3月11日(木)


 さすがに昨日は、楽しかったけど、疲れたので、ゆっくり寝る。

 午後12時30分。六本木の「キャンティ」に行く。
「キャンティ」は、はるか昔20年以上前、当時の芸能人御用達だったお店。もちろん
当時は、私も駆け出しの貧乏ライターだったから、名前と噂は知っていても、入れるよ
うな財力は、これっぽっちもなかった。
 考えてみれば、当時六本木のテレビ朝日に毎週仕事で来ていたのに、遊ばずに帰って
いたのだから、もったいない。
 常にある程度のお金というのは、必要だね。
 多からず、少なからず。

 ところでこの「キャンティ」の味のほうだけど、カレーの美味しさに定評があるんで、
来たのだけれど、困った美味しさ。
 美味しいことには、美味しいのだけれど、味の種類がボンカレーの美味しさなのだ。
見事なまでに、ボンカレー・ゴールドの味に似ている。ボンカレー・ゴールドよりも美
味しい。
 おそらくレトルトのカレーだよといって、出せば、ほとんどの人が美味しいというだ
ろう。
 ただし食い道楽家族は、青森のレトルト・りんごカレーを知ってるので、その味のラ
ンクのひとつ下の評価。
 美味しいけれど、レトルトのカレーと比べてしまうのは、なんだか失礼な評価。「C」
とイニシャルで表記しなかったのが、適切な評価ってとこかな?

 食後、六本木から麻布十番方面まで散歩しようと思ったのだが、冷たい雨がさらに激
しくなってきて、寒い、寒い!
 それでも飯倉片町の交差点のそばに、かわいい洋風の古いアパート街を見つける。フ
ランスの街角みたい。これはけっこういいカメラ・アングルになりそうだ。
 でも寒いから、速攻で、家に帰る。

 午後2時。帰宅。
 先週の京都ひとり合宿で出たゲーム・アイデア出しのまとめ作業。
 きょうは昨日の歴史好きの会がおそらく盛り上がるだろうということを予想して、来
客をストップしておいた。
 ベテランは、休み休み、働かないとね…って、昔は「火の玉ボーイ」だの「暴走列車」
だの言われたのが、嘘みたいだな。

 引き続き新作『桃太郎電鉄』の仕様書の手直しを再開。
 どうしても『桃太郎電鉄』の文字フォントを大きくしたかったので、今回ついに大き
くすることになったので、横18文字を、全部17文字以内にしないといけない。この
作業が大変!
 たった1文字だけど、推敲に推敲を重ねた文章だから、新しい原稿を書くくらいのエ
ネルギーを必要とする。
 でも苦労してでも、文字フォントを大きくしたいのだ。

 午後6時30分。嫁、グルメ・バカ娘を連れて、六本木の「Sweet basil」へ行く。
先週の土曜日、ナツメロのハーマンズ・ハーミッツを見に入った場所だ。味をしめた私
はまたこうして、ここに来ている。きょうの演目は、デイビー・ジョーンズ。ザ・モン
キーズのリード・ヴォーカルである。
 今も何かのCMで『デイドリーム・ビリーバー』がつかわれている。
 もちろんみんなにとっては、ナツメロだけど、私にとっては、このところ続いている
青春の歌シリーズのなかでは、一番若いアーティスト。といっても、50歳過ぎている
んだろうけど。
 なので、さすがに嫁も知っているそうだ。
 このバンドは、ザ・ビートルズの次のビートルズを育てようと、オーディションで選
ばれた、ゴールデン・バンド。
 今でいうとモーニング娘。みたいなもんだね。
 このザ・モンキーズの絶頂期は、私が中学生の頃。
 その頃、私は日本のビートルズをめざして、毎日バンドに明け暮れる日々だった。バ
ンドをやっていれば、当然その演奏を録音したくなる。当時のアマチュア・バンド事情
なんてものは、貧しいを通り越していた。
 今じゃ、どのバンドも、ギターを何種類か置いていて、曲によって弾き分けるなんて
ことは当たり前だけど、当時は、ギター自体1本しか買えなくて、演奏中に弦が切れよ
うものなら、その場で演奏中止だった。
 ギターアンプだって、ひとりにつき1台が当たり前だろうけど、当時なんか、1台の
アンプからギター、ギター、ベースの3本のコードを繋いでいたからね。
 で、演奏を録音したときのこと。
 録音ったって、今みたいにミキシング・マシーンなんてないからね。マイク1本で、
一斉に演奏して、歌ったのを録るだけだからね。何チャンネルなんてないよ。1チャン
ネルだけだよ。
 で、録音したのがザ・モンキーズの『ステッピン・ストーン』だ。
 聴いてみて、たまげた! 誰だ、この下手くそな歌は!
 オ、オ、オレだ〜〜〜〜〜!
 オレは、こんなに下手なのか〜〜〜〜〜?????
 みんなもテープレコーダーに声を入れたとき、これが自分の声か?とショックを受け
たことがあると思うんだけど、あれって衝撃的だよねえ。
 かくして、この日を境に、さくま少年は、ヴォーカルの座を人に譲り、ギターの練習
に没頭するのであった。
 しかし運命というものは、どう転がるかわからないもので、当時のバンド仲間は、ほ
とんどがプロになったり、レコード会社のオーディションに合格したりしたのに、けっ
きょく歌手としてデビューできたのは、私だけなんだから、人生はわからないもんだよ
ねえ。
 私の歌手デビューの話だけは、とっても恥ずかしいので、無しね。

 という因縁のあるザ・モンキーズ。
 そしてザ・モンキーズといえば、桃太郎ファンならすぐ思いつく、ましら&ブルーモ
ンキーズ。このブルーモンキーズは、もちろんこのザ・モンキーズからいただいている
のだ。
 そんなモンキーズのリード・ヴォーカルのライブだから、懐かしいなんてもんじゃな
い! 30年前にテープレコーダーで自分の声を聴いてショックもかえりみず、いっし
ょに歌ったね。英語の歌なのに、30年たっても覚えているんだから、恐ろしいねえ。
 ここ10年間のことなんて、ほとんど忘れているのに。
 みんな、今のこのときを大切にせにゃあかんよ!だ。

 前半と最後にモンキーズのヒット・ソングが連発で聴けて、満足。
 当時アイドルだったデイビー・ジョーンズは、ちょっと元ボクサーのトカちゃんみた
いになってしまっていたけど、満面に笑みを浮かべて楽しそうに歌う姿は、よかったな
あ。
 楽しく生きなきゃなあ!

 この「Sweet basil」は、本当にいつも懐かしの外国アーティストを呼んでくれるの
で、これからも何度も行くことになりそうだ。
 むしろ定期券がほしいくらいだ。
 カフェバー・スタイルなので、全員総立ちで、前が見えなくなることもないし、ゆっ
くり食事をしながら(ハーブばっかの店なので、ハーブの苦手な私にはきつい)、憧れ
の元スターを目の前で見ることができる。
 この調子じゃ毎週行ってしまいそうだよ。

 午後8時30分。帰宅。
 新作『桃太郎電鉄』の仕様書手直し作業。


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