3月1日

 京都はあいにくの雨。  福井か、紀伊田辺へ行きたいと思っていたのだが、雨だと、右腕 しか動かない人間には、とても不自由なので断念する。  東京は、珍しい春の雪だとテレビが言っている。  いつものように京都駸々堂(しんしんどう)で、パンを食べる。 京都は美味しいパン屋さんが多い。  食事後、北野天満宮に行く。梅は満開を過ぎてしまったようだ。 雨の匂いばかりで、梅の匂いがまったくしない。  なぜ北野天満宮に来たかというと、2年前、脳内出血で倒れてか ら、3ヶ月後、ここに来て、立ち往生してしまったことがあるから。 砂利と石畳で、もう一歩も動けなくなったのが、つい昨日のことの ようだ。リハビリというのは、努力しても努力しても、結果が大き くでないからつらい。だから前とおなじ場所を歩くことで、進歩を 噛みしめることができる。で、またもっと努力しようと思うものだ。  きょうは、雨だし、観光客も多いので、悪条件が重なったわりに 順調に歩けたのでうれしい。  昼過ぎ、京都の雨がやみそうもないので、東京に帰ることにした。  こういうおもいつきの行動をするのが好きだ。いつもスケジュー ルびっちりの生活をしているので、たまに大きく予定を狂わせたい。  新幹線のなかで、『Yのたまご』のアイデアを練る。  そうだ、このところ表現に窮していたゲームボーイは何を作って いるか発表してもいいことになったので、独占初公開。  実はこのゲームボーイは『桃太郎電鉄』のゲームボーイ版なのだ。  タイトルがまだ決まっていないので、今後は『桃太郎電鉄GB』 と言います。この『桃太郎電鉄GB』は、おもしろいよ〜。ベース は『桃太郎電鉄7』なんだけど、ゲームボーイにしかない競技方法 があったりして、楽しいのだ。「ラーメンのたび」というのを選ぶ と、いつもの16の目的地をまわるのではなく、北の旭川から、札 幌、函館、博多というように、順路が決まっている。完全なすごろ くルールの桃鉄を遊べるのだ。  ほかにもいろいろ手直しを入れている。  現在メインのお仕事は、この『桃太郎電鉄GB』。予定ではおも しろい題名がつくはず。発売は夏休みになりそう。お楽しみに。  あっ、しまった! 京都の家の加湿器をつけっぱなしにしてきて しまった。原宿の家の新しく買った加湿器が、渇水になると勝手に 電源が切れるものだから、つい忘れてしまった。電化の進歩も考え ものだね。近いうちにもう一度京都行かなきゃ。



3月2日

 午前中、杉並区の病院へ。  1月だったかなあ。血液検査をしっぱなしで、結果も聞かずにほ ったらかしのままだったので、気にはなっていたのだ。  というより、旅行前に行って、はい、即、入院なんてことになっ たら悲しいので行かなかっただけ。  なんと。血圧が130─85と、過去最高のいい数値。血液検査 の結果は、すべて正常。やった! こんなうれしいことはない!  あまりにも気分がいいので、新宿に出て、映画館街を歩く。  ふと見ると、ちょうど今から『タイタニック』が始まるところ。 3時間すわってるのはつらいと思って敬遠してたのだが、きょうは 体調十分。よし、挑戦してやれっていうんで、入ってしまった。  そういえば、うちの娘が見たいといっていたのを思い出した。 すまん。  映画のほうは、ケチのつけようのない映画って感じ。  前半たるくって仕方ないんだけど、映画ってお金がもったいない から、最後まで見てしまいたくなる。それを見透かされたのように、 後半絶好調。オーソドックスで、破綻のないストーリー。なのに陳 腐にならない。美術、映像、すべてが豪華。  もともとジェームス・キャメロン監督は大好きだったんだけど、 今回のはもう何も言えない。  文句をいうとしたら、ほかの映画監督のチャンスを奪ってしまっ たことだけだろうな。150億円もらったって、誰もこんな映像作 れないよ。  映画館を出たら、衆芸社の高村社長から電話。 『チョコバナナ』14巻の見本がきたという。  四谷の衆芸社まで取りに行く。  分厚〜〜〜〜〜い! 増ページしたことはしたんだけど、これほ どまでに分厚くなっているとは思わなかった。う〜ん。感無量。  こんな本にしたかったんだ。 



3月3日

 昨夜、嫁と娘が沖縄の横浜ベイスターズ・オープン戦観戦ツアーから帰 ってきた。選手が誰ともわからんくせに、進藤選手と野村投手のサインを もらってきた。帽子にはどうも横山投手とおぼしき人のサインまで入って る。なんだかくやしい。  もっとくやしいのは、ホテルのパーティでうちの娘は、権藤監督に花束 を渡す役目を務めたそうだ。何をしてるんだ、うちの娘は。  午前中、昨年からチャレンジしていた、お昼の和牛丼のお店にまた行く! もう3回連続ぐらいで失敗し続けているだけに、きょうは早く家を出た。 やった! ついに食べられた! 開店と同時に売り切れると聞いていたが、 売り切れるわけだ。先着7名のみだったのだ。開店1分前についたときに、 携帯に電話が入ってしまった。電話してるうちに、サラリーマンが3人、 お店に入って行く。後ろから女性客が2人。やばい! 電話しながら、お 店に入る。ふうっ。危うく7名のなかに入れないところだった。  で、注文したのは、白魚の親子丼と、しぐれ丼(これが噂の和牛丼)。 うま〜い! こんな美味しい親子丼食べたの初めて! 卵ふわふわで、 ご飯の芯まで、卵がしみこんでいるような気がする。白魚がくどくなくて、 出汁とうまくからみあっている。  和牛丼のほうは、もちろん美味しかったんだけど、白魚の親子丼の衝撃 の前にかすんでしまった。  これで1500円だよ。毎日競争になるわけだ。  これは本当にお店にとって採算度外視のサービス品なんだなということ がよくわかる。とてもしょっちゅう親子丼目当てに来ては申し訳ないこと に気づいてしまった。気づかなきゃよかった気もする。  午後、漫画情報誌『コムナビ』の瀬戸編集長が来る。  なんと『チョコバナナ・コムナビ出張所』というページを2ページ作っ てくれるという。うれしい! 第1回目は『チョコバナナ』からより抜き のヒーロー&ヒロイン部門を転載することにした。乞うご期待。  3月発売号には、私と堀井雄二の対談も載るから、買ってね。  今後、コムナビと『チョコバナナ』は、かなり密接にクロスしていくと 思うから、ごひいきしてね。  夕方、野沢ちゃんと衆芸社に行く。 『桃太郎電鉄7/4コマ劇場@』の校正。  手前みそすぎるけど、おもしろいよ、この本! いやあ、ひさしぶりに よく出来たと思う。すでに注文がすごい勢いで来てるそうで、高村社長の 機嫌がやたらいい。 「さくま、最初の予定よりもっと多く刷らないか?」  あんまり捕らぬ狸をしてると危ないぞ〜。とりあえず私は納得行く本が できただけでうれしい。 『チョコバナナ』14巻、『桃太郎電鉄7/4コマ劇場@』と、続けて納 得の行く本が完成したことは何よりうれしい。  夜、あまりにもうれしいので、これまた昨年からずっと一度は行ってみ たいと思っていた、おそらく現在世間の人気ナンバーワンのお寿司屋さん 「すきやばし次郎」に家族で行く。  このお店のことを書いた本が出ていて、これが名著だったので、一度プ ロ中のプロの仕事っぷりを一度見ておきたかった。  また始まった。2〜3個食べた頃から、グルメ・バカ娘がうきうきし始 めた。ベストテン入りしそうなお店を出たときに出る兆候がすでに始まっ ている。情けない。鼻の穴が広がってるぞ、わが娘よ!  アナゴがほろほろしていて、美味しい! 早くもさくま家全日本アナゴ・ ランキング初登場1位だ! お寿司が死ぬほど好きなさくま家では、寿司 ネタ別ランキングが存在するのだ。はまぐりも1位だな。最後の厚焼き玉 子もおそらく1位だなあ。  まったく世の中には、美味しいものを食べても食べても、違った美味し さを持つお店があるものだ。この衝撃を味わいたくて、つい炎のチャレン ジャーと化してしまう。  さて、このお店はけっきょく、わが家のお寿司屋さんランキングに初登 場で2位に入ることになりました。1位は、人形町の喜寿司というお店だ。 「すきやばし次郎」のお値段のほうは聞かないほうがいい。何たって銀座 のお寿司屋さんだ。目が飛び出るどころか、内臓まで出てしまう人がいる かもしれない。うちは食べることに命賭けてるからね。よい子は決してマ ネをしないように。



3月4日

 午前中、渋谷のチャーリーハウスで、トンミンを食べる。このお店では、 ラーメンのことをトンミンと呼ぶ。極細の麺とあっさスープの相性が、飽 きない味だ。グルメの師匠・すぎやまこういち先生推奨のお店。  午後、『チョコバナナ・コムナビ出張所』の文章書きとハガキ選び。  『桃太郎電鉄ゲームボーイ版』の原稿書き。  増田景子さんが来て『Jゲーム』の打ち合わせ。  ぶんか社の西永くんが来て、4月創刊の新雑誌連載の打ち合わせ。原稿 は完成してるんだけど、題名が決まっていなかった。『桃太郎が行く!』 に決まった。旅のエッセイなのでお楽しみに。この日記の旅行の部分を再 構成したような連載なので読み比べるとおもしろいよ。  夜、恵比寿の筑紫楼に行く。杏仁豆腐マニアのうちのグルメ・バカ娘に、 ここの杏仁豆腐を食べさせたかった。思った通り、娘の杏仁豆腐ランキン グ1位に躍り出てしまった。今までの1位は、代々木の上海ヌードルとい うお店。ここのラーメンは美味しいよ。安いし。



3月5日

 午前中、巣鴨に行く。  以前行ったのに定休日だった、カレーうどんで有名な古奈屋に行く。  場所はとげぬき地蔵尊のすぐ隣の道路。  とにかく一度食べたら忘れない味だとか、最高の賛辞が送られることの 多い店なので、気になって仕方なかったのだ。  でもカレーうどんが美味しいといわれてもねえ。なんか想像がつかない と思わない?…と思っていたことが嘘のようだ。   カレーというよりもクリームシチューのような上品なスープ。透き通 った麺。どっちも絶品。タマネギが甘いから、口当たりもいい。メニュー にない焼きおにぎりも美味しかった。これは確かに噂になるわけだ。絶対 お勧め! でも席が11席しかなくて、開店前に20人以上並んでいた。 私と嫁はしっかり5番目。  午後、ハドソンの浦さんが来て、『桃太郎電鉄GB』の打ち合わせ。  鹿児島から稚内まで、すごろく競争するモードを付けるというアイデア がOKになったので、うれしい! これって絶対おもしろくなるぞ〜!  それともうひとつビッグ・ニュース!!!  実は『桃太郎伝説』を作っている。そう、あのRPGだ。  桃太郎伝説1、2、新桃太郎伝説、桃太郎伝説外伝をミックスして、 さらに新しい要素をたくさん入れた、限りなく新作に近い作品。  浦さんと高津くんが中心になって制作している。制作発表は相当あと の予定だから、ここだけの話ね。題名も未定。  野沢ちゃんが来て、チョコバナナ・コムナビ出張所の打ち合わせ。  『わるわ〜るど』の単行本の打ち合わせ開始。



3月6日

 午前中、原宿を散歩。  ひさしぶりにキディランドに寄る。勉強のためといいつつ、イエローサ ブマリンのおもちゃとか、東海道五十三次のすごろくゲームとか、いろい ろ買ってしまった。  午後、ムサシノ広告の伊東正義が来る。ゲームとかラジオとかいろいろ 打ち合わせ。宮路一昭くんと、増田景子さんが来るが、宮路くんはぎっく り腰になってしまって、いかにもつらそう。それでも『Jゲーム』の音楽 を完成させてきた。MAP曲とか、どんぶるサンの曲とかにOKを出す。 えのクンが登場する、ゲームマスの曲が、おちゃらけすぎるので、リテイ クを要求。たまにはえのクンも格好よくみせてあげたい。ちょっとだけだ けどね。  ハドソンの梶野くんが来て、桃鉄キャンペーンで当選して、高知桃鉄ツ アーに行く人に向けたビデオ・メッセージを制作。高知ツアーには私も行 きたかったんだけど、3月20〜22日まで、幕張のゲームショウで『J ゲーム』の発表があるので行くことができない。  けっきょく私の代わりに、えのクンが高知まで行くことになったそうだ。 それはそれでお客さん、大喜びだろうな。  夜、初台の『T』というお店に行く。なんと紹介者がいないといけない お店だった。ホームページで美味しいと書いてあったので、つい行ってし まった。美味しかったんだけどね。鴨ロースとか、フィレとか、最後のオ ムライスは、玉子の甘さが絶妙で、ライスの味もよかった。  でも、わがグルメ・バカ娘は、美味しかったけど、お客さんを大事にし ない態度は許せないから、もう一度行きたいとは思わないという。



3月7日

 午前中、『チョコバナナ』の投稿作品を添削。  午後、娘を連れて、新横浜の姉の家に行く。嫁はインターネットのオフ 会とかいうやつへ。うちの娘が、さくま家に伝わる「のりまき」の作り方 を習いたいといったのが発端。別に変わった食材をつかうわけではない。  ひさしぶりに懐かしい味だ。娘が今後つくってくれるようになるとはう れしい。姉は私の姉だけに、グルメで旅行好き。   姉が作ったビーフシチューは、確かに一流のお店のビーフシチューより 美味しかった。グルメ・バカ娘はまたたくまにたいらげたほどだ。  どうもこのところ新作ゲーム『Yのたまご』がすっかり暗礁に乗り上げ てしまった。おもしろくなりそうなのだけど、その確証が持てない。ふつ うの人ならこのレベルで、作り始めてしまうのだろうけどね。  今年もう一本ゲームを作ろうか迷うこと自体がいけないんだろうなあ。 放っておいても、勝手に作ってしまうようでなければね。



3月8日

 吉祥寺へ買い物に行く。  唐子屋という中華料理の店に行く。ここは安いし、美味しいよ。近所の 人はぜひ。本町通りにある。駄菓子屋さんの先の右側。カニチャーハンと、 あさりラーメンがとくに美味しい。お金のある人は、おこげご飯がお勧め。 おこげご飯では、いまのところここがいちばん美味しい。  吉祥寺のロンロン2Fに、ウルトラマン専門のグッズ屋さんがある。  ウルトラセブンをデブにした貯金箱が、土居ちゃんに似ていたので買う。  帰りに、東急百貨店地下で、松坂牛のハンバーグステーキを買う。これ は文句なしの美味しさだよ。 『桃太郎電鉄GB』の原稿を書く。このゲームボーイ版はおもしろくなり そうだ。またまた4コマ漫画の本を作ろうかな。 『Yのたまご』がやっぱるうまく行かない。やり直しだなあ。



3月9日

 午前中、原宿を散歩。  新しい靴をおろす。新しい靴にすると、とたんにつまづく。まだまだ足 首が思うように動かない。散歩していても妙に疲れる。  原宿の古いアパートのところで、いつものように個展を見て歩く。  午後、和歌山から、石橋淑江さんが来る。  宮路一昭くん、増田景子さんが来て、『Jゲーム』の音楽の最終チェッ ク。気になっていた、どんぶるサンの曲が、前回をはるかに上回る出来に なっていたので、うれしい。これだけ私がイメージしていた通りの曲に仕 上がってくるとは思っていなかった。これがあるからゲーム作りはやめら れない。    午後5時。アスキーに行き、ファミ通のインタビューを受ける。  いよいよ『Jゲーム』についての初取材だ。  この様子は、3月27日発売の号に載る予定。お楽しみに。  夜、せっかく外に出てしまったのでというわけのわからない言い訳をし ながら、今年の食い道楽のテーマである「お寿司」にチャレンジ。  すぎやまこういち先生に名前だけ教えていただいていた、六本木の兼定 (かねさだ)に行く。さすが、すぎやま師匠のお勧めの店。出る物出る物 美味しくて、困ってしまった。これ以上、お寿司の美味しいお店を見つけ ると、さすがにお金が持たない。そのために働くんだという限界を越えそ うだ。ただ『ドラクエ』の中ボスに会った時のような武者震いがした。  しかしまあ、世の中にはどうしてこうも美味しいお店というのは、数限 りなくあるんだろう。こういうお店を知らずに終わるのが幸せか、知って 散財しまくるのが幸せなのか、わからんなあ。でもプロの仕事は見ている だけでも、ホレボレするし、勉強になる。  兼定のご主人の握り方の早いこと。美味しいお店はみんな握るのが速い。 プロの基準は、まずスピードなんだな。つくづくそう思う。



3月10日

 午後、札幌から『チョコバナナ』の投稿者・岩岡目々さんが来る。  CB初の単行本『わるわ〜るど』の打ち合わせ。  ふだん電話でしか打ち合わせができなかったので、こまかい部分での添 削をする。というよりも、岩岡目々さんもまた、自分で無理とかダメと決 めつけていることが多い。これは『チョコバナナ』の投稿者共通の問題だ。 何もそんなに自分は、ダメだ、ダメだと、思うことはないのに。  ボクシングの辰吉丈一郎は、あこがれの人を追い越そうと思わなければ、 絶対チャンピオンの足下にも及ばないといったことを言っている。  そうだと、思う。  けっきょく、夜までずっと、プロになるための心得を話して終わってし まった。



3月11日

 きょうも『チョコバナナ』初の単行本『わるわ〜るど』の打ち合わせ。  『チョコバナナ』の投稿者・パープルウォームさんも来る。パープルウ ォームさん、岩岡目々さんの単行本の打ち合わせにくやしがる。石橋淑江 さんもくやしがる。くやしがることはいいことだ。   パープルウォームさんも、石橋淑江さんも自分がいまから何をすれば いいのかがわかったようだ。  こうやって、みんなで一歩一歩階段を登って行くのだろう。  野沢ちゃんが来て、『わるわ〜るど』の台割り(ページ)を決める。  1話から10話までを収録することに。  おまけページとかで、なかなか手こずる。夕方までかかってしまった。  そこへまたまた『チョコバナナ』の投稿者・えんらえんらサンも来る。  夜、みんなで原宿のちゃんこ料理の店に行く。お相撲さんの浪ノ花関の お店だ。ここのつみれが美味しい。えんらえんらサン、生まれて初めての ちゃんこ料理に興奮する。  きょうは1日チョコバナナ・デーだった。



3月12日

 午前中、岩岡目々さんと『わるわ〜るど』の単行本の最終チェック。 岩岡目々さんは、ホテルですでに、おまけページの下書きをしていた。 いくつか手直し。  最後までいろいろ質問し続ける姿は立派だ。 『わるわ〜るど』がTVアニメになるまで、がんばりますといって、羽田 に向かった。志が高いことはいいことだ。 『チョコバナナ・チップス』14集の台割りを決める。  すぐ編集に入りたいところだが、明日からまたアイデア旅行と仕事で関 西方面に行く。で、またしばらくこの日記はお休み。今度の旅行には、榎 本44歳がいないから、ごく当たり前の旅行になるはず。 



3月13日(金)

 午前9時52分の新幹線のぞみで名古屋へ。同行者は石橋淑江さん。  さあ! きょうの旅は強行軍だぞ。  午前11時35分、名古屋着。『桃太郎電鉄7/4コマ劇場1』の中尾淳(旧 名プチまる)と待ち合わせ。その足で、山本屋総本店へ。みそ煮込みうどんだ!  しかし、行列が20人以上! 最近のこのお店の人気はすさまじいばかりだ。 こうして、わざわざ東京の人間が、時間がないというのに、食べに寄るくらいの 店だから、行列ができるわけだ。それでも牡蛎(かき)+名古屋コーチンみそ煮 込みうどんという季節メニューが食べられてうれしい! でも2980円はかな り高い値段だぞ。ケチといわれる名古屋人がみんなこれを食べているのにはびっ くり。名古屋気質も変化して来ているのかな。  このロスタイムはけっこう痛くて、近鉄特急に乗ったのは、午後1時30分。 約2時間のロスタイムだ。甘党王としては、伊勢名物赤福を買うのは忘れない。 昔は12個入りをひとりで全部食べたものだがなあ…。自慢にならん。  伊勢中川で乗り換えて、伊賀神戸(いがかんべ)。伊賀神戸から上野市駅に着 いたときにはすでに午後3時すぎ。


↑ メーテルの目だというんだけど、忍者に見えない?
 とても石橋淑江さんが見たい忍者屋敷までまわることができない。  ということで、石橋淑江さんと別れて、私と中尾淳は、伊賀焼き物のお店から 鍵屋(かぎや)の辻へ。荒木又右衛門の三十六人切りで有名な場所だ。20年前 から5〜6回この町を訪れているのだが、この鍵屋の辻だけ行ってなかったので 心残りだった。漫画のベタの塗り忘れを塗ったみたいで気持ちがいい。  石橋淑江さんと合流して、松尾芭蕉の生家へ。  20年ぶり2度目の訪問に、さぞや感慨にどっぷりと思いきや、まだまだ芭蕉 のお勉強が足らないのか、意外と裕福そうな家だなあとしか感じない。『奥の細 道』関連がなかったせいでもある。

 とにかく私はこの伊賀上野という町が大好きだ。3年も間があくと、無性に訪 れたくなる。大好きな松尾芭蕉、城作りの名人・藤堂高虎の上野城、市の職員が 忍者装束に身を包んで、解説してくれる忍者屋敷、鍵屋の辻と、小さな町に歴史 がいっぱいつまっている。  最近は焼き物が好きになってきているので、伊賀焼の町としても来る楽しみが 増えた。そして食い道楽になってしまったいまは、伊賀牛の美味しい町として、 特別の町なのだ。訪れる度に新しく、来た甲斐が増える不思議な町だ。次に来た ときは「伊賀くみひも」に興味を持つのだろうか。  でもいまは「すき焼きの金谷」が何といっても、最高の目的地だ。  私はすき焼きでなく、ここではあみ焼きを食べる。炭焼きで、柔らかく、甘み のある伊賀肉は、日本一の美味しさだと思っている。  うちのグルメ・バカ娘は、近江牛が一番だと異論を挟むだろうが、あみ焼きに 関しては、間違いなく一番だ。  店の人に、京都までの帰り方を聞く。親切なおばちゃんが、いろんな行き方を 教えてくれた。さらにこのおばちゃんが、伊賀焼と信楽焼の違いまで教えてくれ た。この町の人は本当にみんなやさしくていい人たちばかりだ。きょうも鍵屋の 辻までの道を、こっちから聞かないのに、町行くおばあちゃんのほうから教えて くれる。町はゴミが少ないし、空気はいいし、欠点は遠いだけという町だ。  名古屋でのロスタイムが響いているので、ショートカットのために、JR木津 までタクシーで行く。木津からJR奈良線で、京都へ。おかげで京都の家に午後 9時前に着くことができた。名古屋から遠大なる遠回りをして京都に着いたので、 すでに嫁とグルメ・バカ娘はずいぶん前に到着していた。こっちが先に着くはず だったのに。  こうして車中、『桃太郎伝説ミックス(仮称)』『新作・桃太郎電鉄』のアイ デアを考えながらの旅、第一日目は無事終了。『桃太郎電鉄』の新作は予定があ るわけではない。いつもアイデアを練っているだけ。今年はどうも『桃太郎電鉄』 の新作は作らないことになりそうな気がする。



3月14日(土)

 午前中、京都コミックランドで、『チョコバナナ』の投稿者・川添真理子(旧 名・エレメンタル)さんと待ち合わせ。  そのまま京都市役所の側のアローンで食事。メンバーは、嫁、グルメ・バカ娘、 石橋淑江さん、中尾淳、川添真理子さんの6人。  このアローンは、オムライスが美味しいお店。天津丼のようなあんかけがのっ た不思議なオムライス。そしてフリスビーぐらいのビッグ・サイズ! この大き さがこのお店の特徴だ。2人でひとつがちょうどいい。  世の中に対する怒りを漫画にする。それがメッセージ漫画だというような話を しながら、食後はお茶の一保堂で、抹茶と和菓子。  このあと、川添真理子さんと別れて、ゲームの打ち合わせ。  夕方、伏見へ。山形屋市兵衛へ。個人宅ではない。パン屋さんの名前だ。山形 屋市兵衛というね。黄味あんぱんが美味しいぞ。


 このお店の先に、史跡知名度ナンバーワンの寺田屋旅館がある。坂本龍馬フリ ークにはこたえられない場所だ。何たって坂本龍馬が長いこと投宿していた部屋 に、いまも宿泊することができる。明治維新のそのまま、現在に至るところがす ごいでしょ。寺田屋襲撃のときの柱についた刀傷までそのまま残っている。ここ はさすがに来る度に、新しい発見がある。今回は、宿の前の川が実は、明治維新 の頃大きかったことがここの写真でわかった。前に来た時はそんなことにも気が つかなかったのに。お勉強はするもんだね。  夜6時、ここで石橋淑江さんは、和歌山へ。  中尾淳はひとりで京都探訪へ。  わが家族は、グルメ・バカ娘の全日本料理屋ランキング2年連続1位に輝く 「M」へ。毎度のことながらMとしか表現できない。ガイドブックにも載ってい ない店だし、7席ほどしかないんでね。  すでに行く前から、バカ娘はもうニヤニヤ、ウキウキ。  きょうの「M」の料理は、メバルとタケノコの煮付け、ヘレ肉のあみ焼き、 フグの唐揚げ、松葉ガニ、そしてこのお店独特のハヤシライス。このハヤシライ スのソースが絶品。ソースというよりスープ。お土産に、鯖寿司をもらう。  帰り道。やはりバカ娘のスキップが始まった。  SONYのスタミナハンディカムのノリとほとんどおなじだ。だって〜12時 間だもん、スタミナハンディ〜カ〜ム、ウォーオー!



3月15日(日)

 午前中、中尾淳(旧・プチまる)と、福井へ。 『桃太郎電鉄』シリーズの新物件チェックのためだ。  嫁は娘を連れて、東京へ。  福井に着くと、大粒の雪が横殴りに降ってきて、寒いの何の。関節が痛い。

 まずはお目当ての、ヨーロッパ軒総本店。日本最初のソースカツ丼のお店。 丼にカツが3切れ。たっぷりソースがしみこんだカツがのっているだけのシン プルな丼。キャベツもない。  トンカツを縁日のソースせんべいのソースに漬けたようなレトロな味。こう いう懐かしい味が好きなほうだが、嫌う人も多いだろうなあ。  同行の中尾淳の表現では、アメリカンドッグのソースに味が似ているという ことだ。しかし20歳近く上の私には、アメリカンドッグがわからない。

 それより福井駅のそばに「今川焼」の大きな看板が。この「今川焼」は、地 方によって呼び名がまったく違う。愛知県出身の中尾淳のところでは「東海道」 とか「大判焼き」と呼ぶそうだ。関西地方では「回転焼き」などと呼ぶ。石橋 淑江さんは「御座候(ござそうろう)」というといっているが、どうも怪しい。  「大判焼」を売っている「御座候」というお店の名前なのではないか? 今ま での石橋淑江さんの勘違い実績から類推すると、どうしても怪しい。はたして 石橋淑江説に援軍は来るか?  これは一度地方別の呼び名を収集したいので、ぜひ「ほんのチョイ係」まで。 鯛焼き風の丸いやつで、なかに粒あんが入っている食べ物です。    けっきょく福井の新物件として、羽二重餅というのが候補にのぼったが、あま り美味しくない。味にも特徴がないし。ソースカツ丼屋のほうが、ネーミング的 におもしろそうだ。  それにしてもあまりにも寒い。寒さは血圧に悪いので、帰ろうかと思ったのだ が、つい「せっかく来たんだから病」が頭をもたげてしまった。地図を見ると、 NHK『ゆく年くる年』でおなじみの永平寺があるではないか。しかも京福電鉄 という実にマイナーな路線をつかって行くではないか。これは行かねば。   まるでバスの待合所のような京福電鉄福井駅だ。2両だけの電車は、グガガガ ゴゴゴッとすごい音を立てて発車する。何10年前の車輌なんだろう。  でも旅はこういうオンボロ電車がないと、旅情が薄くなる。最近JRのローカ ル線はけっこう新しい車輌が入るので、興醒めのことが多い。  東古市(ひがしふるいち)駅で乗り換え。  もうローカル気分満点の駅だ。手書きのポスターに、石がむき出しになったプ ラットフォーム。電車のなかから車掌さんが乗り換え客を急がせる。2Eぐらい の踏切。いいねえ。窓の外、遠く山は白い。これじゃ冬の景色だ。    午後2時45分。永平寺駅に着く。  なんと「永平寺参道マラソン」にぶつかって、ものすごい人出だ。駅から人が あふれている。みんなマラソンの装束なので、さらに寒く感じる。やっと雪はや んだけど、とにかく寒い。  もう寒さと疲れで、だんだん足が前にでなくなってきた。  こうなったら、歴史で有名な一乗谷(いちじょうだに)にタクシーで出て、そ こから福井に戻ってやろうと思ったら、マラソンのせいで、タクシーは全部出払 っているという。ダメだこりゃ。行きと帰りは違う道で。これが私の旅の基本な のだが、こういうところに来ると、思わぬアクシデントで阻まれることが多い。  仕方なく、京福電鉄で再び福井に向かう。ところが電車は、明倫中学陸上部と か、松岡中学といった名前のジャージー軍団でごったがえして、座ることができ ない。さすがに足の不自由な私にはこたえる。  午後4時すぎ。福井駅に着く。へばった。  そしてまた新たなピンチが! なんと午後9時の最終電車まで指定席がないと いう! そ、そんな! 5時間もここで待つのか? グリーン車まで満席という。 自由席もいっぱいらしい。すでに福井駅からの長距離バスは、東京と名古屋にし か行かないのは、ソースカツ丼を食べる前に調査済みだ。  まいったなあ。  そうだ! 米原まで行って、新幹線で京都まで戻るのはどうだ?  鉄道にくわしい人から見れば、実に馬鹿げた選択だとは思う。  しらさぎ14号が空いているという。やった!  40分ほど駅の喫茶店で時間をつぶして、なんとか電車に乗る。  米原駅に着いて、新幹線に乗り遅れたら大変と、必死に走れないので、歩く。  しかし新幹線が来るのは40分後というではないか。しまった。  またまた40分間ホームの待合い室で、中尾淳とぼうっ待つ。  けっきょく3時間かけて京都に戻った。電車1本1時間30分の距離なのに。 何たる遠回り。でも旅はこういう番狂わせがないとね。  もう完全に疲れた。  疲れすぎて眠れない。  いかんなあ。調子に乗っちゃいけないなあ。まだリハビリ中の身体なんだから なあ。でも念願の福井に行けてうれしい。まだ東尋坊とかも行けなかったので、 もう一度行くかな。  明日は大阪のメイクソフトウェアさんで打ち合わせがあるから早く寝なきゃ。




3月16日(月)

 午前9時すぎ。中尾淳(旧・プチまる)と京阪三条駅から淀屋橋駅へ。 淀屋橋駅から難波駅へ。  食い倒れ人形の近くの今井といううどん屋さんで、石橋淑江さんと待ち 合わせ。この今井という店の穴子うどんを食べに来た。けっこう分厚い穴 子で、美味しい。ただ期待が大きすぎたのか、もっと変な味であってほし かったが、余計なことである。いつも都合よく『桃太郎電鉄』にぴったり な食べ物というのはそうそうないものだ。穴子うどんより、がちんうどん という名前のほうがおもしろかったのだが、こっちのほうは、がちん= お餅で、要するに力うどんだった。やっぱり大阪はけつねうどん(きつね うどん)が一番だな。どのお店で食べても、東京のきつねうどんより美味 しい。  午後1時。南森町のメイクソフトウェアさんへ。  ここで、土居ちゃん、宮路一昭くんと待ち合わせ。  ハドソンの浦さん、高津くんも来て、『桃太郎伝説ミックス(仮称)』 の打ち合わせ。敵キャラとか、MAPとか、かなり進んでいる。  立体で作ったMAPなどもあって、すごくわかりやすい。    夜、大阪読売新聞の近くの清水というお店へ。  先日の九州旅行で食べ損ねたイカ料理のあるお店だ。博多よりは落ちる が、十分美味しい。イカご飯とか、イカの棒寿司などはここでしか食べる ことができない味だ。大阪に来ると、このお店に寄ることが多い。  土居ちゃん、宮路一昭くん、中尾淳と4人で、淀屋橋駅から京都へ。  京都の家で『クラッシュバンディクー2』とか『ロックマンDASH』 『ランニングハイ』などを見る。中尾淳はゲームが上手い。  見ているだけで、目が痛くなってくる。  どうも最近のゲームは、目が痛くなる。老眼のせいもあるのかな。  昨日の福井の疲れもまだ残っているようなので寝る。




3月17日(火)

 午前8時。近所の京都ホテル6Fの入舟へ行く。  ここの朝粥定食が絶品なのだ。お粥が上品で、食べた後、眠くな る美味しさ。この気持ちわかるでしょ。  午前9時すぎ、宮路一昭くんが、大のウルトラマン・マニアなの で、お正月に開拓した、六地蔵のウルトラ・デ・レストランに行く。  宮路一昭くんはさすがにマニアで、エンタテインメント・スポッ トとしては大いに評価していたけど「このお店だけでしか買えない ものが、クッキーしかないのはね〜」と手厳しい。


 JR六地蔵駅から、ウルトラ・デ・レストランまでが遠くて、こ の旅行中に、酷使していた足がさらにピンチになって来た。ここで おとなしく帰ればいいのに、またまたせっかくここまで来たのだか らが、頭をもたげてしまった。タクシーで宇治の平等院へ行く。  平等院は、中学か高校の修学旅行以来だから、30年ぶりぐらい になる。といっても修学旅行なんてもんは、旅館の夜しか覚えてな いものだ。だからほとんど初めての場所。南の門が現在改修中とか で、大きく遠回りさせられて、もう足が完全に棒になる。砂利の道 はまだ私の不自由な足には酷でんがな。ひ〜。  しかし平等院は、10円玉の後ろに描かれた図案より小さく横幅 も短く感じる。修学旅行で来たときは、もっと大きく感じたけどな あ。

   さて、このまま駅まではとても歩けないと思っていると、土居ち ゃんが対鳳庵(たいほうあん)という看板を見つける。ここで甘い 物でも食べて休憩して行くかと、さっさと土居ちゃんがお金を払っ たら、さあ、大変。通された場所は、本格的な茶室ではないか!  抹茶と和菓子は大好きだけど、茶室は初めてだぞ。作法なんぞ、ま ったく知らんぞ。中尾淳の顔がすでにこわばっている。土居ちゃん もしまったという顔をしている。  しかし、土居ちゃんはやっぱりえらい。「どうすればいいの?」 とさっさと和服のおばさんに聞いてしまう。  無敵だ、土居ちゃん。いつもオレ流だ。  京都の家に戻って、帰り支度。  中尾淳は、みんな別れて、京都見物へ。清明神社に行くといった が、小説などのイメージで行くと、がっかりするぞ〜。  私と土居ちゃんと、宮路一昭くんは、どうせだからどこかで美味 しいご飯を食べて行こうということになったが、まだ夕方4時。ど こに電話しても午後5時か6時からしかお店が開かない。  夕方もやっていると言えば、うちのグルメ・バカ娘の牛肉ランキ ング不動の第1位・三嶋亭しかない。  けっきょく土居ちゃんのおごりで、三嶋亭に行くことに。  いつもはオイル焼きだが、きょうはすき焼きにした。美味い!  肉はもちろん、タマネギや麩まで美味しいのが、このお店の味の すごいところ。  満腹のまま、新幹線で帰京の途に。3人ともぐーぐー寝る。  宮路くんは、ほとんど東京まで寝ていた。  静岡をすぎたあたりで、土居ちゃんと貧乏神とキングボンビーの 新しい悪行のアイデア出しをする。なかなかいいのが出ない。この 日記を読んでる人でいいアイデアがあれば『ほんのチョイ係』まで。 きっかけでもいいから欲しい。  東京駅で2人と別れて、私はタクシー乗り場に向かう。  すると、携帯電話をかけながら、私に向かって、手をふっている 男がいる。キム皇ではないか! これは奇遇&懐かしい。  ちょうど任天堂へ行って来た帰りだという。あれ? じゃあ、お なじ電車だったんだ。  喫茶店でしばらく会話。ゲーム業界の最新情報をいろいろ教えて もらう。私は本当に業界情報に疎いからね。  家に着いたら、『チョコバナナ』のストーリー漫画部門に漫画が 4本も届いていた! ほう。『宇宙人ショック』を10日間で描い たのか。やるな。『エンジェルファイター・PU・RIN』のペン 入れ原稿も来た。上手くなったな〜。いま発売中の14巻の絵より、 格段に上手くなってるぞ。 このところ漫画が来ていなかったので、ちょっと『チョコバナナ』 が薄れて来ていただけに、うれしい。4月10日からの編集作業が 楽しくなりそうだ。




3月18日(水)

 午前中、高円寺の整体さんへ。  また脳内出血の兆候が出てきてるよと脅される。  塩分が原因のようだ。塩分は減らしてるつもりだけど、全体量が 増えてるから、塩分も増えているな。ちょっと真剣に取り組まない とな。再発したらもう終わりといわれてるからなあ。  昼飯はひさしぶりに、浜田山の神戸屋キッチンで。  ここのパン食べ放題のセットは、焼きたてのパンを食べさせてく れるので、美味しい。杉並区に住んでいたときは、しょっちゅう来 てた。  と、そこへ、電話が入って『桃太郎電鉄7/4コマ劇場1』の見 本が出来たと衆芸社の高村。これは早く見たいと、四谷の衆芸社へ。  う〜む。ちょっと表紙が地味だったかな。でもいい出来だ。  700円はちょっと値段安くしすぎた気もする。  3月20日から3日間連続で、幕張の東京ゲームショウでトーク ショーをやるので、美容院に行く。きょうしか行く時間がない。  4時に人が来るのでと、いいながら、どうも寝てしまったようだ。 4時30分すぎに、家からの電話で、もうみんな集まってるとの連 絡。これはまずいぞ〜。    あわてて家に帰る。T社の高田さん、増田景子さん、昼飯仲間の ひろたたけしと全員かち合ってしまった。まるで歯医者さんのよう にテキパキと打ち合わせをしなければならない。  T社の高田さんとは、東京ゲームショウの打ち合わせ。  さて、ゲームショウで私のトークショーを見たいという人もいる かもしれないので、限りなく核心に触れてしまってるヒント。  20〜21日まで、毎日午後2時からT社のブースでやります。 このT社さんとは、タイトー、タカラ、田宮模型、ツクダオリジナ ル、このなかのいずれか。かなり絞り込みやすいでしょ。ヒマだっ たら来てね。  増田景子さんと『Jゲーム』の打ち合わせ。  夜、原宿ふるさと館で、ひろたたけしと仕事の打ち合わせをしな がら食事。いよいよひろたたけしとゲームの仕事をしようというこ とでまとまった。でもこれからが長いのが、ゲームの世界。そのう ちにね。 




3月19日(木)

 午前中、高田馬場のタイ国ラーメンへ。  嫁はエスニックが好きだからいいが、私は香りの強いものはまっ たくダメなので、タイのものは苦手だ。おまけに辛いものはダメだ しね。  午後、早稲田の漫画情報誌『コムナビ』編集部へ。 『チョコバナナ・コムナビ出張所』の連載の打ち合わせ。コミック デパートという、インターネット上の漫画についても打ち合わせ。 『コムナビ』新企画についても打ち合わせ。『チョコバナナ』との 今後の提携についても打ち合わせ。  すごい量の打ち合わせを一度にすませたものだ。  夕方、伊東正義が来る。『コムナビ』編集部の打ち合わせに乱入 するといっておきながら、忘れたようだ。伊東正義らしい。  新ゲーム企画について打ち合わせ。  ビッグマウスの宮下さんが来る。  宮下さんは大胆なことに『ラジオ・チョコバナナ』という企画を プランニングしている。実現確率10%を切ると思われるが、企画 してくれるだけでもうれしい。  今はおもしろい漫画が不足しているだけに、いよいよいろんな業 界の人が、『チョコバナナ』の持つ埋蔵量の恐ろしさに目をつけ始 めたことは確かだ。ひとあわ吹かせてやりたいねえ。『チョコバナ ナ』軍団を世に送り出してみたい。はやる心を押さえないとね。 時期ってもんがあるから。 『チョコバナナ』の投稿が増えてきた。順調に漫画も来てるぞ。  一体15巻は何ページにすればいいんだ? うれしい悲鳴を上げ るぞ!  さあて、明日から3日連続で、東京ゲームショウだ。一般の入場は 21日と22日なので、会場で会いましょう。午後2時ね。




3月20日(金)

 東京は朝から強風が吹き荒れて、飛行機の欠航がニュース速報で 流れる。これは大変だなあと思いながら、嫁と宮路一昭くんと3人 で東京駅へ向かう。  東京駅の京葉線駅は、なんと地下4階。この階段に入るまでにひ と駅分ぐらい歩かされる。これはきつい! 必死に歩いても不自由 な足ではちっとも、進まない。  やっと地下駅に着いても、快速はなく、鈍行しかない。  電車が来ても、発車しない。これはやばいぞ! どう見ても、海 浜幕張駅に着く頃には、午後2時になってしまう。  幕張メッセでのトークショウの開演時間は午後2時。ピ〜ンチ!  宮路一昭くんが必死に携帯で電話をして、何とか連絡を取って、 開演を3時に変更してもらった。どうやら会場のほうもこの突風で 大混乱のようだ。  電車は遅れながら、海浜幕張駅に着いて、タクシーで会場へ。  さて、ここでずっとイニシャルで紹介していた『Jゲーム』の名 前をいよいよ発表できる!


 T社の『Jゲーム』!  実はタカラの人生ゲームだった!
 これはびっくりでしょ。しかも正式名称は『さくま式人生ゲーム』。  何て大胆なネーミングなんだ!  さあ、これできょうから『人生ゲーム』とどこでも言える。  とにかく会場に着いて、みなさんに平謝り。  すぐステージへ。上がってさらにびっくり! きょうは業界関係 者のみ入場可能な日だけに、ステージから会場を見下ろすと、知っ てる顔が勢揃いしてるではないか!  週刊少年サンデー編集部の石川さん、ライターでゲームデザイナ ーの柴尾さん(『レナス』をつくった)、キャラメルママの松本社 長、赤松くん、元キャラメルママで、元ジャンプ放送局の常連でも あった原口一也、増田景子さん、ほかたくさんの人々。  そして、ショッカーO野くんの大きな顔が! やられた! いつ も彼のイベントにないしょで観客のふりして入場するパターンをや り返された!  それにしてもこうも知ってる顔が並んでいるとは。まるで『あし たのジョー』の最終話で、リングサイドに昔の人たちがみんな集ま ってるかのようだ。というとまるで私が矢吹丈のようだが、はい、 マンモス西ですな。…というギャグ解る人、もう少ないだろな。  ステージ終了後、何と会場に本家本元盤ゲームの『人生ゲーム』 を作ったルーベン・クレイマーさんが見えられた。突然のご挨拶に なって、緊張。英語しゃべれないよ〜。目上の人に「ナイス・トゥ・ ミーチューユー」とか言ってしまっていいのかわからないよ。  とりあえず「TVゲームのほうを担当させていただいて光栄です」 といったことを通訳してもらった。  長い間言えなかったけど、今年で『人生ゲーム』は、30周年な のだ。それで30個のミニゲームが入った『さくま式人生ゲーム』 の登場となったのがいきさつなのだ。ふうっ。長い前ふりだった。  帰りは津田沼駅までタクシーで出て、JR線でまっすぐ千駄ヶ谷 駅で家まで帰りつくことができた。明日はこのコースで行こう。  明日は、遅刻しないつもりなので、午後2時にタカラのブースに 来てね。




3月21日(土)

 午前中『チョコバナナチップス14集』の執筆。  昨日の失敗に懲りて、午前11時に宮路一昭くんが家に来る。  手堅く、千駄ヶ谷駅から総武線で、津田沼駅まで行って、幕張メ ッセまでタクシーで行く。午後1時前に到着できた。  幕張は遠いなあ。  きょうの東京ゲームショウは、一般客が入るので、昨日とおなじ 会場と思えないような大混雑。入場制限があって、幕張メッセに着 いても、すぐ入れなくて、えんえんぐるぐるまわってから入場する 始末。噂によると、入場者数15万人とか。  午後2時。タカラのブースで『さくま式人生ゲーム』のトークシ ョウ開始。案の定最前列は子どものお客さんが並ぶ。私にはおたく のファンがまったくいないことを証明するかのようだ。誇りでもあ るんだけどね。相変わらず最前列には、うちのグルメ・バカ娘がす わっている。どうもあいつがいるとトークがやりずらくてしょうが ない。「へ〜」という顔をしてこっちを見るのをやめろ!  トークショウ終了後、どこかのメーカーを見ようと思うが、とて もゆっくり見れる状況ではない。まだ完全でない足では安定が悪く、 人の波を泳ぎ切る自信がない。  会場内のレストランで休んで、帰りは幕張本郷駅から総武線に乗 り、新宿に出る。宮路一昭くんを一度連れて行きたかった、伊勢丹 の正月屋吉兆で食事をする。  夕食後、さくらやゲーム館に寄るが、欲しいゲームがない。  つい2階のフィギュア売り場を覗くと、鉄人28号のソフトビニ ールが! う〜ん、どうしよう。うちのグルメ・バカ娘は、アスカ・ ラングレーのほしかったフィギュアが見つかったと興奮している。 ここは娘を出汁にして、どさくさにまぎれて買うに限る。金色した 鉄人28号は、ちょっと野暮ったくて、美しいぞ。  家に戻ると、メールやFAXなどで『桃太郎電鉄7/4コマ劇 場1』が手に入らないという連絡がやたらと届いている。変だな あと思って調べると、これがびっくり! なんと3月末は、年度 末ということで出版点数が多すぎて、年末の宅急便がなかなか届 かない状態になっているそうで、流通がパンクしてるだけで、い ろんな本の発売が遅れているそうだ。ひえ〜、そんなことがある んだ。  本が多すぎるという問題が、ついに本格化してきているわけだ。  出版界は本当にやばいぞ。  夜、原作者のあかねこかサンと長電話。  漫画界の現状を語り合ううちにお互い暗くなる。  もう漫画界は活性化しないのかなあ。漫画は私にとって故郷なだ けに、消えないでほしい。




3月22日(日)

 東京ゲームショウ最終日。  千駄ヶ谷駅前のレストランで食事をして行こうとしたら、お休み。 仕方ないので、千駄ヶ谷駅構内の立ち食いそば屋「更級そば処」で 食べる。ここのそばは非常に美味しい。麺が少し固めで、スープの 味がシャープ。立ち食いそばは健康上あまり食べてはいけないので 食べたのは1年ぶり。  入院する前は、もちろん立ち食いそばが大好きで、そこらじゅう のそばを食べていた。  西武線所沢駅プラットフォームの狭山そば、荻窪駅地下鉄丸の内 線の改札脇などが名所だ。  かなり早く幕張メッセに着いたので、会場の各ブースを覗いてみ る。どのゲームも実写か、ポリゴンで、どれもおなじに見える。技 術的には各社ほとんどおなじようなレベルになってきた。  昨日より入場者数が少ないようだけど、相変わらずの混雑で、へ ばってきた。広い会場だ。  午後2時。最後のトークショウ。昨日よりお客さんが多くてうれ しい。入場者数は減ってるのに。でもコンパニオンのお姉さんの 「みなさん、さくまサンのゲームをいままでプレイしたことありま すか〜?」というと、下を向いておそるおそる手を挙げるのはやめ てくれ〜。すまなそう挙げるな〜。ほとんどの人が手を挙げている のだから「お〜!」と気勢を上げてくれよ。  いつもうちのファンはおとなしい。おとなしくて必ずゲームを買 ってくれる律儀なお客さんばかりなんだけどね。  『チョコバナナ』のチラシを会場で配って、なんとか無事終了。  帰りのJRの座席が暖かくて眠くなる。 『チョコバナナチップス』14集の執筆。 『チョコバナナ』15巻の準備も始める。載せたい漫画だけで、す でに14巻より50ページ以上多くある。そこそこのレベルの漫画 なら100ページ以上あるぞ。減らさないといけない。もったいな いな〜。何か策を考えないと。  




3月23日(月)

『チョコバナナ・チップス』14集の執筆。  午前中、新宿高島屋の向かい側にできたサザンテラスに行く。  広島と宮崎のアンテナ・ショップがあると聞いては、行かざる をえない。  それにしても新宿南口の景観は一変してしまった。  30階建て以上のビルが林立する景色って、すごいよ。私など まだ足が不自由なので、ビルの下からてっぺんを見ようとすると、 ひっくりがえってしまう。  それどころか、新宿自体がストップしたためしがない。いつも 何かが建設中だ。現在の超高層ビルの当たりは、汚水処理場で何 もなかったし、靖国通りには、ちんちん電車が走っていた。南口 は、スラム街のようだった。覚えてる景色がすべて歴史になって 行くのが悲しい。45年も生きてると仕方ないか。シーラカンス のようだ。    で、広島と宮崎のアンテナ・ショップなのだが、どうして最近 のビルは、看板を小さくするのだろう。「KONNE」が宮崎で 「ゆめてらす」が広島ってわかる? 広島と宮崎の字が大きくな きゃ。  おしゃれのためにわかりやすさがうち消されて行く。  だから内容も、ポイントがなくて魅力に乏しい。一応、広島の ほうに食事処があったので、ランチを食べる。骨だらけのサバに 苦戦する。特徴のない料理だ。半年後ぐらいにまた見に行ってみ よう。  午後、野沢ちゃんが来て『チョコバナナ・チップス』の編集。 『げーむじん』の広告の打ち合わせ。 『チョコバナナ』の投稿者・今井一志くんが来て、漫画の添削。  セリフを大幅に直して、『チョコバナナ』15巻の候補作に。  夜、原宿の鳥良へ。鳥の手羽先唐揚げの美味しいお店。うちの グルメ・バカ娘が非常に気に入ってる。値段が安いお店なので、 みんなにもお勧め。ただ午後6時前に行くといいけどちょっと過 ぎると、もう行列。私はここのじゃこ飯が美味しい。  きょうはどてみそかつ、どてこんにゃく、どて大根を頼んでみ た。名古屋名物の八丁みそをつかった料理で、味が濃いけど美味 しかった。このお店は吉祥寺を始め、東京近郊いろいろな場所に もあるので知っている人も多いと思う。 若者が飲みに行くにはいいよ。




3月24日(火)

 午前中、新宿マイシティB1の飛騨高山ラーメンに行く。  最近ラーメン業界では、高山のラーメンこそ、美味しいラーメン との呼び声が高い。昨年岐阜県高山に行った時も、噂の高山ラーメ ンを食べてみようとは思ったのだが、飛騨牛ステーキという絵札の ような魅惑的な言葉にあっさり負けてしまった。今思うと、なぜラ ーメンを食べて来なかったのかと悔やまれる。  で、新宿の飛騨高山ラーメンなのだが、まずくはない。ただもう ひと味が足らない。立地のよさで食べて損はないと思うのだが、味 に深みがないのが残念。やはり岐阜県高山へ行って食べないといけ ないな、と旅に出る口実を作る。  午後、野沢ちゃんが来て、『チョコバナナ・チップス』14集が 完成する。  和歌山から、石橋淑江さんが来て、『チョコバナナ・チップス』 の発送開始。  同時に、野沢ちゃん、石橋淑江さん、嫁と『チョコバナナ』 15巻の打ち合わせをする。  午後2時すぎ。4コマ漫画家のなかむら治彦くんと、ライターの 吉沢晃一くんが来る。スタジオHEGEの名前で、いろんな雑誌に 原稿を書いているライター集団でもある。  話はやはり出版界の現状になってしまう。  う〜む。出版界は厳しいなあ。本当に漫画雑誌の窮状は深刻化の 一途をたどっているようだ。    なかむら治彦くんの最新作は、あの『蕎麦ときしめん』の作品で あまりにも有名な清水義範さんとの共著『笑説大名古屋語辞典』 (角川文庫)。ギャグの好きな人にはぜひ読んでもらいたい一冊だ。




3月25日(水)

 午前中、目黒の権乃助坂を下った左側のラーメン田丸に行く。 以前テレビで見て美味しそうなので行って見たかったのだ。  ワンタンメンを注文。フットボールのようなカレー皿に、ラーメ ンが盛られてくるので一瞬ぎょっとする。  掘り起こすと、煮キャベツがたっぷり出て来て、これが美味しい!  昔、インスタントラーメンばかり食べていた頃も、必ずキャベツ を入れていたぐらいなので、久しぶりのキャベツ入りはうれしい。 キャベツは春が旬だから、よけい今は美味しいんだろうな。  午後、『チョコバナナ・コムナビ出張所』のハガキ選びと、原稿 書き。5月10日発売号の原稿だ。今度は2コマ漫画部門を特集し ようと思う。  中尾淳(旧・プチまる)からFAXが来て、やっと『桃太郎電鉄7 /4コマ劇場1』が店頭に並ぶようになったとの報告が入った。  午後3時すぎ、読売広告の岩崎誠と、平田みどりサンが来る。  岩崎ともそろそろ真剣に仕事したいねという話になって、今度 ひろたたけしを紹介することになった。ひろたたけしは今、脂が のりきった…といおうとして、その肥満体を思い出してやめた。 すでにずいぶん前から、脂がのりまくっている。  夜、新宿伊勢丹会館8Fの「歌行燈(うたあんどん)」に行く。 桑名のはまぐりが名物のお店だ。ここのうどんは、長くてしっかり とした固さで、歯ごたえのある美味しさなのだが、きょうのうどん はちょっと覇気がない。料理人が代わったかな。  近所にカフェオレが絶品のお店があるのだが、マスターのおじい ちゃんじゃない人が煎れると、そこらへんの喫茶店の味になってし まう。味のいい店という評価もなかなか難しいものだ。  まあ、いつもここで注文する、おろしもちは相変わらず美味しか ったからいいだろう。揚げたお餅をたっぷりの大根おろしをからま せて食べるおやつみたいなのだけど、美味しいよ〜。夜中、この日 記を読んでる人、美味しいよ〜。ほ〜ら、お腹が減ってきた〜。 ぐー、ぐー。インスタントでもいいから食べたくなって来たかな〜。  夜中の牛丼って、何であんなに美味しいんだろうね〜。  いかん、こっちまでお腹が減ってきた。自爆してど〜する。    さて、今週は金曜日からまた京都に行くので、いろんな仕事を全 部すませておかないと! 今回は娘の春休みなので、仕事はちょっ とだけの予定。といってもアイデア旅行になるのは間違いない。




3月26日(木)

 午前中、税理士の赤根くんが来る。  会社の決算のお話。お金の話は全然わからない。全部赤根くんと 嫁にお任せしているので、脇でふんふんと聞いているだけ。時折 『チョコバナナ』の赤字がどうのこうのという言葉だけが耳に入っ てくる。はっはっは。苦笑するしかないなあ。    けっこう時間がかかって、お昼すぎになってしまった。  近所のおけい寿司に行く。ここのお寿司は、あわびのキモの握り とか、お茶の握りといった変わったものを食べさせてくれる。ふつ うのお寿司も、それこそいい仕事をしているというやつで、わが家 の総合寿司ランキングで、ずっと5位以内をキープしている。お昼 に行くのは初めてだが、夜のクオリティとまったくおなじというの が、良心的すぎる。しかも値段が夜の2分の1(4分の1?)!  これはふたたび赤丸急上昇だ。  午後、野沢ちゃんが来て、げーむじんに載せる『チョコバナナ』 の広告が完成する。『チョコバナナ』の読者はこの広告を見るだけ のために、げーむじんを買う人がいるそうだ。相変わらず律儀な読 者ばかりだ。 『チョコバナナ・コムナビ出張所』原稿完成。今回は2コマ漫画部 門を特集することにした。  夕方、芸能界の専門雑誌オリジナル・コンフィデンスの取材。  業界専門誌なので、みんなが見ることができない。  ムサシノ広告伊東正義、ユイ音楽工房の篠宮さんが来る。  まだ内緒の話ばかり。いまはたくさん企画を立ち上げている時期。 企画というのは、100個企画して、3つ決まるようなものなので、 なかなかここで教えるわけにはいかない。どれかひとつでも本決ま りになったら、すぐここで発表するからね。本当はいまの段階でも 教えてあげたいくらいおもしろい話ばかりなのだ。  夜、野沢ちゃん、石橋淑江さん、グルメ・バカ娘、嫁と5人で、 原宿のキッチン・スタジアムへ行く。キッチン・スタジアムという のは嘘で、『料理の鉄人』に出てくる対決のキッチンみたいなお店 なので、そう呼んでるだけ。原宿のパスタ系のお店は、横文字が多 くて覚えられないのだ。昨年暮れ、ごひいきにしてたビストロ・ アンティーブが、やっと名前を覚えたとたん潰れてしまった。  原宿のパスタ系のお店は3〜4件行くお店があるんだけど、覚え ているのは、エスコッツというお店だけ。  キッチン・スタジアム、小さな丸いパンの出る店、階段の上の店、 これが私の区別の仕方だ。  通称キッチン・スタジアムは、シャレたお店なので、お金持ちそ うな人や芸能人がよ来る。きょうも女優の高橋ひとみサンだったか なが、来ていた。細〜い。  さて、明日からの旅行の日程が決まらない。インターネットに京 都に行くと書いてしまったばかりに、何人か京都で会いたいという リクエストのメールが届いてしまった。う〜む。仕事が最優先なの で、そうはのんびり人に会ってられないのだ。  また例によって、4月3日までこの日記はお休みです。  どこをうろついたか、誰と会ったか、お楽しみに。 さくま嫁注:キッチン・スタジアム→BASTA PASTA




3月27日(金)

 朝から雨。予定では、愛知県の岡崎と豊橋に行き、中尾淳と落ち 合う予定だった。中尾淳に電話して、岡崎行きの中止を伝える。  病後の私の身体に雨の湿気は禁物で、からきしダメで、2年とち ょっとにして、こうして雨の日に旅行にでかけられることは大進歩 なのだ。今でも囚人が鉄の玉をひきづってるように足が重い。  というわけで、嫁、グルメ・バカ娘、石橋淑江さんの4人で、京 都へ。石橋淑江さんは、和歌山に帰る途中。  着いてすぐ三条河原町近くの梅園に行く。  やきとりのネギ焼きのような、みたらしだんごを食べる。  京都に来てもすることは、まず食べる。これがわが家族だ。  帰宅後、漫画を読む。『ドカベン』17巻と、『ササキ様に願い を』4巻。ベイスターズ・ファンとしては一応読んでおかないとね。  夜、予定では、グルメの師匠・すぎやまこういちご夫妻も到着だ ったのだが、東京での仕事が終わらず、明日直接岐阜県の大垣のほ うへ行く由。京都は4月すぎになりそうと連絡が入る。  祇園の久露葉亭(くろーばーてい)に行く。  ここは京都の老舗・由良之助の真ん前にできた支店。由良之助の 料理をミニサイズにしたような感じで、値段も安く、まだあまり知 られていないだけに穴場中の穴場。  帰宅後、京都から日帰りで行ける場所を調べる。  結構行き尽くしている。明日は醍醐寺にでも行くかな。花見には まだ早いかも。




3月27日(金)

 朝から雨。予定では、愛知県の岡崎と豊橋に行き、中尾淳と落ち 合う予定だった。中尾淳に電話して、岡崎行きの中止を伝える。  病後の私の身体に雨の湿気は禁物で、からきしダメで、2年とち ょっとにして、こうして雨の日に旅行にでかけられることは大進歩 なのだ。今でも囚人が鉄の玉をひきづってるように足が重い。  というわけで、嫁、グルメ・バカ娘、石橋淑江さんの4人で、京 都へ。石橋淑江さんは、和歌山に帰る途中。  着いてすぐ三条河原町近くの梅園に行く。  やきとりのネギ焼きのような、みたらしだんごを食べる。  京都に来てもすることは、まず食べる。これがわが家族だ。  帰宅後、漫画を読む。『ドカベン』17巻と、『ササキ様に願い を』4巻。ベイスターズ・ファンとしては一応読んでおかないとね。  夜、予定では、グルメの師匠・すぎやまこういちご夫妻も到着だ ったのだが、東京での仕事が終わらず、明日直接岐阜県の大垣のほ うへ行く由。京都は4月すぎになりそうと連絡が入る。  祇園の久露葉亭(くろーばーてい)に行く。  ここは京都の老舗・由良之助の真ん前にできた支店。由良之助の 料理をミニサイズにしたような感じで、値段も安く、まだあまり知 られていないだけに穴場中の穴場。  帰宅後、京都から日帰りで行ける場所を調べる。  結構行き尽くしている。明日は醍醐寺にでも行くかな。花見には まだ早いかも。




3月28日(土)

 地下鉄京都市役所前から、地下鉄に乗って、醍醐へ。  去年開通したばかりの地下鉄で、家の近所から醍醐の桜を見に行く んだと楽しみにしていた路線。  しかしこれがあとでとんでもないことになることを知る由もない、 さくまあきらであった。  タクシーの運転手さんからも、醍醐駅から醍醐寺までは15分程度 だということを聞いていた。行ってみてわかった。その「15分」が、 行けども行けども上り坂なのだということを。  それも半端な坂じゃない。バック転がカンタンにできそうなくらい、 後ろに向かって、加重がかかる。しかも不自由な左足は、最近豆がで きてしまって、歩くと痛い。野球選手が素振りのし過ぎで、手に豆が できるようなものだ。その豆に坂道の重力がのしかかる。痛い。バラ ンスを崩すと、どこまでも転がり落ちていきそうだ。息も切れる。途 中、とうとう路肩にへたりこみ、豆にバンドエイドを貼ってもらう。 何とか歩き続けることはできるようになった。  こんな苦労をしてまで行く醍醐寺は、いまのところ京都で一番好き なお寺だからだ。豊臣秀吉が晩年、ここで士農工商、身分の垣根をは ずして、盛大なる花見を開いた。そしてその年の8月に、豊臣秀吉は 亡くなっているのだ。この因縁がこのお寺を特別な趣にしている。秀 吉おたくだからな、私は。  しかも三宝院の庭は、秀吉自らがデザインしたといわれる日本庭園 で、とても秀吉の作とは思えないほど、繊細で美しい。四季折々でい ろいろな姿を見せるので、ことあるごとにここに来ることにしている。  残念ながら、まだ桜は三分咲き程度で、数年前見た、山門までびっ しりの桜には及ばなく、ちょっと残念。  ところが帰りにお抹茶が飲みたくなって、三宝院の脇にある庵に行 ったら、これがなんと、庭を囲むように満開の桜が咲き誇っているで はないか。こいつは得したと、よろこぶ。  どうやら今年の京都の旅は、桜の満開にぶち当たりそうだ。


↑ 太閤秀吉をきどって
 午後3時。京都ロイヤルホテルの喫茶ルームで、エッセイストの永 尾と会う。永尾カルビは今やエッセイスト、コラムニストとして、有 名だが、じつは私の最初の弟子である。20年近く前の古い話だ。  現在彼は関西に戻って、執筆活動を続けている。  話題はどうしても本が売れなくなった出版界の話になってしまう。  永尾カルビの本も最近売れ行きが鈍くなっているという。どの作家 もどの雑誌もどんどん売れなくなっている。けっこう有名な月刊漫画 雑誌が『チョコバナナ』よりも部数が少ないことが多い。このままで は本当に出版界は崩壊してしまうのではないか、心配だ。  午後5時すぎ。永尾カルビは川西市へ。石橋淑江さんは和歌山へ。 それぞれ帰って行く。  夜、新しいお店を開拓しようということになって、「河繁」という 店に行く。美味しかったのだが、ちょっと値段が高い。もう少し安け ればいつも行くお店になれそうなだけに惜しい。今度はランチを食べ に行ってみるかな。  いつもの「M」に行きたくなる。  うちのグルメ・バカ娘は、毎日「M」に行ってもいいとほざく。い つか天罰下るから、少しは努力しろといってるのだが、小学生の努力 なんてたかが知れてるからなあ。通信簿を見るのも忘れるような親だ し。




3月29日(日)

 お昼、九条の湯葉料理専門店「湯葉に」へ行く。うちのグルメ・ バカ娘が最近やたらと行きたい!を連発していたお店。  豆乳から始まって、生湯葉、刺身湯葉、細切り乾燥湯葉、湯葉の 天ぷら、湯葉のお吸物と続く。  こういう湯葉づくしのお店は珍しいので、京都通になりたい人は、 このお店を知っていると、ちょっと自慢できる。  ただ夕方には閉まってしまうので、お昼前に予約したほうがいい。  食後、東福寺の側にある「土渕陶莽(つちぶちとうあん)」に行 く。ここは抹茶と和菓子を食べながら、陶器を見ることができるの でよく来る。窯元であるからして、デパートで買う値段の3分の2、 2分の1で買うことができる。以前16万円の器を8万円にしてく れるといったのだが、悩んだあげくやめたことがある。もう少し器 について詳しければ、価値にふさわしいお客となれるのだが、いま は見て楽しんでる段階なのだ。  昨日もきょうもタクシーの運転手さんが、平野神社の桜が満開の 情報をくれるので行ってみる。確かに満開。でも出店が出てドッと 繰り出す家族連れは誰も桜を見ていない、境内は相撲のマス席のよ うに、区切られていて、完全予約制。商魂たくましすぎて、ちょっ と興醒め。


 午後3時。京都に来ていると、無理に歩いて不自由な足を苦しめ てしまうので、帰宅して昼寝をする。やはり疲れていたのか、5時 すぎまで寝てしまった。  夜は、うちのグルメ・バカ娘、お待ちかねの年間グルメ・ランキ ング2年連続1位に輝く、割烹料理屋「M」に行くことになった。  早くもバカ娘は、喜び、ランニング体勢に入る。必死にお腹をす かせようとしているらしい。きょうはお店まで、20分ほどかけて 歩いて行くことにした。私もお腹をすかせたい。  うちのバカ娘は、途中焼き芋とか、ワッフルとか売っているお店 があると、食事前でもすぐ買って食べてしまうのだが、「M」に行 くとなると、まったく脇目もふらず、ずんずんお店に向かって、突 き進んで行ってしまう。途中よっぽど気持ちがハイテンションなの か、バカ娘はガイコツがプリントされたパジャマを買う(写真参照)。

↑ 顔は見えないが得意満面!
 そしてまた、ずんずん突き進んでいく。  そして「M」。美味しそうな顔、体型のお父さんの料理は、相変 わらず食べる人の気持ちを考えた料理だ。私が脂を気にしていると わかると、お肉も脂のところを削いで、料理してくれる。  お刺身のトロの脂は、身体にいいらしく、自慢のトロをバーナー であぶるトロのたたきが出た。  きょうの料理の最後は、ナスのカレーライス。割烹料理なのに、 カレーライスが出てしまうところが、このお店のすごいところ。 よほど味に自信がなければこういう芸当はできない。満足、満足。  きょうはお土産に、このカレーのルーに、さらに伊勢海老のス ープまでもらってしまった。家族3人とも満腹すぎて苦しいので、 再び歩いて帰ることにした。おかげで、いつもこのお店のあとは、 体重が1キロ増えるのに、きょうは増減なし。こんなことは初め てだ。やっぱり歩くのはいいことだな。 『こち亀』106巻を読んで寝る。




3月30日(月)

 朝から背中が痛い。腰も痛い。長いこと腰痛は出なかったのだが。  やはり疲れているようだ。  明日、天橋立まで行く予定なので、寝る。  何度寝ても眠れる。ひと足早い春眠暁を覚えずか?  高校野球を子守歌に再び寝る。14対1、14対2とやたら点差 が開く試合ばかりだ。0対0が続くと眠りやすいのだが、きょうは やけに派手だ。  金属バットのキン!の音に何度か目を覚ましながらも、5時すぎ まで寝続ける。嫁とバカ娘もしっかり寝ている。家族全員へばって いるようだ。  無理に起きて、夷川の家具店街へ行く。  整体さんに背中が痛くなるのは、ベッドが柔らかいせいではない かと言われていたので、ベッドを代えようと思った。ところが私が ほしいベッドがない。私がほしいベッドというのは、頭のところが、 平らな板になっていて、そこにインバーターの蛍光灯が乗るやつ。 これがない。みんな頭のところは、ついたてのようになっているか、 ライトが組み込まれたやつ。フラットな棚になったやつは、地震の 時に危ないので、製造していないそうだ。私の原宿の家にはあるの だがなあ。  というのも、私はホテルなどの宿泊でも、夜、本を読んでいるう ちに、眠くなって、明かりを消すために、身体を起こすと、目が覚 めてしまうのだ。だから極力手を伸ばすだけで、ライトを消して眠 りにつきたい。みんなはどうやって寝るのだろうか。教えてほしい。  私は2年前に入院したおり、TVのオフタイマーをセットしてお くと、眠れる技を編み出して、20年ほど続いていた不眠症をつい に克服したぐらい、眠ることに関して、まったくの低開発国なのだ。    けっきょく、ベッドはなくて、近くの「Y」で食事。  日本料理が続いていたから、フランス料理が食べたくなった。こ のお店は、昨年のお正月、すぎやまこういちご夫妻、プティ・ポワ ンの北岡ご夫妻と行ったことのあるお店。だから味はいいはずなの だが、京都の掟をつい忘れたのがいけない。  予約の時に、すぎやま先生と以前来たと言わなかったばかりに、 まったく相手にされず、料理のテンポもむちゃくちゃ悪くなってし まった。松雪泰子とRICAKOを足して2で割ったようなお店の 奥さんはとうとう一度も話しかけてこなかった。あの時はあれほど 愛想がよかったのに。本当に京都は、何度も何度も通い続けないと、 まったく接客してくれないし、料理の出るテンポが悪くなる。  早く最後の料理がでないかなと思うのは、ひさしぶりだ。  途中、俳優のピーターが来て、さらにお店の人の愛想はピーター に集中してしまった。昨年のお正月、フランス料理界の巨匠である 北岡さんを前にして、あれほど硬直していたオーナーと同一人物と は思えないなあ。  帰宅後、部屋の模様替え。といってもまだ左半身不随の私に何も できるわけではないので、嫁にやってもらう。まったく役に立たな いやつになっちまったなあと悲しく思う。早く治りたい。  でも部屋が広くなってうれしい。




3月31日(火)

 午前中、近所のイノダ・コーヒ本店で朝食。  ここは多くの文人が愛したカフェで、グルメの師匠すぎやまこう いち先生も食事の後はいつもここへ行こうとおっしゃる。  きょうはお目当ての食べ物があるのだ。  かの時代小説家・池波正太郎さんが「男が食べるサンドイッチ」 と称したビーフカツサンドを食べるのだ。  噂通りすごいボリュームだ。カロリーを考えて、嫁と娘にも食べ させる。ひとりで食べたら、またまた血圧大幅アップになってしま うからだ。  でも美味しいよ〜。肉汁がジューシーだよ〜。太るよ〜。  病気になる前だったら、毎日ここに来て食べてただろうなあ。  病気になってから、本格的な食い道楽になったのは幸せだ。  京都駅午前11時25分発タンゴエクスプローラーで、天橋立に 向かう。1号車座席番号13は、一番前の席で、運転席が丸見えの 席。前方方向が…見えない! いい席だと思ったのだが、こっちの 座席のほうが高くて、運転席のほうが低い。こっちからは進行方向 のレールがよく見えるだけである。期待ハズレとはこのことだ。


 列車は『電車でGO!』でおなじみの山陰本線を走る。  車窓から見える学校はどこも桜が満開で気持ちがいい。  川沿いの桜も美しい。  発車するや、サラリーマン風の鉄道おたくが来て、じっと運転席 を見つめる。何をするでもなくじっとというのがすごい。鉄道おた くは、必ずぶつぶつつぶやいたり、「次は亀岡〜」などと始まるの だが、まったくその気配がない。何てノーマルな鉄道ファンなのだ。  でも綾部まで1時間ずっと立ちっぱなしのままであった。  この後列車は、2度も進行方向が逆になる。入り組んだ路線だ。 昔は天橋立まで直通の電車すらなかったのだから、便利になったも のだ。  午後1時30分過ぎ、宮津駅に着く。天橋立駅のひとつ前で降り るところが、『桃太郎電鉄』の作者。イワシ寿司という名物がある というので、食べに行く。  ちょっとお酢が強すぎて、絶品とまでは言えない。  工夫すれば美味しくなる味だ。  食後、タクシーで天橋立へ。地方ではタクシーに乗って、運転手 さんに見所や、道順を決めてもらうのが一番効率がいい。下手に歩 いたり、バスを乗り継ごうとすると帰れなくなる危険性がある。  冗談で言っていない。昔、秋田県男鹿半島で午後3時で最終便の 船を見て唖然としたことがある。白樺湖でも午後3時の最終バスを 見たことがある。  で、天橋立へ。タクシーは女性の運転手さんだった。  天橋立の有名な股のぞきをしに行くには、ケーブルで行きますか?  リフトで行きますか?と聞かれる。げげっ! 私の飛行機嫌いは かなり有名なのだが、リフト、ロープウェイ、ケーブル電車も苦手 なことはあまり知られていない。言う場面がなかっただけなのだが。  格好つけてる場合ではない。何とかタクシーで登れる所まで登っ てほしい。別に有名な股のぞきなどできなくてもよいとお願いする。  で、連れて行ってもらったのが、成相(なりあい)寺の山頂。  タクシーはローギアでも止まりそうなくらいの急勾配をしがみつ くように登っていく。これならケーブル電車のほうがよかったかと 思うくらいだ。平地だとしてもかなりの距離を走っているぞ。女性 運転手は「ここは札所にもなっていて、この山を歩いて登る人たち もいるんですよ」と説明する。そんなバカな! こんな急な坂を登 るような酔狂な人など、いた! そんなバカなと思った瞬間、目の 前を4人の女性、ちょっとおばさんたちが登っていく。人間の力は 偉大だ。  途中、成相寺の境内になるらしく、400円払う。有料道路なの だ。金取るなよなあと思う間もなく、さらに急勾配となって、本当 にタクシーは止まりそうになる。もう戻ってもいいよ〜。  昔親父の運転する自動車で、箱根を登った時、止まったどころか、 ずり下がっていったあの恐怖が蘇る。今回まだタイヤがきしむ音が しなかったから、何とかガマンできたようなものだ。  バカ娘は、怖いから寝てしまおうなどと、のんきなことを言って いる。あいつは本当に大物だ。  着いた! 着いた〜! 寒いぞ〜。霧雨のような天気だぞ〜。   着いたところは何とケーブル電車で登るところよりもはるかに高 い場所ではないか。けっきょく一番いい見晴らしに来れたというこ とではないか。さては運転手さん、本当はこの坂が怖くて、何とか ケーブルかリフトのほうに追いやりたかったな! 私が運転手なら、 まずこの坂道は登りたくないもんな。  おかげでいい景色が見られたのだから、文句を言ってはいけない のだが、愚痴のひとつも言いたいところだ。でも血液A型はこうい う時も愛想をふりまいてしまう。にこにこ笑いながら写真を撮って しまう。情けない。

↑ 顔で笑って。
 帰りは、天橋立の出発点で降ろしてもらうことにした。ふつう対 岸までタクシーで行き、あの細長い天橋立を1時間かけて歩いて帰 るそうだ。小雨のぱらつくこんな寒い日に、とてもじゃない。また 無理して寝込んだりしたら大変だ。  取材のために、忘れず土産物屋へ。智恵の餅のお店が4件並ぶ。 これは『桃太郎電鉄』の物件になるな。あんころ餅系の味だ。  さて、この時点で、午後4時前。予約した列車は、午後5時30 分すぎ。1時間半以上も時間がある。  午後4時すぎのはしだて8号が発車寸前。窓口で変更してもらう。 しかし時間がない! 跨線橋を渡って2番線の一番前までとても間 に合いそうもない。ここが地方駅のいいところで、駅員さんが、嫁 がキップを買っているあいだに先に行きなさいと私を促す。足の不 自由な私はかけ込み乗車ができないから、本当に助かる。親切な人 たちが多いのがローカル線の旅のよさだ。  必死になって、足をひきずって乗り込むと、すぐに列車は動き出 した。山桜を見ながら、快適な電車旅。  終点の京都駅まで行くと、人混みが大変なのでひとつ前の二条駅 で降りる。地下鉄に乗り換えて、京都市役所駅へ。  予約しておいた「豆水楼」へ行く。豆腐の専門店。京都に来たら、 一度はここを訪れるといい。おそらく値段が一番安く豪勢な気分を 味わえるお店だと思う。3000円で、食べ放題の湯豆腐に、とろ ろご飯まで食べられる。鴨川の景色も味わえるから、京都で豪遊し た気分になれる。    きょうは電車とタクシーでまわってしまったので、まったく疲れ なかった。明日もどこか遠くに行こうかな。


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