2009年4月9日(木) 午前4時。う〜〜〜ん。旅先だと目覚めるのが早いなあ…。 二度寝を試みるけど、まどろむ程度でなかなか眠れない。 ばったり病ではなく、ファウルチップの話をひとつ。 『ポケモン』の攻略本の編集などで知られる元宮秀介くんが、昨日チャ ットモンチーのライブで、徳島に来てたんだって。 お昼が、徳島ラーメンの「いのたに」で、直後に眉山の頂上に登って、 阿波踊り会館を見学しました…だって! 見事なファウルチップだ。 実は昨日ほぼお昼に「いのたに」に行く予定だったのだ。 徳島駅から、牟岐線に乗る必要があったので、駅近くの「麺王」で食 べて、すぐ電車に乗ってしまったのだ。 徳島に戻って来てからも、阿波おどり会館で会っていても、不思議じ ゃなかった。 インターネットのブログを見ていると、本当に人はよくすれ違ってい るとおもう。 午前9時。1階の喫茶ルームで、トーストにコーヒー。 軽く食べておく。 きょうは大旅行が待っている。 午前10時。一昨日、「海女料理ししくい 」からこのホテルまで乗 ったタクシーの運転手さんに迎えに来てもらって、いざ出発! きょうはこれから『桃太郎電鉄』名物、ワープ駅でおなじみの室戸岬 を抜けて高知をめざす。 『桃鉄』でも、赤マスだらけなので、徳島に着いたときから、どのタク シーの運転手さんに聞いても「高知に行くなら、室戸を通らずに、高速 道路で吉野川沿いに阿波池田まで行って、下がれば早いのに!」と言わ れてしまう。 『桃太郎電鉄』でも線路が繋がっていない場所を行こうとするのだから 酔狂な客としか思われない。 そんなときに、「海女料理ししくい 」で紹介してもらった運転手さん が快く行ってくれると言った。 正直、あまりにも室戸周りコースを断られるものだから、室戸行きを あきらめて京都に帰るかと思ったほどだよ。 ちなみに、昨日の徳島ラーメンの「麺王」を教えてくれたのも、この 運転手さん。 おまけに元宮秀介くんが徳島まで見に来たチャットモンチーの一人は、 運転手さんの娘さんと同級生だそうだ。 これまた、びっくり。 この運転手さん、徳島市長と同級生だったりして、不思議な人。 でも非常に誠実な人。国道55号線を南下する。 おおそ150キロの旅が始まった。 外は、真夏のようないい天気。 何度もいうが、私が取材で旅に出たとき、晴れるだけであって、わざ わざ快晴を狙ってから、旅に出ていない。 午前10時30分。道の駅「公方の郷なかがわ」に寄ってもらう。
一級河川の那賀川と、室町時代から足利公方が、約270年間住居を 構えたところから、「公方の郷なかがわ」とついたらしい。 公方というと将軍の別称だけど、足利家の人をみんな公方と呼ぶ場合 もあるので、どれだけ偉い人だったかよくわからない。 しかも公方様の住居は、ここからちょっと遠いところにあるらしいの で行くのをあきらめる。
なお、この近くに「義経橋」というのがあって、源義経伝説がこんな ところにあったっけ?と思ったら、屋島の戦いの前に、源義経が最初に 四国に上陸したのが、小松島(こまつしま)市だったのだ。 ここで徳島ラーメンの半生麺をたくさん買おうとおもったら、品数少 なく、がっくり。 地方になればなるほど、道の駅は、産地直販の場所となって、あまり 観光客向けのものではなくなって来ている。 徳島地方ではおなじみの金時豆入りちらし寿司を探すけど、ない! 運転手さんの話では、徳島市内ならどこでも売っているそうだ。 昨日行った阿南を過ぎたあたりから、前方左に海が見えて来た。 沿道、お遍路さんの姿がぽつぽつと見える。 1日8000歩が限界の私には、四国88ヶ所を巡るお遍路さんが、 信じられない。
でもこれほどまでに有名で、お年寄りのみなさんがたったひとりで歩 き続けるのだから、そのうち私も「お遍路さんの旅に出たい!」とか、 言い出すのだろうか? 人の将来は、誰にもわからない。 午前11時30分。道の駅「日和佐」へ。
ウミガメの産卵で有名な町。 博物館もあるのだけれど、とにかくきょうは夕方過ぎには、高知市内 入りしたいという命題があるので、先を急ぐ。 この辺から、海がキラキラ光る海になって来て、見ているだけで気持 ちいい。
道の駅「日和佐」から見える四国第23番霊場の「薬王寺」に咲く桜 が燃え上がるように美しい。
四国一の厄除けの寺だけに、年間百万の人が参拝するそうだ。 仁王門から、三十三段の女厄坂。 本堂まで、四十二段の男厄坂があると聞いて、上手いね!とは思うけ ど、登りたくはない。 この軟弱な気持ちもいつか変わるのだろうか。 まだここから室戸岬まで、80キロメートルの表示。 車なのに、遠いと感じてしまう…。 午後0時20分。道の駅「宍喰(ししくい)温泉」へ。 ここらで食事をしておかないといけない時間なので、道の駅のレスト ランへ。
私は、あおりイカの天丼。 嫁は、カツオ炙り丼。
宍喰といえば、一昨日食べた海賊(残酷)焼きが、有名。 この道の駅に近づくにつれて、「海賊焼き」ののぼりが増える。 ここでも、海賊焼きが、料理のメインになっていたけど、きょうもま た食べるには、ヘビーだ。 海鮮丼のようなものがあれば、このあたりだと、どれを食べてもおい しいとおもうのだが、やっぱりここでは海賊焼きを食べてほしかったよ うだ。 午後1時30分。ついに、念願の室戸岬に到達! 『桃鉄』のワープ駅だ。 ワープ駅というのは、もともと行ったことがないので、ワープ駅にし ていることが多い。 でもこの20年間で、八丈島は『桃鉄』を作る前に行って、苫小牧、 千歳、日南とワープ駅を設置したころ行ったことのない場所は、みんな 取材して、残るはこの室戸ただひとつだったのだ。 何とか『桃鉄20周年』までに行きたいと思いつつ、あそこもここも 行かなきゃと後回しになっていた。 徳島市内のタクシー運転手さんにことごとく断られた場所だけに、こ こまで来るのは、並大抵ではない。 しかし「ここが室戸岬!」という大きな石碑もなければ、にぎにぎし い室戸岬グッズを売りまくる売店もない。 ずらりと売店が並んでいるのだとおもった。 あっけにとられる。
森進一さんの襟裳岬は、♪何もない〜、春です〜だが、室戸岬は、♪ 店もない、春です〜だ。 いや。ほんとに何もないのにびっくり。 運転手さんに何度言われても「ほんとにここが室戸岬なんですか?」 と聞き返した。 でも高知県をインターネットで調べていたときに、よく見た中岡慎太 郎像が、すぐ後ろに見えてるから、間違いない。 中岡慎太郎は、明治維新、坂本竜馬の海援隊に対して、陸援隊を結成 し、薩長連合のために奔走し、坂本竜馬が京都近江屋で暗殺されたときに、 おなじ部屋にいて、坂本竜馬とともに、凶刃に倒れた。
しかもこの中岡慎太郎像、意外と大きい。 この中岡慎太郎像、一説には、桂浜にある坂本龍馬の銅像を向いてい るらしい。ほんとかな。 海に近づいてみる。 砂浜というより、岩場の連続だ。 小学生たちが、遠足か何かで来ていた。
「塩水なめたがや〜!」 おお! ネィティブ土佐弁だ! 小学生なのに、いい発音してるなあ! 当たり前だ。ハハハ!
午後2時。道の駅「キラメッセ室戸」へ。 「鯨館」という博物館が併設されていたので見に行く。
おお! いきなり天井からマッコウクジラがぶら下がっている。 当たり前すぎる感想「でっけええ〜〜〜!」を叫ぶ。 室戸市出身の鯨の砲手の名前が一覧表になっていた。 9000頭以上、射止めた砲手もいる。 昔は、花形な職業だったんだろうね。 おお、どの人もほとんどが、大洋漁業の所属だ。 横浜ベイスターズの前身・大洋ホエールズの親会社は、大洋漁業だっ たので、大洋漁業への思い入れは強い! 思わず「えらいぞ!」と叫び、♪行くぞ大洋〜! 行くぞ大洋〜!と 昔の球団歌を歌ってしまう。
この「鯨館」から見える海が雄大で、素晴らしい。 天気がいいので、ここで1時間くらい日光浴していたい。
「鯨館」のお土産品売り場で、ウツボの珍味「おもうつぼ」というのを 売っていた。 思わず笑ってしまったので、クジラの大和煮といっしょに購入。
「キラメッセ室戸」もまた産地直売所。
文旦、はっさく、びわ、ヤマモモなどを売っている。
午後2時30分。予定になかった吉良川の古い町並みに寄る。
明治時代後期から、大正時代にかけて、土佐備長炭の廻船で栄えた町 並みで、家の外壁に小さな庇(ひさし)が、サメの歯のように何段かつ いている。 この変わった庇は、「水切り瓦」と呼ばれるそうだ。
こういう建造物は見たいことがなかったので、大興奮。 さらに「いしぐろ」と呼ばれる石垣を家の周りに築く独特の景観も素 晴らしい。 なかには、丸い石を半分に割って、割った面を外側にして表面を平ら に見せる積み方をしている。 すごく雰囲気があっていい。
ほかにもレンガの家があったりして、この町が昔、本当に栄えたこと が、はっきりと偲ばれた。 これは、ひさびさに大宣伝したくなるような町並みを見つけたと、小 躍りしたのだが、喫茶店ぐらいしかなくて、お金を落とす場所がない。 国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されているだけで、せっかく ここに来ても、お金がつかえないと、思い出も残らなくなる。
しかも、この後、安芸に至るまでの道のりで、あれだけ興奮した「水 切り瓦」の建物を、あちこちで見てしまうのだった。 吉良川の古い町並み特有のスイーツや、雑貨、Tシャツなどを売り出 さないかぎり、吉良川がもっと有名になるのは、難しそう。 でも数年後の評判を聞いてみたいものだ。
午後3時18分。奈半利駅へ。
ここは、2002年に開通したばかりの土佐くろしお鉄道阿佐線(愛 称:ごめん・なはり線)の終着駅だ。 出来れば、数駅区間でもいいから乗ってみたかったのだが、10分ほ ど前に電車は出て行ってしまったばかり。 駅は、エレベーターで3階まで登る。 エレベーターで上がると、目の前はもう小さな改札口。
ちょっとがっかり。 でもこの3階には、イタリアン・レストランがあるし、1階にはお土 産品売り場になっていて、鉄道だけのための駅として作られたものでは ない仕掛けが非常にいい。 もともと、この「ごめん・なはり線」は、1駅ずつに、アンパンマン のやなせたかしサンが描いたキャラクターが設定されている。 駅は、地図や時刻表に必ず乗るわけだから、ランドマークとしては最 適なのだから、こういう風に1駅ずつ本屋さんだったり、雑貨屋さんだ ったりする鉄道路線が出来てもいいとおもう。 鉄道は家賃収入で運営すれば、赤字も解消されるとおもう。 えっ!? 中岡慎太郎館は、ここから10分? 何をどこで間違えたのか、私は中岡慎太郎館は、馬路(うまじ)村に あると思い込んでいた。 この馬路村は遠くて、高知に何日間か泊まったときじゃないと、とて も行けないような場所だと思っていた。 あわてて運転手さんさんに「中岡慎太郎館に行ってください!」と叫 ぶ! こころよく運転手さんは、向かってくれたのだが、中岡慎太郎館への 案内板が、道路を左折したり、右折したりする寸前に案内板があって、 運転手さんが、四苦八苦する。
しかも「中岡慎太郎館」は、午後4時30分閉館。午後4時までに、 入館してくださいとある。 あと30分しかない。 案内板の表示もこころもとない。 はたして午後4時までに、中岡慎太郎館にたどり着けるのだろうか。 うわ〜。発電所まで見えて来た。 急峻な地形だ。 中岡慎太郎はこんなところに生まれて、なぜ明治維新の風雲に巻き込 まれて行ったのだろう。 誰もがここで生まれたら、ここで一生暮らす覚悟を決める努力をする ほうが楽だとおもう。 午後3時50分。うひょ〜! 閉館10分前に着いた! 北川村という、ゆずの生産で有名な場所だ。 わずかながら集落がある。 中岡慎太郎館の建物の屋根にもまた、吉良川で見た水切り瓦が用いら れていた。
中岡慎太郎は、この村の庄屋さんで生まれたので、お坊っちゃんだっ たみたいだね。 その後、お寺の塾などで頭角を現し、武市半平太の道場に入門したの が、きっかけで明治維新の風雲へと巻き込まれて行ったようだ。 人との出会いは、本当に180度回転させてしまうものだねえ…。 いやあ、この10年間一度訪ねてみたかった「中岡慎太郎館」に来れ てよかった。 館内は、撮影禁止か。 たいした遺品もなくレプリカばかりなのだから、撮影禁止にするほど ではないけれど、何より、このひんやりと空気の澄み切った風景の地で 生まれたこの場所から、中岡慎太郎という人物が世に出る不思議を味わ えことがうれしい。 いやあ、満足、満足。 日本全国津々浦々の私も第4コーナーを回ったような気にさせてくれ た徳島→室戸→中岡慎太郎館の旅だった。 ほぼこれで、きょう1日の日程は終了なのだが、おまけであと1ヶ所 だけ寄って行く。 中岡慎太郎館に寄ったので、1時間ぐらいのロスタイムを作ってしま った。 安芸市に入った。 坂本竜馬の文字と、写真が急に増えて来た。 来年の大河ドラマが、歌手の福山雅治くん主演で『龍馬伝』だから、 あちこちでNHK対策が始まっている。 午後5時。ごめん・なはり線の安芸駅も、通り過ぎて、球場前駅へ。 球場前というから、野球場の前の駅だ。 安芸市営球場だ。 要するに、阪神タイガースのキャン地で有名な球場だ。 虎のキャラクターもあちこちにある。 ということは、この駅を写メして、岩崎誠に送るためにわざわざ寄っ たのである。
「ここはどこの駅かな〜?」 岩崎誠から返信が来た。 「あれ? あれれ? 安芸じゃないですよね。確か単線でしたよね…」
ふっふっふ。そのまさかの安芸だよ。 本当は電車に乗って、この駅でもう一度運転手さんに拾ってもらうつ もりだったんだけど、乗り遅れたのだ…という話は、岩崎誠に伝えない。 練習場の画像も送ってあげる。
「やられたぁ〜。さくまさんの行動力には負けました。来年は必ず安芸 キャンプ行きますよ。写メ見ると益々悔しい〜昨日の渡り蟹よりくやし ぃ〜です」 別に安芸のキャンプ地に2軍の選手がいるわけではないんだから、悔 しがることないのに。 しかも、岩崎誠は今朝、腰痛が悪化してコルセットして打ち合わせに 行ったそうだ。 阪神タイガース奇跡の大逆転、金本選手の1試合3ホームランに浮か れすぎたのでは? ちなみに来年のNHKの『龍馬伝』は、のちの三菱財閥の祖となった 弥太郎の視線から描くらしい。 岩崎弥太郎は、この安芸市の出身だ。 うちのスタッフには、岩崎ハゲ太郎という悪の財閥の開祖がいる。 ハハハ! 午後6時30分。高知市内に入って、はりまや町の7デイズホテルへ。 予約をしていなかったのだれど、運よくチェックイン出来た。
このホテルも、低層の小さくて、きれいなホテルだ。 値段も非常に安い。 47都道府県の1軒ずつ別荘を持つ(嘘)私だから、もっとゴージャ スでラグジュアリーなホテルに宿泊してもいいのだが、値段が高いホテ ルは、見晴らしが良くて、高所恐怖所の私にはつらいホテルになってし まう。 いやあ、ついに高知に到達した。 徳島→室戸→高知。 このコースを一度回りたかった。 午後7時。荷物を置いてすぐ、帯屋街のアーケードを通って、高知城 のほうまで歩く。
きょう1日、キラキラ光る海しか眺めていなかったので、帯屋街のア ーケードが大都会に見える。 アーケードを抜けた先に「ひろめ市場」がある。
市場と言っても、海鮮市場ではなく、屋台村だ。 平成10年10月にオープンしたというから、まだそんなに経ってい ない。 前回高知に来たときは、この市場の存在に気づかなかったけど、今回 インターネットで高知を調べると、やたらとここがヒットした。 真ん中に大きなテーブルがたくさんあって、周りにいろんな屋台が、 63店舗もある。 この店舗から好きなものを買って来て、テーブルで食べる。
高知名物・カツオのたたきの名店・明神丸もあれば、屋台餃子として 有名になった安兵衛餃子もある。 さらに、ラーメン、カレー、蛸焼、インド家庭料理のお店まである。
100円ショップのように、あれこれ買って来て、テーブルの上に並 べる。
炙りサーモン、クジラの竜田揚げ、カツオの塩たたき、どろめ(イワ シの稚魚)、のれそれ(穴子の稚魚)、安兵衛餃子などを平らげる。
いかにも嫁の友人である放送作家の清正まなつチャンが好きそうな屋 台村なので、嫁が写メを送ると「なぜ私がそこにいないのー」と、返事 が返って来た。
午後8時。場内アナウンスが鳴った。 「8時になりまそたので、高校生のみなさんは、おとなの人に席をお譲 りください」 おもしろいアナウンスだ。 健全でいいなあ…。 「お帰りがあまり遅くなりませんように…」 言葉がていねいなのがいい。 混むのも無理がない。 これは今後、高知に来たら、食事の場所は「ひろめ市場」に限るな。 土居ちゃん(土居孝幸)が、好きそうな場所だ。 7デイズホテルは、きれいでコンパクトで非常にいいけど、もうちょ っと「ひろめ市場」のそばにホテルを取りたくなるほど、この屋台村が 気に入った。 次に来るときは、帯屋町のリッチモンドホテル高知に泊まったほうが よさそうだ。 午後8時15分。7デイズホテルに戻る。 疲れが溜まってきた。 早く寝たほうがいい。
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