6月23日(木)

 午前6時。外は雨。
 旅行の準備。
 これから取材旅行なのに、雨とは。
 荷物をたくさん持っての移動はつらいなあ。

 …って言っておきながら、最近私まで自分が仕事で旅をするときは、雨が降らない
と信じ始めているよ。
 でもなんたって、いまは梅雨の真っ最中だからね。
 さすがにきょうは無理でしょ。

 とおもったら、嫁が着物を着て行きたいと言うので、少し待っていたら、雨は霧雨
になってきた。
 この調子なら晴れそうだぞ。

 午前9時30分。嫁と、東京駅へ。
 新幹線のチケットを買って、東京駅中央口の脇にある「駅弁屋」で駅弁を選んでい
るうちに、米沢の「牛肉ど真ん中」が目の前で入荷した。
 お店の棚に並ぶ前に売ってもらう。
 もうひとりサラリーマン風の人も、私といっしょに届いた箱から買っていた。
 人気あるな。「牛肉ど真ん中」!

 発車まで時間があるので地下の「資生堂パーラー」で、カフェラテ。

 午前10時16分。東京駅から、東北新幹線Maxやまびこ49号盛岡行きに乗車。
外は曇り空になってきた。
 やっぱり私が取材旅行にでかけると晴れるの法則は生きているようだ。

 まずは米沢の「牛肉ど真ん中」を食べる。

 きょうから取材として称して、あれこれ食べまくるとおもうので、ご飯を半分以上 残す。もったいない!  車中、『桃太郎電鉄モバイル(仮)』のマップの直し。  クリエイターというのは、最新作の『桃太郎電鉄モバイル(仮)』のテスト・プレイ を始めたら、のめり込んでしまって、なかなか『桃太郎電鉄15(仮)』に戻れない。 困った習性だよ。  すでに『桃太郎電鉄15(仮)』はチューニングの段階に入っているから、未知の 喜びは少ない。 『桃太郎電鉄モバイル(仮)』はいまの段階だと、いくらでも冒険ができるので、楽し くて仕方がないのだ。  新白河駅を過ぎたあたりから、『桃鉄研究所』のコメント書き。

 午後1時30分。新花巻駅で下車。  あぢぢ…。 あぢぢ…。  北の国なのに、暑いよ。

 花巻は、宮沢賢治の故郷だ。  駅を降り立ったところから、売店に宮沢賢治関係のお土産品やグッズがいっぱい。 いかに宮沢賢治が地元の人たちに愛されているかがわかる。  いくつかある宮沢賢治ゆかりの地をこれから巡るんだけど、まずはその前にわんこ そばの取材。わんこそばというと、もちろん盛岡が有名だけど、実はわんこそば発祥 の地は、この花巻なのだ。  400年の昔。南部藩のお殿様が参勤交代で江戸に上る途中、花巻城に泊まった。 そのとき名産のおそばを差し上げたところ、何杯も何杯もおかわりした。  このときおそばをお椀に持って出したので「わんこそば」と呼ばれるようになった といわれている。  午後2時。「嘉司屋(かじや)」へ。  このお店は、宮沢賢治が生家から3分だったので、よく食べに来たということで有 名だけど、昭和34年「わんこそば大会」を最初に催したお店としてのほうが、もっ と有名。  いまでも花巻では毎年2月11日に、5分間で何杯食べられるかを競う大会が開か れている。

 私も若い頃は、わんこそばに挑戦したけど、あるとき何杯食べられるかを競うので はなく、ゆっくり食べたら非常においしかった。  それ以来、わんこそばはふつうに食べるようにしている。  おそばを苦しくなるまで食べるのはどうかとおもう。  観光客も一度経験したら、二度、三度と挑戦する人は少ないのではないか。  それよりおそば本来のおいしさを伝えるべきだとおもう。  南部藩のお殿様のようにおいしかったときだけお代わりしたいものだ。  というわけで、ここでも、15玉のひとくちそばを注文。  木箱にくるるんと丸まったおそばが、15玉乗っている。  なめこ、とろろ、海苔、わさび、もみじおろしなども付いているから形式としては、 わんこそばだ。

 おそばのたれが甘くて、おいしい。 「わんこそばは、ゆっくり味わって食べましょう!」を、私は今後も提唱したい。  午後2時30分。観光タクシーを呼んでもらって、まずは花巻の市街を走ってもら う。ご他聞に漏れず、市街はシャッター商店街。  大きなスーパーが進出して来て、どんどんお店が閉まっていくそうだ。  このシャッター商店街の再生方法はないものだろうか。  北上川のイギリス海岸へ。  宮沢賢治が、イギリスのドーバー海峡に見立てて、イギリス海岸と呼んでいたんだ けど、子ども心に、何で川を海岸なんて呼んでいたんだと不思議におもっていた。ほ かにも宮沢賢治は、岩手のことを「イーハトーブ」と呼んだり、ただの妄想狂じゃな いか?とおもった時期もある。  ところが宮沢賢治は、採掘工場の技師だったので、地質学についてくわしかった。 だからこの北上川が、ドーバー海峡とおなじ凝灰質の泥岩地質なので、イギリス海岸 と名づけたそうなのだ。  ただ思いつきで付けたわけではないわけだね。

 実は、この数ヶ月ここに来るつもりで、ずっと宮沢賢治の本を読み返していた。  私の場合、『桃太郎電鉄』に銀河鉄道カードを登場させたり、ハリケーンボンビー の擬音は『風の又三郎』に対するオマージュだったし、ボンビラス星は『注文の多い 料理店』をイメージしていたりする。  そのくらい子供の頃、宮沢賢治の本をたくさん読んだ。

 ところが今回読み直してみて、驚いたことがある、  子どもの頃に読んだ宮沢賢治の作品と、今回読んだ文庫本に収録されている作品は どれも相当イメージが違うのだ。  とくに『銀河鉄道の夜』は、お風呂に浮かべても大丈夫という本を買って、毎日お 風呂で読んでみたんだけど、子供の頃に読んだ『銀河鉄道の夜』と、まったく違う印 象なのだ。  どこがどう違うのかも、さっぱりわからない。  カムパネルラとジョバンニもおなじなのに、途中で「(以下数文字分空白)」なん てものが登場したことをまったく覚えていない。  あわてた私はその後、必死に宮沢賢治の作品を読めば読むほど、当惑するばかりだ。  数日前にようやく『注文の多い料理店』で、昔読んだままの雰囲気の通りだったの で、ホッとした。  そんなことがあって、一度この花巻に、宮沢賢治の正体を確かめたくてやって来た。  午後2時45分。「宮沢賢治記念館」へ。  ガイドブックだけ見ていたら、こんな高台にあると気づかなかった。

 おっ! 記念館の前には、『よだかの星』をイメージした大きなオブジェだ。

 案内板も、『銀河鉄道の夜』をイメージした鉄道の信号機風になっているんだ。  凝ってるなあ…。  平日なのに、よくお客さんが入っている。  最近どの作家の記念館、博物館は平日だと、どこでも貸切状態なのに、たいしたも んだ。  ここでは宮沢賢治の生原稿をふんだんに見ることが出来る。  しかも、赤ペンで文章を訂正しているんだけど、かなりくっきり訂正前の文章が読 める。  これは文筆業としては、貴重な展示物だ。  これが司馬遼太郎さんになると、書き直す前の文章をぐるぐるていねいに消してし まうので、推敲前、推敲後の変化を見ることができない。  舞台裏マニア、メイキング映像マニアの私としては、興奮が加速度。  ふくふむ…。2行続けて「指して」となっているところを、ひとつに減らしている な…。これは私もよく読みなおして消すぞ。 「あなたは知っているのでしょう」を「あなたはわかってゐるのでせう」に変更して いる。  意味合いを強くしたかったんだな。  驚いたのは、宮沢賢治という人は、作品をちょっとだけ推敲するのではなく、いっ たん書き上げたものを何度も、何度も作りなおすんだね。  私も一度書き上げた作品を平気で作りなおすやり方が珍しいといわれていたので、 ちょっとうれしかった。 『銀河鉄道の夜』なんて、第1稿、第2稿、第3稿、第4稿まであるそうだ。  しかも、あげくのはてに、未完で終わっている。  残った人たちが、遺稿を繋ぎ合わせて出版したようなんだけど、原稿用紙の裏に殴 り書きされたものは、本当に宮沢賢治が伝えたかった文章なんだろうか。 『風の又三郎』も『風野又三郎』とある原稿もあった。  時には、原稿用紙がなくて、途中から、わら半紙で書かれているのが、生々しい。 あの有名すぎる『雨ニモマケズ』の詩集は、宮沢賢治の死後ノートに書かれたものが 発見されて、世に出たのだから、珍しい出版のされ方だよねー。  本当は、ほかの人が『雨ニモマケズ』の作者だったりして。  宮沢賢治は、37歳の若さで亡くなってしまったから仕方がないんだろうけど、生 きてる間まったく売れないで、死後売れる人の人生って、何なんだろうね。  私は生きている間に評価されたいよ。  あらためて、『桃鉄研究所』にメールをくれる人たちに感謝する。  宮沢賢治ファンなら、この記念館は1週間住み込んでもまだ飽きないだろうねえ。 売店で、『宮沢賢治「銀河鉄道の夜」の原稿のすべて』という本があったので、買っ ていく。  原稿を推敲する様を心行くまで読みふけることができる。  ただ館内撮影禁止で、この立派な記念館の雰囲気をみんなに伝えられないのがとっ ても残念。プラネタリウウムっぽい部屋があったり、宮沢賢治の生い立ちビデオが流 れていたりして、宮沢賢治の本を3冊以上読んだことのある人なら、きっと感動する。  午後3時30分。「宮沢賢治記念館」から、「宮沢賢治イーハトーブ館」に向かっ て、歩いていく。

 宮沢賢治の作品をイメージした花壇や、日時計などが植わっているんだけど、いか んせん暑い。とてつもなく暑い。あぢぢ…。  あきらかに日に焼け始めている。 「宮沢賢治イーハトーブ館」へ。  こっちは水をイメージしたコンクリート打ちっぱなしの近代的な建物だ。

 入場料無料?  ここは宮沢賢治を研究する人たちが、学会を開く場所らしい。  展示物は、その研究者たちの発表物だらけで、とても私ごとき半可通の宮沢賢治に はちんぷんかんぷんでございまする。

 でも、宮沢賢治の作品がいっぱい新刊で書えるのはいいね。  東京の書店さんではいま、あまり宮沢賢治の本を置いてなかったんだよ。  まだ読み直していない作品を補充することが出来た。  ますむらひろしサンの漫画版『銀河鉄道の夜』と、DVD『銀河鉄道の夜』も売っ ていたので、買う。  午後4時。イギリス海岸から宮沢賢治記念館まで乗せてもらったタクシーの運転手 さんがいい人だったので、また来てもらう。  新花巻駅まで、旅行用の荷物を寄る。  私が手足が不自由なので、嫁が駅に預けたキャリーバッグ2個を取りに行ってくれ る。  ところがいい運転手さんで、、わざわざ駅まで嫁の手伝いに行ってくれた。  こういう人に会えると、その町の印象がぐーーーんとアップする。

 午後4時30分。「羅須地人(らすちじん)協会」へ。  大正15年。30歳で花巻農業高校の教職を退任した宮沢賢治は、ここで青年たち に農業指導を行った。  ここは宮沢賢治ファンには有名な場所だが、花巻農業高校のなかにあるとはおもわ なかった。 「宮沢賢治先生の家」とあるのは、宮沢賢治がこの学校の先生をしていただからだね。 納得。

 平日は、「羅須地人(らすちじん)協会」を見るのに花巻農業高校まで、鍵をもら いに行かないといけない。  私たちはちょうど見学の人が鍵を受け取りに行って帰ってきたところなので、手続 き無しで見学することができた。 「羅須地人協会」の手前の東屋に、女子高校生がふたり座っていた。  おそらく花巻農業高校の生徒だろう。 「こんにちわ〜」  おや、えらいな。 「どちらからいらしたんですかあ?」  この学校、いい教育しているなあ…。  宮沢賢治の作品から抜け出たような素朴さだ。 「羅須地人協会」に入る。  本当にこの家の黒板に書かれていた「下ノ畑ニ居マス」を、いまもチョークで書き 継いでいるのがいい。

 もともとここは宮沢賢治の父親の別荘だった家だそうだ。  太宰治にしても、生活が裕福でないイメージの作家が、けっこう裕福な家に生まれ ていることが多いのがおもしろい。  さっきの女子高生たちが、解説のボタンを押して行ってくれた。  私たちがボタンに気づかなかったからだ。  ひょっとしたら、高校で宮沢賢治当番のようなものがあるのかのしれない。  宮沢賢治ゆかりの地めぐりは、ここで終了。  まだ「宮沢賢治童話村」とか、駅前の「山猫軒」とか見たい場所もあったけど、そ ろそろ閉館時間だ。  それにしても、宮沢賢治は花巻の人たちに愛されている。  欲をいえば「宮沢賢治記念館」に、軽便鉄道でいいから、銀河鉄道を走らせてほし い。  午後5時。花巻温泉郷へ。  割烹旅館「廣美(ひろみ)亭」へ。

 暑かったので、何はともあれ、温泉にザブン!  熱海のわが家の温泉よりも、小さい。  でも、すべすべで気持ちのいい泉質の温泉だ。  ただかけ流しの源泉を誇張するあまり、お湯を止められないのが困った。  熱いよ。水で薄めると温泉の質が落ちるのを知っちゃったから、薄めたくないしな あ。  水道の蛇口を閉め忘れることを非常に怒られた世代だけに、1日じゅう流しっぱな しがもったいなくおもえてしまう。

 午後6時。日本旅館特有のテーブルを埋め尽くすばかりの料理が並ぶ。 「割烹旅館」を標榜するだけあって、くちの奢った私たちでもびっくりするほど、海 産物がおいしかった。  これだけおいしいマグロって、まず東京でもそうそう食べられないよ。

 天ぷらは出さないのがこの旅館の社長の方針なんだって。  いいよねー。中途半端な天ぷらを出す旅館って、二流の象徴みたいなところがある から、潔い。  固形燃料で焼くお肉が無いのもいい。  午後7時。これでまたきょうも横浜ベイスターズが快勝すればいいんだけど、岩手 テレビで中継が始まる頃には、4−0。  しかも見る見るうちに、期待の新人投手・那須野巧投手が連打、連打を浴びて、1 点、2点、6点、合計9点も取られる。  牛島監督は、那須野巧投手を育てるために、あえて交代させず、続投させる。  昔の気の強い投手たちには、この育て方で成長したけど、いまの若者にこの育て方 はあまり通用しないとおもうのだが、どうだろう。  那須野巧投手が気の強い選手であることを願う。  けっきょく、14−2で完敗。  でもヤクルトが広島に負けたおかげで、まだ3位。  広島ファンには悪いが、広島が30連敗くらいして、横浜ベイスターズの最下位脱 出確定のほうが、優勝を狙える位置よりも早く見たい!  食後も、温泉。  やっぱり部屋つきの温泉はいいな。  これが毎回大浴場だと、1回行って終わりにしちゃうもんね。  夜中に目が覚めたら、また入ろう。

 
さくまNEWS


◆「プロ野球ナイト」のライブの続編決定!

日時:2005年7月23日(土) 18時から
会場:CLUBHOUSE Sports Bar & Restaurant
東京都新宿区新宿3-7-3 丸中ビル3F http://www.clubhouse-tokyo.com
新宿三丁目駅(地下鉄/都営新宿線、東京メトロ丸ノ内線 M-09)出口C3より徒歩5秒。 NEW!

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◆携帯ゲーム『桃太郎電鉄TOKYO』、スタート! NEW!
・アクセス方法
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・対応機種
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