雄二(言わずと知れた、『ドラゴン クエスト』の作者)                        マ行  牧巌さん(TBSプロデューサー)、牧野弘(大学の同級生、集英 社)、牧野正(衆芸社)、桝田省治(『リンダ・キューブ』『俺の屍を 超えて行け』作者)、松本常男くん(キャラメル・ママ社長)、馬渕 公介さん(作家)、丸堀彩文さん(当方見聞録)、宮岡寛(メタル・マ ックス作者)、宮路一昭くん(作曲家、桃太郎チーム)、宮下彰さん (ビッグマウス・チーフプロデューサー)、最上谷学(高校時代の後 輩、日立エンジニアリング)、本山博敏さん(VR−1)、森勲さん (サウンズアート社長、親戚)、森沢明夫くん(『正体』の担当編集 者)              ヤ行  山口勝志さん(洋品店101専務)、山畑雅夫(高校時代の同級 生・週刊モーニング編集次長)、山名学さん(ハートビート代表)、 山本純司さん(集英社キャラクター出版編集長)、山森篤さん(メデ ィアファクトリー、ディレクター)、弓削秀夫くん(鍼灸師)、吉開 寛二くん(漫画家)、吉原勝さん(メディア・ワークス)、米沢嘉博く ん(コミックマーケット代表)、米沢英子さん(米沢くんの奥さん)              ワ行  渡辺和俊さん(インデックス)、渡空燕丸さん(つばくら草紙)            ふうっ! ほかにも見えられていたかもしれないけれど、ビー アールサーカス出版さんが受付を引き受けてくれて、その受け付 けでいただいた名刺から名前を掲載した。  さらにきょう来れなかった人たちからも、たくさんの花束が届 いて、今も我が家は花屋さんのようだ。すごい量だよ。  100本のバラを送って来てくれた、現在の豊臣秀吉っぷりを 見せつけてくれた広井王子くん(レッドカンパニー総帥)。 すぎやまこういち先生ご夫妻、プティポワンの北岡ご夫妻、高橋 留美子さん(漫画家)、川原伸司さん(ソニー・ミュージック)、奥 山豊彦くん(週刊少年サンデー編集長)、西森真木さん(漫画家西森 博之くんの奥さん、旧姓・山田真木)、横山智佐ちゃん(声優)、 カプコン岡本吉起くん、永尾カルビほかの皆々様…。  本当に本当にありがとうございます。  この業界に25年間も生きて来て、年末進行真っ只中の12月 初旬にパーティをやるとは何事だと、ブーイングの嵐をくれた漫 画家のみなさん、ごめんなさい!  午後7時。天平の間。  司会は、大学時代の同級生で、ムサシノ広告の伊東正義。  私の半生を振り返るということで、昔からの友人、恩人に、ス ピーチを頼む。  壇上に登ってもらった人たち。 ・ハドソンの中本さん。乾杯の音頭。 ・えびなみつる。 ・夏目房之介さん、いしかわじゅんサン。 ・カズ坊(関口和之)。 ・土居(土居孝幸)ちゃん、榎本45歳、ショッカーO野くん。 ・桝田省治。 ・ハドソンの梶野竜太郎くん。 ・TBSの牧巌さん。 ・花見萬太郎さん。 ・堀井雄二。 ・宮路一昭くん。 ・山畑雅夫。 ・インデックスの渡辺さん。 まさにさくまあきらの過去から今日までを語ってもらった。ず っと壇上に私が残ったために、相方を次から次へと替えて行く 漫談のようだったと言われる。 さらにきょう発売の『桃太郎電鉄〜SOKOZIKARA〜』 のピーチボーイズのお粗末な歌が入る。まさかやつら本気でこん なところで歌うとは。しかも3番まで。冷や汗たらたら。 会場から「こりゃあ、本よりも売れないな」の声が。 いやいや大森玲子ちゃんの歌がある。    午後9時。新宿西口エルタワー地下のワインバーで二次会。 ここにも5〜60人集まるという恐ろしい盛況ぶり。  さすがに私が主役なので、とにかく全部の人と話をしようと思 って、歩き回ったせいで、足も痛くなったけど、けっきょく先に 口のほうが痛くなってしまった。  それよりパーティの席というのは、必ず知り合いが少なくて、 手持ち無沙汰になって、困ってしまう人が出てしまうものだ。誰 もが経験する。昔々デビュー当時の私がそうだった。   今回のパーティでも、そうなる人が極力少ないとうれしいなあ と思っていたが、ゴチになる会のメンバーが、あっちに走り、こ っちに走りして、寂しくなる人が出ないように、奮闘してくれた。  グルメ・バカ娘まで、あっちにいたりこっちにいたりして、営 業している。あいつは本当に大人と話をするのが大好きだが、同 級生が苦手だ。  こんなに『ゴチになる会』のメンバーが頼もしいと思ったこと はない。みんな、ありがとうね!  もっともっと書きたいことはたくさんあるけど、きょうのとこ ろはこのへんで。    とにかく学生時代の友人たちといっしょにここまで来れてしま った、恵まれすぎた男・さくまあきらは、三国一の幸せ者だとい うことをいやというほど思い知らされたパーティであった。
最後にもう一度、 「ありがとうございました!」
 


12月9日(木)


『さくまあきらの正体』出版パーティ翌日。 
 昨夜はさすがに無理を言って、二次会だけで退散。『ゴチにな
る会』のメンバーは例によって、午前3時すぎまで大騒ぎしたそ
うだ。

 昨夜は午前0時、帰宅。
 異常興奮で寝付けない。
 午前3時過ぎまで、目がくっきり。

 午前6時30分。目がさめてしまう。
 きょうはまだ大事な会議が控えているので、必死に二度寝を試
みる。嫁も相当へばっていたようで、寝過ごして、グルメ・バカ
娘を起こすのが遅れて、娘は若干遅刻したそうだ。

 午前10時30分、中尾淳が来る。
 嫁と、私と中尾淳の3人で、東十条に行く。
 ナムコのきっしいサンに昨日、さぬきうどんの「すみた」に行
ってくださいよ〜。何ならごいっしょしますよと言われたものの、
来週から再び九州旅行にでかけるので、当分行けないなあと言っ
ておきながら、つい行きたくなって、へろへろながら来てしまっ
た。疲れているんだからおとなしくしていればいいのに…。
 
 しかしお店の場所がわからない。
 実は昨日のパーティでへばった嫁が、お店の住所を今朝メモし
ながら、なんとその紙を忘れて来てしまったのだ。
 やっぱり疲れている。
 商店街を100メートルほど行った左側ということだけは覚え
ていたので、駅を出て右は上り、左は下りなので、二念無く左を
選んで下って行く。実は右だった。

 わからないまま進む。商店街が予想したより、ずっと大きい。
 かなりの距離を歩く。
 さすがに100メートルなわけがない。
 おっ。もうひとつ駅の改札口があるのか。
 おおっ! ここから100メートルだな。へろへろ歩く。
 300メートルほど歩いて、100メートルはもう過ぎたよな
と会話し始める。

 ついに、わざわざ大阪の戸田圭祐係長に電話して、きっしいサ
ンのホームページに載ってるお店の住所と電話番号を教えてくれ
と頼む。
 昨日パーティ会場から、夜行電車でそのまま会社に向かった戸
田圭祐の勤務中に無理をいう私であった。
 
 けっきょくよりによって、四方八方のたった一箇所行かなかっ
た場所が、お店のある場所であった。まるで昨年の横浜ベイスタ
ーズ優勝の次の日に無理やり横浜に行って、寝不足のまま消化試
合を見たような気分である。
 うれしいけれど、へばってる。

 午後12時。「すみた」。
 ぶっかけうどんに、おでんを食べる。
 うまいっ! これだけ美味しいおでんダネのこんにゃくは珍し
い! からしがちょっぴり甘くて新鮮。
 ぶっかけうどんのほうも、初めて見る真っ白な天かすが何とも
いえない、いい味を出す。残留が決まった横浜ベイスターズの進
藤選手のサード守備のようだ。華やかさは無いが、堅実、確実。
 麺は、四番打者。
 見事なぷりっぷりっ麺だ。
    不満は、何かついでがないと行かない我が家にとって、東十条 駅下車のこのお店はつらいなあというだけである。  池袋に行ったとき、足伸ばすかなあ?  銀座の「さか田」の場合は、帰りにプランタン銀座の1Fで甘 い物を食べるとか、数寄屋橋交差点の不二家レストランに寄ると か、文房具の伊東屋に寄るとか、うちはけっこう寄り道至上主義 なのだ。  おそらく東十条駅に、横浜ベイスターズ・ショップでもあれば、 毎月必ず行くだろう。  実は「東十条のほうが、横浜関内のベイスターズ・ショップよ り、さくまサンの家からは近いじゃないですかあ!」と、きっし いサンに昨日言われたのである。  きっしいサンはまだ私に対する認識が甘い。  ベイスターズ・ショップが福岡にあったとしても、私にとって は、東十条より福岡のほうが近い。福岡はもちろん飛行機で行く のではなく、のぞみ号ね。  午後2時。帰宅。  ハドソンの梶野竜太郎くんが来る。 『桃太郎電鉄V』のTV−CMを見せてもらう。  ついに桃太郎シリーズ初のアニメCMである。おおっ! 土居 (土居孝幸)ちゃんの絵が動いている! 出来もいいぞっ!  このCMは、意表をついて、12月16日発売日から、放送さ れる。CM見て、まだまだ発売は先だと思わないように。そのか わり来年3月までこのCMは流れるそうだ。長いっ!  午後3時。桃太郎チームのメンバーが来る。  土居(土居孝幸)ちゃん、宮路一昭くん、福本岳史くん。  ここから本格的な来年以降の桃太郎シリーズのラインナップを 決定する会議。ゲームメーカー倒産相次ぐなかで、今後を決めて 行くのはなかなか難しいものがある。  『桃太郎電鉄』が今年の年末いちばんの受注ソフトとはいえ、 まわりがどんどん討ち死にしていく戦場にいるようで、うすら寒 い。  ただいつの時代もいちばん強固なものは、チームワークという ことで、ラインナップ決定後、チームワーク作りの議論をして結 束を固める。  午後4時。蔵人総合研究所の赤根豊くんも来て、桃太郎シリー ズの今後の契約問題について。  午後5時。新作『桃太郎電鉄』のアイデア会議。  早くもメイン・ゲスト・キャラが決定しそうである。 『桃太郎電鉄』シリーズのギーガボンビー、ハルマゲド〜ンとか、 スタッフ間では、マドンナ役と呼んでいる。このマドンナ役が決 まると、新作『桃太郎電鉄』は8割方、完成したも同然である。  午後6時30分。家族3人と、土居(土居孝幸)ちゃんの4人で 渋谷「宇和島」に行くも、予約でいっぱい。土居(土居孝幸)ちゃ んの出身地が、四国宇和島なだけに、残念。  東急百貨店本店「なだ万孝明(なだまん・こうめい)」に行く。    中華料理屋なのに、和食っぽい。この傾向は毎回来る度に、強 まっている。値段からすると、かなりクオリティの高いお店だ。  午後9時30分。帰宅。  パーティに来た人の名前を昨日の日記に書き込む。死ぬ。大変 だあ。一体何人来たのか知りたいけど、数える気がしない。  う〜ん。まだ誰か来ていたような気もする。  名刺持たない人も多いからなあ。  これだけ更新が遅れたのも、ひさしぶりだ。  壇上に上がってくれた人の名前を忘れたり、やっぱり舞い上が っていたようだ。あの人数じゃねえ。  写真をクリックして、たくさん画像見て、会場の雰囲気をつか んでね。  わ〜ん! もう午前2時だ。眠い。
 


12月10日(金)


 友人・堀井雄二の発言が、ネット上を大騒ぎさせている。
 くわしいことは、堀井雄二のホームページや、柴尾英令くんの
ホームページなどを見てほしい。
 簡単な要約としては、週刊少年ジャンプ誌上で、ゲームの謎解
きが公開されてしまったことに対する、堀井くんの脱力である。
 
 クリエーターという職業は、本当にわが身を削って、作品を生
み出している。ユーミンにしても、サザンオールスターズの桑田
圭佑くんにしても、レコーディングが始まると、神経性の下痢に
苦しめられる。
 私ですら、ゲーム作りが佳境に入ってくると、神経性の下痢に、
痔を併発する。
 そんな苦しい思いをするクリエーターが、あえてホームページ
で叫んだ言葉だということだけは知ってほしい。叫ぶことの危険
を知らないはずがない。20数年マスコミ業界で生きてきたのだ。
 私も何度も堀井くんとおなじ目に会っている。本当にハドソン
との関係がよくなったのは、つい最近である。
 自宅を売って、ハドソンとの抗争を1冊の本にして出版しよう
としたことだってある。題名は『さよなら、桃太郎』である。
 私がずっとRPGの『桃太郎伝説』の新作を作らないのは、こ
のときのしこりがまた残っている。
 私に二度とRPGを作りたくないと思わせた。

 ネット上で、堀井くんの発言に対して、「発売を遅らせておい
て、何だ!」とか、「作家は作品のなかだけで語れ!」という人
たちは、もう一度考えてから発言してほしいと思う。脊髄反射で
物を言ってほしくない。
クリエーターが神経性下痢になるのとおなじレベルで言ってほ
しいと思う…と書くと、そんなのは消費者の勝手だというんだろ
うなあ。たまにはクリエーターの勝手だよって言ってみたいよ。

午前9時45分。新宿、東京三菱銀行。
う〜む。時間が無いなあ。
あと15分かあ。
振込みをして、10分。残り時間5分。
5分で、足の不自由な私が、伊勢丹デパートの角の銀行から駅
まで行って、キップを買うのは難しいなあ。
えっ? また何を企んでるんだって?
いえいえ、そんなめっそうもない。

午後10時。嫁と高野フルーツパーラーB2の喫茶店で、フル
ーツサンドに、ナッツティーというわけのわからない飲み物。
2日前のパーティと、昨日のヘビーな内容で、私と嫁はまだへ
ばっている。昔なら絶対風邪を引いたものだが、健康になったも
のだ。

午前10時30分。新宿駅東口。みどりの窓口へ。
えっ? いや。何。その。
来週から、土居(土居孝幸)ちゃんたちと九州旅行に行くもんで、
その何というか….え〜。
「次の午前11時発あずさ57号で、小淵沢まで、大人ふたり。
禁煙席。あっ、乗車券ともです!」

 ば、ばれたか! ってあたりまえだけど!
 こういうときは笑う。わっはっはっはっは!

 ちょこっと小旅行したくなっちまったんだよー。
 出版パーティと、桃太郎チームのラインナップ会議という重大
なイベントがすんだから、少し休みたかったんだよー。
…って言ってもけっきょく自宅から、電車のなかに仕事場を替
えただけなんだけどね。
 
あずさ57号は、八王子のお墓に行くときにもつかってる列車
なんだけど、違う場所をめざして乗ると、前に乗った列車と違う
列車に乗ったような気になるのはなぜなんだろう。

電車に乗って、まずコーヒーを飲んで、さっそくお仕事。
昨日出た、新作『桃太郎電鉄』の目玉イベントを仕様書形式で
まとめてみる。ふっふっふっふ。やっぱおもしろいぞ、バカらし
いぞ、むごいぞ! 楽しいぞ!
一気に疲れが吹っ飛ぶ!
クリエーターの栄養はやっぱりおもしろいアイデアが何よりだ。
これでいつでも新作『桃太郎電鉄』に着手してもいい状態にな
った。まだこれからなんだよ。正式にスタートするのは。
肝心かなめの部分が浮かばない場合、『桃太郎電鉄』はスター
トしないことになっているのだ。
 
だからこれから新作『桃太郎電鉄』の制作が始まるわけではな
い。もうひとつの『伊吹童子(仮)』のほうが先というのが有力で
ある。

電車は甲府駅を過ぎるころから、一気に白樺林が増えてくる。
思わず、♪白樺〜、青空〜と、ありきたりな千昌夫の歌を思い
出す。やっぱり日本人だなあ。

午後12時59分。小淵沢駅着。
駅
思ったより暖かい。ひさしぶりだなあ。 昔来たときは、1月2日だったんで寒かったなあ。 もう15〜16年前のことだ。 当時TVで話題になった「元気甲斐(げんきかい)」という駅弁 を買いに来た。 午後1時20分。タクシーに乗って、10分。対向車もほとん ど来ないような道を、さらに曲がって、淋しい林のなかに入って 行く。 何やら別荘みたいな家が一軒ある。 ここが全国の日本そばマニア垂涎の場所「翁(おきな)」である。 私も嫁もおそばが大好きなので、一度は来てみたいと思ってい た。でも休日には、1時間待たないといけないというエピソード がずっと行く気にさせてくれなかった。
店外見
   お店に入る。 店内のまんなかに、大きな暖炉がどすんとそびえている。 いかにも寒い地方のおそば屋さんである。 鮮烈なお水で打ってますよという意思表示をしているかのよう である。
店内
   もちろんきょうはほとんどお客さんがいない。 12月10日。平日。まさかこんな日に来るお客なんてほとん どいないはずだ。 それでも、7〜8人のお客さんがいた。 しかもどのお客さんもおそらく、日本そばマニアなのだろう。 きつい顔をして、もくもくと分析するように食べている。3人で 来ているのに、まったく会話しないのだ。 全国から剣豪が集まって、気を飛ばしあっているみたいで、滑 稽だ。 日本そばの美味しいお店というのは、だいたい1枚の量が少な い。ついめったに来ないのだからと、私と嫁のふたりで、ざるそ ば2枚、田舎そば2枚注文してしまう。 朝、新宿でサンドイッチを食べてきたばかりだったことを忘れ ていた。 食す。もっと冷たいと思っていたのだが、そうでもなかった。 麺のこしは、もちろんいい弾力している。 美味しい。 でも何かが足りない。わからない。 初めて食べた人は、間違いなく「絶品!」と叫ぶと思う。 嫁も首をかしげている。どうやらおなじ意見のようだ。 東京西荻窪に「鞍馬(くらま)」という日本そば屋がある。この 「鞍馬」のご主人は、この「翁」で修行した。 だから「翁」の味が、初めて味わう味覚ではなかった。 一度「鞍馬」で知ってしまってからの味になってしまったのだ。 若い人にしかわからないたとえだが、漫画『燃えるお兄さん』 を読んでから、初めて『ハイスクール奇面組』を読んだようなも のである。わかりづらい!
そば 田舎
   ざるそばも、ちょっと色がグレイがかっていて、もうちょっと 白っぽくあってほしいなと思った。 どう考えても、西荻窪「鞍馬」の味のほうが圧倒的に美味しい としかいいようがない。 だからといって、「翁」の味が悪いというわけではない。 十分美味しい。ただ「鞍馬」を知らない人がこの「翁」に来た ほうがいいということだけは言っておきたい。近所に住む人なら いいけど。 ただひとつ想像できることがある。 きょうは「翁」のご主人がいなかった。 「翁」ほどのお店になると、全国から修行に来る。だからこうい うお客さんの少ないときには、この見習さんが打ったおそばが出 てしまうことがある。  荻窪の有名な「H」という日本そば屋さんなどはこの典型であ る。まったく味が違う。きょうもちょっとそんな気がする。 無性に「鞍馬」のおそばが食べたくなった。 さくまにあデータ博士のあんくるクンが『さくまあきらの正体』 を読んで、この「鞍馬」の名前が載っているのに、日記に登場し たことがないということを指摘して来た。 ここ3年間ぐらいずっと行っていない。 以前の杉並区の家からは近かったんだけど、やっぱり原宿から 西荻窪は遠いからなあ。グルメ・バカ娘は吉祥寺の「よしむら」 のほうを行きたがってしまうので、つい行く機会を失ってしまっ ていた。 「よしむら」のおそばもいいけど、「鞍馬」のおそばもまた絶 品である。 日本そばだからあっというまに食べ終わってしまう。 午後1時45分に、さっき乗ったタクシーの運転手さんに来て もらうことにしておいたのは大正解であった。 お店を出たとたん、ものさしで計ったように、ぶろろろろろ… とタクシーが林の小枝を踏みながら、やって来た。 午後1時55分。再び小淵沢駅。 駅周辺を散策。恒例のお土産物屋さんを物色する。 『桃太郎電鉄』の物件に登場させられそうな食べ物を探す。あ んまりいいのが無いなあ。ミルクケーキというのがけっこう美味 しいんだけど、想像が付かないからダメだろうな。 スポンジケーキのような物を想像するだろうけど、実際は不二 家のミルキーをチューインガム状に伸ばしたような硬い板のよう な食べ物なのだ。北海道なんかでもよく売っている。 デブだった頃は、やっぱりこの板状の食べ物を、4〜5枚口の 中に押し込んで仕事をしては、翌日歯が痛くなって、歯医者に行 ったものだ。 そういう食べ物。グルメ・バカ娘も大好き! 午後2時17分。小海線快速ワンマンカーに乗る。 きょうのメイン・イベントである。 鉄道マニアのあいだでは、とてつもなく有名な小海(こうみ)線 である。海抜1345メートル。JR線でいちばん高い所に駅が ある野辺山駅を持つ、あの小海線である。
標高
   そんな有名な小海線になぜ私が乗っていなかったのか。 実はおなじみ極度の高所恐怖症だからである。 「そんな高い所を誰が行くかい!」 「私はスキーを一度だってやったことがないんだ。リフトがある から!」 「自慢じゃないが、富士山に登ったことはない。日本一高い山だ からだ!」  というくらい、私は高所恐怖症である。  しかし、あるとき、ふと気がついた。  この小海線。高い所を走るといっても、海抜で高い所を走るだ けで、峡谷の断崖絶壁を走るわけではないのではないか?という ことに気がついた。かなり遅いが…。  はたして、電車は高原をとことこ走るも、まるで平野を走って いるようである。むしろ低い所を走っているような気すらする。 たまに遠くに八ヶ岳とか高い山とかがそびえているので、よけい そう思う。物事何でも比較でしか、物を判断できないのだなあと 思う。  甲斐小泉駅、甲斐大泉駅と、別荘街を電車はとても快速とは思 えないような遅さで進んでいく。そうか、高所を走っているから、 これでも精一杯なんだな。  それにしてもこの小海線は、何で駅に停車する時間が長いん だ? 単線で電車がすれ違うから? 私もそう思っていた。いや、 全然電車なんてすれ違わない。まさか高い所を走ってるから、駅 で少し休んでからまた走るとか? それは私のお城の登り方だっ てば!  だから恐ろしいことに、私と嫁は佐久平(さくだいら)駅という ところをめざしているのだが、2時間近くかかるという。ええっ。 そんなに遠いの? 東京からのぞみ号に乗ったら、京都の手前ま で行けるじゃないかあ!  電車はたしかにおそいが、それより本当に停車時間が長い。毎 回駅のホームで記念撮影ができそうだ。この調子じゃ、2時間か かるのも無理ないなとあきらめて、ゲームのアイデア出しを始め る。
車窓
    電車は、佐久海ノ口、松原湖、海尻、海瀬と、やたら海という 文字が入った駅ばかり停まって行く。高原列車じゃなかったの か? 何でだ? あまりにも高い所だし、山があっても山梨県と いうぐらい、海が無いから、海にあこがれて付けたのかな?  あとでこのことを調べたら、「うみ」というのは、湖でも小さ な池でも古くは「うみ」と呼んだそうだ。たしかに川や池が多い 路線だった。  中込(なかごみ)駅。阪神ファンが喜びそうな駅で、2両編成だ った車輌が、連結で3両に増える。  もうこの辺に来ると、景色はほとんど単調で、八王子あたりと どこも変わらない。  午後4時11分。やっとのことで、佐久平駅に到着。佐久平駅 は、長野新幹線の佐久平駅である。ここで新幹線に乗り換える。  午後4時21分。あさま526号で東京に向かう。電車に乗り っぱなしである。そばを食ってる以外、ずっと電車に乗っている。  午後5時40分。東京駅着。  前から一度行ってみたいと思っていた、東京駅丸の内側の東京 ステーションホテルに行く。赤レンガのクラシックなホテルだ。  ここの2Fの「レストラン椿(つばき)」というところに入って みる。レストランに通じる階段には、シャンデリアが下がってい た。従業員の制服も見事にクリーム色で、明治村にまぎれこんだ みたいだ。  伊藤博文が同席していても気づかないだろう。浜口雄幸でも。 原敬でも。そんな場面無いってば! 何で東京駅で暗殺された人 ばかり出すんだ。いや、伊藤博文はピョンヤンだぞ。  おすすめディナーを頼んだところで、事件勃発!  グルメ・バカ娘の家庭教師さんから電話が入る。娘が家にいな いという。夕方嫁が家に電話したとき、グルメ・バカ娘はいたと いうではないか。まさか!  誘拐? いや。  眠ってしまったはずである。  あいつは一度寝ると、絶対起きない! 電話の音でも起きない 豪傑さんなのである。しかもいつもこうやって、グルメ・バカ娘 を外して食事をしようとすると、いやがらせのように事件を起こす。 仕方が無いので、嫁が家に帰ることに。 哀れ、私はひとり淋しく食事である。  これがまた美味しいだけに、よけいにわびしい。あのガキめ!  注文してしまったので、向かいの席に嫁が食べるはずだった料 理が並ぶ。さらにわびしい。  午後7時30分。いったん私も家に帰る。  午後8時。青山のインデックスさんに嫁と行く。  来月用の『さくま式東海道五十三次』の打ち合わせと、『さく ま式奥の細道』の打ち合わせ。 『さくま式東海道五十三次』は、来月になるとまた微妙にチュー ニングが変わったり、新キャラ、新イベント、土居(土居孝幸)ち ゃんの新しい絵が登場する。ランキングもさらにパワーアップす るぞ。  アクセス数のデータも見せてもらうが、いまいちどのくらいす ごいのかわからないが、とにかくすごいアクセス数だそうだ。  もうすぐ2万人とか、3万人とか言われても、新しい産業なの で、ピンと来ない。  まあ、全然アクセスがなくて、やばいんですよといわれるより はいい。  午後10時。家に帰る途中、「ルナ・アンジェロ」に寄って、 コーヒーを飲んでいく。ここのコーヒーは口当たりがよくて、大 好きなのだ。家の近所だし。ケーキも美味しい。きょうもつい、 アプリコットのプリンを食べてしまう。んまいっ!  なのに、今月いっぱいでお店を閉めるという。何で〜。  前もこのお店は「ビストロ・アンティーヴ」というお店のとき、 味はいいのに、畳んでしまった。またかいなっ。昨日中尾淳をつ れて来てしまった、呪いが発動してしまったか?  ここのお兄ちゃんたちも気のいい人ばかりなんだけどなあ。  よっぽど風水でも悪いんじゃないのかな? そのわりに、風水 のDr.コパさんが毎日昼ご飯食べに来てたのになあ。  ああ、また小旅行してしまったために、日記が長くなってしま った。いかん、いかん!
 


12月11日(土)


 午前10時。大阪から最古のさくまにあ・戸田圭祐が来る。
 午前11時30分。原宿のイタリア料理のお店「ラナリータ」
へ行く。初挑戦。ミラノランチを食べる。
 小海老のマカロニグラタンに、牛たんのやわらか煮。
 けっこういい味。

 午後1時。書庫で戸田圭祐と本の整理の打ち合わせ。
 午後1時30分。帰宅。『さくま式東海道五十三次』の仕様書
作り。ちょっと変わったイベントを加えるつもり。

 午後2時30分。TBSで、×××××サン(本人の希望によ
り削除)と待ち合わせ。このあいだの出版パーティでも、デジカ
メ係をやらせてしまって、何かといつもうちの手伝いをさせてし
まうので、ゆっくり話す機会が無いので、たまにはゆっくり話そ
うということで、会うことにした。
 土曜日のTBSは、1Fの喫茶店も、7Fの喫茶店もお休み。
やっぱりテレビ局も休日なんだな。
 唯一、開いていた4Fの喫茶店に行く。
 おお。アリtoキリギリスのふたりも来ていた。
 すごいなあ。今朝大阪のテレビ番組に生放送で出演していたの
を見ていただけに、もう東京に着いたの?
 放送が終わってうまいこと、のぞみ号にすぐ乗れたそうだ。
 アリtoキリギリスは別件の打ち合わせをしているようなので、
私たちは近くのテーブルでコーヒーを飲む。

 すると、×××××サン(本人の希望により削除)が「ちょっと
挨拶してきていいですか?」といって、近くのテーブルの人たちの
ところに行く。
 TBSアナウンサー・木村郁美さんだ。
 へ〜、知り合いなんだ…と思ったら、なんと×××××サン(本
人の希望により削除)とは中学校の同級生だそうだ。ものすごい奇
遇。
 よくある再会場面のように、木村郁美さんはびっくりしていた。

 午後3時。TBS『エキスプレス』のなかの1コーナー、サイ
コ・エキスプレスの撮影。アリtoキリギリス、吉野紗香ちゃん、
私の順に録画する。放送日がまだ未定で、14〜17日のあいだ
のどれかに1組ずつ出演することになっている。
 朝早いけど、出演日未定なので、録画するなりして見てね。

 午後4時。今度は『有限会社 桃太郎商店』の録音。
 いよいよ年末なので、きょうは3本取り。
 とくにアリtoキリギリスのふたりはお笑いコンビなので、年
末年始いつどこで急に仕事が入るかわからない状態なので、今の
うちに録音しておかないと、『有限会社 桃太郎商店』の録音が
できるかどうかわからなくなってしまう。
 この時期、芸能人がヒマなようじゃ、しょうがないんだけどね。
 ちなみにアリtoキリギリスは、『新春スターかくし芸大会』
に出演するそうだ。一歩一歩階段を上がってるなあ。

 しかし、さすがにみんなへばってる。
 いつもは出ないようなトチリが出てしまう。
 いつも間違えがほとんどない吉野紗香ちゃんですら「ペンネー
ム」を「ペンネーミ!」と言ってしまう。間違え方もかわいいけ
どね。

 それでも録音しなおすと、ちゃんと盛り上がった内容になるん
だから、さすがプロだ。

 午後7時30分。なんとか3本分取り終える。
 アリtoキリギリスのふたちも、吉野紗香ちゃんは、あたふた
と次の仕事にでかける。
 師走の芸能人たちは本当に大変だ。
 
 午後8時。私、嫁、戸田圭祐、×××××サン(本人の希望に
より削除)の4人は、赤坂の「津つ井」で食事。
 さすがに私はぐったりで、食欲が無い。
 しゃべりっぱなしで、口のなかが荒れて、舌がぷつぷつ痛い。
素人に3本取りは無理だったかな。昔なら何ともなかった…って
そりゃ20歳代なら、何でもOKだ。もう若くない。

 それでもすきやき弁当を食べているうちに元気が出てくる。
 戸田圭祐は念願のステーキ丼を食べて、にこにこしている。
「う〜ん。やわらかい!」
 あいかわらず、やわらかいが基準の第一のようだ。
 食後、TBSの隣のお店でコーヒーを飲む。

 午後10時。帰宅。ベッドに倒れる。
 へばったあ!  
 


12月12日(日)


 まだ体力的にへろへろな日曜日。
 午前11時。最古のさくまにあ(ずっとこの呼称かい?)・戸田
圭祐が来る。戸田圭祐はすでに朝から書庫の整理中。
 
 午前11時30分。渋谷のカメラのさくらやに行き、DVDの
コードを受け取りに行く。先日私がぶち切ってしまったやつだ。
 ついでにVAIOのメモリー増設を頼むが、さくらやではやっ
ていないという。VAIOを預かって、メーカーから取り寄せな
らできると、ちょっと大変そう。
本来、来週からの九州旅行の1日目の京都で、タニヤマ無線の
鈴木千華雄くんに頼もうと思っていたのだが、1日だけでしかも
滞在時間が少ないので、もし鈴木千華雄くんがいないと困る。
 ところが…。

 午後12時。HMVの上の7F・Tゾーンに行ったら、10分
で取り付けられるというではないか! 戸田圭祐とふたりで拍子
抜け。

 待ってるあいだ、郷土料理のお店「とひ家」で、きまぐれ膳。
小鉢ばっかのヘルシー料理。温泉たまごにお漬物みたいなのが、
3〜4品。
戸田圭祐はまだ若いので、イカ天丼。
戸田圭祐、食べてから、つい博多の美味しいイカの天ぷらが乗
ってると想像していたようで、違う味だったためにショックを受
ける。
 博多のイカは、ものぐさな土居(土居孝幸)ちゃんが食べたがる
ほどの味だぞ。ほかで食べられるわけがないだろうに!

 午後1時30分。VAIOを受け取って、マ・メゾンでカフェ
オレを飲む。ケーキも食べてしまう。戸田圭祐、モンブラン。私、
エクレア。
 食後、東急百貨店本店で、嫁用の「なだ万」のお弁当を買う。
いつもの渋谷周遊コースだ。

 そういえば、VAIOのメモリーって、何メガ増設してもらっ
たんだろ? 
「増設できますか?」
「はい、出来ます」
 で、終わってしまったのだ。
 だいたい買ったときに、何メガ入っていたのかもしれないけど
ね。増設費用3万円だった。わかる人にはわかるだろう。
 しかも買って来て、つかってみたけど、あいかわらず文字の変
換は遅い。ちっとも増設の効果が無い。
 メモリー増設とは違う原因かな?
 わっかりませんのー!

 午後2時。帰宅。戸田圭祐とゲーム部屋の整理。戸田圭祐はす
っかりガラガラと台車を動かす達人になっている。
日本通運に勤めているからやっぱり得意なんだとみんながいうけ
ど、戸田圭祐は内勤でしかも、ほとんど経理みたいな仕事をやっ
ているので、本来台車の運転がうまい必要はない。
 単に戸田圭祐が台車の運転が上手いだけである。それとテプラ
も上手い。物事の説明はとっても下手。

 午後6時。大奮闘の戸田圭祐のおかげで、ほぼ書庫の整理完了。
ついに借りていた書庫を解約できる。
 思えば何度も戸田圭祐に来てもらって、ガレージで無料セール
やったりいろいろあったもんだ。
 がら〜んとした、マンションを見て、戸田圭祐も感慨深げであ
った。彼は書庫に少なくとも10回以上は宿泊しているからな。
 
 午後6時30分。新宿小田急14F「なだ万賓館(なだまん・ひ
んかん)」に家族3人+戸田圭祐で行く。
戸田圭祐
 ここは値段が安いわりに、豪華な料理が出る。  14Fと高い場所にあるので、私があまり行きたがらないだけ である。  シェフお勧めの料理の最後に必ず出る、耳を切った白い食パン の上に乗って出てくるお肉がとっても美味しい。  やわらかい物評論家の戸田圭祐も、ここのやわらかいお肉にご 満悦。  戸田圭祐がやわらかい物ならどこまで好きなのか?とみんなで いじめる。太った女性の出っぱったお腹でも柔らかければいいの かと詰め寄って、案の定絶句する戸田圭祐であった。  午後7時30分。新宿駅みどりの窓口で帰りの新幹線のキップ を買った戸田圭祐は、足早に去っていく。けっこう東京駅まで時 間的に余裕があるはずなのだが、心配性の戸田圭祐くんは今から 小走りで構内を走らないといけないようだ。ご苦労なこった。  午後8時。帰宅。体力的にも、もうほとんどパワーが残ってい ない状態なので、きょうはゆっくりお風呂に入って寝ようと思う。  明後日から、九州旅行だ。  業務連絡。土居(土居孝幸)ちゃんに宮路一昭くん、キップ買っ たから明日の会議にお金持って来てねー! 領収書ももらってお いたよー。これじゃ取材旅行じゃなくて、遠足だ!
 


12月13日(月)


 TBSテレビ『エキスプレス』の出演日は、15〜17日に決
定。アリtoキリギリス、吉野紗香ちゃん、私の順番は未定。見
てのお楽しみ。午前7時20分前後の放映予定。早起きして見よ
う!

 午前11時20分。千駄ヶ谷駅前「ユーハイム」。
 駅の前で、東京体育館の前という最高の立地に立つお店だけあ
って、店員の横柄なこと、落ち目になったタレント並み!
 
 ランチが始まる直前だったので、「午前11時30分になった
ら、ランチメニューを持って来て」といって、コーヒーを飲んで
いたのだが、もちろん時間になっても持ってこない。
 仕方ないので、メニューを再要求する。
 メニューは持ってきた。しかしそのメニューには「日替わりメ
ニュー」としか書かれていない。その日替わりメニューの中身が
何なのかをこっちは知りたいのだ。
 あげくに今度はすばやくやって来て、「お決まりになりました
か?」だとさ。
「やっぱりやめました」というと「ハイ」と言って、そのまま何
事もなかったように去っていく。商売する気ないんかい!?

 腹が立つやら、腹がすくやらで、やっぱりほかのお店に食べに
行くことに。はしごするなよ!

 午前11時40分。千駄ヶ谷「レピッシェ」。
 本格的なイタリア料理店っぽい。かぼちゃのポタージュ、子羊
のローストといった本格的な料理なので、やたら時間がかかって
しまう。私は本当は時間が無いのだ。
 さっきのお店で軽くすませようと思ってたのに!

 午後1時。飯田橋駅の歩道橋で、ビー・アール・サーカス出版
の森沢明夫くんと、恒例のばったり病ののち、東海銀行へ。
 このわざわざ東海銀行というのが変な話で、某有名出版社が、
わずか3万円とちょっとを間違えて、うちの口座にお金を振り込
んでしまったという。
 そのお金を返却してほしいというのだ。
 間違えたのは、そっちだろ!

 しかもその口座というのが、15〜6年前にたたんだ会社なの
で、通帳も捨ててしまったし、当時の住所なんぞもすっかり忘れ
ている。
 というわけで、私が通帳を紛失しましたという申請書を出して、
その通帳から、3万いくらかを引き出して、その出版社に振り込
んで(手数料も取られるんだぜっ!)、最後にまたその通帳を解約
する。
 こういう面倒な手続きをするためだけに、私はこうして時間を
割いてやってきているのだ。アホらしい!
 私も東海銀行も迷惑。迷惑かけた出版社は何にも傷まない。変
な三角構図だよなあ。

 と思ったら、残り物には福がある?
 15〜6年間眠っていた通帳に、なんと莫大な利子がついてい
たのである。ちょっとしたご飯1回分くらいは利子がついてたり
してと思っていたのだが、いやはやとんでもない金額。
 すぎやまこういち先生ご夫妻からお正月にお誘いされたお店に、
家族3人で行けるようになってしまうほどの金額である。これは
しめしめ! 何たってお断りしようと思っていたお店のお値段分
だ。金額を言うとみんなが卒倒してしまうので内緒ね。安いコン
ピュータ買えるぞっ!!

 しかし15〜6年の歳月ってすごいなあ。しかもバブル絶頂期
にほったらかしにした通帳だっただけに、私でもびっくりするよ
うな金額になっていた。
 本当にバブル時代ってすごかったんだなあと感心する。

 しかしこっちはこの手続きのために、1時間以上取らされて、
あっちの紙に住所と名前を書いて、判子を押して、こっちの紙に
住所と、あっ、古い住所を書かないといけないので間違えた。書
き直しってなことを繰り返されて、疲れてしまった。
 それにしても何か書類に名前書き込んでいると、悪いことをし
て書いているような気になってくるのは何故なんだ?

 午後2時30分。帰宅。午後2時集合の会議に大幅に遅れてし
まう。すんまそん!
 きょうは『さくま式人生ゲーム2(仮)』の会議。
 メンバーは、タカラの高田直幸さん、土居(土居孝幸)ちゃん、
宮路一昭くん、VR−1の荒堀明弘くん、放送作家兼デブの福本岳
史くん。 

 ゲームのほうは、いよいよキャラ・デザインのほうに移ってい
る。ここで『2コマ漫画劇場』でおなじみの吉良孝二くんにビッ
グな朗報! あのメカッパーのキャラを『さくま式人生ゲーム
2(仮)』のなかでつかおうという話が持ち上がった。もしOKなら、
メールちょうだい! ちょっとデザインに手が加わってしまうけ
どいいかな? いいよねえ?

 会議がどんどんこまかい部分に入ってきている。
 私と福本岳史くんのメッセージ原稿が遅れているので、けっき
ょくこのお正月に『さくま式人生ゲーム2(仮)』のメッセージを集
中的にやらないといけないことになりそうである。
 ってことは、新年早々、お正月から福ちゃんの顔を京都で見て
しまいそうである。まあ、鏡餅だと思えば、めでたい顔だ! わ
っはっはっは。
 
 午後5時。土居(土居孝幸)ちゃんと『さくま式東海道五十三
次』のイラストの打ち合わせ。
 明日からの旅行中に土居(土居孝幸)ちゃんが絵を描いて、イン
デックスさんに送るという話を誰もが信用しない。はたしてどう
なるか楽しみ。

 午後7時。家族3人+福本岳史くんで、六本木の「香妃園(こう
ひいえん)」に行く。おなじみ鶏そばの美味しいお店。
 きょうは大食漢の福ちゃんがいるので、ついつい品数多く頼み
すぎて、家族みんなお腹が苦しくなってしまった。

 この食事中に、テレコム・サウンズの田中さんから電話が入っ
て、年末に『有限会社 桃太郎商店』の特番が決定したという報
告が入る。うれしいねえ! 年末で身体はつらいところだけど、
やっぱり自分が参加している番組が特番組まれるなんていうのは、
最高の栄誉だ。
 ゲーム以外のお仕事だけに、なおさらうれしい。もちろんアリ
toキリギリス、吉野紗香ちゃんの功績のほうが大きいんだけどね。

 食後、「アフタヌーンティー」でお茶を飲む。まだ福ちゃんは
チョコレートバナナムースにバナナティーという身体を張ったギ
ャグをやっている。えらいもんだ!

 午後9時30分。帰宅。
 明日からの九州旅行の支度を始める。
 また戸田圭祐のホームページで、旅行実況中継を始めると思う
から、なかむら治彦くんのリンクから飛んでね。なかむらクンの
ホームページもちゃんと読んで、書き込みするんだよ!
 今回は、熊本、鹿児島情報がほしい!
 
 それではまた旅に出る。
 今度こそ短い日記ですみますように!
 


12月14日(火)


 きょうから九州旅行。
 でも朝7時からお仕事。iモードゲーム『さくま式東海道五十
三次』の1月分の追加イベント部分の仕様を書く。
 12月やって最近ちょっとお休みしている人も、1月になった
らまたやってね! 読み込み回数も減らしたし、微妙にチューニ
ングも変えてるし、新キャラも登場する。
 
 午前11時30分。銀座「資生堂パーラー」で、嫁と蔵人総合
研究所の赤根豊くんと食事。ビーフストロガノフ。

 午後1時。築地のハドソン。きょうは新体制になって初めての
桃太郎チームの顔合わせ会。
 中本伸一副社長、大里幸雄専務、三上寛幸さん、梶野竜太郎く
ん、國政修さん、土居(土居孝幸)ちゃん、宮路一昭くん、赤根豊
くん、放送作家の福本岳史くん、嫁。

 来年以降の桃太郎シリーズの新作の段取りとか、新ハードをみ
んなで見たり(名前書くわけにいかないんでゴメン!)、チームワ
ーク作りを話したりと、建設的な会話に終始する。

 引き続き、赤根豊くんと、ハドソンの経理部中島外土彦さんを
交えて、契約書のこまかい話。
 
 午後3時。会議終了。
 土居(土居孝幸)ちゃん、宮路一昭くん、私の3人は東京駅へ。
 名残惜しそうな福ちゃんに向かって、私は「私たちの旅行中、
500億円のあの物件買って、レポート書いておいてくれる?」
 この会話に「『桃太郎電鉄V』の」という言葉が入らないと、
この会話を聞いた人は、こいつらクレージーだと思うだろうなあ。
こともなげに、「500億円の物件買っておいて!」だからねえ。
まさかゲームのなかの話と思わないもんなあ。

 午後3時56分。のぞみ500系で京都へ。
 さっそく桃太郎チーム名物・新幹線内ブレーンストーミング開
始。キングボンビー級の新キャラを煮詰めたり、来年予定されて
いるゲームのこまかい部分のアイデアを出す。
 新幹線に乗っているときの桃太郎チームの会話を聞けば、来年
発売のゲーム内容はボロばれである。

 順調にアイデアが出る。
 マイペースな土居(土居孝幸)ちゃんも最近積極的。

 午後6時10分。京都駅着。
 駅にある「手塚治虫ワールド」を覗いて行く。
 みんな手塚世代だ。
 私はついまたTシャツを買ってしまう。
あとむ
    午後7時。グルメ・バカ娘が毎年グルメ・ランキング1位に選 出する、割烹料理のお店「M」に行く。  もちろん土居(土居孝幸)ちゃん、宮路一昭くんの絶大なるリク エストでこのお店である。  いつもこの日記では美味しくなったお店の名前をイニシャルで 書くが、このお店だけは、教えたくないし、お店のほうも絶対住 所や電話番号を雑誌に載せないので、「M」なのである。  きょうも芸者さんがふたり来ていた。  芸者さんを連れて来るようなお金持ちが来るお店である。  私は芸者さんではなく、デブ者さんをふたり連れて来てしまっ た。
どい みやじ
    きょうはフグづくし。フグをたらフグ!  宮路一昭くんが笑う。  土居(土居孝幸)ちゃんも笑う。
うに かに ふぐ にく さし たけのこ
    自家製の千枚漬けの美味しいこと。こんなさっぱりした千枚漬 けを食べたのは初めてだ。  松葉カニを、すだちで食べる。  すだちっていうのは、何にかけても、美味しいねえ。  思わず土居(土居孝幸)ちゃんが、九州に行かないで、ずっとこ のまま京都にいようかと言い出す。  美味しいものを食べているときに言い出すものだから、私も宮 路一昭くんも大いにぐらつく。    けっきょく明日からの九州旅行は、前回の戸田圭祐とは打って 変わって、のんびりだらだらおぢさん旅行になりそうだ。  スペースワールドに行って、久留米に行って、田主丸行って、 河童伝説をさぐる旅をあっさり断念。  京都でのんびり起きて、博多に行って、イカ食べて終わりにし ようと、とってもだらだら。その代わり、一生懸命ゲームのアイ デアを出そうということになった。  最後は「M」の名物である、はものスープで出汁をとったカレ ーを食べる。宮路一昭くんと土居(土居孝幸)ちゃんはさらに、ハ ヤシライスまでいただいて「あ〜、お腹いっぱいで苦しい!」。 そりゃ当たり前だ!  ここで嫁に伝言。明日「M」のお父さんが、東京の我が家に何 やら美味しい物を郵送してくれるそうだ。中身を教えてもらえな かったようだけど、16日には到着するそうなのでお楽しみに!  午後10時。「M」を出て、3人でぶらぶら寺町通りを北上す る。京都のお店はどこも早く閉まってしまうので、とうとうお茶 を飲める喫茶店を探すことができなかった。  午後10時30分。京都のマンションに到着。  私はきょう出たゲームのアイデアを整理したのち、iモードゲ ーム『さくま式奥の細道』の仕様書作り。    明日からの旅は、いつものハプニングや時間ぎりぎりのピンチ は無しで粛々と進みそうである…なんてこと言ってると、またと んでもない目に会うからなあ。  旅の平穏を祈りながら寝よう!
 


12月15日(水)


 午前7時。京都のマンションで起床。
 午前8時30分。土居ちゃん(土居孝幸)、宮路一昭くんが来る。

 さあ、これから博多に向かうぜいっ!…と意気込むおぢサンたち
では無い!

 午前8時16分ののぞみ1号で、博多に向かう予定のおぢサンた
ち3人(さくま、土居、宮路)は、ただいま京都ホテルの6F「入
舟(いりふね)」にて、朝粥定食をのんびり食事中。
 ダメだこりゃ。
ふたり 入舟
    こんな調子で、けっきょくこの3人が、京都を発ったのは、2時 間半後の午前11時12分の新幹線のぞみ7号であった。  この3人は京都ホテルのあとも、京都駅ポルタ地下街のイノダ・ コーヒで、しっかりコーヒーを飲んでいる。  第1回九州旅行の戸田圭祐との時刻表トリックのような旅と、ま るで正反対ののんびり旅行だ。  それでも新幹線のなかは、移動会議室。  ものぐさなおぢサンたちも、仕事になると、目の色が変わる。 『伊吹童子(仮)』のアイデア出しが絶好調で、ついに敵キャラの パラメータの話にまで及ぶ。  ここまで出来上がったら、あとは仕様書を書き始めるだけである。  広島あたりで、『伊吹童子(仮)』の会議は終了して、引き続き 新作『桃太郎電鉄』の会議。  こっちも目玉となるゲスト・キャラが決まっているだけに、会議 はいいテンポで進む。  さすがにどんな内容になったかをここに書くわけにはいかないの で、ひとつだけボツ作品を公開する。  土居ちゃん(土居孝幸)が考えてボツになった、スリの銀次の変 身ネタ! 「サイコロですか〜〜〜?」 「サイコロで〜〜〜す!」  く、くだらない!  宗教関係のネタはさすがにギャグにしてはいけないので、ボツ! それにしてもくだらない。    午後1時53分。博多駅着。  午後2時20分。ハイアット・リージェンシー・ホテルに入る。  ここは前回の九州旅行のときに、プロスペックの江口貴博くんに 教えてもらったホテルだ。駅に近くて、豪華なわりに、値段が安い。  午後3時。「博多町家」ふるさと館に行く。
ふるさと館 ふるさと館
    のんびり屋のおじサンたちも、少しは取材もする。  ここは博多の歴史がわかってなかなかよい。受け付けのお姉さん たちも美人だ。    私が間違って「博多どんたく」のことを認識していたこともよく わかったし、「博多にわか」についても、深く知ることが出来た。  土居ちゃん(土居孝幸)とも、この展示物をグラフィックにする にはどう描けばいいか、その場で検討できるので、やっぱりスタッ フといっしょに旅行して、『桃太郎電鉄』シリーズの題材となる場 所をおなじ目で見ることはいいことだなと思う。  って書くと、放送作家の福本岳史くんの悔しがる顔が目浮かぶ。 うふふふ。
やまがさ やまがさ
    引き続き、櫛田(くしだ)神社へ。  土居ちゃん(土居孝幸)がお参りする。  やたらジャラジャラ〜とものすごい音を立てて、大量のお金を投 げ込む。あれ? 土居ちゃん(土居孝幸)って、そんなに信心深か かったかなあ?  大量投げ込みの理由が、いかにも土居ちゃんらしくておかしい!  旅に出ると、大きなお札をつかう機会が多い。  ↓  小銭がたまる。  ↓  財布がふくらむ。  ↓  その小銭を全部放り込むと、財布が軽くなっていい。  それだけ。  やっぱり土居ちゃん(土居孝幸)「無理はしない」男なだけだっ た!  でもいい考え方だなあ。  今回の旅から真似てみよう。  ジャラジャラジャラ〜〜〜!  午後3時30分。櫛田神社内の「博多歴史館」に行く。  古ぼけた感じの博物館だ。  おっ。こんなところに吉野紗香ちゃんがいたっ!
吉野紗香ちゃん
    ここに展示されている豊臣秀吉の像は、美しいなあ。秀吉マニア としては、ほしいくらいだ。買ったら、80万円以上はするかな。 そういう目で歴史の陳列品を見てはいけないな。フィギュアじゃな いんだから。    オッペケペー節の川上音次郎って人は、博多の人だったんだなあ。 ちょっとチェックしておかないといけない人物だ。『桃太郎電鉄』 シリーズは名産品をクローズアップさせて来たが、そろそろ地方の その土地の人物を発掘して、再評価されるように促すことも必要な 気がしてきた。  ここで宮路一昭くんと、土居ちゃんが「お腹が減った」と言い出 す。早い。  ふたりとも朝粥定食思いきり食べていたのに!  私は減量中なので、押さえ気味なのだが、このふたりは体重制限 をしようという気がまったない。  とくに宮路一昭くんは、桃太郎チーム内3年連続体重前年比ナン バーワンに輝いている男だ。今や元アイドル歌手の片鱗すらうかが えない。  なんとかふたりに、あと1時間食事を我慢させようとしたのだが、 めざとく土居ちゃんが「プリンパン」というのぼりを見つけて「さ くまサン、これは取材しないと!と言い出す。  見るからにチェーン店っぽいお店の品物だから、とても『桃太郎 電鉄』の物件に入れるわけにはいかない。  ベーコンライスバーガーを物件に入れられないようなものだ。  博多でだけ大流行なら考えもするが。  けっきょくさっさと土居ちゃんが買ってしまって私と宮路一昭く んに配るので、食べる。
ぷりん
    パンのなかにちょっと乾き気味のプリンが入っている。  けっこういける味だ。  おじサンたちは、甘い物が好き。だからデブッ!  午後4時30分。キャナルシティのグランド・ハイアット・ホテ ル1Fの喫茶で『伊吹童子(仮)』のエンディングの部分を煮詰め る。本当にここまで話は進んでしまった。  あとはもう実際に作り始めるだけだ。  調子がいいものだから、ふたりの餓鬼(土居ちゃん、宮路くん) がまた「お腹減った!」と言い出す。  午後4時30分。仕方ないので、イカ料理のお店「河太郎」に予 約の電話を入れる。電話しているとき、なぜか宮路一昭くんがドキ ドキしている。  何でだろうと思っていたのだが、予約がOKと聞いてから、ほっ と胸をなでおろしている。  理由を聞いて、なるほどと思ったが、おかげで2年前の話をまた みんなに話さないといけなくなってしまった。日記が長くなる!  2年前の2月。桃太郎チーム・スタッフ総勢10人で、九州旅行 に向かった。詳しくは1998年2月24日の日記を参照してくだ さい。  このときも、この「河太郎」に行った。  私の「河太郎」大好き病は、相当なもので、毎年必ず1回は行っ ている。この数年だと年間2〜3回のペースに上昇している。その くらい大好き。  この大好きなイカ料理なのだが、毎回お店の人に「イカが不漁な 場合は、イカをお出しすることができません。ご了承ください!」 と言われて続けていたのだ。  しかし、この20年というもの、そんな目に会ったことがない。 と思っていたのだが、その時のメンバーにあの貧乏神のモデルであ る、榎本もうすぐ46歳がいた…。  新幹線で博多に近づくにつれて、みんなで「きょうはえのサンい るから、イカがダメだったりして〜!」というギャグを飛ばしてい たのだが、そのダメになった。 「…………………………!」  みんながお店で凍り付いた。  話は元に戻る。  宮路一昭くんは、きょうこのお店でイカが不漁で出ないというこ とになると、あのときの貧乏神は、榎本45歳ではなく、宮路一昭 くんになってしまうのだというではないか。  たしかにあのときのメンバーに宮路一昭くんはいた。  そうか。2連続不漁のときいたのは、宮路一昭くんしかいないっ てことか。ものすごい心配性だなあ。  というわけで、宮路一昭くんは自分が貧乏神という評価を下され てしまうのではないかと、ドキドキしていたのであった。  何だ、そういうことだったのか。  土居ちゃん(土居孝幸)はそんな宮路一昭くんの心配におかまい なしで「さあ、行こう、腹減った」と、さっさと「河太郎」に向か う。しかも道を間違えてソープ街のほうに向かって行こうとする。 もう土居ちゃん(土居孝幸)は何度も「河太郎」に来ているのに。     午後5時。「河太郎」。  さすがにまだお店にはほとんどお客さんがいない。  生け簀の前の席に座って、イカ料理を注文する。  担当してくれた仲居さんが、この前に来たとき、プロスペックの 江口貴博くんが帰り際に挨拶していた人ではないかと思って、聞い てみると、やっぱりあのときの、花絵さんであった。
はなえ
   「ああ、貴(たか)ちゃんね!」  貴ちゃんと、呼ばれているのを知って、みんな大笑い!  この花江さんのひとことで、旅行中、江口貴博くんことが話題に 出ると、「貴ちゃん」「貴ちゃん」とすっかり、3人とも、江口貴 博くんのことを、貴ちゃんと呼ぶようになってしまった。  これはたぶん直らないな。ははは。  さて、あれだけイカがあるかどうか心配していた宮路一昭くん、 榎本45歳のせいで、ここの名物のイカの天ぷらを食べるのは、き ょうが初めてということになる。  しかし、出て来たイカをひとくち食べたとたん、もうすっかりド キドキしていたことも忘れて、満面の笑み。  横で、土居ちゃん(土居孝幸)もにこにこ。  ずっとここでイカの天ぷらを食べることができるように、いいゲ ームを作ろうと言い合っている。君たちはイカのためにゲームを作 っているのか。お客さんのためではないのか!  いちばん回数多くイカの天ぷらを食べている私が言っても、あま り説得力が無い。
いか いか
    私はきょうは、イカの天ぷらを控えめな量にして、前回戸田圭祐 と来たとき、食べなかったイカ丼を注文する。  これがうまいんだ、またっ!  クリスタル色の透明なイカに、ごまだれがかかっていて、白いご 飯のまんなかにうずらの生卵がひとつぽとんと乗っている。これに きざみ海苔がたっぷり。  かきまわして食べると、う〜、うほほほほほっ。  うれしくなって、ほっぺたが痛くなってしまうほどだ。  土居ちゃん(土居孝幸)と、宮路一昭くんにも、このイカ丼をお 裾分け。2人とも「これは美味しい!」とびっくり。
いか いか
    午後6時30分。あっとうまにイカ料理をたいらげ、イカ丼も食 べて、あらの煮付けも食べて、「あ〜〜〜、うまかったあ! 貴ち ゃん、貴ちゃん!」と言いながら、3人は那珂川べりを歩く。  屋台が準備を終わって、営業を開始し始めたところだ。  土居ちゃん(土居孝幸)と、宮路一昭くんは、このあとこの屋台 にラーメンを食べに行く相談をしている。 「君たち、まだ食べるんかいっ!」  午後7時。博多東急ホテルの1Fの喫茶店「カフェ・リビエール」 でコーヒーを飲む。  ここで、明日の熊本のホテルを予約する。  私が電話する。  1件目、満員でダメ!  2件目、ここも満員でダメ!  おいおい! このあいだも私が熊本のホテルを予約すると満員だ ったぞ! またあのときの再現かいっ! もうイヤだぞ。宿が決ま らないまま見切り発車するのは!  3件目。九州出身の宮路一昭くんに電話してもらったら、あっさ りOKが出たりするんじゃないかと、宮路一昭くんに電話してもら ったら、あっさりOK!  それじゃ私の立場は一体何なのよ! 腹立つなあ!  くやしいし、土居ちゃん(土居孝幸)と宮路一昭くんは本当にこ れから屋台ラーメンを食べに行くというし、私は日記を書きたいの で、このホテルで2人とは別れて、私だけハイアット・リージェン シーに向かう。  午後8時。ハイアット・リージェンシー・ホテル。  さっそくVAIOで、日記を書き始める。  早く書いておかないと、あとでたまる一方になって大変なことに なる。おや。VAIOが固まっちまいやがった。コンピュータはこれ があるから面倒だなあ。  再起動、再起動。再起動すると、正しく動作しなかったでしょ? だの、コンピュータが文句を言ってくるのが、すかんよなあ。文句 言ってくる前に、自分の非を詫びてから言えよな! 「このたびはこちらの不手際で、お客様に無理やり再起動をさせて もうしわけございませんでした!」とでも言え!    おんや…? 画面が出て来ないぞ。  真っ暗な画面の左上に、ぽつんと何か英語が書いてあるぞ。 「Operating system not foud」?  何だ? 宇多田ヒカルの新曲のタイトルか? 「Addicted to you」だろ、それは! 全然違う。  リターンキーを押す。 Operating system not foud Operating system not foud Operating system not foud  おいおい、サンプリングするなよな!    怒ったぞ、こういうときはまた再起動だ! えいっ!  ホワ〜〜〜ン! VAIO…。  よしよし。 VAIOね。 SONY…。  そりゃわかってる。その次は、青い空のウインドウズ98とか絵 が出ればいいんだよな。 Operating system not foud  おまえまだ私に逆らう気か!  がし、がし、がしっ! あっちこっちのキーを叩いてやる。 Operating system not foud Operating system not foud Operating system not foud Operating system not foud Operating system not foud Operating system not foud Operating system not foud Operating system not foud Operating system not foud  この文字が増えるだけだ!  「ゴチになる会」になる会の、「○○○○サンはいい人だ!」じ ゃねーだよー!  が〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!  ひょっとして、これって完全に壊れた?  こういうときは、柴尾英令くんだ。  柴尾英令くんの携帯に電話。出ないなあ。また飲み歩いているの かなあ。  最古のさくまにあ・戸田圭祐に電話する。  戸田圭祐が、自分の掲示板に私のVAIOが壊れた話を書いて、この 件についてわかる人を募集したら、なんと柴尾英令くんから相当 やばい状況だという書き込みがあったと、戸田圭祐から連絡が入る。  宮路一昭くんを呼ぶ。本当に土居ちゃん(土居孝幸)と宮路一昭 くんは、ラーメンを食べに行ったそうだ。しかも屋台ラーメンでは なく、元祖長浜ラーメンまで行ったという。それって、港のほうじ ゃないか! そこまで行くか!  土居ちゃん(土居孝幸)は、ホテルの部屋で、来月分の『さくま 式東海道五十三次』のイラストを描いているそうだ。  宮路一昭くんの友だちで、コンピュータに強い、甲斐さんに電話 してもらう。やっぱり相当やばい状況らしい。  いちかばちかの方法を教えてもらって、宮路一昭くんがキーを叩 くも、復旧せず。    宮路一昭くんが自室に戻ってから、しばらく呆然とする。  日記が書けない…。  インデックスさんに、土居ちゃん(土居孝幸)が健気にもホテル の部屋でイラストを描いていることを知らせることもできない。  私の日記を楽しみに読んでいる人に、このあと午前1時に、宮路 一昭くんがひとりでまたラーメンを食いに行ったことを教えてあげ ることもできないっ! よく食うなあ、宮路一昭くん!  私のVAIOは一体どうなるの?  ただのがらくたになってしまうの?   これからの旅先にただのがらくたを持って歩かないといけない の? 教えて神様、私のどこがいけないの? 榎本45歳も連れて 来ていないのに!  がっくり来たので、マッサージを頼んで寝る!  ひゅうううううんんんん…。私の脳内コンピュータも終了。  くそっ。VAIOのやつめ!
 


12月16日(木)


 午前6時30分。起床。
 起きると同時に、もう一度VAIOを起動させる。

Operating system not foud
Operating system not foud
Operating system not foud
Operating system not foud
Operating system not foud
Operating system not foud
Operating system not foud…。

 やっぱりダメか。
 快晴の空とうらはらに私の心はどんより、グレーだ!

 そういえば、きょうは『桃太郎電鉄V』の発売日!
 九州から「きょうは発売日だよー! みんな買ってねー!」と、
配信しようと思っていたのに、VAIOが壊れたせいで、何もできない。
 お腹が減ったので、無理やり土居ちゃん(土居孝幸)と、宮路一
昭くんを起こす。

 午後7時30分。ハイアット・リージェンシー・ホテルの1Fで
バイキングの朝食を食べる。
 ここのバイキングは、パンの種類が豊富で、料理も美味しい!
 ホテルのバイキングというと、不味いものという先入観がある私
はびっくりである。今後の博多はこのホテルにしようと決意させる
ほどの美味しさである。

 朝食を取りながら、土居ちゃん(土居孝幸)が描いた『さくま式
東海道五十三次』のイラストをチェックする。1枚だけ描き直しを
要求する。
 やっぱり土居ちゃん(土居孝幸)の絵は、和風の題材が似合うな
あ。
 
 2人ともVAIOの心配をしてくれるのだが、どうにもならない。
 それより今後の日程を、VAIOでインターネットして、決めて行こ
うと思っていただけに、大変である。
 列車の時刻表ですら、インターネットで調べているので、不自由
である。
 昨日も、調べる予定だった時刻表を、戸田圭祐に電話して聞く。
「よかとこBY」のホームページも見ることができなーーーい。
 これじゃ教科書忘れて来た生徒さんだな。
 それにしてもVAIOを失って初めて、こんなにもVAIOに依存し
ている自分にびっくらこいた!
 意外に私もすっかり、モバイルボーイじゃん!

 午後8時30分。博多駅みどりの窓口。
 熊本までの特急のチケットを頼むが、指定席が空いていないとい
う。仕方ないので、グリーン車にする。それにしても、この窓口の
駅員の応対の悪さは相当なものだ。
 デジカメで、応対の悪いやつの顔を写真に撮って、ギャラリー作
りたいよ、ほんと。肖像権があるからやらないけど、裁判に負けて
もいいから、みんなに応対の悪さを知らしめてやりたくなるときが
ある。きょうもちょっとね。

 午後9時。発車まであと15分だというのに、博多駅のお土産広
場のシャッターが開くのを待つ!
 私の日記の熱狂的なファンなら、もう気づいていると思うけど、
焼き立ての「松露(しょうろ)饅頭」を買うために待っているのだ。
 博多に来たら、イカ食べて、松露饅頭を食べないと、私の博多は
成立しない!
松露
    開店と同時に行って、すばやく焼き立ての松露饅頭を買う。列車 の発車時間まであと10分を切る。 デブ2のふたりも「おいしい!  おいしい!」と喜んびながら走っている。  私の旅行用のキャスターは、今回ずっと土居ちゃん(土居孝幸) が持ってくれている。最近の土居ちゃんはメキメキやさしいのだ。  みんなで小走りしながらホームに向かう。
えき
    午前9時15分。有明5号で熊本へ。  発車と同時に、新作『桃太郎電鉄』のアイデア出しを始めるも、 不調。どうも早くもおじサンたちはへばっているようだ。私もVAIO の故障でどうも調子が出ない。  しかも電車に詳しい人なら、すぐわかることだが、博多から熊本 までは、わずか1時間12分である。あっというまに着いてしまう。  午前10時37分。熊本駅着。  グリーン車というのは、足が楽なように、たまにスリッパが用意 されていることがある。今回乗った有明5号にも、スリッパがつい ていた。そのスリッパを履いたまま、降りようとしたのは、土居ち ゃん(土居孝幸)である。  いかにも土居ちゃん(土居孝幸)らしいエピソードでしょ?  まず駅の側のホテル・ニューオータニにチェック・イン!  博多のホテルより、シングルの部屋がかなり小さい。  まあ、仕方がないか。  博多のハイアット・リージェンシーとそんなに値段が変わらない だけに、ちょっとくやしい。  午前11時。本妙(ほんみょう)寺に行く。  ここにはあの加藤清正の像が建っている。タクシーの運転手さん い言わせると、この像を見たいというお客さんは珍しいそうだ。
加藤清正
    いつも思うのだが、私は加藤清正を主人公にした、NHKの大河 ドラマがあってもいいのではないかと思ってる。  織田信長の死の直前から始まって、徳川家康も出てくるし、もち ろん豊臣秀吉は出ずっぱりだ。関ヶ原の戦いでは重要な役どころだ から、メインのシーンになるだろう。  朝鮮の役では、有名な虎退治をしたわけだし、築城の名人として も名高いし、八代の河童を退治した逸話もあるそうだから、ネタに はことかかないと思うのだが…。  やっぱり朝鮮出兵の部分が、やばいのかな?  でももうちょっと熊本県民は、加藤清正をメジャーにする努力を してほしいと思う。  私もちょっと考えてみる。    本妙寺の宝物殿を見る。  加藤清正の墓があるお寺にしては、ずいぶんと陳列品が少ない。  そういえば加藤清正の遺品って少ないなあ。    午前11時45分。島田美術館。  ここは個人で、宮本武蔵の遺品を収集している。  巌流島の決闘でつかった櫓(ろ)と同型の物が展示されていたり、 宮本武蔵の刀が展示されている。なかなか見応えがある。  宮本武蔵は晩年熊本の細川家に仕官したので、熊本には、宮本武 蔵ゆかりの場所がけっこうあったりする。  午後12時。熊本城。  3人バラバラで、熊本城の前で写真を撮る。単なるお上りさんに しか見えなくなって来ている。
さくま どい みやじ
    宮路一昭くんが熊本に入る頃から、故郷の宮崎が近いものだから、 だんだん宮崎弁になって行くのがおもしろい。  土居ちゃん(土居孝幸)がものすごい勢いで、熊本城を登って行 く。私は足が不自由なので、きょうのこれからの日程を考えて、登 城は辞退する。前に来て、このお城が急なのをよく知っているから だ。きょうはまだこれからメイン・イベントが待っている。  ただ私の祖先が熊本城に登城するご典医(お医者さん)だったら しいので、本来は何度でも登らないといけないんだろうなあ。
城
    その代わり宮路一昭くんと土居ちゃん(土居孝幸)が熊本城に登 っているあいだに、私は宇土櫓(うとろ)と呼ばれる、西南戦争の ときにも焼けなかった熊本城の一部を見に行く。  かなり長い廊下がずっと続く。  外はいい天気なのに、廊下の板が冷たくて、歩きづらくなる。フ ローリングの家は寒いの原理だな、これは!  午後12時30分。熊本駅に戻る。  熊本駅から、あそ3号に乗って、いよいよ今回の旅のメインであ る、阿蘇山をめざす!  その前にまたまたデブデブトリオは、熊本駅で駅弁を買う。  土居ちゃん(土居孝幸)と宮路一昭くんは大きな大きな地鶏めし を買う。私はダイエットを考えて、三色おこわと小さなお弁当。こ のささやかなセーブが、この2人との決定的な差になることを願っ てだ。目くそ鼻くそを笑うようなものだが、この3人の体重は非常 に拮抗している。
べんとう
    午後1時01分。あそ3号。  この路線は豊肥(ほうひ)本線という、土居ちゃん(土居孝幸) が大喜びして「放屁本線、放屁本線!」と何度もいうように、本当 に放屁本線という名前がふさわしいような路線だ。  熊本駅と大分駅を結ぶけっこうメジャーな路線なのに、なんと特 急は1日わずか3本。もちろんグリーン車輌は無い。  それどころか、指定席の車輌より、自由席の車輌のほうが新しい 車体をつかっているといういいかげんさ。  その1日3本しかない特急の1本にこうして今、乗っている。  立野(たつの)駅で、日本に3本しかないスイッチバック式線路 で、険しい山を登っていく。  立野駅は、前回の九州旅行で、戸田圭祐と「南あそ水の生まれる 里白水高原駅」という日本一長ったらしい名前の駅のあとにたどり ついた駅である。まさか3週間後にこうしてまたこの路線に乗ると は思わなかった。  今回はまだ昼間なので、雄大な阿蘇山の外輪山が一望できて、気 持ちがいい。  社会科の授業で習ったカルデラ湖といった単語を思い出す。  午後1時56分。阿蘇駅に到着。
阿蘇駅
    降りたお客さんの数、わずか5人。そのうち3人は、私たち。  さみしい。  阿蘇は、九州で唯一のスキー場があったところなので、相当寒い ことを予想していたが、きょうはポカポカ本当にいい天気。コート を小脇にかかえるくらいの暖かさだ。    駅前で、観光タクシーを頼む。  ところどころで降ろしてもらっては、写真を撮る。  ゲーム上で、オープングにつかうとしたら、どうしたらいいか?  決算画面だとしたら? いろいろなケースを想定して、土居ちゃん (土居孝幸)、宮路一昭くんと打ち合わせる。
阿蘇 阿蘇
    午後2時30分。草千里(くさせんり)に着く。  広々として、気持ちいい景色だねー、やっぱり!
草千里
    20年前くらいにも来たけど、あの頃は若造で、この景色の素晴 らしさをここまで感じることができなかった。年を取るほど旅は楽 しくなるねえ。そう思うと年を取るのも悪くないもんだ。  午後2時40分。ロープウェイ乗り場。はいはい。私は乗りませ んよ。高所恐怖症だからね。20年前に来たときも、ロープウェイ には乗らなかったからね。しかもあのときは、山頂にメタンガスが 発生してロープウェイも止まっていた。  車は、ロープウェイ乗り場で止まらず、脇の小さな道に向かって いく。あれ? なんとそのまま山頂まで登れるそうだ。へ〜。便利 になったものだ。  それにしても看板に、喘息(ぜんそく)の人や、心臓疾患のある 人は、山頂まで行かないでくださいと書いてある。けっこう恐ろし いではないか。  しかも運転手さんがいうには、きょうの午前中はガスが発生して、 山頂まで行くことが禁止されていたという。おいおい、本格的な危 険地域なんじゃないか!  ごつごつした岩が転がる山頂に着く。  何だ? あの無数にあるトーチカのようなものは? 「ひなんごう」と書いてある。避難壕のことだ。
避難壕
    火山が噴火したら、ここに逃げ込めということらしい。  前に火山が噴火したことがあったけど、避難壕に逃げた人も焼け てしまったという。それじゃ意味無いじゃん。  おおっ! 噴火口が丸見えだ。深い!  東京ドームより大きな、この穴は。火口の底から、別府の地獄め ぐりのような煙が不気味に立っている。
火口
    さすが東宝映画『ラドン』発祥の地である。怪獣が登場するのに うってつけの場所だ。もし今ラドンが出て来たら、どうやって逃げ る役を演じたらだろうと考えてしまうのは、私がリメイク版の『ゴ ジラ』のエキストラをやったことがあるからだ。  あのとき、鳥山明くんと堀井雄二くんと並んで、スタートの声と ともに、走り出したのだが、つい大笑いしながら走ってしまったの で、大写しにはならなかった。あたりまえだけど。  ひとつおもしろかったのは、その『ゴジラ』のポスターで、逃げ まどう町の人たちが写真で写っているのだが、最前列真ん中に、鳥 山明くんが写っている。  彼が有名人だからではない。本当にただの人として、偶然写って いるのである。もしポスターを持っている人がいたら、ぜひ探して みてほしい。  阿蘇山の山頂は、メタンガスで臭い。  土産物に、真っ黄色な硫黄を売っている。
いおう
    モグラ退治にいいと書いてあるけど、モグラ退治用の薬をわざわ ざここで買わないよなあ。湯の花にもいいと書いてあるけど、こん な蛍光色の黄色をお風呂に入れたら、温まる前に臭くて飛び出して しまいそうだ。  最後には、硫黄は黄色だから、風水だと金運にいいとまで書いて ある。たしかに黄色を部屋の西に置くといいと風水の本には必ず書 いてある。私の部屋にも、黄色が置いてある。ピカチュウのぬいぐ るみだけど。  ちなみに、硫黄の固まりのお値段250円である。めざまし時計 くらいの大きさあるぞ。  再び観光タクシーに乗り、中岳(なかだけ)を後にする。  阿蘇山は、5つの山から成る。どうも昔から阿蘇山と言われて、 その形がピンと来なかったのはこのせいであった。  中岳、高岳、根子(ねこ)岳、杵島(きねじま)岳、烏帽子(え ぼし)岳の5山の総称が、阿蘇山なのだ。  途中、山に筋が1本長く入っている山があって、米塚(よねづか) 山という。  ここの山の領地を分けたところから「山分け」という言葉が発し たそうだ。「山分け」発祥の地。なんだかおもしろい。  阿蘇山は、毎年野焼きをするので、ほとんど木というものがない 分、ひろびろとした景色が広がって気持ちいい。すすきが風に揺れ て歌っているようだ。  それでも5月の連休からのツツジのほうがもっときれいだそうだ。 そう言えば、20年前に来たときも年末だった。  また来そうな気がする。  午後3時。阿蘇ファームランド。  大きな土産物売り場である。  デブデブトリオは、しっかり、からいもアイスとか、牛乳を飲み、 ハムとソーセージを試食しまくる。  試食、試食、試食でお腹がいっぱいになる。  あまりの広さにへとへとになる。  夕方近くなってきたので、かなり気温が落ちてきた。  午後4時。運転手さんにこのまま熊本まで走ったら、いくらにし てもらえるか交渉する。おそらく1万円だろうなあ。 「う〜〜〜ん、サービスして、5000円でいいですよ!」  おいおい、それは安すぎるよ!  だって、熊本から阿蘇までの3人の指定席の合計が、5300円 なんだから!  それじゃお願いしますと、そのままタクシーで熊本ニューオータ ニホテルまで。  私は途中、気持ちよく寝てしまう。  午後5時。ホテルニューオータニ熊本。  そのまま繁華街まで出て、町を練り歩く。  どうもおいしそうなお店が見当たらない。 『旅・王・国』に載っていたお店は、馬刺専門店である。  熊本に来たからには、馬刺は食べないといけないけど、もっとほ かの物も食べないと取材にならない。  しかしずっと歩きつづけても、看板は馬刺、馬刺、馬刺ばかりで ある。本当に多いんだなあ。  午後7時。「銀杏」という料理店に入る。看板に「天草料理」と 書いてあって、馬刺もあるからだ。  からしレンコン、車エビのガーリック炒め、馬刺にぎりなどを注 文する。忘れず焼き銀杏も注文する。お店の名前でつい誘われる。
レンコン 馬刺にぎり
    3年連続体重前年比ナンバーワンに輝く、宮路一昭くんの食べっ ぷりは見事で、いつもにこにこしているからあまり食べていないよ うに見えるけど、ひそかにカロリーの高い物ばかり食べている。  海老レタス。この名前を聞くとヘルシーのようだが、海老とレタ スを、ねぎとろ巻きのように巻いて、なかにたっぷりマヨネーズが 入っている。やっぱりデブは、マヨラーだ。  しかも宮路一昭くんは、せっかく熊本に来たんだから、ラーメン を食べに行かないとと言い出す。 「少し歩いたら食べられるかな、うん」。土居ちゃん(土居孝幸) が早くも同意している。何者なんだ、こいつらは。  地獄からやってきた、餓鬼、施餓鬼の類なんじゃないだろか。  お酒を飲んでるから赤ら顔で、本当に鬼に見える。  食後。本屋さんで貴ちゃん(プロスペック)が作った『桃太郎電 鉄V』の攻略本を探すが、どこにも売っていない。Vジャンプのほ うの攻略本はどこでも売っているのに。  あの本に載っている、私の由布院での写真が気に入っているので、 ぜひ2人に見せようと思ったのだが、何件回っても無い。  それどころかゲームショップが無い。  せっかくの『桃太郎電鉄V』の発売日に、3人で自分たちのゲー ムを探すが無いというのは、あまりにもわびしすぎる。  でも、ラーメンは食べる。  午後8時。有名な「こむらさき」で、王様ラーメン。  九州特有の細いもやしが入っている。トッピングに、焼きニンニ クのチップが乗っていて、香ばしい。  思ったよりも、あっさりしていて、美味しい。
らーめん どい
    宮路>土居>さくま。この順でスープまで飲み干す。  私はラーメンのつゆを飲み干したら、1日分の塩分の摂取量終了 と言われているから、必ずつゆは残す。  宮路一昭くんは、最近放送作家の福本岳史くんにライバル意識を 燃やしているけど、実はデブの部分で負けているから、よけい悔し いのではと思えるくらいよく食べる。  何でも他人に負けない心は大切だが、デブ対決はちょっと不毛だ し、年齢が行くと危険である。  午後9時。喫茶店からハドソンの梶野竜太郎くんに電話する。  秋葉原で『桃太郎電鉄V』発売日キャンペーンをやっているので、 販売状況がわかると思ったからだ。  結果は大盛況で、ダントツの売り上げだそうだ。  何だか現場にいないで、こうして熊本でのんびりしているのが悪 くなる。宮路一昭くんと相談して、明日鹿児島のおもちゃ屋さんに キャンペーンに行こうということになる。  午後9時30分。旅行中に出たアイデアをまとめる。  きょうは早く寝よう。疲れが大分出て来た。
 


12月17日(金)


 午前4時に目が覚めてしまう。
 TBS『エキスプレス』で、自分の出演場面を見る。恥ずかしい。
素人はどうしても目が泳いでしまうなあと、つい自分でチェックを
入れる。

 午後7時30分。熊本駅に行って、鹿児島駅までの特急のチケッ
トを買う。
 しかし、またしても指定席が全部、満員。グリーン車にしようと
思ったら、グリーン車も満員。途方に暮れていると、駅員さんが、
2人分のグリーン料金で、個室が空いていますけど、どうですかと
言ってくる。そいつはいい! 博多の嫌な駅員と段違いだぞ! た
っぷりゲームの打ち合わせもできる。豪華にグリーン個室のチケッ
トを買って帰る。
 
 午前8時。ホテルの1Fで食事。
 2人ともグリーン個室に歓声を上げる。
 チケットもあるので、3人でのんびり食事だ。
 ゲームの打ち合わせなどもする。

「あれ?」
 土居ちゃん(土居孝幸)が叫ぶ!
「時間無いよ!」
「大丈夫だよ、チケット買ってあるし、9時40分発だから…」
「まずいですよ、さくまサン! 今、9時28分だもん」
「そりゃやばいっ!」
 荷物をまとめて3人あわてて、ホテルを飛び出し、駅に向かう。
 ホテルが駅に近かったもんだから、なんとか間に合う。改札口の
目の前のホームに電車が止まるのもよかった。跨線橋を登るようだ
と手足の不自由な私の速度が極端に落ちる。地方の駅だからエスカ
レーターなんてものがあるわけがない。

 午前9時40分。つばめ3号。1号車8番個室。
 おおっ! なんとも豪華な客室。
 農協のおじさんたちみたいにバシバシ写真を撮る。
 イスもゆったり。いいねえ。
個室
    スチュワーデスさんみたいな女車掌さんが無料でコーヒーをサー ビスしてくれる。言うこと無い…と思ったのもつかのま。  この電車のひどい欠陥が顕わになる。    グリーン個室は、電車の進行方向左側についている。  個室の右側に、通路がある。  日本地図を思い浮かべてほしい。  熊本から鹿児島に向かう。  右側が海だ。  左側は山だ。  この個室からは、海がまったく見えない!  何でこんな設計にするんだ!  何でわざわざグリーン個室から海がまったく見えないようにする 必要があるのだろうか。禁煙車のように禁海権みたいなものが深く 静かに潜行しているのだろうか?  解せない。  しかも途中、アナウンスで「東シナ海の絶景がごらんになれます」 と言われるたびに悔しい思いをする。  くそ〜〜〜。帰りのときにもう一度この個室に乗って、じっくり 海を眺めてやるぞ………あれ? 電車って、駅に入ったままの形で 逆走するだけだから、また見えないのか?  昔の蒸気機関車と違って、操車場で方向変換する必要ないもんな あ。だったらよけい、最初から駅に入る右側、左側を考えて入って くれば個室から海を見えるようにするなんて、カンタンすぎること じゃないか!  自動車の右ハンドルを左ハンドルに変えるよりカンタンじゃない か! よけい腹が立ってきた!  誰かこのことを、JR九州に言ってほしいものだ。  午後12時14分。西鹿児島駅に着く。  鹿児島市のいちばん大きな駅は、鹿児島駅ではなく、この西鹿児 島駅だ。このパターンもずっと昔から変わっていない。  いいかげん、今の西鹿児島駅を鹿児島駅として、現在の鹿児島駅 を東鹿児島駅と改称したほうがいいと思うのだが、いかがなものか。  あ〜、また鉄道関係のことで文句をいうと、鉄道鉄ちゃんたちか ら高飛車な文章の文句が来るな。まあ、いいや。無視するだけだか ら。わっはっは!  午後12時30分。ワシントンホテルプラザ。博多から、熊本、 鹿児島とどんどんホテルのランクが下がってきて、ちょっと気持ち が落ち込んでくる。  とうとう独房のような狭いホテルになってしまった。  ロビーもぐ〜〜〜んと小さくなった。  ホテルの豪華さって、けっこうその町を好きになるかどうかの重 要な決め手になると思う。  そういう意味では、鹿児島というのは歴史マニアにとって、宝庫 なのに、どうにも気の利いたホテルがまったくない。  以前も「Sホテル」と書いて、罵倒したホテルを始め、値段だけ 高くて、もう老朽化したホテルや、値段が安い分だけ、しっかり内 容も悪いホテルが多すぎる。  タクシーに乗るたびに「いちばん新しく出来たホテルはどこです か?」「値段高くてもいいから、豪華なホテルはどこですか?」と 聞いたのだが、誰一人として「う〜〜〜ん」とうめいたきり、答え が返って来ない。  もうそろそろ新しいホテルを鹿児島に建ててほしいものだ。  いつも鹿児島に対しては、不満が多い。  たぶん私にとって、鹿児島はもっといい場所であってほしいとい う願望があるのだろう。  午後1時。鹿児島のラーメンというと、ざぼんラーメンが有名だ が、このお店は新宿や高円寺にあって、何度も食べているし、2年 前にもここ鹿児島の本店で食べているので、2番目に人気の高い「く ろいわラーメン」に行ってみた。  鹿児島ラーメンというと、こまかく刻んだ黄色いたくわんといっ しょに食べるところが何とも言えず、美味しいのだが、このお店は 白くて大きいたくわんが2切れ。これがちょっと不満。
ラーメン
    決して、まずくはないのだが、どうにもたくわん2切れ分だけ、 ざぼんラーメンの勝ち。  その証拠に、餓鬼ブラザーズ(土居&宮路)は、早くもきょうの 夜中、ざぼんラーメンに行く約束をしていた。  午後1時45分。さつまいもの館というところに行くが、単なる 売店で、いまひとつ。デジカメのバッテリーがピンチ! 画像がど んどん暗くなっている。充電したはずなんだけどなあ。えっ? デ ジカメの充電って、8時間ぐらい必要なの? 
さつまいも館 さつまいも
    博多のホテルで2時間くらい充電させただけだった。  VAIOが壊れたチョックで、充電させたデジカメを置き忘れる予 感がして、鞄に仕舞ったのだった。  午後2時。黎明館という博物館に行く。  古代の鹿児島から、現代の鹿児島までを描いた博物館だ。けっこ う見応えあってよかったのだが、加湿器が強くて、まだまだ湿気に 弱い私の身体が持ちこたえられなくて、あえなくリタイア。  午後2時30分。鹿児島フェリー・ターミナル。  鹿児島に来て、桜島に寄らないわけに行かない。  とくに今回の旅は、土居ちゃん(土居孝幸)に、阿蘇山、桜島を 生で見てもらうのが主旨だったから、いよいよ旅のクライマックス である。
フェリー
   私が2年前に来たときより、フェリー乗り場は大きく、きれいに なっていた。エスカレーターにエレベーターまで付いている。  この調子で、海に臨むリゾートホテルも建造してくれるといいの だが…と、ホテルに関して、私の鹿児島に対する悪感情はしつこい。  以前いいホテルがなくて、ぱったり別府に行かなくなったのとお なじ状況である。のちに先月の「芙蓉倶楽部」で、大逆転の評価に なるまで、本当に別府だけは敬遠する町になってしまった。  今、また鹿児島がそうなりかけている。  誰か鹿児島にいいホテルがあったら本当に教えてほしい。    さて、フェリーに乗り込んで、桜島に向かうぞというときに、私 の携帯が鳴って、嫁が鹿児島市内に到着したという連絡が入る。  宮路一昭くんが、フェリーを降りて、うちの嫁を待ちましょうと 言い出す。この船、乗船料金は桜島のほうだけでしか徴収しないか ら、まだ払っていないのだ。だったら間に合うなと、下船。  嫁もすぐ近くまで来ていたので、すぐに合流。  午後3時15分。旅人が4人に増えて、フェリーで桜島に向かう。  午後3時30分。鹿児島から桜島までフェリーでわずか15分で ある。なのに、土居ちゃん(土居孝幸)がしきりに「コーヒー飲み ませんか?」と何度も私たちにおごろうとする。 「だから土居ちゃん、15分で着いちゃうんだってば!」 「あ、そっか!」  この繰り返しである。  土居ちゃんが老人性痴呆症になったわけではない。  昔からこんな調子である。  着いたとたん、桜島からもくもくと噴煙が上がった。  こ、こ、これが有名な桜島の噴煙かあ!    どうしようかという間もなく、故・横山やすしサンそっくりのし ゃべり口調のタクシー運転手さんが近づいてきて「観光しない の?」と言ってくるので、タクシーを頼む。  まあ、横山やすしサンに似たしゃべりをするくらいだから、機関 銃のようにしゃべる、しゃべる、しゃべる!  参考になることをいっぱいしゃべってくれるのだが、早すぎて、 メモが取れない。  いきなり、烏島(からすじま)という島がかつて、桜島の大噴火 で埋没した地点に連れて行ってくれる。
烏島
    さっき発生した噴煙はますます大きく虹を描くように、弧を描い て吹き上げている。1カ月ほど前、1000メートルの火柱が立っ たそうだ。    何だかわれわれは怪獣映画のジープに乗った、調査員たちのよう である。映画ならのんびり見ていられるが、今は本当に桜島の噴煙 に向かっていくので、けっこうスリリングだ。  阿蘇山といい、桜島といい、本当に怪獣映画を実体験しているよ うな気分である。タクシーだからいいけど、これが本当にジープな ら、まず最初に怪獣に潰される役である。  途中、煤煙のために廃墟になった集落を見るにつけ、今にも向こ うから東宝の怪獣映画の頃の宝田明さんがやって来そうである。田 崎潤さん扮する科学博士もいそうだ。
廃村
    なんて冗談をだんだん言っていられない雰囲気になって来た。  降灰(こうばい)が本当に地面に落ち始めて来た。  砂鉄みたいな灰だ。  道を歩く小学生たちがヘルメットをかぶっている。  桜島の小学生たちは、夏でも冬でもヘルメットをかぶっているそ うだ。なぜなら4トンの岩が降ってきて、ホテルの天井をぶち抜い たことがあるからだ。その4トンの岩も横山やすしサン似の運転手 さんに見せてもらった。でも写真を撮るひまを与えてくれない。見 事なせっかちっぷりだ。
展望台
    午後3時45分。桜島展望所。  さらに落ちてる石の粒が大きくなっている。  お土産物屋さんがみんな閉まっている。  阿蘇山で見た、避難壕をまた見るはめになった。  今、私達は噴煙のちょうど真下にいる。  もうしばらくここにいると、噴煙を浴びてしまう。  そそくさと、戻ることにする。  おしゃべり好きの運転手さんが、もっとおもしろいところを見せ てあげると言い出したらどうしようかと思った。その反面、この運 転手さんも帰ったほうがいいと言い出したということは、本当に危 険がせまっているということだったのだなと、今にして思う。  午後4時15分。あっというまの勢いで、フェリー乗り場に戻っ てくる。そのままフェリーに乗る。  午後5時。鹿児島フェリーターミナルに到着。  緊張感たっぷりの4〜50分であった。  おかげで、土居ちゃん(土居孝幸)が強烈なインスピレーション に襲われたようだ。もちろん私はその全部を聞いたのだが、ここで 話すわけにはいかない。  いつになるかわからないが、今回の桜島での体験が、新作『桃太 郎電鉄』の1シーンとなって登場する日が来ると思う。それまでお 楽しみに!  午後5時。鹿児島市内でいちばん大きなデパート・山形屋さんに 行く。ここで宮路一昭くんのいとこ・宮路裕一郎さんに会う。宮路 裕一郎さんは、ついこのあいだまでこの山形屋のおもちゃ売り場に いた。  その縁で、今回『桃太郎電鉄V』のキャンペーンをしに、おもち ゃ売り場を訪問することにしたのだ。  売り場の人はもちろん、部長さんといった偉いさんたちまで続々 来てもらってしまって、返って恐縮してしまった。  何たってみえみえの旅行者だ。  こっちができる最大のサービスは、土居ちゃん(土居孝幸)に色 紙を描かせることしかないので、直筆で3枚描かせる。そのうちの 1枚が、さっき土居ちゃん(土居孝幸)が桜島を見て、湧いたイン スピレーションの早くも下書きの絵になっていた。  これはぜひお近くの人は、鹿児島の山形屋デパートさんの5階ま で来て、ぜひ見てほしいものだ。
デパート デパート
 午後5時30分。山形屋の近くで、宮路裕一郎さんとちょっと雑 談。もうすっかり宮路一昭くんの言葉が、宮崎弁になっている。
親戚
 このあと鹿児島の郷土料理が食べられるお店を何軒か訪ねるが、 どこも満員で入ることができない。  けっきょくまだ嫁がチェックインしていないので、ワシントンホ テルプラザに先に行くことに。  午後7時。何とか探した鹿児島郷土料理のお店「熊襲(くまそ) 亭」で食事。この「熊襲(くまそ)亭」という文字は、本来なら放 送禁止用語なんだけどなあ。コンピュータでもやっぱり禁止用語の ようで、変換できない。  まあ、あまり多くは語れない。  正調さつま料理コースというのを注文する。  土居ちゃん(土居孝幸)、宮路一昭くん、嫁たちは、紫の神話ビ ールとかいう地ビールを飲んでいる。  次々に郷土料理が出てくる。
前菜 ビール 鳥刺し きびなご
 へ〜。きびなごって、こんなに美味しかったんだあ!  今まできびなごって、何度も食べたことあったけど、これほど美 味しいと思ったことは一度もなかった。しかも今まで見たこともな いようなあざやかな銀色をしている。  まるで子どもの頃、やっと買ってもらえたプラカラーの銀色であ る。うちは子どもの頃、継母にいじめ抜かれていたので、何か欲し い物があったときは、相当不平等条約のような交換条件を常に要求 されたものだった。でもそうやって苦労して手に入れたプラカラー の銀色は、本当に輝いて見えて、意味無く毎日あっちこっちに塗り たくったものだ。あの銀色に似ている。  きびなごを酢みそで食べる。  この食べ方も初めて。  おいしいね。
とんこつ かに たこ さつまあげ
 とんこつ。3時間以上煮込んだという豚肉がやわらくて、美味し い。うちわガニというのは、カブトガニみたいなちょっと不気味な 格好していて、味も淡泊でちょっと美味しくなかった。  これで美味しかったら、『桃太郎電鉄』にも登場させやすかった だけに残念。  コース料理というのは、いったいあといくつ出てくるのか想像が つかないので、どうもうまくペース配分ができない。  気がついたら、もうお腹はパンパン。  餓鬼王の宮路一昭くんは早くも、ズボンのベルトをゆるめている。  全員、「苦しい、苦しい!」を連発しながら、食事終了。  ホテルまで歩いて帰る。  まさか土居ちゃん(土居孝幸)と、宮路一昭くんはこのあとまた ラーメンを食べに行くんじゃないだろうなあ。  あとで聞いたら、やっぱり行ったらしい。  恐ろしいやつらだ。  午後8時。ホテルに戻る。  嫁が柴尾英令くんが書いてくれたVAIOの修復方法をコピーして 持ってきてくれたので、さっそくVAIOの修復作業に入る。  もちろん私は横で見ているだけ。  しかし、VAIOは動かず。  手強い! Operating system not foud Operating system not foud Operating system not foud Operating system not foud Operating system not foud Operating system not foud Operating system not foud Operating system not foud Operating system not foud  もうこの文字は見飽きたよ!  嫁が予備用のVAIOを持ってきてくれたので、そっちを起動させ るも、ワープロは打てるが、インターネットを接続することができ ない!  どうにも困り果てる。  今回の旅で、VAIO運はまったくないようだ。    どうしようかと考えあぐねた末に、マッサージを頼んで、寝る。  ダメな時は、ダメだ。あきらめる!
 


12月18日(土)


 午前6時。鹿児島ワシントンプラザで、起床。
 まだ外は真っ暗。
 
 午前6時30分。昨日、嫁がとんでもないお手柄をしたので、私
もそれに答えるべく、西鹿児島駅に行って、キップを購入して、再
びホテルに戻る。
 鹿児島なのに、さすがに午前6時台は寒いな。
 さて、私が買ったキップがきょうこれからどうなるかは、この日
記のお楽しみの部分なので、のちほどまた。

 午前8時。ホテルの16Fで、4人で食事。
 土居ちゃん(土居孝幸)はきょうの飛行機で、東京に戻る。
 宮路一昭くんは、午前中の電車で、故郷の宮崎に帰る。
 私と嫁は、ある場所に行く。
 最後の晩餐である。
桜島
    旅先でずっと『桃太郎電鉄』のカードの再検討をいたるところで していたのだが、時間切れで、もう打ち合わせができない。最後に 打ち合わせたカードが、うんちカードだったのも、いかにも桃太郎 チームらしい幕切れである。  しかも朝食を食べながら、うんちカードの話である。 「うんちする場所を決めて、落としてほしい!」と、ほかのお客さ んが聞いたら、眉をひそめそうな会話である。  午前9時。エレベーターの前で、土居ちゃん(土居孝幸)、宮路 一昭くんとお別れ! 「それじゃまた、東京で!」 「あれ? 土居ちゃん(土居孝幸)とはよいお年をね!になっちゃ うかもねー?」 「うーーん、そっかなあ?」  午前9時30分。私と嫁は、西鹿児島駅へ。おや? ホテルで別 れたはずの宮路一昭くんがいる。午前10時ちょっと前の電車に乗 るそうだ。  それならと、西鹿児島駅で売っていた、両棒(ぢゃんぼ)餅を買 っていっしょに食べる。最後まで宮路一昭くんは食べっぱなしとい うキャラで押し通した。  ぢゃんぼ餅。いかにも新物件にふさわしい食べ物だ。  午前10時05分。つばめ10号。  どこに向かうかというと、熊本。  えっ? また熊本!? そう、熊本駅。  しかも、熊本駅から2日前、阿蘇山に行ったときに乗った、1日 3本しかない特急あそ3号にまた乗る。しかも阿蘇駅でまた降りる。  え〜〜〜? また阿蘇山に行くの?  ここからが違う。  そこからはまたあとでね。  つばめ10号の電車のなかでは、土居ちゃん(土居孝幸)と宮路 一昭くんがいなくなったので、今度はiモードゲーム『さくま式奥 の細道』の制作を開始する。  ずっと持ち歩いている講談社学術文庫『おくのほそ道』をもう何 10回となく読んでいるので、本が膨らんでパンパンになっている。  まるで学生時代の受験勉強みたいだ。  今回は、グリーン個室を取らなかったので、進行方向左側の窓に 海が広がる。ずっとどこまでも広がる。  東シナ海から、天草諸島まで、エメラルド・ブルーの海が広がる。  東山魁夷さんの描く緑色の海のようだ。  これだけ長い距離、電車の車窓からずっと海が見えるところは少 ない。それだけに、グリーン個室の設計ミスに対する怒りがまたこ み上げてくる。  しつこい性格でしょ? 私は本当に怒ると、しつこいよ!  午後12時45分。熊本駅着。  駅ビルの文房具屋さんで、メモ帳を買う。なんと今回の旅で、ま るまるノート1冊分アイデアで埋まってしまった。きょうから新し いノートにアイデアを書く。  午後1時01分。あそ3号。  土居ちゃん(土居孝幸)、宮路一昭くんとつい2日前に乗ったの とおなじ電車に今、こうして嫁とふたりで乗っているのも不思議な 気分だ。    あのときとおなじように外輪山が広がる。  戸田圭祐と行った、スイッチバックの駅・立野駅を嫁に教える。  きょうは2日前と違って、曇り空だし、とても寒い。    午後1時56分。阿蘇駅着。  寒い。風が寒い。見覚えのある駅員さんが、キップを回収する。  何だかこの駅員さんとは、また来年あたりもう一度会いそうな気 がする。そりゃ1週間に2回も会えばね。  あのときも無人だった野菜売り場は、きょうも無人で野菜を売っ ていた。  2日前に乗ったタクシーのムチイさん(漢字表記を聞き忘れた) に連絡を取ったが、きょうは遅番で、夕方から出勤だというので、 おなじ内牧タクシーに乗る。  阿蘇山に登るのではなく、くじゅう連峰をめざす。  くじゅう連峰の先にあるのは、湯布院である。  あの先月の九州旅行のときに、戸田圭祐、江口貴博くんと行って、 ちっともおもしろいものなどないと腹を立てて、別府に向かってし まった、あの湯布院である。  東京に帰って来てから、日記を読んだ人たちから、湯布院は私が 書いたイメージと違う町だというメールがいくつも届いたせいもあ って、もう一度湯布院を取材し直そうという気もあった。  しかし本当の狙いがほかにあった。  湯布院には、高級日本旅館が多い。  そのなかでも、日本の宿百選の第1位に輝く「亀の井別荘」とい う日本旅館があるのも、この湯布院である。  この「亀の井別荘」のすごいところは、半年前から予約でいっぱ いで、急に思いついても絶対行けないことだ。  その「亀の井別荘」に、無謀にも嫁が昨日鹿児島から、電話した。  すると奇跡的にも、「亀の井別荘」にキャンセルが出て、いちば んいい部屋に空きができたというではないか!  これが嫁のお手柄である。  そんな千載一遇のチャンスを逃すわけにはいかない。  本当は鹿児島のあと、宮崎シーガイアに行くか、指宿に行って、 池田湖のイッシーを見る予定だったのを、あっさり予定変更!  一気に湯布院まで行くことにした。この「亀の井別荘」は嫁にと っても、ずっと前から憧れのホテルだったのだ。   まさか行けるようになるとは思ってもいなかった。  午後2時30分。一ノ宮展望台。阿蘇山を一望できる場所だ。本 格的に寒くなって来た。風も強い。これが本来の阿蘇山なんだろう。
一宮
    車はさらに、くじゅう連峰を走る。大きな山があったとおもうと、 小さな山が連なったりして、雲海ではなく、山の海のようだ。山の 海の上に山がある。そんな気分になる。  それにしても今回の第2回九州旅行で、本当に九州を「火の国」 と呼ぶことがよくわかった。  どこに行っても山があるし、噴火している。  地面から煙が上がる様を見ても、なんとも思わなくなっている自 分がいる。  北海道もほかとはまったく違う顔をしているが、九州もまた独特 の顔つきをしている。  元々、九州は地図を見ても、人間の顔みたいな形してるんだけど ね。前回行った、国東半島がだんごっ鼻で、長崎とか天草諸島が髪 の毛で、左上を向いている。  午後3時30分。いよいよ湯布院に入る。  前回見た景色を再び見かける。  ああ、そうそう。この近くまで戸田圭祐と貴ちゃん(江口貴博) と来たんだよ。ぼろっちいバスターミナルがあって、あっ、これこ れ! 思い切り気が滅入ったんだ。  あれ? 車が右折する。  えっ! こんなところがあるの?  京都の嵐山みたいなところだぞ! え〜〜〜。すごいや!  土産物屋ばっかじゃないか! 何でこんな駅からはるかに離れた 場所に忽然とお店がたくさん建ち並んでるの?
町並み 町並み 町並み 町並み
    しかも、よりによって、前回湯布院駅に来て、駅前の商店街を抜 けて、お店がなくなってしばらくしてから、急にお店が並ぶんだ! 気がつくわけないよ!  ほとんどドリフの志村けんのお化けコントじゃないか!  観客が「志村〜、後ろだ!」と言って、志村けんがわざとワンテ ンポ遅れて、後ろを振り向くと、お化けがいないという、あのコン トのような位置に私たちはいたってことじゃないか!  あのとき、あと20メートルほど先まで歩いていたら…。    江口貴博くん! 戸田圭祐!  まっこと申し訳ない! 私があのときもう少し歩いていれば!  嫌気がさして、あの廃屋のようなバスターミナルの汚らしいトイ レに入って、さらに怒らなければ!    江口貴博くん! 戸田圭祐!  本当に申し訳ない!  君たちに私はまったく本当の湯布院を見せず終いだった!  何とおわびしていいやらわからない!  そう思いつつも、タクシーは進む。  京都の上賀茂神社の前の川のような大分川を抜ける。  ホタルの里などと書いてある看板が目立つ。  そんな単語、ちっともなかったよ。  金鱗(きんりん)湖? そんなところも知りましぇーーーん!    おいおい、何だ? この大きなお屋敷は? いや、お屋敷の数が ひとつやふたつじゃないぞ。一体何だ? まるで政治家さんの別荘 のようだぞ。政治家さんといっても、宰相経験者が持ってそうな、 別荘が建ち並んでるぞ!  タクシーは、砂利の道をメキメキ音を立てて、ゆっくりゆっくり 進む。プシューッ。車が止まる。 「ここが亀の井別荘です!」と運転手さん。 「しょえーーーーーーーーーい!」×1000!  ここはその政治家たちの別荘街ではないかいやい!
亀の井
    こ、こ、これが噂に聞く、亀の井別荘なん?  こ、こんな品格に欠ける浮き草稼業の夫婦が泊まってもいいのん かい?  と言ってるそばから、なんと!  白いものが空から、ちらちらと…。  うおおおおおっ! 雪だ!   まるでどこかでディレクターが「キュー!」と叫んだかのように、 風花のような雪が舞い始めた。  この演出には、まいったねー!  旅館の人たちが出迎える。  顔はにこやかだが、どの人も百戦錬磨の顔つきをしている。    声も出ないまま、言われるままに、旅館の人のあとからついて行 く。ありゃ…。日本旅館というものは、階段を登っていくものと思 っていたけど、ずっと通路のようなところを通って、1軒1軒独立 した家屋を通り抜けていくぞっ。ひょっとして私たちが行くところ も1軒家? どの家にも庭がついてるぞ。  夢にまで見た、庭付き1軒家?  その想像のさらに上を行かれた…!  飛騨高山の合掌造りの家って、ポスターや、TVで見たことがあ るよね? 天井が高くて、7〜80センチくらいの黒々とした柱が あって、藁葺きで…。  その民芸風の家、一戸が私たちに与えられた個室なのだよーーー ー! ひょげーーーん!
亀の井
    一応「百番館」という部屋の名前が付いているんだけど、なんた って、部屋じゃなくて、1軒家なんだから。  家に入って、荷物降ろして、四角くて大きなテーブルをくりぬい て作られた、囲炉裏(いろり)のある部屋に座ると、思わず脱力し てしまった。
亀の井 亀の井
    庭を見ると、庭園が広がる。  雪見窓がある。その窓から本当にちらちら降る雪が見える。
亀の井 亀の井
    障子を開ければ、台所が付いている。  トイレが左右にふたつ付いている。  寒くないように電熱ヒーターまで入っている。  この先は何だ? 部屋から竹の廊下が続いている。  まさかこれって、離れとかいうやつ?  離れというのは間違いなかったのだが、なんと!
亀の井
    露天風呂だったーーーーー!  すご〜〜〜お〜〜〜い〜〜〜ん! ゆふ〜〜〜い〜〜〜ん!  ひとつひとつの家に全部、露天風呂が付いているのだった!  ゴージャスだ! 叶姉妹でもここは、知るまい(姉妹)。いかん。 緊張すると、くだらないギャグを言いたくなるクセが出てきた。散 歩に出よう!  午後4時。金鱗(きんりん)湖に行く。
金鱗湖 金鱗湖
    湖なのに、煙が上がっている。湖に手を入れると、ぬるい。なん と湖底からお湯が沸くそうだ。しかもこの湖の朝霧を見るのがまた 最高の風情なのだそうだ。  土産物屋に入る。  湯布院の湯とか、かぼすの湯を売っている。これは買わねばと思 って、はたと気がついた。  きょうは粉末の湯布院のお湯を入れなくてもよかったんだ。本物 の湯布院のお湯があるんだから。バカだねえ!
土産
    それにしても「別天地」という言葉は、こういう場所のためにあ る単語だったんだねえ。  これから軽々しく、まるで「別天地」のようだよという表現が出 来なくなってしまうよ。    また戸田圭祐と貴ちゃん(江口貴博)の顔を思い出してしまった。  う〜ん、いつかふたりを連れて来ないといけないかな?  でも「亀の井別荘」はおごれないからなあ。  かぼすジュースくらいなら。せこい。   土産物屋で実姉用のおみやげを買いまくる。  今回東京の自宅に実姉に来てもらって、グルメ・バカ娘の面倒を 見てもらっているのだ。実姉のおかげで、この「亀の井別荘」に奇 跡的に来ることができたようなものだから、いくら感謝してもした りない。  それでも寒さには勝てない。  脳内出血で倒れた夜のような寒さなので、怖くなって、「亀の井 別荘」に戻る。  どうせなら、談話室とかいうところがあって、そこではコーヒー が飲み放題だと言っていた。「亀の井別荘」のことだ。そこらの旅 館のコーヒー飲み放題とは格が違うのだろう。  思った通りだった。  まるで江戸川乱歩の小説に出てきそうな、これまた家だった。  どこまでもすごいんだ、ここは。  暖炉がある。暖炉に本当に薪がくべられていて、パチパチ音がし ている。『古畑任三郎』で、津川雅彦さんがいた別荘みたいだって 言っても1回きりの放送をたとえても仕方ないなあ。
談話室
    とにかく飲み放題のはずのコーヒーが美味しいのよ。  ほとんど気分はコーヒーのCMに出演しているみたいだ。  ここまで来ると、さすがの私も呆然として、どういう表現をした らいいのかわからなくなって来ている。  でも本当にこれは不思議なことなんだけど、来週あたりで、そろ そろ4周年になる脳内出血の前に、私は人生のなかで「幸せだな あ!」と感じたことは一度もなかった。  ちょっとした幸せ程度なら、いくつもあるのだけれど、そう感じ たとたん、継母が攻め込んで来て、それをぶち壊してくれた。だか ら「幸せだあ!」と、両手を挙げて幸せを味わうということをしな い人間になっていた。  でもどうも脳内出血で倒れてから、両手を挙げて「幸せだなあ!」 と思えることが増えて来た。もちろん横浜ベイスターズの優勝のこ とだし、すぎやまこういち先生に携帯着メロを入れてもらったこと だったり、北岡さんの熱海の別荘で食べたバーベキューのハンバー グの味だったり、このあいだの出版パーティに来てくれた人たちが みんな笑いながら側の人たちと話しているのを見て、本当に「幸せ だなあ!」と思えるようになって来た。  もうしばらく幸せを少しは噛みしめてもいいよね。  ちゃんとこれからも仕事するから。     午後6時30分。部屋には大きな大きなTVが据えられているん だけど、まったく見たいと思わない。むしろ見てしまったら、もっ たいないような気がする部屋だ。  純和風の家らしさを満喫したい。  電話だって、黒塗りの昔々の黒電話だ。
電話
    料理が運ばれて来た。 「まいりました!」。  とってもおいしゅうございます。
食事 食事 先付:胡桃和え 向付:鯉の洗い、平目 腕盛:地鶏のスープつみれ 食事 食事 替鉢:豊後牛の温泉蒸し 焼物:柚子釜牡蠣、椎茸、ねぎ 食事 食事 煮物:雲丹かぶら、里芋、春菊 蒸物:百合根茶碗 酢物:自然薯のつみれ 食事 汁:スッポンスープ ご飯
    さすがに、ごひいきの青山「穂積」には、総合評価では勝てない ものの、充分匹敵する味。  豊後牛のローストビーフのこってりした味!  ゆず釜の美味しいこと!  シイタケはこの辺の名産だから大きくて、美味しい。  何より料理の美味しいお店は、白いご飯が美味しい。  しかもここでは、私の大好きな胡麻を、すりゴマにして、ご飯に かけて食べる趣向になっている。私のいちばん好きなパターンだよ、 これは!  きゃらぶきも、お漬け物も、みんな美味しい。  デザートが4品もついている。  牛乳をそのまま固めたようなアイスクリームがおいしい!  ああ、もう今、後ろから誰か、ハンマーで「ばこーーーん!」と ひっぱたいて、死なせてくれたら最高!というくらい、幸せ!    食後はやっぱり露天風呂。  仲居さんが入れておいてくれた温泉は、温泉そのものの温度なの で、50度以上になっていた。熱いなんてもんじゃない。必死にお 水でぬるめて、やっとのことで入る。  泉質的には、このあいだの別府の「芙蓉倶楽部」のほうが、よか ったけど、こっちは何たって露天風呂ですからねえ。悪いわけがな い!     布団は、もちろん羽布団。  きょうだけはさすがにTVを見ながら寝るクセもやめる。  あっというまに眠りについてしまった。
 


12月19日(日)


 昨日やんだ雪が、また朝からチラチラ降っている。
 庭の灯籠の上にかすかに積もっている。
 南天の実の赤い色を変えるほどの白さにはなかなかならない。
つばき
    しかし、この冬、初めての雪を九州。湯布院で見ることになると は思ってもいなかった。  午前8時。朝食。
あさ あさ
    またまた朝から豪勢な食事。殿様気分ですのー。  焼き魚をわざわざ炭火で焙ってから、食べる。  日本旅館ではかかせない海苔も、炭火で焙ってから、食べる。こ の海苔の食べ方は絶品だねー。  湯豆腐にゆずジュース。  菜飯ご飯もおいしゅうございました。  何の文句もございません。  なんだかこの「亀の井別荘」を去りたくないんだけど、いつまで もこうしているわけにいかないからねえ。  後ろ髪を振り切って、「亀の井別荘」を後にする。  でも荷物置いておいてもらって、あとから取りに来る予定なんだ けどね。少しは湯布院を取材していかないと、罰が当たる。  午前10時。九州自動車歴史館。  まるで覇気のない朽ち果てそうな博物館だけど、陳列されている 自動車はけっこういぶし銀。フォークのすっぽ抜けのような珍しい 車を展示している。  だって、オート三輪車を展示するなんて、変だよ。  ふつう格好いいスポーツカーを多く、展示するもんでしょ?  営業車のほうが多いんだもん。
くるま くるま くるま くるま
    ダイハツのミゼットをやたら自慢気に展示してるし、くろがねベ イビーなんて、私が子どもの頃、近所の八百屋さんでつかっていて、 よく運転席に乗せてもらったものだ。  なにしろ運転席がハンドルではなく、バイクの形をしているのだ。  しかし私が子どもの頃、味わったものは確実に、博物館の歴史的 記念物の側に陳列されて行くなあ。みんなリアルタイムで見たこと あるものばかりだ。  さらにお土産物屋街を歩く。  辻馬車通りという、いかにも女の子たちが喜びそうな通りだ。  さすがに寒いので、今、辻馬車はお休み中だそうだ。  この年で、馬車に乗るのはちと恥ずかしい。    午前10時30分。由布院駅。  戸田圭祐、貴ちゃん(江口貴博)と、いっしょに見た、由布岳の 素晴らしさを嫁にも見せてあげようと思ったのだが、きょうは山頂 に大きく雲がかかってしまっていて、美しくない。    午前11時。日本旅館「花の庄」のラウンジ。  ここから見る由布岳が美しいと聞いたので、駅から歩いて来た。  たしかに美しい。
由布岳
    それにしても本当に、戸田圭祐、貴ちゃん(江口貴博)に申し訳 ない。あのときの私たちは本当に、まるでつまらない道、つまらな い道をわざわざ選んで歩いていたようだ。    このあと「亀の井別荘」に戻って、荷物を取って、そのまま別府 に向かう。  このあいだもそうだったけど、湯布院から別府に向かう山並みの 景色が好きだ。箱根の仙石原に似ている。 「牛食い絶叫大会」の場所も通る。  だだっぴろい高原で、絶叫とはうまいアイデアだ。  午前11時30分。別府のホテル「芙蓉倶楽部」に寄る。
芙蓉
    あの戸田圭祐と、3週間前3連泊した、あの「芙蓉倶楽部」だ。  私が3連泊もしたこのホテルを嫁にも見せたかったのだ。  どうせだから美味しいフランス料理を食べて行くことにした。い わゆる外から、ランチだけを食べに来たお客さんなわけだけど、あ のときの女性支配人がいて、「先日はどうもありがとうございま す!」というではないか!  私のことを覚えていたのだ。  3連泊したら覚えていて、あたりまえだと思うかもしれないが、 私と戸田圭祐はほとんど毎日あちこちでかけていて、ロビーにいた 時間は本当に少ない。  なのに覚えているのだ。  できる人は、やっぱり違う!  しかもさらにこの支配人には驚かされることになる。  フランス料理のランチを食べ始める。  すると、私の料理だけ、お肉などを小さく切って出してくれた。 私の手が不自由なのを覚えていたのだ。  このことにしても、私はあの3連泊で、ここのフランス料理を食 べたのは、たった1回だけである。  ここまでされたら、絶対また泊まりに来たくなる。  嫁も相当気に入ったようだ。  もし「亀の井別荘」が予約でいっぱいだった時は、この「芙蓉倶 楽部」に泊まって、湯布院まで行って、「亀の井別荘」のお昼ご飯 を食べるのもいいな。
ひる
    フランス料理のランチを食べているうちに、外の雪が激しく舞い 始めた。別府で雪? 湯布院は山の中にあるから、雪が降るかもし れないけど、海辺の一大温泉地である別府で、こんなに雪が降ると はびっくりした。  あとで九州一帯に大雪が降ったことを知る。 「芙蓉倶楽部」でタクシーをお願いして、別府駅へ。 電車の時間までまだ少しあるので、お土産物屋さんと本屋さんを覗 く。ついついまた本をたくさん買い込んでしまう。  午後2時13分。ソニック18号で、小倉駅をめざす。  車中『さくま式奥の細道』の仕様書作りを始める。
ソニック
    最初の予定より、格段に複雑な作りになって来た。Iモードゲー ムなんだから、できるだけシンプルに作りたいんだけどねえ。プレ イヤー側には気づかないけど、制作者側にとっては、超大作になり そうだ。  ん? どうも『奥の細道』での松尾芭蕉の日程表で、気になると ころがあるなあ。秋田の新庄に2度戻っているのかな? そんなわ けないぞ! ・尾花沢…5月17〜28日。 ・大石田…6月28〜30日。 ・新庄…6月12日。  どうもこれが謎だ。このところずっと1カ月くらい、ここの場所 で疑問が湧いて、マップを作ることができない。  午後3時21分。小倉駅着。  別府から小倉までわずか1時間とちょっと。こんなに近いんだ。  もっと利用してもいいな。  嫁と門司港駅まで行って、またバナナようかんでも買おうと思っ たのだが、このまま京都に向かうと、早い時間に京都に着くことが できそうだ。  そのままのぞみに乗る。  午後3時27分。のぞみ24号。  引き続き、新幹線のなかで『さくま式奥の細道』の仕様書作り。  何度も何度も繰り返し講談社学術文庫版の『おくのほそ道』を読 む。受験勉強のように、気持ちよく眠くなる。  しばし寝る。  午後6時09分。京都駅着。  タクシーで寺町の電気街に行き、嫁だけ降りて、タニヤマ無線の 鈴木千華雄くんにVAIOを見てもらう。  私はそのまま京都のマンションに行く。  私がいてもいなくても、VAIOの修理に用がない。わっはっは。 いばってどうする!  午後7時。京都のマンションに到着。  すっかり自宅に帰って来た気分。  午後7時30分。嫁と寺町通りで待ち合わせて、「忘吾(ぼあ)」 に行く。   嫁が持ってきた予備用のVAIOは、設定ミスなだけで、インター ネットも接続できるようになったようだ。  私のVAIOは相当やっかいで、わざわざ今晩鈴木千華雄くんが家 まで持ち帰って調べてくれることになった。面目ない。  午後9時。帰宅。  旅の疲れがどっと出る。  VAIOの故障で中断した日記を書き始めたが、途中で気に入らな くなって、やめる。明日書き直そう!
 


12月20日(月)


 第2回九州旅行もようやく終了である。
 すでに京都のマンションにいる。

 午前中、夷川の家具街で、小さな机を購入する。ibookを年末東
京から持って来る予定だからだ。
 そのまま寺町電気街に行き、タニヤマ無線の鈴木千華雄くんに会
う。昨日持って帰ってもらったVAIOのことを聞きに行く。
 やっぱり相当やばいそうだ。
 ウィルスにやられたかもしれないという。
 Macのユーザーは全世界で5%しかいないので、愉快犯はMac
を相手にしていない。ウインドウズのほうがウィルスはポピュラー
だというではないか。
 VAIOで初めてウインドウズをしっかりつかったもんだから、ま
ったく気にしていなかった。
 まあ、ウィルスかどうかまだ定かではないので、鈴木千華雄くん
にそのまま預けて、精密検査をしてもらうことになった。ありがた
いことである。
 ずっと私は読者ページばかりやって来ていたから、読者出身者と
こういう形での晩年を迎えたいと思っていただけに、鈴木千華雄く
んとか、戸田圭祐のような、月刊OUTの頃からの愛読者というの
は本当にいいものだ。貴ちゃん(江口貴博)も、なかむら治彦くん
も月刊OUTの読者出身だった。

 午後12時。京都西陣の「鳥岩楼(とりいわろう)」に行く。
 親子丼が有名なお店だ。初挑戦。
 いかにも京都の古い町家のような造りで、長い廊下を渡って、2
階に上がって行く。
 丼が小さくて、私にはほどよい量だ。
親子丼
    かなり高得点だが、高台寺のほうの「ひさご」というお店が、親 子丼ではずば抜けているので、ちと旗色が悪い。  京都らしい風情も楽しめるのだから、観光客にはお勧めの店であ ることは確かだ。  午後1時30分。京都のマンションに戻る。  もう夷川から、机が届いている。  京都の家具屋さんはこの配達迅速性があるから素晴らしい。  東京だと、ほしいと思ったときも、どうせ「2〜3週間かかりま すねえ!」と言われてしまうんだろうなあと思って、買うのをやめ てしまうことが多い。  午後3時07分。のぞみ56号で東京に向かう。  2日前から始めているIモードゲーム『さくま式奥の細道』仕様 書作りの続き。  ん? ん?  ひょっとして?  おおーーーーーーーーっと!  ついに謎が解けたぞ!  松尾芭蕉、足跡行程の謎が! ・尾花沢…5月17〜28日。 ・大石田…6月28〜30日。 ・新庄…6月12日。  これがずっとわからなかった謎だ。  推理小説マニア以外の人は、ここを読み飛ばしてね!  尾花沢のすぐ近くの大石田に、何で1カ月後また戻って来たのか が謎だったのだ。大石田を越えて、新庄に行ってるし。新庄に行っ ているわりには、これまた尾花沢から新庄まで、半月もかかってい る。尾花沢から新庄まで直線にして、10キロちょっとの道のりし かない。変だ。  講談社学術文庫に書かれた通りの表記にする。 ・尾花沢…5.17〜28。 ・大石田…6.28〜30。 ・新庄…6.12。    これを以下のように解読すればいい! ・尾花沢…5.17〜28。 ・大石田…5.28〜30。(6を5) ・新庄…6.1〜2。(12を1と2に分ける)  まんま順路の通りになった。    な〜〜〜んだ、この文庫本の旅程表、単なる誤植だったんだ!  すでに20刷以上にもなっている本にこんな大きな誤植があると 思わなかったよー。  この文庫本、芭蕉マニアなら誰でも持っているだろうに。  誰も指摘しなかったのかな。  本当に解けてみれば、な〜〜〜んだの結末であった。  あまりにも拍子抜けして、安心したせいか思わずうたた寝してし まった。  まあ、これで『さくま式奥の細道』をよどみなく、書けるように なったのだから良しとしよう。  午後5時21分。東京着。  例によって、1カ月ぐらい旅に出ていた気分だ。  それにしても、前回の戸田圭祐との、全力疾走旅行。今回のVAIO 崩壊旅行と、どうしてこうもおもしろいネタばっか提供してしまう のだろうか?  どうやっても日記が長くなる宿命を背負っているかのようだ。  午後6時。自宅に戻る。  実姉とグルメ・バカ娘がなかよく遊んでいる。  実姉に「バカ娘の面倒をありがとうね!」とお礼を言う。  グルメ・バカ娘は昨日、一昨日と「ジャンプ・フェスティバル」 に行っていたそうだ。 「ハドソン・ブースの桃太郎ランドがおもしろかったし、いちばん お客さんが多かったよ!」と報告してくれる。  こういう能力だけは人一倍なんだけどねえ。    午後7時。家族3人と、実姉といっしょに、西麻布「内儀屋(か みや)」に行く。  どういうわけか、旅から帰って来ると、この「内儀屋(かみや)」 に来たくなるから不思議だ。  やっぱりここも白いご飯が美味しい。  旅行好きの実姉に、湯布院の話をする。  来年のホタルの季節には、湯布院にもう一度行きたいなあ。  何たって、ホタルをまだ見たことがないという夢が、最高の場所 で叶ってしまうのだ。これ以上の場面は無い。  午後9時。実姉を渋谷駅まで送って、帰宅。  さあ、これからVAIOが壊れた12月15日からの日記を書かな いと! 夏休みの宿題をため込んだ少年のように、これから大変だ。  それにノートまるまる1冊分に、桃太郎シリーズのアイデアが書 き込んである。それをまとめないと。  さらに『さくま式奥の細道』の仕様書の下書きが実はもうノート 1冊分になってしまっている。  これをまとめる作業もしないといけない。  旅の前後は、忙しすぎる。  気がついたら午前1時を回っている。早く寝ないと
 


12月21日(火)


 東京の自宅で起床。
 朝からずっと日記を書いている。ちっとも進まない。
 各地のホームページを覗き倒す。

 最近弟子の原口一也の更新ペースが遅いなあ。中尾淳並みの更新
の遅さだぞ!と虐めておこう。血液A型の原口一也のことだ。こう
いうたとえられ方をすると、相当頭に血が上るだろう。えっへっへ。
同類だからよくわかる。
 戸田圭祐の掲示板の漫画しりとりがえらいこっちゃになっている。

 柴尾英令くんの日記はやっぱりおもしろいなあ。
 へ〜。『どてらい男(やつ)』フリークだったんだ。私も花登筺
(はなと・こばこ)原作、西郷輝彦主演の『どてらい男』TVシリ
ーズはかかさず見てたくらい大好きだ。
 徳間文庫から出た『どてらい男』の文庫本全巻を、前回の無料ガ
レージ・セールに本当に断腸の思いで出してしまったのが、今さら
ながら悔やまれる。柴尾英令くんと、『どてらい男』ビデオ発売し
てよ!運動を起こそうかな? ビデオで残ってないと思うけどなあ。
 なんてこと考えてないで、早く日記を書き上げないと。
 更新が遅いと言われてしまう。

 午前11時。嫁と、表参道「アニバーサリー」で食事。
 サンドイッチにコーヒー。
 この店が注文して品物が届いたときに、その場でお金を払う方式
であることを忘れていた。すっかり九州の人になってしまっている
自分がおもしろい。

 食後、銀行に行く。
 カードの暗証番号を変えてもらおうと思って、受付の人に言った
ら、今はATMで、好き勝手にいつでも暗証番号を変えることがで
きるそうだ。へ〜〜〜。
 銀行自体すっかり私には縁がないものになっているので、やっぱ
り普通の人並みの生活はしないといかんなあと思う。
 きょうの暗証番号変更にしたって、25年前ぐらいに当時の電話
番号にしたから、ほとんどおぼろ気。このままだと絶対いつか忘れ
てしまうなと思っての変更だ。
 当時の電話番号から、もう4〜5回電話番号も変わっている。

 午後1時。青山骨董通り「カフェ・カビリア」でホット・チョコ
レート。おしゃなお店だと思ったら、洋服のトラサルディが出した
お店のようだ。直営店なのかどうかよくわからない。
 夜中までやってるようなので、便利なお店だ。

 午後2時。帰宅。
 ひたすら日記を書く。

 午後5時。日比谷シャンテ1Fの喫茶店で、原口一也と柴尾英令
くんと待ち合わせ。これから小学館のコミック編集部のパーティに
行く。もう1年が経ってしまったんだなあ。

 午後5時30分。帝国ホテル。
 昨日まで旅先にいたので、ものすごい人の数に圧倒される。
 まだ東京の人間に戻れていないようだ。
 とりあえず覚えていて、歓談した人たちの名前を書く。
 
 広井王子くんと、レッドカンパニーの小栗丈知さん。漫画家の万
乗大智さん。瀬尾週刊少年サンデー副編集長。『さくまあきらの正
体』のあとがきで、三宅克“くん”と恐れ多くも誤植してしまった、
三宅克さん、ビッグコミック系の統括部長さんだ。
 漫画家のとがしやすたかクン。山本直樹くん。このふたりは「小
池一夫劇画村塾」の後輩で、堀井雄二と同期生という面倒な関係。
おかげで知り合いなんだけどね。
 細野不二彦夫妻。『セーラームーン』の脚本家として有名な富田
佑弘さんとは、おひさしぶり!
 グルメ・バカ娘が大好きな神谷明さん。グルメ・バカ娘が単独で
いたときに、神谷明さんに娘とわかってもらって話しかけられたそ
うだ。グルメ・バカ娘は幸せ者だな。
さくま、広井くん、妹尾さん     さくま、とがしクン、細野夫妻 グルメ・バカ娘、神谷さん      奥山くん、さくま さくま、万乗さん、原口くん     片岡さん、さくま
    旭通信社で、アニメ業界の首領と呼ばれている片岡義朗さん。  キャラメルママの川熊恵子さん。テンユウの杉沢義文さん。  ちゃんと全員覚えているかなあ?  劇画原作者の早乙女正幸くんもいたな。劇画村塾の同級生だ。お なじく同級生といえば、高橋留美子さん。さすがにサイン色紙をね だる人たちで行列ができてしまっていて、先日の出版パーティに送 っていただいたお花のお礼をするのがやっと。  忘れちゃいけない、奥山豊彦くん。週刊少年サンデーの編集長だ。 『ジャンプ放送局』のせいで、私は集英社寄りの人間と思われがち だが、けっこう小学館との付き合いのほうが長かったりする。  集英社のほうは、連載が終わるとまったく電話ひとつ来なくなっ ちゃう社風のせいもあって、どうも疎遠になりがちである。  午後8時。ずっと立ちっぱなしで、腰が痛くなって来たので、パ ーティ会場を後にする。昔のように朝の6時まで付き合えるほどの 体力はもう無い。  午後8時30分。家族3人で、銀座資生堂パーラーで食事。  ビーフカレーライス。美味しいので、ついご飯をお代わりしてし まった。太る。間違いなく!  午後9時。つい帰宅途中で、「ルナ・アンジェロ」に寄って、コ ーヒーとプリン。間違いなく、さらに太る!  このお店が年内閉店なのが、本当に寂しい。  午後9時30分。帰宅。 『奥の細道』関連の本を読み倒す。たまってるビデオも少々。  もう身体がバキバキだと思ったら、明日は整体さん。見事なペー ス配分だ。
 


12月22日(水)


 午前10時30分。家族3人で、高円寺の整体さん。
 曲がっていた身体が、一発で治る。あいかわらず名医だ。
 きょうは娘までやってもらう。中学生のくせして肩こりしてるな
よな!

 午後12時30分。高円寺「ザボン」で、玉子ラーメン。
 鹿児島で、ザボンじゃないほうのラーメン屋さんに行ってしまっ
たので、無性に食べたくなっていた。
 グルメ・バカ娘にとっては初めてのお店だったので、ちょうどい
い。スープが美味しいね!と、相当気に入っていた。
 高円寺方面の人には、絶対お勧めのお店だ。
 たくわん食べ放題なのが、うれしい!

 午後1時30分。帰宅。
 整体さんに行くと、夏のプールに行って来たときのように、心地
よく身体がだるくなって、眠くなる。いつもはこの整体さんのあと
にも仕事を入れてしまっているのだが、きょうは人に会う仕事を入
れていないので、ここぞとばかりに寝る。

 眠いのをガマンしているときに入るベッドの心地よさは、至福だ
ねー。自分のいびきが聞こえるようなグーグー…だ。

 午後5時。寝過ぎた。
 家族3人で、新宿に出る。12月中旬から再オープンすると書い
てあった、とんかつの「王ろじ」に行くが、まだ閉まっているよう
だ。もう22日だよ。下旬になっちゃってるよ。
 グルメ・バカ娘が12月に入ってから、何度も行きたい、行きた
いとうるさいから、早くオープンしてくれいっ!

 午後7時。新星堂でCDと、宇多田ヒカルのビデオ買って、いろ
んなお店が満員で入ることができなくて、とうとう航海屋ラーメン
に落ち着く。ご主人の萩原さんもいない。
 年末の新宿はさすがにどの飲食店も混むねー。
 このバイタリティが新宿のすごさだな。
 
 午後7時30分。伊勢丹1Fの喫茶店で、コーヒー。
 思わずケーキを食べて、まんまと太る。今年最高の体重を記録し
てしまった。これは本当にやばいぞ! 宮路一昭くんになってしま
う!

 午後9時。帰宅。
 ようやく地味な1日をすごせた。
 でもやらなきゃいけないことは山積み。 
 


12月23日(木)


 午前11時。近所の「ワンズ・バーガー」に家族3人で行く。
 最近出来たばかりのお店。よく50年代のアメリカっぽいカフェ
を再現したお店は多いけど、このお店の徹底ぶりはなかなかのもの
だ。
バーガー
    外観も見事だが、店内のパール色のイスは思い切ったものだ。こ の色が無いと、50年代に見えない。しかもふんだんにつかってあ るところがいい。  もちろん流れる曲は、エルビス・プレスリーを始めとする50年 代ポップス。といっても私は1952年生まれだから、50年代ポ ップスはリアルタイムではない。  私はやっぱりビートルズ世代なんだと思う。
バーガー
   ハンバーガーは、がぶっと噛んだとたん、肉汁が泡のように吹く すごいものだっ。絶品というほどでもない。  とにかく肉汁がだらだらとこぼれるので、食べづらい…と思った ら、ぽろっと、ひさびさに歯が抜けた。  歯が欠けたではなく、ブリッジを架けた3本の歯だから、抜け方 が豪快だ。身体が疲れて来ると、歯が抜ける。身体がシグナルを送 り始めたな。  無理をしないように気をつけよう。  食後、嫁とグルメ・バカ娘は近所の家具屋さん、インテリア・シ ョップを覗きに行く。私は帰って、昨日までの日記を一気に書き上 げる。  午後3時。グルメ・バカ娘とゲーム部屋に行って、『奥の細道』 関連の本を探しに行く。100冊ぐらいあるのだ。何だかんだで。  探すついでに、もう一度、見たい読みたいビデオや本がたくさん!  ああ、いかん、いかん。持って帰ってはいけないと言いながら、 『日本史探訪』の文庫本(角川文庫)を1〜8巻まで持って来てし まう。  今週の日曜日、また戸田圭祐とこの部屋を片づけるから、いろん な本が読みたくなってしまいそうだ。  午後5時。銀座博品館裏の「鮨金総本店」に行く。  毎年お寿司の食べ納めは、このお店で終えることにしている。  札幌のハドソンに行っていた時代、函館で知り合った福田さんが いるので、ずっとこのお店をひいきにしてる。もっとも最近ほかの お店に相当浮気しているので、ちょっと後ろめたい。
バーガー
   このお店では、忘れずサーモンのお寿司と、イカを食べることに している。締めはいつも、ホタテの磯辺巻き。大きなホタテを醤油 で焼いて、海苔を巻く。これがうまいんだっ! ホタテが嫌いなグ ルメ・バカ娘がこれだけは食べるからね。  午後5時30分。食後、椿屋珈琲店で炭焼きコーヒーを飲む。古 めかしい造りのお店で、大正浪漫というより、昭和初期のお店とい った感じかな。  あとは家に帰って、ひさしぶりに、のんべんだらりんとTVでも 見るか…あっ! ひょっとして!? 「ひょっとして、きょう『エーベルナイ2』の録音日?」  ラジオがあったことを思い出す。でもスタジオ入りの時間の連絡 はなかったぞ。いつも通りの午後7時でいいのかな? 午後7時な ら今からでも間に合うぞっ!  うひょ〜〜〜!  最近本当に仕事の時間をちゃんと知らせてくれない人が多すぎる。  困ったもんだ。  もし行って、私の出番じゃない日だったら、どうしよう。  そうだ、三石琴乃さんがつい最近入籍したんだ。そのお祝いに行 くつもりで行けばいいや! ちょっとわけのわからない納得の仕方 だな。  そうだ。今、銀座にいるんだから、三石琴乃さんが大好きな「ア ンジェリーカ」のモンブランケーキを買って行こう。  プランタン銀座まで行って、モンブランケーキを購入。  午後7時。文化放送。やっぱり私の出番はきょうだった。もしあ のまま忘れて行かなかったらえらいこっちゃだ。なにしろすでに先 月連絡が間に合わなかったので、出演していない。  まずは三石琴乃さんに「おめでとう!」。  三石琴乃さんが「すみませーーん。入籍のお知らせのハガキを出 したんですけど、戻って来ちゃってー!」と、宛先不明のハガキを いただく。なるほど微妙に住所を間違えている。  放送のほうは例によって、あっというまに終了。  なんと1月9日放送分の収録である。 「あけましておめでとうございます!」と放送で言って、スタッフ のみなさんには「よいお年を!」と言って、スタジオを出る。  わかりきった風景だけど、いつもながら不思議だ。  午後7時30分。帰宅。  やっとこれからのんびりとしたい。  最後の『当方見聞録』をアップさせないといけないんだけど、も うしばらく待っててね。おじサン、ちょっと本格的にへばってるか ら。歯も抜けちゃってるしさ。あー、歯が抜けたまましゃべってる と、あごが痛くなる。
 


12月24日(金)


 午前10時。杉並区上井草の「細見デンタルクリニック」。
 昨日抜けた歯を入れてもらう。
 いつものように私だけ予約無しでもやってもらえるので行くが、
さすがに開店時間なので後まわしにされる。
 ハドソンの梶野くんたちとの午前11時の待ち合わせまでに戻れ
そうもない。

 午後12時。自宅近所の「ルナ・アンジェロ」まで戻る。
 すでにみんな集まっている。
 予告はしていたけど、本当にみんなサンタクロースの格好をして
来た!
サンタ
    ハドソン桃太郎事業部の梶野竜太郎くん、武田学くん、石崎仁英 くん、國政修くんの4人!  ジャンプ・フェスティバルでも、この格好で通したそうだ。その 格好でそのまま来ることないのに!  まあ、原宿だから、ちっとも珍しくない格好だけどね。  宮路一昭くんも来るはずだったんだけど、体調を悪くして、途中 で帰ってしまったそうだ。九州旅行での食べ過ぎが響いたか?  とりあえず食事しながら、『桃太郎電鉄V』の売り上げ状況とか、 ジャンプ・フェスティバルの話などを聞く。  午後2時。自宅に戻り、おなじメンバーで新作ゲームの打ち合わ せ。この新作ゲームの仮の名前を何にするばいいんだろう。言えば 言うほど、内容がバレて来てしまうからなあ。『桃太郎電鉄』シリ ーズではないと言うと、よけい解説を加えないといけない。  う〜ん。『桃2000』にしとこうか。 『伊吹童子(仮)』は、『桃2000』のなかに収録される。おっ とっと! これ以上はさすがに言いすぎだぞ。  午後3時30分。ビー・アール・サーカス出版の森澤明夫くんが 『さくまあきらの正体』の生原稿を届けてくれる。  午後4時。美容室「ヘアストリート」に行く。  またしても偶然鈴木勝裕社長がいたので、雑談。  来年4月からのドラマが決まったそうだ。  社長も出演するそうなので、お楽しみに。また近くなったら話題 にできるかな。  午後6時30分。嫁とグルメ・バカ娘と表参道で待ち合わせる。  毎年やっていた表参道のイルミネーションはついに中止になり、 何ともみっといもない提灯がずっと、原宿から延々表参道まで続い ている。  まるでグレイのコンサートのあとに、北島三郎が出て来たみたい に場違いだ。
提灯
    さすがにクリスマスの原宿なので、どの飲食店も満員。  渋谷方向に歩いて行くと、「ぴえろのてしごと屋」というおでん 屋さん風居酒屋があったので入る。  岩海苔のリゾットとか、北京ダック風の鶏肉、山形牛の石焼き、 軟骨のガーリック揚げなど、けっこうどの味も良くて、お店の雰囲 気もかなりいい。  ただわざわざクリスマスに来ることはなかったような気がする。  午後8時30分。帰宅。  26日か、27日には京都に行くので、やらなければいけない仕 事&雑事がたまっていて、大変だ。あまり文句言いたくないけど、 業界人の「喪中につき…」のハガキが遅すぎるよ! あやうく年賀 状出しちゃうところだよ!    今夜の午前0時40分の『明石屋サンタ』で、『桃太郎電鉄V』 のCMを見ることができるので、お楽しみに。ゲームショウで話題 になった、すちゃらかテレビも出るみたいだよ。  起きていられるかな? 
 


12月25日(土)


 午前11時。原宿駅で、京都行きのキップを買う。
 明後日27日に京都に行くことにした。
 当初明日からの予定だったが、年賀状とか、ホームページのこと
とか、ゲームの仕様書をフロッピーに入れる作業とか、やることが
たくさんたまっている。

 午前11時30分。渋谷109の前で、最古のさくまにあ・戸田
圭祐と待ち合わせ。大阪在住なのに本当に何度もこの日記に登場す
る男だ。
 きょうは、私の弟子の原口一也たちと忘年会で上京して来たそう
な。すっかり「ゴチになる会」のメンバーとなかよしになって、こ
うして遊んでいる。いいことだ。

 渋谷109の8F「紅虎餃子房(べにとらぎょうざぼう)」で食
事。いつものように、高菜あっさり土鍋ご飯に、鉄鍋餃子、餅米入
りシューマイも注文するが、どうもどの品も、麻布十番店のほうが
おいしいのはなぜだ。これで2回連続そう思った。あと1回だな。
 食後、6Fの「マ・メゾン」でカフェオレ。ブック・ファースト
1Fの喫茶店とおなじお店であった。
 減量中なので、おいしいケーキを断念する。

 午後1時30分。戸田圭祐は原口一也の事務所へ、私と嫁は自宅
へ戻る。

 最後の『当方見聞録』を選ぶ。
 案の定、おもしろい。『チョコバナナ』のときもそうだったが、
休刊が決まると、ぐ〜〜〜んとレベルアップする。
 今回もまたそうだ。
 よく親が死んだりすると、みちがえるように成長する人は多い。
 けっきょく私がいるかぎり成長しないようだ。 
 もっと早くやめるべきだったな。

 午後4時30分。赤坂のおそば屋さん「砂場」で、大もりそば。
 午後5時。TBSラジオで『有限会社 桃太郎商店』の録音。
 きょうはなんと、12月28日放送予定の『有限会社 桃太郎商
店・年末特番』である。いつもの倍の1時間番組だ!
 過去、私が関わった番組で、特番が組まれたものなど一度もなか
っただけに、うれしいかぎりだ。
 でも残念なことに、急に決まったので、吉野紗香ちゃんが参加で
きなかった。代わりに、ホリプロのアイドル・堀越のりチャンが出
演してくれた。
 さらに残念なことに、デジカメを持っていくことを忘れたので、
堀越のりチャンの画像をお届けすることができない。高円寺の整体
のお兄ちゃんの弟のほうに、見せてあげようと思っていただけに、
残念!

 元プロデューサーの牧さんが、スタジオに現れて、不二家のケー
キを差し入れしてくれた。『さくまあきらの正体』を読んで、クリ
スマスはやっぱり不二家のケーキと思って、持って来てくれたのだ。
昨日食べる予定がタイミングが合わなかっただけに、うれしい。し
かも減量中でケーキ断ちしてるけど、プロデューサーの牧さんから
とう大義名分があるので、これ幸いと食べてしまう。
 石井正則くんは、必死にケーキを敬遠する。
 彼も減量中である。

『有限会社 桃太郎商店』は忘年会スペシャルということで、ホリ
プロの若手芸人も出演してコントを披露した。
 チョーダイ!、胡蝶蘭、江戸むさらきの3組。
 
 どの若手も上手い。でもまだ爆発的には売れていない。
 売れている人との差は、たぶん3センチ程度の差しかない。でも
その3センチほどの壁をぶち破るのが大変なのだろう。

 ネタ作りというよりも、ネタの捨て方がうまくないのだと思う。
 4本コントをやったとして、おもしろいのに、ほかのネタとバラ
ンスの悪いコントが1本入ってしまう。
 これがわかるようになるのには、時間がかかるんだろうなあ。
 
 それでも胡蝶蘭のふたりには、注目して行きたい。
 120キロ以上の巨漢の女の子がおもしろい!

 午後9時。4時間かけて、特番を収録する。
 若手芸人たちのパワーに、ぐったりへばる。
 アリtoキリギリスのふたりも「何だかわからないけど、疲れた」
「酸欠になっちゃたよー」と言っていた。
 必死にケーキをガマンしていた石井正則くんが、たまらず不二家
のケーキを食べる。
 疲れたときのケーキは、おいしいからねー。

 しかし、さらにアリtoキリギリスと私は、1月10日放送分の収
録が残っている。またしても吉野紗香ちゃん抜きだ。むさくるしい!
 この放送分は来年収録する予定だったんだけど、そうやっても吉
野紗香ちゃんのスケジュールが合わない。ドラマが入ると、本当に
天気次第でスケジュールはどんどんガタガタになってくる。

 午後11時。帰宅。
 気がつけば、延々6時間の収録であった。
 年末最後の挨拶をして帰る。
 人なつこい顔で「おつかれさまー!」と叫んでる、石塚義之くん
は本当にかわいい。彼の人の良さが来年は浸透してほしいと思う。
石井正則くんは順調に1歩1歩階段を登っている。

 今年こうしてアリtoキリギリスのふたりとラジオ番組をやれた
ことは、大きな刺激になった。
 ありがとう! アリtoキリギリスのふたり!
 


12月26日(日)


 朝から、京都行きの準備。
 明日からでかけて、1月6日に帰って来る。
 インデックスさんの打ち合わせを1月7日に出来るといいなと思
っています。土居ちゃん(土居孝幸)もいっしょにね。
 ってここで書くと、それまでに『さくま式奥の細道』を完成させ
ないといけないんだよなあ。
 お正月休みって、けっこうあるようで、あんまり時間無い。

 午前10時。最古のさくまにあ・戸田圭祐のホームページの日記
が上がっていない。これは弟子の原口一也と朝まで生テレビになっ
たな。

 午前10時30分。地獄からのような声で、戸田圭祐が電話して
くる。帰って来たのは、午前7時だったという。

 午前11時。家族3人と戸田圭祐で、新宿のとんかつ屋「王ろじ」
に行く。12月中旬から再オープンだというのに、ちっとも開かな
いとここで文句を言っていたが、実はうちが水曜定休のときにばか
り行っていたようで、12月10日から再オープンしていたそうだ。
 店内がちょっと広くなって、壁も塗り変わった程度で、あとは味
も器もみんな前のまま。いつもの美味しいとんかつセットであった。
豚汁は前より美味しくなった気させする。机がきれいになったのも、
よかったな。

 食後、私と嫁と戸田圭祐は、新宿買い出し紀行。
 シックのシェーブジェルを大量に発見。大喜びで10本購入する。
サンテ40も買う。最近目薬無しだと、朝、目を開けるのがつらい。
 
 午後12時。喫茶店「トップス」で、3人揃って、ロイヤルミル
クティー。

 午後1時。戸田圭祐が、有馬記念を買いたいというので、新宿の
場外馬券売り場に行く。私は見たことがないので、おもしろそうだ
からついて行く。まるでお正月の参拝客のような人数の人間がかな
り早い速度でよどみなく進んでいく。
 私は外で待っていたのだが、そのうち戸田圭祐が「とてもやない
けど、人が多くて買えまへん。戻って来てしまいましたーー!」と
すごすご帰って来た。

 午後1時30分。ゲーム部屋に戻って、戸田圭祐と部屋の片づけ。
 土居ちゃん(土居孝幸)に電話して「大量のJBSの生原稿を宅
配便で送るから!」という。
「うっ……………」
「土居ちゃん、うめくのやめてくれよ!」
「まだ大掃除もしてないのに、荷物が増えるのか、イヤだなあ!」
 この人は、自分の生原稿に対する思い入れというものは無いのだ
ろうか? いや無い、ってやつなんだろうなあ。変なおじサンだ。

 午後3時。土居ちゃん(土居孝幸)の荷物をペリカン便して、近
所の「EATS」で、チャイを飲む。
 
 嫁も合流して、書庫のほうをいよいよ最後のお掃除。
 部屋が本当に、がら〜〜〜んとなった。
 けっこう戸田圭祐はここで何日も泊まっただけに感慨深げ。

 さらにゲーム部屋のほうを片づける。
 こっちのほうも、だいぶ部屋らしくなって来た。
 このゲーム部屋のあるマンションに、最近泥棒が入ったそうで、
先日もおまわりサンが来て「何か盗まれた物ありますか?」と聞く
けど、ずっと書庫から、ゲーム部屋に、本とかビデオとかゲームと
か輸送していたので、盗んでも私以外に価値の無いものばかりだし、
今だと盗まれたとしても、どれが盗まれたかわからない。
 
「この部屋によく泊まる人はいますか?」と聞かれたので、真っ先
に中尾淳くんの名前を挙げておいた。警察さんから電話が行くかも
しれないからお楽しみにね! 挙動不審、フリーター、愛知県から
なぜここに泊まりに来る? う〜ん、条件整ってるなあ。わっはっ
は〜。

 午後5時。自然食のお店「ナチュラル・ハーモニー」で食事。
 岩のりと温泉卵のサラダが美味しい。
 そして何より、黒ゴマ付き玄米ご飯が、ほどよい固さで、実に美
味しい。最近ぐんぐん登場回数が増えているお店だ。 

 午後7時。帰宅。
 年賀状を書いたりしながら、京都行きの準備。
 あとから今年最後の鍼灸師の弓削くんに来てもらう予定。
 


12月27日(月)


 昨夜、鍼灸師の弓削くんが今年最後とあって、がんばりすぎたせ
いで、もみ返しが来て、身体がだるい。
 少し気が緩んでいるせいもある。
 まだまだ仕事はたくさあん残っているし、関西でラジオに出る仕
事もあるので、風邪を引いてはいけない。

 わが家は、京都に行く準備で大騒ぎだ。
 わずか10日間ほどだが、宅配便作りをしたり、ゲームの仕様書
を全部フロッピーに入れたり、手で持っていく資料と、郵送する資
料と分けたり、旅行中の新聞を止めたり、年賀状を郵便局止めにし
てもらったりと、こまかい作業が多い。

 午後12時。近所の「月の光」という新しい定食屋で、鶏の唐揚
げ煮。600円と安いだけの美味しさ。文句を言ってはいけない。
それより1カ月間通らなかった道に、必ず新しいお店がオープンし
てしまうのが、原宿の恐ろしいところだ。

 午後1時。家の並びの喫茶店「らぴす」サンで一息つく。
 最後の『2コマ漫画劇場』のハガキも選んだけど、どうにもスキ
ャナが間に合わないので、アップは来年ね! 
 
 さらに家で、京都行きの準備に追われる。
 書ききれなかった年賀状を宅配便に入れて、輸送する。何か矛盾
してるような気がする。

 新幹線までの時間がだんだん無くなってくる。
 何か忘れたような気がしながらも、タクシーに乗り込んで、東京
駅をめざす。
 年末でいつもより、車が渋滞しているので、心配したけど、20
分ほどで到着。あいかわらず東京駅が近い!
 
 午後2時56分。のぞみ19号。
 今週の週刊文春を読み出したら、真剣に読んでしまった。やっぱ
り今いちばんいい取材をしている週刊誌は、週刊文春だなあ。2位
は週刊朝日、3位は、なぜかアサヒ芸能。エッチ記事が多いが、社
会派のネタの取材がけっこう的確。
 1時間半もみっちり、週刊文春を読んでしまった。
『おくのほそ道』(講談社学術文庫)を読む。眠くなる。もはや条
件反射だな、これは…。 

 午後5時10分。京都駅着。
 午後6時。年末のバカ家族が行くところと言えば、もちろん「M」!
 私は、約2週間ぶり。
 何でも『月刊デジタルさくまにあ』の読者が、この「M」を訪ね
て来たそうだ、誰だろ? あんくるクンか?
 まさか「M」までは来ないだろうなあ。
 探し当てた根性は見事だ。

 グルメ・バカ娘は例によってもう、「幸せ…」の連発。
「幸せ…」「ふに〜」。
 ひとくち食べるごとに…。
「幸せ…」「ふに〜」。
 カニを食べるとき、少しおとなしくなって、また。
「幸せ…」「ふに〜」。
 きょうは、あらかじめ、カモ鍋をリクエストしておいた。
「幸せ…」「ふに〜」。
 カモ鍋は、カモに天ぷら粉をまぶして、水菜とわさびを入れた鍋
でぐつぐつ煮る。粉にとろみが出て、おいしい。
「幸せ…」「ふに〜」
 グルメ・バカ娘が、真っ赤っかな顔をしている。鍋のせいだ。
 ふ〜〜〜、食べ過ぎた〜。

 午後8時。お腹が苦しいので、歩いて帰る。
 少しは腹ごなしをしないとね。

 午後8時30分。京都のマンションに到着。
 さっそく『さくま式奥の細道』の仕様書作り。
 京都にいるあいだに、この仕事を完成させないといけない。
 さ〜て、どんな風なゲームになるかなあ?
 


12月29日(水)


 朝からiモードゲーム『さくま式奥の細道』の仕様書作り。
 ワイドショーで、オウム上祐史浩の出所騒ぎを見ながら、仕様書
作り。ただひたすら大事件が起きないかと、ずっとカメラを回し続
けるマスコミ。冷静に考えると不思議な国だ。
 体調のほうは、昨日すぎやまこういち先生の奥様から勧められた
 クマザサ茶のせいか、すっかり元気!
 
 午前11時30分。寺町蛸薬師の「有喜(うき)屋」で、すぎや
まこういち先生ご夫妻と待ち合わせ。
 おなじみホイップクリームのような、納豆の有喜(うき)そばを
食べる。
 食後、四条通りの「林万昌堂」2Fの喫茶店に寄る。
 甘栗を売っているお店なので、コーヒーを注文しても、甘栗が付
いてくる。グルメ・バカ娘が注文した栗饅頭が、今まで味わったこ
とのない、シャープな甘さで美味しい。また一品おいしい甘い物を
発見してしまった喜びと悲しみがハーフ&ハーフ。

 午後12時46分。阪急電鉄京都線。四条河原町駅。
電車
    2家族揃って遠足気分で、どこへ行くかというと、大阪梅田駅。 実は遠足では無くて、毎日放送で2000年1月1日午後5時45 分〜7時25分まで、放送予定のラジオ特番『すぎやまこういちの 電子遊戯博物館2000』の収録に行く。  午後2時。毎日放送。  この日記ではけっこう半年に一度くらい登場する、おなじみ毎日 放送のラジオ・スタッフ! 堀田到さん、柏木アナウンサー、西ア ナウンサー、放送作家の内木場くん。
MBS すぎやま奥様、宮本さん、すぎやま先生 MBS さくま、グルメ・バカ娘、柏木アナ、西アナ 収録 収録風景
    西さんは、今回の『桃太郎電鉄V』で、富士山麓宇宙センターか らの中継の場面で登場する、あの西アナウンサーだ。  最初は、すぎやまこういち先生と私だけが出演かと思ったら、ほ かに出演者が!  あの任天堂の宮本茂さんであった。  何て豪華な番組なんだ!  さらに電話出演で、堀井雄二くん!  とてもラジオ番組とは思えない豪華ゲストでしょ?  宮本茂さんは、5〜6年ぶり。  番組を収録しながら、宮本茂さんが、新しいハードについて話し てくれるので、すっかり勉強になってしまう。私はハードの情報に うといからねえ! 自慢にならんけど。  放送の方は、柏木さんが堀井くんに執拗に、『ドラクエ7』の発 売日を言わせようとしたり、宮本さんがみんなのリクエストに答え て、そのゲームを作ります!と宣言したりして、かなりスクープ満 載の番組。私も恒例のポロリ。大阪だとつい口が軽くなる。  午後5時15分。正味100分の番組を3時間近くかけて収録。  午後5時30分。すぎやまこういち先生ご夫妻と、大阪リーガロ イヤルホテルに行く。昔大阪ロイヤルホテルといっていたホテルだ。 すっかりきれいに大きくなっていた。  ここの地下の「吉兆」のしゃぶしゃぶが美味しいというので、わ ざわざ寄り道して帰ろうとする、食い道楽さんたちであった。  しかし、ショックな出来事が!  すぎやまこういち先生ご夫妻もいて、食い物の神様・グルメ・バ カ娘がいるというのに、「吉兆」が、きょうのみ臨時休業の貼り紙 が張ってあるではないか!  くわしく理由を書いていないので、よっぽどの緊急事態があった のだろう。老舗だけに、ちょっとやそっとのことで休むわけがない。  とはいえ困った。  このお店めざして来ただけに、代替え案を持たずに来てしまった。  とりあえず、地下のお店のメニュー表を見て歩く。    すぎやまこういち先生の足が、一軒のお店の前で止まる。  かなり長くじーーーっと見ている。  でもグルメ・バカ娘がいない。ふらふら遠くまで歩いていってい る。グルメ・バカ娘のセンサーが激しく働いているようだ。  グルメ・バカ娘が戻って来た。 「どこかいいお店あった?」 「ここ!」と、指さしたお店は、すぎやまこういち先生がじーーっ と、メニューを見つめている「つる家」であった。  グルメ・バカ娘とすぎやまこういち先生が気になるお店なら、間 違いあるまいと入ることにした。  メニューにあった料理は、かぶら蒸しのコース。  昨日もかぶら蒸しを食べたのに、グルメ・バカ娘が入りたいとい うようなお店だから、まずいわけがない。  前菜からして、美味しくて、風呂吹き大根風のかぶら蒸しのやわ らかくて美味しいこと! 貝殻のスプーンで、すーーーっとすくえ るやわらかさ! やわらかい食べ物評論家の戸田圭祐が歓喜しそう なくらいの美味しさである。  鯛かぶらの鍋が、私は美味しかった。  最後の最後まで、鯛を食べ続けてしまった。
つる家 つる家 つる家 つる家 つる家 つる家
   「吉兆」が休みだっただけに、一時はどうなるかと思ったけれど、 こんな美味しいお店にぶち当たるとは、何てラッキーなんだろう。    この「つる家」は、京都岡崎にも支店があるようで、これがまた ものすごい広さの日本庭園。  故・ダイアナ妃、フォード大統領、各国主席、要人が訪れるよう なお店らしい。あっちも行ってみるかな。値段高そう。  午後7時30分。淀屋橋駅へ。  すぎやまこういち先生ご夫妻となかよく京阪電車に乗って、京阪 三条駅へ。2階建て新型電車なので、きれいな車両だ。  午後8時30分。京都のマンションに戻る。  昨日からグルメ・バカ娘と『桃太郎電鉄V』を始めたので、その 続きをやったり、年賀状を書いたり。   きょうくらいは、このまま休んで眠りたいけど、もう少し『さく ま式奥の細道』の続きをやろうかな?  放送作家の福本岳史くん! 『さくま式人生ゲーム2(仮)』の ほうのメッセージを頼むよーー! 1月7日が締切りねー! ふっ ふっふ。これで福チャンのお正月は無くなるだろう。私のお正月は すでに無い…。  不景気なご時世、お仕事あるだけでもありがたいと思わないと。 
 


12月30日(木)


 朝から、グルメ・バカ娘がやっている『桃太郎電鉄V』を見なが
ら、最後の年賀状書き。
 一昨日いきなり『桃太郎電鉄V』で、独走態勢に入ってしまった
ので、娘がいっしょにやってくれない。

 午後11時30分。電気屋さんからの洗濯機が届かないので、交
代で食事に行くことに。
 私はグルメ・バカ娘といっしょに、京都文化博物館内の「きた村」
に行くが、案の定年末年始に入って、お休み。
 きょうぐらいから、どんどんお休みのお店が増えて来る。
 仕方ないので、近所の「レッドラバーボール」で、昔風ホットド
ッグにカフェオレ。
 ここのホットドッグは本当に美味しい。
 きょうはつられたグルメ・バカ娘も、ホットドッグを食べて「お
いしいよ!」と驚いていた。

 午後12時30分。マンションに戻って、グルメ・バカ娘がやる
『桃太郎電鉄V』を見る。細かい部分での手直し箇所が浮かぶので、
メモっていく。
 完成から少し間を置いて、こうして見てみると、あそこを直した
い、ここを直したいと浮かぶからおもしろい。
 また次の新作を作りたい気分になってくる。

 午後3時。ようやく、洗濯機が届く。電気製品1台のために、1
日が潰れてしまった気分。年末なんで、午前中、午後と指定できな
い状況だったのだから仕方ない。

 午後4時。ビデオで『トゥルーマンショー』を観る。
 インターネットの日記で私生活を公開している自分としては、オ
ーバーラップするものがあるのかな?という興味で観たのだが、映
画という虚構の上に、虚構の話を描くのは難しいことを教えてくれ
るだけだった。でもこういう意欲作は必要だとは思う。
 昔々観た『カプリコン1』を思い出させた。

 午後6時。嫁が美容院から帰って来た。
 映画を観てたので、身体がぼわ〜んとだるくなっていて、どこの
お店に食べに行きたいという強い欲求が湧かない。最近映画観たあ
とって、目の焦点が狂うせいもある。

 何軒か電話しても、どこももうお休みに入っている。
 こういうときは、やっぱり「忘吾(ぼあ)」だ!
 
 午後6時30分。「忘吾(ぼあ)」に行く。
 カウンターがちょうど私たち3人で、埋まったとたん、あとから
あとからフリのお客さんが入って来て、満員ですと言われて帰って
行く。タッチの差で、いいときに入ったものだ。
 その後も次から次へと、お客さんが入って来て、満員で帰るはめ
に。そのせいもあって、ご主人はもうへとへと、声が出なくなり始
めるくらい。

 京都は年末年始も観光客が多いから、お店が開いてるほうなんだ
けど、それでも絶対量が不足する。老舗の料亭なんて、平気な顔し
て1月10日までお休みなんてところもあるからね。
 京都は悠久の時間が流れている。

 午後10時。マンションに戻る。
 ぽつぽつ『さくま式奥の細道』の仕様書作り。
 やるかやるまいか悩んでいた箇所に、ついに手をつける決心をす
る。ゲーム作りでときどきこういう場面に直面するものだ。
 その作品の善し悪しを運命づける瞬間と言ってもいい。
 当たったときは、あのときの判断がよかったからだということに
なり、思ったより売れなかったときは、あのときの判断が悪かった
からだということにちゃんとなるから不思議だ。

 そんなわけで、もうしばらくお仕事!
 


12月31日(金)


 とうとう大晦日。
 午後12時。家族3人、「イノダ・コーヒ四条店」で食事。
ビフカツサンドに、フルールサンドに、イタリアンスパゲティ。

 食後、嫁は年末年始の残りの買い物にでかける。
 私とグルメ・バカ娘は、CD屋さんに寄ったり、大丸デパートで
カレンダーを買ったり、錦市場で、銀杏を買ったり、黒豆珈琲を買
ったりと、ぶ〜らぶら。
 錦市場は、ほとんど出口のあたりを歩いたので、ラッシュアワー
のような大混雑に巻き込まれずにすんだ。
 ふと、昨日頼んでおいた「忘吾(ぼあ)」のおせちを取りに行く
のを忘れていたことを思い出す。
 
 午後2時。「忘吾(ぼあ)」に行く。もう何組か私のように忘れ
ている人がいるようだ。
 京都の年末も、病気で入院した年を除けば、7〜8年連続になる
ので、さしたる新発見もない。2000年問題という文字のほうが
多いように思える。

 午後3時。すぎやまこういち先生が、新しいiモードに、また着
メロを入れてくださるというので、京都駅まで、買い換えの手続き
をし行くが、関東のNTTでやってほしいと言われる。
 けっきょく買えず終い。残念。

 午後3時30分。御池地下街のクイック・マッサージ「ナチュラ
ル・ボディ」で、身体の大掃除。

 午後4時30分。マンションに戻り、iモードゲーム『さくま式
奥の細道』の仕様書作り。3日間悩んでいた箇所をついに乗り越え
たので、スピードアップ! 年内完成の予定が大きくズレ込む。
 まだ半分も出来ていない。

 午後6時。「M」でいただいた特製カレーをマンションで食べる。
地味な大晦日。
 このあとも『さくま式奥の細道』を作りながら、『紅白歌合戦』
など見て、新年を迎える予定。

 そんなわけで、今年も1年間この日記を続けることができました。
 来年の12月で、石の上にも3年目。
 何とか3年は続けてみたいものだ。怠けるというより、健康のほ
うを注意しないと達成できないから、健康でいなくっちゃ!
 
 それでは2000年問題で何事もないことを祈りつつ、みなさま、
よいお年を! 
 

-(c)1999/SAKUMA-