10月1日(木)


 きょうは都民の日で、娘は学校が休み。
 ということを娘は昨日まで知らなかった。いつもながら豪快な生
き方を実践してるガキだ。
 午前中。雨がけっこう激しい。
 連日の横浜ベイスターズ球場観戦で、疲労はピークに達している。

 午前11時30分。近所のおけい寿司で、お寿司ランチ。ここの
お寿司を食べると、横浜ベイスターズが勝つという縁起担ぎ。
 というわけで、きょうはわざわざ名古屋まで行き、横浜ベイスタ
ーズ対中日ドラゴンズの首位決戦を、ナゴヤドームで見るのだ。
 何たって、きょう10月1日から、10月12日までのベイスタ
ーズの全試合のチケットを手に入れたのだ。地の果てまで行くぜ!
 
 午後1時。実姉が来る。姉に娘の面倒を見てもらうことになって
いる。きょうで優勝という試合の場合は、娘も学校を休ませて連れ
て行こうと思っていたのだが、まだまだ優勝の日までは遠い。
 私と嫁は、そのまま東京駅に向かう。
 傘をさして、野球場に向かうのは今だにどうも妙な気分だ。
 時代はドームなんだろうなあ。
 12球団中4球団がドームになった。

 午後1時56分ののぞみで、名古屋へ向かう。
 午後3時30分。名古屋着。
 そのまま名古屋駅で、きょうの京都行き最終の新幹線のぞみの
キップを買っておく。なんとナゴヤドーム終了後、新幹線で京都の
マンションに帰ろうとしているのだ。
 名古屋のホテルに泊まるより、疲れずにすむという考えからだ。
 ベイスターズの選手並に、健康管理してるのだ。

 午後4時。名古屋郊外の鳥山明邸へ。
 ひさしぶりの訪問。
 せっかくだからと鳥山くんの写真を撮ろうとしたのだが、嫁が
デジカメを忘れて来た。どうも私のベイスターズ・ボケが嫁に伝染
してきたようだ。さらに京都のマンションの鍵まで忘れて来たこと
に気づく。バカな亭主のバカげた行動に付き合うのは大変なことだ。
申し訳ない。嫁よ、あと少しだ。ガマンしてくれ。
 というわけで、残念ながら鳥山明の近影がないので、頭皮がさら
に後退していたとか、勝手なことを書いてしまう。いやいや、ウソ。
鳥山くんというと、いつもハゲ・ネタなのだが、ぴったり止まって
維持していた。何もしていないという。相変わらず顔のつやもよく
て元気。話はどうしても健康の話題になる。
 栗むしようかんと『さくま式人生ゲーム』のテストロムをプレゼ
ントする。鳥山くんはいつも私のゲームを気に入ってくれて、ずっ
といつまでもプレイしてくれる。
『さくま式人生ゲーム』のタイトルに爆笑する。やっぱり私が付け
たタイトルだと思ってる。時間がなくて、いっしょにできないのが
残念。
 午後5時すぎまで、世間話をして、ナゴヤドームに向かう。

 午後6時。ナゴヤドームへ。大きい! 東京ドームよりはるかに
大きいんじゃないかなあ。
 目的のゲートまでの距離の長いこと。早く見たい気持ちで歩くか
ら、もう足のふくらはぎがパンパンだ。
 4階の席までエスカレーターを2回乗り継いで、やっと到着。そ
こから席までがまた遠い。神宮球場の倍の広さぐらいあるんじゃな
いのかなあ? まさに大リーグの球場にいるようだ。
 しかも明るい。古代人がここを見たら映画『未知との遭遇』の
宇宙船のなかに潜入した気になるぞ。そのくらい照明がまばゆい。
 私はというと、あまりの豪華さに、お偉いさんの豪邸にお邪魔し
たようで、どうもそわそわする。落ち着かない。
 三塁側の上のスタンドなのだが、マウンドまでが遠くて、なんだ
か山のてっぺんから眺めているような気分だ。高所恐怖症の私には
ちょっと足がす〜す〜する。
 このチケットはテンユウの杉沢さんの計らいで手に入れることが
できた。お礼をここで言っておかなければ。
 それにしてもプライムツインシートという席の名前を聞くだけで
豪華さが伝わるでしょ? お弁当&ドリンク付きなのだ。しかも
このお弁当がすこぶる美味しい。中華、和食、洋食が全部入ってる。
そのひとつひとつの味がしっかりしている。
 球場のお弁当というだけで、まずい物だと思いこんでいただけに、
この味の確かさには、うろたえるぐらいだ。
 
 試合のほうはすでに始まっていて、3回まで0対0。
 わざわざ東京から来たのだから、勝ってほしいのは当然なのだが、
こればかりはどうなるものでもない。
 重苦しい雰囲気に、私と嫁のため息が増える。
 4回裏。ついに斉藤隆投手が打たれ、1点先制される。
 う〜。せっかくここまで来たのに〜。
 中日の野口投手は今年ベイスターズに5勝してる好投手だからなあ
と、早くも愚痴が入る。
 私もどうも豪華な球場にぎこちなく、応援の思念が飛ばないような
気がする。
 5回が終了して、1対0で負けたまま。
 これはもうやばいかなと思ったとたん、6回表、いきなりマシンガ
ン打線が炸裂。あれよあれよというまに、5点!
 きょえ〜〜〜〜〜! こ、こ、こんなうれしい光景は夢じゃないだ
ろな? しょえ〜〜〜〜〜い! 本当にベイスターズは特攻隊みたい
な戦い方をする。無茶してどんどん本塁を狙う。
 興奮してると、嫁が「血圧の薬を飲みなさい」という。
 ついに1日1錠の薬を、きょうから試合のある日に限り、1日2錠
飲むことにしたのだ。もう忘れている。
 3年前、脳内出血で倒れて、危篤状態までなったのに生還したのは、
38年ぶりの優勝を見るためだと信じて疑わない私は、あわててタナ
トリルを1錠飲む。
 それでも声を張り上げて、喜ぶ。
 わざわざ名古屋まで見に来てのこの猛攻は格別だ。

 9回裏。すでに6対2とリードしているので、佐々木様の出番はな
いかもしれないと思ったら、やっぱり出ました! 付け入る隙を与え
ない采配だ。
 後ろの席の中日ファンが前の回から、負けを確信して「どうせなら、
佐々木を出せ〜!」と叫んでいた。
 本当に出て来たから、大騒ぎ。
「お〜、本物の佐々木、見ちゃったよ〜!」
 佐々木様がマウンドへ向かうと、三塁側内野席のお客さんがいっせ
いに、一番前のネットに走って行く。少しでも間近で、佐々木様が見
たいのだろう。
 ここまでされるなんてもう感無量だ。
 どうせ優勝なんてできないチームなんだから、せめてイチロー並みに、
全国区の選手が誕生してくれと思い続けていた。昨年の佐々木様の活躍
でついに、マルハ以外のCMに出る選手が誕生したと喜んでいたのだが、
まさか今年こんなことになるとは思わなかった。
 
 きょうの佐々木様は、私の感慨が伝わったかのような快投であった。
1人目・3球三振。2人目3球三振。3人目・4球三振。
 圧倒的な強さで勝利をものにした。
 うれしいねえ。これでマジック5だ!
 これは本当にもうベイスターズ宇宙船号は、大気圏に突入したと言っ
ていいんじゃないかな? 確信してもいいよね? 誰に聞いてるんだ?
 午後9時すぎ。ナゴヤドームを後にして、名古屋駅へ。
 予想より早く終了したので、新幹線のキップを変更。
 午後10時07分発のひかりで、京都へ。
 車中、じっくり勝利を噛みしめる。にんまり。
 午後10時56分。京都駅着。
 京都のマンションで、プロ野球ニュースを見る。
 5点の猛攻、興奮して誰がどこに打ったのか記憶が飛んでしまってい
るので、確認する。
 ぐははははは。きょうの笑いは、中村玉緒だ。



10月2日(金)


 京都にいる。さすがに眠いぞ。
 午前中は、寝る。何度も寝る。
 午前11時30分。最近すっかりお昼の定番になってしまった、
北野天満宮の南、大将軍商店街の「おひるや豆魂」に行く。
 とにかくここのお昼のランチは美味しい。
 1800円とちょっと値段が高いのだけれど、これほど美味しけれ
ば、絶対損した気にはならないはずだ。
 きょうもおぼろ豆腐が美味しく、ここの店の名物デザートは、きょ
うはリンゴのムースであった。これがまた上品な味。リンゴというと
甘さたっぷりで、味もこってりしたものが多いのに、まあ、さっぱり
としていて、リンゴをがぶっと噛んだ時のぷうんと来る、あの匂い
そのもののような味だ。いつもの絶品であるコーヒームースも食べた
かったが、きょうのリンゴのムースもすごい。
 さっそく自宅にクール宅急便したくらいだ。
 グルメ・バカ娘が「ずる〜い! こんなの食べてたの?」と怒る顔
が目に浮かぶようだ。

 食後、大将軍商店街から、北野商店街へ延々歩く。
 おばあちゃんの原宿である巣鴨の商店街のようで、自由気ままな
お店が多い。
 さすがに歩きすぎた。足がもつれて来た。
 
 午後1時。タクシーで、イノダ・コーヒ本店へ行く。
 ここでスポーツ新聞を全部読む。
 しかしどの新聞の1面も、阪神タイガースの話題。阪神の球団役員
会議が5日に決まったというニュースが1面では「ベイスターズの
マジック5にせんかい!」と怒鳴る気にもなれない。ここは関西。
 何があっても、阪神タイガース。
 それでも、スポーツ新聞を何紙も見ることが出来て、うれしい。
 きょうも名古屋のナゴヤドームで、対中日戦があるのだが、きょう
は行くのをやめることにした。昨日勝ったから、きょうは休息に当て
るほうがいい。まだまだ来週には大事な試合があるはずだ。体力を
つけておかなければ!
 大体2日続けて、京都からナゴヤドームに通うなんて、バカげ…と
言う前に、すでに1日だろうと、ナゴヤドームに行くのはバカげた
行動以上の何物でもない。

 午後2時。京都のマンションに戻って、先日行った広島の海軍江田
島を舞台にした推理小説『江田島殺人事件』(内田康夫)を、読みな
がら寝る。前にも読んだけど、現地に行ってから、もう一度読み直す
と、風景が鮮明になるので、読みやすくなる。これだから旅と読書は
やめられない。

 午後5時30分。せっかくの京都だ。新しい料理屋にチャレンジ。
宝ヶ池の和食「蔵(くら)」に行く。滋賀県余呉(よご)から移築し
た、160年以上前の大きな古い民家がいい雰囲気を出している。
 ウィスキーとか日本酒のCMに登場しそうだ。
 なかに入っても、中央に囲炉裏があって、階段箪笥(かいだんだん
す)があったりして、座敷わらしがいそうだ。
 掘り炬燵に足を突っ込んで料理を待つと、今どこに来てるのだろう
かという気分になる。外は真っ白な雪が何メートルも積もっているの
かなと思う。
 料理もなかなかの味。
 秋の味覚の代表選手、土瓶蒸しが、土瓶ではなく、小鍋で出てくる
のが、ちょっとした趣向。なかに入れる松茸、ハモ、グジをちょうど
いい大きさで味わってもらいたいからという。

 午後7時30分。早く食べ終わったので、寄り道をしてもいいのだ
けれど、やっぱり横浜ベイスターズの試合の行方が気になるので、
京都のマンションに戻る。携帯電話の情報では、2対0でリードして
いる。いいぞ、いいぞ。

 午後8時すぎ。帰宅。
 いきなりゴメスが2ランホームラン! ちょっと待ていっ!
 2対2の動転、いや同点。
 きょうは広島対巨人の試合がメインで、途中横浜対中日を画面の右
下で放送するあのやり方だ。さすがに京都のテレビにまでスカイパー
フェクTVを入れてないから、この狭苦しい画面に向かって声援を送
るしかない。以前もこの画面のせいで、気がそがれ、敗退したことが
あるので、嫌な予感がよぎる。
 私がナゴヤドームに行かなかったせいじゃないだろな。
 今から行けば、午後9時すぎには間に合うか?
 その頃は決着ついてるだろが。
 しかしいついもよりきょうは気持ちに余裕がある。
 何たって、マジック5だ。しかもゲーム差6、0だ。こっちの
6、0のほうが私にはうれしい。きょうを含めて、対中日戦5試合を
全敗しても、まだ1ゲーム分、うちがリードなのだ。
 どうだ、マイナス思考するなら、ここまでマイナスを計算して、
自信を持て!
 う〜む。以前0対0か。
 8回表。ついに私は動く。京都のマンションの私の部屋の小さなテ
レビから、応接間のワイドテレビへと場所を動かす。恒例の縁起担ぎ
だ。押してもダメなら、引いてみな作戦!
 そ〜れ、始まった! マシンガン打線! 満塁でローズが投手強襲
のヒットだ。珍しい、何10試合ぶりだ、駒田がヒット!
 一挙に5対2! よっしゃあ!
 9回裏。佐々木様の出番だ。
 昨日の3者連続三振に続いて、きょうは3者をたった7球で料理。
 これで年間最多セーブポイント44の日本記録タイ樹立!
 すべてリリーフ記録を塗り替えたのだ!
 これはもう、王、長島、金田、落合、と並ぶ選手になったと言って
も過言ではないのでは? でもヒーロー・インタビューで、佐々木様
は「個人の記録なんてどうでもいいです。優勝をめざします!」と言
ってる。ついに佐々木様の口から「優勝」の2文字を聞いたぞ!
毎日球場に行ってるから、敵地ではヒーロー・インタビューを聞くこ
とができないから、初めてではないのかもしれないけれど、私が聞い
たのは、初めてだ!
 これで、ついに、ついに、ついに、マジック3!
 権藤監督が言っていた、マジック3だ!
 もうこれは決まったぞ!
 嗚呼! もっと言いたいことはあるけど、とっとくぞ。あと少し
だからな。
 
 午後9時30分。東京で録画はしておいたのだが、万が一録画を失
敗した時のことを考えて、NHK『ドキュメントにっぽん』〜史上最
強のストッパー・佐々木主浩を見る。
 ホレボレするな〜。格好いいなあ!
 あれ? もう終わりかい? 
 優勝したら「ベイスターズの優勝までの奇跡」みたいなビデオ出る
かな? すり切れるまで見るぞ。
 さあ、さらに私は今後どういう行動を取ったらいいか、まったく
わからなくなってきたぞ。
 とりあえずきょうも『プロ野球ニュース』を見るぞ。
 改編期で、時間がズレるので、うっかりするとスポーツ・ニュース
を見忘れそうで怖い。



10月3日(土)


 午前9時。京都。ずいぶんと寝たつもりだが、やっぱり旅先では
あるので、疲れているようだ。
 午前11時30分。高台寺の「高月(こうげつ)」で昼食。
 有名なお店なのだが、私と嫁の趣味とは微妙に違う。
 これはこれでこの店の味が好きだという人は、かなりいると思う。
 梅干しで炊きあげた紅ちりめんとか、美味しかったのだが、ひと
つひとつに料理に、どうもわが家の味覚と合わない品が、一品ずつ
入っていたりする。
 まあ、こういう相性の悪いお店というものもある。
 
 食後、高台寺界隈を少し歩く。
 いつのまにか「ねねの道」というのが、出来ていて、石畳の道に
なっていた。高台寺公園なるものまで出来ていて、切ったばかりの
石畳が眩しかったりする。
「ねねの道」の「ねね」というのは、豊臣秀吉の奥方・ねね様の
ことで、高台寺はねね様の菩提寺である。
 高台寺はこのところ、意欲的に観光に力を入れ始めている。ライ
トアップなどもやっているし、特別拝観なども精力的だ。
 10月中旬から、豊臣秀吉関係の特別展などがあるようなので、
また行かねばと思っている。

 午後2時。八坂神社を出るころには足の調子が悪くなって来て、
喫茶店に入る。どうも左足の調子が悪い。急ぎ足をし過ぎてる気が
しないでもない。球場に向かう時、確かにはやる気持ちで、急ぎ足
になっていることは確かだ。しかもふくらはぎは、パンパン。

 午後3時。京都駅。新幹線で、東京に帰ると見せかけて、ひかり
で新横浜駅へ。
 もちろん横浜球場に、ベイスターズ対ヤクルト戦を見に行くのだ。
 マジック3。あと3勝すれば、優勝だ。
 きょう勝って、中日が負ければ、明日にも優勝決定だ。
 だからと言って、きょう行くことはないのだが、まあ、行く。

 午後5時30分。新横浜駅着。さっそく崎陽軒(きようけん)の
お弁当を買う。横浜ベイスターズのファンならば、崎陽軒のファン
でなければならない。理由は無い。私が子どもの頃から大好きなだ
けである。
 ここの何とも俗っぽいシューマイの味がとにかく大好きなのだ。
 まだ新幹線が走ってない頃。昭和30年代だね。東海道本線で
横浜駅に着くと、駅弁売りが崎陽軒のシューマイを大量にかついで、
売りに来る。窓からお金と身体を乗り出して買う乗客の姿は、鉄道
史上特筆すべき名物であった。
 シューマイの醤油が、瀬戸物で出来ていて、その醤油入れが漫画
になっていた。
 この鮮烈なイメージは、今日絶対『桃太郎電鉄』の原型になって
いると思う。子どもの頃の戦列なイメージが、その作家の最大の
ヒットになることが多いと聞くから、きっとそうだと思う。

 午後6時。横浜球場着。きょうからのチケットはさすがに、一塁
側のベイスターズ・サイドを購入できなくて、ヤクルト側。
 しかも4階席。ナゴヤドームの4階席と違って、そのまま垂直に
近い形で登っていくので、高所恐怖症の私にはちょっと怖い。
 それでも席に着くと、まわりにはほとんどヤクルト・ファンがい
ない。もう球場の90%以上が、ベイスターズ・ファンである。
 長い歴史のなかで、ここまでベイスターズ・ファンで埋まった
横浜球場を見るのは初めてだ。
 試合のほうは、いきなりベイスターズの戸叶投手が乱調で、あっ
とうまに1点先取される。その後、なんとかしのいで行くのだが、
ヤクルトの伊藤智仁投手の前に、打線は沈黙。
 もともとヤクルトの伊藤智仁投手は、むちゃくちゃいい投手なの
だから、調子のいい時は、いくらマシンガン打線でも打つことが
できない。お家芸の相手のエラーに乗じるパターンもきょうは出ず、
相手のファインプレーばかり見させられる。
 他球場の途中経過でも、またまた中日が勝っている。
 相手は阪神じゃしょうがないなあ。
 それにしても中日は、どうして他球団には滅法強いのだろう。
負けない。その割に、ベイスターズとの試合に弱いのは不思議だ。
 何でもいいや。他力本願より、自力であと3勝だ。でもきょうは
無理だろうなあ。
 9回裏。ローズが四球で出たけど、案の定、駒田選手はフライを
打ち上げる。代打荒井選手も三振でゲームセット。
 これで優勝は最短でも、10月6日(火)以降になってしまう。
 10月7日(水)は、阪神と甲子園球場だ。
 もちろんチケットを手に入れているから、行く。
 できれば横浜球場でと思ってる人は多いが、どこでもいいから
早く優勝してくれ!
 でないともう、まったくスケジュールのめどが立たない。
 
 午後9時30分。私の姉夫婦が、預けていたグルメ・バカ娘を球
場まで連れてきてくれた。家族3人で桜木町から、渋谷駅へ向かう。
 きょう負けたからといって、ピンチを迎えるわけではないのだが、
気持ちはちょっと重い。
 明日も横浜球場だけど、どうしようかなあ…。
 まずは寝る。



10月4日(日)


 午前7時すぎ。何だか和歌山のヒ素化合物の犯人が逮捕されたみ
たいだけど、眠いから、また寝る。

 午前11時。最近かかさず見てる『雷波少年(らいはしょうねん)』
を見る。ドロンズ、熱烈的巨人ファン以降、この番組がどういう
作戦を建てて行くのかが楽しみ。
 プロの漫画家をめざす人なら、『電波少年』とか、この『雷波少年』
のコーナー企画を考える練習をするといい。私はずっとやっている。

 午後1時。西武百貨店3F「エヴァンタイユ」で嫁と食事。
 グルメ・バカ娘は、家で寝ている。
 
 たっぷり野菜のカレー880円を食べたら、すごく美味しかった。
どちらかというと喫茶店のほうがメインのお店で、こういう美味しい
味に出会えると、ものすごく得した気分になる。
 野菜シチューに近い味で、野菜がとろとろになった美味しさを想像
してほしい。

 午後2時。あまりにも疲れているので、最近ごひいきの渋谷タントン
マッサージへ嫁と行く。
 いつも15分のほうを頼むのだけれど、きょうは30分のほうにする。
嫁に「顔にクマが出ているわよ」と言われてしまうくらい疲れている。
こんなうれしい疲労は初めてなのだけど、今は大事な時だ。来るべき日
のために、疲れは取っておかなければ。

 午後3時。ふい〜。生き返った。
 再び西武百貨店に戻って、お弁当と夜食用のパンを買う。
 けっきょくきょうのベイスターズ戦は、嫁だけ行って、私は家で休養
することにした。
 嫁は友達といっしょに見るのと、横浜ベイスターズの清酒を買いに行
く。月刊OUTの読者にはなじみ深い漫画家・岩崎摂さんも合流する
予定だ。

 午後6時。テレビ神奈川で自宅観戦。
 ひ〜、いきなりヤクルトに4点も取られる。こりゃまいった。
 がっくりくる嫁の顔が浮かぶ。
 グルメ・バカ娘と食べる、西武百貨店のお弁当は非常に美味しい。
 ぎえ〜、また追加点だ。序盤戦から、6対0!
 これはきついなあ。
 このままだと横浜で決定が難しくなってきたなあ。
 
 午後9時。
 あ〜、8対4で敗退。進藤のホームランは美しかったけどなあ。
 仕方ない。日本テレビの『進ぬ!電波少年みなとまつり』でも見るか。
 ありゃ。これが番組宣伝で流していたなすびが日に焼けた理由の謎か。
Rマニアがいた無人島に、なすびが夏休みで行くという企画。おなじ
無人島での行動だから、比べることができる。やっぱり私がいぜん力説
していた、なすびのほうが何倍もおもしろい。
 企画をさらにおもしろくするのは、やっぱりキャラクターだねえ。
 なすびで『雷波少年』の巨人ファンをなすびでやってほしかった。
 なすびは『懸賞生活』が終わっても、生き残ると思うなあ。 

 『チョコバナナ』の投稿者にいつも言ってることはいつもこれなんだ。
いいストーリーを考えるより、おもしろいキャラクターを考えるのが先
というのは、このこと。
 というように、テレビ番組からでも、漫画の作り方を学べることに
気づいてほしいな。
 といいながら、けっこうベイスターズの敗戦にショックを受けている、
さくまあきらであった。
 いやいや。それでも10月7日に甲子園に行けることになったと喜ぶ、
ハイパープラス思考の私であった。
 そうそう。10月7日阪神に勝っても、ベイスターズの優勝がない
場合、家族総出で甲子園に行くことはないので、甲子園のすぐそばに
住む、戸田圭祐よ。私と甲子園観戦ができるがどうだ? 仕事が忙しい
ようだけど。
 どっちかというと、観戦すると阪神が負ける、読売広告の岩崎に来て
ほしいけどなあ。関西にまで呼ぶなよなあ。
 でも甲子園で勝っても、優勝に関係ないっていうと、けっこうやばい
んだけど。おっと、マイナス。マイナス!



10月5日(月)


 午前10時すぎ。一生懸命睡眠を取るが、どうにも疲労が取れな
い。ベイスターズ疲れがピークに達しているようだ。連敗はきつい。
 正午。近所の和風料理屋「穂積(ほずみ)」で昼食。
 前回もここでランチを食べた時、おそばが出て、おいしかったの
だが、きょうもメニューにあるので、この店に入る。
 うまい! 有名なおそば屋さんで食べるおそばよりも、断然美味
しい! 何でここまで美味しいんだ? 思わず目の前の若い板前さ
んに「おそば作りの名人がこの店にいるんですか?」と聞いてしま
った。すると、その若い板前さんが、恥ずかしそうに「私が作って
いるのですが…」という。
 ひょえ〜。若いのにこんなに美味しいおそばを。聞くと、格別
おそばマニアでもないという。やっぱりセンスなんだろうなあ。
美味しさの視点がいいんだろうなあ。漫画のコマ割りのセンスの
ようなものなのだろう。

 午後1時。本屋に寄って、帰り道の洋菓子屋さん「キャラントゥ」
に入る。この店の名前を見て、西城秀樹の「ギャランドゥ」が浮か
ばない人は、マスコミ業界に来るセンスが無いだろうな。
 かなりケーキが美味しい。珈琲はまあまあ。
 散歩の帰り道には、最適なお店といえる。

 午後2時。レイアウターの野沢ちゃんが来る。
 いよいよ『桃太郎電鉄4コマ劇場2』の締切りが近いので、打ち
合わせをする。

 午後3時。ベイスターズ戦の日程がつまっているので、いつ原稿
を書く時間が取れるかわからなくなってきているので、『桃太郎
電鉄4コマ劇場2』の原稿を書く。この仕事がいちばんせっぱ詰ま
っている。

 午後6時。近所のカレー屋さん「GHEE(ギー)」で野菜カレー
を食べる。最近カレーばかり食べている。疲れてると、なぜかカレー
が食べたくなるようだ、私は。せっかちだから、料理が出てくるまで
待つのが嫌になっているのだろう。
 原稿が完成しないのと、疲労が回復しないので、きょうもベイスタ
ーズ戦はテレビ観戦にする。
 あ〜、いきなりもう1点取られてる。
 あ〜、今度は2点だ。きえ〜〜〜〜〜っ!
 ダメだよ、きょうの相手は石井一久投手なんだから、大量点は難しい。
 ベイスターズはなすすべもなく、4対1で敗退。これで3連敗。
 すぎやまこういち先生から、なぐさめの電話が入る。
 う〜、いつも勝った時に、電話をくださるだけに、電話に出るのが
つらい。先生のやさしさがつらい。

 テレビは、どこでも、まだ大丈夫、大丈夫といっているけど、冗談
ではない。40年間ベイスターズ・ファンをやってる私は、マイナス
思考の絶頂にいる。
 こうなれば、明日は疲労を押して、球場まで行くぞ。
 そのためには睡眠を取らなければ。テレビで『失楽園』なんか見て
る場合じゃないぞ。『Hey! Hey! Hey!』の録画は…見ておかないと
なあ。先週録画を失敗してるから。

 ああ、また心臓がしくしく痛くなってくる。
 プラス思考! プラス思考!
 上り調子! 上り調子!
 私が行けば、明日は勝つ!
 ぶつぶつ…。ぶつぶつ…。 



10月6日(火)


 午前6時。ただでさえ寝つけなかったのに、何でこんな早く目が
覚めるんだ。しかも雨音が激しい。これじゃ、きょうのベイスター
ズ戦は中止だ。
 きょうやってほしいやら、やってほしくないやら。
 ワイドショーを見ると、昨日の敗戦ばかり流している。
 新聞を見れば「横浜金縛り」。う〜ん、う〜ん。
 また寝る。
 午前10時。何やかやと、メールを整理したり、メール送るとこ
ろには送る。

 正午。新宿銀座アスターでランチ。
 雨が上がり始めた。横浜球場の空はどうなんだろう?
 きょうヤクルトに負けると、マジックが消滅してしまう。
 午後1時。紀ノ国屋書店で、本を買う。
 午後2時。TOPSで、原口一也と待ち合わせ。神宮球場のチケ
ットを渡す。

 午後3時。読売広告の岩崎誠が来る。岩崎にも神宮球場のチケッ
トを渡す。けっきょく10月9日、神宮球場で、原口と岩崎は
いっしょに観戦することに。
 さらに岩崎と進行中のアニメ企画『変…』、あっ、タイトル言っ
ちゃいけなんだ。わざとだけど(笑)。
 『チョコバナナ』の投稿者たちと練るアニメ企画の打ち合わせ。
 やっぱり予想通り、ガッチャマンのようなデザインがほしかった
とのこと。何のことかみんなにはわからないだろうけど、アニメ
企画に参加してる人はこれがどういう意味かわかるよね。
 こういう排他的な通信をこの日記であまりやりたくないんだけど、
今はベイスターズ・モードで、いちいちみんなに連絡する心の余裕
がないので、ここで一度にさせて。
 アニメ企画はベイスターズが優勝次第、締切で召集がかかること
になっているから、それまでにたくさん絵を描いておくように。
 そのベイスターズが優勝しなかったら、どうしよう。
 岩崎が日本シリーズのチケットを用意してくれるというんだけど、
西武対セ・リーグ優勝チームの、セ・リーグのチーム名が違ってた
ら、やだよ〜。
 それにしてもやっぱり岩崎に対しても、ベイスターズの話ばかり
してたような気がする。

 午後4時。グルメ・バカ娘が学校から帰って来ない。
 早く帰って来いよ。早く横浜球場に行くんだ!
 午後4時30分。ようやく娘が帰って来る。
 さっそく岩崎が持ってきてくれた仙台土産・萩の月をパクつく。

 さあ、出陣だ〜!
 タクシーでまず渋谷へ! うおっ、夕方の渋滞だ。やばいぞ! 
遅れる! きょえ〜! 渋谷駅を前にして、すでに午後5時を廻
ってしまった。
 午後6時。桜木町駅着。タクシーで横浜球場へ。
 午後6時15分。球場に着くと、スタジアムの屋根に付いてる
電工掲示板が、Y1bYB と書いてある。ん? 何だこれは?
YBは横浜ベイスターズのことだ。YBの後に、スペースがあるぞ!
ええ〜? ってことは、わずか試合開始15分で、もう1対0って
ことかい? それじゃ、4試合連続で、ヤクルトに1回表に点を
入れられてるってことか? そ、それだけは、やめてくれい?
 きょうの先発は、三浦投手じゃないのか? 現在野村投手、斉藤
隆投手と並ぶ、いちばん安定感のある三浦投手じゃないのか?
 必死に球場に向かって、走る。
 私は走っているのだが、娘に言わせると、飛び跳ねているだけら
しい。とにかく早く球場に着きたいんだ!
 19番ゲートだ! きえええええええええっ、やっぱり1対0で
負けている。三浦投手なのに〜! しかも2死満塁のピ〜〜ンチ!
 席は三塁側の前から20番目くらいの、いい席だ。そんなこと思
ってる場合ではないっ!
 うおおおおおっ! 私が来たんだ、三浦、押さえろ!
 やった! 押さえた! 押さえた!
 相手は、田畑投手。ヤクルトの三本柱は昨日で終了した。
 田畑投手も好投手だが、三本柱よりも攻略の糸口があるはずだ!
 う〜ん。きょうも0行進が続く!

<スコアボード>
   123 456 789
Y  100 0
YB 000
 
 ダメか? きょうも。もう4回裏だ。
 おっ、鈴木尚典が打った! うわ〜、センターは名手飯田選手だ!
 おおっ、飯田選手の頭を越えた! 2塁打だ! 球場中が興奮する。
♪かっとばせ〜、ロ〜〜〜ズ!
 おおっ、打った〜! 打球はレフトへ。ここの席からじゃ見えな
いよ? アウトか? うお〜〜〜〜〜! 球場が叫んでいる!
 これはヒットだ! 1点入る! 同点だ、同点だ!
 打撃不振の駒田も続く! ランナー1塁、3塁。
 バッター佐伯。外野フライでいいぞ! 犠牲フライで1点だ。
 ああ〜、2ストライク3ボール。フルカウントになっちまった!
 頼む、頼む、佐伯、なんとか、外野にフライを上げてくれ〜〜!
 佐伯、打った! ライトに打球は上がる! 切れないでくれ、
切れたら、ファウルだ! おっ、うそ! え? お? ひ?
 入った〜〜〜〜〜、ホ〜〜〜〜〜ムランだ! 3ランだ!
 うお〜〜〜〜〜! 佐伯〜〜〜〜〜!
 もうダメだ! 私の口は、無限大のマーク∞になったまま号泣だ!
 うわ〜〜〜〜〜ん! うれしいよ〜!
 ∞∞∞∞∞∞だ〜! さ〜え〜き〜〜〜!
 4対1! もう球場は、誰の声も聞こえないほどの拍手でいっぱ
い。鳴りやまない!
 出た! 横浜名物! ウェーブだ!
 いつもの横浜球場だと、ライトスタンドから、ウエーブが始まっ
て、バックネットまで届き、ヤクルトがいる三塁側で止まる!
 きょうの横浜球場は、95%以上が、横浜ベイスターズのファン
で埋まっている! だから、な、な、なんと、ウェーブが球場を
一周してしまったのだ! なんと感動的な場面なんだ!
 私は、嗚咽した後、号泣! こんな美しい場面を見せてくれる
なんて! ウェーブは球場を一周して、また一周、また一周。止ま
らない。とうとうベイスターズの次の選手が凡打に倒れるまで、
止まらなかった! もう最高!
 は〜〜〜〜〜。しばらくして、思い出したかのように、私は血圧
の薬を取り出して飲む。飲んでも変わらないくらい、興奮してる。
 ふと見ると、うちのバカ娘は、相変わらず何か口にして、もぐも
ぐしている。どうも球場に着いてから、食べっぱなしらしい。
フルーツサンド、崎陽軒のお弁当、午後の紅茶、ポップコーン、
ソフトクリームをたいらげていたそうだ。娘の行動が目に入らぬ
父親であった。
 
 8回裏。五十嵐が打たれて、1塁、2塁のピンチ!
 権藤監督が出てくる。もうこの時点で、球場は沸騰したように、
沸き立つ。誰もがあの人が出てくることを期待してる。知っている。
そして場内アナウンスが「ピッチャー五十嵐に代わりまして、佐々
木!」。うわ〜〜〜〜〜ん!
 誰もが立って、佐々木様の登場を待つ!
 一塁側のファンが少しでも近くで見ようと、金網に突進する。
 かつてこんな人気の出方をする投手があっただろうか?
 佐々木様は、たった1球で、打者を料理! ピンチをぴしゃり!

 9回表。2死。最後の打者は、古田。佐々木様がふりかぶると
同時に、球場中が「う〜〜〜〜〜!」と叫ぶ。
 ストライクが入れば、うお〜〜〜〜〜!
 ボールになれば、あ〜〜〜〜〜!
 そして、最後はやっぱり三振で勝利!
 やった! 佐々木様は年間最多セーブポイント45の新記録を達成。
これですべてのリリーフ投手の全記録を佐々木様がひとりじめしたのだ。
 そして、そして、この瞬間、マジックは消滅せず、2に!
 マジック2! 明日、阪神に勝ち、中日がヤクルトに負ければ、
ゆ。ゆ、ゆ、優勝だ〜〜〜〜〜!
 いいや、あと2勝。あと2勝で優勝だと思うぞ。
 ヒーローインタビューで佐伯が最後に言った。
「みなさん、明日は甲子園に来てください!」
「行くぞ〜〜〜〜〜!」

 というわけで、私は明日甲子園に行く。
 でも明日の甲子園は、雨のようだ。雨でも何でも行く。
 だからまたしばらく日記はお休みだ。
 メールをくれ! 日記はアップできないが、京都のアイマックで、
ご感想メールは見ることができるようになったのだ。
 甲子園から京都に帰るのだ。優勝したらどうするんだ、私は?
 もうまったくわからないぞ。予定も何もない。
 とにかくその瞬間を目に焼き付けるのだ。
 そして死ぬまで、その瞬間球場にいたのだと自慢するんだ。でも
明後日、中日が負けて、球場でゲームセット優勝が見れない可能性も
ある。でも38年待った優勝がそんな中途半端な形で決まるわけがな
い。私はそう強く念じるのだ。
 
 では、私は行って来る!



10月7日(水)


 ふっふっふ。何と言われようと、横浜ベイスターズのマジックは、
2だ。ふっふっふ。昨日は午前2時すぎまで寝付けなかった。
 午前8時。日刊スポーツを、しげしげ、にまにま読む。
 佐伯の写真を見るだけで、目頭が熱くなる。
 ああ、幸せだなあ。
 いかん。、いかん、まだ油断をしてはいけない。
 まだ優勝したわけではない。
 
 午前11時。レイアウターの野沢ちゃんが来る。『桃太郎電鉄4
コマ劇場2』の入稿が10月12日とせまり、でも打ち合わせがで
きるのが、きょうのこの午前11時から、午後1時までの2時間し
かないので来る。私が書いた原稿の部分のチェック。
 はっはっは。やっぱり気もそぞPろなせいか、文章の行数の間違
えが多かったようだ。いかん、いかん。

 午後1時。いよいよ、きょうベイスターズが阪神タイガースに勝
ち、中日がヤクルトに負けると、ベイスターズの優勝が決定する。
 その横浜ベイスターズ対阪神タイガースの試合を見に、これから
甲子園球場に向かうのだ。
 でもその前に昼食をとらなければ。
 近所のおけい寿司に行く。
 先週も行ったんだけど、ここのお寿司を食べると、ベイスターズ
が勝つので、ゲンかつぎで行く。本当は野沢ちゃんは、生ものが
まったくダメなのだが、とにかくベイスターズのために、巻物を
食べればいいからと強引に連れて行く。
 この店に行くときも、私は必死に小走りに駆けようとするらしい。
 どうも最近球場に向かうというだけで、必死に歩くクセがついて
しまっているらしい。気持ちがあせっているようだ。
 この調子では新幹線のなかでも走り出しそうだ。

 午後2時。娘から電話が入る。帰って来たか。
 よっしゃ! 帰宅。ベイスターズ・グッズを持って、東京駅へ。
 午後2時56分。新幹線のぞみで、新大阪に向かう。
 車中、何度もベイスターズ・ダイヤルに電話するが、お話中。
 大阪地方は朝から雨がしとしと降っているという。
 日本中のベイスターズ・ファンが中止かどうかをベイスターズ・
ダイヤルに電話しているようだ。
 私も心配ではあるのだが、すでに新幹線に乗ってしまっているの
で、とりあえず週刊誌で、ベイスターズのことを書いてる雑誌を読
みまくる。うれしなあ。どの週刊誌にも、ベイスターズのことが書
いてある。
 週刊ベースボールは、表紙がベイスターズで、1枚めくってすぐ
もベイスターズだ! いいねえ。 

 浜松を過ぎたあたりから、雨足が激しくなる。これはダメだなと
思うと、名古屋に近づくにつれ、曇り空に。少しだけ晴れ間ものぞく。
大丈夫かな? まだベイスターズ・ダイヤルでは、中止とは言って
いない。

 関ヶ原に近づくにつれ、また激しい雨。いつもこのあたりは雨が
多いから、このあたりだけのことだろう。
 ベイスターズ・ダイヤルに電話。途切れ途切れの放送を聞くと、
午後4時すぎに、きょうの試合の中止が決まったという。
 え〜〜〜〜〜、せっかくこうやって来たのに。
 さらにさあ、困った。きょうのこの試合事態が、今シーズン雨で
流れた試合の予備日に当たるので、チケットは払い戻しになるだけ
だという。じゃあ、どうやって明日のチケットを買うの? なんと
甲子園で直接買うだけだという。チケットぴあでも、チケットセゾ
ンでも手に入らないという。ええ〜〜〜〜〜。当日券のみってこと
かい? そいつはまいった。
 朝から買いに行って、ならぶのか?
 それはツライぞ。ここまでずっと必死にチケットを揃えたのに。
 ここに来て、最大のピンチ!
 こうなりゃ、とにかく明日も行く!
 そう決定して、新大阪下車の予定を変更して、京都で降りる。

 午後5時30分。さっそく食い道楽家族は、いちばん大好きな
料理屋「M」に電話をする。しかし定休日。京都はほとんどのお店
が水曜日定休なのだ。三嶋亭もお休み。
 なので、最近ごひいきの「忘吾(ぼあ)」に行く。
 相変わらず美味しい。
 お米を籾(もみ)がついたまま天ぷらのように揚げたのが出たり
する。ポップコーンのようで美味しい。
 レンコンの梅はさみ揚げというのも美味しかった。レンコンと
レンコンのあいだに、梅が入っていて、すっぱく甘い。
 イチジクのシャーベットがデザートだったり、このお店はちょっ
としたひと工夫がおもしろい。鈴木尚典のパワーは無いけど、石井
琢郎のシャープなバッティングのような味だと、たとえもベイスタ
ーズでしか浮かばなくなっている。
 とうとう頭の中の99,99%まで、ベイスターズで埋まって
しまっている。

 午後7時。帰りに寄った本屋さんで、『チョコバナナ』投稿者の
渡空燕丸さんから電話が入る。
 京都のマンションに戻って、折り返し電話する。
 どうも電車とか飛行機が苦手な人らしい。
 それは大変だ。プロをめざしたいといっているが、私が飛行機が
苦手だというだけで、どれだけチャンスを潰したことか。そういっ
たことを話す。新人の時代は、右を向けと言われれば、右を向かな
ければいけないのだ。
 作品はいいのだから、まず乗り物を克服するようにとアドバイス
する。そして乗り物が苦手という『当方見聞録』を書けばいいと伝
える。苦手なものの話は共感を呼ぶものだ。

 午後9時。嫁にインターネットで、中日戦の行方を調べてもらう。
何〜〜〜〜〜っ? 中日が逆転負けしったって?
 ってことは、マジック1?????
 ひょ〜〜〜〜〜、あまりにもあっさり1になってしまうと、ぽ〜
〜〜〜〜としてしまう。
 あれだけマジック3から2になるまで、4日間もかかったのに!
 そういうもんなのかなあ。
 いよいよ明日、自力優勝の目が出て来たぞ。
 ベイスターズが負けて、中日も負けても、優勝だ。
 もう何でもいい、早く優勝しよう!

 午後10時。ニュース速報で、西武が優勝したといってる。
 かわいそうに、関西ではどこも放送していないようだ。
 
 さあ、今度はベイスターズの番だ!
 マシンガン打線炸裂で優勝を決めてくれいっ!
 その前に、なんとしてでも明日のチケットを手に入れなければ!
 
 ああ、いざ本当に夢に王手をかけると、どうしていいかわからな 
いよ〜。雲の上を歩いているようだよ。
 一応テレビなんか付けてみるけど、ちゃんと見れないよ〜。
どうしよ、どうしよ、どうしよう!
 ええい、早く明日になあれっ!



横浜ベイスターズ優勝日記その1:10月8日(木)


 きょうの日記だけは結論から書かないとね。
 しかもこの日のことが日記に登場するのはけっこう後になってい
ることと思う。

 とにかくたくさんの「ベイスターズ優勝おめでとうメール!」
ありがとう!
 優勝の瞬間私はどこにいたと思う?
 劇的王と呼ばれる私は、とんでもないところにいたのであった。
佐々木様が9回2死2─3からフォークを投げて、新庄選手を三振
に取ったシーンはテレビでもう何回も見たと思う。
 その投げたボールのコースをそのまま直線でたどっていくと、捕
手が取って、さらにバックネットにぶつかる。そのバックネットの
客席をとんとんと上がること、わずか9席目。なんとそこにいたの
であった〜〜〜〜〜!
 もうほとんど佐々木様が私めがけて投げているような位置にいた
のだよ〜〜〜!

 ああ、書きたいことはたくさんあるけど、もう一度「みんな、応
援ありがとう! そして仕事先の皆様、長いことご迷惑おかけしま
した。みんなのおかげで、38念ぶりの優勝を見ることができまし
た!」と言ってから、きょうの長い、長い、長い、とてつもなく
長い1日をしみじみ振り返る。
 本当に長いよ。


 午前9時。京都のマンション。よく寝たような寝ていないような、 やっぱりちゃんとは寝てなかったような気がする。だって午前9時 に起きた気がするけど『ズームイン朝!』の魁三太郎さんの入れ込 み情報を見ている。ってことは午前7時台か午前8時ってことだもん。  午前10時。イノダ・コーヒ本店で朝食。  ここで食べることは昨日からもう決まっていた。  いつもここで食べるビフカツサンドを食べるのだ。  しかしきょうのビフカツサンドは特別な意味があるのだ。  ビフカツサンド、ビーフカツサンド、ビーフターズサンド………… ベイスターズ勝つサンド。  榎本44歳を彷彿させるベタなだじゃれだが、私にはマジだ!  そんなことよりも私にとって大問題なのは、当日券の問題。  何しろ、きょう勝てば優勝という試合のチケットが当日売りしか ないなんていうのは、信じられないわけよ。しかも当日券が、甲子 園球場のみ発売だっていうんだよ。さらに午後6時試合開始だとい うのに、午後4時からチケットを発売するという。わずか2時間前?  ってことはもうベイスターズ・ファンが、朝からずっと座り込ん でしまうってことじゃないの?  だったら、とても京都から向かうわが家族が、チケットを手に 入れることができなくなってしまうではないか!  ここまで10月のベイスターズ戦全部の試合のチケットを手に 入れた私が、ここまで来て見ることができないなんてことになって はいかんと思わないかい?  それでも実はこの話の脇では深く静かに、サイドストーリーが進 んでいたのであった。  昨日の夜、京都のマンションに、最古のさくまにあ・Tから電話 が入った。Tといっても、毎日この日記を読んでる人には、フルネ ームでわかってしまうんだけどね。一応けっこうきわどい話なんで、 イニシャルトークね。  このTが、さる筋から、チケットが入手できそうだというではな いか!  まさか! 何でTが! Tといえば、いわゆコネなどというもの をまったく持っていないことで有名な男だ。野球のみならず、すべ てにわたってね。そんな男から、突然チケットが入りそうだと言わ れても信じられるわけがない。  中尾淳がチケットが手に入ったといって来ても、誰も信じないよ うなものだ。むしろ中尾淳なら「はい、うそ、うそ。時間がもった いないから、じゃあね」ですむ。  中途半端にTからだというので、真面目に聞かないといけない。  しかもよく聞くと、どうもこのTのルートではなく、Tの嫁さん の筋だという。ほう。嫁さんとは会ったことがないが、T本人の ルートではないと聞いて、かなり信用する気になったのは確かである。  と言いながら、38年間負け根性がしみついているベイスターズ・ ファンが、そう簡単に信用するわけがない。  気がついたらTに「本当に手に入って、もし勝ったら(ってこと は優勝ね)、この日記で話題の、グルメ・バカ娘が日本一の味と言 いきる『M』に招待してやってもいい!」と言ってしまうほどであ った。今思うととんでもないことを言ってしまったと思ったのだが、 その時はそのくらいの確率で手に入らないだろうと思っていたとい うくらいだ。  ♪嘘ついたら、針千本飲〜ます、と言って針を飲んだやつなど いないようなものだ。  とりあえずチケットを5枚頼む。  わが家族で3枚。もう1枚は放送作家の清正まなつサンが東京に 駆けつける予定なので。さらにもう1枚は予備。何が起こるかわか らないから。ハドソンの浦さんも行ってみたいといった(浦さんは 阪神ファン)ので、とにかく5枚。
 何度も言うけど、きょうは、本当に話長いよ。すでにみんな覚悟 してるのだろうけど。何たって、優勝の日だからね。
 午前11時。とにかく午後3時30分にチケットが手に入るとい うTの半信半疑ぐらいに信じて、京都駅から新快速に乗り、まず 兵庫県の芦屋駅をめざす。甲子園に着くには時間が早すぎるのだ。  午後12時。芦屋駅着。じたばたしても仕方がないので、芦屋を 見物することにした。  まずは谷崎潤一郎記念館にタクシーで向かう。  え? 展示品入れ替えのため休館?  ちょっと嫌な予感がよぎる。  真っ青な顔をしたTが謝る姿が浮かんでしまう。いかん、いかん。 きょうのチケットは、Tではない。Tの嫁さんのルートだ。マイナ ス思考は禁物だ。  しかし隣りの市立美術館を見ようとするのだが、見るからに、 つまらなそう。いかん。ますます気が滅入ってくる。  投手が乱調で、四球を連発し、ノーアウト満塁になったような気分だ。  こういう時は、とにかく流れを変えるのがいちばんだ!  なるべく気分が高揚する確率が高い場所へ行くに限る。  わが家族の気分が高揚するもの。そんなのは食い物に決まってい る。わが家の旅のアンチョコ『旅・王・国』(昭文社)でチェック しておいた、芦屋のいかりスーパーマーケットへ向かう。  何でもここは日本一の豪邸街・芦屋のど真ん中にあるマーケット ということで、とてつもなく豪華な品揃えで有名なスーパーらしい。  スーパーというのは地味ながら、けっこうその土地、土地の特徴 がにじみ出るもんなんだよ。  午後12時30分。いかりスーパーマーケット。  やっぱりここに来て大正解だった。  とにかくお金持ちそうな芦屋夫人のお客さんでいっぱい。  おばあちゃんなんかも、鮮やかな黄色の洋服を着てたりして、 それはもうおしゃれ。ジーンズ姿のお客がまったくいない。   店に並ぶ野菜や果物にしたって、聞いたことのない名前ばっか。  フリルレタス、ペテトマト、サツマクイーン芋、鶴の子柿などな ど。これにはまいったね。  それにワインの売場が広くて充実してるスーパーなんて見たこと ないぞ! さすが芦屋だ。  しかも安売り品だって驚くぞ。サンマが安売りしてあったんだけ ど、こげがついてるからって理由で安売りなんだよ。そのこげも、 ちょっとしかついていない。古いから安売りじゃない。基準がすで に違うのだ。  天然水だって、紙パック入りの宮水という高貴そうな名前だし、 もういっぱい買い物したいものばかり。でもこれから球場に向かう というのに、これ以上荷物を増やすわけにはいかない。すでにハド ソンのバッグに、ベイスターズ・グッズ(正装用ベイスターズ・ジ ャンパー含む)をたくさん入れて来てるのだ。  けっきょく娘と、いかりスーパーマーケット特製のソフトキャラ メルスティック、100円という、棒付きアイスを買う。これなら すぐ食べて荷物にならない。  案の定、店の出口にあるベンチですぐ食べる。  う〜ん、なんて上品な味だ。キャラメルとういうより、ロイヤル ミルクティーのような味。 「ふに〜!」。  娘がうれしそうに微笑む。  それにしても娘は小学校をどうしたのであろうか? 創立記念日 で休みなのであろうか? はっはっは。  とにかくわが家族は、ここでノーアウト満塁のピンチを見事切り 抜けたことは確かだ。  さらにわが家族は宮川という川に沿って歩く。別に方向がわかっ ていて歩いているわけではない。荷物になるからと旅のアンチョコ 『旅・王・国』(昭文社)は、京都のマンションに置いて来てしま っているせいだ。さらにメモした紙も置き忘れていた。  そのうちに、神戸屋レストランが目に入る。  おおっ、大好きな神戸屋キッチンのレストランではないか!  何という偶然。わが家族が大好きなレストランに遭遇してしまう なんて。ますます上り調子!  午後1時。神戸屋レストラン。  娘と私は豪華に、牛フィレステーキのランチ。  とてつもなく肉が小さかったが、何でもいい。それどころか、 だんだん近づく世紀の一瞬に、食が細くなって来ていたのだから。  美味しいパンを食べながらも、この38年間をつい思い出して、 涙ぐんでしまう。  本当に私の人生と、ベイスターズ(大洋ホエールズ)は切っても 切れないくらい、二人三脚だっただけに、いろんなことが走馬燈の ように駆けめぐってしまう。  前の優勝が、8歳の時だったからね。ほとんどかすかにしか覚え ていない。ただ当時いちばん好きだった選手が、桑田武三塁手とい う人で、今だに、私にとって、桑田という名前は、桑田真澄巨人軍 投手でも、サザンオールスターズの桑田圭祐でもなく、大洋ホエー ルズ三塁手・桑田武なのである。  桑田選手が、餃子が好きで、94個食べたとかいう記事を読んで、 94個食べれば、桑田選手とおなじくらいのバッターになれると信 じて、必死に60個ぐらい食べて、目を白黒させて苦しんだことを 思い出す。  優勝を見てから始めた野球は、38年前優勝した投手の秋山登さ んを真似て、サイドスローの投げ方をして、投手と三塁手を兼任し た。もうひとつが三塁手なのは、もちろん桑田武三塁手のせいだ。  その桑田武さんは、今年だったか、昨年だったか、ほとんどの人 が知ることなく亡くなっている。谷繁選手の8番を付けていた…。  午後2時30分。とにかくじっとしていられないので、さらに芦 屋の俵(たわら)美術館に行く。  昔の筆記用具である矢立(やたて)が多数展示してある美術館で、 個人所有と言うから驚く。何10点もの矢立のほかにも、印籠の根 付けとか、刀の目貫(めぬき)なども展示されていた。  時代劇ファン、歴史マニアにはうれしい場所だ。  もっと心に余裕のある時に来ればよかったと、少し後悔する。
 さ〜て、いよいよタクシーで甲子園球場に向かう。  車中、本当にこうして38年ぶりの優勝を、目の当たりにでそう な幸運をしみじみ味わう。  3年前の脳内出血で死んでいたら、もちろんこの日を見ることは できなかったし、病気のせいで、会社を畳むことができたおかげで、 こうしてこれから甲子園に向かうこともできる。  ゲームを作り始めたせいで、会社を作り、社員がいた頃は、まっ たく野球場に通うことのできない日々だった。今も会社を続けてい たら、きょうも東京で見るハメになったんだろうな。そう思うと、 この3年間の行動は(危篤状態になり、会社を畳んだことは)すべ てこの日のために動いていたとしか言い様がない。  必死にリハビリをしたごほうびに、神様がこんな素晴らしい贈り 物をしてくれようとしてるのだとしか思えない。  病気のせいで、実は別居結婚だった家族も、同居するようになり、 ベイスターズのように、家族も一丸となった。  漫画はキャラで動く、とはこういうことなのかもしれない。  私が仕事に夢中になってるあいだは、ベイスターズ優勝の時でも 仕事をするはめになっているから、ストーリーのほうも、優勝せず に私のキャラが変わるまで待っていたのではないか。  そんな気がして来た。
 午後3時。甲子園球場に着く。  思った通り、指定席売場には、長蛇の列。
 嫁が、どうせチケットが手に入るのだから、どこかでお茶でも飲 んで待とうというのだが、どうしても私は、万が一のことを考えて しまう。Tに対して、失礼極まりないのだが、私はどうしてもこの 長蛇の列に並びたいと言いだす。  指定券が入った上で、チケットが手に入ったって、いいじゃない かと私はだだをこねる。  ベイスターズのことで言いだしたら聞かないことを嫁は熟知して いるから、私の提案を聞き入れてくれた。  そんな話をしてるそばから、最後尾がどんどん伸びて行く。  あわてる私。不自由な足で、ぴょんぴょん跳ねながら、最後尾に 向かう。おお、ここが最後尾か。  ふう〜。とりあえず、最後尾に付けた。  甲子園球場は初めてなので、この最後尾で球場に入れるのかどう かわからなくて不安になる。    すると、私のちょうどひとつ前の最後尾に並んでいた女性が、 びっくりした顔で「さくまさ〜ん!」と叫ぶ。  ん? さくまさん? そりゃ私のことではないかいな? 読者かな? ありえないことではない。  うおっ! な、な、なんと、その女性は漫画家の細野不二彦くん の奥さんであった!  何たる偶然! 細野くんの奥さんは熱狂的なベイスターズ・ファ ンで、10数年前はいっしょに何度かベイスターズ戦を見に行った こともある仲なのであった。こんな偶然というものがあるのだろう か? さすがに細野くんは仕事で来ていないとういう。ひとりで東 京から来ているという。それどころか10月に入ってからの関東で のベイスターズ戦はほとんど見ているという。  それじゃ、うちとおんなじじゃない!  そういえば細野くんの奥さんにはおもしろいエピソードがあって、 球場に見に行くと、必ずベイスターズが負けるジンクスがあった。 もともと昔の大洋ホエールズの頃に球場に行っても、ただでさえ勝 率が低いのだから、負けるのはジンクスでも何でもない。  でも確かに、負けるのだ。  何しろ、私といっしょに行った試合くらいしか勝ったところを見 たことがないという。そうだ。私は昔の低迷期の大洋ホエールズの 頃でも、見た試合の勝率は80%を越えていた。  細野くんの奥さんは、私を見つけたことにも、びっくりしたけれ ども、私がいることで、きょうの試合の勝利を確信したと言い出す。 筋金入りのベイスターズ・ファンだ。  その奥さんに、ひょっとするとチケットが手に入るかもしれんし というと、さらに驚く。でも取り合えず、この場に並び続けること にあっさり納得する。これがベイスターズ・ファンだ。  午後3時30分。ハンドスピーカーを持った人が「まだいつから チケットを発売するかは決まっておりません」と、アナウンスをし ながら歩く。球場側も相当混乱しているようだ。このアナウンスが 不安を駆り立てる。  トゥルルル…、トゥルルル…。  うちの嫁の携帯が鳴る。   Tの嫁さんからの電話がそうだ。緊張が走る。  行列の後ろにありマクドナルドに来ているという。  来てるのはいいけど、券が手に入ったのかどうかが知りたいでは ないか! どうなんだ? チケット販売がいつになるか決まってい ないと、球場の人は言っていたぞ。  をわ〜〜〜、嫁が携帯を切ってしまった。 「私が行って来ます。あとで連絡する」  そう言って、嫁はマクドナルドに向かう。  ん? 確か今、券が手に入ったって言ったよな。言って無かった 気がする。ん? ん? どうだったかな。  娘が、嫁の後を追うと行って、走って行ってしまう。  行列に、私と細野くんの嫁さんだけ残ってしまう。  沈黙が流れる。  気持ちはいっしょだ。まだ信じていない。  これが真性ベイスターズ・ファンである。  有名な漫画家細野不二彦くんの奥さんの環(たまき)さんである からして、人生に対して、マイナス思考であるわけがない。ただ ベイスターズだけ、何と言っても、38年間優勝から遠ざかった事実 がはマイナス思考にならざるをえなかったのだ。  細野くんの奥さんは、何たって最初の優勝のあとに生まれている。 ベイスターズ・ファンの大半である『優勝を知らない子どもたち』な のである。  ♪優勝が終わって、僕らは生まれた〜。  かつてヒット曲をもじって、こんな歌が流行った。  もちろんベイスターズ・ファンの中だけで流行ったので、世間の人 はほとんど知らない。  嫁が列から離れてから、10分ぐらいがすぎ、私の携帯が鳴った。 「もしもし…、後ろのマクドナルドにいるよ〜。来て〜」  娘の声だ。「来て」だけでは答えになっていない。嫁を出せ!  嫁を! 「ちょっと待って〜」。  何でいつもこのガキの声はノンキなんだ! 「もしもし。チケット入ったわよ。どうぞ!」  そうか、そうか! 本当か!  細野くんの奥さん環さんに、いっしょに行こうと誘う。  しかし、生粋のベイ・ファン。  行列に残りたいという。気持ちはわかる。  でも嫁のことだ。ちゃんとチケットをしげしげと確認しているに違 いない。マクドナルドにいるのは、Tの嫁さんだ。これがTなら、 チケットは入っても、たとえば明日の阪神対広島戦だったなんていう オチがあってもおかしくない。信用できる段階に入っている。  世間の人は、ここまで来てもまだ信用しないのかとあきれるかもし れないが、それがベイ・ファンだ。こういう人種もいるということを 後学のためにも知っておくべきだ。  なんとか細野くんの奥さんを促して、列を離れる。  もちろん手足の不自由なさくんまあきら、必死の疾走開始である。 跳ねてるようにしか見えないだろうけど。  マクドナルドが目の前にせまる。  信号の赤が長い!  環さんもおなじことを思っていたという。  マクドナルドに到着。2階かい! ええい、もどかしい。足がもつ れる。すでに行列に並んでいただけで、私の足はへばっている。  ダッダン、ダッダン、ダッダン、ダッダン。  私が階段を駆け上る音だ。  Tの奥さんがいる。嫁がいる。娘がいる。  嫁がチケットを見せる。 「やった! でかした!」  やった、やった、やった! 「もうすべての条件がそろったから、きょう負けるわけがありません ね」と細野くんの奥さんがいう。  確かにそうだ。こんな偶然と幸運が重なっているんだ。負けるわけ がない。ドラマというのはそういうものだ。  今思えば偶然なのだが、1週間前あたりから、私はなぜか優勝は 甲子園と譫言(うわごと)のようにつぶやいていたのだ。対ヤクルト 4連戦に3連敗を喫する前のことである。  そういえば、Tの嫁さんに挨拶をするのを忘れている。 「初めまして。初めてでさらに失礼なんですが、まったく気をつかえ る状態でないことを許してください」  Tの嫁さんが笑って大きくうなづいている。  相当行っちゃってる状態であることをTは説明していたのだろう。  すぐにもそのまま球場に入りたいのだが、マクドナルドから見える 行列がまったく動かない。  しばらくみんなで会話するのだが、ベイスターズの話しかしていな かったことは覚えているのだが、どんな内容だったかをまったく覚え ていない。  なんとかハドソンの浦さんに電話して、細野くんの奥さんにチケッ トを渡したいむねだけは伝えた。浦さん、申し訳ないです。  午後4時すぎ。どうやら行列が動き出しているようだ。でも列に並 んでいた時、何度も行列を詰めるだけの動きをさせられていたから、 まだのような気もする。  それより、Tの嫁さんはチケットを渡すことで任務が完了している のに、マクドナルドで引き留めたままで、ベイスターズの話ばかり 聞かされていることにようやく気づく。遅いぞ。  まずは球場に向おう!  信号の赤を長く感じた交差点で、Tの嫁さんと別れる。ありがとう!  恵美子さん。これも偶然なのだが、恵美子さんという名前は私が 3歳の時に死んだ実の母親の名前である。  何てドラマチック! あれ? 恵美子さんでいいんだよな? 美恵 子さんじゃないだろな? 勝手におもしろくおもしろく勘違いして行 くのは、私の特技だぞ。出来すぎだもんな。3歳の時死んだ実の母と おなじ名前なんて。  でも確か恵美子さんだったと思うぞ。  もう完全にトランス状態に入ってるからなあ。  午後4時30分。球場入り。  うおおおおお〜〜〜〜〜! ここは!  なんとバックネット裏ではないか!!!!!  こんなものすごい席をTが用意した?  ここに及んでもまた心配が頭をもたげる。違う場所じゃないのか?  でも係の人に案内されたぞ。  しかしこの不安を吹き飛ばす光景が目の前に広がっていた。  横浜ベイスターズの選手が試合前の練習中だ!  5メートル先ぐらいに、パノラマのように広がっている。  ここはパノラマ島か!?  中根がいる! 波留がいる!   石井琢郎がトスバッティングをしている!  畠山がゲージで、打撃投手を相手にポンポン外野席に打球を飛ばし ている。うわ〜〜。   わけもなく、バッティング練習をバックに、嫁のデジカメで写真 を撮ってもらう。
試合前の練習風景 ベイの選手をまえに頬がゆるむ〜 偶然会った細野不二彦くんの奥さんと
 うおおっ。グランドに背広姿の松原誠さんがいる。往年の大洋ホエ ールズのスターだ。これまた今は『プロ野球ニュース』でおなじみの 元大洋ホエールズ・高木豊さんがいる。38年前の優勝投手・秋山登 さんがいる。うわ〜〜〜。    本当に漫画の最終回みたいだよ〜〜〜〜〜!  昔の登場人物がどんどん集まっている!  どの選手もどのOBも笑っている。うれしそうだ。  もうこの姿を見て、早くも涙ぐんでいる私であった。  40年間もファンを続けるのは、本当につらかった。  仕事で数多くの芸能人たちを取材して来た。  その仕事でいかに、人はカンタンに熱狂的にファンになって、一瞬 にしてファンをやめてしまうかを目の当たりにして来た。  武田鉄矢さんが『3年B組金八先生』に主演している時、町で武田 さんを見かけると、涙をぼろぼろ流しながら「金八先生〜〜〜!」と 近寄ってくる人たちを横で見ていた。  しかし、その半年前。武田鉄矢さんはほとんど仕事がなくて、ゴキ ブリの着ぐるみを着て、コックローチのCMに出ていただけだった。 その頃私は取材をしていたのだが、町でみんなが武田鉄矢さんを見つ けると「ゴキブリ〜〜〜、ゴキブリ〜〜〜!」と叫んで走り去って行 った。  あるときは、離婚寸前のタレントに向かって「早く離婚しろ〜」と 怒鳴っているガキたちを、取材中に見たこともある。  剃刀を入れて来た手紙も何度も見たことがある。  だからこそ絶対私はファンになったら、ファンを貫き通すぞという のが、いつしか信条となってしまった。そんな意地で横浜ベイスター ズのファンを続けていくのは、とにかくつらかった。  大洋ホエールズから横浜ベイスターズに名前が変わった時が、いち ばん厳しかった。ご多分にもれず、大洋ホエールズでなければ、熱が 入らないのではないかと思った。  しかしファンを全うするなら、球団名が変わっても応援してこそ、 ファンじゃないかと気合いを入れ直した。  私が長いこと私のファンを続ける読者と、気軽に飯を食いに行って しまうのは、やはりこういうところから来ているように思える。  こんな話を続けていると、千夜一夜あっても、まだ足りない。  先を急ごう。    バックネット裏の席は本当にいい席で、捕手と審判が並んでいる線 の延長線上にある。これならスト〜〜〜ンと落ちる佐々木様のフォー クを目の当たりにすることができる。  まさか佐々木様が出て来ない展開になるなんてことにならないだろ うな。  すぐ後ろの席には、西武ライオンズの先乗りスコアラーが陣取る。 わお。西武ライオンズが対戦相手と認めてくれてる〜。いいかげん、 信じろよ、さくまあきら! M1だぜ!  おなじ列の席に、横浜ベイスターズのスコアラーがいる。  細野くんの奥さんが「あの人、岡本さんじゃないですか?」という。 岡本というだけで、私はもちろん岡本透投手、背番号18とまだ覚え ている。かつての軟投派投手である。横顔なのでよくわからない。 トイレに行った帰りに、そのスコアラーの顔をのぞき込む。 「あ、岡本さん!」  しまった。思わず声に出して、名前を呼んでしまった。  さらに、私は頭を深々と下げる、最高に意味不明な行動を取ってし まった。もちろん岡本透さんは、首をかしげていた。  それにしてもまだ試合が始まっていないというのに、緊張で何度も トイレに行ってしまう。曇り空だが、そんなに寒い気温ではない。 おそらく学芸会の前の心境になっていたのだろう。わかんないけど。  午後5時30分。横浜ベイスターズは三塁側。レフトスタンドが先 にびっしりになる。内野席もどんどん埋まっていく。早くも応援団が 太鼓を打ち鳴らし、トランペットを吹きまくる。  阪神タイガースの一塁側は、さすがにお客さんがポツポツ。  そのうち阪神タイガースの選手の1000試合出場だか、なんだか のセレモニーが始まる。失礼だけど、まったくどの選手だったか覚え ていない。もうあと30分で世紀の決戦が始まる興奮で、胸がドキド キする。いかん。かっか、かっかして来ている。2時間くらい前に血 圧の薬を飲んだんだけど、ここはもう1錠飲むことにする。この薬を 飲むために、水をたくさん飲んでしまったために、さらにトイレが近 くなってしまった。  午後5時50分。いよいよ阪神タイガースの選手が守備につく。 う〜〜〜〜〜。どう感動表現をしていいのかわからなくなっている。 とにかくここまで来たことを噛みしめる。  これがマジック1の試合なんだ。  あと1勝すれば、優勝なんだ。  優勝って一体何だろう?   優勝の味って、どんな味なのだろうか? 美味しいのだろうか?  そんな冗談が浮かぶ状態でなかったことだけは確かだ。  東京から放送作家の清正まなつサンが到着する。  根性で試合開始までに間に合う。  携帯で球場の外から嫁の電話に連絡が入り、嫁がチケット持って、 入り口まで持っていく。このベイスターズ狂想曲のシリーズのなかで 定着したチケット受け渡しパターンだ。  本当に携帯は便利だ。  もちろんまなつサンは、バックネット裏の席に驚愕する。  これで東京から来た5人が勢揃いだ。  そしてもうすぐ、運命の試合が始まる。          (横浜ベイスターズ優勝日記その2につづく)


横浜ベイスターズ優勝日記その2:10月8日(水)

 
 午後6時。試合開始。
 身体がぶるっと震える。
 ついにこの日が来た。いや、まだこの時点では、運命の日になると
はかぎらない。でも勝利しかイメージが湧いて来ない。
 いよいよ私も数年前に数万円したベイスターズ・ジャンパーに初め
てそでを通す。きょうのこの日のためにとっておいたわけではないが、
ずっと買ったまま着たことのないやつだ。
 さすがにきょうは着るぞ。
 グルメ・バカ娘もベイスターズ・トレーナーを上に着る。
 本当はグルメ・バカ娘は、ベイスターズ・ファンではないのだが、
親の影響というものはすさまじいものだ。自然に影響を受けて、すっ
かりベイスターズを応援することが楽しくなったそうだ。

 1回表。石井琢郎がバッターボックスに入る。
 細野くんの奥さんが、プラスチック製のメガホンバットを2本取り
出して、叩きながら「かっとばぜ〜、い〜し〜い〜!」と叫ぶ。
 その姿を見て、うちの娘が「本物だ。かっちょいーー!」と驚く。
 
 石井琢郎が、三塁ゴロに倒れる。
 波留が内野フライ。2死。
 まあ、1回表から点が取れるとは思っていない。
 鈴木尚典が、四球で塁に出る。四球で塁に出ただけで、ライトスタ
ンドはいつもの決勝点が入った時のような大騒ぎ。そんな四球ひとつ
ぐらいで、ここまで大騒ぎすることないの…と思っていると、ローズ
がレフトに大きな打球! 取られるかな。抜けた! 抜けた! 鈴木
尚典が、生還! 早くも1点先取!
 一挙に盛り上がる、レフトスタンド、三塁側。バックネット裏は報
道陣ばかりで、あまり盛り上がっていないのだが、私たちが並ぶ5席
は思いきり目立っていた。まなつサンが隣のおじいちゃんに話しかけ
られている。大阪在住なのに、ベイスターズ・ファンだという。本来
ならベイスターズを好きになった事情を聞きたいところだが、今は
それどころではない!
 
 先取点だ。先取点だ! 一気にたたみかけろ!
 ボテボテボテ…。
 まいった。駒田選手得意のボテボテ凡打であっさりアウトだ!
 それでも1点入った。もちろんチェンジのあいだもベイスターズ応援
団は興奮状態。勝利を確信する。

 しかし好事魔多し。1回裏。ローズがエラー。浜中にヒットを打たれ
るも、本塁でタイガースの選手が憤死。波留敏夫が送球して、谷繁が刺
す。今シーズンこのふたりの守備での活躍は、打者でいえば、3割打者
である。今年のゴールデングラブ賞は、ベイスターズが独占するぞ!
 やった、これで2死。今年はずっとこうしてピンチが好守備で救われ
て来た。
 …と思うまもなく、大豊選手が、斉藤隆投手からライトに大きな飛球。
ファウルかと思いきや、文句無しのホームラン!
 ベイスターズ側の席から悲鳴が上がる。
 1対2。逆転されてしまった!
 まだまだ、まだ1点差だ。
 まだ私は緊張しているのか、トイレに行く。
 すると泥酔し切った阪神タイガースのファンが怒鳴りながら、あとか
ら入ってくる。
「大豊のやつ、今頃打ちやっがって、バカ! シーズン中に打て!」
 さらにベイスターズのジャンパーを着た私の背中に向かって「チキシ
ョー! きょうのここはどこの球場だよ!」とはき捨てるようにいう。
甲子園球場がベイスターズ・ファンで埋まってしまったことが許せない
ようだ。
 甲子園球場の熱狂的なファンぶりは有名だが、ついに本物を身の危険
を感じながらも、初めて見ることができた。

 2回表。三者凡退。早過ぎるぞ。
 3回表。斉藤隆が幸運なヒット。石井琢郎もヒット。鈴木尚典がヒット。
これが同点打だとなる。
 同点だ。さらにローズだ、まだ点が入るぞ。
 ここで点が入らないはずがない。最低でも外野フライでも1点だ。
 しかし、なんと最悪の三塁ゲッツーで、スリーアウト!
 ひえ〜〜〜〜〜!
 そういえば、ローズは阪神の川尻投手を大の苦手にしていたのだった。
外国人選手は総じて、サイドスローの投手を苦手とする。アメリカでは
まずいない投げ方なので、タイミングが合わないらしい。歴代のどんな
外国人選手もそうなのだから、大リーグをめざすのは
横手投げ投手のほうが良いと思う。
 
 しかし4回裏。またしても大豊に打たれて、阪神に3点目が入ってし
まう。追いついても引き離される悪いパターンだ。
 さらに、他球場の途中経過が入る。報道陣が多いので、中日が大量
リードしているそうだ。こっちが負けて、あっちも負けての優勝は格好
悪いから、勝って優勝してほしいものだ。
 まだこの時期では、勝って優勝してほしいと強気だが、リードされて
しばらくすると、だんだん何でもいいから優勝してほしいという気にな
ってしまうんだろうなあ。
 バックネット裏3列目には、高木豊さんがいる。
 
 この辺から、さらに私の記憶が例によって、さだかでなくなってくる。
メモ帳を見ても、点数は書いてあっても、そのほかのことをまったく
メモしてしない。
 汚い字で、6回表・すぎやまこういち先生から電話とある。
 ああ、そうか、少し思い出したぞ。
「今は負けてるけど、きっと勝つよ、さくまクン!」という激励の電話
をくださったのだ。もう何がなんだかわからなくなってきた。
 劇的な場面を目撃することで有名な私が、ここまで準備万端で来てい
るのに、劣勢という事態にどう感情を抱いたらいいのかわからなくなっ
ている。負けるというイメージをまったく想像していなかったので、
「変だ、変だ」、「どうしたんだ、こんなはずじゃないはずだろ」とい
った単語しか頭の中に浮かんで来ない。

 気がついたら、もう8回表。
 試合自体がものすごく早い展開。
 応援団の太鼓、手拍子がいつもよりテンポが早い。応援団も気があせ
っているのだ。
 8回表。2対3。川尻投手の調子が良すぎるよ。
 さすがにきょうはダメなのかなと思いかけた。
 なにしろきょうはマイナスのイメージは、チケット取りで終了してし
まっているから、ハイパープラス思考が全開中である。なのに負けてる
から困ったものなのだ。
 
 お! 阪神吉田監督が審判のところに行く。
 むむ。ひょっとすると、投手を代えるのか? なんといううれしいこ
とをしようとしているのか? 
 これが通常の試合なら、回も8回だから適切な継投策だ。
 しかしきょうは特別な試合だよ。
 特別な試合というのは、ほんのわずかなミスで流れがガラッと変わる
ものなのだ。代えるのか? 代えるのか? 代えた!
 
 ヤッホー! 試合の流れが絶対こっちに来る。
 1試合に潮の流れが、2〜3回、あっちを向かったり、こっちに向か
ったりすると言ったのは、尊敬する元西武ライオンズ監督の森祗晶
(もりまさあき)さんだ。私は森祗晶の本をいちばん熱心に、人生の
道しるべとして読んでいる。
 とにかくこの瞬間、流れがこっちにも向かっているのがわかった。
 まだ阪神の弓長投手が、マウンドに上がる前のことだ。
 しかも優勝という劇的な場面には必ず語り継がれるような、場面と
いうものがちゃんと待っているのだ。
 そして何年たっても、あの時、○○○○していたら、○○○○ならば
という、いわゆる「たられば」の話が出るようになるのだ。
 まだどのマスコミも指摘していないが、運命の分かれ道は、絶対この
選手交代である。吉田監督最大のヒットが出た。そう私は確信した。
まさかそのすぐあとにその瞬間がすぐ訪れるとは、思ってもいなかった
けどね。
 そして運命の8回表。  鈴木尚典から始まる好打順も、いきなり三振。  おや? 私の勘ははずれたかな?  ローズが四球で歩く。よ〜し、よしよし。  ローズが打って出ないと、ちょっと劇的な場面はないかもしれないけ れど、まあ、まずは同点を期待しよう。四球から崩れるの確率はすこぶ る高い。  駒田が内野フライを打ち上げる。駒田は本当にタイムリーが打てなく なっている。  そして佐伯。対ヤクルト戦3連敗のあとのもやもやを吹き飛ばす3ラ ンホームランは本当に顔をくしゃくしゃにして泣いた。  もう一度劇的を見せてくれ!  佐伯が粘って、四球を選ぶ。  これでランナーが1、2塁。  さらにここで、吉田監督が選手交代を告げに、ひょこひょこ出てくる。 さあ、吉田監督! 運命を決定づける、采配ミスをするんだ。葛西投手 に代えるなよ! ベイスターズは葛西投手が苦手なんだ。 「ピッチャー弓長に代わりまして、伊藤!」  おお、伊藤敦規(いとうあつのり)だ。むむむ。葛西投手よりはいい が、なかなかの好投手だ。2年前ベイスターズに在籍していたこともあ る。協力してくれいっ!  バッターは谷繁。とても長打は期待できない。谷繁は腰痛で試合に出 てるだけでも精いっぱいの状態だ。たのむ、ライトにちょこんと打って くれ!  おお! 谷繁、デッドボール! 痛くないデッドボールだ。  これで満塁だ。伊藤投手、わざと軽くぶつけてくれたのかな?  さあ、ここで進藤選手だ。  どうして今シーズンはいつもチャンスがツーアウトからなんだろう。 でも今シーズンは2死から点を入れて、マシンガンが爆発していったん だ。進藤見せてくれ!  といっても、進藤選手も手首の状態が悪くて、この最後の連戦では、 打てなくてもいいから、試合に出て守ってくれればいいと、権藤さんも いっていた、守備の人だ。  あとの談話を聞くと、進藤選手は代打が出るかなと思ったそうだ。    もうこの1打は、何度もテレビで見た人も多いと思う。  低い弾道で右翼手の前にぽとんと落ちた時は、私はこれで同点だと思 っていた。すでにローズが本塁に帰って来ていたから、2点。逆転だ! 逆転! 4対3!  なおも追加点を期待する。  ここで、すぎやまこういち先生の奥さんから電話が入る。 「どこ? どこ? どこにいるの?」  バックネット裏のすぐ席にいるので、テレビでどのあたりにいるのか 確認しようとしているらしい。 「もう勝つわよ! 勝つわよ!」 「ハイ、ハイ、ありがとうございます」としか言えない。  残念ながら、追加点は入らなかったものの、とにかく逆転だ。  8回裏を守り切れば、9回裏は佐々木様の登場だ。  ヒゲ魔神(いがらし)かな? 阿波野投手かな?  いや、8回表から、佐々木様の登場だ!
   うお〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 〜〜〜〜〜〜〜!  球場がまっぷたつに割れそうな歓声だ!  そうか、やっぱり8回から行ってしまうのか。  グルメ・バカ娘も感動している。 「あたし、みんながよろこんでくれる姿を見ることができる仕事に将来 就きたい」と、泣けるセリフをいう。    佐々木様の1球、1球に歓声がわく。  圧巻である。あっというまに三人を全部2塁ゴロに討ち取る!  三振はないが、もう何でもいい!  9回表。いよいよ応援団の声は大きくなるが、私は3球で終わってい いから、早く9回裏になってくれ!  これはベイスターズの選手もそうだったらしく、鈴木尚典選手があま りにもあっけなく凡打したが、目がうるうるでまったくボールが見えて いなかったという。  さあ、いよいよ9回裏だ。  みんな立っている。元ベイスターズの高木豊さんがいつのまにか、 3列目の席から、8列目のうちの前の席に移っている。  しかし8列目と、うちの9列目には、通路がある。  気がつくと、すでに細野くんお奥さんは、前に出て、通路の手すりに しがみついている。それを見たグルメ・バカ娘も通路に飛び出す。もち ろん私もだ!    ああ、さらに佐々木様が私たちのほうを見て、フォークボールを投げ 込んでくる!!!!!  ああ、もう。ああ、何をしよう。どうすればいいんだ。浮かばない!  変だ、試合開始からずっと泣いているのに、ぴたっと涙が止まってし まった。どうしたんだ?  ああ、待ってくれ! どんどん佐々木様がフォークボールを投げ込ん で来る。  ランナーが塁にいるものの、ひとり、ふたりと連続三振を奪う。
   待ってくれい、佐々木様。  まだ瞬間をどうすればいいのか決まってないんだよ〜。  あ〜〜〜〜〜、新庄選手が豪快に空振り!  佐々木様が最後のバッターを三振に取るなら、新庄選手がいちばん似 合うと思っていた。その新庄選手から三振を奪って、ゲームセットだ!!!!!
   谷繁捕手が佐々木様のところに突進する。  ベンチから選手たちがマウンドに向かって走っていく。  胴上げだ! 権藤さんの身体が宙に舞う!    放送作家の清正まなサンが号泣している。嫁も泣いている。細野くん の奥さんが私に握手を求めてくる。もちろん泣いている。グルメ・バカ 娘まで、びーびー泣いている。  私はというと、気持ちは泣いているはずなのに、ぽか〜んとしてしま って涙が出ない。呆然として立ちすくんでしまったようだ。  それどころか、ちゃっかり高木豊さんのところに行って、握手しても らっているのであった。まったく意味不明!  高木豊さんも泣いている。  ここで初めてもらい泣き。  ベイスターズ・ジャンパーを着ているもんだから、顔を合わすお客さ んのほとんどが「おめでとう!」と言ってくれる。握手を求めてくる。 うちの席の隣にいたおじいちゃんとも握手。  どの人としゃべったか覚えてないけど、岡山から来たんだと必死に私 に話していた人がいた。気持ちは痛いほどわかる。  ここには、娘の学校を休ませてでも連れて来た、バカな親がいる。  娘が20歳ぐらいになったら、うちの親はとんでもない親だったこと に気がつくだろう。  でも私は学校で味わえない最高の教育をしたと思っている。  感動することを覚えたはずだ。  年配の人たちが、涙をぬぐっている。  おいおい泣いている初老のおじいちゃんがいる。  Wの帽子が小刻みに揺れている。Wのマークは、大洋ホエールズ時代 のマークだ。みんな待っていたんだ、この瞬間を。  ヒーローインタビューは、もちろん権藤監督。  何かを言っているのだけれど、球場は歓声でまったくその声が聞こえ ない。何だかわからないが、歓声を上げる。
   そして、あ〜〜〜〜〜と、大きくためいきをつく。  大洋ホエールズから横浜ベイスターズまで40年間ファンを続けてき て、うれしくて、ためいきをついたのは初めてだ。  もちろん、すぎやまこういち先生から電話が入る。 「おめでとう!」「ありがとうございます!」  ショッカーO野くんからも電話が入る。 「おめでとうございます!」  10数年前ショッカーO野くんがまだ私の事務所の社員だった頃、 大洋ホエールズが13連敗というとんでもない連敗を続け、事務所の経 営もピンチで、完全に私がノイローになっている時に、必死に私を励ま そうとして、九段下のラーメン屋さんで、お客さんがたくさんいるのに、 大きな声でテレビに向かって「がんばれ! 打て〜!」と叫んでくれた ことを思い出して、声がでなくなる。  とにかくその後も嫁の携帯電話は鳴りっぱなし。  誰も帰ろうと言わない。  ひたすら万歳を繰り返す。  つい最近不自由な左手がかなり上がるようになって、万歳がぎこちな くできるようになったのだが、万歳のしすぎで、手が上がらなくなる。 それでも右手を添えて、万歳だ!  だんだんお客さんの数が減っていく。  明日の朝までここにいたい心境ではあるが、球場が迷惑である。  かなり遅れて、やっと球場を出る。  午後9時30分。甲子園駅の前はものすごい人だかりだ。  どうやって帰るかも決まっていない。  細野君の奥さんは、大阪のホテルに向かう。  放送作家の清正まなつサンは、無理矢理甲子園まで来たので、ホテル 自体も予約していないという。  それなら京都のうちの来客用マンションに泊まればと誘う。  今からなら京都で、プロ野球ニュースぐらいは見ることができるかも しれない。  しかし残った4人は、どこから帰ろうか迷う。  阪神で梅田まで行って、そこから阪急電車か?  西宮までタクシーで行って、新快速にするか?  ほぼこの西宮コースに決まったのだが、いざタクシー乗り場まで行く と、こんな最高の日に、ちまちま電車を乗り継いで、京都に帰る気がし なくなる。  やっぱり、優勝の日だ! タクシーで京都まで帰る!  阪神高速で一挙に、京都へ向かう。  タクシーのなかで電話しなければならないところがたくさんあるから、 電車だと電話ができないせいもあって、タクシーだ。  宮路一昭くんに電話すると「ずっと携帯に電話してたんですが、ずっ とお話中でした。ビデオ録ってますよ〜」。  けっきょく宮路一昭くんはテレビ神奈川で深夜1時すぎまで横浜ベイ スターズのビデオを録画してくれたそうだ。  午後10時すぎ。京都に到着してしまった。  ものすごい早さで着いた。  さっそくテレビのリモコンをカチャカチャ。ベイスターズの優勝祝賀 パーティを見まくる。  これだけたくさんベイスターズの選手が民放放送に出演するなんて、 夢のようだ。  いつまでもいつまでもリモコンをまわして、次から次へとベイスター ズの選手たちの出演番組を見る。  なんとか午後2時ぐらいに床につくが、案の定寝つけない。  興奮しているわけではないのだろうが、ハイテンションが通常になっ てしまっているのだろう。  無理に寝ようとしても仕方ないので、関根潤三さんの『野球ができて ありがとう』(小学館文庫)を読む。関根潤三さんは3年間大洋ホエー ルズの監督をやっている。少しでも大洋ホエールズと横浜ベイスターズ に関係した本は全部読むことにしている。  おかげでさらに眠れなくなる。  午前4時が過ぎる。  こっちのテレビは深夜どの局も本放送が終了すると、ずっと高速道路 をずっと映し出している。  午前5時も過ぎる。  まったく眠れない。これはまいった。  明日はまた横浜球場で、優勝のセレモニーをやるという。何時から始 まるのかわからないから、早く寝ないといけないのに…。横浜ベイスタ ーズの選手たちもまだ起きているんだろうなあ。  そう思うと、気持ちやすらかになって、やっと眠りに入るさくまあき らであった。  こうしてさくまあきら46年間のなかで、最高の1日が終了しようと していた。46年間のうち、40年間もファン続けてたんだもんなあ。 夢は絶対夢で終わらないんだなあ。やめた時点で夢という言葉で終わっ てしまうんだな。  さくまあきらは夢の中でそう思っていたに違いない。
♪Oh Oh wow wow 横浜ベイスターズ  燃える星たちよ LET'S GO!  Oh Oh wow wow 横浜ベイスターズ  夢を追いかけろ〜 ♪


10月9日(金)


 午前7時。横浜ベイスターズ優勝の翌日。昨日けっきょく寝付い
たのは午前6時ぐらいだったそうだ。なのに目を覚ましたのは、
こんな時間。1時間くらいしか寝ていない。二度寝すればいいのだ
が、つい朝のワイドショーをチェックしてしまう。
 よしよし。さすがにワイドショーでも、横浜ベイスターズの38
年ぶりの優勝を取り上げている。
 でも、さすがに寝不足で眠いぞ。

 午前9時30分。京都ホテルの朝粥定食を食べる。その前にコン
ビニでちゃんとスポーツ紙を3部ほど買う。よしよし。全部横浜
ベイスターズが一面だ。なにしろ西武ライオンズが優勝した日の
こっちのスポニチの一面は「阪神田淵監督か!?」だった土地柄
だからなあ。すごく心配だった。

 午前10時57分。私、娘、清正まなつサンの3人は、新幹線
ひかりで、新横浜に向かう。嫁はおなじ新幹線に乗っているが、
そのまま自宅に帰る。
 新幹線に乗る前にまたスポーツ紙を5部ほど買う。これで京都で
売ってるスポーツ紙は全部買っただろう。
 しかしここで車中、とんでもない事実を知ることになる。
 なぜ私たち3人がこんなに早く新幹線に乗って、新横浜に向かう
かというと、きょう横浜球場で優勝のセレモニーがあるという情報
を入手したからだ。しかしそのセレモニーの開始時間がとうとう
わからなかった。
 なので午後6時の開始から逆算して、午後3時と推測。
 さらに午後3時から逆算して、この新幹線に乗ったのであった。
 しかしこのスポーツ紙を読んだら、優勝セレモニーは、きょうの
試合後にやると書いてあるではないか! が〜ん!!
 ってことは、推定午後9時以降?
 それは遅すぎるよ〜。時間が余りすぎる〜。
 かといって、今から東京に戻ってからまた行くのもなんだ。
 そのまま突き進むことにする。

 午後1時すぎ。新横浜着。タクシーで横浜そごうに向かう。
 タクシーの運転手さんが、新幹線1台前が横浜ベイスターズの
選手たちが乗ってきた列車だよと教えてくれる。それはくやしい!
 もう少し早く京都駅に着いていれば、おなじ列車だったのかあ!

 午後2時。偉大なる暇つぶしの開始。
 横浜そごうに到着。何はともあれハマの大魔神社にお礼参り。
 優勝記念グッズが無いかを物色する。
 あった。まずハマの大魔神社のテレカの予約受け付け中であった。
 1000円払うと予約できるのだが、そのテレカは10月26日
以降もう一度ここまで取りに来ないといけない。それってもう日本
シリーズも終わってるぞ!
 さらにそごうデパート側から、横浜駅を越えて、高島屋側まで歩
く。途中横浜ベイスターズ応援歌のCDを買う。
 高島屋に行く途中に、人だかり。横浜郵便局の優勝記念おたより
セットを販売中であった。あと残り150人分だという。罠にはま
っているなと思いつつも、私と娘と2セット購入。
 さ〜て、これからどこ行こう。
 やっぱり関内駅のベイスターズ・ショップに行くのが妥当と決め
つける。
 タクシーで関内駅へ。

 午後3時。関内駅。そういえばこの関内駅限定のイオカードを
ずっと前から売っていたことを思い出す。いつも試合開始ぎりぎり
で来ていたので、買うことができないままであった。
 関内駅の南口で販売しているというので、歩く。すでに寝不足で
けっこう歩いているので、わずかな距離でもきつい。
 やっと着いた南口みどりの窓口では、すでに佐々木様と鈴木尚典
のイオカードは売り切れ。とりあえず谷繁のイオカードを2枚買う。
 再び関内駅北口まで戻って、セルテ2Fのベイスターズ・ショッ
プに行く。想像はしていたけど、混雑なんてものではない。レジを
待つ人だけで、30人以上が行列している。
 これはとても物を買う雰囲気ではない。
 といいつつも気がつくと、たくさんグッズをかかえて、行列に並
んでいる私と娘であった。清正まなつサンは外で待っていると思っ
たら、いつのまにか後ろのほうの行列の中にいる。まなつサンは
先週来たばかりだからもう買わないと思っていた。

 午後4時。セルテ1F。文明堂の喫茶店。500円以上お買い上
げのお客様にもれなく横浜ベイスターズ優勝記念黒船サブレ贈呈に
つられる。しかし出て来た物は、ただの黒船サブレ1枚で、横浜
ベイスターズのマークが入っているわけでもない。
 ここでうっかりアイスクリーム入りカステラを食べてしまって、
お腹がいっぱいになってしまう。

 食後、中華街までちょっと遠いが、歩く。
 街は、横浜ベイスターズ優勝の文字でいっぱいだ。
 優勝便乗セールもいっぱいだ。
 優勝記念ガソリン値下げはわからないでもないが、ワゴンで優勝
記念コンタクト値下げはさすがに売る人もやる気がなさそうだ。
 ホテルの便乗ディナーを見つけ、これはここで夕食を食べないと
いけないなということになったが、よく見るとそのディナーの名前
が「大魔人」となっている。「大魔神」じゃないところに愛情が
感じられないと、まなつサン。そりゃそうだと、私と娘。
 そのまま中華街まで歩く。
 話題の優勝記念100円ランチもあった。
 どの店もどの店も横浜ベイスターズ優勝記念セールの文字が。
この文字の氾濫が私にはこの上なくうれしい。
 やっぱり人生勝たないといかんてことだね。
 いくらがんばっていても勝たないといけない。
 勝てば世間が動くってことだ。
 なんてことを思いながら、中華街を歩く。

 午後5時。9月の中旬ぐらいから野球場のお弁当ばかり食べてい
たので、中華街で食べようということになって、有名な聘珍楼(へ
いちんろう)に入る。ここの優勝記念サービスは、もれなくビール
を1本プレゼント。私と娘がビールはダメなので、まなつサンだけ。
 芝エビのタンメンを食べる。美味しいのに、さっきのアイスクリ
ーム入りカステラのせいで、お腹が苦しい。
 グルメ・バカ娘はというと、ネギワンタンを食べ、鶏肉とカシュ
ーナッツの炒めと、エビチリソースまで平然と食べている。娘も
さっきカステラを食べているはずなんだけどな。こいつの胃袋は
どういう構造になっているのだろう。
 さらにこのバカ娘は、この店を出て、5秒で、屋台のごまだんご
を買ってその場で食べるのである。まなつサンが「これが噂の食べ
っぷりね」と驚く。さらにちょっと歩いた先で、天津甘栗がほしい
と言い出すので「いいかげんにしろ」と止める。
 
 午後6時。横浜球場。対中日戦の試合開始。
 いきなり1回裏にベイスターズが2点を先取。昨日ビールかけで
ほとんど寝ていないベイスターズの選手たちにしては、ちゃんと
やるなあと思ったのもつかのま、その後ボコスカ打たれて、予定通り
7対2で大敗。エラーも続出。私も途中2イニングくらい寝てしまっ
たくらいなのだから、きょうは仕方ないだろう。
 それよりひとつだけ気になったことがある。
 レフトスタンドの中日側の応援席に「おまえら意地あんの?」とい
う横断幕があったこと。
 最初意味がわからなかったのだが、どうも終盤の優勝争いで、中日
が横浜ベイスターズ相手に7連敗したことに対しての横断幕のようだ。
 それにしても「おまえら意地あんの?」とは、何と汚らしい言葉な
んだろうか。星野監督がこの言葉を見て、なんと思うだろうか?
 何も優勝が決まった翌日にこんな横断幕を張ることないでしょ。
「星野さん、よくがんばった。来年こそVを」というのが筋でしょ。
 ファンなら何でも言っていいんだろうか?
 何だかすごく淋しくなる。

 午後9時すぎ。けっこうガラガラだった球場がどんどん人で埋まっ
ていく。気がつくと外野席までぶっちり。すでに大敗を喫してるのだ
が、人数が増えて来たので、ベイスターズの選手がヒットを1本打つ
だけで大騒ぎ。まるで優勝前の時の横浜球場だ。

 午後9時30分すぎ。いよいよ優勝セレモニー開始。
 大きな優勝ペナントを選手たちが裏返しに持ってしまって、球場中
が大爆笑! 一斉に「慣れてないからな〜〜〜!」のかけ声。
 ベイスターズ名物ウェーブが、何周も何周もする。
 何だかやっぱりこっちでのこのウェーブのほうがうれしいのは何で
だろう? この優勝セレモニーのほうが泣ける。甲子園という、よそ
ん家(ち)のイメージがあったからかな?
 清正まなつサンも泣いている。やっぱりこっちのほうが感動すると
いう。優勝セレモニーがあるとわかってると、自分の中に準備があっ
たせいかな? 甲子園は逆転してから、ゲームセットまでの時間が
あまりにも短すぎて、泣く準備がもうひとつ完璧でなかったような気
がする。

 それでもこの優勝セレモニーでも、多くの年配の方たちがいて、
みんなこっそり涙をぬぐっているのを見ると、じんと来る。ひとり
ひとりに話しかけたくなる。
 何度も何度も選手たちが、スタンドに駆け寄って、万歳をする。
 選手も観客も、いつまでもいつまでも万歳をやめない。
 いいねえ、優勝って。
 
 家に着いたときには、時計の針は午前0時を回っていた。
 ベイスターズおめでとうメールがすでに50本以上届いていると嫁
の報告。プリントアウトしてもらって読む。そしてさらに『プロ野球
ニュース』を見る。優勝セレモニーを見るために。
 優勝の余波はなかなかおさまらない…。



10月10日(土)


 午前中。横浜ベイスターズ優勝の日の日記を書く。
 大長編になるとは予想していたけど、書いても書いてもなかなか
甲子園球場にまでたどり着かない。
 優勝した日の夜中もかなり書いてたんだけどね。

 テンユウの杉沢さん、元社員で漫画原作者の石関秀行、『チョコ
バナナ』でもおなじみの澤良一くんの3名連名で、優勝おめでとう
のお花が届く。ホームランという名の蘭らしい。シャレてるなあ。
 ありがとうございます。
 正午すぎ。日記を中断して、新宿へ。  とんかつの王ろじで、昼食。  ここへ来る車の中からいろんな人に仕事の電話をするのだが「も しもし、さくまです」というと、間髪入れず「おめでとうございま す」と言われてしまう。うれしいやら恥ずかしいやら。私の横浜 ベイスターズ狂いの定着率はすさまじいものがある。  食後、紀ノ国屋書店へ行く。  社会復帰と思いきや、余波は続く。サンケイスポーツ増刊「横浜 優勝」のグラフ紙を買うために来ている。いちばん早い優勝本だ。   あとで家で読んだのだが、佐々木様や谷繁捕手の言葉にまた涙。 いい本だよ。これからもこういう本がたくさん出るんだろうな。 うふふ。全部買うよ、もちろん。  さらにコミックひろばのほうに行き、やくみつるサンの『ベイス ターズ心中』(泉書房)をやっと見つける。この1週間ぐらいずっ と探していたんだ。小出版の本はやっぱり見つけづらいことを満喫 する。まだ読みかけだけど、すさまじく濃いベイスターズ本だよ。 ここまで勝手放題の濃い本は二度と出ないだろうというくらいの名 著、いや迷著だ。  この間、携帯電話ですぎやまこういち先生と優勝祝賀の宴の打ち 合わせ。なかなかお互いスケジュールが忙しくて、まとまらない。 何度か電話をかけ直して、ようやく火曜日の夜に決まる。  午後4時。帰宅。日記の続きを書く。いよいよ試合開始の項にな り、あの場ではあまり泣けなかったのに、日記を書いているうちに、 おいおい号泣しはじめてしまった。何でだ?  午後6時。家ではりはり鍋で夕食。  何だかんだいいながら、ついスカイパーフェクTVで横浜対中日 戦を見てしまう。加藤博一さんのベイスターズ昔話がおもしろすぎ る。本にならないかなあ。  けっきょく午後10時ぐらいまでかかって、優勝の日の日記を書 き上げる。原稿料無しでこんなに長い文章書いたの初めてだ。


10月11日(日)


 午前中。浅草キッドの玉袋筋太郎くんから、横浜ベイスターズ優
勝おめでとうメールが届いた。原稿料払わないといけないくらいの
長文で、おもしろい文章。
 おめでとうメールの最後のほうに載せたと思うので、ぜひ読んで
ください。
 玉袋くんの性格好きだなあ。

 午前10時。表参道APETITOで食事。

 午前11時。東京駅。京葉線で、幕張駅に向かう。

 午後12時。幕張はどう見ても遠い。東京ディズニーランドが近
く思える。
 幕張駅は、ドリームキャストの垂れ幕でいっぱい。
 ドリームキャストの発表会に来たみたいだ。
 そのまま東京ゲームショーへ行く。

 会場はコスプレでいっぱい。ほとんどコミケ。
 これじゃマニアしかゲーム買わなくなっちゃうよ。
 
 タカラのブースを覗く。大々的に『さくま式人生ゲーム』が取り
上げられていて、感動する。今までこんなに大きくバックアップさ
れたことがなかったので、うれしい。
タカラの高田さんと
 思わずショーが終わったら、看板とかパネルをくださいとタカラ の高田さんに頼む。  ブースにいると、ファンの子が写真を撮らせてくれと寄ってくる。 「これからもいいゲームを作り続けてください」と言われる。  うれしいひとことだ。京セラのいいカメラを持っていた。  続いてハドソンのブースに行くが、アンケートを取ってるだけで、 ゲームが展示されていない。どうしたんだろう?   午後1時。タカラの高田さんと会場の食堂で昼食を取ろうとしたら、 『電撃王』の編集長・塚田正晃さんと、『電撃ドリームキャスト』の 編集長・長谷川真(通称・ハセガー)くんとばったり。  いきなり塚田さんに「おめでとうございます!」といわれる。  もちろん横浜ベイスターズのことである。  まったくだんだん自分が優勝したかのような錯覚に陥りそうだ。  さっそく甲子園まで行った自慢話を披露。  塚田さんはつい最近部長に昇格したそうだ。現場を離れるのはやは り淋しいという。出世なのだが、物作りをした人間はいつまでも物を 作り続けたいものだ。  午後2時。HUMANのブースに行く。  ショッカーO野くんが『御神楽探偵団』のイベントで司会をやると いうので、例によって驚かすためだけに行く。  まんまとショッカーO野くんがステージに上がって来たとたんに目 に入る位置に陣取ることに成功。目が合って、密かにこけるショッカー O野くん。これで今年の春の仕返しが出来た。
   帰り道。コスプレのお兄ちゃんから声をかけられる。  私立ジャスティス学園のコスプレかな? 柔道着を着ていた。 「さくまさんですか〜?」 「はいはい、そうですよ〜」と言って、通り過ぎようとすると、その 柔道着のお兄ちゃんが「ボクもベイスターズ・ファンです〜」と後ろ から叫ぶ。 「お〜、ベイスターズ・ファンか〜」と、私は思わず戻って、柔道着 のお兄ちゃんと握手する。忘れず甲子園まで行ったんだぜいっと自慢 話も忘れない。  午後3時。千葉駅に出る。JR内房線で、木更津に向かう。  のんびりした風景に、身体をぶるぶる震わせて必死に走る電車。  ひさびさにローカル電車の旅って感じだ。  午後3時40分。木更津駅に着く。千葉と木更津がこんなに遠く離 れていると思わなかった。  木更津といえば、土居(土居孝幸)ちゃんの実家がある町だ。  そのせいか、町の人がみんなノンキそうに思えてしまう。  何で木更津まで来たかというと、きょうは対岸の川崎に行く予定な ので、幕張から東京に戻ってから行くより、東京湾を横断するアクア ラインを通ってみようと思っていたのだ。  その川崎の対岸にある町が、この木更津なのだ。  午後4時15分。小湊高速バスに乗る。アクアラインを自家用車で 渡ると4000円取られる。これがバスだと、わずか1500円。 これは絶対バスにかぎる。それにしても4000円とは、高い。  日曜日のせいか、乗客が相当多いらしい。46人乗りの車内はほと んど満員。運転手さんが電話で、次のバス停に連絡している。  途中でお客さんを乗せたくても、乗せられない状況だという。臨時 バスを出すとか出さないとかいっている。  まあ、仕切りの悪い初老の運転手だ。アクアライン出来てからずい ぶん立つ。まだマニュアルが出来ていないのだろうか?  午後45分。映画『トゥルーライズ』に出て来たような、まっすぐ な道がいつまでも続き、要塞のようなものが見えて来て、そこが有名 な「海ほたる」だ。
 夕焼けがきれい。  バス停には、お客さんがいっぱい。また初老の運転手は混乱する。 バス停に到着しているのに「ちょっと待ってください」「すわってく ださいね」と言いながら、どこかに電話している。 「あと5人だけ乗れます」。  算数の最初のバス停で○○人乗り込みました。次のバス停で○○人 降りて、○○人乗って来ましたという問題を思い出す。    この海ほたるから乗って来たお客さんが「1時間半も待たされたよ」 と怒っている。そりゃひどい。  午後5時。浮島バスターミナル。浮島というから、途中の人工島だ とばかり思っていたけど、実は対岸。名前が浮島というだけのようだ。 それとも埋め立て地なのかな? あまり調べて来ていない。  午後5時20分。川崎駅着。途中「川崎球場」の文字に、小さく感 動。川崎球場は、横浜ベイスターズの前身である大洋ホエールズの 本拠地球場。『巨人の星』の左門豊作がいた頃の球場だ。漫画と現実 ごちゃまぜ。  私も子どもの頃なので、とうとう川崎球場で大洋ホエールズの試合 を観戦することができないまま、横浜に本拠地が移ってしまった。  さて、何で川崎に来たかというと、コンサート。  青春の塗りつぶしシリーズの第何弾かである。  子どもの頃あこがれた外人アーティスト、歌手などを一度見ておこう シリーズである。  3カ月前も、♪テケテケテケのザ・ヴェンチャーズを観た。ヴェンチ ャーズの次といえば、ザ・スプートニクスである。  30数年前ものすごく有名だったのである。 『霧のカレリア』という、40歳台以上なら知らない人がいないくらい の大ヒット曲を持っているバンドなんだけど、日記を読んでる人は全員 お父さんに聞いてみてください。  私としては、ヴェンチャーズよりもこのスプートニクスのほうが好き で、ずいぶんとコピーしたもんだ。  当時は楽譜なんてものが売ってないから、いわゆるレコード盤をすり 切れるまで聞いた。おかげで今でも、シャリショリ、シャリショリ、 シューシューというすり切れた音入りで、彼らのヒット曲を覚えている。    午後6時30分開演というので、その前に夕食。どうも川崎というと 焼き肉屋が多いイメージ。けっきょく焼き肉屋で、石焼きビビンバを食 べる。妙に似合っている。味もよかった。大将軍という名前のお店。  午後6時15分。川崎クラブチッタ。  予想はしていたけど、観客の数は100人ぐらい。むしろ100人も お客さんが来たことに感動する。ザ・ヴェンチャーズのように毎年来て いるなら、潜在するお客さんを掘り起こすこともできるが、この30数 年の間に、来日したのが、今回で4回目というのだから、 誰も知らないのが当たり前。  この私でさえ、ある日の朝日新聞の3面記事の下のコンサート情報の ところに、この「ザ・スプートニクス」という文字を見つけた時、身体 がイスから浮かぶくらい驚いた。まだ解散してないんだ? まだメンバー生きてるんだ? もう60歳過ぎてるはずだぞ。  これは青春塗りつぶしシリーズに思わぬ伏兵が現れた。  歓喜にむせびながら、嫁にチケットを取ってもらった。  6000円。高い。でも見ることができるだけでも6000円は安い ぞ。本当にあのザ・スプートニクスなんだろうか? メンバー全員死ん でいて、若い人だけで構成されたバンドなんじゃないだろうか? なに しろこの川崎クラブチッタに来るまで、まったく何の情報も入っていな い。『ぴあ』に載ったのだろうか?   例によって、平均年齢は確実に50歳を越えている。  私も観客としては若手。嫁なんか最年少のギャルだ。  午後6時30分。幕などないステージで、演奏開始。  うひょ〜〜〜〜〜、確かにザ・スプートニクスだ!  リードギターのボー・ウインバーグだ!  スウェーデンのバンドで、北欧サウンドの美しい音色とか、いろいろ 解説したいのだが、どう見ても、ただの近所のおじいちゃんがギターを 持って立っているという印象のほうが強い。  音色は昔のまんまで、うれしかったのだが、とにかくもう演奏が下手 まくり。ある程度は予想してはいたものの、下手にもほどがある。ふだ ん演奏していないのか、ヒット曲を次から次へと失敗する。  まるで文化祭の同級生のバンド演奏を聴いているぐらい、ひやひやす る。それどころか最初はひやひやしていたが、中盤からは明らかに演奏 を間違える。  必死に「これでもいいんだ、これでもいいんだ。生きてる姿を見るこ とができたんだから、満足しないといけないんだ!」と必死に言い聞か せている自分がそこにいた。  う〜ん。30数年前の私のバンドより、へたっぴーだぞ。
 プログラムに曲順が書いてあって「曲目は予告なく変更する場合も ございますので、予めご了承下さい」とあるが、本当に曲目を吹っ飛ば す。プログラムには数多くのヒット曲の名前が抜けていたのだが、その 曲を突然やってみたと思うと、聞きたい曲はやらない。  サービスがいいんだか、悪いんだか、まったくわからない。  どんな事情とどういう経緯で、今頃来日することになったのか聞いて みたくなる。  昔のバンドの曲は3分程度しかないので、30曲ほど演奏しても午後 8時30分に終了。今時午後9時を回らないコンサートなんてある?  釈然としない有り様に、帰り道、嫁に八つ当たりする。  心から怒っているわけではないのだが、とにかく釈然としない。  30数年後の同窓会で、憧れの女の子が年を取っていることは予想し ていたが、本当に年を取っていて、がっかりしたって感じなのかなあ?  同窓会が無いんでよくわからないけど。  帰りの品川駅から自宅までタクシーに乗ったんだけど、ラジオでまだ 横浜対中日戦を放送していた。  本当に早く終わったコンサートだ。  午後9時30分。くやしいので会場で買ったザ・スプートニクスの CDを聴く。しまった。なつかしくて、よけい憤懣やるかたなくなって しまった。逆効果だった。もうあきらめるしかないや。  ショッカーO野くんから案の定電話が入る。  ゲームショーで、登場した目線の先に私がいたことをくやしがってい た。声優の深見梨加さんも私が来ていたことに気づいていたそうだ。  ショッカーO野くんがくやしがってくれたので、きょう1日はよかっ た日ということにしよう。アクアラインも通ることができたし。  う〜ん、ザ・スプートニクス…。


10月12日(月)


 午前10時すぎ。嫁がチケットぴあに電話してくれている。
 日本シリーズのチケットを取ってくれようとしている。 
 電話予約だと、1コール2枚までしか買えないので、4人並んで
見ることができない。
 それに本当に私はセ・リーグ優勝で満足なので、日本シリーズは
チケットがあったら見たい程度。ゆっくりテレビで選手たちの顔の
アップが見たい。10月からほとんど球場にいたので、選手たちの
顔の表情を楽しむことができなかったからね。

 午前11時。レイアウターの野沢ちゃんが来る。
 野沢ちゃんも横浜ベイスターズの優勝の日の録画ビデオを持って
きてくれた。さすがアニメ・マニア。ちゃんと編集されたビデオだ
そうだ。ラベルもちゃんと横浜ベイスターズのロゴが入っている。
コンピュータで横浜ベイスターズとおなじロゴを作ったそうだ。
 こういう遊び心が無いと、この業界では生きていけないものだ。

 そして、野沢ちゃんといよいよ『桃太郎電鉄4コマ劇場2』の最
終チェックをして、きょう入稿だ。著者名は、たつきじゅん+チョ
コバナラーズとなった。
『桃太郎電鉄7・4コマ劇場1』の著者名は、何であっただろうか?

 午後12時20分。明治記念館でおなじみの牛肉カレーライスを
嫁と私と野沢ちゃんの3人で食べる。あいかわらずお肉が柔らかく
て美味しいぞ。
 食後、野沢ちゃんは原稿を入稿に、衆芸社へ。
 私と嫁は、東京駅へ。東海道本線で横浜駅に向かう。

 午後2時45分。横浜高島屋デパート。店内に横浜横浜ベイスタ
ーズ応援歌が鳴りっぱなし。何度聴いてもわくわくする曲だ。それ
がループで鳴り続ける。楽園だ。
 嫁は、横浜ベイスターズ優勝記念ワインを探すが、どこも売り切
れで入手できず。
 午後4時。やっぱり行ってしまうぞ、関内駅前セルテ2Fのザ・
ベイスターズ・ショップ。きょうもお店は超満員。優勝新製品も発
売されているようだが、またたくまに売れていく。
 このお店、昨年まで、いつ行っても、最高で3人くらいしかお客
さんがいなかったんだよ。今は30人以上がレジに並ぶんだから、
すごいね。
 きょうの買い物は、10月8日の横浜ベイスターズ優勝おめでと
うメールをくれた先着38名様に上げるプレゼントの購入。
 下敷き、シャーペンなどを買う。お一人様1商品3品までという
特別規定が出ているので、私と嫁と分かれて買う。
 メールをくれた先着38名様には、横浜ベイスターズのファンで
あろうとなかろうと、ベイスターズ・グッズを押しつけるので、
お覚悟を!
 嫁からの報告では、先着38名様の40数番目に、あの中尾淳が
いたそうです。笑わせてくれますねえ、こんな時も。外し方が絶妙。
五十嵐(ヒゲ魔神)投手の投球のようだ。

 午後4時30分。中華街の四五六菜館で、飲茶。
 このお店は亡くなった小説家の景山民夫さんが、中華街ではここ
がいちばん美味しいんだよと教えてくれたお店。教えてくれてから
もう20年の年月が立つが、あれから新館、別館と3件に店が増え
ていた。きょうのお店は中華街入り口の別館。
 エビチリも美味しいし、大根餅、餃子も美味しかった。
 飲茶なので品数が少ないと思っていたのに、テーブルが埋まるほ
どの量に、美味しいのだが、満腹で苦しくなる。

 ふい〜、ふい〜、と苦しみながら、横浜球場に向かう。
 午後5時。きょうは横浜ベイスターズの最終戦。
 今年一年間の仕事納めではないが、最終戦を見て、今年の優勝を
もう一度噛みしめようということになった。行く必要が無いと言わ
れればそれまでなんだけどね。どうも締めをしっかりしたいA型な
もんで。
 それでも幸せがちゃんとあったよ。
 入場者全員になんと、優勝記念シールをくれたのだ!
 放送作家の清正まなつサンの悔しがる顔が目に浮かぶ。  号外ももらったよ。  さらに試合前のスピードガン・コンテストは、きょうが最終戦と いうことでスペシャル。  各局女子アナが投球。NHKの久保純子さん、フジの西山喜久恵 さんといったところが続々登場。  さらに豪華なのは、横浜ベイスターズの駒田選手、石井琢郎選手、 佐伯選手もスピードガンに挑戦。最初投手で入団した石井琢郎選手 が、142キロの球を投げて、球場を湧かせる。速い!  お客さんを大事にすることでは、ベイスターズ随一の佐伯選手は、 やっぱりやりました。阿波野投手と、五十嵐投手の形態模写をしな がらの投球。  これだけでも最終戦に来たかいがあった。  試合のほうは、おそまつのひとこと。  9安打を放ちながら、0点。広島の野村選手に満塁本塁打を打た れて、4対0で負け。昔の横浜ベイスターズを見ているようだ。  それでもひとりでも選手が塁に出るだけで、球場が割れんばかり の声援を送る。まだまだファンは燃え続けてるなあ。  最後は選手が出て来て、一列に並んで、観客に向かって「ありが とうございます!」。ボールをスタンドに投げ入れて終了。  数年前、神宮球場の最終戦で、ヤクルトに勝てば、3位に浮上。 負けると最下位という試合を見に行って、見事負けた時のことを思 い出す。あのときは本当に悔しかったなあ。    きょうは負けたのに、1位だよ、1位。うれしーねー!  帰りに桜木町まで乗ったタクシーの運転手さんが、優勝が決まっ てから、1勝4敗というのが情けないというが、いいの、いいの。 全敗しても、優勝なんだから。この程度では、38年間の情けない 歴史に、これっぽっちも匹敵しないの。  これにて、わが家のベイスターズ狂想曲もめでたく終了だ。  長い間ご愛読ありがとうございました。


10月13日(火)


 朝、いろんな人に録画してもらった横浜ベイスターズ優勝ビデオ
を初めて見始める。甲子園球場で歓声でまったく聞こえなかった、
権藤監督のインタビューもやっとちゃんと聞けた。

 午前10時。ようやく『桃太郎伝説』のテストプレイを再開。
 う〜ん、まだ最大の売りの部分が入ってないなあ。
『新桃太郎伝説』の時、大好評だった、絶好調システムもまだなん
だけど、今回の大目玉・会心の経験値がまだ入ってないんだなあ。
 RPGで、会心の一撃ってあるでしょ?
 あれの経験値ヴァージョンなんだ。いいでしょ?
 
 経験値稼ぎって、一度勝てるようになった敵キャラと戦うのって、
ものすごくつらいじゃない。もう勝つのがわかってるからね。そこ
で大切なのが、珍しいアイテムを落とすかどうかだよね。
 でももはやこれだけでは、お客さんは甘やかされ続けてるから、
満足できないと思うんだ。
 そこで発案したのが、会心の経験値。いつもの倍の経験値がもら
える。さらに確率が少ないけど、4倍もらえる会心の経験値も入る
予定なんだ。
 さらに、さらに。強くなって昔の村に歩いて戻る時とかに、弱い
敵キャラと出会って、戦闘しなきゃいけないのが、面倒だよね〜。
 そこで、今回あるレベル差がついてしまった敵キャラは、ある
程度の確率で、向こうからあやまって逃げてしまう。これなんかは
ほかのRPGでも薄い確率で入ってるけど、『桃太郎伝説』では、
経験値とお金をちゃんと置いて行く。
 どうだ、おもしろいだろ?
 でもこれがまだ入ってないんだろう。だから本当に今のロムだと
経験値稼ぎがつらいんだよ〜。早くこのシステムがついてくれいっ!

 午後1時。渋谷。郷土料理のお店「九州」で、皿うどんセット・
850円を食べる。名前が九州とはシンプルすぎる名前だ。でも
ここの皿うどんは美味しい。ちゃんぽんもね。
 ただ滅法量が多い。はんぱじゃないボリュームなのだ。大食らい
の人には絶対お勧め。西武百貨店のA館とB館のあいだの道を入っ
て行って、ロフトのあるあたりの地下。

 午後2時。最近おなじみ渋谷パルコ前のタントン・マッサージ。
 ここ1カ月間野球場の急な階段を登り降りしていたので、足が
パンパン。足をほぐしてもらうのだが、痛い、痛い。
 
 午後3時30分。帰宅。『桃太郎伝説』の手直し原稿を書く。

 午後6時。一昨日録画した横浜ベイスターズの特別番組を見る。
吉田照美さんが司会の番組。昔の大洋ホエールズ時代のフィルムが
いっぱいの番組でうれしい。

 午後8時。新宿伊勢丹7F。毎度おなじみ正月屋吉兆。
 すぎやまこういち先生が録画してくださった横浜ベイスターズ
優勝の日のビデオをいただく。
 大の野球ファンのすぎやまこういちご夫妻と、心ゆくまで横浜
ベイスターズ談義。ベイスターズ狂想曲シリーズのラストを飾る
祝勝会となった。
 すぎやまこういち先生にも、日本シリーズのことを聞かれるが、
熱心な追いかけはしないつもり。テレビでのんびり見たい。
 今年いっぱいは優勝の余韻を楽しむが、来年からは、広くプロ
野球ファンとなる。
 午後10時すぎまで、野球の話で盛り上がる。
 すぎやま先生は中日のファン、奥様はヤクルトのファンなのに、
横浜ベイスターズを1年間応援ありがとうございました。



10月14日(水)


 午前11時。ムサシノ広告の伊東正義が来る。
 さすがにベイスターズ狂想曲の終了で、来客ラッシュが始まる。
『桃太郎電鉄』のCDドラマの打ち合わせ。

 正午。伊東正義の次の目的地が赤坂TBSだというので、いっし
ょに赤坂見附まで行って、鯛茶漬けの「皆美」で食事。
 食後もTBS側の喫茶店で引き続き、伊東正義と打ち合わせ。
 
 午後1時30分。帰宅。
 午後1時45分。レイアウターの野沢ちゃんが来る。
『桃太郎電鉄4コマ劇場2』の入稿報告を聞く。
 午後2時。『チョコバナナ』投稿者・神谷栄和が来る。
 午後2時すぎ。『チョコバナナ』投稿者のGW(門谷祥子)さん
と藤川かつらサンが来る。
 さあ、大変だ! 忙しいぞ!
 野沢ちゃん、神谷栄和と、12月10日発売の『宇宙人ショック』
の単行本の打ち合わせをしながら、GWさん、藤川かつらサンと、
アニメ企画の打ち合わせもする。


 ここでまた業務連絡。10月16日午後2時。読売広告の岩崎誠 が来て、直接アニメ企画の打ち合わせをするので、アニメ企画に参 加中の人で、来れる人は来てください。
 午後6時。原宿「鳥良(とりよし)」で食事。  午後8時。帰宅。  神谷栄和といろいろ業界の掟について、深く伝授。  午後9時。『チョコバナナ』投稿者・天街由佳子さんに電話。  新人漫画賞用の『大工さんは女子高生』の3回目の絵コンテにつ いて打ち合わせ。だいぶよくなったので、最後にもう一度大きく変 えてみようとアドバイスする。主人公がどうして大工さんになるの がイヤかということをもっと深く描いたほうがいいと教える。  大工さんが、ダサイからイヤではなく、どうダサイから嫌なのか ということをもっと具体的に書いて方がいいという。これはほかの 『チョコバナナ』の投稿者たちにも共通の欠点だから、みんな他人 事と思わないようにね。  午後10時。『桃太郎伝説』の手直し原稿を書く。


10月15日(木)


 午前11時。神谷栄和が来る。
 神谷栄和の単行本『宇宙人ショック』の写真素材を買いに、新宿西
口電気街に行く。
 神谷栄和が、私の弟子の原口一也のインターネット日記を毎日読ん
で、原口の読んでる本を買って読んでみたりしているというので、
それでは昼食は、原口一也お勧め「牛たんのねぎし」にしようという
ことになった。
 食後、ゲームを買ったりして、嫁とは新宿で別れる。

 私と神谷栄和は、新宿駅から、品川に出て、京浜急行に乗り換え、
上大岡駅に向かう。
 そういえば神谷栄和に行き先を行っていなかった。
 上大岡は、横浜の先、私が横浜方面に行くと言えば、もちろんそれ
は、横浜ベイスターズ!
 昨日読んだ週刊ベースボールに「横浜市内最大級のウイングベイ
スターズコーナーを開設中」とあった。これは行かねばなるまい。

 午後1時。上大岡駅ウイング。駅ビルなのだが、横浜ベイスターズ
優勝おめでとうのポスターはあるのだが、ベイスターズコーナーが何
階でやっているかの貼り紙がまったくない。
 嫌な予感がする。
 この情報は週刊ベースボールにしか載っていなかった。
 ベイスターズ・ファン・ネットワークにも引っかかっていない。
 ということは? 
 電話をして聞くと、3Fで開催中だという。
 3F常設コーナー。
 確かに市内最大級であった。広さが。その広さのなかにぽつんと、
ガラスケースがひとつ。そのなかにベイスターズ・グッズが並んでい
る。しかもそれはみんな私がすでに買った物ばかりであった。とどめ
は「こちらのコーナーでの販売はいたしておりません」という小さな
紙が!
 アホんだら〜! サギにもほどがあるぞ! こんなもん銀行のすみ
っこでやってる影絵展レベルじゃないか!
 便乗商法にもほどがある。くっそ〜。市内最大級に思わず放送作家
の清正まなつサンの悔しがる顔が浮かび、のこのことでかけた私がア
ホだった。くやし〜。
 清正まなつサンが高らかに笑う顔が浮かぶ。

 午後2時。このままではくやしいので、やっぱり行きます。
 関内駅前セルテ2Fベイスターズ・ファンの楽園「ザ・ベイスター
ズ・ショップ」。
 さすがにだいぶお客さんの数は減っている。
 おっ。ふっふっふ。やっぱり神は私を見捨てていなかったぞ。
 再び、清正まなつサンが悔しがる顔が浮かぶ。
 あの優勝の日、ビールかけの時に選手たちが着ていたあのヴィクト
リーTシャツが発売されていたのだ〜〜〜〜〜! ふっふっふ。
 おお、これだ、これだ。およ? あのときの紺のTシャツが無い。
白なら売ってる。係りの人に聞くと、紺は毎日午前10時に発売する
んだけど、午前中で売り切れてしまうという。テレビの威力は恐ろし
すぎる。
 再び、清正まなつサンが高らかに笑う顔が浮かぶ。

 それでも、せめて一太刀。白のヴィクトリーTシャツを買う。
 おお? これは何だ? あれは何だ?
 わっはっはっはっはっは!
 再び、清正まなつサンが悔しがる顔が浮かぶ。

 優勝マークが入った、クッションがある。スポーツタオルがある。
選手の背番号入りTシャツがある。キーホルダーがある。
 わっはっはっはっはっは!
 勝ち誇るさくまあきら。
 悔しさのどん底に倒れる清正まなつさんの姿が浮かぶ。

 このときのために、人間宅配便・神谷栄和を連れて来たのだ!
 あれも、これも! これも、あれも!
「さくまサン、さくまサン、商品はおひとり様おなじ商品2個まで
と書いてありますよ」と、神谷栄和が言う。
「何を読み間違えているのだ、神谷栄和! ひとり3個までだぞ、
3日前もそうだったんだ!」
「さくまサン、3日前も来てたんですか!」
「あったりめーだー、およ?」
 なるほど、貼り紙の3個までのところに、上から紙が貼ってあっ
て、2個とある。なんということを!

 仕方なく、いろいろ買った物を2個に減らし、どうしても欲しい
物は、神谷栄和と私が別れ、2個+2個の買い方をする。
 気がつくと、レジの金額は2万5000円を越えていた。
 う〜む。金をつかいすぎた。う〜、いかん、いかん。
 ええい、こうなったら、清正まなつサン!
 2万5000円もつかうぐらい、いっぱい優勝グッズが売ってた
んだよ〜。あの格好いい優勝マーク入りだよ! 品切れだった携帯
ストラップも入荷していたよ〜。
 ふ〜〜〜、これで気が晴れた。
 まなつサン、正直言って、来ないほうが身のためだよ。
 目の前で飛ぶように新製品が売れていくから、たいして欲しくな
いものでも、とりあえず買ってしまうから。
 あ〜、バーゲンセールのばばあと変わらんなあ。
優勝記念グッズの山
 午後3時。中華街まで歩く。  娘の好きなごま団子、肉まんを買う。  午後4時。もはや通い慣れた桜木町から、東横線で渋谷に。  渋谷駅で、週刊誌(ベイスターズのこと載ってるやつ、全部ね) を大量に購入して、帰宅。  ふい〜〜〜〜〜、疲れた。  午後5時。柴尾英令くんの『レガイア伝説』の体験盤をやる。  高低の奥行きのあるポリゴンが新鮮。  やっぱり文筆業出身のメッセージは読みやすいなあ。  ひさびさだよ。ちゃんと意味の通るRPGの文章が読めるのは。  戦闘も、かなり新鮮。  午後6時30分。サザンオールスターズのベーシスト・カズ坊 (関口和之)が来る。
関口和之ののほほんウクレレ講座『すぐ弾けるウクレレ』リットーミュージックより絶賛発売中!
 カズ坊の大の食い道楽だから、ひさしぶりに美味しいところに 行こうということに。カズ坊(関口和之)クラスの舌を驚かすに は、ふつうのところはダメだということで、とっておきの天現寺 にあるフランス料理のプティ・ポアンにすることにした。  神谷栄和は、甲府に帰る。  カズ坊(関口和之)の車で、プティ・ポアンに行く。  相変わらず美味しい。テリーヌとか、カキをコロッケの中に押 し込んだようなやつとか…、実は私はフランス料理があまり得意 ではないので、料理の名前と材料をここに並べることができない。
幸せなふたり
 さて、会計という段になって、カズ坊(関口和之)が支払うと いう。カズ坊(関口和之)ひとりで、うちは3人(しっかりグル メ・バカ娘がいる)だから、うちが払うというと「きょうは横浜 ベイスターズ優勝記念だから最初からボクが払うつもりだったん だ」。  ひえ〜〜〜〜〜、相変わらずやさしさ王のカズ坊(関口和之)だ。  そうとは気づかず、思いきり値段の高いお店に引っ張って行って しまったよ〜。面目ない。    とはいえ、バカ家族は帰路「あ〜、美味しかった〜」「あ〜、 食い過ぎて、お腹が苦しい〜」「う〜、座ると、苦しい」とつぶや くのであった。  午後10時。『桃太郎伝説』の手直し原稿を書く。  お腹が苦しくて、原稿が進まない。


10月16日(金)


 午前11時。新宿三越南店6F「地中海」で食事。

 正午。紀ノ国屋書店。横浜ベイスターズの緊急特集本の新しい本
が出ていないかをチェックする。もうそろそろ月刊ベイスターズが
編集した本が出るはずなんだけどなあ。
 と言ってるところへ、嫁の携帯が鳴る。放送作家の清正まなつサ
ンだ。
 私が昨日の日記で、さんざん清正まなつサンをネタにしてしまっ
たもんだから、きょうの午前10時に、横浜関内駅前のベイスター
ズ・ショップにグッズを買いに行ってしまったというではないか!
 いかん、ネタにし過ぎた! 業界人はこういう時、すぐ期待に答
えてしまう。しかもあれだけ欲しいグッズがたくさんあるから行か
ないほうがいいよといったのに、やっぱり! なんと3万円以上買
ってしまったそうだ。私より多く買ってるじゃないかあ!
 う〜ん、まなつサン、もうこの不毛な戦いに、終止符を打とうじ
ゃないか!
 …と、この時は本当にそう思ったのだが、3時間後ぐらいにまた
清正まなつサンが悔しがるようなことが起きてしまうのであった。
 
 午後1時、帰宅。
『桃太郎伝説』の手直し原稿を書く。

 午後1時30分。税理士の赤根豊くんが来る。
 終始決算は好調なので、もう少し無駄遣いして平気ですよという。
 しかし彼はこの1カ月間横浜ベイスターズ観戦、ベイスターズ・
グッズを大量に購入して、とんでもない散財をしていることをまだ
知らない。

 午後2時。『チョコバナナ』投稿者が続々到着。藤川かつらサン、
土産屋そりとんクン、GW(門谷祥子)さん。
 読売広告の岩崎誠も到着。
 宮路一昭くんも到着。
 打ち合わせがいっぺんに重なってしまった。

 まず岩崎誠中心で、アニメ企画の打ち合わせ。
 シナリオについてもいろいろ議論。やっぱり敵のキャラが肝だと
いうことになる。
 引き続き『当方見聞録』も打ち合わせ。

 そこへ宅急便が届く。なんと10月18日発売予定のCDアルバ
ム「横浜ベイスターズ 98年リーグ優勝記念オフィシャルCD 
VIVA YOKOHAMA」が2枚も入っているではないか!
 おお、これか! 今朝来たメールのなかに、10年ぐらい前に、
横山智佐の最初のレコードを発売してくれた、ポニーキャニオンの
須賀正人くんから、このCDアルバムを土曜日には届くように送り
ますという連絡があったばかりなのだ。
 明日ではなく、もうきょう届いてしまった!
 須賀正人くん、ありがとう!
須賀さんにいただいた『VIVA YOKOHAMA』のCD
 須賀正人くんというと、いつも年賀状のギャグを思い出す。  いつも名前の真ん中の2文字が大きく書いてあるのだ。  須賀正人。須{賀正}人。  賀正が名前に入っているのだ。  なつかしいなあ。うれしいなあ。  もう7〜8年会っていないんじゃないかなあ。  ご無沙汰してるのに、送ってくれるなんて、本当にうれしいよ〜。  現在須賀正人くんは、ポニーキャニオンを退社して、フリーの プロデューサーをしているそうだ。私の家はビクタースタジオの すぐそばの商店街だから、今度ぜひ遊びに来てね! お礼が言い たいし。  というわけで、打ち合わせ中にもかかわらず、ついこのCDアル バムを聴いてしまう。  おお! 佐々木様が新庄選手を三振に討ち取る瞬間のラジオ中継 が入っている。球場の歓声がものすごい。  う〜、ダメだ。また目がうるうるして来た。  あとでひとりで聴く〜。  気がつくと、また岩崎誠、宮路一昭くん、私のおじさんたちは 野球が大好きだから、野球の話に燃えてしまう。  まったく毎日優勝の時の話をしても、ちっとも飽きないんだから、 困ったもんだよ、私は。   午後6時。アニメ企画は、今後敵キャラのデザインを考えようと いうことで、終了。  午後6時30分。お好み焼きの「さくら亭」で食事。  藤川かつらサン、土産屋そりとんクン、GW(門谷祥子)さん、 私、嫁、娘。  藤川かつらサンが現在考えている漫画について、みんながアイデ アを出したりする。いよいよみんなが自発的にこういうことをする ようになって来た。 「選手の自主性にまかせる」。  権藤監督をめざすぞ、私も。  午後8時。帰宅。テレビ神奈川の横浜ベイスターズ特集を見なが ら、『桃太郎伝説』のだじゃれの第1弾をまとめる。早くもたくさ ん来ている。うれしい悲鳴だ。


10月17日(土)


 朝から雨が激しい。こりゃきょうの日本シリーズは中止だな。
 おおっ。今年の日本シリーズは横浜ベイスターズが出場するんだ
った。毎年日本シリーズはほかのチームが出るものだったから、天
気なんて気にすることもなかった。

 午後12時30分。青山のおひつ膳「田んぼ」で食事。
 私は初めて。おひつ膳と書いてあるだけで、ご飯が美味しそうで
にやにやしている。お店は貼り紙も大事だ。
 お米、無農薬有機栽培米。
 醤油、天然醸造純正醤油。
 味噌、無添加天然醸造。
 塩、天然ミネラル塩。
 海苔、佐賀有明産。
 きょうのお米、低農薬有機米新潟県頚城(くびき)産コシヒカリ。

 美味しそうな気がするでしょ?
 私は「栗炊き込みおひつ膳」1200円を食べる。
 まったく甘味をつけていない栗が、いかにも自然を大切にしている
みたいで、美味しい。おかずが、しめじを煮たものがひとつしか無い
けど、お新香も味噌汁も、いけてる。
 一汁一菜。戦国時代の武将の食事気分になって、うれしい。

 午後1時。雨の中、表参道を散歩。
 原宿表参道の古いアパートでいつも個展が開かれているので、覗
いて行く。
 おお、プラモデルのパッケージや、週刊少年マガジンの特集ペー
ジのイラスト、電気グルーヴのジャケットなどで有名な小松崎茂
(こまつざきしげる)さんの個展をやっているではないか!
 小松崎茂はもう83歳なのに、今もなお現役で絵を描いておられ
るようだ。すごいなあ。私なんぞ、早くリタイアしたくて仕方ない
のに、あと37年働いてやっと、おない年ってことだもんなあ。
 なつかしい戦記物のイラストに、未来イラスト。
 みんな見たほうがいいよと言いたいところだが、10月18日。
明日が最終日であった。

 午後2時。美容院。美容院にも横浜ベイスターズ・ファンの男の
子がいるので、待ってましたとばかりに「さくまサン、やりました
ね!」と言ってくる。もちろん、甲子園まで行ったんだぜっと自慢
する。飽きないなあ、この自慢話は。
 
 午後4時。ここ数日立派に日課になってしまっている、いろんな
人に録画してもらった横浜ベイスターズのビデオを見る。
 きょう観た10月11日TBSで放送された『緊急特番!男たち
の涙…横浜ベイスターズ優勝』は、本当に泣けて、泣けて、困った
もんだよ。
 よくある優勝の日の一日の選手たちやその家族を克明に追って行
くやつなんだけど、ドキュメントはこの手法が、古くさいけど、
けっきょくいちばん臨場感が伝わって来るね。
 佐々木様の最後の一球の時に、家族の表情が大写しになるのは、
わかっていても泣ける。佐々木様のお母さんが、去年亡くなった
お父さんの遺影を抱いているんだなあ。もう鼻水た〜らたら、ぐす
ん、ぐすんだよ。

 夕方、日本シリーズの中止が決定。
 ありゃ、この日程だと、どうやっても読売広告の岩崎が都合して
くれた第2戦は、仕事とぶつかってしまうな。
 まあ、いいや。日本シリーズはおまけだから。

 午後6時。放送作家の清正まなつサンが、あの優勝Tシャツの
レアな紺色をプレゼントしに来てくれた。うちのビデオを貸して
あげたりして、学生時代のレコードの貸し借りみたいで、楽しい。
 
 午後7時。新宿小田急「なだ万賓館」で食事。

 午後8時30分。帰宅。さらに横浜ベイスターズのビデオを観る。
 あとは鍼灸師の弓削くんを待つだけ。



10月18日(日)


 台風10号が日本海に抜けて、いい天気。
 きょうは小田原まで「一夜城祭り」というマニアックなお祭りを
見に行くつもりだったのだが、電話で問い合わせると、天候不良で
中止だという。小田原はまだ雨が降ってるそうで、火縄銃がつかえ
ないという。う〜む。まさに戦国時代。鉄砲は雨に弱い。

 もう一度ゆっくり寝る。
 ちょっと寝過ぎ。

 午後2時。元麻布の手打ちそば屋「千利庵(せんりあん)」で昼
食。初めてのお店。かなり美味しい。たぶん何度となく行くお店に
なりそうだ。おばちゃんの顔は怖いのに、接客はお見事。

 食後、すぐ近くのホブソンズで、アイスクリーム。
 この店は15年ほど前は、真冬でも100人近い行列が並ぶブー
ムで、一度もこの店で食べることができなかった。
 さすがに今は、いかにも古めかしさが先に立つ。
 とりあえずキャラメルクリームとかいうやつを食べる。
 甘〜〜〜い。口の中がべとべとする。

 午後3時。渋谷東急本店の前の本屋さん、ブックファーストに行
く。『権藤語録』(KSS出版)をやっと見つけた。横浜ベイスタ
ーズ権藤監督の本。想像はしていたけど、権藤さんが週刊誌やスポ
ーツ紙にしゃべったことをまとめただけの本。まさしく便乗本。
 わかっていても買うファン。

 午後6時30分。いよいよ始まる日本シリーズ。
 わが家では、今朝届いたばかりの函館海産物が食卓に並ぶ。
 イクラ、ボタンエビ、ホタテ、毛ガニ。
 豪華でしょう? 函館回線市場のお兄ちゃんに、もう5〜6年
ずっと電話一本で届けてもらえるシステムだ。

 豪華な食卓で迎える日本シリーズ。出場チームは、西武ライオン
ズと横浜ベイスターズ。最高の夜だね。
 グルメ・バカ娘はいつのまにか、イクラをよそう係を演じている。
何たってタッパいっぱいのイクラだからね。うれしそうだ。

 試合開始。うひょ〜、いきなり石井琢郎が、バントヒットだ!
 あれよ、あれよ! さっそく1点が入る。
 3回裏。マシンガン打線炸裂。連打、連打!
 あっというまに3点が入る。
 電話が鳴る。あっ、すぎやまこういち先生だ!
「いい調子だねえ、ベイは。シーズン通りの攻めだね。あっ、CM
が終わったから切るねえ」。
 すぎやま先生はいつもだと試合後に電話をいただくのだけれど、
きょうはやけに早い。しかもCMの間を利用しての電話だ。
 何だかこれは行けそうな気分になってくる。
 途中7対0まで点差は広がる。
 食後のデザートは、漫画家の細野不二彦くんの奥さんからいただ
いたマスカットを食べながら、余裕の観戦。細野環さん、ありがと
うございま〜す。京急のバスカードも入っていて、うれしいです。
今頃横浜球場で観てるのかなあ?
 こんなに横浜ベイスターズらしい試合展開になるなら、見に行き
たかったなあ。
 でもひさしぶりに選手のガッツポーズの顔がアップで見ることが
できるテレビはかなりいいね。

 午後10時すぎ。9対4で、横浜ベイスターズのいいところばか
り目立って、試合終了。勝っちゃったねえ。ちょっと佐々木様の調
子が危なっかしかったけど、満足、満足。
 すぎやまこういち先生と電話でしばし、野球談義。
 すぎやま先生は12球団まんべんなく見ているので、西武ライオ
ンズについてもめちゃくちゃ詳しい。
 パ・リーグでは、私は西武ライオンズが好きだったんだけど、
今年は予期せぬ球団が出場しているので、今年はごめんなさいだ。
 それにしても2年目前まで横浜ベイスターズにいた、デニー投手
が今は西武のリリーフエースとなって、登場した時、横浜ファンが
「デニー! デニー!」と声援を送るのがうれしかった。
 ファンも選手同様素晴らしいファンに成長している。

『桃太郎伝説』の原稿書き。
 アリtoキリギリスの石井くんから、原稿が届く。ここだけの話だ
けど、『桃太郎伝説』にはアリtoキリギリスのふたりが登場するん
だよ。お楽しみにね。



10月19日(月)


 朝から『桃太郎伝説』の原稿書き。

 正午。西麻布の和風料理「たまさか」に行く。
 まったくの住宅地にあるので、住所をたよりに探すしかない。目
印は皆無。
 でも玄関には、石畳に水が流れ、部屋は全部板張りだったりして、
趣があるお店。
 味も京都なら、並みのお店だけど、東京だとからり上位クラス。
 ちょっとした偉い人といっしょに来るお店としては間違いないい。
 岩海苔のみそ汁とか、カブ蒸し、サワラの西京焼きといった私の
好きな物が並んだから、点数が高いのかもしれない。
 味がよくても、どうも趣味に合わないという店もある。
 こお店は部屋ごとに、雰囲気も違うので、雑誌の対談などでつか
うと、おなじ店で何回もつかうことができていい。
 ただこの店、本当に広大な住宅地の真ん中にあるので、待ち合わ
せることができない。
 まだ出版人のつもりだから、お店に入ると、対談の場所にいいか
どうかを値踏みしてしまう。それにしてもゲーム雑誌は最近、ご飯
を食べながら、対談とか、取材ということがまったく無くなってし
まった。ゲーム雑誌も不景気なんだろうなあ。

 午後2時。新宿で何かとお買い物。
 ビデオテープ10本購入。横浜ベイスターズばかり録画していた
ので、またたくまにテープがなくなってしまった。
 カメラのさくらやで、プリンターを買う。横浜ベイスターズおめ
でとうメール先着39名様プレゼントで、ベイスターズ・グッズだ
けでは淋しかろうと、私のサイン入り優勝決定写真(日記に載って
たやつね)をハガキ・サイズにするためだ。
 まだ住所を送って来ていない人は急いでねえ!
 プリンターが大きいので、ひとまず帰ることに。

 午後3時30分。レイアウターの野沢ちゃんが来る。
 早くも『桃太郎電鉄4コマ劇場2』の校正も終了。あとは11月
10日の発売を待つだけとなった。
 きょう最後にもう一度読み直したけど、いい出来だよ。
 パート1より、格段に充実している。盛りだくさんだし、最後の
最後に飛び道具の1ページがあるし、早くみんなに見てもらいたい
ものだ。
 野沢ちゃんと、引き続き『宇宙人ショック』の単行本の打ち合わ
せ。『百点記念館』の特集号も打ち合わせる。

 午後5時30分。野沢ちゃんと新宿へ先に行く。嫁と娘はあとか
ら合流の予定。
 LDとビデオ作品を5〜6本購入。買ったはいいけど、いつにな
ったら見ることができるんだろう。

 午後6時30分。伊勢丹7Fの「香味屋(かみや)」で食事。
 嫁とグルメ・バカ娘も合流。
 ビーフシチューとメンチカツに、ライスを食べる。
 この店は洋食の老舗として、有名。
 さすが長年生き残るだけの味である。
 メンチカツでこれだけ上品な味は初めて。メンチカツは下品な味
もけっこういけるんだけどね。
 コロッケが主食の私たちの世代にとっては、メンチカツは一段上
のゴージャスなイメージが漂う。だから下積み時代、お金が入ると、
スーパーで、コロッケではなく、メンチカツを買う私は、威風堂々
の態度になったもんである。
 だからどうしてもいまだに、メンチカツは大好きである。
 などと思ってるうちに、日本シリーズが気になる。

 午後7時30分。ベイスターズ・ダイヤルに電話すると、1対0
でリードしているというではないか! これは急いで帰らねば!
 みんなを急がして、タクシーに飛び乗る!
 新宿からわずか10分ぐらいのわが家は本当に便利だ。

 午後8時前。帰宅。まだ1対0のままかと思っている間もなく、
横浜ベイスターズ得意の盗塁にタイムリーヒット。またまた横浜
ベイスターズらしい攻撃。
 しかも斉藤隆投手が、シーズン中でも見られないくらいの好投。
 鈴木尚典が4打数4安打!
 何だかどの選手も日本シリーズ中に、大きく成長しているような
気がする。
 9回表。とうとう佐々木様の出番もなく、斉藤隆が4対0で完封
勝利。もう夢みたいだよ。水島新司さんの野球漫画よりも鮮やかに
勝っているよ。完全に横浜ベイスターズにだけ向かって、風が吹い
ているようだ。
 シーズン中、あれだけ我を忘れて、泣いたり喜んだりして、もう
あれ以上の感動はもらえないと思っていただけに、どういう喜び方
をしていいのかわからないよ。
 ああ、浮足だって来た。
 せっかく日本シリーズはおだやかに見つめてあげよう。負けても
よくがんばったという言葉を用意していたのに。困ったなあ。



10月20日(火)


 午前11時。『チョコバナナ』投稿者・鳩畑鶏さんと原宿で待ち
合わせ。藤川かつらサンも同行。
 ラフォーレ原宿で食事。
 鳩畑鶏さんはまだ高校2年生。何と修学旅行の自由時間でうちを
訪ねて来たというわけ。ベイヒルトンホテルに泊まって、昨日は横
浜中華街で食事して、明日は東京ディズニーランドに行くという。
それで公立の高校というのだから、驚きだ。
 私の修学旅行なんか、悪評のひので号で、夜行列車で京都だった
ぞ。宿泊なんか民宿みたいなところだった。

 食後、鳩畑鶏さん、藤川かつらサンもいっしょに自宅まで行き、
生原稿を見たりして、漫画の話。鳩畑鶏さんも絶対プロの漫画家に
なりたい派なので、けっこう厳しいことを言っておく。
 でもおもしろい子だった。カエルが大好きで、きょうもカエルの
ものさしをさしていた。カエルのことを『当方見聞録』に描くとい
う。やれ! やれ! どんどんやれ!

 午後2時。藤川かつらサンと鳩畑鶏さんが帰る。
『チョコバナナ』の『百点記念館特集号』の原稿を書く。
『チョコバナナ』16巻の『チョコバナナチップス』16集の前に
『百点記念館』だけの特集号を送ろうと思っている。

 午後6時すぎ。最近私のお気に入りの和風料理屋「内儀屋(かみ
や)」で食事。私のなかではかなりランキング上位に急上昇のお店
だ。器もいいし、独創的な料理もいい。何よりご飯が美味しい。釜
で炊いたご飯だろうな。ついお代わりしてしまった。そのくらい美
味しい。

 午後9時。きょうは野球もないので、ほっとする夜。ひさしぶり
に高校時代の後輩に電話する。

 明日、西武球場のチケットが手に入るらしいんだけど、いろいろ
仕事を入れてしまってるんでどうしたらいいだろう。明後日は完全
に無理だし。珍しく野球に対して、雨が降って、試合が順延になる
ことを望んでいる。



10月21日(水)


 朝、完璧に寝過ごす。午前10時に家を出て、高円寺の整体さん
に行かないといけないのに、嫁が迎えに来たときは、まだ、ぐうぐ
うであった。
 先に行ってもらう。

 午前11時。高円寺の整体に行く。
 むむ。雨がポツポツ降って来たぞ。
 この調子でもっと雨が降れば、きょうの日本シリーズは中止にな
る。雨がもっと降れなんて思うなんてこと、子どもの頃以来だぞ。

 午後12時30分。高円寺のカレーハウス「ニャンキーズ」で食
事。ここのカレーは美味しい。ナスとひき肉のカレー 860円。
これがいい。ナスがちょうど秋ナスの時期なので、甘くていつもよ
りさらに美味しかった。
 なかなかほかには無い味なので、カレー通にはお勧め。
 高円寺南の商店街を入ってすぐ左のビルの2Fだ。

 店を出ると、さらに雨は強くなっている。いいぞ、いいぞ!

 午後2時。帰宅。
 『チョコバナナ』の漫画原稿を整理する。
 午後3時。コムナビ・コミックデパートの栗田さんが来る。
 インターネット上の新人漫画賞コンテストである「登竜門」の
審査員をすることになっているので、その打ち合わせ。
 さらに『チョコバナナ』に来ている漫画作品から、このコンテス
トに出品する作品を約10本手渡す。まだ実力不足かもしれないけ
ど、『チョコバナナ』の第2段階として、積極的に他流試合を試み
て行きたい。

 午後3時30分。放送作家の纐纈(こうけつ)幸博くんが来る。
 きょうの日本シリーズ第2戦のチケットを都合して、わざわざ持
って来てくれた。

 午後4時。きょうの日本シリーズが雨で中止が決定! やった!
 これで明日も雨なら、手に入ったチケットが全部つかえることに
なる。横浜ベイスターズの勢いが止まるのはイヤだけど、どうせな
ら3、4戦を見てみたいものだ。
 ま〜ったく、ファンというものは贅沢な物だ。 
 ちょっとでも勝ち目が見えて来ると、わがままを言い出す。
 でも見たい。明日も雨になあれ!

 タカラの高田さん、小沢くんが来る。
 11月4日に予定されている、さくま式人生ゲームIN国技館の
イベントの打ち合わせ。
 さらに来年以降のゲームの計画を話してくれた。
 うれしいことに、まだ発売前なのに『さくま式人生ゲーム2』の
話を具体的に話してくれた。またあのゲームを作れることは、この
上ない喜びだ。自分でも気に入っている作品だから、売れたら是非
作らせてほしいと言おうと思っていた。
『桃太郎電鉄』と並ぶ両エースになってくれたらいいな。
 ほかにもいろいろとゲームの計画の話が出たけど、これはまだナ
イショ。
 
 午後6時30分。タカラの高田さん、小沢くん、嫁、娘と、青山
の中華料理屋「ふーみん」で食事。ネギワンタンとか、納豆チャー
ハン、エビチリソース、どれも美味しい。
 何しろ手の込んだ料理なのに、注文するとすぐ出てくるのがいい。
 難点はとにかく混雑するので、会話の声が聞き取れないこと。
 それ以外、何の不満点もない、お勧めのお店だ。
 
 食後、雨の中を帰宅。
 またきょうも横浜ベイスターズのビデオを見るんだろうな。特集
号や週刊ベースボールも読むんだ。ちっともベイスターズ熱が下が
らないぞ。どうしよう? やっぱり不治の病かな?



10月22日(木)


 昨日の晩、すぎやまこういち先生が録画してくださったビデオを
見始めたんだけど、これが長い! もちろん横浜ベイスターズ優勝
の日のテレビ神奈川の緊急特番だったんだけど、なんと全部で4時
間。しかもあの日の民放キー局でちょっとしか放送しなかったイン
タビューのロング・ヴァージョンだから、早送りせず、じっくり見
てしまう。
 さすがに昨日の晩では、見切れなくて、きょうも朝からずっと続
きを見る。もうすでに日本シリーズが始まっているというのに、
まだ泣ける。困ったもんだねえ。けっきょく午前11時まで見続け
てしまうのであった。

 午前11時。ハドソンの中本常務と浦さんが来る。
 昨日のタカラさんに続いて、来年度以降のゲームについての打ち
合わせ。
 その前に、プレイステーションの携帯ゲーム機・ポケットステー
ションの途中経過を見る。先日ショッカーO野くんに録音してもら
った貧乏神の声が入ったミニゲームだ。なんと贅沢なことに、年末
『桃太郎電鉄7』を買うと、このゲームをダウンロードってやつか
な? ポケットステーションの中に入れることができるそうだ。
 発売するのではなく、販売促進につかってしまうのが、なんとも
大盤振舞だ。
 来年度のゲームについては、みんなの想像通りのゲームが出る予
定。その他にも、ちょっとおもしろいハードでも『桃太郎電鉄』を
出す予定。
 午後12時。中本さんが帰る。中本さんは、うちの嫁の視力矯正
の手術を勧めてくれた人なのだが、今度はまた視界を広げる手術を
するためにこれから札幌に戻るそうだ。
 どんどん改造人間になって行く中本さんである。おもしろいので、
手術前と手術後の目を比べられるように、デジカメで中本さんの顔
を撮っておく。
 午後12時30分。浦さん、嫁と3人で、最近やたらごひいきの 和風料理屋「穂積」のランチを食べに行く。ここのおそばは滅法美 味しい。このおそばが入ってるランチ食べたさに毎日でも通いたい ぐらいだ。浦さんもこのおそばの旨さに驚く。  業界人ランチツアーを組みたいぞ!  食後、近所のルナ・アンジェロでお茶を飲む。  どうもさっきからポケットステーションを見てるうちに、これを つかったゲームが浮かびかけては消えていく。もどかしい。  それでも浦さんに機能を聞きながら、アイデアが少しずつまとま って行く。  そうこうするうちに、レイアウターの野沢ちゃんから連絡が入る。  おっと、午後2時の約束をしていたのであった。もう家の前に来 ているという。急いで帰宅。  野沢ちゃんと、速攻で『百点記念館』の特集小冊子の打ち合わせ をする。来週末には発送できそうだ。  再び浦さんと『桃太郎伝説』の打ち合わせ。  いちばん新しいロムを見る。何度見ても58人パーティは笑える。  それにしても希望の都のマップは広い。 『桃鉄』のマップの4分の1の広さだそうだ。  しかも天然の迷路になっていて、ミニゲームができる場所や、 おばあさんを家に届けると、珍しいアイテムがもらえたり、ご存知 ショッカーO野司会の水泳大会に参加できたりと、おもしろいイベ ントが満載だ。難しい裏技ではないので、すごく親切で、新鮮。  せっかくこれだけおもしろいイベントがてんこ盛りなのだから、 なんとかして経験値稼ぎの苦労を軽減させて、テンポよくイベント を見ることができるようにしたい。  せでに前回のロムの半分の時間で、隣の村まで行けるようになっ ているので、これは順調だ。  それと前回のロムで絶好調システムが入っていなかったのは、入 っていなかったのではなく、バグだったそうだ。今回のには入って いて、やっぱりこれは痛快だ。  未発表のカードシステムも入り始めた。これはいい。まだこれに ついてはくわしく言えない。  それにしてもハドソンの高津くんが、今までの『桃太郎伝説』 シリーズのシナリオを見事に再現してくれているので、4コマ漫画 本を作るとおもしろくなりそうだ。作るつもりだよ、4コマ本は。    午後5時すぎ。やばい! 『桃太郎伝説』のロムを見ていたら、 こんな時間になってしまった。次の仕事に行かないといけない! 文化放送の録音があったのだ。  タクシーで急ぐ。急いでみて、二度びっくり。なんと文化放送ま で9分で着いてしまった。なんて近いんだ。時間に間に合ってしま った。  午後5時30分。きょうから私は『三石琴乃のエーベルナイツ2』 にゼミレギュラー入りすることになった。番組の中で『さくま式人 生相談』というコーナーを受け持つことに。べたべたな題名で笑え る。1カ月に1度くらい登場するそうだ。  この放送は、11月1日に放送予定なのだが、日本シリーズが 長引くと飛ぶ(延期になる)可能性があるので、みんなきょうは 横浜ベイスターズに勝ってほしいというが、どうもきょうは横浜 ベイスターズが不調。  どんどん点を取られていく。  5回までで横浜ベイスターズの投手が与えた四球が10個とは! これはいかん! あれだけ権藤さんが言っていた打たれてもいいか ら、四球を出すな!は、どこに行ってしまったのだ!  収録中も、テレビが気になって仕方がない。  番組自体は、前回も出てるし、イベントにも出たことがあるので、 アットホームな感じで楽しく出演することができた。  それから『さくま式人生相談』の方にハガキが来ないと淋しいの で、ぜひ番組を聞いて、ハガキを出してね。このインターネットで も募集するけど、やっぱり局の方にハガキが来ないとね。
三石琴乃さん   さくまあきら、豊口めぐみさん、今村良樹くん
 午後7時30分。録音終了。急いで帰宅。  まいったな〜。7対1で負けている。これはさすがのマシンガン 打線でも無理だ。  きょうの午後、あの中尾淳から『当方見聞録』の原稿が届いたせ いではないか? あいつから原稿が届いた日は、いつも横浜ベイス ターズが負けているぞ。まあ、中尾淳のせいにした方が世の中丸く 収まるから?、そういうことにしておこう。  中尾淳をご存知ない方へ:  手足の不自由なさくまあきらの鞄持ちのバイトを始めるも、本当 に鞄を持つことしかできず、レオナルド・ヘマップリオの称号をも らう。人間の持つ怠け癖を、赤裸々に表現する男として、日記の中 だけで活躍する。現在出入り禁止中。   午後10時15分。7対2で敗北。  このまま日本シリーズの流れが、西武ライオンズの方に行くとい けないので、明日は必ず見に行くぞ! 


10月23日(金)


 くそ〜! せっかく西武ライオンズに傾きかけた日本シリーズの
流れを、横浜ベイスターズに戻してやるんだと、西武ドーム球場ま
で行ったのに、4対2で負けてしまったあ! くやしい〜!

 午前11時。原宿じゃんがらラーメンで食事。
 すでにきょうは球場に行くのだから、いつものように近所のおけ
い寿司に行って、ゲンかつぎをするのをコロッと忘れていた。

 食後、ノンキに原宿界隈を散歩。ここ1カ月ぐらい横浜ベイスタ
ーズの追っかけばかりしていて、原宿を歩いていなかった。
 原宿は1カ月も歩かないと、新しい店が出来ていたり、お店が変
わっていたりする。
 nWoの専門店なんてあったりして、私にとっては横浜ベイスターズ
の三浦投手と鈴木尚典が好きな団体というイメージだが、好きな人
にはこたえられない店なんだろな。

 午後1時。『チョコバナナ』投稿者のこんにょサンが来る。
 新人漫画賞に応募する作品の絵コンテを見る。
 いい出来だ。もう少し敵役をいじわるになどとアドバイス。
 こんにょサンは今後、樹野こずえというペンネームに変えて、
新人賞に応募することになった。樹野こずえ(旧・こんにょ)サン
ということになる。
 岩岡目々さんの新人賞応募作品を見る。
 絵コンテのときより、さらにいい出来になっている。

 樹野こずえ(旧・こんにょ)サンといい、岩岡目々さんといい、
早くも『チョコバナナ』16巻の作品より、何倍もいい作品を描
いてしまうのだから、いまだチョコバナナ軍団の勢いは衰えるこ
とを知らない。正直言って、『チョコバナナ』16巻は最終刊で
気合いが入っていたから、半年間はみんな低迷すると思っていた。
 ところがあっさり16巻の作品を抜き去ってしまうのだから、
本当に恐ろしい。
 『当方見聞録』も最近続々到着してるんだけど、これもまた
16巻の『バナナDAYS』のレベルをみんな、あっさり抜き去
っている。いいねえ。若いって! 二段飛び、三段飛びで成長し
て行く。
 すぐにとは言わないけれど、近い将来『チョコバナナ』出身の
漫画家たちが世間を賑わす日が来るのは、夢ではなくなりそうだぞ。

 午後3時。増田景子さんが来る。いろいろ『さくま式人生ゲー
ム』のその後の報告。
 
 この時激しい雨が降って来て、きょうの日本シリーズは雨天中
止の方に気持ちが傾いてしまった。

 午後4時。インターネットやベイスターズ・ダイヤルに電話し
ても、正式な中止が発表にならない。
 そんなこんなで、中途半端な気持ちな西武ドーム球場に向かう。

 西武ドーム球場と言えば、西武線なのだが、どうもこの西武線
はいかん。里心が出てしまう。何しろ西武新宿線上井草駅のホー
ムの隣りに生まれ育った私は、実は西武ライオンズびいきでもあ
るのだ。
 20年前、西武ライオンズが発足した時も、ファンクラブに入
っている。西武線の車内や駅に貼られた、西武ライオンズの試合
速報のポスターをずっと見て来ているのだ。

 というので、西武線を避け、JR立川駅からタクシーで向かう
ことで、気持ちを横浜ベイスターズに集中しようとする。
 しかし思い返せば、私が一番好きな監督は、森祗晶なのだ。
 森祗晶さんと言えば、まさしく西武ライオンズの元監督だ。
 いかん、いかん。ますます集中力が薄まっていく。
 トドメは、タクシーだ。西武ドーム球場に近づくと、村山貯水
池のまっすぐな細長い池を渡る道を通る。ダメだ! ここは高校
時代、毎年マラソン大会が開催された道だ。ああ、この坂道は苦
しかったなあ。やっぱり私は西武沿線っ子だ! ダメだ、きょう
の敵は西武ライオンズであって、西武新宿線では無いのだ! と
無理やり自分に言い聞かせる。

 午後6時20分。試合開始と同時に到着。
 ダメだ。またしてもダメだ。私はこの球場はいつも西武ライオ
ンズを応援しに来るために来ている。たのきんトリオとかサザン
オールスターズなどのコンサートの仕事でも来てはいるが、どう
にも西武ライオンズ・ファンの頃に戻りそうだ。
 それでもブルーの横浜ベイスターズのユニフォームを見れば、
やっぱり40年間人生を共にした、この球団だ。西武新宿線に
43年間住んでいたけど…、ダメ、ダメ、そういうこと考えちゃ!

 まあ、そういった私の複雑な気持ちを抜きにしても、やっぱり
野球は、投手力だということを思い知らされた試合だった。
 西武ライオンズの石井投手の出来が良すぎた。
 あの出来から、2ランを打った鈴木尚典は偉いし、9回表、
ツーアウト満塁で、一打逆転まで追い上げた横浜ベイスターズは
立派だと思ったほうがいいだろう。
 もともと日本シリーズなんかに出ること自体、夢のまた夢だっ
たんだ。来年以降の横浜ベイスターズの選手たちのことを思えば、
まだまだ発展途上、勉強の時期かも知れない。
 しかも私が球場に行くと、横浜ベイスターズが勝つと信じてい
る、ベイスターズ・ファンのみなさん、きょうはみなさんに心か
ら謝らなければならない!
 球場で必死に応援はしたのだが、とにかく底冷えのする西武ド
ーム球場。寒くて寒くて、足が固まりそうな寒さ。
 この寒さについ、尿意を催し、トイレに向かった隙に、あの
マルティネスのホームランが出てしまったのだよ〜〜〜〜〜!
 ゴメンよ〜! 寒かったんだよ〜!
 何しろ超満員なのに、西武球場はトイレがたった2つしか無い
から、うっかりぎりぎりまでガマンしてると、もらしてしまうく
らい混むんだよ〜。しかしその隙にマルちゃんが打つと思わなか
ったよ〜。この日本シリーズで1本のヒットも打っていなかった
から、つい油断してしまったよ〜。くそ〜。

 あとがまた大変だった。午後10時に終了したはいいけど、
西武電車は超満員。タクシーはまったく来ない。仕方なく乗った
立川駅行きの西武バスは、大渋滞でのろのろ運転。1時間かかっ
て、立川駅にようやく到着した。

 家に着いたのは、午前0時。
 さすがに所沢までは遠かった! 負けただけに帰り道は余計
遠く感じる。明日は、家でテレビ観戦にしよう。



10月24日(土)


 きょうも朝から雨。
 午前11時。高田馬場の「ザ・ハンバーグ」で食事。
 嫁、娘、私の3人。
 ここは食事にあまりお金をかけたくない人にもお勧めのお店。
 何人かで行って、150グラムの一番小さいハンバーグと、子牛
のカツレツも頼むのが、2倍楽しめていい。

 午後1時。西葛西の東京コミニュケーションアート専門学校へ行
く。嫁と娘もいっしょ。
 この学校の担当の石毛先生というのがまた大の横浜ベイスターズ・
ファンなので、ついベイスターズ談義を始めてしまう。
 午後1時30分。特別講義開始。
 きょうの講義は、私のゲーム作りを全部公開の予定なのだが、昨
日の横浜ベイスターズの敗戦ショックもあって、頭の中の90%以
上が横浜ベイスターズのことでいっぱいなので、危ない話の時に、
歯止めがきかない。つい危ない話をぺろぺろしゃべってしまう。
 しかも妙にみんなに受けるので、さらに危ない話をべらべら、
べらべら。本当にやばいぞ!
 午後3時すぎ。講義終了。業界暴露話で終始通してしまった。
もう言ってしまったからいいや。福岡校でもこの話しちゃおうかな?

 午後4時。銀座で買い物。やっといい靴が見つかったのだけど、
靴ってどうしておなじ型の靴を、量産しないんだろうなあ。
 靴ってけっこうしばらくしないと、足に合うかどうかがわからな
いことが多い。合うとわかって、この靴をもう一足買いたいという
時に、おなじ型がまず無い。
 とくに今、私は足が不自由なので、新しい靴を降ろすと、とたん
に歩きづらくなる。まだ足の方に柔軟性が無いのだ。

 午後4時30分。ごひいきのお寿司屋さん「鮨金(すしきん)」
を覗くが超満員。断念する。
 おもちゃの殿堂・銀座博品館をうろうろしながら、どこに食べに
行こうかと思案する。
 食い道楽母娘は、また「たれぱんだ」を買っている。

 午後5時。まだグルメ・バカ娘に、お寿司業界では老舗中の老舗
である「久兵衛(きゅうべい)」を食べさせていないことに気がつ
き、どういう評価をするかを試してみようということになった。
 「久兵衛(きゅうべい)」は、食い道楽なら一度は訪れないと
いけない聖地のようなところだ。
 昔食い道楽娘・横山智佐をここに連れて行ったら、あの大きな目
玉がぽろっと落ちてしまったというぐらいの味である。
 
 さて、「久兵衛(きゅうべい)」は、さすがに老舗の味で、奇抜
な作りとか、驚かしはまったくなくて、正攻法で来る。いわゆる野
球でいう140キロ台のスピードを出せる速球派だ。
 ただ穴子はふつう、ほろほろと柔らかく作るのだが、ここはカリ
ッとさせる。
 この変化球もなかなか決まっている。…とそろそろもう心は日本
シリーズに移ってるんだよ〜〜〜〜〜。
 でも最後の玉子は絶品だったなあ。まるで佐々木のフォークみた
いだ!
 ところがグルメ・バカ娘の採点はというと、手厳しい。
 酢飯の味がいまいちだという。小学生のクセして、寿司のネタで
はなく、ご飯にケチをつけるか?
 確かに、ご飯の酢がちょっと強かった。
 というわけで、娘にとっては、人形町の喜寿司のほうが上なのだ
そうだ。

 午後6時。本屋さんに寄って、わが家恒例のいいことがあった時
のお祝いにつかう不二家のショートケーキを買いに行く。
 ずっと横浜ベイスターズ・セ・リーグ優勝を、不二家のショート
ケーキで祝ってなかったのだ。
 いつものように不二家のショートケーキ3号を買う。
 病気になる前は、5号をたったひとりで食べていたことを思い出
す。痩せてみて始めて、ぞっとする。恐ろしい食べ方をしていたも
のだ、ホントに。

 午後7時。1対0で、横浜ベイスターズが勝っていることを知る。
 早く帰らなきゃ! きょうは朝から気合いが入っているんだ!
 午後7時30分。帰宅。おお! 2対0だ!
 めでたい不二家のショートケーキを食べながら、声援を…おお、
おお! マシンガン打線が大爆発だ! 行け〜〜〜〜〜!
 6回で、7対2とリード! これはいい!
 8回には、10対5! ちょいと打たれたけど、愛嬌、愛嬌!

 午後10時。鍼灸師の弓削くんが来る。治療をいったん始めたけ
ど、テレビが気になるので、いっしょに見ることにする。中断。

 9回になってもまだマシンガン打線は止まらない。
 とうとう17対5。20お安打の日本シリーズ新記録。
 何もきょうこれだけ打つことないのに。
 相変わらず漫画のシナリオだと、リアリティが無いと指摘される
ような攻撃だ。
 さらにここで9回裏。佐々木様が調整のために、12点差なのに
登板。ますます漫画を越えている。
 まあ、とにかく日本一に王手!
 でもまだ西武ライオンズには、潮崎投手がいるからなあ。
 ああ、横浜球場のチケットが無いのが悔しいなあ!



10月25日(日)


 朝から昨日の横浜ベイスターズの活躍をテレビで見ようと、リモ
コンを押しまくるが、どうもワイドショーとの相性が悪く、いい
タイミングで見ることができない。

 午後1時。先日食べて美味しかった、おひつ膳「田んぼ」に行こ
うとしたら、表参道店は日曜休み。本店が代々木にあるというので、
行ってみる。
 まったくおなじ料理なのだが、どうして本店と支店とでは、微妙
に味が違うのだろうか? それが人間の技の差なのだろうなあ。
 目玉のご飯が圧倒的に表参道店のほうが美味しい。
 まあ、おひつ膳1000円は、内容もバラエティに富んでるし、
お勧め料理。代々木ゼミナールの先、道路の右側だ。

 食後、またぞろ横浜関内のベイスターズ・ショップまで行きたく
なるのだが、どうせならもし日本一になるなら、なってから行った
ほうがいいかなとも思って、断念。あと1勝に迫って、もぞもぞす
る気持ちをベイスターズ・ショップに行って、静めたいだけなのだ
ろうなあ。

 どうせ代々木まで来たのだから、明治神宮の明治維新展を見に行
こうと思って、北参道より、明治神宮に入る。
 しかし、これがえらい目に会った。北参道には案内板が無くて、
宝物殿までの看板が無い。しぶしぶ歩いて、もうすぐ原宿方面に抜
けてしまうぞという地点に、宝物殿への矢印があった。すでに砂利
道で相当体力を消耗しているので、やめようかとも思ったのだが、
せっかくここまで来たのだからとい、矢印の方向に向かう。
 ところがこれがもううっそうと繁る森のような道。まるでトトロ
が現れそうだ。
 すでに歩くこと1時間以上。足がもつれ始める。
 どう考えても矢印の方向は、さっき入ってきた、北参道のすぐ
そばに向かっている。あきらかに戻っているのである。だったら、
入り口に矢印がほしいではないか! 明治神宮は案内板の設備がほ
とんど無くてわかりづらい。あれだけ広くて、間違えてもタクシー
に乗ることもできないような場所なのだから、案内ぐらいはしっか
りしてほしい。
 ようやく橋を渡り、芝生が広がる。まったく上がらなくなった足
にむち打って、芝生に倒れ込む。
 やっぱりまだ明治神宮は早かったようだ。  原宿に引っ越して来てから、一度は明治神宮を訪れようと思って いたのだが、あのけた外れの広さに今までチャレンジできずにいた。  最近どんどん歩けるようになっていたので、もういい頃合だと踏 んだのだが、甘かった。  宝物殿に入る。しかし歴代天皇の肖像画がずらりと並んでいて、 明治維新の英傑たちの絵がひとつも無い。  へろへろになった足で、宝物殿を出ようとすると、明治維新展は、 宝物殿「別館」であることが判明する。宝物殿の受け付けにこの 貼り紙がほしいよ、まったく。  午後3時。宝物殿別館まで行く気力など毛頭無く、参宮橋口から やっと外に出る。喫茶店に入りたいが、いよいよ吐き気がしてくる。 もうダメだ。タクシーで帰宅。  午後3時30分。寝る。  午後6時30分。何度も目は覚めるが、疲れが取れず、何度も寝 る。『ひょっとして馬鹿?』(堀井憲一郎)を読んだりする。  午後7時。西麻布の和風料理屋「茶寮つくし」に初挑戦。  牛肉の網焼きが美味しい。そのほかの料理もなかなか。どうして 美味しい料理屋さんは、西麻布に固まっているのだろうか? 昔か ら芸能人がよく西麻布で遊んでという話を、芸能界にいた頃耳にし たけど、こういうお店がたくさんあるからなんだな。  とんねるずが、♪雨の西麻布〜、と歌った、あの西麻布である。  JRの駅も私鉄の駅も近くにないのに栄えるなんて、東京という 街は不思議なところではある。


10月26日(月)


 嗚呼! まさかこうして横浜ベイスターズへの応援ありがとう!
と書けるとは思っていなかったよ〜! 本当にありがとうね!
 それにしても最後はどきどきしたねえ。
 佐々木様があんなに苦しむなんて、そりゃ緊張しないほうがおか
しいよ。すでに私の心臓は5、6秒間止まってたもんなあ。
 あ〜〜〜〜、うれしいねえ。
 本当に横浜ベイスターズは日本一になっちまったんだねえ。

 例によって、優勝した瞬間から、携帯電話が鳴り、電話が鳴り、
FAXが鳴る、近所で最もうるさい音を発する家になってしまった。
 娘はチャンスとばかり「優勝アイスだ!」と叫びながら、アイス
クリームを食べ、チョコレートまで食べている。早く寝ろ!

 きょうはしみじみこの喜びを味わうから、横浜ベイスターズ・ネ
タはこのくらいね。

 午前12時。新宿「中嶋」のランチを食べる。
 三越南館の裏にある割烹料理屋。
 いわしの刺身定食と柳川鍋を食べてみる。800円という安さは、
サラリーマンにはお勧めの味だ。ちょっと量が少ない。
 食い道楽の私には、物足りないが、800円で高級そうな店内で
おしゃれに食べられるという点は大いに評価してあげたい。

 午後12時30分。カメラのさくらやゲーム館で『大江戸ルネッ
サンス』を探す。しかし発売元がパックイン・ソフトということが
わかり、買うのをやめる。
 このパックイン・ソフトは『牧場物語』を出したところ。
 発売前は私の名前をさんざん宣伝につかっておいて、売れるとみ
るや、私の名前も外して、さも自分だけが作ったような顔をして、
さらに何の断りもなく、さっさと移植してしまういい加減なメーカー
なので、ここのだけは買いたくない。
 そして今度も私に何の連絡もないまま『牧場物語2』を出すらし
いけど、私はこのゲームにはまったく関係してないのでご注意くだ
さい。

 午後2時。帰宅。『チョコバナナ』投稿者の藤川かつらサンが来
るが、なかなか2階に上がって来ない。どうしたのかなと思って、
嫁が玄関に行くと、『チョコバナナ』投稿者のたつきじゅんサンが
いる。あれ? たつきじゅんサンは29日に来るはずだったぞ?
 聞くと、間違いなく29日の予定だけど、きょうから東京に来て、
東京でのアパートを探すつもりだという。では何で突然家の前にい
るんだ?というと、原稿をポストに入れて帰ろうとしていたら、
藤川かつらサンが来てしまったのだという。
 何だよ、電話してくれればよかったのにということになって、
そのまま2階に上がってもらう。
 先日の土産屋そりとんクンにしても、そうだけど、何でみんな原
稿をわが家に投函して行くくらいなら、私に会って行こうと思わな
いんだろうね? そんなに私に会うのイヤか(笑)?
 電話して「今、突然近くまで来てしまってるんですが、おじゃま
でしょうか? ダメなら原稿だけ置いて帰ります」といえばいいだ
けなんだけどね。私もダメな時はダメとはっきりいうしさ。空いて
る時はちゃんと相手するよ。きょうみたいに。
 ということで、たつきじゅんサンはまんまと、岩岡目々さんの
最新作と樹野こずえ(旧・こんにょ)さんの絵コンテを見ることが
できてしまった。
 チャンスは自分から切り開かないとね!

 その代わり、『チョコバナナチップス増刊・百点記念館特集号』
の紙を折る仕事をさせられる。たつきじゅんサンは、『チョコバナ
ナチップス』はどこかの印刷所で刷っていたと思っていたらしい。
全部手作りなんだよ。袋詰めも。

 午後6時。『チョコバナナ』投稿者と行く定番「鳥良(とりよ
し)」で食事。
 いろいろ漫画の話に熱中しているうちに、午後7時を過ぎている
ではないか! いかん! 試合が始まっている。
 というわけで、横浜ベイスターズ日本一に続く。
 きょうはしみじみ日本一を噛みしめるから、ここまでね。
 午後11時30分からテレビ神奈川の特番を見るんだ。録画もす
るけど。それじゃね。メールもたくさん来てるだろな。



10月27日(火)


 昨日の横浜ベイスターズ日本一で、ようやく呪縛から離れて、頭
すっきり仕事の顔に戻る私であった。

 午前10時。『桃太郎伝説』最新ロムが届いたので、テストプレ
イ開始!
 いい! いい! リクエストした箇所がほとんど入ってる!
 話題の「会心の経験値」も入っている。
 想像以上によい!
 それよりいいのが、威風堂々システム。
 レベルの低いやつが現れると、一定の確率で、桃太郎さんには
かなわないや。しっぽをまいて逃げ出したとなって、経験値とお金
を置いていくシステムなんだけど、プレイヤーが思い上がるくらい
気分がいい!
 私なんぞ、このせいで、鬼がしっぽをまいたせいで、1段上がっ
てしまったからよけいうれしい!
 これはちょっと、胸を張って、お勧めできるゲームになってしま
った気がするぞ! ベイスターズ効果かな?
 イベントのほうも、言ってしまうとおもしろさが半減してしまう
やつが多くて、喉まで出かかってしまうよ。ちょっとだけ教えると、
桃太郎がデブになってしまって、家の中に入れなくなってしまうイ
ベントがあるんだ。これは爆笑物だよ。
 いいねえ! これは!

 午後1時。新宿西口の「ねぎし」で食事。
 食後、ソフマップに行って、iMacを買おうとするが、ソフマップ
では扱っていないという。何か怪しいシステムだな。
 仕方なく新宿東口に移って、カメラのさくらや。ここでiMacを買
おうとするが、MOドライブは使えないし、MOドライブが発売さ
れる予定が無いという。それじゃ買う意味が無いですわい。
 けっきょく何も買えず、リハビリとしては効果的な散歩となった。

 午後3時。『桃太郎伝説』の手直し原稿を書く。
 再び『桃太郎伝説』のテストプレイを続ける。
 快調! 敵キャラが」おもしろいように落とし物を落として行く。
これがほとんど野菜ばっかなんだけど、だいこん、なすび、はくさ
いと、名前がくだらないんだ。体力が1回復したり、8回復したり
する取るに足りないアイテムなんだけど、マップ上で野菜を補給し
ながら先を進んでしまうのが楽しい。
 RPG史上最多の落とし物をするゲームになりそうだ。
 ほとんど横浜ベイスターズの20安打マシンガン打線みたいな
ゲームになって来た。
 
 午後5時。フジテレビの横浜ベイスターズ特番を録画しながら見
る。ほとんど間に合わせのいいかげんな番組。生番組というところ
だけが売り。それでもうれしそうに見る私。横浜ベイスターズの選
手たちを世間に知ってもらえるというだけでもいいのだ。それにし
ても宴会疲れか、ほとんどの選手の口が重い。

 午後7時。かねてから万が一、横浜ベイスターズが日本シリーズ
まで制覇してしまったら、行ってみようと言っていた、銀座のステ
ーキハウス「G」に行く。
 この「G」は、私でも目が飛び出るくらい値段が高いお店。
 食べることに関しては、金に糸目をつけないことを標榜する私が
躊躇(ちゅうちょ)するぐらいなのだから、一体いくらぐらいなの
か想像してほしい。さらに横浜ベイスターズが日本一になったらと
いう足枷までつくほどである。
 
 まあ、元々「食につかう金に悔いなし」だから、いつかは来る
つもりだった。だが唯一に心配は、ここのステーキがまずかったら、
それでいいのだ。もう二度と行かないから、お金を浪費することが
無いからだ。反対にもし美味しかったら、また行きたくなってしま
うから、どうしようという不安のほうが大きいのだ!
 何て情けない家族なんだろう!
 そんなこんなでドキドキしながら、「G」に入る、バカ家族で
あった。

 はたして!?
 結論からいうと「G」と、イニシャルで書くぐらいだから、美
味しすぎて、人に教えたくないか、まずかったのどちらかである。
 その後者のほうだった。よかった。まずくてよかったというの
も何なのだが、とにかくよかった。
 とはいえ、本当にまずかったわけでは無い。
 ステーキが、いかにも欧米人が「は〜はっは」と笑い声を上げ
ながら食べそうな、脂たっぷり、固めのステーキだったのだ。
 それにしてもこの店での前半戦は、戦々恐々だったんだよ。
 オードブルで出た、スモークサーモンがメチャメチャ美味しい
し、コーンスープもいい。ガーリックトーストもにんにくの匂い
からして豊穣。前菜でこれだけ美味しい店は、まず間違いなく、
本編はもっと美味しいはずなのだ。
 だからたぶん、ここの洋風のお肉が、わが家族に合わなかった
だけだと思う。
 やっぱりわが家族は、和風の牛肉のほうが趣味に合う。
 無性に京都の三嶋亭のすぅっと切箸でれるお肉が食べたくなっ
てしまった。

 まあ、やみつきにならなくて、よかったような、くやしいような、
そいれでいてすっきりした気分で家路につくバカ家族であった。

 午後9時。『桃太郎伝説』のテストプレイの続き。
 順調に9段まで上がったら、ますます威風堂々システムが、作者
の想像以上のおもしろい動きをするようになってしまった。
 このシステム、レベルで管理してるで、弱い鬼ばかりで登場する
と、すぐ「こりゃかなわないや!」と逃げてしまう。
 ところが弱いやつらは、強い鬼といっしょに出てくると、逃げな
いんだなあ。これって現代社会といっしょで、虎の威を借りる状態
になるんで笑える。

 おなじくテストプレイを開始している宮路一昭くんに電話すると、
ハドソンの浦サンが、このロムの出来に自信満々だったという。
わかるなあ、その気持ち。
 この調子でずっと後半も続くといいなあ。



10月28日(水)


 午前10時。杉並区上井草の診療所。
 血圧175b104と、ますます高血圧。ピンチ!
 体重増加、塩分、ストレス、運動不足のいずれかと言われる。
 ストレス(横浜ベイスターズ)だろうなあ。日本一になって血圧
下がってくれるといいんだけど。
 
 午前11時。嫁と合流して、新宿紀ノ国屋ビル地下「丸天」で丸
天うどんを食べる。
 午後12時。帰宅。間髪入れず『桃太郎伝説』のテストプレイ。
 ぶっ通しで『桃太郎伝説』のテストプレイ。最終段階に入ってい
るので、テストプレイを急がないとやばい! 出来がいいだけに
何とかしたい!

 午後4時。『ゲームの全仕事』という本の取材の人たちが来る。
 きょうの金田一さんという人も、月刊OUTの読者だったそうだ。
業界に入ったOUT読者というのは本当に多い。
 
 午後5時30分。再び『桃太郎伝説』のテストプレイ。

 午後6時30分。北青山の和風料理の店「まつおか」で食事。
京都のおばんざい料理のようで、美味しい。値段も安い。ナスの
美味しい季節だねえ。今後ごひいきしそうな店。
 食後、北青山から家まで歩いて帰る。血圧を下げるぞ。
 歩きながら宮路一昭くんと『桃太郎伝説』のチューニングについ
て電話。携帯は便利だ。
 
 午後8時。帰宅。再び『桃太郎伝説』のテストプレイ。
 チューニングですごく気になるところが出て来た。
 今からそれについて、ハドソンの浦さんに原稿を書くから、きょう
の日記はこれでおしまい。



10月29日(木)


 午前6時。つい、昨日買った横浜ベイスターズの優勝記念ビデオ
『GOT THE FLAG!』を見てしまう。
 シンプルに4月からの試合を、延々解説していくだけのビデオな
ので、かえってこっちがあの時どうしていた、こうしていたという
のを思い出せて、またまた泣けてしまう。いいよ〜、横浜ベイスタ
ーズのファンには。一喜一憂したあの頃を懐かしく思える。
 
 午前11時。新宿の銀座アスターのランチを食べる。秋の味覚の
強火炒めとかいうわけのわからないものを食べたけど、美味しい!
栗、きのこ、エビ、くるみ、ネギ、ホタテといったものを少し甘く
炒めた味が、かなり贅沢感も満たされていい。お勧め!

 午後12時。カメラのさくらやで、けっきょくiMacを買う。売り
切れ中なので、2週間ぐらいかかるという。

 午後1時。さあ、きょうは『チョコバナナ』投稿者がドッと集ま
る予定。初めての人も多いので、私が原宿の竹下口に立って、目印
になる。誰がどう来たのかをいちいち書いても仕方ないので、午後
1時30分、ゲーム部屋に集まった人の名前を書く。順不同、敬称
略。書き忘れた人がいるかもしれないなあ。

・GW     ・神谷栄和   ・バルカロール
・×××××(本人の希望により削除)  ・吉野桜風  
・古河あおい  ・樹野こずえ(旧・こんにょ) ・海月神
・たつきじゅん ・藤川かつら  ・土産屋そりとん
・タカラの高田さん   ・タカラのくぬぎふみたかサン    
・タカラの小沢くん   ・4コマ漫画家のなかむら治彦くん
・弟子の原口一也    ・レイアウターの野沢ちゃん
・夕方から来た えんらえんら

 総勢18人。圧巻だね! とにかく人数が多いので、まずは顔見
せ。少しずつみんなが描いて来た『当方見聞録』をそれぞれ回し読
みしながら、私が個人面談して行く。
 ぶっとおしでしゃべるので、さすがに舌が痺れる。
 まだ舌の神経も完全に直っているわけではないので、ちょっと
つらかった。でもこれだけの人数が揃ったわけだから、この日が
のちに歴史的な一日となるかもしれない。
 新撰組の結成式となって、滅んで行くのかもしれないし、手塚治
虫さん、石ノ森章太郎さん、赤塚不二夫さんを生んだトキワ荘にな
るかは、ここにいた人たちの今後の作品次第だ。

 午後7時。とりあえず業界人組と、投稿者組に分かれて、解散。
その後のことはみんなが『ほんのチョイ係』のほうで報告してくれ
るでしょう。
 午後7時30分。近所の鰻屋さん「初花」で食事。
 メンバーは、タカラの高田さん、小沢くん、なかむら治彦くん、
原口一也、嫁、娘。
 業界人組のほうが、きょうみたいに若きクリエーターたちと接す
る機会が少なかったようで、大いに刺激を受けたようだ。その辺の
ことは原口一也のほうの日記を見るといいかもしれない。

 午後8時。私は引き続き『桃太郎伝説』のテストプレイをしない
といけないので、先に帰る。
 というわけで、きょうの日記も駆け足で、誰が来たかだけを明記
して終わりだ。
 きょうのことは、きょう集まった人たちが有名になったら、何度
でも描いて歴史にしてくれるだろう。どうなるかはまったくわから
ないけど、きょう希望の小さな火がひとつ灯った。そんな感じかな?

 午後8時30分。『桃太郎伝説』のテストプレイ。
 昨日の問題点もハドソンの浦さんのほうからの連絡で全部クリア
できたそうだ。ツキのあるゲームのようだ。うまく行く時はこんな
もんなんだろうな。ここまで来たからチューニングを粘るぞ!



10月30日(金)


 午前8時。『桃太郎伝説』のテストプレイ。

 午前11時。神谷栄和が来る。嫁と3人でそのまま新宿高島屋の
つばめグリルで食事。ここのハンバーグは、シチュー風味で美味し
いのだ。
 食後、東急ハンズを散策しながら、帰る。
 いつのまにか手には、鉄人28号のフィギュアが!

 午後1時。神宮球場。ふっふっふ。わがままさくちゃんは、とう
とう嫁にせびって、また来年度も神宮球場の年間シートを購入して
しまうのであった! まったくおなじ席を!
 一応この1カ月間悩んだんだよ〜、私なりにね。
 1年かぎりの約束だったからね〜。まさか横浜ベイスターズの
優勝というおまけまで付いてくると思ってなかったからね〜。
 なんか縁起がいい席のような…まあ、ほとんどほしいがための
言い訳にすぎないんだけどねえ。
 やっぱり贅沢だもん。でも社員がいたとしたら、3席で3カ月分
の給料より安いと思うと、ほしくなってしまったんだな〜。
 言い訳無用! 単なるムダづかいだ!
 業界人の皆様、来年またいっしょに野球を見に行きましょう! 
まだいっしょに行ったことのない人もぜひ!
 フィールド・オブ・ドリームズだ!

 午後1時30分。ゲーム部屋で、神谷栄和と『桃太郎伝説』の
テストプレイ。
 神谷栄和の行け!行け!のやり方にほくそ笑む。行け!行け!
だと私のゲームは思うつぼのイベントばかりなのだ。ふっふっふ。

 午後3時。『ファミスタ』の作者岸本さんが、先日の私の日記
を読んで明治神宮の「明治維新展」を見に行ったそうだ。私が
途中でへばって断念した明治神宮ね。その帰りに、家に寄ってく
れた。
 さっそく野球の話に、ラーメンの話に、お城の話に、怪獣の話
に、鉄道の話にと、共通の趣味の話に燃える。
 趣味が多すぎるふたりであった。
岸本さんと 話しは尽きない
 午後4時。関西のゲーム情報紙「遊遊」の取材を受ける。  取材の亘(わたり)さんが、歴史マニアだったものだから、 取材の後半は、3人で歴史の話に燃える。  午後6時30分。岸本さんといっしょに西麻布の「内儀屋 (かみや)」へ食べに行く。グルメ・バカ娘もいっしょ。  岸本さんもかなりの食い道楽。  そのお店のおいしさは刺身でわかるという持論があるそうで、 その点ではかなりポイントが高かったようだ。でもバカ娘が きょうの料理のお肉とごま味噌ソースが合っていないと言い出す。 岸本さんも同感ですという。  岸本さんは早くもグルメ・バカ娘の正体を見てしまったようだ。  午後8時。ゲーム部屋で『桃太郎伝説』のテストプレイ。テスト プレイヤーは神谷栄和。娘もいっしょ。桃太郎がデブになるイベン トに大爆笑!  午後10時30分。娘を寝かせないといけないので、テストプレ イは中止。 『桃太郎伝説』の手直し原稿書き。


10月31日(土)


 午前10時30分。神谷栄和が来る。

 午前11時。行き付けの「おけい寿司」が、店頭販売で「マグロ
のづけにぎり」を1人前なんと800円で売るというので行く。
午前11時からの販売なのに、行列ができていた。
 買って帰る。
 こんな本格的な寿司を800円で売って、儲けがあるのいかなと
心配になる。マグロ以外にもいろいろあったので、いくつか買う。
 マグロのづけにぎりより、平目の昆布じめのほうが美味しかった。

 午後12時。神谷栄和とゲーム部屋で『桃太郎伝説』のテストプ
レイ開始。
 いよいよギャグ平原にも進出。
 自分で作ったギャグ・キャラたちだが、笑える鬼ばかりだ。
 『チョコバナナ』投稿者のパープルウォームさんがデザインした
ビジュアル系の鬼もいい味を出している。
 そいういえば最近パープルウォームさんはどうしているのだろう? 
『チョコバナナ』休刊以降、こっちから連絡を取らない姿勢を守っ
ているので、けっこう面倒だ。でも自分から進んで連絡を取ってく
る人でなければ、人生の喉が乾いてないのだから、美味しいジュー
スも飲みたくないだろう。
 横浜ベイスターズ権藤監督の選手の自主性にまかせるを真似るの
だ。『チョコバナナ』の投稿者のみなさん、自分からアクションを
起こしてね。いつになるかわからないけど、『当方見聞録』の京都
大会も企画してるからね。枚数たくさん描いてないと、参加できな
いからね。

 午後5時。ゲーム部屋にバカ娘が遊びに来る。
 どこかへ遊びに行った帰りのようだ。
 案の定、腹が減ったと言い出す。
 嫁を誘って、食事に行こうと思ったのだが、どうやら風邪を引い
たらしい。最近寒暖の差が激しいからなあ。だるいだけだといって
いるが、年を取ると、たかが風邪ぐらいと見過ごすととんでもない
ことになる場合があるから心配だ。

 午後6時。娘、神谷栄和の変則3人で、渋谷に行く。
 西武百貨店そばの「とひ家」で食事。
 賀茂ナスとくるみのごまみそ煮が美味しかった。

 午後7時30分。ゲーム部屋に戻って、『桃太郎伝説』のテスト
プレイの続き。1日ソファーにすわりっぱなしだ。
 相変わらず神谷栄和は行け!行け!なので、お金がたまらなくて、
おもしろいように中ボスにやられる。おかげで、いろんな隠しメッ
セージを見ることができていい。
 
 午後9時。1日ぶっとおしのテストプレイは疲れる。こんなこと
を昔は毎日20時間ぶっとおしでやってたこともあるかと思うと、
ぞっとする。



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