5月17日(月)


 うひょ〜〜〜〜〜!
 今朝の朝日新聞の『天声人語』に、なんと夏目房之介さんのことが載っていた。
『天声人語』などというものは、受験に出る物であって、古くからの知り合いが載る
ということなど、想像もしていなかった。
 何たって、私と、夏目房之介さんと、いしかわじゅんサンは、その昔「初版トリオ」
と呼ばれて、単行本を出しても、増刷にならないことで有名で、お互い傷を舐め合う
仲だったのである。
 だから夏目房之介さんの漫画評論が『天声人語』で絶賛されるということは、まる
で同級生が、文部大臣になるぐらいの驚きである。
 それにしても、かつて夏目房之介さんが漫画家だった時、私のほうが漫画評論家で、
夏目房之介さんの『粋なトラブル』のあとがきをが書いた私の立場はどうなってしま
うのだろう。
 夏目房之介さん、今度は漫画で賞を取ってよね〜。ははは。
 それにしても、初版トリオは、20年近くを経て、ひとりは手塚治虫文化賞の特別
賞、ひとりはメルセデス・ベンツのCMで、パンツ姿になって、お茶の間を賑わし、
ひとりは、キ〜〜〜〜〜ング ボンビー!という、ゲーム作家になっている。
 3人で出版社の忘年会荒らしをしていた頃が、なつかしい。
 
 午前11時。『チョコバナナ』投稿者の吉野桜風さんが来る。
 税務署のこともあって、『当方見聞録』の出版化の夢が絶たれた今、『チョコバナナ』
の投稿者たちは、これから各個人でプロをめざそうという会話をする。
 もともと私の漫画理論は、連載作家ぐらいの能力がないと、役に立たないと言われ
ているので、本来あるべき姿になろうとしているのかもしれない。
 たぶん『チョコバナナ』の投稿者たちが、飛躍するいいきっかけになると思う。

 午後12時。「TO THE HERBS」で嫁、吉野桜風さんの3人で食事。たらこ・イカ・
キムチスパゲティというのが、あまりにも芸が無さ過ぎて、開き直ったメニューで好
ましい。
 
 午後2時。宮路一昭くん、土居ちゃん(土居孝幸)が来る。
 吉野桜風さんが土居ちゃん(土居孝幸)から、ロットリングの使い方を習う。
 独身王と言われる土居ちゃん(土居孝幸)に私が、
「土居ちゃん、残念ながら吉野桜風さんは、人妻だよ」というと、
「もう、いいんだ、そういうことは」という返事。
 どういう意味なんだろうと、みんなで首をかしげる。
 
 きょうは新作『桃太郎電鉄』のエンディング画面の打ち合わせ。
 前から打ち合わせていたエンディング案と、土居ちゃん(土居孝幸)のイラストを
見て、OKを出す。
 しかも不用意に思いついた土居ちゃん(土居孝幸)のタイトルが正式名称になった
と教える。
「げっ、思いつきで言っただけなのに〜!」。
 昔から土居ちゃん(土居孝幸)の思いつきは、当たることが多いから、縁起がいい
のだ。

 午後5時。早々と打ち合わせが終了したので、土居ちゃん(土居孝幸)も、宮路一
昭くんも帰ってしまう。
 残った家族は、きょうの夕食に悩む。
 あそこに行こうか、ここに行こうか。
 きょうはちょっと重い物はつらいだの、あそこは最近美味しくないだの、侃々諤々
(かんかんがくがく)。
 たまたま昨年から5〜6回電話して、いつも満員と断られてしまう、赤坂の「旬香
亭(しゅんこうてい)」に電話したら、あっさりOK。拍子抜けする。
 来ない、来ないと言われ続けていた、外国人アーティストがひょっこりお忍びで来
日したみたいだ。

 午後6時。赤坂「旬香亭(しゅんこうてい)」に行く。
 もともとこのお店は、ナムコの岸本好弘さんから聞いていて、行きたいと思ってい
たお店。
 基本的に和食のお店なんだけど、料理の最後にオムライスが出るらしい。これには
ちょっと半信半疑。
 何か、想像がつかないよねえ。料理の最後がオムライスなんて。

 などと言いながら、コース料理を注文。
 ん? ん? けっこう美味しいぞ!
 次の料理も美味しいぞ!
 和風なのに、洋風だったり。中華風だったりといろいろ。
 変化球投手だな。
 そのわりに、切れ味がいい!
 さっそく家族がマウンドに集まって、話し合い。
「妙にうまいと思わないか?」
「おいしい!」
「お父ちゃん、あの内儀屋(かみや)を今、抜きかけてるランクなんだけど、どう思
う?」
「今はまだ内儀屋(かみや)のちょうど下ぐらい」
 なかなか高い評価である。
 
 そしてさらに次から次へと美味しい料理が出てくるので、お姉さんを呼んで、料理
の名前をメモさせてもらった。
 それがこれ!

    ・オードブル:鴨ロース、小海老と空豆の和え物、
     フォアグラのパンはさみ。
    ・はまぐりんのバンバンジーと、はまぐりのジュレ。
    ・じゅんさいの洋風茶碗蒸し。
    ・あいなめの焼き霜作り。
    ・スモークサーモンとあわびのサラダ。
    ・サワラのカリフラワー・ポタージュ添え。
    ・冬瓜の冷たいスープ。
    ・ロース肉のステーキ。
    ・湯葉入りポテトサラダ。
    ・オムライス。
    ・ココナッツのブランマンジェ
 
 食べて行くうちに、とにかくグルメ・ランキングを赤丸急上昇!
 最後には、スマートな味といい、新鮮さが、とうとう西武の松坂大輔くんになぞら
れるまでに、評価が高騰!
 青山「穂積」が、イチローなら、この「旬香亭」は、松坂くんとまで評価が上がっ
た。
 
 問題のオムライスも脱帽!
 まさかケチャップもかかっていなければ、ドミグラスソースもかかっていないとは
思わなかった。
 とろみのあるコンソメスープがかかっていて、なかはチキンライスではなく、タケ
ノコの炊き込みご飯と来た!
 すぱ〜〜〜ん! まさに昨日のイチローの逆をついた、外角の変化球だ! 
 ひさしぶりに「こりゃまいったね!」の味。 
 世の中、まだまだこんなすごい料理屋さんあるのかと驚嘆する。
 なるほど、何度電話しても、満員なわけである。
 それにしても、このお店を教えてくれたナムコの岸本好弘さん、恐ろしい人である。
 まるで野球漫画の『ドカベン』でやっとのことで優勝したところの、スタンドに現
れて「ふふふ」と笑う、次号からの好敵手のようである。

 午後9時。きょうはあまりにも美味しいお店と出会ってしまったので、急きょ鍼灸
師の弓削くんを呼んで、身体を休めることにした。
 


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