2009年11月23日(月)


 昨夜、野沢温泉は雨が降ったのに、朝にはあがっていた。

 午前8時30分。旅館の1階で、朝食。

 ん? また野沢菜がない。  この旅館の人は、野沢菜が嫌いなのかなあ…。  私は野沢菜が大好きなので、野沢温泉の旅館に泊まれば、野沢菜をた らふく食べられるだろうと期待していたのだ。  少なくとも、丼いっぱいの野沢菜が盛られて、お好きなだけ!と言わ れることを想像していた。  午前9時。チェック・アウト。  旅館のお父さんが、ストーブに薪をくべ始めたので、煙が館内に広が って、すごいことに。

 目がしぶしぶ痛い。  タクシーで、駅に向かう。  雲海がすごい。  妙高山が、雲海のなかからひょっこり顔を出しているみたいだ。

 ヒッチコックの映画『レベッカ』のオープニングのようでもある。  霧の中を、車はひた走る。

 午前9時20分。戸狩野沢(とがりのざわ)温泉駅へ。  小さな駅だけど、駅舎は比較的新しい。

 予想はしていたけど、駅前に喫茶店は見当たらず。  お土産品屋も見当たらず。  この戸狩野沢温泉駅は、以前は戸狩駅だったのを、新しい駅舎を立て るときに、野沢温泉がお金を出して、名称に加えてもらったそうだ。  野沢温泉の知名度が高いのに、最寄駅が無いのは不利だからね。

 改札を通って、踏切を渡ってホームに行くのがいいね。  最近どこも跨線橋になってしまって、つらいし、風情がない。  午後9時52分。戸狩野沢温泉駅から、飯山線長野駅行きに乗車。  ここは新潟県から来た電車も、長野駅から来た電車も、ここで折り返 すことが多い。  始発、終着が多いってことになる。  でも新潟県の十日町から来た電車は、一両なのに、長野行きは、3両 編成だ。  長野方面の利用客が多いってことだ。  私も野沢温泉から、北の方角に寄り道してから帰ることを企画してい たのだけれど、いい寄り道の場所が見つからなかったので戻ることにし た。

 まだ朝もやが残っていているなかを電車は走る。  午前10時4分。わずか3駅目の飯山駅で下車。

 実は、飯山線に乗ったことがないので、乗っただけである。  それと、飯山は、アスパラガスの生産量日本一だし、北陸新幹線の延 伸の際は、長野の次の駅に予定されているから、寄ってみたかった。  新幹線の駅は、ここから南に下がって、ちょっと北に行ったところに 出来るそうだ。  いまの飯山駅も、そっちに移るとか。  駅前に東急の創始者・五島慶太さんの石碑があった。  この飯山線を敷設するために、尽力してくれたそうだ。  五島慶太さんが、鉄道院にいたときの話のようだ。

 観光案内所で、七福神巡りが名物だとか、お寺が多ということなどを 聞いた後、タクシーに乗って、小布施をめざす。  アスパラガスの最盛期は、5月だ。  タクシーの運転手さんがこのところ、ずっと天気が悪かったのに、き ょうは、天気がいいし、暖かい。

 笑うしかない。  私のせいと言うべきか?  午前11時。小布施の「北斎館」へ。  ますます天気が良くなって来た。

 90歳まで描き続けた葛飾北斎の記念館だ。  前にも来ている。  美術館というのは、何年振りかで再訪すると、前には気付かなかった ことにひっかかるようになるから、楽しい。  こっちが勉強して得たことをホメてくれるかのようだ。  葛飾北斎は、私にはどうも画家というより、漫画家に思えてならない。  肉筆の線も、漫画の線に近い。    今回は、北斎の生涯を描いた15分ぐらいのビデオを、2本も見てしま った。  これもまた、くりかえし学習だ。

 午後0時15分。いつものように、栗おこわが食べたくて、北斎館の 近くの「小布施堂」へ。  あれ? イタリアン・レストランになっているぞ。  お店の人に聞くと、表道りの本店のほうが、和食だという。  午後0時30分。「小布施堂本店」へ。  おお! ここだ! ここだ!  土居ちゃん(土居孝幸)とも一度ここに来ている。

 ん?? むむ?  メニューに「栗おこわ」の文字がないぞ。 「あの〜〜〜、このお店で以前、栗おこわを食べたはずなんですが、無 くなちゃったんですか?」 「もうしわけございません。栗おこわは、9月、10月の限定商品とな ったおりまして…」 「あっ。前に来たの、そういえば10月だった」  というわけで、信州牛のコース料理。  最初に、柿なますが出た。  柿好きとの私としては、柿なますは、柿の風味を二の次にされるので あまり好きではない。  ところが、このお店の柿なますは、柿の風味が全面に出ていて、抜群 においしいじゃないか!

「そんなにあわてて食べなくても…」と、嫁に言われて初めて、がっつ いて食べていたことに気付いた。ハハハ! 急ぐ必要なかった。

 信州牛もおいしかった。  いい味付けだ。

 このお店は、以前も接客がよくて、その良さが料理にも表れていたの だが、きょうもまたその思いを強くした。

 この「小布施堂」の隣りには、外国人の女性が酒造工場に嫁いで来て、 話題になった「枡一酒造」という酒蔵がある。

 この女性が来てから、この小布施が見事な観光地になったといっても 過言ではないのだが、実はこの「枡一酒造」と「小布施堂」は、おなじ 会社なんだって。  始めて知った。

 伊勢のおかげ横丁を、赤福の会社が作っているようなもんなんだね。  だから、小布施の町に統一感があって、歩道が、10センチ四方ぐら いの四角い栗の木が埋まっていたりしたわけだー。  以前来たときも、よくこれだけ統一感のある町を作れたものだと思っ ていたけど、一社が始めたからなんだ。なるほどねー。  午後1時30分。「日本のあかり博物館」へ。  原始人が木を回して、火を起こす仕掛けから、火打ち石、菜種油の灯 り、ローソク、江戸時代の行燈、ちょうちん、エジソンの電球といった歴史を見る ことが出来る。  展示方法がきれいで、非常に見やすい。  2階の特集は、「浮世絵に見るあかり」。  黒船が描かれた時代に、ギアマンの行燈のようなものが描かれていて TBS『JIN−仁ー』の南方先生が、職人に頼んで注射器を作っても らったのも、あながちウソではないのだとおもった。  この博物館は小布施に来たら、おすすめの場所だ。  午後2時30分。最初に間違えて入ろうとしたイタリアン・レストラ ンの「小布施堂」まで戻る。  栗アイスを食べるためだ。ハハハ!  取材だよ、取材! あくまでも取材。  ほかのお店でも栗アイスを売ってたけど、ここのだけちゃんと栗の粒 が入っているんだよ。 えっ? 確信犯?  センサーが鋭いと言ってくれ。

 うまーーい! うまーーーい! うまーーーーい!  嫁が「ふたりで1個でいいの?」と言ってくれたのを「ひとり1個ず つ!」と言えばよかった よー。はっはっは!  小布施は、以前から全国編の物件駅に加えたかった。  そろそろ登場させたいな。  東京から、北陸新幹線で、長野まで1時間40分。小布施まで30分。  2時間10分は、京都までとおなじ時間だ。  朝、東京を出れば、十分日帰りできる。 「枡一酒造」が作ったおしゃれな旅館もあるので、来年の10月はここ に泊まって、たらふく栗おこわを食べたいものだ。  湯布院が好きな人には、小布施がおすすめ。

 北斎館の近くで、リンゴがあまりに安いのと、試食したらおいしかっ たので、10個ぐらい買う。  しかも、むいたリンゴを売っていたんだよ。

 観光客は、リンゴが食べたいけど、ナイフ持って来てないもんね。  これはいいアイデアだ。  新青森駅でも、ぜひこれをやってほしい。  しかも、6〜7切れ入っていて、わずか100円!  井沢どんすけ価格。  午後3時15分。長野駅へ。  もっと時間の遅い新幹線の切符を一応、買ってあったのだけれど、念 のため「みどりの窓口」で聞くと、この次の新幹線に空きがあるという ので、替えてもらう。  午後3時27分。長野駅から、北陸新幹線あさま534号東京行きの乗車。  VAIOを担いで、キャリーバッグを転がしながら、小布施を歩いた ので、へばった。  あっという間に、熟睡。

 起きてから、小布施で買ったむきリンゴを食べる。  みずみずしくて、おいしい。  午後5時12分。終点、東京駅に到着。  午後5時30分。帰宅。  たった2泊3日の旅行なのに、密度の濃い旅だった。  午後6時30分。娘&孫が来て、恵比寿の「米福」へ。

 魚大好きの孫たちは、ヒラメに、甘鯛、ハマチをおいしそうに食べる。

 3歳の孫妹が「抹茶アイス、食べたい!」と言い出す。  まだメニューが読めるわけではない。  記憶していたのだ。  このお店の抹茶アイスって、本当のにがい抹茶をアイスというよりも、 シャーベットにしたような大人の味なのに、孫たちは大好きなのだ。 「ジッジーは、甘いもの食べないんでしょ?」と、孫姉に意味ありげな 横目の表情で言われる。 「いいもん。ジッジーは、きょう栗アイスを食べて来たから!」 「えー、いいなー!」  どうも会話がどんどん対等になって来ている。  午後9時。娘&孫を家に送ってから、帰宅。 「一生に一度行きたい観光地」のアンケート集計がたくさん残っている。

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