5月20日(金) 午前3時30分。夜中に目が覚めたので、日記の下書き。 旅行中の日記は、執筆に時間がかかるので、書けるときに少しでも書いておく。 しかも強行軍で、あっちこっち移動するので、書いておかないと忘れてしまうこと が多い。 インターネット接続があると、旅行中にもメールが読めるんで、便利だなあ。 もはや光ケーブル、ADSL接続のないホテルには泊まれない。 松本の「扉温泉」のように、携帯電話もわざと通じないようにするのも、それはそ れで風情があっていいけどね。 きょうの取材先をインターネットで予習。 またちょっと欲張った旅行プランを考えている。午前7時。ホテルの窓から見える景色が気持ちいいなあ。 高層ビルがなくて遠くまで見えるせいかな。 疲れてきたので、みのもんたの『朝ズバッ』を見ながらうとうと…。 午前8時30分。荷物をまとめてフロントへ。 この「ラ・プラス青い森」は、ウォシュレットがちょっと安っぽいのが気になる以 外、青森で初めて満足できた。 嫁は、フロントで料金を言われて「一人分ですか?」と言って「いえ、おふたり分 で…」と言われていた。 一昨日泊まったところの半額の値段で、一昨日はシングル、昨日はツインをひとり で使用だ。安いにもほどがある。 フロントの応対も実に誠実。 次からはここにしよう。 午前8時45分。ホテルの人に、観光タクシーを頼む。 「地理にくわしくて、あまり訛りの強くない人をお願いします!」と言っておいた。 地理にくわしい人を希望したのは、きょう長距離を走るのと、帰りの電車に乗る時間 が決まっているので、うっかり道を間違えられると、東京に戻れなくなるから。 私が立てた取材プランは、けっこうキツキツ。 訛りのほうは、私は日本じゅう旅行しているので、けっこう方言に強いほうなんだ けど、青森だけは別格。 発音は、フランス語みたいで美しいんだけど、オリジナルな言葉が多すぎて、予測 がつかない。 たとえば有名な青森弁はこれ。 A:「どさ?」(どこにいくのですか?) B:「ゆさ」 (おふろ(温泉)に行くんです。) B:「なさ?」(あなたはどこに行くのですか?) A:「たさ」 (田んぼに行くのです。) まずは、昨年も時間がなくて行けなかった十三(じゅうさん)湖をめざしてもらう。 タクシーの運転手さんにあまり時間がないことは告げてあったので、十三湖まで冬 は通行止めになる林道を通って、時間を短縮してくれた。 こっちでは「春紅葉(はるもみじ)」という言葉があって、いまの時期山の木々は、 薄い赤だったり、萌黄色だったりして、紅葉っぽい色になって、たしかに「春紅葉」 にふさわしい景色だ。 こういう景色は。初めて見た。
午前10時。あっという間に、十三湖のほとりの「しじみ亭奈良屋」へ。
十三湖の名物しじみづくしを食べることに。 うひゃあ。きょうも風が強い。 でもこのあたりだけいつも風が強いそうだ。 しじみ三昧に、しじみラーメンを注文。 釜飯を炊くのに時間がかかるために、先にしじみラーメンを出してもらう。 このしじみラーメンを食べるのも、念願だった。 これは念願どおり、いや予想をはるかに越えるおいしさ。 しじみから出るエキスだけで、スープを作ったものに、細い縮れ麺を入れただけの 素朴なラーメンなんだけど、あっさりとした味で実にうまい! スープを飲んでみると、意外と濃い。
十三湖の前で食べるしじみラーメン。 これだけでおいしさが始まる気がするよね。 あいにく十三湖は、昨日からの突風で、湖水が泥のように汚れている。 ふだんは、もっと水のきれいな湖なんだろうなあ。
しじみのクラムチャウダーが、格別においしかった。 これはちょっと驚きの味だよ。 嫁が即決で、レトルトのしじみチャウダーを「買って帰る」と宣言してたくらいだ から。ホワイトソースが、まるでフランス料理のよう。
しじみ三昧のメインは、釜飯。 釜飯って、味が濃い食材のほうが合うとおもうので、しじみとの相性はどうかな? ともおもった。 予想よりおいしかったけど、しじみチャウダーと、しじみラーメンとの劇的な対面 の前には、かすむ。 いっしょについていたしじみ汁が、これまた感動の逸品だった。 「う〜! 食べ過ぎた! 何か食べ過ぎのような気がするなあ」と土居ちゃん。 「そりゃそうだよ。いまも私と嫁は、ふたりでしじみ三昧と、しじみラーメンを注文。 土居ちゃんはひとりで、しじみ三昧と、しじみラーメンを食べてるんだもん! この 2泊3日、このパターンだよ」 「ハハハ! そうかあ。そうだったのか!」 「わかってやってるくせに」 「うん」 土居ちゃんは、無敵のマイペース男。 午前11時。道の駅「十三湖高原」へ。 何だか北海道みたいな景色になってきた。
お土産屋さんを物色するも、青森市内で買えるものばかり。 先を急ぐことにする。 午前11時30分。車力(しゃりき)村の「bフラット」へ。 「フラット」は、平らとか、音楽のフラットの意味だとおもったら、「ふらっと歩 く」の「フラット」だそうだ。
車力村の名産であるゴボウと、長芋を売っていた。 うそっ! コウモリ傘のように長いゴボウが、約20本で、400円!? 値段が安いにも、ほどがある。 長芋は、うちの孫の腕より太いのに、5〜6本で、1000円だよ! 貨幣価値の違う国に来たみたいだ。 ほかに安くて、おいしそうな農作物ばかり。 でも量が多すぎて、東京に買って帰っても消費できそうにない。 車力は、メロンと、じゅんさいと、ゴボウが名産。 時期じゃないので、メロンとじゅんさいがなかった。 メロンソフトは土居ちゃんと食べた。 私と嫁で、ひとつ。 土居ちゃんはひとりでひとつ。 「食べすぎかな?」 「当然」 「ハハハ!」
午後12時。これもまた念願だった五能線「木造(きづくり)駅」の駅舎のオブ ジェ・遮光器土偶を見に来た。 『桃太郎電鉄V』のハルマゲド〜ンのモデルにしたあの土偶だ。 でかい! でかいなんてもんじゃない! 私は鉄道の本やインターネットで、この駅舎の異様さは知っていたはずなのに、こ れほどまで大きいとはおもっていなかった。
あまりにもでかいんで、タクシーの運転手さんに駅のはるか手前で停めてもらって、 一度遠景を写真に収めて、少し歩いて、木造駅の駅舎の下に立った。
歴史の教科書であまりにも有名すぎる遮光器土偶は、この町で発掘された。 それにしても五能線という単線の駅に、駅を覆い尽くすほどの遮光器土偶のオブジ ェは必要なのだろうか。 ただでさえ五能線は運転本数が少ないから、私たちのように自動車で来て、駅舎を デジカメして、お金を落とさずに帰っていく。 これは観光資源にまったくなっていないのでは? どうせなら、五能線のホーム側にアーチ上に線路を跨ぐように立てて、五能線に乗 ってこないと、このオブジェが見えなくすべきだ。 これなら最低限、電車運賃が入る。 さらに駅舎では、古代の歴史に関する本を売る歴史専門店を入れる。 これなら遠くからここまで買いに来る必然性が生まれて、一石二鳥だ。 午後12時30分。五所川原の「立佞武多(たちねぷた)の館」へ。
今回、陸奥横浜の菜の花とおなじくらい取材しておきたかった場所だ。 私は25年前に、青森のねぶた祭り、弘前のぬぷたを見て、感動した。 でも情報のない頃だったので、ねぶた祭り、ねぷた祭りは、青森、弘前だけのもの とおもっていた。 ところがそのうち青森県17ヶ所くらいで、ねぶた祭り、ねぷた祭りが開かれてい ることを知った。 そのなかで、五所川原市の「立佞武多(たちねぷた)」は、最近になって写真など で知るようになった。 それもそのはずで、明治時代から途絶えていた立ちねぷたを再現したのは、平成8 年。ごく最近のことだからだ。 しかもその復刻は、たった7枚の設計図と3枚の写真だけを頼りに作り上げたとい う。どおりで私が『桃太郎電鉄』を作り始めた頃には知らなかったわけだ。 この「立佞武多(たちねぷた)」の歴史と復刻の話だけでもおもしろいんだけど、 何よりこの「立佞武多(たちねぷた)」の巨大さを語らないかぎり、話は始まらない。 2日前に青森の「ねぶたの里」で見た、ねぶたの高さがだいたい5メートルぐらい。 5メートルで大きいと感じたけど、五所川原の「立佞武多」は、なんと平均22メー トル、17トンもあるのだ。 もちろん22メートルともなると想像もつかないとおもう。 だいたいビルの高さにして、5階か6階ぐらいの高さだ。 というより、学校の25メートル・プールがすっくと立っているようなものだ。
何たって、この「立佞武多の館」に入って、まず下から見上げてひっくり返りそう になった後、案内係の女性から「エレベーターで4階まであがりください」といわれ る。 いわれるままに4階まで行くと、ちょうど立佞武多の顔の部分とおなじ高さになる。 3体あるうちの1体は、もっと高かった。 とにかく圧巻、勇壮! おそらく世代別に、鉄人28号、マジンガーZ、ガンダムといったものを思い浮か べるとおもう。 そうだ、そうそう。この巨大ねぷたは、夏のお祭りのときに、お土産売り場の後ろ のドアが開いて、さらに「立佞武多の館」の玄関脇の壁面が開いて、ここ から出ていくんだって! この様を見てみたいよねー。
何たって、立佞武多に貼る和紙の量は、600畳分。 なかに入れる電球は、600〜800個。 針金700キロ。 消費電力は、一般家庭の10軒分。 すべてが桁外れ。 「立佞武多の館」の4階からスロープをぐるぐる回って、歴史や展示物を見ながら降 りて行く。 青森のねぶた祭りは、「ラッセーラー! ラッセーラー」という掛け声のお囃子が 入るけど、ここでは「ヤッテマーレー! ヤッテマーレー!」のお囃子がずっと流れ ている。
時間の都合で見ることができなかったけど、ここでは1年じゅう「立佞武多」の製 作現場を見ることができる。 1年じゅう見れるというより、1年じゅう作ってないとお祭りに間に合わないわけ だね。 この「立佞武多」のために、五所川原では電線を地中に埋める工事を進めている。 この工事のせいで、一昨年は1キロメートルちょっと、昨年は2キロメートル以上、 運行する距離が増えたそうだ。 復刻したときは、川原でわずか400メートル進んだだけだったとか。 今年も8月4日〜8日まで、五所川原の「立佞武多」の祭りは開催される。 見てみたいよなー。 でも、青森のねぶた祭りも、8月2日〜7日まで。 弘前ねぷたまつりが、8月1日〜7日まで。 黒石ねぷた祭りが、7月30日〜8月5日まで。 どこも思い切り重なっているのだ。 だからこの時期の青森県内のホテルはどこも満員。 観光ツアーも、だいたい十和田湖に宿泊する。 だからこのお祭りを見るのは、至難の業なのだ。 青森市内に気に入ったホテルが出来たら、8月1日から1週間宿泊してしまえばい いんだけど、この時期はお祭りに来た人が、来年の宿泊の予約をして行ってしまうそ うだ。 うーーーん。弘前城の桜のことを考えると、青森に2年間ぐらいマンションを借り てしまうのも手だ。でも家賃が安くても、テレビとベッド代が高い。いかん。 本気で考え始めている。 お土産品屋で、ホタテの塩焼きなどを買う。
へ〜〜〜、『ドラゴンボール』の立佞武多(たちねぷた)を作って、運行したこと もあるんだあ。 これはジャンプ世代に受けるよなあ。
もう燃やしちゃったのかな。 そのうちキングボンビーの立佞武多も作ってくれないかな? いや。やっぱり桃太郎だ。 土居ちゃんデザインの桃太郎が、キングボンビーを踏んづけているような立佞武多 が見たい。 午後1時。これにて、今回の青森取材旅行は終了。あとは青森に戻って、東京に帰 るだけ。 おっと。「立佞武多(たちねぷた)の館」の真ん前におしゃれなパン屋さんが。 ちょっと入ってみよう。 ココア甘食だって! これはおいしい。 いくつかパンを買っていく。
<おすすめのお店> パン工房「ブロート」 住所:青森県五所川原市大町16-8 電話:0173-39-2671 営業時間:10:00〜18:00 定休日:日曜日。第2・第4月曜日。 アクセス:立佞武多の館の前。 備考: ココア甘食。
午後2時。青森駅へ。 タクシーの運転手さんがいい人だった。 お礼を言って、荷物をガラガラとひきずりながら、駅前の市場へ。 駅前のビル「アウガ」に入れなかった市場が、プレハブ住宅のように少しだけお店 を並べている。 この古い市場を抜けると、「アウガ」のビルだった。 こっちの市場も見ていくことに。 いきなり土居ちゃんが「ちょっと寄って行きませんか?」。 「コーヒー?」 「ここ!」 「土居ちゃん、ここはお寿司屋さんでしょ! どこがちょっと寄ってだよー!」 「ちょっとお腹空いちゃって!」 「道の駅で、試食してばかりいたのに!」 「ううっ!」 でも、この市場のお寿司屋さんに入ってしまう3人であった。 私と嫁は、昨年もこの「三國」で海鮮丼を食べているから、おいしさを知っている のだ。 私は特注で、本マグロの大トロと、イクラの二色丼を作ってもらう。 嫁は、海鮮丼。 土居ちゃんは、ウニとイクラの二色丼。 私と嫁は、ご飯を半分にしてもらう。 土居ちゃんはたっぷりご飯が入った一人前。
「うん。おいしいね!」 「時間ないよ。あと15分くらい」 「15分ならじゅうぶんでしょ!」 「だから土居ちゃん、『ちょっと寄って行きませんか?』だったのかあ!」 「ぎくっ!」 土居孝幸49歳。ウニ・イクラ丼を一杯のコーヒーのように食す男。
<おすすめのお店> アウガ新鮮市場「三國」 住所:青森県青森市新町1-3-7 アウガ地下1階 電話:017-721-8000 営業時間:5:00〜18:30 定休日:不定。 アクセス:JR東北本線青森駅より徒歩2分
午後3時3分。青森駅から、特急つがる22号八戸行きに乗車。
この特急すごいよ。 青森駅を出たら、次の停車駅は、八戸。 途中の停車駅が無いじゃないかー! だから、青森ー八戸間を、54分で結んじゃっている。 1時間切っちゃってるよー。 大胆な運行だなあ。 車中、土居ちゃんと『桃太郎電鉄』シリーズの打ち合わせ。 ふたりとも旅の疲れが出てきて、いいアイデアが出ず。 そういうときは、寝る。 午後3時57分。終点八戸駅に到着。 行きのときには気づかなかったけど、すでに八戸駅の近くでは新幹線の工事が始ま っていたね。 八戸ー青森間は、いつ開通するのかなあ? 私のようなおじいちゃんには、話題になっている整備新幹線が開通するときまで生 きているかなあ?と考えるようになり始めている。 若いときに、新幹線の工事着工なんてニュース聞いても、そんなことちっとも考え なかったのになあ…。 でも占い師には必ず「あんたは90歳まで生きるよ」といわれる。 そんなに生きるのはしんどいぞ。 新幹線に乗り換える。 午後4時4分。八戸駅から、新幹線はやて22号東京行きに乗車。 車中、私はVAIOを広げて、さっそくきょうの取材の日記を書きながら、あれこ れ構想を練る。 当然、青森のねぶた、弘前のねぷた、五所川原の立佞武多(たちねぷた)の3つの 駅に最初に停まったプレイヤーに、カードをプレゼントしてあげるイベントを考え る。近い場所を3つだから、スペシャルカードでもいいかも。
土居ちゃんは「東京に着くのは、午後7時か。東京駅に着いても、何も食べずに家 に帰るぞ〜!」と言っているが、たぶん食べるとおもう。 少なくとも、私が五所川原の「立佞武多(たちねぷた)」の前のパン屋さんで買っ た「ココア甘食」を土居ちゃんのカバンに忍び込ませてあるから、家に帰っても食べ てしまうことは、間違いない。 このパン、試食したんだけど、抜群にうまかったんだよ。 地方でおいしいパン屋さんに出会っても困るんだけどねー。 午後7時8分。終点東京駅に到着。 午後7時30分。帰宅。 ベッドにひっくり返って、横浜ベイスターズが西武投手陣にまったく歯が立たない さまを見る。がっくり。レベルが違いすぎる。これが昨年の覇者・西武か。 高校野球と、大学野球ほど違う。 今夜は、「タイガー&ドラゴン」を見て寝るだけ。
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