3月26日(金)


 グルメ・バカ娘が春休み。早くも家で「眠い、眠い」と言いながら、ごろごろして
いる。

 午前11時30分。六本木アークヒルズの「BASARA」に行く。
 ここは徳島の名店「青柳」の出店で、この「青柳」のほうで食べた、天にも昇るよ
うな親子丼が忘れられない。現在はもう「青柳」のほうでは、この親子丼をやめてし
まったので、まさに幻の親子丼なのだ。
 その幻の親子丼が、この「BASARA」で食べられるとあっては、行かないわけにはい
けない。
 予約がきかないので、ぐーたらするグルメ・バカ娘を叩き起こしながら、お店に向
かう。
 出た、出た! これだ、これだ!
 あ〜〜〜、二度と食べられないと思っていた、あの親子丼をもう一度食べられるな
んて!
 箸を割るのももどかして、嫌いな三つ葉をどかすのも、もどかしく親子丼を口に運
ぶ。
 お? おや? おろ?
 なんか変だなあ…。
 あまりにも期待し過ぎていたせいか、想像していた味を大きく下回っている。グル
メ・バカ娘は実は、あの幻の親子丼をまだ一度も食べていない。一応聞いてみると、
やっぱり。
 美味しいとは思うけど、想像していた味はもっともっと美味しいものを思っていた
から、いまいちというではないか! 私たちが美味しいということを洗脳しすぎてい
たようだ。
 少し冷静になる。
 なるほど、ふつうのお店より、はるかに美味しい親子丼だ。
 でもあの親子丼は、『美味しんぼ』の山岡が劣勢になったとき「こ、これだ! こ
の味ならいけるぞ!」と叫ぶぐらい、美味しかったは
ずだ。
 あ〜〜〜〜〜、よけいあの味をもう一度食べたい気持ちが募る。

 食後、青山墓地を通って、帰る。桜はまだ一分咲きか、二分咲き程度。週末、満開
かな?
 京都行きたいなあ。春休みだし。スケジュールがいっぱい入っているから行けない。
 先日録音した『私立さくま学園』は、4月1日の午後11時、TBSラジオで放送
の予定。4月1日というのが、いかにも『ジャンプ放送局』っぽくていい。

 午後1時。帰宅。
 ようやく新作『桃太郎電鉄』の手直し作業にとりかかる。
『さくま式人生ゲーム2』も、全面ひっくりがえりなので大変。
 でも漫画家の得意な「ああ! 〆切りが! 〆切りが!」と叫びまくる醜態だけは、
絶対人に見せるのはイヤだから、平静をよそおって、がんばる。
「〆切りが!」などと叫ぶのは、自己管理ができませんと、満天下に宣伝するようで
見苦しい。

 午後5時30分。B・R・サーカス出版の新見(しんみ)知明さんが来る。続いて、
ユイ音楽工房の篠宮勝さんが来る。
左から→篠宮さん、新見さん、さくま
    今後の出版活動について。  最近の出版事情を聞くと、状況はさらに悪化している。  いつもながら『チョコバナナ』は、いまどき珍しいぐらい善戦していた本というこ とになる。10年前だったら、黒字でなんとか続けていって、ブレイクを待つって感 じだったんだろうなあ。    午後7時30分。新見知明さんと篠宮勝さんが次の予定があるというので帰ってし まったので、家族だけで食べることに。  3階にいるグルメ・バカ娘を呼ぶ。  返事がない。呼ぶ。返事がない。ただのしかばねのようだ…は、『ドラクエ』でん がな!  またか〜〜〜〜〜!  あいつはときどき、お腹がすき過ぎると、寝てしまうのだ。  やっぱり寝ている。起きない。  こいつは、とにかく電話が鳴っても起きない、豪快さんだからなあ。どうにもなら ない。  仕方ないので、嫁とふたりで、一番近所の「キハチ・チャイナ」に行く。牛肉とピ ーマンの炒めものは美味しかった。あとはまあまあ。チャーハンも凡庸。  それより店員が、女子店員が、男子店員の2倍の速度で動いていることが問題。今 はどの料理屋に行っても、男子店員は覇気がなくて、ぼーーーとした顔ばかりだ。  一体日本男児はどこへ行ってしまったんだろうか?  そのうち本当に、がんばらない男の子たちというのは、社会問題になるぞ!  午後9時。帰宅。グルメ・バカ娘はまだ寝ている。  もはや豪快さんというより、豪傑さんである。  顔は豆大福みたいな顔なのになあ。  たぶんきょうはこのまま明日の朝まで寝てしまうんだろうな。  明日聞いても「寝ちゃったんだから、しょうがないでしょ!」で終わりなんだろう なあ。  豪傑だよ、あいつは。

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