12月1日(火)


 午前8時。きょうになってもまだ背中が痛い。
 仕方ないので、また鉄道関係、旅行関係の本を読み漁る。
 ここ数日で読んだ本を少し紹介。

・日本地理がわかる事典
・東京名物/早川光
・日本地名大百科 ランド・ジャポニカ(小学館)
・都道府県別データブック/読売新聞校閲部(PHP)
・日本の鉄道雑学事典
・地理と地図の本
・大日本道楽紀行/松山猛(小学館)
・鉄チャンでいこう/江頭剛(小学館)
・鉄道地図の楽しい読み方
・時刻表の楽しい読み方
・もっとヘンな駅/所沢秀樹
・地名でわかるおもしろ起源
・旅・王・国 倉敷・岡山・姫路(昭文社)
・なんでも日本一ハンドブック

 こんなに読んでるから、ちっとも身体が休まらないんだよなあ。

 午前11時。衆芸社営業の牧野夫婦が来る。転居挨拶。引っ越す
先がどうも榎本44歳の自宅に近いらしい。
 午前11時30分。近所のおけい寿司で食事。
『宇宙人ショック』の見本が上がって来た。
 立派な表紙カバーだ。はたして終了してしまった『チョコバナナ』
の読者が忘れず買ってくれるのかどうか? 心配ではある。売れ行
きによっても、1999年度版の行方に影響が出るかもしれない。
このあとにも『桃太郎伝説』の4コマ本が控えている。
 ♪赤字は続く〜よ〜、ど〜こまでも〜!

 午後2時。ハドソンの浦さんが来る。
 つい昨日『桃太郎伝説』の完成ヴァージョンが届いたそうだ。
 さっそく来年度版の『桃太郎電鉄』の打ち合わせ。
『桃太郎電鉄』はほとんど成熟期に達しているので、このパターン
を崩そうとすると、全体バランスまで全部壊れてしまう危険がある。
 たとえば本州のどこかに、ひとつ駅を増やすと、太平洋の航路も
ひとつ増やさないとバランスが悪いというぐらい、きちきちで不動
のマップになってしまっているのだ。

 今回も物件を買う画面のレイアウトを変えたいのだが、情報を減
らさないかぎり、レイアウトを変えることができない。情報は減ら
したくない。
 曲数を減らせば、グラフィックを増やせるとか、ほとんど学校の
クラブの予算取りみたいな奮闘をまたしないといけない。
 そしてさらなるグレード・アップ。これを果たさないといけない
のが、シリーズ物の宿命。

 午後6時30分。浦さん、嫁、娘、私の4人で、伊勢丹7F「正
月屋吉兆」へ。
 世間は師走だけれど、わが家にとっては、新しい桃太郎シリーズ
のゲームを作り始めるきょうが、元旦だ。



12月2日(水)


 午前10時。まだ背中が痛い。外は雨。高円寺の整体さんに行こ
うと思うが、雨で、気持ちが萎える。
 そろそろ病院にも行かないといけないのだが、どうもまた血圧が
高いと言われるのがイヤで二の足を踏んでしまう。自分で測ると、
120b80台をキープするんだけど、どうも医者の前だと、
150b100に数値が跳ね上がってしまう。

 午後12時。テレビのラーメン特集を見ていたら、ラーメンが食
べたくなって、嫁と原宿駅前の「じゃんがらラーメン」に行く。
 やっぱり今ここのラーメンが一番美味しいかな。博多風で味が
くどいから、たまになら間違いなくここが一番だ。
 それにしても最近どうもラーメンが苦手になって来ている。
 ラーメンのゲームを作ろうとして、1カ月の半分近く食ったりし
たからだ。

 午後1時。原宿ふるさと館。前より一段と活気が無くなっている。
一度悪いほうに物事が進み始めると、よほどのことがないかぎり上
向きにならないものだ。1階に仕事熱心でなかよしのおばちゃんが
いて、なんとか1階はまあまあのレベルを保っているのだけれど、
地下1階はもう絶滅間近の雰囲気だ。
 
 それにしても寒い。歩いているだけで、腰が痛くなってくる寒さ
だ。この寒さに小康状態だった痔がまた痛くなって来た。早くこの
尾篭な話題をしなくていいようになりたい。
 なのにこの12月のほとんど毎日にスケジュールが埋まってしま
った。しかも午前中、午後、夜という風に、びっちり埋まりそうだ。
 さらにこの時間をこじ開けて、打ち合わせが入るに違いない。
 師走だね、やっぱり。

 午後2時。『チョコバナナ』投稿者の藤川かつらサンが来る。
新人漫画賞応募作の作品を見る。
 応募作だから『助けて!福助!!』ではなくて、新作。
 バドミントン漫画だ。いい作品だぞ〜。『福助』とはまったく違
う話だぞ。
 藤川かつらサンと打ち合わせしていると、電話が入って、汐崎
じゅんサンから、絵コンテが3本出来上がったという。
 さらにメールで神谷栄和からも絵コンテを送りましたという報告
が入る。
 どうしてこういう風に、物事というのは引き合うのだろうか。
 それにしても今回の藤川かつらサンの作品といい、岩岡目々さん、
樹野こずえ(旧・こんにょ)サン、天街由佳子さんと、どんどん
いい作品が集まって来ている。
 このまま『チョコバナナ1999』として、発売したいくらいだ。
 ちょっともったいない。
 でもまずみんなをデビューさせたい。
 みんな悩みに悩んだあげく、作品を描き上げた人たちばかりだ。
 『チョコバナナ1999』用にも、作品を描くことだろう。

 午後6時。近くのちゃんこ鍋屋「天海地」で食事。
 ここは関取だった浪ノ花関のお店。この人の人柄のよさで、原宿
という場所なのに、立派に繁盛している。
 数回行っただけでお客さんの顔を覚える。
 食べ終わって、会計をすませたあと、お店の外まで出て来て、
エレベーターに乗ろうとする私たちを見送る。
 あたりまえのことかもしれないけれど、この基本を忘れてしまっ
ているお店のほうが圧倒的に多い。
 
 午後8時。少しずつ『桃太郎電鉄』の仕事を始める。
 夜、鍼灸師の弓削くんに来てもらう予定。背中が痛いのを何とか
しなくっちゃ。



12月3日(木)


 午前8時。昨日鍼灸師の弓削くんに来てもらったのだが、まだ背
中に違和感がある。だいぶよくはなっているんだけどね。
 午前中は、読書に費やす。ワープロしたいのは山々だけど、直す
時は直すことに専念しないと。おなじ失敗は繰り返してはいけない。

 午後12時。銀座に出る。注文していた靴を取りに行く。
 どこかで食事をしようと、歩きながら探すが、昨日に増して、寒
さがきつい。沖縄から突然函館に引っ越したぐらい寒い。
 どこでもいいから入ろうとということになって、目の前を見ると、
見慣れた路地が。
 グルメ・バカ娘の天ぷらランキング第1位の「近藤」の路地では
ないか。3カ月先まで予約で埋まっていることで有名なこのお店に
空きがあるはずないといったのだが、嫁はダメでもともと、とりあ
えずここまで来てるのだから、聞いてみるといいだす。
 こういうときの気分というのは、えてして居合い抜きのような気
迫があるのか、珍しくも空いているではないか!
 娘には悪いと思いながらも、ふたりで入る。
 いきなりご主人に「きょうは娘さんは?」と聞かれてしまう。
 一応、学校だからとはいうものの、言い訳でしかない。
 娘抜きで食べるのも気分が悪いので、2週間後、嫁と娘だけで
ここに来ることを予約する。その頃私は、土居ちゃん、宮路一昭く
ん、浦さんと、京都で美味しい物を食べるので、引き分けになる。
 これがわが家の掟というか、納得の仕方なのだ。

 味の方は、ランチメニューのはずなのに、いつもの夜とおなじ
食材をつかうことにまずびっくり。いいお店というのは、値段を安
くしても、質を下げたくないもんなんだなあ。
 おかげで昼からご馳走を食べることになってしまった。

 午後2時。築地の朝日新聞社の裏にある浜離宮ビル。
『TVガイド』の企画ページで『さくま式人生ゲーム』を芸能人と
やると企画で、浅草キッドのふたりが来てくれた。
 いつも私のゲームというと、浅草キッドのふたりがこころよく来
てくれるので、本当にありがたい。
 ふたりはきょう『さくま式人生ゲーム』を見るのが、初めてなの
だが、アリtoキリギリスのふたりが、すでに浅草キッドのふたりに
『さくま式人生ゲーム』はおもしろい!ということを、報告してく
れていた。これまた本当にうれしい。

「すごい人ほど、伝達が上手い」

 この格言は、芸能界で生き抜いている人に会う度、痛感する。
 浅草キッドのふたりも、アリtoキリギリスのふたりがまじめで、
すごくいいと言っていた。知り合い同士を「いい人ですよね」と言
えるくらい楽チンで、うれしいことはない。
 
 ゲームのほうは、水道橋博士が初体験のゲームなのに、私の性格
を見抜いて、私が張り巡らせたワナにはまってくれず、独走。玉袋
くんは持ち前の豪快な猪突猛進式なので、どんぶる地獄にはまると、
ほくそえんでいたのだが、レアな確率を当て続けて、善戦。一番
よくゲームを知ってるはずの私が、確率のワナにはまって、大苦戦。
さくま、玉袋くん、水道橋博士
    午後3時30分。撮影時間の関係で、最後までできなかったんだ けど、楽しく撮影を完了することができた。やっぱりプロの芸人さ んがいると、物事がスムーズに進むし、中身が濃くなる。  やっぱり私は、プロと呼ばれる人が、好きだ。  午後4時30分。帰宅。  どうも背中に違和感があるので、高円寺の整体さんに助けを求め に行くことに。  午後6時30分。困った時はやっぱりここだ。  整体のお兄ちゃんは、背中を触って、どういう状況で痛くなった かを聞いただけで、ナントカ筋がどうのとかいって、ってことは、 ここをこうして、背中を矯正させればいいはずなんだけどなあと いって、ぐきっと音がしたと思ったら、あっというまに痛みが取れ てしまった。  どうしてこういつも手品のように、私の身体を直してしまうんだ ろう。不思議だ。本当に名医だよ。    午後7時30分。高円寺の整体さんの前のラーメン屋「ザボン」 で、鹿児島ラーメンを食べる。このお店はラーメン業界では、有名 なお店で一度来てみたかった。でも夜だけなので、毎月ここに来て いるのに、午前中だから食べることができなかったのだ。  もともと鹿児島系のラーメンは好きだったので、うまい!  ちゃんと鹿児島系には、お約束のたくわんも取り放題なのが、 うれしい。このたくわんが美味しいんだなあ。  店を出ると、雨は雪に変わっていた。また山下達郎さんの季節が 来た。東京では、クリスマスに雪が降ることはほとんどない。  クリスマスの晩に脳内出血で倒れたから、もうすぐ3年目のクリ スマスが来ると数えやすい。  そう思うと、ひとりでこうしてラーメン屋に入れるようになった ことは、幸せだ。  来年こそ、牛丼屋で、左手に丼を持って、最後のひとくちをかき こんで食べてみたい。


12月4日(金)


 午前10時30分。きょう予定していたスケジュールが中止にな
ったので、杉並区上井草の診療所まで行く。
 血圧の薬がきょうの分までしかなかったので、セーフといった感
じ。でもここ数日の急な冷え込みで、診療所はお年寄りで超満員。
 待たされる。待たされる。この診療所のいいところは、待ち時間
が少ないところだったのに。順番が来たのは、1時間半後だった。
 気にしていた血圧のほうは、142b98と、ちょっと下がった。
3〜4カ月連続血圧急上昇は、やっぱり横浜ベイスターズ・クレー
ジーのせいだったのかな。
 この診療所に通いだしてから3年目になるのだが、昨年からずっ
と原宿から毎月通うのはつらいので、ついに診療所を近所に変える
手続きをしてもらう。
 43年間住み慣れた、この上井草に来る必要があるのは、とうと
う歯医者さんだけとなってしまった。

 せっかくだから、いつも夜中になると行っていた、隣り駅の井荻
駅になるロイヤルホストで、食事をして行こうと思って、よく歩い
た道を選んで歩く。自宅があった近所の『サーキットの狼』で有名
な池沢さとしサンの家が増築されていた。町はこの3年間であまり
変わってはいなかったが、ちょこちょとマイナー・チェンジされて
いるようだ。
 ロイヤルホストではよく何を食べたかなと回顧する。
 なんとかファッジ・ケーキという名前が思い出せない。
 夏になると、シュリンプ・カレーだ。
 そんなことを思い出しながら、歩きつくと、ない。ロイヤルホス
トがない。マンションになっている。またひとつ思い出が消えた。
 どうして世の中は、あわてて思い出を一生懸命消そうとするんだ
ろう。
 井荻駅もエレベーター付きの跨線橋になっていた。
 駅前の環状8号線は、40年近くの歳月を費やして、ついに完成
したようだ。完成前に私のほうが引っ越すと思わなかった。

 午後2時。腹をすかせたまま西武新宿に出る。
 ロッテリアで、てりやきバーガーと珈琲。400円とちょっと。
安いね〜。歌舞伎町の映画館街で話題の『踊る大捜査線』を見て行
こうとしたら、指定席がなくて全日自由席だという。
 これだとまだ手足の不自由な私にはちとつらい。
 残念だけど、やめる。きょうはひとりだし。
 あれだけ弟子の原口一也が推奨していた作品だけに見たかったな
あ。あの原口一也のとこの日記でのかぶれ方は尋常じゃなかったも
んなあ。

 午後3時。しかしこれくらいであきらめる私ではなかった。せめ
て一太刀! ビデオの『踊る大捜査線』を買って帰る。それと『桃
太郎電鉄』次回作用の資料として、『妖星ゴラス』と『地球防衛軍』
も買う。土居ちゃんのルーツがこのへんにあるから合わせないとい
けないのだ。

 午後3時30分。帰宅。『踊る大捜査線』をさっそく見る。
 これは『課長島耕作』だね。刑事物を表に掲げたサラリーマン・
ドラマっていう設定は見事だ。
 最近すっかり漫画の手法が、TVドラマに盗まれて、良質な物が
出来上がるようになってしまったなあ。昔は漫画がTVを真似たも
のだ。こういうことの繰り返しなんだろうなあ。
 それにしても各登場人物のキャラがしっかりしていると、ドラマ
はスムーズに濃くなる典型だね。『踊る大捜査線』のいいところを
読み取った者が、次の時代の勝者となるんだろうなあ。
 さあて、どこを読みとるかなあ?
 でもこういう荒唐無稽なドラマは、評論家たちはけなしまくるだ
ろうなあ。争ってけなすだろう。けなしやすいから。けなすことで
自分の地位を上げるのに、好都合だからね。

 午後6時。溜池アーク森ビル2F「basara(バサラ)」に初挑戦。
 虎ノ門にある有名和風料理屋「青柳」の姉妹店だけに、味はいい
のだが、料理が出るテンポが遅いのと、値段が高いのも、本店の
「青柳」譲りなところがちょっと不満。本店よりは安いんだけどね。
 ただ本店の「青柳」にあった幻の親子丼がここでも食べられるよ
うなので、近いうちにランチタイムめがけて必ず行くだろう。その
くらい美味しい親子丼だった。あの味にもう一度出会えるのだろう
か? やっぱり早く食べたいものがあるのはいいなあ。



12月5日(土)


 朝からずっと九州関係の資料を読む。

 午前11時。新宿で買い物。つい『踊る大捜査線2』『踊る大捜
査線3』を買ってしまう。完全にはまったな。
 午後1時。伊勢丹1Fの喫茶店で、ベーコン&キャベツ・サンド
を食べる。

 午後2時。帰宅。『妖星ゴラス』を観る。笑えるなあ。昔のSF
映画は。土居ちゃんが喜びそうな古めかしい場面の連続だ。
「富士山麓(ふじさんろく)宇宙港観測班」というネーミングが大
爆笑だ。こういうセンスは、昔の映画を今観ないと、笑いにまで持
っていけないなあ。
 参考になるセリフの連続に、大漁の予感が。

 嫁にプリントアウトしてもらった柴尾英令くんのホームページを
読む。『レガイア伝説』について書かれたゲーム雑誌の評に憤慨し
ている。ヒットチャート1位になって、ついに洗礼を受けたようだ。
 私は最近ようやくゲーム雑誌の評価はどうでもよくなった。
 ボードゲームの場合、『桃太郎電鉄』は戦略性を重視して作ると、
ゲーム雑誌に「戦略性が無い」と書かれ、戦略性を薄〜くした『さ
くま式人生ゲーム』は「戦略性がありすぎる」と書かれる。
 そういうものなのだ。
 年末だけで、400本以上のゲームが発売されるんだから、私が
ゲーム評を書いたとしても、いいかげんになるだろう。
 
 評論家というものは、作品をその作品を自分のアクセサリーに
つかうだけなのである。大友克洋さんの『アキラ』と『ドラえもん』
があったら、『アキラ』だけ評価するのが、評論家という種族なの
だ。子どもの頃熱中した『ドラえもん』を絶賛したら、格好悪いの
である。アクセサリーとして。
『ドラゴンクエスト』にしても、絶賛されていたのに、毎回ビッグ
ヒットすると、今度は酷評しないと、アクセサリーとしてふさわし
くなくなるのだ。
『レガイア伝説』もチャート1位に輝いたから、アクセサリーとし
てふさわしくなくなってしまったんだろうか。
 映画賞でも『寅さん』は、絶対賞を取らない。

 だいたいゲーム評でなくても、素人でも意見を聞けば、そのゲー
ムにないところを言われるだけなのだ。
 堀井雄二の『いただきストリート』に対しては、キングボンビー
がないのかといい、『桃太郎電鉄』には、面数がないというのが、
素人というものだ。たまにゲーム関係者でもいう人がいて驚くが。
『いただきストリート』にキングボンビーがあったら、おもしろく
ないと思えるのは、クリエーターだけである。
 かわいそうなのは、私の知り合いが作っているボードゲームであ
る。キングボンビーと面数が少ないという理由で、お蔵入りしよう
としている。おもしろいゲームなのに。

 こういった弊害は、ゲームの歴史があまりにも浅いため、ゲーム
を作ったことのない人たちがゲーム評を書くことに問題がある。
プロ野球経験のない人の意見を、聞くだろうか?

『桃太郎電鉄』はおかげさまで、12年目の作品にとりかかろうと
している。あきらかにやっていないで書かれたゲーム評など読み
あきたくらいだ。
 誰かこれはあきらかにゲームやっていないなとわかる文章をまと
めて1冊の本にしてほしいくらいだ。

 とにかく最後はゲームをやる人が支持してくれる。それしかない
ような気がする。クリエーターはずっとゲームを出し続ける。
 だからみんなもゲーム評に惑わされず、自分がよいと思ったゲー
ムは大いに宣伝してほしいと思う。ゲームクリエーターには、ユー
ザーしか味方がいないのだから。
 
 午後4時。横浜関内のセルテ2F「ベイスターズ・ショップ」へ。
自分ではひさしぶりのようだが、新製品が見あたらなかったという
ことは、ひさしぶりではないのだろう。
 といいながら、数万円のお買い物。
 この店で、実の姉夫婦と待ち合わせ。
 
 午後5時30分。そのまま馬車道の「生香園」へ。先日行った周
富輝さんのお店だ。前回私しか行っていないので、2家族で行くこ
とになった。
 前回とおなじように、エビちりソースとか、ハクサイのクリーム
煮、チンジャオロースー、鶏とカシューナッツの炒めなど頼む。
 グルメ・バカ娘の評価は、かなり美味しい部類に入ったようだ。
 最後の杏仁豆腐は、初登場3位に入ったそうで、これは評価が高
い。杏仁豆腐の美味しいお店は、中華も美味しいというのが、グル
メ・バカ娘語録だ。

 午後6時から宴会が入っているので、それまでなら食事OKという
ので、ものすごい勢いで、料理が出た。みんな満腹中枢が働く前に、
満腹になってしまったようだ。

 午後7時。帰宅。早い!
 引き続き『妖星ゴラス』を観る。
 このあと『踊る大捜査線2』を観たいけど、鍼灸師の弓削くんが
来るから無理かな。



12月6日(日)


 午後12時。早くも前々日予告した通り、アークヒルズの幻の親
子丼かもしれない「basara」に行く。こんなに早く挑戦すると思っ
てなかったが、食い物のことになると、わが家族は何でも意見一致
である。
 ところが、「basara」に行くと、すでにお店は予約でいっぱいだ
という。日曜日に六本木のアークヒルズが、何で混雑してるの? 
絶対誰も来ていないと思った。
 仕方なく、アークヒルズを見物しながら、たまたま見つけた「秘
伝の味・大島ラーメン」というのが、ビルの中にあったので入る。
幻のはずが、秘伝になってしまった。
 味はまあまあ。以前上野あたりで見た、伊豆大島の大島ラーメン
かと思ったのだが、オーナーが大島啓二さんという人なので、大島
ラーメンなのだそうだ。何でわかったかというと、海苔に「大島啓
二」と書いてあったのだ。笑える。
 しかしラーメン屋さんで、アークヒルズの家賃が払えるのだろう
か? 大変だろうな。
 それにしてもアークヒルズの日曜日は、けっこう家族連れや、観
光客で賑わっていた。そういう場所だったんだ。初めて知った。
 意外と私は、東京の新名所について、くわしくない。

 午後2時。帰宅。『踊る大捜査線2』を見る。
 困ったねえ。こんなにおもしろくちゃ!
 およそ娯楽と呼ばれるもののエッセンスの総集編なんだもん、
ずるいよ。昔『子連れ狼』の原作者である小池一夫さんに習った、
ヒット原作のすべてが入っている。
「青島俊作、東京都知事とおなじ名前の…」。
 主人公の名前を覚えさせるのに、最良の方法使うもんなあ。
 脇役全部に、因縁入れるし…。
 これ以上は、『チョコバナナ』の投稿者たちのために取っておこ
う。もったいない。ほかにもたくさんあって、この『踊る大捜査線』
だけで1冊、ドラマの教則本が書けるぐらいだよ。
 こんなに興奮したの、ひさしぶりだ。うれしいねえ。
 刺激受けると、仕事もはかどる。
 どんどん『桃太郎電鉄』にいいアイデアが浮かんできた。
 そうなると、悪化するのが痔。
 またひどくなってきた。
 私にとって、頭つかうなというのは、息をするなとおなじくらい
つらいので、みるみる痔は悪化していってしまう。
 どうしてドラマの主人公のように、次から次へと、ピンチがおと
ずれるのだろう。主人公にしては情けないピンチが多すぎるけど。

 午後6時。新宿のとんかつ屋「さん太」で食事。
 午後7時。ビデオ屋さんで『踊る大捜査線4』と、特番のやつを
2本買う。これであとは映画を見ればコンプリートかな? 
 
 午後8時。美容院に行く。原宿の夜は、美容院だけが起きている。
 美容院というと、イスを倒して洗髪するのだが、きょうのはイス
にすわったままで洗髪してくれる。ヨーロッパ式だそうで、何でも
これから流行るらしい。
 耳に水が入って、あまりいいものではない。
 
 美容院の新人のお兄ちゃんとゲームの話をする。ライト・ユーザ
ーなので、思いきり今のゲームは、とっつきが悪くて、ちっとも
わからないと言われる。世間はやっぱりこういう感覚なのだ。
『さくま式人生ゲーム』と『レガイア伝説』がいいよと勧めて来た。

 午後9時30分。帰宅。『電波少年』は見ないとね。



12月7日(月)


 午前中。案の定『踊る大捜査線3』のビデオを見てしまう。もう
9話目なんだから、そろそろ飽きが来てもいいはずなのに、絶好調。
 これなら前評判がなくても、大ヒットになるのも無理がない。
 宣伝しなくてもおもしろい、思わず口コミしたくなるようなゲー
ム、漫画雑誌を作りたいものだ。

 午前11時。プロスペックの江口貴博くんが来る。
 けっこう雨が激しい。
 フジテレビ『ジャパンボーイズ』でおなじみの「貴味(きあじ)」
が歩いて、2〜3分のところにあるので、初めて行こうとしたのだが、
きょうはテレビ撮影のため、臨時休業だそうだ。
 休業では仕方がないので、「ルナ・アンジェロ」のランチを食べに
行く。ここはランチが1000円のわりに、かなり本格的なイタリア
料理を食べさせてくれる、かなり良心的なお店。
 
 午後12時。雨で渋滞に巻き込まれた宮路一昭くんが「ルナ・アン
ジェロ」に到着。

 午後12時30分。自宅に戻って、インタビュー開始。
 江口貴博くんが作る攻略本『桃太郎伝説・速攻本』(衆芸社)の取
材なのだ、きょうは。
 みっちり、ひとつひとつの村と、ボス・キャラを攻略法を解き明か
していく。最近これだけきめ細かい取材なんて、本当にひさしぶりだ。
あまりのこまかさに、何度も大阪ハドソンの高津くんに電話して、確
率は?とか、どういう仕組みで、この術は会得できるのか?といった
ことを、教えてもらったぐらい、細かい。
 これは、ひさびさの完全攻略本になりそうだ。
 でも来年発売と、後発なのが、残念だねえ。

 午後3時。『チョコバナナ』投稿者の神谷栄和が来る。

 午後6時。ようやく取材終了。ふう。ロング・インタビューだった。
最近のインタビューって、あっというまに終わってしまうだけに、
江口貴博くんに、古き良き時代の編集者魂を見る。
 昔のゲーム編集者は、事件記者のように、スクープを狙ったものだ。
何だかなつかしい。

 午後6時30分。私、嫁、神谷栄和の3人は、TBSへ。宮路一昭
くんの車で送ってもらう。

 午後7時。「栄鮨・赤坂山王店」にて、なんとラジオ番組の収録。
アリtoキリギリスの『ゲームじんじんじん』だ。
『さくま式人生ゲーム』のミニゲームのひとつに「あがり一丁」と
いうのがある。これはお寿司屋さんで、値段を見ないで、にぎりを
注文して1万円まで食べて、値段の近いほうが勝ちというものなのだ
が、きょうはそれを実際に、やってしまおうという企画なのだ。
 しかもアリtoキリギリス・チーム対さくまあきらの直接対決で、
1万円に近いほうが勝ちというルール。
 これって、ミニゲーム用に思いついたネタなんだけど、実際にやっ
てみると、べらぼうにおもしろい。番組のために、わざわざネタの
ところに紙を貼って、値段を隠してやるものだから、アリtoキリギ
リスのふたりも、私も、どんどんマジになって行く。
 結果は、ぜひ12月14日の深夜、TBSラジオで聞いてほしい。
 ムチャクチャおもしろい結果になっている。やらせいっさい無し
でやったので、大失敗になると思ったんだけど、これは、本当に、
本当に、格別に、おもしろかった!
お寿司をまえに計算するアリtoキリギリスの2人
   番組が始まる前に、神谷栄和から、アリtoキリギリスのふたりと、 放送作家の福本岳史さんに『宇宙人ショック』の単行本を手渡す。 アリtoキリギリスについて、単行本に書かせてもらったお礼をこめ て、神谷栄和のサイン入り。  神谷栄和が顔をこわばらせながら、ふたりに渡している姿は滑稽で ある。神谷栄和がいい気になった時は、このときの顔を思い出すこと にしよう。若者はすぐ天狗になって、消えてしまうからな。  神谷栄和もきょうが人生のピークかもしれない…(笑)。  午後9時。収録後、ムサシノ広告の伊東正義と、私、嫁、娘、神谷 栄和の5人で、赤坂の喫茶店。  神谷栄和はそのまま甲府に戻る。  午後10時。また『踊る大捜査線』を見てしまいそうだ。  明日も早くから仕事が入っているから、寝ないとな。


12月8日(火)


 午前4時に目が覚めてしまった。
 早く起きないと思うと、こうなるものだ。

 伊丹十三さんのメイキング・ビデオ『マルサの女をマルサする』
を見る。すごいねえ。
 ハンカチひとつ選ぶのにも、90数枚からやっと1枚選ぶといっ
た、『チョコバナナ』の投稿者全員に見せたくなるようなビデオだ。
でも大半の子が、こんな大変なことをするんなら、漫画家めざすの
をやめようと思うかもしれない。
 それはそれで、結論が早くなっていいのかもしれない。
 こういうビデオを見て、わくわくするような人たちだけが、エン
ターテインメントの世界に来るべきだからね。

 真剣に見てしまいそうなので、後半でストップ。もう一度寝る。

 午前7時30分。起床。
 午前8時30分。タクシーで、世田谷区若林のアスキーに向かう。
 午前9時30分。きょうは『ファミ通Wave』の企画。
 先日両国国技館で行われた『さくま式人生ゲーム』の編集部対抗
試合で、優勝したのが、『ファミ通Wave』編集部。優勝賞金として、
39万円相当のおもちゃを贈呈したのだが、そのおもちゃをクリス
マス・プレゼントとして、近くの保育園の子どもたちにあげようと
いうのが、きょうの主旨。
 昨日のお寿司を食べる企画とはまた180度違う企画だ。
 土居ちゃん、宮路一昭くんにも来てもらう。

 午前11時。太子堂のはとぽっぽ保育園というところに移動。
 すでにタカラの高田さんが待機していた。
 せっかくなので、3人も扮装して、プレゼントを渡すことに。
 私が、大黒天。宮路一昭くんが、布袋様。土居ちゃんがサンタク
ロースに。土居ちゃんのサンタが似合うこと、似合うこと。
左から土居孝幸・宮路一昭・さくまあきら
   『ファミ通Wave』の編集ふたりは、日記を見た人ならわかると思 うけど、凸フェイスというお笑いコンビでもある。彼らはいつもの 白黒のタイツ姿に。  まずは3人で、子どもたちにおもちゃをプレゼントしようとする と、そこへ悪者であるフェイスのふたりが乱入して、プレゼントを 奪おうとする。
   そんなことしたら、子どもが泣いてしまうのではと、心配したの だが、泣いた。ははは。そりゃ泣くわ。  このあとお約束で、凸フェイスのふたりは、子どもたちに退治さ れるという寸法。  そして、めでたし、めでたし。  妙におもしろくて、楽しい企画だった。  保育園の人たちも協力的で、やさしい人たちばかりだったので、 撮影もすごく楽だった。  午後12時。保育園の前で決めカットを撮影して、解散。  私、嫁、土居ちゃん、宮路一昭くんの4人で、食事をして帰ろう ということになる。この保育園の住所を見て、おや? ここは?と 思う。なんとなくサザンオールスターズのベーシスト・カズ坊(関 口和之)くんの自宅に近いのでは?  よくわからないまま、4人は、散歩がてら、関口くんの家に向か う。向かってるかどうかも実はよくわかっていない。へばったら、 タクシーに乗って帰ろうと、いつものように適当。  途中あっちに行くか、いや、こっちしてみるかと、本当に適当。  私と土居ちゃんが思っていた国道246は、まったく逆の方向だ った。  それじゃ、大きな道に出たら、渋谷出て、各自帰りましょうとい うことになった。  30分ぐらい歩いて、大きな道に出た。  おお? これは、ひょっとして? これはまさしくカズ坊(関口 和之)の家の近くではないか! 電話する。いるかな? 確かハワ イに行ってるようなことは聞いていた。  おっ! 眠そうな声が。カズ坊(関口和之)だ。いつもカズ坊 (関口和之)は眠そうな声なので、寝ていたのかよくわからない。    メンバーが、メンバーなので、カズ坊(関口和之)は通りまで、 出て来てくれた。しかもカズ坊(関口和之)お勧めのお店「Vert Bouteille(ヴェール ブティユ)」で、食事をすることに。
   カズ坊は昨日ハワイから帰って来たそうだ。  何というグッド・タイミング!  すでに作業は開始しているんだけど、来年の『桃太郎電鉄』の 音楽をまた宮路一昭くんといっしょに作ってという話もする。 いつもこういう風に、事後承諾でOKな仲間に囲まれているから、 12年間も桃太郎シリーズは続いているんだろうなあ。  カズ坊は、20日からまたハワイに行ってしまうそうなので、 残念なことに17日からの京都合宿には来れないそうだ。カズ坊 も大好きな、京都の「M」に行くというと、本当に悔しそうだった。  午後2時。帰宅。  朝から、けっこう大変な仕事だったので、少し仮眠する。  けっこう寝てしまう。  夕方からの予定も、けっきょく入らなかったようなので、さっ そく『踊る大捜査線4』を見る。いよいよ最終話だ。  ありゃまあ、最後までこのおもしろさで突っ切ってしまうのか あ! これはもうどうリアクションしていいのかわからないくら いうろたえる。見事な脚本だ。こんな脚本が一生に一度書けたら いいなと思っていたけど、毎週このテンションだもんなあ。  脱帽だ。私になんか脱帽されても、何にもならないと思うけど。  君塚良一さんっていう人の名前をくっきり覚えるしか、今は なす術がない。  午後7時。近所の「眞(しん)」で初食事。原宿にしては、 ごくふつうの定食屋であった。しゃれたビルの2階で、しゃれた 内装なのだが、従業員はいかにも大学のそばにある、家族でやっ てるような人たち。たぶんここの土地を持っていて、ビルにした けど、働くのが好きだから、仕事は続けたいっといった家族なの だろう。勝手に想像してるだけだけど。  午後8時。ついまた『踊る大捜査線』を見てしまう。とうとう 「歳末特別警戒スペシャル」だ。横浜ベイスターズの優勝騒ぎの 時のように、こんなに燃え上がるとは、自分でも不思議なくらい だ。  どんなTVドラマでも、冷静にのめり込まずに、分析するのが、 私だったのに!   当分『踊る大捜査線』に振り回されてみよう! 


12月9日(水)


 午前10時30分。嫁と高円寺の整体さんに行く。きょうは定期
的なリハビリ。左手の柔らかさが、ようやく常人とおなじになって
きたそうだ。
 何でも毎日の積み重ねでしか、進歩はあり得ないんだね。
 この日記もようやく1年が過ぎた。とりあえず1年だけやってみ
ようと思って始めたのだが、1年も続くと、今頃になって反響が大
きくなって、やめるにやめられなくなる。
 そういうもんなんだろうね。続けるってことは。
 これからもいつ止めてもいいつもりで、だらだら続けよう。

 午後12時30分。荻窪。土居ちゃんが引っ越した、新しいマン
ションを見に行く。広〜〜〜〜〜い! 独身だから、家具が少なく
て、ことさら広〜〜〜〜〜く見える。
 来る人全員に、こんな広い部屋、ひとりじゃもったいないじゃな
い!と言われまくってるんだろうな。私は意地でも言わない。
 こういう、うっとおしい慣用句というのを収集したくなる。
 独身の場合は、必ずふたりのほうが安上がりのことが多いんだか
らと言われ、結婚すれば、子どもの予定は?と言われ、ひとり目が
生まれれば、ふたり目は?と聞かれる。
 言ってるほうも、そんなこと本当に聞きたい事柄でもないのに、
一応言ってしまう。言われたほうも、いつも言われ慣れてるから、
うっとおしいだけだ。

 午後1時。荻窪は、生まれてから43年間縁があり続けた街なの
で、なつかしい。今から40年前くらいは、ここに都電が新宿まで
走っていたのだ。
 私にとっては、生まれ故郷最大の繁華街、それが荻窪なのだ。
 後年、ここまで発展が鈍るとは、想像もしなかったくらい、活気
のある街だった。
 なつかしいので、土居ちゃんと、南口のカレーライス屋さん「ト
マト」まで歩く。カレーもおいしいけど、ビーフストロガノフも美
味しい。
 ああ、この味、なつかしい。ここのカレーはミルクのようにまろ
やかな味。カレー・マニアなら一度は訪れたい店だ。
 荻窪の美味しいお店ベスト5を上げるとすると…。
1位・釜善(かまぜん・釜めし屋)
2位・安斉(あんさい・うなぎ屋)
3位・トマト
4位・春木屋(ラーメン)
5位・タウンセブン7F森永のオムライス

 午後3時。帰宅。
 疲れているので、思わず仮眠してしまう。

 午後4時30分。仮眠している間に、税理士の赤根豊くんがすで
にもう来ていた。情けない。決算報告。
 わがサマープロジェクトは、昨年の『桃太郎電鉄7』の大ヒット
のおかげで、創設以来最高の売り上げを記録したそうだ。ふつうな
らここで万歳三唱のはずなのだが、『チョコバナナ』の赤字が尋常
でないので、現金はすっからかんだそうだ。まるでこれじゃ『桃太
郎電鉄』のままではないか!
 まあ、『チョコバナナ』のせいで倒産しなかったことは、よかっ
た、よかった!
 いよいよ明日は『さくま式人生ゲーム』の発売日だ。売れて『チ
ョコバナナ1999』が出るようになってほしい。さらに『さくま
式人生ゲーム2』が出るくらい売れてほしい!

 午後7時。私、嫁、娘、赤根豊くんの4人で、最近特にごひいき
の和風料理屋、青山の「穂積」で食事。
 きょうもひとつひとつの出来がシャープでいい。デザートまで
十分美味しい。かぶら蒸しがよかった。

 午後9時。いよいよ『桃太郎電鉄』の新作の仕様書を書き始める。 
 何でもそうだが、机上論だけでは、物事は先に進まない。
 一度書き上げたときに、問題点がたくさん噴出するものだ。
 ならば、まず第1稿を上げて、推敲したほうがいい。
 ただワープロをつかうと、すぐ背中に疲労が出て、痛んでしまう
ので、ちょっとでやめる。 



12月10日(木)


 午前10時30分。新宿住友ビル43F、カプコン東京支社。
 きょうはここで、カプコンの岡本吉起くんと『オリジナル・コン
フィデンス』の新春放談。
 ゲームクリエイターとして、ゲーム業界の未来を語るのがテーマ
だけど、岡本吉起くんは『ストリート・ファイター』シリーズとい
い、『バイオ・ハザード』シリーズといい、常に時代の最先端を走
ってるから、未来を語れるけど、こっちは老舗の和菓子職人みたい
なもんだから、伝統の味を守るだけとしか言いようがない。
 でも最近は、ゲーム業界の和菓子職人とか、『桃太郎電鉄』は
ゲーム業界の『寅さん』シリーズで、『さくま式人生ゲーム』は
『釣りバカ日誌』という呼称は、かなり気に入っている。

 午後12時。京王プラザ・ホテルで嫁と昼食。
 午後1時。新宿さくらやで『さくま式人生ゲーム』を4枚買う。
 売れてほしいゲームだから、まず自分が買わなきゃね!

 午後1時30分。帰宅。
 午後2時。ムサシノ広告の伊東正義が来る。来春の企画の話。
 土居ちゃんと、ハドソンの浦さんがいっしょに来る。
 来年の『桃太郎電鉄』について、いろいろ打ち合わせ。
 午後3時。衆芸社の営業・牧野正が来る。『宇宙人ショック』の
単行本と『さくま式人生ゲーム速攻本』の見本を持ってくる。
『さくま式人生ゲーム速攻本』は、『チョコバナナ』の読者が読ん
だらよろこびそうだ。

 午後4時。えのクン(榎本44歳)が来る。どうしてもえのクン
が来ると、病気の話で盛り上がる。やだねえ、この年になると、話
題が病気ばかりで。

 午後6時。浦さん、えのクン、土居ちゃんは、次の予定で帰る。
 きょうは、グルメ・バカ娘が、風邪引いて、学校を休んでいる。
「美味しいすき焼きでも食べに行くか?」と聞くと「美味しいもの
を、病気の時に食べても美味しくない」という。その通りだ。
 
 午後8時。LDで『ラヂオの時間』を見る。評判の高い映画だっ
ただけに、楽しみにしていたんだけど、どうにも肌が合わない。
 一体いつの時代の設定なんだろう? ラジオ・ドラマが舞台なら、
ものすごく昔のはずなのに、随所に出てくる話題は、最近の話題ば
かりだ。スタジオの機材も妙に最新鋭だ。
 守衛さんが、ゲームボーイしてるし…。
 時代を無視した、はちゃめちゃを見せたいのだろうか?
 日本語でロックを、英語っぽく発音して歌う歌手を、一度変だと
思ったら、もう二度とのめりこめないみたいに、この映画を見てる
こっちはどんどん冷静になって行ってしまう。部屋で見てるから、
よけいそう思うんだろうなあ。劇場で見たほうがよかったな。
 
 まあ、映画評論家たちが絶賛したくなるような匂いだけは、ぷん
ぷんしている。こういう映画って、誰よりも先にホメておかないと
ね!って、やつだ。
 たまたま土居ちゃんに言い忘れたことがあったので、電話して、
「この『ラヂオの時間』を見たことある?」と聞くと、「劇場で見
たことあるけど、眠かった」という。やっぱり、土居ちゃんだな〜。



12月11日(金)


 午前11時。『チョコバナナ』投稿者の藤川かつらサンが来る。
 午前11時30分。週刊少年サンデー編集者・石川くんが来る。

 午後12時。恵比寿の「筑紫楼」へ行く。前からずっと石川くん
に紹介すると言っておきながら、横浜ベイスターズの追っかけを
やっていたばかりに、延び延びになっていた約束をやっと果たすこ
とができた。といいながら、ちゃっかり、かに肉とふかひれのスー
プ麺と、杏仁豆腐(ランキング1位のやつね)を石川くんにごちそ
うになってしまった。
 石川くんも、藤川かつらサンも、この滅法美味しい杏仁豆腐を言
葉でどう表現したらいいかで悩む。
 何しろ、ここの杏仁豆腐は、黄色や赤の寒天がひとつも入ってい
なくて、新雪の雪野原のように、白い杏仁豆腐が器のなかに横たわ
っているだけなのだ。真ん中にちょこんと、赤いクコの実がのって
いるだけ。本当にシンプルなのだ。なのに美味しいから、美味しさ
を表現するのが、難しいねえという話になる。

 午後1時。恵比寿の駅ビルの「せんびきや」。ありゃ? 漢字が
出無いぞ。老舗のお店なのになあ。「千」に「走」の土を抜いたよ
うな文字で…、ええい、ATOKの文字パレットは探しづらいなあ。
 あっ、嫁が来たので、聞いてみよう。
 おお! なんとすばやく漢字を探すことよ!
「千疋屋(せんびきや)」であった。単語登録しとこ。
 まあ、いいや。ここでお茶を飲み、石川くんから藤川かつらサン
に、新人漫画家の心得などを教えてもらう。
 いよいよ来年初めから、『チョコバナナ』の投稿者たちが、漫画
界に総攻撃をかけるのだ! わくわくするぜい! 第1弾、第2弾
と波状攻撃をかけていきたいねえ。

 午後2時。そのまま神保町の小学館ビルへ。
 週刊少年サンデー編集部を訪問。編集長の奥山くんにも会って、
今年本当にたくさんのページをうちのゲームに割いてくれたお礼を
いう。ゲーム雑誌があまり取り上げてくれないうちのゲームを本当
によく載せてくれると思う。ありがたいことです。
 おまけに藤川かつらサンに、連載漫画家さんたちの生原稿を見せ
てもらう。ははは。藤川かつらサン、ポカンと口開けちまってるぞ〜。
瞳孔も開き始めてるぞ〜!
 いいねえ。こういう初々しさっていうのは!
 無限の未来があるもんなあ、藤川かつらサンたちには!
 藤川かつらサンたちと、複数形にしたのは、この日記を読んでる
『チョコバナナ』の投稿者全員ってことだよ。他人事じゃないんだよ!
 私なんぞ、編集長の奥山くんと、15年前ぐらいのことを昔話し
てるだけだもんなあ。『うる星やつら』の本をいっしょに作ったね
えとか、『がんばれ元気』の特集号も作ったなあと、とにかく話題
が古すぎる。
左から奥山編集長と石川くん
   それにしても、やっぱり漫画の編集部の空気が私は好きだ。  止まっていた血液が、急速に、どっどっどっと、動き出すのがわ かる。漫画の編集者になりたかったよ〜。  ほかにも、林さん、鈴木さんといった編集さんを紹介してもらった。 ひそかにこういう人が困るくらい『チョコバナナ』の投稿者たちを 派遣するぞ〜!と、決意を固める。私が決意固めても仕方ないんだ けどね。描くのは、みんななんだから。  午後4時30分。帰宅。 『桃太郎電鉄』の新作の作業を進める。おっと、つい内容について しゃべりたくなる。まだまだ早いぞ。内容がまとまりかけてきたか ら、そろそろしゃべりたい病にかかり始めている。  午後7時。珍しくひとりで、新宿へ。新宿駅西口の交番の前で、 柴尾英令くん、宮路一昭くん、ムサシノ広告の伊東正義と待ち合わ せ。西口交番の前で待ち合わせというのが、何だか学生っぽくて、 行ってみた。  もともとインターネットつながりで、宮路一昭くんが言いだしっ ぺだったようで、このあと弟子の原口一也が合流するそうだ。でも 私はきょうも鍼灸師(針治療)の弓削くんが来るので、途中退場し ないといけない。  とりあえず西口地下のライオンで、飲みながら食事。  話は当然インターネットの話から。  私の日記について、なぜ起床時間まで書くのか?と言われる。  言われてみると、その通りだ。ははは。  これからはもう少し、1日をはしょって書くようにしよう。克明 すぎるとは思っていたのだ。  それにしても、異業種の集まりというのは、やっぱりおもしろく て、映画の話、アメリカの話、音楽の話、ゲームの話、ラジオの話、 霊能の話と、ぽんぽん話が多岐に渡って、進んでいく。  この集まりはおもしろいので、各自が新メンバーを連れて来て、 異業種集会をもっとやろうということになった。  午後9時すぎ。私は自宅へ向かう。試写会を見た原口一也がもう すぐ合流するようだが、会えず終いであった。  午後10時すぎ。鍼灸師の弓削くんが来る。


12月12日(土)


 午前11時。きょうはひさびさに『チョコバナナ』の投稿者を相
手する日。
 来たのは、おなじみ藤川かつらサン、GW(門谷祥子)さん、
汐崎じゅんサン、しんのすけサン。
 しんのすけサンが、編集部初訪問。汐崎じゅんサンは、みんなと
初対面。あ〜、だんだん誰と誰が会ったことがあるかわからなくな
ってきた。

 午後12時。近所の「ユナイテッド・アロウズ」3Fで食事。
 きょうのランチのハンバーグとマッシュポテトのメニューはとっ
ても異様。ポテトがこってりしていて、海苔がほっぺたの内側に
はりつくように、粘る。ハンバーグもソースが置いてないので、味
がついてると思ったら、何やら味が薄い。不味くはなかったんだけ
ど、妙な物を食べてしまった感じ。

 午後2時。食後も家に戻って来て、みんなと漫画の話。
 少しずつみんなが大きな夢に向かっている様を、特等席で見てい
るようで楽しい。

 午後4時。きょうから表参道のイルミネーションが始まるから、
みんなで見てくればということで、みんなが帰る。
『桃太郎電鉄』の仕様書を少しずつ書く。また背中が痛くなってき
たのだ。やだね〜。

 午後6時30分。私、嫁、グルメ・バカ娘の3人は、天現寺の
「プティ・ポアン」に行く。きょうは、グルメの師匠である、すぎ
やまこういち先生ご夫妻と会食。
「プティ・ポアン」は、先日、あの大きな大きなマツタケを兵庫県
三田市まで食べに行った時も、ごいっしょした北岡さんご夫婦の
お店だ。
 師匠である、すぎやまこういち先生が、一番懇意にしているフラ
ンス料理のお店というだけで、どのくらいのレベルのお店かが計り
知れるだろう。
 つい1カ月前ぐらいに、サザンオールスターズのベーシスト・
カズ坊(関口和之)を連れて行って、ご馳走するはずが、カズ坊
(関口和之)におごってもらってしまった、あのお店だ。
すぎやま先生ご夫婦
   さてさて、席に着く間もなく、美味しい料理を食べながら、最近 あそこのお店のうどんが美味しかった、あそこの店のお肉がまずい のに、値段が高かったと言い合う。  料理のほうもすごいよ〜。メニューを紹介しよう!  さて名前だけで、何品どんな料理か想像つくかな? <メニュー> ・チェリートマトのベニエキャラメリーゼかけ中国風。 ・黒トリュフのパイ包み焼きスープ。 ・ドンブ産グルヌイユのもも肉の香揚げと、  たらば蟹入りの根セロリピュレ。 ・ブレス産七面鳥とフォアグラのステーキグルマン。 ・マンゴとパッションフルーツのサラダ、デリカテッセン。 ・カフェと小菓子。  早口言葉じゃないぞ〜。『料理の鉄人』見てるみたいでしょ?  ドンブ産グルヌイユのもも肉というのが、けっこう美味しかったん だけど、食べる直前、ついうっかり「これは何ですか?」と聞いて しまった。グルメ候補生としては、格好つけず、わからないことが あったら、すぐに聞く。  これはいつも私が『チョコバナナ』の投稿者に言っている言葉だ。  言ってる限りは、自分も実践せねばだ!  で、その「ドンブ産グルヌイユのもも肉」。  たぶんオーストラリアあたりの牛肉だろう。  すると、すぎやまこういち先生の奥さんが、「これなんだと思う?  かえるよ」。かえる? 帰る、変える、買える、代える、飼える…、 そう! カエルなのだよ〜〜〜〜〜! ひ〜〜〜〜〜!  聞くんじゃなかった〜〜〜〜〜。  20年前ぐらい、盛り場ガイドの取材で、浦安の居酒屋に行って、 カエルの丸ごとを出されて、とうとう食べられなかったことを思い出 す。う〜ん、どうしよう。  気持ちは食べたくない。でもどう見ても、カエルに見えず、小さな 手羽先にしか見えない。  横を見ると、さっさとグルメ・バカ娘は美味しそうに食べている。  こいつは食べ物に対して、どこまで無敵なんだ!  これは美味しいに違いない。え〜い、食べてしまおう。  お? これは。やっぱり見た目通り、鳥肉のようではないか。  けっこういけるぞ。気がついたら5〜6本あった、カエルを全部 食べていた。う〜ん、またひとつ嫌いな物が減ってしまった。
魅惑のデザート
   午後10時。そろそろ帰ろうとしたら、北岡さんご夫婦がいらっし ゃって、なんとデジカメ談義が勃発。
プティ・ポワンのオーナーシェフ北岡さん
   元は言えば、きょうすぎやまこういち先生が、デジカメを買って来 たら、北岡さんもきょうデジカメ買って来たばかりだというところか ら端を発した。うちの嫁はこの日記用にいつもデジカメを持ち歩いて いるから、3台のデジカメが揃ってしまった。  さあ、ここで撮影会が始まったのだが、写そうと思っても、何やら ピピピピッと鳴って、シャッターが降りなかったり、スマート何とか というフロッピーのような物がどうした、こうした、電池が充電でき ていなかったと、もう大騒ぎ。  次第にお店の従業員の方まで加わって、まるで明治維新の「フォト ガラフィ」をみんなで見ているようだ。白い化粧を塗りたくって、 動いたらダメだぞ〜、マグネシウム、ぼ〜〜ん!の、あの時代のようだ。  思えば、平均年齢50歳ぐらいの人たちが、うれしそうに子どもの ように、デジカメをみんなでのぞき込んでいる姿というのは、不思議 な光景だ。
デジカメにむらがる好奇心旺盛な大人たちの図
   でもやっぱり思ったことは、すぎやまこういち先生といい、北岡さ んといい、業界のトップを走る人たちというのは、好奇心が旺盛だ。 けっきょく1時間近く、デジカメひとつで大騒ぎ出来てしまうのだから。  ついには絶対デジカメを触ることすらしなかった私さくまあきらが、 とうとうデジカメ撮影に初挑戦してしまった。  情けないことに、みなさんの後ろ姿を撮影してしまった。  けっこう芸術写真のようだ。  気がついたら、午後11時。すっかりグルメ・バカ娘を夜更かしさ せてしまった。  この楽しいメンバーは、今年もお正月、京都で再会することになっ ている。  またそのときは、デジカメ大会になりそうだ。


12月13日(日)


 午前11時30分。私、嫁、娘、嫁の弟夫婦の5人で「カフェ・
ヴァジー」に行く。嫁の弟夫婦は、昨日から表参道のイルミネーシ
ョンを見に来ている。新聞などでも、このイルミネーションは、
住民が中止を求めて、訴訟をすることになったようだと書いてある。
 今年で見納めになるかもしれない。
 確かに街ごと朝のラッシュアワー状態になるほどだから、住民に
とってはつらいんだろうなあ。

 食後、嫁の弟夫婦とは別行動で、表参道を散歩。古いアパート街
では、いつものように個展やグループ展が開かれているので、ひと
つひとつ覗いて行く。
『チョコバナナ』のイラストっぽい作品が並んでいる。
 それにしても、つくづく素人と玄人との差は、ほとんどないはず
なのに、何かが大きく違う気がする。
 どんなに絵が上手くても、素人の絵は、やっぱり素人だ。
 絵が下手でも、プロの絵は、どこか噛みついて来そうな迫力があ
る。この差は一体どこから生じるのだろう。
 どうも作者の気迫とか、心構えにあるような気がしてならない。
 描くのに一生懸命になっているのが、素人で、お客さんに向かっ
て描いているのが、玄人。ひょっとしたら、こんな単純な差のよう
な気がする。

 午後1時。表参道、新潟物産館ネスパスに行く。
 いつもここは新潟を題材にした写真展などをやっている。
 漫画家の水島新司さんが漫画を描く実演をした場所でもある。
 きょうは新潟各地の和菓子がメインなので、グルメ・バカ娘の目
がキラキラ光る。和菓子とお茶を飲める茶店まであったものだから、
グルメ・バカ娘は、どれを食べようかと、展示品を食い入るように
見ていく。食い入るではなかった、ちゃっかり試食しまくっている。
本当にあいつには食い物の神様がついているのか、試食品がもう無
いのに、展示品を食べさせてもらっている。
 さんざん試食しているのに、茶店にもちゃんと行くのである。
 新津市の三色だんごが美味しかった。
 新発田市の養生糖、長岡市の大手門まんじゅう、さらにお店の人
がサービスですと、継続だんごというおだんごまで、グルメ・バカ
娘に持ってくる。
 しっかり報道ビデオまで撮られていたから、新潟のTV局あたり
で放映されているかもしれない。トピックスは子どもを狙うから。
 
 食後、グルメ・バカ娘はさらに、コシヒカリ・アイスを買って、
歩きながら食べる。
 散歩しながら、建て売りマンションのモデルルームを見ていく。
別に買うのではない。建て売りを見るのが好きなだけだ。表参道や
原宿の場合、一戸建てよりもマンションのほうが値段が高いのが、
いかにも土地柄でおもしろい。

 午後3時。帰宅。疲れた。寝る。
 午後4時30分。寝てしまった! 仕事するはずなのに。
 午後5時。新宿アルタ前。ポストペットのイベントを見る。
 すごい人気だねえ、ポストペットは。女性がパソコンをやるよう
になった功績は大きいね。
 午後6時。嫁と娘は、サザンオールスターズのカズ坊(関口和之)
が主催するチャリティ・オークションへ行く。
パーティの模様 2枚目は高木ブーさん 3枚目の右端が関口さん
    私は、伊勢丹の地下でお弁当を買って、自宅へ戻る。  京都わらびの里のお弁当。ここのは美味しいよ。  仕事しないとね。  午後6時30分。帰宅。 『桃太郎電鉄』の仕様書を書き始める。  さて、いよいよ明日から私は、京都ごもりだ。  京都にひとりでこもって、『桃太郎電鉄』の基本コンセプトをまと め上げる予定。今回は嫁も娘も同行できないので、この日記はひさし ぶりに1週間ぐらい更新できないからね。  あ、突然業務連絡。宮路一昭くん。今回の旅にデジカメ持っていく かな? スマート・メディアを私が持っていくから、写真撮ってくれ ないかなあ。  12月17日に、大阪で土居ちゃん(土居孝幸)、宮路一昭くんと 合流して、毎日放送のラジオに出演する予定。  この録音は確か12月20日の深夜だかに放送されると思うので、 大阪のほうの人たちはよかったら聴いてみてください。  というわけで、1週間ぐらい、でかけてきま〜す。


12月14日(月)


 午後11時30分。嫁と新宿伊勢丹前の映画館に行く。
 いよいよ『踊る大捜査線THE MOVIE』を見るのだ。
 早くも50人ぐらい行列している。月曜日を狙ったのに、学生が
多い。試験休みとか言っている。

 午後12時。『踊る大捜査線』スタート!
 伏線の張り方は見事だし、テンポはいいし、まったく困った映画
だねえ。日本映画といえば、テンポの悪さが自慢なくらい、だらだ
らするはずなのになあ。TVの人気ドラマを映画化すると、必ずダ
メになる鉄則も軽く一蹴してしまってるし、文句の言い様がない。
 唯一言えるのは、キョンキョン(小泉今日子)の動機とか、狂気
がちょっと薄いところだけど、『踊る大捜査線』のテーマは「組織」
だから、キョンキョンをメイン・キャラにしてしまうと、テーマの
ほうがぼけてしまうから、あれでいいんだろうなあ。
 犯人も弱いんだけど、柳葉敏郎と織田裕二を際だたせたいから、
あれでいいんだろうし、すごいなあ。
 とにかく、ちょっと見は、今までの刑事ドラマの形を取っている
んだけど、全部のシーンの描き方が、とにかく新鮮なのだ。ここが
難しい。物事斬新にするのは、簡単だけど、時代の半歩だけ先を行
く物を作るくらい難しいものはない!
 ああ、ホントに、『踊る大捜査線』の研究本を作りたいくらい
ハマってしまったよ。今後の私のゲームやほかの作品に大きな影響
を与えそうだ。いつごろその影響が出るのか、楽しみだな。2年後
かな、3年後かな?
 
 午後2時。伊勢丹並びの「げんこつラーメン」で、わんたんめん。
ラーメン屋に入ると、すぐわんたんめんを注文してしまう。

 午後3時。嫁と別れて、東京駅へ。
 午後3時56分。500系のぞみで、京都へ。
 
 午後6時10分。京都着。反対側のホームから、東京行きの50
0系のぞみが発車するところ。
 京都駅は、のぞみが、上りも、下りも、ちょうどおなじ駅に止ま
る珍しい駅なのだ。殺人事件のトリックくずしにつかえそうだ。
 車中、例によって新作『桃太郎電鉄』のアイデア出し。
 どういうわけか私は電車に乗ると、いいアイデアが出る。
 たぶん自己暗示なんだろうけど、いいことはジンクスにしろう。
ジンクスっていう言葉は、悪いときだけにつかうらしいけど。ラッ
キー・ジンクスって時の言葉って無いのかな?
 
 午後7時。京都のマンションに到着。
 さっそく新作『桃太郎電鉄』の仕様書作り。



12月15日(火)


 京都のマンションで起床。
 何度も目が覚めて、ぼうっとしている。
 きょうの旅行ぐらい気の重いものはない。
 なぜかというと、倉敷のチボリ公園まで行くのだ。新作『桃太郎
電鉄』の倉敷の物件として、いくらぐらいの物件にするかを視察し
に行くのだ。でも行ったことのある人ならわかるだろうけど、花に
囲まれたチボリ公園を、40歳も半ば過ぎの男がたったひとりで行
くことがどんなにつらいことか。

 午前11時12分ののぞみで、岡山に向かう。
 京都駅で買った、カニ弁当1100円を食べる。冷たい!
 冷たい駅弁ぐらいまずいものはない。ご飯を飲み込むと、しばら
くして冷たいかたまりのようなものが、胃のほうに落ちていくのが
わかる。最初からどうもテンポが悪い。

 午後12時11分。わずか1時間で岡山に着いてしまうのだから、
のぞみというのはすごいやつだ。
 それにひきかえ、岡山に来るといつも感じるんだけど、覇気が
中途半端だ。活気がないわけではない。でもおとなしい。
 四国への玄関として、山陽道の首都として、もっと堂々と君臨し
てほしいのだが、向かう方向を見失っているような気がする。
 午後12時28分。山陽本線に乗る。窓ガラスがふいていなくて、
汚い。この辺にも岡山の覇気に疑問を持つゆえんだ。
 午後12時45分。倉敷着。

 駅を降りて、そのままチボリ公園に行ける。これだけ駅と直結し
たテーマパークは珍しいのじゃないだろうか? テーマパークの
あとに、線路が来て、新しい駅ができることはあるが、長いこと
ずっとあった駅の北側に忽然と、テーマパークが出来るというのは、
すごい。力が入っている。
 どうなのだ。どうも岡山よりも、最近は倉敷のほうが元気だ。
 とうとう旅行ガイドで有名な昭文社の本でも、岡山がメインでは
なく、倉敷・岡山・姫路という背表紙になり、倉敷が岡山の2倍の
写植の大きさで表示されている。
 
 というわけで、時間差なく、チボリ公園に入園。
 しかし予想通り、わびしい。メルヘンたっぷり、フラワーたっぷ
り攻撃に、メモ帳片手のおじさんは、なす術がない。
 クッキー工房、ソフトクリーム、チュロス、ケーキといった看板
ばかり目立ち、どこを歩いても、甘〜い匂いばかりする。
 どの店にも、焼き上がり時間の表示がある。
 減量前の私なら、全部の店を制覇してやろうかと意気込んだだろ
うが、現在体重維持中の私としては、何も手を出せない。
 乗り物にしたって、ティーカップとか、レールの上をのんびり走
るクラシックカードとか、とにかくおじさんひとりでとても乗れな
いようなものばかり。
 ハウステンボスの前身である、オランダ村とそっくりである。
 北海道登別のテーマパークにも似ている。
 別に似ていてもいいのだけれど、ここ特有のものがない。
 唯一、人形劇によるアンデルセン童話の劇が、思ったよりおもし
ろかった。
 はだかの王様、マッチ売りの少女、人魚姫、みにくいアヒルの子
の4本立て。客席のほうが移動するので、一瞬びっくりする。20
分程度なので、ひとつひとつが4コマ漫画のようにテンポがいい。
 それにしてもこういうところに来るたびに、ディズニーランドの
大胆にして、細心の心配りの底知れなさというものに、驚嘆する。
「関係者以外立ち入り禁止」の札なんて、絶対ディズニーランドで
は見ることがないもんなあ。ここは目立つ。

 さて、『桃太郎電鉄』として、ここをモデルに名前をつけないと
いけない。チビリ公園とか、サボリ公園とか、すぐ浮かぶのだが、
誹謗するような名前をつけるわけにはいかない。
 もっとアンデルセンのイメージを強くしたほうがいいと思ったか
ら、アンデルセンランドがいいかな? 9文字か。ぎりぎりだ。
順当に、デンマークランドのほうがいいかな? デンマークランド
のほうが文字面が読みやすい。
 おそらく200億円以上かけて、作ったのだろうけど、『桃太郎
電鉄』では、5億円で収益率1%ってところかな?
 という風に『桃太郎電鉄』の物件は決まっていくわけだ。
 
 それにしても全部石畳なので、まいった。とにかく不自由な足に
とって最大の敵が、石畳と砂浜。特に石畳がつらい。だからわずか
1時間ぐらいしか歩いていないのに、もうへろへろ。
 おまけに不自由な左手の甲が痛くなって来た。
 成長するときの前兆でむずむずすることはあるけど、きょうのは
痛い。何だろう? ちょっと心配。

 午後2時。倉敷駅まで戻る。へろへろのまま。
 倉敷に来たかぎりは、倉敷美観地区を見て行かないわけにはいか
ない。おそらく日本で一番最初に計画的に、観光のために町づくり
をした場所だろう。20年前ここを訪れた時、時代劇映画のセット
のように、白く壁が塗られ、忽然と蔵を配置している様を見て、
嫌悪感を抱いたものだ。
 あまりにも作り物すぎる。歴史的景観のイメージを残しながら、
増補した感じではない。町ごと、明治村みたいにしてしまったこと
が、あまり好きにはなれなかった。

 ほとんど足を引きずるように、駅から歩く。タクシーにすればよ
かったかな。すると、見たことのある景色が! これはたぶん20
年前に泊まった、旅館だ。間違いない。
 あのときとおなじように、おんぼろだ。「N」ってことにして
おこう。懐かしいなあ。『いただきストリート』のイラストを描い
た大川清介もいたなあ。ムサシノ広告の伊東正義もいたはずだ。
集英社の牧野弘もいっしょだ。もう20年になるんだなあ。

 美観地区に着く。これは驚いた。
 20年も経つものだから、すっかりあの真っ白けの白壁の色が落
ち着いて、それなりの景色になっているではないか!
 そうかあ。こうやって、町は出来て行くんだなあ。
 10年前にも来ているけど、あの頃はまだ、作り物のイメージが
強かった。10年ひと昔というけれど、10年じゃダメなんだねえ。

 午後2時30分。美観地区にある、日本郷土玩具館を見る。
 日本中のこけし、凧、民芸品といったものが集まっている。
 なんとここで、キングボンビーと戦う、郷土の民芸品を探そうと
いう魂胆なのだ。
 どうも博物館といった感じではなく、個人の篤志家が、日本中か
ら集めたものを展示しているだけといった感じ。自宅兼用のようだ。
あまり展示館にお金をかけていないから、古い物が集まったとき、
特有の誇り臭い匂いがする。
 もうここらで、足のほうが限界。とても2階まで見に行く気力が
ない。何度も豊富な休憩所で休むが、まったく回復しない。
 タクシーに乗り、倉敷駅へ。

 ああ、いつもならここから突飛なところへ向かって、神出鬼没ぶ
りを見せるのだが、もうダメだ…ん? 伯備線が午後3時35分発
だって? 伯備線なら、備中高梁まで行けるぞ。でも備中高梁は
遠すぎる。体力もない。
 でも乗る。とりあえず乗る。 
 倉敷からふたつ目の総社駅まで行く。知る人ぞ知る町だが、とて
も降りる気力がない。そのまま向かいのホームに泊まっていた吉備
線に乗る。ここまで来たら、もう鉄道ファンなら何をしようとして
いたわかったと思う。
 倉敷から東に2駅行けば、岡山なのに、車のワイパーのように、
時計回りに大きく10個ぐらい駅を遠回りして、岡山に戻ろうとい
うのだ。まったくバカげている。バカげているからやりたいのだ。
 何たって、この吉備線には、備中高松駅という、豊臣秀吉マニア
には、最高潮のクライマックス(殿様キングスみたいな言い方)で
ある備中高松城址があるのだ。
 歴史にくわしくない人でも、豊臣秀吉が攻める城を、水攻めにし
たことで有名な城だ。10年前にも私はこの城址を訪れたのだが、
どう見ても平野で、とても水攻めなんかできそうもない地形なのだ。
あれから10年立って、もう少し歴史の知識が増えたと思うので、
今度は電車のなかから地形を見てみようと思ったのだ。
 電車は無人駅を過ぎて、備中高松駅へ近づく。
 左の車窓に、備中高松城址が見える。今は小さな公園になってい
る。やっぱり平野だ。無理だよ。ひと駅前よりは、遠くに山が増え
たけど、とてもここを水浸しにしようなどと思わない。まだ知識が
薄いのかなあ。水量豊富といわれた足守川も小さいなあ。
 備中高松駅が過ぎた安心感からか、うたた寝をしてしまった。

 午後4時42分。岡山駅について、目が覚めた。危うくそのまま
乗り過ごすところだった。
 岡山市内を見る力もなく、町も暗くなってきているので、帰るこ
とにした。とにかく疲れた。
 午後4時12分。のぞみで京都へ向かう。また500系だ。最近
本当に本数が増えたんだなあ。

 午後6時19分。京都着。
 午後6時30分。京都駅ビル11Fの「不二乃(ふじの)」で食
事。豆腐料理のお店だという。入って初めて気がついた。私が京都
に来ると必ず寄る、北野天満宮のそばの豆腐料理屋「おひるや豆魂
(とうこん)」の直営店だったのだ。
「とうにゅう竹なべ」というのを食べたんだけど、さすがごひいき
しているお店の直営店。美味しいし、相変わらずの趣向だ。
 豆腐は百珍(ひゃくちん)と言われるくらい、いろいろな料理方
法があるのだが、きょうのも驚かせてくれる。
 豆腐のグラタンに、豆腐のサラダ、豆腐でんがくの盛り合わせ、
竹かご紙を敷いて器とした湯豆腐。苦手な三つ葉だらけだけど、
よけて食べても美味しかった。
 最後は、ご飯。これがおもしろい。明石たこ焼きのスープのよう
なところへ、小さなおにぎりをドボン! また三つ葉がたっぷり。
「焼きおにぎりのおすまし」という名前だそうだ。
 おっ、デザートがあるって?
 やっぱり! 豆乳のコーヒーゼリーだ!
 こんなところで食べられるなんて、うれしいねえ。
 黒豆珈琲はさすがに出なかった。でもレジで黒豆珈琲を売ってい
た。これは本当に美味しいから、京都のお土産にぜひ! 駅ビルだ
からこれから買い忘れた時はここで買えると思うと、うれしくなる。
 今回も嫁にたくさん買って来てくれといわれているのだ。

 午後7時30分。京都市役所前の地下街にある、クイック・マッ
サージ「ナチュラル・ボディ」に行く。
 原宿の住所のまま、このお店の会員券を持っているのだ。何だか
うれしいのだ。国籍をふたつ持ってるようで。
 左手の甲が痛くて仕方がない。
 今回担当してくれた人は、非常にマッサージが上手い。
 サービス券とかいうのがあったので、都合45分もやってもらっ
た。おかげで、すっきりした〜。生き返る〜。
 
 午後8時30分。京都のマンションに戻る。
 電車のなかで考えた、新作『桃太郎電鉄』のアイデアをまとめる。



12月16日(水)


 京都のマンションで起床。
 きょうはバカ旅行はしないで、京都市民のふりをする日。
 といっても、別に何をするでもない。コンビニ行ったり、本屋さ
んに行ったりして、あとは1日仕事をする。
 だからきょうは1日京都市民の日。

 午前11時30分。そんなわけでいきなり美味しい物を食べては
いけないので、三条通りをずっと西に行って、パン屋さんの系列の
お店で食事をしようとしたら、思って、どうにも古ぼけていて「美
味しいぞ!」という叫びが店から聞こえてこない。
 正面のガラス・ドアからして、べっこうアメ色だ。やめよう!
 確か近くに、ボローニャの食事ができるお店があったはずだ。
 げっ! 当分のあいだ、パンの販売のみとある。
 こうなると、歩きながら探すかといいながら、どのお店も全部
美味しくないように思えてくるから不思議だ。
 こういうときは、最初に思いついたお店のほうに行くに限る。
 すでにけっこう歩いて、もうへばっている。
 けっきょくタクシーに乗って、京都市役所まで戻る。

 午後12時30分。寺町押小路のそば屋「出石庵(いずしあん)」
で、皿そばを食べる。おそばが美味しいことで有名な兵庫県出石町
のアンテナ・ショップだ。東京の吉祥寺西友の前にもある。
 一度も出石町までは行ったことがない。電車が通ってないとどうも
行きづらい。
 ごくありふれたお店だけど、皿そば自体は美味しいので、ひとりで
入るには最適。これも京都市民ぶりっこのひとつなのだ。
 食事のあとは、ゼスト御池の地下街で、本屋さんとかをのぞく。
『踊る大捜査線』関連の本がたくさん出ていたので、買ったら、重く
なってしまった。まだ片手しかつかえないから、たくさんの荷物は
持てない。
 
 午後1時。寺町通りの「スマート・コーヒー」で休む。
 名前がいいでしょ? スマート・コーヒーというのが。
 大正浪漫あふれた店内で、ずしりと重いコーヒーを飲む。
 コーヒーの値段が、わずか380円というのもいい。
 隣りで、おじさん2人とおばちゃん1人が言い争っている。「それ
が宿命だ!」「どうせ死んでまで持っていけなねーだ」「あいつみた
いに悪いことしてるやつには、きっと天罰が下るさ!」といった慣用
句の連発が楽しい。

 文房具屋さんと、コンビニに寄って、京都のマンションに戻る。
 午後2時。新作『桃太郎電鉄』の仕様書書き。
 なんとか新しいカードがほぼ確定する。毎回10枚以上は新しい
カードを登場させたいと自分に課しているんだけど、それを守るのも
けっこう大変だ。もうほとんどのアイデアは出尽くしているだけに、
年々ひとつのアイデアが出るまでに時間がかかる。

 午後5時。町に出る。お店がことごとく定休日。
 そうだ。きょうは水曜日だったんだ。京都はとにかく水曜日休みが
多い。行けども行けども、定休日ばかり。いつものオムライス専門店
にしておけばよかった。近くも通ったのに。
 1時間近く歩いて、どんどん京都のマンションに戻って来てしまう。
 どうしよう。候補の店はもう10件以上お休みだ。こんな日に限っ
て、娘が大好きな『三嶋亭』は、水曜定休なのにやっている。
 ひとりでお肉を食べてもなあ。ちょっとわびしいぞ。
 そうだ。きょうは京都市民を演じる日と決めていた。だから観光客
が行くようなお店に行ってはいけない。
 マンションの近所に、広島風お好み焼きのお店があった。京都に来
てまで、広島風。これは受けるぞ! 誰に?
 こんなときでなければ、このお店に一生入ることはない。
 入ろう! どうせもうへとへとだから、マンションに戻ったら、外
に出る気がしなくなる。
 
 午後7時。広島風お好み焼きのお店「一途(わんず)」で、イカね
ぎ焼きを食べる。ぴり辛ソースがけっこう美味しい。仕事で来たとき
はまた来てもいいかな? 

 午後8時。しばらく背中が痛くて休んでいた『桃太郎電鉄』のテス
トプレイを再開する。
 20数年ほどで、300億円以上買っているキャラをコンピュータ
に変更して、自分は一番ビリのキャラに変更して、首位を追いかける。
前回まで自分がやっていたキャラだけに、鉄壁のやり方がほどこされ
ているので、なかなか追い上げることができない。
 やっとキングボンビーをなすりつけてやったのに、ヤマトザムライ
がキングボンビーに勝ってしまった。確か1/32の確率だったはず
だぞ〜! 
 2年間で2位にまではなったけど、首位がどうにも追い越せない。
 この結果がまた次回作の課題となって行くのだ。

 オリックスのイチロー選手が、球界初の5億円プレイヤーになった。
マスコミは、5年連続首位打者でもさほど大きな話題にならないくら
い、打率4割を期待したと報道しているが、話題にしなかったのは、
マスコミである。
 5年連続首位打者は、三冠王を取るよりも難しいことなのに、マス
コミはまったく話題にしない。イチロー選手が取材を好まないという
理由からだ。そこを取材するのが、マスコミ魂ではなかったのか? 
 少なくとも私がマスコミに入ったときは、そういう教えだった。ほ
かが取材しななら、うちだけでも抜け駆けをしてというマスコミが必
ず一社はあったものだ。反骨精神というものは無くなってしまうのだ
ろうか?
 あまりにも楽をしすぎるニッポンという国の今後が、恐ろしい。
 司馬遼太郎さんが生前、この国は滅びると予言していた。



12月17日(木)


 きょうも京都のマンションで起床。
 午前6時から、きょう打ち合わせする新作『桃太郎電鉄』の仕様
書をまとめる作業。
 午前8時。イノダ・コーヒ本店で朝食。ロールパン・セットを注
文する。このロールパンがすごくて、ロールパンを切った中に小さ
な海老フライが入っている。これは一瞬ギョッとする。
 まあまあ、美味しい。

 午前10時。京阪三条駅から、大阪北浜駅。北浜駅から南森町駅へ。
『桃太郎電鉄』をいつも作ってくれているメイクソフトウェアさん
へ向かう。

 午後12時。メイクソフトウェアさんの前で、ちょうど今朝東京
から来た土居ちゃん(土居孝幸)と、宮路一昭くんに会う。いっし
ょにメイクソフトウェアさんへ。
 午後1時。ハドソンの浦さんも来て、新作『桃太郎電鉄』の最初
の会議を始める。
 いきなりウインドウまわりの大幅変更案を、メイクソフトウェア
さんが作っていてくれた。そのグラフィックを見ながら、ああでも
ない、こうでもないと議論百出。
 いいデザインでも、使い勝手が悪いと採用できないのが、すごく 残念。きょうも物件名をウインドウのなかでスクロールさせれば、 もっと物件数を増やせるけど、やっぱり1枚で全物件を見渡せたほ うがいいという矛盾をどうするかで頭を悩ませる。  1文字、1ドットをどうするか。本当にこまかい打ち合わせだ。  絵をふんだんに入れて、楽しい雰囲気にしたいというメイクソフ トウェアさん側のがんばりに対して、処理速度が遅くなるという 理由から、ダメを出すのは本当につらい。  さらに予定していたおまけイベントの九州編を断念することが 決定。すでにMAPまで完成していて、イベントもたくさん出来て いるのに断念はけっこう決意が必要だった。  今年の夏、京都にこもって必死にMAPを作っただけにもったい ない。MAPを作った時のアシスタントが悪かったのかなあ?  アシスタントは、中尾淳であった(笑)。  多くは語れないけど、次の『桃太郎電鉄』は盛りだくさんだよ。 この「盛りだくさん」という単語を覚えておくと、そのうちタイト ル名を聞いた時に、なるほどとうなづくはず。  午後4時。茶屋町の毎日放送へ行く。12月20日深夜放送予定 のラジオの録音。番組はもうほとんどレギュラー出演に近い『ゲー ムの若大将』シリーズ。おなじみ柏木アナと、西靖アナの名コンビ の番組。ほとんど友だちの家に遊びに来た感じのまま出演できるの でありがたい。
柏木さんとさくま、手前が西さん 左から→さくま、柏木さん、西さん、宮路くん、土居ちゃん
 2時間番組の半分以上出ずっぱり。『さくま式人生ゲーム』も 『桃太郎伝説』も大々的に取り上げてもらう。  とくに『さくま式人生ゲーム』は、タカラの高田さんと宣伝の 森岡さんが聴いたら、身体が浮いてしまうくらい。  放送でどこまで使われるかわからないけど、柏木アナと宮路一昭 くんの2人対決で、結婚イベントまで完全中継。  放送時間にしたら、2〜30分になるのではないか?  ありがたいことだ。  この番組スタッフは、いつも私のゲームの魅力を理解してくれた 上で、呼んでくれるので、うれしい。  午後7時。録音が終了してからも、しばらく世間話をしてから、 淀屋橋駅へ向かう。  午後8時。京阪三条駅に着いたら、もう8時すぎ。  今から開いているお店があるかなあと思って、とりあえず最近 ごひいきの「忘吾(ぼあ)」に電話する。OK! よかった。3人 とも朝食べただけで、お昼を食べていないので、お腹ぺこぺこ。  土居ちゃんと宮路一昭くんは「忘吾(ぼあ)」は初めて。  きょうはここで、えぞ鹿肉のステーキというのを初めて食べた。 けっこうさっぱりした味で悪くない。  最後のご飯にやっぱりふたりとも「美味しい!」を何度もいう。 本当にここのご飯は美味しい。私にとって、ここはホームラン打者 のようなお店ではなく、横浜ベイスターズでいうと、石井琢郎選手 みたいなしぶいお店なんだなあ。  やっとお店の人も私の顔と名前を覚えてくれたから、これから もっともっと美味しくなる。美味しい料理を食べるコツは、お店の 人に顔と名前を覚えてもらうことだ。    午後9時30分。京都のマンションに戻って、3人でしばらく 新作『桃太郎電鉄』について議論して、解散。この続きはまた明日 だ。密度の濃い1日で、さすがに疲れた。でもうれしい疲れ方だ。


12月18日(金)


 午前10時30分。土居ちゃん(土居孝幸)と宮路一昭くんと合
流して、四条通りへ。大阪から来た浦さんと、待ち合わせる。
 午前11時。そのまま3人で、北野天満宮そばの「おひるや豆魂
(とうこん)」で食事。今年もう何回ここへ来たかわからないくら
い何度も来ている。
 私の京都の昼ご飯ランキング第1位に輝くお店だ。
 誰かこの1年分の私の食事を検索して、よく行ったお店ベストテ
ンとか作ってくれないかなあ。

 浦さんと土居ちゃん(土居孝幸)は、この「おひるや豆魂(とう
こん)」は、初めて。この店自慢のおぼろ豆腐を土居ちゃんが気に
入る。大人気の黒豆珈琲も飲んで、満足、満足。
 帰りに、黒豆珈琲とか、珈琲ゼリーとかを東京に送る。

 午後1時。京都のマンションに戻って、新作『桃太郎電鉄』の
アイデア会議。いよいよ新作では桃太郎ランドを大きくテコ入れす
ることになりそうだ。
 ほかにも目玉商品というか、今回のマドンナ役のキャラを昨日に
引き続き、練り上げる。ただおもしろいキャラが浮かんだからと
いって、すぐ出せるのではなく、プレイヤー全員がおなじカードを
持っていた場合、全員が持ち金マイナスだったら?とか、カード
10枚全部デビル系を持っていた時に、さらにデビル系のカードが
来てしまったらどうしよう?とか、考え得ることすべてに対応して
考えて行かないといけない。

 目的地を決定するだけでも、大変なのだ。それぞれの目的地は、
マスの配置のバランスも考えて配置しているので、なかなか動かす
ことができないのだ。

 というようなことを延々会議して、ひとつひとつ潰していく。
 いろんな人からアイデアをいただくことも多いけど、そのアイデ
アをそのまま使えたためしがない。加工して、アレンジしてやっと
初登場となる。
 貧乏神が2匹つくというアイデアはここ7〜8年間何10人もの
方々からいただいているが、スーパーファミコン時代だと、貧乏神
が2匹になったら、大きさは、ミニボンビーの大きさにしないと、
表示できないとか、ものすごく制約を受けたりするのだ。
 今回プレイステーションなので、物理的には、ひとりのプレイヤ
ーに貧乏神が4匹つくのも可能なんだけど、一度に貧乏神の悪行を
4種類も毎ターンやられ人が、10年モードをやり続けてくれるか
というと、まずやってくれないだろう。そういうことも考えた上で、
アイデアを熟成し、シミュレーションして、初めて、初登場のシス
テムなり、イベントとなるのだ。

 午後5時。アイデア会議終了。きょうが桃太郎チーム今年最後の
会議かもしれないので、1年間の総決算ということで、このインタ
ーネットでは、あまりにも有名な特に名を秘す「M」に向かう。
 途中寺町のタニヤマ無線Cゾーンの鈴木千華雄くんのところに寄
っていく。すでに『さくま式人生ゲーム』を買っていてくれて、子
どもと「どんぶるサン、どんぶるサン」と叫んでいるそうだ。
 鈴木千華雄もこのインターネット日記をかかさず読んでいるのい
で、噂の「M」は、四条通りの「萬養軒(まんようけん)」と予測
していたそうだ。残念ながら、ハズレである。ここのCゾーンに近
い場所だよと教える。「萬養軒(まんようけん)」はフランス料理
の店である。「M」は和食の店。
 何だかこの「M」は、どこのお店のことか、推理小説の謎を解く
みたいに、いろんな人が予測し始めているので、楽しい。

 午後6時。「M」に到着。
さくま、Mのご主人、土居ちゃん このご主人の顔が美味しそうでしょ?
    きょうも四番打者のような料理がずらりと並ぶ。  焼きフグに、焼き白子、トロの子どもに、とてつもなく大きい ホタテの刺身。松葉ガニ。ヘレ肉の網焼き。とどめは絶品のカモ鍋 である。さらにサバ寿司も。  カモ鍋に大量に入れた水菜のシャキシャキ感が何ともいえず美味 しい。水菜は関西に限るね。  すでに途中で、みんなへらへら笑いながら「お腹もういっぱいだ よ〜」と、苦しむ。「もう食えない〜」と言いながら、次から次へ と出てくる料理をけっきょく食べてしまう。  全部食べ終わったら、なんと午後9時30分。  3時間30分ぶっ通しで、食べ続けていたってことだ。  お酒はほとんど飲んでいない。  新幹線なら、東京から岡山に着くまで、ずっと食べ続けていたっ て計算になる。恐ろしい。体重増えるわけだ。  土居ちゃ〜ん! 顔がだんだん林真須美に似て来てるぞ〜。  四条通りで、浦さんと別れて、とりあえず「よいお年を〜」。  大晦日が近づいている。 「苦しい、苦しい」と言いながら、麩屋町通りを北上する。


12月19日(土)


 午前10時分。宮路一昭くんと待ち合わせて、錦市場へ。
 土居ちゃん(土居孝幸)は、東京のバスケの練習に出るために、
午前7時に起きて帰る。
 錦市場は、おせち料理の予約が真っ盛り。
 
 午前11時30分。宮路一昭くんと御所近くの「竹邑庵太郎敦盛
(ちくゆうあんたろうあつもり)」で、敦盛そばを食べる。
 すごい名前のお店でしょ? 名前とはうらはらで、ふつうの民家
を改造しただけの地味なお店。味はいい。
    皿そばで、たれにつけて食べる、出雲そばに近いが、生玉子に とろろ、そしてお椀からこぼれ落ちそうなくらいの量の、ネギ。 1日ずっと口が臭くなりそうなぐらいの量のネギだ。このネギが特 徴。麺がもう少し固ければ、私のおそばランキング・ベスト3ぐら いに入れてもいいんだけどなあ。嫁とグルメ・バカ娘にはあまり評 判がよろしくない。  食後、近くに美味しそうな珈琲屋さんが見つからなかったので、 そのまま京都駅へ。  午後1時。宮路一昭くんが東京に戻るので見送る。  さあて、私はどうしよう…と、いつものように、駅の大きな路線 図を眺める。バカ旅行がしたくなる。  なかなかこうしてみると、本当に行くところが少なくなっている。  でもまだ行っていないところはいくつでもあるはずだ。  ん? 特急はるか? 関西空港行きの特急かあ。私は飛行機に 絶対乗らないから関係ないなあ。でも何も飛行機に乗らなくても、 関西空港駅までは行ってもいいよなあ。  バカ旅行にふさわしいし…。行ってみるか。    午後1時16分。特急はるか31号が京都駅30番線から発車す る。最近の新しい特急はみんな乗り心地がいいし、座席と座席の間 も広くていいなあ。  新大阪を過ぎ、天王寺を過ぎ、日根野駅で、大きく車体が傾いて、 いよいよ鉄橋を渡る。漁船が鉄橋に近づいてくる。まわりに島ひと つないから海が広くて、気持ちいい。  空から見たら、電車の上の道路は、映画『トゥルー・ライズ』の どこまでも道路みたいに見えるのかな?  左手に空港が見えてくる。  午後2時31分。関西空港駅着。  空港駅特有のグッズとか、おもしろい品物はないかと探すが、 特別変わったものが見つからない。いかんなあ。観察力が落ちてる。 「関西空港まんじゅう」くらい売っていないのかなあ。  空港駅の隣りのホテルプラザから見える海がやっぱり気持ちいい。 飛行機は嫌いだけど、海は好きだから、海ばかり眺めてしまう。  それにしても、こんな巨大な島と空港を作ってしまうんだから、 人間の力っていうのは、恐ろしいねえ。  1時間ばかりうろうろして、行くところがなくなる。  実はここから和歌山に出て、和歌山から橋本へ行って、奈良に 出て、京都まで戻るという大トライアングルを思いついたのだが、 連絡のいいバスもないし、タクシーだと1万円以上だという。  そのままおなじ線路を戻ってくるのが大嫌いな私としては、困っ た。ふと見ると、南海電鉄の文字が。そういえば乗ってきたのは、 JRだった。JRで来て、南海電鉄で帰る。それはいいなあ。  しかも鉄人28号にそっくりな車体の特急ラピートが走っていた よなあ。よっしゃ、特急ラピートにしよう!  スーパーシートという、JRでいうグリーン車に乗る。  午後3時35分。ラピートβ(ベータ)発車。  窓ガラスが大きな楕円形で、ドアも楕円。車内の色が、べっこう アメ色なので、文房具で売ってる楕円形定規のなかにいるような 気分になる。  午後4時09分。なんば駅に到着。  なんば駅なら、551蓬莱の豚まんを買わないと。ここの豚まん はグルメ・バカ娘が滅法大好きな豚まんなのだ。横浜中華街の肉ま んよりも美味しいというので、送るしかない。  午後6時。なんば駅から、淀屋橋駅に出て、京阪電車で、京都 京阪四条駅まで戻る。そのまま先斗町(ぽんとちょう)まで歩いて、 恒例のオムライス専門店「ルフ」で、カレーオムライス。もう京都 に来ると、これを食べるのが儀式になってしまっている。  午後7時。ゼスト御池のクイック・マッサージ「ナチュラル・ ボディ」に行く。疲れた時はすぐマッサージ。どうもここの男性店 員はマッサージが下手だなあ。お店としては非常にいいんだけどなあ。 足だけのマッサージもしてくれるので、歩き疲れた時は便利だ。  午後8時。京都のマンションに戻り、『桃太郎電鉄』のテスト・ プレイの続きをやる。 


12月20日(日)


 朝からずっと京都のマンションで、ぼ〜〜〜〜〜っとしている。
京都滞在1週間目でねばったようだ。
 TVをつけながら、3回ぐらい寝てしまった。
 本当はきょう東京に帰る途中、名古屋方面に寄って帰るつもりだ
ったんだけど、身体が動かない。
 気がついたら、時計の針は午後12時を回っていた。これでは
途中下車の旅ができない。
 ぼ〜〜〜〜〜っとしたまま、荷物をまとめて、マンションを出る。
 
 午後1時。新京極の「サブウェイ」で食事。
 まだぼ〜〜〜〜〜っとしたまま。風邪を引いたわけではないのだ
が、何も思いつかない。
 食後。携帯電話を忘れたことに気づき、マンションに戻る。やっ
ぱりボケてるなあ。
 こういう時は、寄り道しないで、そのまま東京に帰ろう。
 
 午後2時。京都駅。伊勢丹デパートをうろつく。うろつきながら、
『桃太郎電鉄』の仕様書のフロッピーを持って帰るのを忘れたこと
に気がつく。続いて『桃太郎電鉄7』のメモリーカードを忘れて来
たことも思い出す。
 きょうは、まったくダメだねえ。
 どうせまた1週間後には、京都に戻って来るので、そのままでも
いいんだけどね。
 それにしても、ぼうっとし過ぎ。
 伊勢丹デパートの地下で、赤かぶらの千枚漬けと、湯葉プリンを
お土産に買う。どちらも新製品なので、私にとっては、調査捕鯨で
ある。美味しいと、『桃太郎電鉄』の物件に昇格する。

 午後3時10分。500系のぞみで東京へ。
 いつも通り新作『桃太郎電鉄』のアイデア出し。

 午後6時。帰宅。京都から帰ると、濃い味がほしくなるので、
ギョーザを作っておいてもらう。実はギョーザは大好きな食べ物の
ひとつ。
 食後。新作『桃太郎電鉄』の仕様書をまとめる作業。



12月21日(月)


 ひさしぶりに、東京の帰宅で起床。
 朝から郵便物を整理していたら、パーソナリティの小森まなみチ
ャンから、CDが送られて来ていた。
 添えられた手紙の文章に感動したので、貼付するね。
 その後もCDを聴きながら『当方見聞録』を読む。
    あいかわらず小森まなみチャンの声はかわいいねえ!  とても御年ン歳とは思えないねえというお約束ギャグ。若い子に とってはこの声が救いの声になっているんだろうなあ。声で人を 救えるなんて素晴らしいことだよね。  おお! 山本貴嗣くんから『本気のマンガ術』(美術出版社)が 届いていた。これを待っていたんだ! 『チョコバナナ』投稿者は 全員この本を買うように! 私が絵について言いたいことのすべて が載っている。これからは絵については、このページのここを読み なさいですむ。助かるなあ。
    午後12時。新宿のさくらやで買い物。  さくらやの前の「T」で食事。生ソーセージのピザを食べたんだ けど、ひさびさにまったくの味無し! 店員は愛想無し。 注文も満足に取れない。お店は広くてきれいなのになあ。  午後1時30分。帰宅。レイアウターの野沢ちゃんが来る。 『チョコバナナチップス増刊号』の打ち合わせをする。発送は、 来年1月中旬の予定。『桃太郎電鉄』関係のキャラ募集と、最新 チョコバナナ情報がメイン。  ただもう『チョコバナナ』休刊中なので、送る人は適当にこっち で決めるので、本誌にあまり載っていない人は、ここの『ほんのチ ョイ係』宛に「私にもください!」とアピールするように。  午後5時30分。半蔵門のスタジオで、FM35局ネットのラジ オ番組『カンケのミュージックプラネット』の録音。 URL: http://www.geocities.co.jp/Broadway/6476/
左から→さくま、カンケさん、AKIRAちゃん
    この番組は『桃太郎伝説』のラジオドラマを作るということで、 レコード会社さんのほうから、出演を依頼されたんだけど、なんと この番組の構成をやっているのが、今年この日記に何度も登場した 横浜ベイスターズ追っかけ仲間の清正まなつサンだったという偶然。  というわけで、出演したはいいが、ゲームそっちのけで横浜ベイ スターズの話ばっかりしてしまう。  これだけ気持ちよく横浜ベイスターズの話が出来た番組はない。 ってそれ、私の一方的な感想ではないか。  この放送は、22日の深夜午前3時すぎから、FM系列の各地方 局で流れるようなので、一度番組表で確かめてください。  午後6時。ムサシノ広告の伊東正義と、来年の企画をいろいろ 打ち合わせ。  午後6時30分。麹町の「青山(せいざん)」で、わんたんそば を食べる。看板に大きく「支那そば」と書いてある通り、クセの ないストレートな味で、美味しい。  午後7時。帰宅。  午後10時。鍼灸師の弓削くんが来る。高校の同級生林正明くん も今年会う機会がもうないというので、たずねてくる。  林正明くんは、税理士で、赤根豊くんを紹介してくれた。  現在林正明くんは、サザンオールスターズの関口くんの税理士を している。けっきょくお友達つながりしか無いのだ、この業界は。


12月22日(火)


 午前10時。家の前の診療所に行く。いよいよ診療所を変更する。
考えてみれば、家のほぼ前に診療所があるのに、わざわざ毎月1時
間30分もかけて、前の自宅のそばの診療所まで通っていたのだか
ら、お目出たき人であった。
 でも病院代えるのって、怖いよね。

 午後12時。明治記念館の中華料理屋「竹游林(ちくゆうりん)」
で中華ランチ。海老入り焼きそば、大根餅、ギョーザなど。
 天井も高いし、広くて、きれいな店内。
 味もかなりいいほう。この明治記念館には、絶品のカレーがあっ
たり、食い道楽としては、要注意スポット。ほかにもまだ和食があ
るようなので、近々そこにも初挑戦してみるつもり。
 食後、神宮外苑を散歩しながら帰る。

 午後2時。読売広告の岩崎が来る。いろいろ情報交換。
鉄人28号のフィギュアをもらう。白っぽい鉄人。レア商品だそう
だ。切手のミスプリント版をわざわざ製品化したようなもの。いろ
んな商売の仕方があるものだ。

 午後3時30分。タカラの高田さんが来る。
『さくま式人生ゲーム』の売れ行きはまずまずといったところらし
い。しかも1週目より2週目のほうが売れているそうで、よくわか
らない売れ方。私が作るゲームはいつもこうだ。
 とくにボードゲームというのは、いきなり爆発的に売れないので
もどかしい。『桃太郎電鉄7』なんて、今年に入ってから、プラス
10万枚以上売れているそうだ。それって、新作ソフトだとしても
大ヒットだぞ。さらにこの年末追加で5万枚出荷するそうだ。
『さくま式人生ゲーム』も、息長く売れて欲しい。

 午後6時。嫁、娘、タカラの高田さん、私の4人で、帝国ホテル
へ。きょうは小学館コミック部門のパーティ。
 なつかしい人たちと、年に一度のご挨拶。
 いきなり夏目房之介さんが来たので「これは『チョコバナナ』
投稿者の渡空燕丸さんが見たらとってもくやしがるぞ〜!」と思い
ついて、さっそくデジカメでパチリ。
 渡空燕丸さん! あとがきの件は、夏目房之介さんに言っておい
たから、目標に向かってがんばろうね!
 今年はとにかく人が多くて、どこに誰がいるのかさっぱりわから
ない。やっと見つけた高橋留美子さんに「横浜ベイスターズ、優勝
おめでとうございます」といきなり言われてしまう。
 まさか高橋留美子さんにまで横浜ベイスターズ好きを覚えられて
いると思わなかった。高橋留美子さんとは、もう20年来のお付き
合いだから、当時から私は人の迷惑顧みず言い続けていたんだろう
なあ。
夏目房之介さん さくま、三宅さん、高橋留美子さん
    午後8時。嫁は友だちの忘年会にでかけたので、娘とタカラの 高田さんと私の3人で、銀座で食事しようということになって、 資生堂パーラーへ行く。しかし年末の銀座の混み方はすさまじくて、 1時間待ちと言われ、新橋方面へ向かって歩きながらお店を探す。  こういう時、便利なのが、グルメ・バカ娘。まさに鼻が効くで、 看板のロゴタイプ(字体)で、美味しいお店をかぎわける特殊能力 を発揮する。  きょう選んだお店は、洋食レストラン「西櫻亭(せいおうてい)」。 洋食弁当を食べる。いかにも銀座の洋食屋さんといった感じのレト ロ味でなかなか美味しい。さすがにグルメ・バカ娘の嗅覚は鋭い。  と思ったら、このお店はなんと、いつも行く新宿伊勢丹の「香味 屋(かみや)」とおなじ系列のお店だそうだ。美味しいはずだ。 恐るべし、グルメ・バカ娘! 鼻の穴広げて「どうだ、えらいだろ う!」という顔をするでない!  食事しながら、ついタカラの高田さんと、『さくま式人生ゲーム』 の次回作を熱く語ってしまった。今回発売してみてわかったことや、 意外な反応とかが、今どんどんデータとして上がって来ているので、 猛烈に次回作への意気込みが燃える時期なのだ。 『桃太郎電鉄』もこうやって、お客さんからの要望や希望を加えて 行って、今日の不動の地位がある。その年数たるや、10年だ。 何でも完熟期を迎えるには、10年という年数が必要だ。  若い人はすぐ結果を求めたがるけど、ひとつの結果なんて、10年 立ってみないとわからないものなんだよ。その間しぶとくおなじこと をやり続けられるかどうかだ。粘り続けた者だけが勝利する。 『さくま式人生ゲーム』も、完熟期を迎えるまで、粘り強く成長させ て行きたいものだ。  


12月23日(水)


 朝からずっと新作『桃太郎電鉄』の仕様書を書く作業。

 昼すぎもずっと新作『桃太郎電鉄』の仕様書作り。
 物件名作りに入る。この作業が一番楽しい。

 午後4時。LDで『フェイス・オフ』を観る。
 2枚組の1枚目を見終わったところで、LDが取り出せなくなる。
前にも一度あったトラブルだ。1年以上このトラブルが発生しなく
て安心してたのに。
 トラブルは連鎖するのか、嫁のMACスパルタカスが故障。
 フロッピーが入らなくなる。
 この日記も仕様書も、私がフロッピーに入れて、嫁に渡すと、日
記がアップされたり、メールされたりするので大変なことになる。
 年末だし、ずっとこのまま日記をアップすることができなくなる。
 今週末から京都なので、京都のiMacから日記を更新することは
できるんだけど、数日間日記を書かないと心配して、電話がかかっ
てくる人もいるので、なんとかしないと。
 とりあえず、弟子の原口一也に連絡して、原口のホームページに、
うちの日記はスパルタカス故障につき、しばらくお休みさせていた
だきますと書いてもらうかということになる。
 電話ついでに、そいういえば年末ずっと原口一也と会うことがで
きなかったので、今から会うかということになって、新宿で待ち合
わせする。

 午後7時30分。新宿「牛や」で、ステーキ。今年最後だから、
豪勢に。インターネットの話から始まって、原口一也が会社から
独立してがんばっている話を聞き始めたところで、うちの娘が眠く
なる時間になってしまった。

 午後9時30分。自宅。娘を寝かせて、近所の「ブルドッグ」へ。
再び原口一也と、業界話。
 原口一也が、猛烈な向上心で日々動いていることがわかり、師匠
としての喜びに浸る。弟子というものは、とかく師匠の前で、実績
を誇りたいものだが、こうして向上心に燃えている様を見ることの
ほうがうれしいことをみんなも覚えていてほしい。
 一番見苦しいのは、大ヒットを飛ばすまで師匠に会わないという
弟子だ。ほとんどそんなのは難しいのだから、疎遠になって行く。
そうなってから会ったところで、疎遠になっていた時間が長すぎて、
おそらくちっともうれしくないと思う。
 大成した弟子というのは、いずれも定期的にちゃんと私に連絡し
てくる者だけである。
 そのことを『チョコバナナ』の投稿者たちも覚えておいてほしい。
 
 けっきょく午前1時まで話し込む。午前0時を過ぎてまで、話し
込むのは、ここ3年間で、ラジオ生出演以外無い。そのくらい盛り
上がる会話であった。
 はたしてこの日記はアップできるのだろうか?



12月24日(木)


 朝から嫁が大騒ぎ。昨日MACスパルタカスのフロッピーを入れる
ところが壊れたので、なんと私のパワーブック2400のHDに書い
た日記をインターネットで、MACスパルタカスにメールで送り、
それをさらにホームページに流し込むという、推理小説の犯人のトリ
ックを暴くようなまわりくどい作業をずっと続ける。
 まず私のパワーブック2400を、インターネットに繋げること
自体が大変な作業。といっても私にはどのぐいらい大変なのかよく
わかんないんだけどね。

 午後12時。やっと終了。なんとか日記をアップすることができた。
面倒くさいねえ、コンピュータは。
 午後12時30分。新宿に出て、銀行、郵便局をまわって、牛たんの
「ねぎし」で食事をして、紀伊国屋アドホックの文房具屋さんをまわっ
て、家に帰ったら、午後2時! 忙しい!

 午後2時。間髪入れず『チョコバナナ』投稿者の藤川かつらサンと、
鳩畑鶏(はとばたけ・けい)さんが来る。
 続いて『チョコバナナ』投稿者の吉野桜風さん、くらげ13号さんが
来る。
 くらげ13号さんは、初対面。こうして見ると、藤川かつらサンを
除いて、みんな『チョコバナナ』本誌では、通算100点に行かなかっ
た人ばかり。遅れて来た人ほどがんばるものだという定説を実践して
いるのがおもしろい。
 こういった人たちが今後の『チョコバナナ』を支えて行くんだろうな。
 一方、藤川かつらサンはいよいよ新人漫画賞の応募作品が完成!
 非常にいい出来。新人賞が楽しみ。
 来月月例の漫画賞に、藤川かつらサンと岩岡目々さんの作品を応募す
る予定。その次の月にふたり、その次の月もふたりというように、
『チョコバナナ』の投稿者たちを送り込んで行くのだ。

 午後7時。きょうはクリスマス・イヴなので、家族でどこか美味しい
ところへ食べに行こう…っていったって、いつも美味しいもの食べてる
よな。かえってこういう時は運が無いもので、うちのグルメ・バカ娘が
風邪でふ〜らふら。とてもご飯を食べに行く気力が無いという。
「喜寿司(きずし)に行くけど行かない?」
 頭を振っている。これはけっこう重病だ。
「焼き肉の第一神宮でも行かないのか?」
 頭を振っている。これは相当やばい。大体このお店で、つらくても
行ってしまうはずなのだ。グルメ・バカ娘は。
「まさか正月屋吉兆でも行けないのか?」
 グルメ・バカ娘は、にや〜と笑ったあと、頭をかすかに振っている。
これは一大事。本当に病気が重いようだ。
 というわけで、クリスマス・イヴだというのに、れんが屋のケータリン
グ・サービスで、コロッケ・カレーというわびしい食事になってしまった
のだ。
 明日こそ美味しい物を食べよう。



12月25日(金)


 午前中、新作『桃太郎電鉄』の仕様書書き。
「年内いつまで仕事ですか?」とよく聞かれるが、フリーに年末も新年も
無い。お正月はゆっくり仕事ができるだけだ。
 今年はそれでも余裕があるほう。『スーパー桃太郎電鉄3』の時は、
『紅白歌合戦』を見ながら、仕様書を書いていて、当時さすがに腹が立っ
た。社員はみんな休んでいただけにね。ひとりがいいね。
自分で時間割を決められるから。

 明日から京都へ行くけど、のんびり『桃太郎電鉄』の仕様書を書くつもり。
 3年前もこうして、明日から京都へ行くという時に、脳内出血に倒れて、
入院してしまった。脳内出血3周年。早いものだ。
 病気してからのほうが健康だし、いい人と会えるようになったし、横浜
ベイスターズも優勝した。変な人生だ、まったく。
 嫁が朝から、胃が痛いといってる。何だろう? ストレスは無いという
が、心配だ。 

 午後1時。娘が終業式。いつも娘が「通知表を見てくれない!」とうる
さいので、しぶしぶ見る。親になったら、通知表を見ない、気にしない
良い親になろうと思っていたのに、娘のほうが見てほしいという。世の中
思い通りに行かないものだ。
 近所のおけい寿司で、ランチ。今年横浜ベイスターズ戦を見に行く前に
寄ったり、お弁当を作ってもらうと勝つ、縁起のいいお店。
ちょっとご飯が冷たかったな。

 午後2時30分。突然小田急線の成城学園駅を散歩。
 私にとって、成城学園は、ケーキと並木道の街。
 きれいな並木道のはずが冬だから、わびしい。
 午後3時。成城学園駅近くのケーキ屋さん「アンジェリーナ」で、モン
ブランにケーキ。モンブランの下に、台座のように厚い生クリームが敷き
詰められていて、歯が浮くぐらい甘〜〜〜い!
 甘いにも程度があると思うんだけど。昔だったら、ごく当然の甘さだと
思ってたんだろうなあ。本当に味覚が変わってしまった。
 …といいながら残さず食べてしまった。嫁は半分近く残してるのに。
グルメ・バカ娘はもちろんペロリ。さらにバナナ・ジュース。立派な私の
後継者として成長に成長を重ねている。横に向かって。

 午後4時。帰宅。再び新作『桃太郎電鉄』の仕様書を書く。
 ほぼ物件駅のメニューが完成する。いよいよ念願の伊賀上野も、物件駅
として登場させるのだ。近江八幡駅も入るぞ。大垣駅も入るぞ。マキノ駅
の位置を変えるぞ。
 って、こんなことを喜ぶ気持ちがわかってもらえるのは、ナムコの岸本
さんと、すぎやまこういち先生ぐらいしかいないだろうなあ。
『桃太郎電鉄』は、寅さん映画だから、とにかくマンネリさせないといけ
ない。そのなかで、どれだけ小さな変化をつけるかが勝負なのだ。和菓子
屋さんが、気候によって、甘味を押さえたりするのに似ている。

 午後7時。きょうは家で食事。
 食後、嫁と娘は『踊る大捜査線』のビデオ鑑賞。
 私はLDで『はるか、ノスタルジィ』を観る。ちょっと青臭くて、壮年
の私には無理だなあ。つらかった。
 大林宣彦監督は好きなので、全部見ようと思ってる。『ハウス』が一番
好きだというと、邪道かな。好きなものは好きと言わないとね。

 午後9時30分。『チョコバナナ』投稿者の岩岡目々さんに電話。
今回の絵コンテにボツを出す。本人も読み直したら、ぐちゃぐちゃだった
ことに気がついたようで、納得のボツ。
 例によって、質問がたくさん出て、電話を切ったのは、午後11時すぎ。
質問が出るうちは成長し続けてる証拠。まだ岩岡目々さんは成長し続ける
のだろう。新人漫画賞への応募作品も決まる。
 『チョコバナナ』にとって、来年はおもしろい年になりそうだ。



12月26日(土)


 朝からえらいこっちゃ。昨日嫁が胃が痛いといって、倒れていた
から、まったく旅行の準備ができていなくて、宅急便を作ったりと
大騒ぎ。何しろ私は3年以上経つというのに、左が不自由なので、
梱包とか、物を両手で持つということがまったくダメなので、荷造
りのようなことは、ただ呆然と立っていることしかできない。

 午前11時をすぎてしまう。グルメ・バカ娘がのろのろまだ準備
している。家を出たのが、午前11時20分。これで午後12時発
の新幹線に間に合うのだろうか! ピ〜〜〜〜〜ンチ!
 ところがきょうはいつもより道路がすいていて、ついに新記録の
10分で東京駅に着いてしまった。夢のようだ。時間が余ってしま
った。おかげで大丸地下のおべんとう公園で、最近ごひいき、目黒
けやき弥のお弁当「栗林」を3個買って、新幹線に乗る。

 車中、志村けんサンの自伝『変なおじさん』を読む。
 やっぱり朝から晩まで、ギャグのことばかり考えていたと書いて
あった。その当たり前をいま若い人に言うと煙たがれる。
 志村けんサンのギャグに対する真摯な気持ちは見事だけど、ちょ
っと考え方が時代からズレ始めているような気がする。自分もそう
だからすごく気になった。
 そろそろ私も同世代を相手にした仕事がしたくなっているような
気がする。

 午後2時30分。京都のマンションに到着。
 このところずっと私が京都でひとり暮らしをしていたので、ほと
んど学生さんの家になってしまっていたので、掃除してもらう。
 午後4時。ゼスト御池地下街に行く。私が最近よく行くクイック
・マッサージ「ナチュラル・ボディ」に嫁だけ行く。
 私と娘は、地下街を散歩。
 けっきょく紀伊国屋書店に行ってしまう。今年読みかけの本が
まだたくさんあるのに、また買ってしまう。

 午後6時。近所の「うしのほね・あなざ」で食事。土居ちゃん
(土居孝幸)が大好きなお店。本来は飲むところだけど、食べ物が
美味しいので、わがグルメ家族は、ばくばく食べる。
 クリームシチューがこの店の自慢だけど、ちょっと変わったメニ
ューが多い。
 ナスの味噌タルタル、レンコンのお餅仕立て、栗のクリームコロ
ッケ、納豆のはさみ揚げ、ホタテのにんにくバター炒め、といった
具合だ。

 午後8時。近所で雑貨を買って「カフェパリス」でカフェオーレ
を飲んで帰る。
 あとはのんびり新作『桃太郎電鉄』の仕様書を書く。
『桃太郎電鉄』の赤いマス、青いマスは、ひとつ変更するだけで、
チューニングが変わってしまうので、どうしようかと悩む。



12月27日(日)


 京都のマンションで起床。
 昨日ご感想メールを整理していたら、ナムコのきっしい(岸本)
サンから、坂本龍馬について、メールしてくれた上に、京都東山に
ある坂本龍馬のお墓と資料館はいつ頃できたのか?ということを
これから調べようと思ってますとむすんであった。
 ん? 京都の坂本龍馬のお墓なら、私が何度も行ってる、霊山護
国神社ではないか? しかも今私は京都にいるではないか!
 きょうはまだ12月27日。28日あたりから京都の博物館とか
は閉まってしまう。間に合うかも?
 と思うと、いてもたってもいられず、午前8時30分。嫁と娘を
マンションに残して、ひとりイノダ・コーヒ本店で、コーヒーと
トーストで朝食。

 午後9時。高台寺の上にある霊山護国神社に向かう。
 さて、ここからのことは近々アップ予定の『ほんのチョイ係』の
ほうを見てください。でも相当の歴史マニアだけ読んでね。
 いつもみんなに何でもお勉強だから、首を突っ込めと言ってるけ
ど、今回だけは除外。
 きっしいサンの謎が、全部くっきり解けたので、注釈入れず、
濃い話をするつもりなので、本当に歴史好きな人だけどうぞ!

 何しろこれから、最古のさくまにあである戸田圭祐と待ち合わせ
しているのに、嫁に電話して「私はまだメモりたいことがあるので
先に行っていてくれ!」と伝言したくらい興奮してしまった。
 この興奮の仕方は、相当な歴史おたくでないとわからないからね。

 午前10時30分。河原町四条のからふね屋珈琲で、戸田圭祐、
嫁、娘と待ち合わせ。戸田圭祐も歴史好きだから、私は興奮して
しゃべる。
 そんな歴史の話をよそに、グルメ・バカ娘は「湯豆腐が食べたい!」
という。食うことしか頭にないのか! 無い!
 
 午前11時30分。南禅寺の聴松院で湯豆腐。
 ここはわが家族の一押し湯豆腐屋さん。お豆腐が美味しくて、
お寺の池のある境内の縁側で食べるという、ロケーションが最高の
ごちそう。

 食後、南禅寺に向かう道に、好きな器屋さんがあるので、覗く。
「あ花音(あかね)」で、お粥用の土鍋を買う。

 午後1時。寺町の電気街へ。タニヤマ無線の鈴木千華雄くんに
会いに行くが、お約束のお休み。先週来た時きょうはお休みという
のを聞いていたような気もする。
 まったくの偶然なのだが、この日記を読んでる人にはいつも鈴木
千華雄くんは会社を休んでばかりいる人のように思えてしまうかも
知れない。ひとえにこっちのタイミングが悪いだけである。
 
 嫁は電気街で、iMacのプリンターを買う。

 午後3時。京都のマンションに戻る。
 午後4時。夷川の家具街へ行く。骨董品を置いている喫茶店で
お茶を飲む。カラメルミルクが湯呑みで出て、美味しかった。
 ここでお茶を飲んでいる時に、グルメの師匠・すぎやまこういち
先生から電話が入る。京都にお着きになったようだ。先生は遅く
食事をなさったようなので、晩ご飯は午後8時くらいになってしま
うとのこと。うちは<餓鬼>がいるので、午後6時には食べないと
「腹減った」のリフレイン攻撃が始まるので、残念ながらご一緒に
食事が出来そうもありませんとお伝えする。

 同行の戸田圭祐は、もともと熱狂的な『ドラクエ』ファンだから、
携帯ですぎやまこういち先生と電話してるところを横で見ているだ
けで、顔がこわばっている。別に戸田圭祐は、先生の顔を生で見て
いるわけでもないのに、あいかわらず気の小さい男である。

 帰り道、シャッターが半分降りている家具屋さんをのぞき込むと、
本年の営業は終了ですという。新年は7日からだという。いかにも
京都時間だなあと思ってると、家具を見ますか?といってくれて、
ちゃっかり電気までつけてもらう。さらに高価なイノベーターの
小さなテーブルを半額にしてくれるという。これはお買い得だと、
購入。戸田圭祐は、京都大原の花売り娘のように、頭の上に、テー
ブルをむき出しのままかついで帰る。のんきな姿だ。

 御池通りを通って、マンション近くのローソンを見ると、どこか
で見た人の姿が…。あれ? すぎやまこういち先生と奥様だ! 
さっき電話をいただいたばかりなのに!
 そうっとローソンに入って、ご夫妻を驚かす。
 先生は、スーパーファミコンの書き換えシステムで、『スーパー
ファミコン・ウォーズ』を書き込んでいるところであった。
 予期せぬ偶然に、小心者の戸田圭祐は、テーブルをかついだまま
ローソンの前でへたり込んでいる。ちょっと刺激が強すぎたかな。

 戸田圭祐のようなごくありふれたサラリーマンをどうやって、
先生ご夫妻に紹介したらいいものか、その前に戸田圭祐は仰天して、
瞳孔開き気味だなと思っていると、奥様がすでに推測なさって、
横浜ベイスターズのチケットを都合してくれた人ですか?とおっし
ゃるではないか! すごいなあ、インターネットの威力と奥様の
記憶力は!
 確かにこの日記を読んでいる人には、戸田圭祐もけっこう知られ
た人間であった。

 午後5時30分。寺町の「スマート」で先生ご夫妻にコーヒーを
ごちそうになる。戸田圭祐もいっしょ。
 しかし戸田圭祐は、かわいそうに時折、会話に何とか参加しよう
と意を決するのだが、小さく「うううっ」と、うめくことしかでき
ない。そのわりに目はうれしそうに、三日月になって微笑んでいる。
実に文学的に不気味な顔である。

 午後6時30分。きょうは1日荷物持ちをすることで、あのグル
メ・バカ娘が日本一のお肉と言いきる「三嶋亭」のオイル焼きを、
戸田圭祐にごちそうすることになっていたので、おいとますることに。
お店を出たとたん、戸田圭祐は「うあわあわあわ…」とわけのわか
らない声を上げて、感動していた。
 確かに民間人が初対面で、おそれ多くもすぎやまこういち先生に
コーヒーをごちそうになってしまったのだから、幸せ者だよなあ。

 店を出たあと、娘と「三嶋亭」で待ち合わせすることになってい
たので、戸田圭祐に先に走って行ってつかまえてくれと頼む。
「はい!」と返事はよかったものの、いきなり三嶋亭とは反対の
方向へ走り出す。戸田圭祐は、京都生まれの京都育ちである。三嶋
亭の方向を間違えるはずもない。相当興奮しているようだ。

 戸田圭祐が血相変えて戻ってくる。まだグルメ・バカ娘が来てい
ないという。あの<餓鬼>が「三嶋亭」に遅れてくるはずが無い!
嫁が「三嶋亭」の受付の人に聞く。
 娘はすでに来て、なかで待っているというではないか!
 高級すき焼き料理店で、先に店のなかに入って、お座敷で待って
いる小学生って、かわいくないよなあ!
 あっ、本当に来てるよ。まるで自分の家のような顔をしている。
この娘の将来はどうなってしまうのだろうか?
 きょうのお肉は、食い物の神様であるグルメ・バカ娘の登場で、
いつもの肉よりも美味しそう。お店の人もきょうのお肉のつやが
いいという。すごい霜降り肉。
 お肉も魚のように、その日その日で味が違うのだ。
 いつものように、すき焼きではなく、オイル焼きのほうを食べる。
 箸でお肉が切れてしまうのだよ〜。
 
 午後8時。満腹、満腹。
 京都のマンションに戻って、本当にひさしぶりに自作『怪物パラ
☆ダイス』を娘と戸田圭祐が対決。
 ゲームを作る過程で、腹を立てまくるようなことが多かったゲー
ムだけにずっと見ることも封印して来た。ところがその後、買って
くれた人がみなさん、「あれ、おもしろいですよ、パート2はいつ
出るんですか?」と言ってくれる。
 あの堀井雄二大先生も「あれ、もったいないよ〜」と何度も言っ
てくれた。鳥山明くんもおもしろいと言ってくれた。
 その話を戸田圭祐にすると、あまりにも私が激怒していたので、
実は娘は私に隠れて、何度かこのゲームをやっていたことを白状す
るではないか。ふ〜ん。
 1年ぶりぐらいで見た『怪物パラ☆ダイス』は、確かにテンポも
良くて、おもしろいのだ。
 堀井雄二大先生と鳥山明くんが異口同音に指摘した、最後の部分
がかったるいだけだったのである。
 これはパート2を作って見ようかなという気になって来た。
 
 午後10時。戸田圭祐が帰宅。



12月28日(月)


 京都の町は年末の準備。少しずつ新年までお休みの張り紙が増え
て来た。
 午前10時。部屋でごろごろ寝ながら、『踊る大捜査線』のTV
ぴあ責任編集本を読んでいると、すぎやまこういち先生ご夫妻から、
琵琶湖小旅行のお誘い。待ってましたとばかりに、ごいっしょさせ
ていただくことに。グルメ・バカ娘は所用があって、すでに家を出
ていたので置き去りにする。

 午前11時。すぎやまこういち先生がいつも運転をお願いしてい
る京都名鉄タクシーの宮本さんが京都のマンションに到着。これか
ら観光案内も兼ねて、琵琶湖を回ってもらう豪勢な小旅行。

 午後12時30分。まず最初は琵琶湖の西の坂本へ。明智光秀で
おなじみの坂本の町である。観光客にとっては、石積みのある門前
町だそうだ。
 創業250年を越える老舗そば屋「鶴喜(つるき)そば」で、
ざるそばの大盛り。おつゆが甘くて、麺の太さが適度にバラついて
いるのがよかった。そば湯が出なかったのは残念。
 食後、すぎやまこういち先生は、町を歩きながら、写真撮影。
しっくいの剥げた土蔵などを写している。

 午後1時30分。満月寺の浮御堂(うきみどう)に着く。ここに
来るのは初めて。JR堅田駅が最寄り駅だそうだ。どうも私は鉄道
が基準なので、どこの駅が近いかわからないと場所を思い浮かべる
ことができない。
 このお堂はおもしろくて、琵琶湖にちょこんと突き出ていて、橋
を渡ると、スリッパをはいて、そのお堂の縁側部分を回ることがで
きる。まるで船に乗っているような気分になる。名前のように浮い
てはいないけど。
 12月だというのに、暖かくて気持ちがいい。
 陽も射して来て、水面がキラキラしてくる。

 午後2時20分。琵琶湖大橋を渡って、一路近江八幡をめざす。
 近江八幡は去年も土居ちゃん(土居孝幸)といっしょに来ている。
次回作の『桃太郎電鉄』では、物件駅に昇格させようと思っていた
だけに、再取材ができてうれしい。
 近江商人の道とか、川べりをまわって、水郷地帯へ。
 すすきの穂が、川一面、人の頭を隠すくらいの高さに繁茂してい
る。朝日グラフか何かの風景写真に出てきそうな、見事な景色だ。
酪農のちょっと臭い匂いも、旅情に笑いを演出してくれる。
 しばらく水郷めぐりの川をながめる。
 ときおりサギみたいな鳥が、はばたく。

 まるでTVの『遠くへ行きたい』みたいな気分に浸っていると、
嫁の携帯に、グルメ・バカ娘から電話が入る。しかも何回も。どう
やら置いて行かれたことで、親に見捨てられたと思ったようだ。
確かに常々「ちゃんとしていないとご飯の時置いて行くからね!」
と脅していたからね。ご飯のことになると、すぐ脅しが効いてしま
うな、このグルメ・バカ娘は。
 しかもきょうはすぎやまこういち先生ご夫妻もいっしょだという
のに、自分が置いて行かれたことが相当ショックだったようだ。

 午後4時。京都に向かう途中でお茶を飲む。またグルメ・バカ娘
から電話。どうやら夜も自分を置いて、すぎやま先生ご夫妻とご飯
を食べようとしているなと、最悪の状態を想像しているようだ。
 実は近江八幡は、牛肉の町としても有名だから、ほとんどそうす
るつもりだったのだ。あまりいいお店が見つからなかったから、
帰ることに決めたのだが…。
 どうやらグルメ・バカ娘は、電話の向こうでベソをかいているよ
うだ。今から帰ると言っても、信用しない。
 とうとうすぎやまこういち先生が電話に出てくれて「きょうは
いっしょにご飯を食べようね!」とおっしゃると「はい!」と大き
な声で返事をしたそうだ。面倒なガキだ。ご飯のことになると、親
のいうことを信用しない。
 やっぱり本気で自分は置いて行かれると思っていたようだ。
 
 午後5時30分。京都のマンションに戻る。
 しばらくマンションで身体を休める。

 午後7時。百万遍(ひゃくまんべん)にある「梁山泊(りょうざ
んぱく)」で食事。
 京都の料理屋さんにしては珍しく、店内が広くて、天井が高い。
 ご主人が太っていて、体格もよくて、いかにもダイナミックな
料理を作りそうだ。
 この予想はすぐさま当たった。お相撲さんが優勝した時に飲む大
きな杯ぐらいの大きさのお皿に、白菜、京人参、ゴボウ、セリ、
豆腐、肉だんご、鴨肉がびっしり並ぶ。ものすごい量だ。
 これを鍋で煮て、とろろをポン酢のようにつけて食べる。すだち
をたらすと、味が引き締まって、さらにダイナミックな料理に繊細
さが加わる。よくこんな料理を考えつくなあと感心する。

 すぎやま先生が、魚のぐじとか、さわらの西京漬けを食べて、
ご主人に「美味しいねえ!」というと、ご主人は「みんな漁師さん
のおかげです!」と言いきる。格好いいなあ。仕事のできる人の
セリフは、どんな小説のセリフよりも強烈だ。
 
 自分も気の利いたセリフのひとつも言わなければと思ったのもつ
かのま、不覚にも食べ過ぎて、お腹がいっぱいで、苦しくなる。
 よせばいいのに、先生が食べてる、さわらの西京漬けが美味しそ
うで、つい頼んでしまう。また苦しくなる。
 隣りでグルメ・バカ娘が、すでに食べ過ぎて、苦しんでいる。
 
 もうやめようと思うのだけれど、筆文字で書かれたお品書きの
「おじゃこご飯」の文字が美味しそうだ。
 どうして料理屋さんの「書」というものは、美味しそうに感じる
んだろうねえ。
 というわけで、おじゃこご飯まで食べてしまう。これは蛇足も
蛇足、画竜点睛、大失敗だ。苦しいなどというものではない。かが
むことができず、師匠の前で、えらそうな姿勢。増長しているので
はない。お腹が苦しくて、そっくりかえってしまうのだ。
 ついに、グルメ・バカ娘が、苦しさのあまり、お腹をこわす。
 すぎやまこういち先生ご夫妻も、苦しそうだ。
 本当に食べ過ぎた〜。

 午後9時。苦しいと言いながら、全員デザートを食べて、いざ
帰ろうとするが、立つのも苦しい。
 わざわざ店のご主人が帰りを見送ってくれたのだが、後ろを振り
返るのも苦しい。
 苦しいやら、うれしいやら。

 午後9時30分。なんとか京都のマンションにたどりつく。うち
は2Fへ、すぎやまこういち先生ご夫妻は6Fへと、最後までご挨
拶は「苦しい!」。ドアを開けてすぐベッドにぶっ倒れる。
 一体いつまで苦しいんだろう。きょうは体重計に乗りたくない。



12月29日(火)


 午前10時30分。寺町の電気街タニヤマ無線Cゾーンの鈴木千
華雄くんのところに行く。やっといた。鈴木千華雄くんは『セサミ
ストリート』のバートに似ている。
 京都に百科事典専用機がほしいので、メビウスを購入する。百科
事典もインストールしてもらう。メカ音痴にはありがたい。
 文筆業に百科事典は必需品で、4年前、百科事典を4セット持っ
ていた。巻数にすると100冊を越える。百科事典の置き場のため
に、事務所をさらにもう1件借りてたぐらいだから、ノート・タイ
プに百科事典が入ってしまうのは、夢のようだ。
 インストールに時間がかかるので、あとで取りに来ることに。

 午前11時30分。錦市場に行く。顔なじみの中央鶏卵のおば
ちゃんのところで、玉子を買う。病気する前は必ずここに寄って、
玉子を10個ぐらい買って、土居ちゃん(土居孝幸)と、玉子かけ
ご飯をしたものだ。
 玉子10個が2日間ぐらいで無くなって、また買いに来る。そん
なことばかりしていた。病気するの当たり前だよな。
 でもね。ここの玉子をお醤油でといて、ご飯にかけ、千枚漬けと
生湯葉で食べる食事は、よくぞ日本人に生まれけりだよ。

 錦市場でグルメ・バカ娘と合流。そのまま百万遍のおそば屋さん
「実徳(みのり)」で食事。最古のさくまにあ・戸田圭祐が教えて
くれた珍しく美味しいお店。戸田圭祐には今までとんでもない店ば
かり紹介されていただけに、このお店の美味しさは格別である。
 本格的な戸隠そばで、今水切りしたばかりですといった新鮮さが
いい。腰があって、喉ごしもいい。
 新年2日から営業しているようなので、また行ってしまいそうだ。
 正月3ケ日開いてるお店を探すのは至難の業だからね。
 とくに京都は悠長。1月10日からという老舗が多い。

 午後2時30分。京都のマンションに戻る。
『ドラクエモンスターズ』をやっと始める。やっぱり『ドラクエ』
はほっとするなあ。新しい旅の扉を開ける時、安心してわくわく
できるもんなあ。ほかのゲームだと、まったく歯が立たなくなると
か、セーブできるポイントがわからなくなるとか、何時間もしない
とセーブできないといった不都合が絶対無い。
 不都合のあるゲームが今どれだけ野放しにされていることか。

 いいゲームをやると無性に仕事がしたくなる。
 新作『桃太郎電鉄』の仕様書を作る作業開始。
 今回古いカードをずいぶん減らしたはずなのに、いつのまにか
新作のカードが増えて行って、総枚数100枚を越えてしまいそうだ。

 午後7時。私が今年一番京都でひいきにしたお店「忘吾(ぼあ)」
にすぎやまこういち先生ご夫妻と行くことに。
 いつも先生に美味しいお店を教えてもらってばかりいるので、
何とかこちらからも美味しいお店をお伝えしたいのだが、何たって
グルメの師匠。
 ここはというお店はほとんど先に行かれていて、採点がすでに
終了しているか、そこのお店のご主人と懇意になっていたりするの
で、私はいつも観音様の掌から抜け出せない、孫悟空だ。
 だから「忘吾(ぼあ)」にお連れするのは、けっこう緊張する。
 しかも今年開店したばかりのお店なので、ちょっと心配。

 えぞ鹿肉のステーキ、海老芋まんじゅう、さわらの西京漬け、
諸子の南蛮酢、といったものが出て、ご夫妻から「おいしい!」と
いう言葉が出て、ほっとした。
 それにしてもあいかわらずこういう美味しい料理を食べながら、
天ぷらはどこが美味しい、あそこの天丼は美味しいけど、みそ汁が
最低といった話を延々続けるのだから、ほかの人が聞いたら、この
人たちは何者だと思うだろうなあ。
 最後の自慢のご飯に突入して、これは有終の美を飾れると思った
ら、あれ? きょうのご飯は、あんまり美味しくない! 
いつものふわっと、ふっくら、あたたかいご飯はどうしたんだ〜!
 もし料理がイマイチでも、最後のご飯で少しは挽回してくれるだ
ろうと思っていたのに! 横浜ベイスターズが大量点で大きくリー
ドした最終回に、佐々木様が登場して、打ち込まれたけど、なんと
か試合には勝てた、そんな気分だ。

 食後は、腹ごなしに寺町から新京極へ散歩。毎日豪勢な物を食べ
続けなので、少しは運動しないと。
 と言いながら、すでに明日は一番豪勢な食べ物を食べに行くこと
が決まっているバカ家族であった。そのお店とは、もちろん「M」
である。明日はわが家の食い道楽紅白歌合戦だ。



12月30日(水)


 調子に乗って、京都に来てから美味しい物ばかり食べているので、
お金が無くなって、銀行へ散歩がてらでかける。
 いまどきクレジットカードを持っていない大人は、私ぐらいのも
のだろう。カードなんか持っていたら、この食い道楽家族は、際限
なく食べ、旅に出たまま帰ってこないだろう。持ち金主義である。
 
 午後12時。四条烏丸から、錦市場、柳馬場を北上して、イノダ
・コーヒ本店で、ハンバーグ・サンド。途中松飾りとか買って、
少しはお正月気分。

 午後1時。京都のマンションに戻って、『ドラクエ・モンスター
ズ』の続きをやる。
 少しやったら、やめようと思ったのに、格闘場のEクラスで敗退
してしまったのが、しゃくにさわって、ムキになる。
 キャラを育てて、よしこれで勝負だ!と意気込んだら、「配合」
とかいうところに行ってしまって、キャラがレベル1になってしま
った。『ドラクエ・モンスターズ』をやってない人には、まったく
何のことだかわからないと思うけど、5時間半もやり続けてしまっ
た。首筋パンパン、目がしょぼしょぼ。仕事してないよ〜。
  
 午後5時30分。ゲームを何とかやめることができたのは、きょ
うがわが家の食い道楽大晦日だから。
 1年間の大トリを飾って、「M」に行くのだ。
 何しろグルメ・バカ娘が、めでたく今年もランキング第1位に
「M」をご指名だ。これで3年連続1位。偉大なる記録だ。

 すでに「M」に向かう瞬間から、グルメ・バカ娘はヘラヘラ笑い
出し、『踊る大捜査線』のテーマ曲を口ずさんでいる。京都に来て
から『LOVE SOMEBODY』がピアノで弾けるようになっ
たとも自慢する。とにかく美味しい物が食べられる店に向かうとき
は、急に饒舌になる。
 だから「M」に向かう道すがらが、一番うるさいのだ、このガキ
は。前にもこの調子で、スキップしながら歩いて、「M」に到着と
同時に、大量の鼻血を流し、トイレに籠城した。
 しかし小学生が、ここまで食い道楽に徹することができるもの
なのだろうか? 恐ろしいやつだ。たまには食うこと以外のことで、
娘の自慢をしてみたいものだ。先日このことを娘に聞いてみたら、
間髪入れず「ない!」と大きな声が返って来た。

 午後6時すぎ。「M」に到着。
 きょうは予め、料理の分量を減らしてくださいと言っておいた。
 それでも、いきなり、ふぐ刺しが出てしまう。
 ヘレ肉の網焼き、子どもマグロ(シビ)のトロ刺身、白子の醤油
焼きといつもの重量打線爆発だ!
 それにしても、13人のお客さんの料理をご主人がひとりで料理
する様は圧巻だ。ずっと手が休まることなく動き、一度に5品ぐら
いを平行して作る。ちょっとでもお客が食べ終わってしまって、間
があくと、からすみを出したり、数の子を出したりして、飽きさせ
ない。これはゲーム作りとまったくおなじだ。
 小技と大技のほどよいバランス。これが今後のゲーム作りの課題
だな。『ドラクエ・モンスターズ』も、手間がかかってるもんなあ。
 私もたまには、ゲームが完成してから、チューニングをして、
ガラッと内容が変わるようなゲーム作りをしてみたいなあ。
 今回の『桃太郎伝説』なんか、最高傑作になる可能性があったも
んなあ、あと3ヶ月チューニング続けられたら。出来には満足して
るけど、もっともっとすごい作品になることもできただけにもった
いなかった。
 やっぱりゲームは『桃太郎電鉄』のように、年々改良に改良を
重ねて行くのが一番いいなあ。『さくま式人生ゲーム』と『怪物
パラ☆ダイス』が、そうなってくれるといいなあ。

 食事の最後は、先々週宮路一昭くんが食べたくて仕方なかった、
カレーライス!
 ここのカレーは絶品などというものではない。
 カニ、マツタケ、ハモといった旬の食材のあまりを全部ぶち込ん
で作るから、どの店のカレーよりも美味しい。
 私にとって、ここのカレーは未公認世界記録である。
 おそらくここのカレーだけで、カレー屋さんを始めたら、値段を
5000円か8000円にしないと、採算が合わないだろう。

 帰りも、恒例グルメ・バカ娘はスキップしながら、寺町通りを帰る。
そんなにうれしいか!

 午後9時。帰宅。もうすぐ東京から鍼灸師の弓削くんが到着する
予定。弓削くんは昨日連絡してこなかったばかりに「M」に行く
ことができなくなってしまった。
 昼間電話したら、まだ東京で悔しがること、悔しがること。「M」
は完全予約制だから、急に人数を増やすなんてことができないのだ。

 おっと弓削くんが到着した。



12月31日(木)


 今年も京都で、大晦日。病気で入院した年を除くと、5〜6年連
続で京都の年越しとなる。

 朝から『ドラクエ・モンスターズ』。
 順調に進む。飽きそうになりかけると、シナリオに大きな変化を
もたらす技は、やっぱり職人芸だねえ。
 
 午後12時。昨日鍼灸師の弓削くんにごちそうができなかったの
と、12月に入ってから、私が無性にすき焼きを食べたかったのと
が重なって、三嶋亭のすき焼きミニコースを食べに行く。
 例によって、グルメ・バカ娘は、真っ昼間から、三嶋亭に行ける
と思ってなかったらしく、興奮しまくり。
 食事中も、にまにま笑いっぱなし。気持ち悪い。
「そんなに三嶋亭が好きなのか?」と呆れ顔で聞くと、「うん!」
と元気な答え。どうしてここまで明確なんだろう。
 食後も、恒例のスキップ。興奮が醒めないようなので、しばらく
市内を散歩する。鍼灸師の弓削くんは、鞍馬寺へ行くそうだ。

 午後2時。近所の喫茶店「レッド・ラバー・ボール」でお茶を飲
む。先週このお店は「キリアッチ」とかいう違う名前のお店だった
気がするのだが…。外見がまったく変わっていない。
「レッド・ラバー・ボール」という名前は1970年代の大好きな
ポップス音楽とおなじなので、気に入る。
 ここのシュークリームが、アイスクリームまで付いてて、大きい。
さらに甘〜〜〜〜〜い。半分以上うれしそうに食べたあたりで、嫁
からストップがかかる。甘い物を食べすぎると、また入院の人生が
待っているので、シュガーカットしないといけない。
 
 午後3時。京都のマンションに戻る。
 再び『ドラクエ・モンスターズ』の続き。これだけ続けてやれる
ゲームは本当にひさしぶり。

 午後6時。近所のお店「H」で初めて食事。外した。ただでさえ
お昼に三嶋亭ですき焼きなんか食べているから、評価も厳しいし、
お腹だっていっぱいだ。
 やっぱり地味に年越しそばにすればよかったか。

 午後8時。とりあえず『紅白歌合戦』をテレビ画面に映す。
 ぎこちない人選に、お金と事務所の匂いがプンプンして、適当に
チャンネルを変えながら見る。ビートたけしの『ノストラダムスの
大予言』のほうが、茶番が歌舞伎のように整っていて、おもしろか
ったりする。
 どうせ視聴率が取れない開き直りが画面にあふれていて楽しい。
 『紅白歌合戦』に戻ると、どうもバラエティの要素が強くて、
ほとんど『新春かくし芸大会』のようだ。
 一応、美川憲一、小林幸子も見たけど、人間の大きさは変えられ
ないから、年々驚きが少なくなって行く。現在のゲーム業界のCG
合戦のような気がする。そうだよ。ゲームじゃなくて、『紅白歌合
戦』でCGをふんだんにつかって、『ジェラシック・パーク』みた
いな映像を大画面で見せれば目立つのにね。
 武田鉄矢さんの人間ドラマのほうがやっぱり目立ってしまう。

 午前0時。そんなこんなで、あけましておめでとう!
 京都八坂神社のおけら詣りにでかける。
 ニュースなどによく登場する、火種のついた縄をくるくる回す
あのおけら詣りだ。
 京都のマンションから歩いて行く。
 四条通りも車進入禁止になって、行事慣れした京都の段取りの
よさが際立つ。とんとん拍子で、八坂神社のすぐ側まで来たのは
いいけど、目と鼻の先からずっと人混みが動かなくなった。
 雨がポツポツ降って来た。
 警察の人たちがものすごい人数動員されていて、横断歩道を渡っ
た人たちを、羊飼いのように、八坂神社に追い込んでいく。
 さらに雨が激しくなって来た。
 午前1時。やっと八坂神社の前まで到達。
 だんだん後ろからの行列の押しが強くなってくる。
 ここから苦しみ抜いて、火縄をもらって帰って来ると、いいオチ
になるんだけど、まだ私の不自由な手足を考えて、断念することに
した。今年の初挫折。今年もいっぱい失敗をするのだ。「失敗の
すすめ」だ。
 オチとしては、何も正月早々から、新しい火種(もめ事)をわざ
わざもらいに行くことあるまい、と『笑点』の楽太郎さんみたいな
ことを言って、今年もスタートだ!
A>



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