１０月１９日（火）

「生まれちゃったわよ」
「えっ？」

　話は、数ヶ月前に遡る。
　私と、井沢どんすけの会話。
「なあ！　井沢〜〜〜！　うちの娘と、結婚しないか？」
「何でボクが？」
「だってさあ、ふつう大相撲の力士といえば、親方の娘と結婚するじゃないか」
「そりゃそうですけど…」
「親方の娘と結婚して、部屋を継ぐものだろう」
「部屋なんてないでしょ！」
「おまえ、『ジャンプ放送局』のあと、『じゃんぶる』で、しっかり読者ページを引
き継いでるじゃないか！」
「あっ！　そういえば…」
「だから、おまえはうちの娘と結婚してだな…」
「無理ですよ」
「何で？」
「第一、すでにゆりチャン、結婚してるし！」
「へ？」
「６月の末に、ボク、ゆりチャンの結婚パーティ出たじゃないですかあ！」
「えっ？　知らなかったあ！」
「さくまサン！　ちょっとギャグが見え見えすぎて、しらじらしいですよ！」
「わしも、そう思う」

　という冗談はされおき、実はうちの娘は、結婚していたのであった。
　まあ、プライベートのことだし、相手は業界の人間ではないので、話題にしなかっ
ただけなんだけどね。
　実際に会った人には言っていたので、娘の結婚のことは知り合いのほとんどは知っ
ている。

　で、冒頭の会話に戻る。

「生まれちゃったわよ」
「えっ？」
「ゆりの子ども！」
「えっ？　昨日いっしょに『ドラゴンクエスト』のコンサートに行ったじゃないか〜！
　『ドラクエ』の音楽なら、胎教にいいからって！」
「胎教どころじゃなかったみたい」
「予定では今月の末とか言っていたのに…」
「昨日、すぎやまこういち先生に、お腹触ってもらったせいかも」
「そうかも」
「今朝、６時に生まれたって！」
「信じられん！　昨日まったく気配すらなかった」

　午後１時。新宿の伊勢丹で、フルーツを買ったあと、天現寺の広尾病院へ。
　病室には、昨日とまったく変わらない表情の娘がいた。
「全然変わらないなあ…」
「うん。早く帰りたいよ！」
「おいおい！　それは早すぎるだろ」

　新生児室で、赤ちゃんを覗き込む。
　うーーん。見えないなあ。
　おっ。看護婦さんがわざわざこっちに見えるようにしてくれた。
　お〜、見えた。見えた。
　へ〜！　最近の赤ちゃんは、ずいぶん顔の作りがくっきりして生まれてくるもんな
んだなあ。昔は、みんな赤ちゃんというくらいで、顔が赤くて、おサルさんみたいな
顔をしていたものだ。
　いまは、昔の生後１ヶ月くらいの顔で生まれてきちゃうんだねー！
　６〜７時間前に出来たばかりとはおもえないよ。

 



　ほえ〜。笑ってるよ。
　こんなに最初から、表情豊かなものなの？
　不思議だなあ。

　知り合いには、前から子どもが生まれることは言ってあったので、嫁が午前中、各
地に携帯メールして、続々返事が帰ってきた。
　みんな「ついに、おじいちゃんだ！」って、書いてあるけど、実感ないなあ。
　うちの娘も「まだ実感わかないよ」と言っていた。
　そりゃそうだろ。
　昨日、いっしょに飯食って、コンサート見て、いっしょに歩いて帰ってきたのだか
ら。

　午後２時。三軒茶屋の「インデックス」さんへ。
　ムサシノ広告の伊東正義と待ち合わせ。
「お父さんのためのＪ−ＰＯＰ」の打ち合わせ。

　担当の芹澤孝悦（せりざわ　たかよし）くんと、また新たに若い人、ふたり、西村
純一くんと、野口嘉信くんを紹介される。
　インデックスさんは、躍進、また躍進の会社なので、２〜３ヶ月に一度は、新しい
人を紹介されて、次に行く頃には、部署が変わっていたりする。
　だんだん、一度では顔が覚えられなくなってきた。

　きょうも、打ち合わせを兼ねて、いろいろ最新携帯事情について、教えてもらう。
　最新ではないけど、二次元バーコードについて、教えてもらう。
　最近、ポスターや名刺に貼ってあるロールシャッハ・テストというか、寄り目で見
ると画像が浮き上がってくるみたいなやつを、携帯電話で取り込む方法を教えてもら
った。
　というより、芹澤孝悦くんに、私の携帯を渡して、その手順をメモっただけだけど
ね。
「機能を押して、メール・ボタン…。撮影モードが出たら、真ん中を押して、バーコ
ードリーダーか…」
「そのあとに、マクロモードを設定しないといけないんですよ」
「マクロ？　え？　まだそんな面倒なことやるの？　え〜と。専門用語言われてもわ
からないな。カメラ右上のスイッチを押して…」

　空メールとか、教えてもらったけど、よくわからない。
　でも、今後「お父さんのためのＪ−ＰＯＰ」は、この二次元バーコードでも、アク
セスできるようになるらしいので、ぜひ繋いでみてください！
　それと、若い子が、私が毎月選んだ着メロをダウンロードして、お父さんにプレゼ
ントしやすいシステムも導入されるようだ。
　インデックスさんに来ると、いろいろ教えてもらえるので、発想法の刺激になって
いい。

　私のようなおじいちゃん（きょうからね！）が、携帯電話のような最先端の仕事に
ついて行くのは、大変だよ。
　でも、一度覚えてしまえば、コンテンツを作る能力にかけては、年寄りのほうが、
経験があるからね。
　何か新しい仕事を編み出してみたいものだ。

　午後３時３０分。帰宅後、喫茶店「らぴす」サンへ。
　私も嫁も、ホットココア。
　寒いもんね。
　台風２３号が近づいている。
　明日から、また札幌開発スタッフが札幌から来てくれて、会議の予定なんだけど、
明日飛行機で来られるのかなあ…。ちょっと心配。
　台風２３号に続いて、２４号も発生しているんでしょ？
「鉄人２８号」ならぬ、「台風２８号」もクリアしたりして。
　妙にイチロー選手の最多安打の記録のような期待感もあるけど、これ以上の被害は
困るよね。

　午後４時。帰宅。
『桃太郎電鉄Ｇ（仮）』のテスト・プレイ。
　毎日、１時間ほどテスト・プレイしていて、手直ししたい部分や、疑問におもって
いることを書き留めている。
　あまりそのことを書くと、ハードがバレてしまうので、書かないようにしている。
だから、誘導尋問しないでね。
　いまのところ、ひとりだけ、理由もぴったり合っている人がいた。
　まさか、そんなところから、類推できるとはと感心しきり！
　うっかり正解者の名前を書くと、その人があちこちに書き込んじゃうといけないの
で、ナイショね。
　人間の探究心はつくづく素晴らしいとおもう。

　午後６時。自宅にて、太平燕（タイピーエン）で、夕食。
　食後は、大きな大きな新高梨を食べる。
『桃太郎電鉄』で、高知の物件として登場する新高梨（にいたかなし）だ。
　ソフトボールよりも大きい。
　大きいのに味がいい。
　秋は果物がおいしいので、ついつい食べてしまうので、体重維持が非常に難しい。

　今夜は、『桃太郎電鉄１６（仮）』の仕様書作りをゆるゆると…。
　明日の台風が、心配。