6月4日(金) 午前10時すぎ。曇り空に、ぽつぽつと雨が降り始めている中、ひとりで東京駅に 向かう。 いつものように京都に行くのだが、寄り道旅行をどこにしようかと思案する。 決まらないまま、東京駅のみどりの窓口に着く。 午前10時56分発のぞみ11号まで、あと10分もない。 自分の整理券番号がなかなかアナウンスされないので、いらいらする。 とりあえず、乗車券は京都にして、名古屋駅までの特急券を購入。あと5分しかな いので、駅構内をぴょんぴょん跳ねながら急ぐ。まだ走れるほどではないので、グル メ・バカ娘に言わせると、ぴょんぴょん跳ねるだそうだ。 午前10時56分発、のぞみ11号。 なんとか間に合う。 新幹線に乗ると、ゲームのアイデアが湯水のように湧くのが恒例なのに、どうもき ょうは調子が悪い。 クーラーが効きすぎるのだ。 バッグから上着を出して羽織ると、眠くなってしまった。 働きすぎるといけないと言われているので、きょうは不調を受け入れるか。天気も あまり良くないし。 午後12時30分。名古屋駅着。 私の歴史の旅は、だいたい豊臣秀吉関連が中心で、どうしても徳川家康に冷たい。 野球にたとえると、徳川家康は、元西武監督の森さんとか、阪神の野村監督みたい に、歴史に詳しくならないとおもしろくないと思っていたので、後まわしにして来た。 しかも、まだまだ私には早いような気がする。 今年から少しずつ徳川家めぐりに手を染めて行こうかと思っている。 だから先月初めて、徳川家康の居城である浜松城を訪れたほどだ。 というわけで、きょうは「ようこそ家康公のふる里・岡崎へ」の岡崎城へ行くこと にした。 岡崎城といえば、この日記に何度も登場した、鞄持ちの中尾淳の家が近かったはず だ。 しかし昨年、度重なるヘマの連続で、出入り禁止を申しつけていた。その後、誤字 だらけとはいえ、『2コマ漫画劇場』に多数ハガキを応募し、載らないと言えども、 『当方見聞録』に作品を応募し続けたので(…と並べると、あまり実績は上がってな いな。ははは)、そろそろ許すかという気分になってはいた。 しかし、ただ許すだけでは、おもしろくない。 どうせなら中尾淳の運勢を試してみよう。 確か最近中尾淳は、バイトをしていると聞いていたから、電話してバイト中なら、 そのまま放って、ひとりで岡崎城に行こう。 さて、中尾淳の携帯電話の番号は…、ありゃ? ありゃ? 番号が入っていない。おかしいなあ? 消してないはずだけどなあ。 嫁に電話する。中尾淳の携帯番号はわからないという。 よし、運が無いということにしよう。 中尾淳がどうのと言う前に、朝、新幹線に飛び乗ったので、まだご飯を食べていな い。まずは飯だ。早くご飯が食べたい。 タクシーで熱田神宮の「蓬莱軒(ほうらいけん)」に向かう。 うなぎをお茶漬けで食べる、ひつまぶしのお店として有名なあの 「蓬莱軒」である。 名古屋の美味しいところというと、必ず3番目以内に挙がるほどだ。だから前から 早くこのお店には来てみたかった。 ♪だだだ〜、だだだだ〜。おや? 嫁から電話だ。 中尾淳の電話番号がわかったという連絡。 もう「蓬莱軒」に向かってしまったから、別に中尾淳くんは必要なくなってしまっ たんだけどなあ。ははは。 午後1時。タクシーの運転手さんが「蓬莱軒」の新館「あつた蓬莱軒」まで連れて 行ってくれた。こっちのほうが店内がきれいだそうだ。 このお店の名物・ひつまぶしを注文して、店の外に出て、中尾淳に電話する。 「おっ、中尾淳か!」 「うわわわわわ、さくまサンででででですか!」 「バイト中か?」 「いえ、きょうはちょうど休みで家にいます」 げっ! 何て悪運の強いやつだ。 仕方ない。会うとするか。ははは。 「じゃあ、出入り禁止を解くから、岡崎で会おう! わっはっは!」 「あ、あ、あ、ありがとうございます〜!」 というわけで、中尾淳のことはひとまず忘れて、2300円なりの、ひつまぶしを 美味しくいただくとしよう。ははは。 「これからひつまぶしを食べて、そのあとは中尾淳と、ひまつぶしか…」と、つまら ないフレーズを思いついて、苦笑する。 で、ひつまぶしの話。ひつまぶしの「ひつ」は、「お櫃」のひつ。おひつにうなぎ が入っていて、まず最初はそのままで食べて、2杯目は、お出汁を入れて、うなぎ茶 漬けとして食べる趣向。 さて、今回の旅で私は初めて、デジカメに挑戦する! 嫁が愛用している藤原紀香のデジカメをもらって持って来たのだ。しかもボタン操 作を3つしか教えてもらっていない。 ちゃんと写せるのか、ちょっとどころか、かなり心配だ。 記念すべきデジカメ第1号は、この「ひつまぶし」を写した! ただインターネット日記に載せるのは、嫁でないと出来ないので、6月7日ぐらい に、もう一度ここを見てね! 載ってなかったら、私を笑ってくれ!再び、ひつまぶし。 通常のうなぎの蒲焼きよりも、たれが濃い。 名古屋名物みそかつの、味噌みたいに味が濃い。 だからお茶漬けにするのだろうけど、そのまま食べたほうが、はるかに美味しい。 私が濃い味好きというのもあるので、ちょっと割り引いたほうがいいかもしれない。 でもあまりにも美味しいので、5分ぐらいで全部食べ尽くしてしまった。ふうっ! 美味しいなあ! これは今後ちょっと病みつきになりそうだなあ。 濃い味好きが復活しそうで、ちょっと怖い。 食後、タクシーの運転手さんに言われた道で、名鉄神宮前駅へ向かう。熱田神宮を 抜けてすぐだと教えられたのだが、その熱田神宮が大きいじゃないか〜〜〜! 砂利 道が足につらいし! 明日から熱田神宮はお祭りだそうだ。どこも出店を組立中だ。 ざくっ、ざくっ。ひ〜。 やっぱりまだ砂利道はつらいなあ…。 午後1時30分。名鉄神宮前駅。特急に乗って、東岡崎駅へ向かう。知立駅、新安 城駅、東岡崎駅と、わずか3駅だからすぐだと思っていたら、駅間が異様に長い。 電車は超満員で、荷物を持って立ったままの私はバランスが悪くて、怖い。しかも 疲れている。 午後2時。東岡崎駅。 改札口に、中尾淳がいた。 さっそくデジカメで、中尾淳を撮る。記念すべきデジカメ撮影被写体人間第1号は、 中尾淳になってしまった。なんだかもったいない気がするぞ〜。ウヒャヒャ…! 熱田神宮で歩き疲れ、電車で立っていて、猛烈に疲れていたので、まずは駅ビルの ロッテリアに入り、コーヒーを飲む。 ひさしぶりの中尾淳は、あいかわらず中学生のような顔をしていた。ちっとも変わ ってないなあ。 「今、何してるんだ?」 「パチンコ屋でバイトです」 「華やいだ話は無いの?」 「無いですね〜」 「無いと、パチンコ屋でバイトという話題だけ日記に載っちゃうよ」 「う〜ん。でも無いなあ」 …だそうである。 駅前でタクシーに乗り込んで「岡崎城まで!」というと「岡崎城はすぐそこだよー。 歩いても2,3分なんだから、歩いて行ったほうがいいよー!」。 地方の人の「近いよー!」にはいつもだまされ続けて来たので、イヤだったのだが、 歩いて2、3分なら、本当にたいした距離ではないのだろう。 ひさびさに中尾淳に、カバンを持たせて、歩く! くそ〜〜〜〜〜! まただまされた〜〜〜〜〜! どこが、歩いて2、3分だよーーー! 橋を渡ってすぐというより、橋のはるか向こうに天守閣が見えるまでが、2、3分 だろがーーーーーーっ! また地方の人の「近いよ〜」を信じてしまったあ。 乙川を渡り、徳川家康の幼名である竹千代の名前が付いた、竹千代通りを歩き、石 段を登り、岡崎公園を抜け、岡崎城にたどりつく。 思わず中尾淳の顔を見て、笑いがこみあげる! 「ど、ど、どうしたんですか、さくまサン!」 「はっはっは。おまえが去年この岡崎城公園を舞台にして描いた漫画作品を思い出し てな。あの漫画の岡崎城公園と、今私が目の前にしている岡崎城公園とが、あまりに もかけ離れているんでな!」 「そ、そ、そんなに似てないですか!」 「中尾淳と反町隆史ぐらいかな? ははは」 午後3時。500円払って、岡崎城を登る。 4階建ての上に、天守閣があるのだが、このところ各地のお城を登っているだけに、 狭くて急な階段だったが、楽勝である。 本当に健脚になったものだ。 各階に、かなり手の込んだジオラマ(模型)があったりして、見応えのあるお城だ。 隣りの「三河武士のやかた家康館」と合わせて、 500円なのが、安く感じた。 甲冑も何個かあるし、ヤリ、刀、弓矢などの展示物もちゃんとあった。 引き続き、「三河武士のやかた家康館」のほうも見たのだが、こっちはかなりマニ アック。相当徳川家に詳しい人でないと、おもしろくない。家康に詳しいだけでなく、 家康以前の歴史に詳しくないとつらい。 私もつらかった。 地元民の中尾淳は、ただにこにこしているだけである。何度目かの入館にもかかわ らず…。ちゃんと笑わせてくれる、中尾淳くんであった。 「地元出身の武将たくさんいるんですから、いくらでも歴史の研究できるんですよね え。やろうと思えば…」 それを思わないのが、中尾淳くんなんだねえ。 午後3時30分。先日、ナムコの岸本好弘さんに教えてもらった矢作川の橋のほと りにある、蜂須賀小六(はちすか・ころく)と、日吉丸(のちの豊臣秀吉)出会いの 像を見に行く。 子どもの頃読んだ『太閤記』なんかには、必ずこの蜂須賀小六と日吉丸との出会い の下りが出てくるのだが、史実では、まったく作り話で、歴史的価値の無い話題なの だそうだ。 このことはすでに知っていたのだが、子どもの頃あこがれた逸話だから、嘘だと思 っても、像があるならと来てみた。 ちょっと安易に作られた感じで、感動はなかった。 午後4時30分。再び、名鉄東岡崎駅に戻る。駅ビル2Fで、中尾淳とお茶を飲む。 中尾淳には、プロの世界は厳しいから、就職して、こういう風にヒマがあるときは、 いっしょに旅行してるほうが楽しいぞ!と伝える。 中尾淳と、東岡崎駅で別れる。 午後5時51分。名鉄特急で、新名古屋駅へ。 午後6時すぎ、新名古屋駅着。 最近名古屋で話題のホワイト餃子を食べて行こうかとも思ったのだが、やっぱりお 城に登ると、疲れが尋常ではない。 大事を取って、新幹線のキップを買い、空いてる時間で、名古屋駅構内を、何か新 しい商品は無いかと物色する。 あった! 何じゃこれは! キティちゃんのみそ煮込みうどん! 丼に入っている。 郵送してもらおうとしたら、割れ物なので、郵送できないという。残念。悔しいの で、八丁味噌プリッツを買う。 グリコ・ジャイアントプリッツ・シリーズは最近憑かれたように、全国で現地限定 商品を作り続けている。福岡でめんたいこプリッツ、京都で芝漬けプリッツ、一度一 覧表を作りたいぐらいだ。 誰かTBS『有限会社 桃太郎商店』に「私の地方はこのプリッツがある」という ハガキ送ってくれないかなあ。 さらに、みそかつチキンという駅弁が売られていたので、買って行く。700円と 安い。 午後6時52分のひかり号で、京都に向かう。 京都までの乗車券を持っていたので、特急券を自動販売機で買ってみた。かなりつ かいやすくなっている。これなら普及するかも。領収書も出る。禁煙席も指定するこ とができる。 私でもできるのだから、相当カンタンである。 私が好きな通路側の席を指定できないのは、残念だが、そこまで自動化すると、扱 えない人が増えてしまうだろうから、十分だ。 午後8時。京都のマンションに着く。 TVで巨人対横浜ベイスターズ戦を見ながら、みそかつチキンをパクつく。 5対0で負けていた横浜ベイスターズが、波留敏夫選手の満塁ホームランで大逆転! お弁当が美味しくなる。 夜は、明日以降の旅の計画を練るために本を読むつもり。 楽しいひとときである。
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