4月30日(金) きょうの京都は、快晴! 目に青葉…という言葉が本当だと思えるくらい山の青葉がきれい。 午前11時。寺町夷川のパン屋さん「ブール駸々堂(しんしんどう)」で食事。イノ ダ・コーヒ本店亡きあとの朝食のエースは、やっぱりこの「駸々堂」を指名だ。 ちょっとマンションから遠いのだが、パンの美味しさは申し分がない。 パンを食べながら、家族で『さくま式人生ゲーム2(仮)』について会議。ようやく 形が見えて来たので、こうして人に意見を聞けるまでになった。細部にこだわれるよう になったことを意味する。 こんないい天気なのに、どこにも行かないのはもったいないので、どこか一カ所ぐら い行こうということになって、観光ガイドを開くと、2〜3カ所行きたくなる。 ひとつひとつが離れているので、タクシーの宮本さんを呼んでしまう。宮本さんだと 貸し切り扱いにしてくれるので、親子3人、電車に乗ったり、行った先でタクシーなど に乗ったりすることを考えると、安上がりだ。 しかも一番尊敬する故・司馬遼太郎さんが、取材のとき、必ずタクシーで回るのを何 度も読んでいて、昔からマネをしたいと思っていた。 午後12時。宮本さんが「駸々堂」まで来てくれる。 でもって、どこへ向かうかというと、宝ヶ池の先の岩倉というところ。岩倉と聞いて、 岩倉具視(いわくらともみ)だ!と気づいた人は、よほどの歴史マニアか、お金好きだ! 岩倉具視といえば、ちょっと昔の500円札紙幣の肖像になっていた人だ。 途中、じゅんさいの産地として有名な、深泥が池(みどろがいけ)に寄ってくれるの が、宮本さんのやさしいところ。 午後12時30分。岩倉具視旧宅に到着。 明治維新の英傑たちここをこっそり訪れたというわりには、小さな家で、昭和初期に はいくらでもあるような、ごくありふれた家だ。 隠遁生活を送っていたのだから、このぐらいなのも当たり前といえば、当たり前だ。 もちろん私たちのほかに、観光客などいるわけがない。 縁側に近づくと、センサーが働いて、おじいちゃんの声で、岩倉具視公の解説を始め るのだが、老人特有の癖のある話し方に加えて、ものすごい早口で、まくし立てるので、 ちっとも解説が頭に入らない。ところどころゆっくり聞きたいような魅力的が話があっ たのになあ。 でもこのどこかで聞いたような声だ。そうだ。受付のおじいちゃんの声ではないか。 あんなにのんびりした声なのに、何でこんなに早口でしゃべるんだ! 岩倉具視の遺品がおいてある記念館もあったのだが、この手に付き物の、岩倉具視 の生い立ちを書いた年表が無いのが、不思議。 浪士に襲われて、切られたときの衣裳ばかり陳列するヒマがあったら、年表を展示 してほしい。午後1時。岩倉具視旧宅の近くの実相院(じっそういん)に行く。ウルトラマン・ ファンなら、実相寺昭男さんを思い出してしまうだろうが、関係ない…と思う。 ここも岩倉具視に関係のあるお寺で、幕末の密議によくつかわれたらしい。お寺の 人いわく、現在日記を大学の先生に解読してもらっているので、まったく今まで明か されていなかった新事実が出てくる可能性があるそうだ。 歴史マニアなら、松平春嶽まで、こっそり岩倉具視に会いに来たらしいというと 「おお〜〜〜〜〜!」だよねえ。 それはさておき、ここは紅葉の名所らしくて、庭園の木があざやかだし、広い枯山 水の庭園がきれいだ。 グルメ・バカ娘に、岩倉具視(いわくらともみ)の名前を覚えさせようとするのだ が、どうにも覚えてくれない。 仕方なく「岩倉のともちゃん」と、覚えなさいといったら、覚えた。 アイドル歌手の華原朋美を連想したようだ。 こういう歴史の覚え方がある。 午後1時30分。宝ヶ池のケーキ屋さん「アンジュ」に寄る。 観光ガイドに写真で載っていたケーキがかわいいので来たが、実物はどれももっと かわいくて、ついついたくさんケーキを注文してしまう。 プロフィットロール、レアチーズケーキ、クレープモンブラン、クレームブリュレ。 どれもこれも、ほっぺたが「おお!」と声を出す美味しさだ。 よかった。こんなのが京都のマンションの近くにあったら、毎日通ってしまうよ! チーズケーキなんか、あまりにも上品すぎて、名前を聞くまで、チーズケーキだと わからなかったぐらいだ。 午後2時。修学院離宮の近くの曼珠院へ行く。曼珠沙華(まんじゅしゃげ)の曼珠 (まんじゅ)だから、まんじゅいんだと思ったら「まんしゅいん」だそうだ。 なんだかここに来てみたかったのは、30年前ぐらいの修学旅行で来て以来だった からだ。 何だか妙にこのお寺の名前は覚えていた。 でも何が理由で覚えていたのかが、思い出せない。 庭のキリシマツツジが有名なのだが、そんなもの高校生の男の子が強烈な印象とし て残っているわけもない。 そのうち思い出した。 やたらと張り紙が多くて、うるさい寺だったのだ。 きょうもワープロ文字になったものの、張り紙が多い。 おもしろから、文章をメモって来た。 ・重要文化財の為、肩にお掛けのカバン、リュック等の荷物は、壁 や襖(ふすま)にふれるおそれがありますので、必ず手にお持ち になって、お廻り下さい。 ・お願い。リュック、カバン等の荷物は、肩からはずして手に持っ て下さい。 ・欄干(らんかん)にさわらないで下さい。 ・お願い。欄干にふれないでください。 ・通行の妨げになりますので、お座りにならぬようお願いします。 ・立ち入り禁止。防犯センサー、防犯カメラ作動中。 ・座らないで下さい。他の人の通行の妨げになります。 ・院内での飲食はご遠慮下さい。 ・院内では静かに願います。 ・戸や障子(しょうじ)にはさわらないで下さい。 ・手やひじをつかないでください。 ・呉々(くれぐれ)もふれないで下さい。 すごいでしょ? こんなのが数枚ずつ貼ってあるんだからいやになってしまう。 まあ、たちの悪い観光客、修学旅行生も多いんだろうけどね。 午後3時、詩仙堂(しせんどう)へ行く。 時代劇などで、水が竹筒にたまって、カコ〜〜〜ン!と鳴る、獅子脅し(ししお どし)があることで有名なお寺だ。 獅子脅しは「猪おどし」と表記したような気がするなあ。 それにしてもここの庭は美しい。 藤棚が匂い、青葉が目に痛いほどだ。 ツツジには、アゲハチョウがやって来る。 美しいと思うと同時に、こういう景色を楽しめる境地になったものだなあと、 うれしいやら年齢を感じたりだ。よくわからん感情。 午後3時30分。京都のマンションに戻る。 さすがに疲れて、ちょっと仮眠。 午後4時30分。けっこう寝てしまった。 午後6時30分。散歩に出た嫁が帰って来ない。電話を入れる。まだ午後5時 30分ぐらいだと思っていたようだ。 嫁が「ひ〜〜〜!」と言いながら、帰ってくる。 何でも私が仮眠しているあいだに、昨日「志る幸」以降、きょう撮影したデジ カメのデータをコンピュータに入れようとして、吹っ飛ばしてしまったそうだ。 すぎやまこういち先生ご夫妻にメールで送ろうとしていた写真も多数あったとい う。 それは「ひ〜〜〜〜〜!」だ。 コンピュータのせいなんだけど、嫁になりかわり申し訳御座いません! 午後7時。近所の高級和風料理の店「N」で、バカ家族は罰が当たってしまう のだった。 一子相伝の白味噌仕立てのお雑煮は、お餅の焦げ目も香しく絶品だったのだが、 さんしょは小粒でぴりりと効きまくった焼きタケノコあたりから、私の口はしび れ始め、あとの料理を食べても、ずっとロッテ・クールミントガムを10枚くら い口に突っ込んだままの料理を食べてるような状態になってしまって、値段の高 い料理を堪能できなくなってしまった。 そしてトドメは、お会計。 最初お願いした料金の1、5倍よりも、さらに高いお値段が付いているではな いか!!! ほぼ1,7倍だぞ〜!! ここは、ぼったくりバーか!? 100円でお願いした料理の値段が、170円だぞ! それじゃちっとも高いということが伝わらないじゃないか! 100万円のつもりが、170万円だぞ! これは金額が大きすぎて、わかりづらい。 ああ! 本当の金額を暴露してしまいたいぐらいだ。 軽自動車を買おうとしたら、ベンツの値段で売りつけられたようなもんだ。 金銭感覚の無いバカ家族でも、これには激怒だ。 しかし、いかにも政治家が密談に使うような格式の高そうなお店の雰囲気に圧倒 されて、哀れ、文句をつけることもできず、退散してしまった。ぐっすん。 午後10時。打ちひしがれたまま京都のマンションに戻る。 明日の晩飯は、餃子にでもするか…。