1月2日(土)


 朝からまた『ドラクエ・モンスターズ』。すっかりサル状態に突入してしまった。
せっかちな性格だから、いろいろキャラを配合させずに来たら、展開が苦しくなって
しまった。どうしよう!?

 午後12時。お店は開いていないと思ったので、ブライトンホテルでご飯を食べる
ことに。ところが誰もがおなじことを考えるようで、どのお店も超満員で、1時間以
上待ちだという。
 ブライトンホテルは京都で一番料理が美味しいと評判のお店だから、よけい家族が
三が日、ひさびさに揃って、ごちそうを食べるという風習になっているようだ。
 唯一、ステーキハウスが30分待ちと短い。でも昼からステーキ食べるのはちょっ
と重すぎるぞ〜、と隣りのグルメ・バカ娘を見やると、目を輝かしている。
「あたしは平気だよ!」
 おまえは、朝・昼・晩、ステーキで平気だろうが! だいたい小学校低学年のとき、
漢字の書き取りで「にく」という字を「牛」と書いたのは誰だ!!!
 まぎれもないわがグルメ・バカ娘の実話である。情けない…。
 けっきょくロビーの喫茶店で待ち、ステーキハウスに。この家族の辞書に、節制の
文字は無い。

 さて、このステーキハウスの名前がシャレていて、「火」の「番」を1文字にくっ
つけて「火番(ひもろぎ)」と読ませる。辞書で
「ひもろぎ」という言葉を調べたが、この漢字では見当たらなかった。
 あったのは「神離」という文字に、ああ、またATOK11は、漢字を探すのが面
倒だ。「離」の文字は、竹かんむりが付く。
 ほかにも「酢」の左側が「月」。「月乍」という文字も「ひもろぎ」と読むそうだ。
 もうひとつあった。「月」に「番」という文字で「月番(ひもろぎ)」。
 意味はいずれも、神様に供える米、餅、肉とあるから、「火番(ひもろぎ)」もま
た神様にお供えするお肉という意味だろう。
 もう一度「火番(ひもろぎ)」に行って、お店の名前の謂われを聞いてみることに
しよう! というのは言い訳で、辞書を調べるぐらい美味しかった証拠。

 これほど美味しいステーキハウスはひさびさ!
 にんにくの焼き方が見事。高級ステーキハウスでは、お肉をお皿に直接のせるので
はなく、食パンの耳を切ったものの上に乗せたりする。この店もそうなのだが、最後
にこの肉汁を吸ったパンのなかに、もやしを入れ、さらにタルタルソースをかけて、
丸め、焼き上げる珍味も料理してくれる。このパンを調理してもらう前にぱくりとか
じってしまったのが、グルメ・バカ娘。
 あとで調理したときに、ステーキを焼く広々とした台の上に、並んだパンのなかに
1枚だけ歯形のついたパンがあって、大笑い!
 このあとほかのお客さんに、店の人が「パンは食べずにおいてください」と注意し
ているのを聞いて、さらに大笑い!
 
 午後2時。北野天満宮にお参り。警察官が何人も動員されるほどの大混雑。人の波
にもまれながら、なんとか本殿までたどりつく。
 
 お参りのあとは、上七軒(かみしちけん)のあたりを散歩する。
 しかし美味しそうなケーキ屋さんを見つけて、バカ家族はまたしても、入ってしま
うのであった。最初はコーヒーだけと言いながら…。
 ケーキの形にしたティラミスが美味しかったあ!
 ずらりと並んだケーキのショーケースというのは、どうして美味しそうに見えるん
だろうねえ。

 午後4時。京都のマンションに戻って、『ドラクエ・モンスターズ』の続き。だん
だん京都にいるあいだに終わるのか不安になって来た。

 午後7時。さすがにお昼にステーキなんぞを食うものだから、お腹が空かない。
 グルメの師匠・すぎやまこういち先生に電話して、軽いめのおすすめの店をお聞き
する。
 寺町蛸薬師にある「有喜屋(うきや)」の「蛸そば」がけっこうな味というので、
さっそく行く。
 なかなかお店が小さくて見つからなかったおかげで、ずいぶんと歩き、お腹が空い
て来た。
 何だかお店のたたずまいは、古めかしくて、東京だとちょっと潰れる寸前のお店っ
ぽい。少し不安になりながらも、入ると、けっこういろんな賞を受賞すいているよう
だ。
 嫁が「蛸そば」、娘が「鶏南ばんそば」、私が「有喜そば」を注文。「蛸そば」は、
すぎやま先生に教えていただいたとおり、トロリとした、あんかけが食べるにしたが
って、尻上がりに美味しくなっていく。蛸のやわらかさもなかなか。
 私の「有喜そば」が、さすがお店の名前を冠しただけあって、美味しい。しかもこ
の「有喜そば」。なんと玉子と納豆をかきまぜた不思議なおそばなのだ。玉子と納豆
というと、口のまわりがかゆくなりそうだけど、これがクリームシチューのように、
まろやかな味。
 気がつくと、家族3人で「有喜そば」をまわし合いになってしまったほどだ。
 これはひさびさに何度も来てしまいそうなお店。
 う〜む。またしてもグルメの師匠・すぎやまこういち先生の掌の上で踊ってしまっ
た。くやしいけれど、美味しいのだから、仕方な
い。しかも最初注文して、売り切れと言われてしまった「カレーコンライス」という
変な名前の食べ物に次回挑戦してみたい。
 カレーコンライスというのは、カレーにコーンが入っていると思ったのだが、お店
の人いわく、カレーにおあげが入っているというではないか! カレーにおあげ? 
キツネの「コーン」だったのか。
 何でも和風味のカレーには、キツネのおあげが一番合うというのが、オーナーの長
年の研究結果だという。
 ますますまた来てみたくなる。

 京都ホテルの地下にも支店があるようだし、私がひとりで京都に来た時食べるのに
最適なお店になりそうだ。

 午後8時30分。京都のマンションに戻って、『ドラクエ・モンスターズ』の続き。
 こうして、バカ家族の1日は「食っちゃ、寝」ではなく、食っちゃ、ドラクエ・モ
ンスターズで過ぎてしまったのであった。



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