10月24日(日)

 午前6時。昨夜、1時間ほどまどろんだだけで、眠れない。
 長岡駅と長岡駅前の駐車場で、たっぷり味わってしまった地震の感触が身体に染み
込んでしまった。
 しかも、被災地の小学校で夜を明かす人たちの気持ちを考えると、ニュースでその
姿が映し出される度に、気になって、よけい眠れない。
 いままで、この手のニュースを、できるかぎりの想像力で、つらさを感じ取ろうと
したけど、昨日から、実感できるようになってしまった。

 長岡駅前の駐車場で、昭和39年の新潟大震災を経験した奥さんが、怖くて仕方が
ない気持ちも、手に取るようにわかる。
 ずっと、ドキドキしたままなのだ。
 地震のショックで亡くなった方たちの衝撃度まで、かぎりなく想像できるようにな
ってしまった。

 東京葛飾から、被災地にトラックで水が届いた。
 近隣の県からも、続々、救急車や、消防車が中越地方に向かっているそうだ。 
 スーパーマーケットのありったけの食料を提供したお店もあるそうだ。
 阪神大震災で学んだ教訓が相当いかされているそうだ。
 日本人の美徳は、こういう改善力だとおもう。

 明け方のニュースで、きょう1日、上越新幹線は開通の見込みがないことは、すで
に知っている。
 いつもの私なら、ならばもう2〜3日新潟にいて、上越新幹線の開通を待ったとお
もう。

 でも、いま明らかに怖気づいている。
 腰が引けている。
 滅法、弱虫になっている。
 ホテルのトイレに座るだけで、ぐらんぐらん壁が揺れているように感じてしまう。
汚い話だが、お腹が張っているのに、うんちが出ない。

 被災地のみなさんには、もうしわけない気持ちでいっぱいなのだが、1分1秒でも
早く、この場所から、一歩でも遠くに行きたくなっている。
 ニュースを見ながら、必死に逃亡コースを、シミュレーションしている。
 南に向かおうとすれば、小千谷と長岡を通り抜けなければどこにも行けない。
 在来線の飯山線を下れば、長野に出られる。
 でも、まだ飯山線は復旧していない。

 かつて、新潟の雄であった上杉謙信は、関東に攻め入るとき、会津(あいづ)から
入って、宇都宮を経て、関東に入ったことを思い出した。
 その経路には、磐越西線という路線がある。
 新潟から、2時間半以上かかるのんびりした路線だ。
 しかし、この路線も、昨日の夜の段階では、会津若松はおろか、その先の郡山まで
不通になっている。
 この郡山まで行って、東北新幹線に乗って東京まで戻るのが、理想だ。
 磐越西線が開通するのを待つのが、得策だろう。
 午前7時の段階で、磐越西線は、会津若松の手前の喜多方(きたかた)までが、不
通区間と短くなった。
 
 でも、昨日地震の恐怖を知ってしまった私には、いつ復旧するかわからない路線の
開通を待つ心のゆとりがない。
 しかも全線開通しても、新潟から、会津若松を通って、郡山までは、ほぼ5時間列
車に揺られないといけない。

 現在、可能なのは、奥羽本線で山形まで北上して、新庄から、つばめ新幹線で東京
という手もある。しかし、これも東京に戻るまで、5時間以上かかる。

 私の考えた結論は、ふたつ。
 磐越西線の喜多方駅まで、タクシーで行って、前にもこのコースを一度実行したこ
とのある米沢駅まで行って、つばめ新幹線に乗る。
 もうひとつは、会津若松まで、タクシーで行って、磐越西線に乗り換えて、電車で
郡山に行く。
 これなら、会津若松まで、1時間ちょっと。
 会津若松から、郡山駅まで、1時間半。
 2時間半+郡山から東京まで、1時間半。
 4時間までに短縮できた。

 そうとなれば、朝食を取る時間も惜しくなり、チェックアウトして、タクシーで会
津若松、会津若松から電車で郡山のコースで行こうとしたら、ちょっと恰幅そうなサ
ラリーマンたち3人が、郡山までタクシーで行く段取りをしていることを小耳にはさ
んだ。
 もう一組も、郡山までタクシーで行く準備をしていることがわかった。


 午前8時。ホテルオークラを出発。
 磐越自動車道を疾走する。
 この磐越自動車道は、やたらとトンネルが多い。
 昨日も、中越でトンネルの崩落事故があったはずだ。
 トンネルに入るたびに、心臓がバクバクする。
 明らかに私は怖がっているのだ。
 以前、閉所恐怖症になったことがあって、しばらく映画館に行けなくなったことが
ある。
 あのとき、けっきょく精神力で、克服した。
 きょうも必死に、トンネルに入るたびに「立ち向かえ!」「立ち向かえ!」とつぶ
やくと、心臓がバクバクしなくなった。
 人間の精神力は、ガラス細工のようにもろいが、精神力で、棍棒のようにもなる。

 途中、頻尿の志士は、サービスエリアでトイレ・ピットインをしたために、ちょっ
とロスタイムを作ってしまったが、それでも新潟から、2時間で、郡山に着くことが
できた!

 午前10時。郡山駅へ。 「みどりの窓口」が、超満員。  しかも、予約状況に、次々に△マークがついていく。  嫁に、「みどりの窓口」の長蛇の列に並んでもらい、私は「びゅうプラザ」のカウ ンターへ。お客さんがいない。ここではキップ扱っていないのか?  へ? あっさり、キップが買えた。  しかも、午前10時36分発の東北新幹線だ。  なんとお昼12時に、東京駅に着く。  なんてナイスな新幹線だ。  2階の改札口を通って、売店で、駅弁を買う。  お茶も買って、3階の新幹線ホームへ。  おや? このパターンをどこかで見たことがあるぞ。  あっ! ああっ! ああああああっ!  昨日の長岡駅とおなじ光景ではないか。  駅弁とお茶を買って、新幹線ホームへ。  新幹線ホームに新幹線が入線してきたときに、震度6の地震が!  ひ〜〜〜〜〜〜ッ  トラウマ、再燃!  待合室に座れない!  座れば、膝がガクガクする。  心臓もバクバクいってしまうだろう。  まいった。  最後の最後で、こんな芥川龍之介の『杜子春』に出てくる「何があっても決して声 を出してはならない!」みたいな責め苦が待っていようとは。  向かい側の線路に、通過列車が通るとのアナウンスが流れる。  やめてくれ! あの爆風は、昨日の震度6に似ている。  やめて、やめて、やめてくれるわけないけど。  フォオーーーーン!  あれ? いつもすごい勢いで、通り抜ける風圧を怖いと感じていたんだけど、震度 6に比べれば、涼風にさえ感じてしまった。  ってことは、震度6の爆風は!  ずも〜〜〜〜〜〜!

 午前10時36分。心臓をバクバクさせながら、やまびこ48号に乗り込む。  30分ぐらいは、駅弁を食べようという気力が起こらず、肘掛を握り締める。新幹 線が、レールのつなぎ目で、ゴトッと音を立てるたびに、ビクッとする。  これは無理やり、駅弁を食べたほうがいい。  私は、豚肉の女将漬け。  嫁は、栗めし。

 郡山の駅弁「豚肉の女将漬け」は、すぐ売り切れる大ヒット商品なのだということ を本で読んだことがある。  でも、きょう買うべきではなかった。  ちゃんと味わえない。  午後12時。東京駅に着く。  午後12時30分。自宅へ。  ベッドにひっくり返れば、安心して、眠れるとおもったのに、やっぱりダメだ。  まだ身体がぐらんぐらん揺れている。  揺れるわけないのに…。  どうしてもまたNHKのニュースを見てしまう。  ピコ〜〜〜ン! ピコ〜〜〜ン!  また中越地方で、震度5だ。  台風なら、あらかじめコースがわかっているから、少しは対策を練ることもできる が(台風23号はその規模が越えすぎていたが)、地震だけは、突然来るから、本当 に怖い。  家を飛び出すときは、瓦屋根が飛んでくるか確かめるのも大事だけど、必ず家のブ レーカーを落として行くのがいいそうだ。  停電が復旧したときに、ブレーカー部分から火が出ることがあるからだそうだ。   NTTの災害用伝言ダイヤル171っていうのも、すごいね。  頭に「171」を入力して、安否を知りたい人の電話番号を入力すると、その家の 人が伝言を入れておけば、無事を伝えたり、どこの避難所に行っていますということ を知り合いに伝えることができるシステムだ。  このシステムは、ノーベル賞ものだとおもう。  これを考えた人を尊敬する。  午後6時。嫁と、近所の「がらり」で、食事。  お椀物を飲んだときに、「ああ! 温かいものは、おいしい!」と言ってから、昨 日からずっと、味噌汁のように温かいものを食べていなかったことに、気がついた。  午後8時。NHK「新選組!」。  ちょっと、きょうは考えがまとまらない。

 
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