10月12日(火)

 午前8時。関西テレビで『とくダネ!』を見る。
 昨夜西武ライオンズが、プレーオフで勝ったことに対して、熱狂的西武ライオンズ
・ファンの小倉智昭さんが、どう反応するかを見るためだ。
 やっぱり、会う人ごとに「おめでとうございます!」といわれたみたいだ。
 小倉智昭さんも、「オーナーとしては…」という言い方をしていて、私とおなじ言
い方していると、おもわず苦笑。
 プロ野球ファンは、みなアホだ。

 さて、きょうは日帰りの取材にでかけようとおもうのだが、行き先の天気をインタ
ーネットで調べると、降水確率50%。
 むむ。これはやばいかも。
 でも、私の「晴れ男伝説」を持ってすれば、なんとかなるか!と、とりあえず、嫁
と京都駅へ向かう。
 私の場合、どこかの会社から依頼されて、取材にでかけるわけではないので、雨が
降れば取材を中止して、戻ってくればいい。
 いまのところ、京都はまぶしいくらい、いい天気。

 午前10時。京都駅から、ひかり306号東京行きに乗車。
 車中、『桃太郎電鉄』シリーズのアイデア出し。
 現在、進行中の仕事は『桃太郎電鉄M(仮)』、『桃太郎電鉄G(仮)』、
『桃太郎電鉄16(仮)』、『桃太郎電鉄17(仮)〜地方編』の4本が同時進行で
走っている。
 でもこれとは別にアイデアを溜めておかないと、あっという間に真夏の水源地のよ
うに干上がってしまう。
 貧乏神の悪行で、けっこうおもしろいアイデアが出た。
 このアイデアがみんなの目に届くのは、2年後だろうか、3年後だろうか。

 午前10時42分。岐阜羽島駅で下車。  岐阜羽島駅は、岐阜羽島(ぎふはしま)駅と、「し」が濁らない。

 この岐阜羽島(ぎふはしま)駅は、東海道新幹線開通のときに、名古屋から、鈴鹿 山脈を通って、京都に出るコースを、無理やり、ここに捻じ曲げてしまった鉄道業界 では非常に評判の悪い政治家、大野伴睦(おおのばんぼく)の地元だ。 新幹線がも しも、鈴鹿山脈を抜けるコースにしていたら、関が原の積雪による徐行運転もなけれ ば、今頃、東京ー新大阪間は、2時間を切っていたといわれているだけに、いまも怨 みにおもっている鉄道関係者は多いはずだ。  当時、「我田引水」ならぬ「我田引鉄」とまで呼ばれた。  でも、この大野伴睦という人は、自民党副総裁にまで進んだ。  総理大臣になったかもしれない人物だ。  その大野伴睦(おおのばんぼく)の銅像が、岐阜羽島駅前にあった。

 夫人といっしょの像で、まさに「かーちゃん、あれがオレが作った新幹線の駅だが や」といっているかのようだ。  そう思うと、顔も心なしか、読売のナベツネに似ているような気がする。  まあ、年寄りの政治家は、みんなナベツネに似ているけどね。  しかし、「こんな何にもないところに、新幹線の駅を作ってどうするんだ」と、昭 和39年の開業当時言われたものだが、あれから40年になる。  でも、いまだに岐阜羽島駅は発展していない。  ほかの新幹線駅だって、開業当時は、畑の中にぽつんとあった駅もけっこうあった けど、いつしか駅前に巨大なビルが林立するものだ。  ところが、この岐阜羽島駅だけは、本当に発展しないままだ。  頑固ですらある。  ここまで来ると、このままずっと発展しないでほしい。  ついでに、前から気になっていた駅を覗いて行きたい。  新幹線に乗っていて、いつも岐阜羽島駅から見える小さな電車だ。  岐阜羽島駅に、隣接するかのようにある名鉄の新羽島(しんはしま)駅だ。  この新羽島駅から、新岐阜駅まで、わずか26分で、新岐阜駅まで行けるのだが、 新羽島を出た電車は、 名鉄羽島線を通って、羽島市役所前駅で、名鉄竹鼻線になっ て、笠松駅で、 名鉄名古屋本線と名前を変えて、新岐阜駅に着く。  一度も乗り換えることもないのに、名前が変わるのだ。

 こういうことをいうと、全愛知県民と、岐阜県民を敵に回すかもしれないが、私は、 名鉄のせいで、愛知県と岐阜県の地理が苦手だ。  名古屋駅からして、JR名古屋駅から、徒歩13分で、名鉄新名古屋駅まで歩かな いといけない。  この名鉄新名古屋駅から、岐阜方面にも電車が出ているのだけれど、JR岐阜駅に はつかず、目と鼻の先の新岐阜駅に着く。  やたらと、JRと競合したりする。  豊橋駅だったか、名鉄はJRの施設を借りているらしい。  JRと名鉄の両方に対応した自動販売機まで置かれているそうだ。  どうも明鉄は、あちこちで、こういうかく乱戦法をつかって、私のジャイロスコー プを狂わせるのだ。  この名鉄問題は、今後もう少し、愛知県と岐阜県を探索してから、もう一度深く話 題にしてみようとおもう。  でも、もう少し語れる頃には、すっかり名鉄電車マニアになっているかもしれない…。  そんなわけで、緻密な時刻表マニアを演じるのが苦手な私は、源義経の鵯越(ひよ どりごえ)のような大胆な作戦に出た。  この岐阜羽島駅から、タクシーに乗って、一挙に美濃市駅というところまで行こう とおもうのだ。   インターネットの「乗り換え案内」で調べれば、京都から、新幹線で名古屋まで 出て、ワイドビューひだに乗って、岐阜経由で、美濃太田駅というところまで行って、 長良川鉄道という第3セクターの電車に乗って、美濃市駅まで行くと、着くのは、午 後1時だ。ほぼ3時間かかる。  私の大胆な作戦は、この京都から美濃市駅まで3時間を、わずか1時間半で行って しまうという仰天の(自分でいうな!)奇襲戦法なのである。  岐阜羽島から、わずか1キロ先で、名神高速道路に乗れる。  さらにこの先の一宮ジャンクションから、東海北陸自動車道に乗り換えれば、あっ という間に、美濃市だ!  「わっはっはっは! 私は、天才だあ!」  …と、おもうまもなく、名神高速道路は渋滞。  まだ大きな木曽川を過ぎたばかりだよ。 「事故ですかねえ…」  タクシーは、のろのろ運転になって、そのうち、完全に停まってしまった。  高速道路で、停まるってことは、尋常じゃないよ。  私が画策した、歴史に残る奇襲戦法は、わずか10分間で失敗に終わってしまった。 ウ〜、ガッデム! 機動戦士ガッデム!  仕方が無いので、タクシーの運転手さんに近隣について、取材する。 「新幹線の駅になったら、間違いなく駅前はビルだらけになるのに、岐阜羽島は発展 しませんねえ」 「そうねえ。農家が土地を売らないからねえ…」  そうか。大野伴睦(おおのばんぼく)が強引に駅を作ったけど、それに農家が同調 しなかったのかあ…。  尾西(びさい)市、大垣市といったところは、繊維、紡績の町だったけど、いまは 繊維関係がみんな中国に席巻されてしまって、不景気の極みなのだそうだ。「景気が いいのは、トヨタだけですよ!」  そのトヨタは、中国に輸出しているためのの好景気だからなあ。  そのうち、中国が何でも自前で作れるようになったら、日本の経済はどうなってし まうのだろうか。中国の次は、インドの時代と呼ばれているから、いまのうちにイン ドで仕事をした人が、勝者となるのだろう。  飛行機に乗れない私には、中国も、インドも、とんと縁が無い。  一宮ジャンクションから、東海北陸自動車道に左折したら、大渋滞が嘘のように、 空いている道路になった。  実に快適。スムーズ。  渋滞さえなければ、岐阜羽島から、美濃市まで、40〜50分の予定だったんだけ どなあ…。  まあ、それほど急ぐ旅でもない。  言ってることが矛盾している。  時間を短縮したいのは、趣味のシミュレーション。  時間がかかっても、晴れている間に取材ができればいい。  要するに、5〜6時間の間は、行き当たりばったりでいいわけだ。  午後12時。美濃市駅へ。  一応、京都から電車を乗り継げば、3時間の道のりを、2時間に短縮はできた。  だから、どうしたってもんだけど。  それにしても、美濃市駅。

 風情があるなんてもんじゃない。  木造モルタルの古い駅舎は、岐阜版『鉄道員(ぽっぽや)』の映画が撮影できそう なぐらい古い。  駅前に、町内巡回バスが停まっていた。

 車のフロントにペイントされた「わっちものろCar」の文字に、無抵抗に脱力する。 「私も乗ろうかあ!」だ。  気持ちのいい、へなへな〜。アイルトン・ヘナ〜。  美濃市駅の駅舎もすごいが、この駅の近くには、もっとすごい駅がある。 「旧・名鉄美濃駅」だ。  平成11年4月に、名鉄美濃町線美濃ー新関(しんせき)間が、路線廃止になった、 いわば廃線ほやほやの駅だ。  また「名鉄」の名前が出てきた。  とにかく、愛知県、岐阜県を語るには、名鉄抜きで素通りするわけにはいかないよ うだ。

 とにかく、90年間にわたり親しまれてきたこの歴史ある駅舎を整備して、美濃町 線にゆかりのある貴重な「モ512号」「モ601号」の路面電車2両及び電車に関 するパネルを展示しているのが、すごい。  この電車の風情あふれる姿は感動的!  あいにく、きょうはこの駅舎は、休館日。  ふつう博物館みたいなところって、月曜日が、休館日だよね。  どうもこの辺の休館日は、火曜日のようなのだ。  これから、きょう1日、この火曜定休に苦しめられることになる。  午後12時30分。美濃市の観光協会へ。  ここでタクシー運転手さんとは、お別れ。  非常に気分のいい人だったので、岐阜路の旅のときは、またお願いしますといって、 連絡方法を聞いておく。 「私がダメなときは、私よりもっと腕のいい先輩を紹介しますから」 「ダメですよ。自分以外の人を推薦しちゃあ。人がいいなあ!」  さて。美濃市の「うだつの上がる町並み」。 「卯建(うだつ)」といえば、『桃太郎電鉄12』の「西日本編」をやってくれた人 なら知っているとおもう。  脇町のカード・サービスのイベントだ。  隣りの家に、もし火事が起きた場合に、火が延焼しないために作られた防火用の大 きな壁のことだ。  この壁は、屋根の上に乗せるのがふつうで、この「卯建(うだつ)」は、非常に高 価だったために、うちは儲かっていますよ!と誇示するには、うってつけの装飾品に なったわけだ。  だから、「うちは、卯建(うだつ)が上がるほど豪商ですよ」という意味から転じ て、「卯建(うだつ)が上がらない」は、立身出世のできないダメな男の意味として 普及してしまった。  というわけで、美濃市の「うだつの上がる町並み」を歩く。  おもったより広い道が、200メートルほど平行して2本並んでいる。  道の両側には、格子戸、卯建(うだつ)、鬼瓦を乗せた屋根、防火の神様が祭られ た仏壇が乗った町家風の家が並ぶ。  見事に、整備されて、美しい。  古い町並み越しに見える遠い山と、青空も気持ちいい。  胸にいっぱい空気が入っていくような気分だ。  けっきょく降雨確率50%を、私はまた吹き飛ばしてしまったようだ。

 店先の「ようきてくんさったなも」の看板がいいなあ…。  緊張の面持ちの旅人の頬を緩ませてくれるものがある。

 江戸時代に栄えたこの町は、美濃和紙のふるさとだ。  どのお土産品屋さんでも、美濃和紙を売っている。 ・楮(こうぞ)。 ・三椏(みつまた)。 ・雁皮(がんぴ)。  ああ! 子供の頃の社会科の教科書を思い出すなあ。  楮(こうぞ)、三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)を主原料として作られる美濃和 紙は、その美しさで日本中に知られています…みたいなことが、教科書に書いてあっ たなあ。  美濃和紙で出来た美しい提灯、壁掛け、文房具、手工芸品などが、売られている。

 へえ〜。町家(まちや)風のベーカリーカフェ「Mam's(マムズ)」だ。  昔は、米屋さんだったのを改造して、パン屋さんにしたのか。  おしゃれだなあ。  古い町並みなんだけど、家のなかの調度品は、最新型のCDプレイヤーをつかって いたりするのが、美濃市の特徴だ。  ただ、古いものを保存をしているだけではなく、前進しているようで、気分がいい。

 このパン屋も、ふつうに食パンと、レーズンパンを売っているだけのパン屋さんで はない。  売っているパンの名前を並べるだけでも、その個性の一端がわかるとおもう。 ・焼き芋りんごあんパン。 ・天津甘栗バンズ。 ・おさつバンズ。 ・玉子チーズパン。 ・紫いもあんパン。  あんパンを中心に売っている。  このお店京都にあったら、大人気になるだろうなあ。  午後1時。そば切り「桃李(とうり)」へ。

 観光協会で聞いたおそば屋さんだ。 「私もここへは、よく行くんです。お店の中は、風情があっていいですよ」という言 葉に誘われた。  いきなり、囲炉裏(いろり)が、目に飛び込んできた。  いいねえ。東京生まれは、囲炉裏(いろり)のある風景に弱い。

 せいろそば、田舎そば、出し巻き玉子に、鴨塩焼き、海老の天ぷらを注文する。  鴨塩焼きが、うまかった。  いや、出し巻き玉子も、うまかった。  おそばもうまかった。

 先週、長野で本格的なおそばを食べてきたばかりなので、相当おそばには、口が奢 っているのに、これだけおいしいと感じるんだから、見事だ。  ただ平皿ではなく、もう少し底の深いお皿に盛れば、水切れがもっとよくなったと おもう。でも、そば湯のとろみも抜群で、申し分なし!

<私がもう一度行くためのメモ> 「桃李」 住所:岐阜県美濃市常磐町2275 電話番号:0575(31)0595 営業時間:11:00〜16:00 (おそばがなくなり次第、終了させていただきます。) 定休日:水曜日

 嫁は、このおそば屋にあった「うだつ」というお酒の味が気に入って、並びの造り 酒屋で、買い求めていた。  取材中に、瓶物を買うというのは、非常に重いから、手を出しづらいのに、買って、 京都まで持って帰るというだから、よほどおいしいのだろう。  この造り酒屋は「小坂家住宅」として、国の重要文化財になっている。  この家も、卯建(うだつ)のある家で、豪商だった雰囲気満点だ。

「カミノシゴト」という白木の格子戸のお店があった。

 なにやら、古くて新しいお店だなあ。  何のお店だろう?  うわ〜〜〜! 美濃和紙をつかった照明や、障子を売っているお店なのか。  きれいだなあ。不思議空間に迷い込んだみたいだよ。

 美濃和紙の美しいこと、美しいこと。  天女の羽衣のように、薄くて、透ける紙とかもあるんだよ。  美濃和紙を作っている人たちの顔の写真も飾ってあった。 「あれ? お年寄りだけでなく、若い人も多いんですね」 「美濃和紙を作っている家の人は、みなさん継がないんですが、他県から多くの人が やってきて、美濃和紙の伝統を継ごうとしている若い方たちが、けっこういるんです よ」  いいねえ。がんばれ、若者!  和紙をつかった照明、いいなあ。  こういう芸術的な作品って、高いんだろなあ…。  10万円、いや、30万円くらいするんだろう。  へ? え?  3万5000円?  うそ。ほんと? ほんとにこの値段なの?  買う。買うよ!  熱海の温泉家は、純和風で統一しようとしているので、ぜひこの美濃和紙の照明が ほしい。  でも絶対手の出ない金額だと思い込んでいた。  名のある陶芸家の抹茶茶碗が、50万円以上するのがあたりまえだから、美濃和紙 の照明も、少なくとも、30万円はするとおもっていた。  美濃和紙の仕事は、儲からなくて廃業する人が多いと聞いたけど、こんな安い値段 じゃあ、やめたくなるよ。  だって、いま買った3万5000円の照明も、注文してから、出来上がるまでに1 ヶ月ほどかかって、このお値段だよ。  自分が買うときは、値段が安いほうがいいとおもうけど、美濃和紙を作る人たちの ことを考えると、もっと高くてもいいとおもう。  思わず、熱海の私の部屋用に、もうひとつ和紙の照明を衝動買いしてしまった。  そのくらい、気に入った。  こういうお店に出会えただけで、幸せ気分だ。  ますますこの町を好きになってしまう。  実は、この美濃市に2日前に来たかった。 「美濃和紙あかりアート展」というのをやっていたのだ。  http://www.minokanko.com/4akari/art1.htm 「美濃和紙あかりアート展」は、美濃和紙を使って創作したオブジェを全国から公募 し、その作品を「うだつの上がる町並み」に展示する。  この町並みにずらりと並べるから、展示作品は町並みに融合し、独自の幽玄の美を 醸し出すということになる。  でも、「美濃和紙あかりアート展」というくらいで、夜に行かないといけない。  私のようにいつ行けるかわからない、実は不自由業には、宿を予約できない。  だから、私はお祭りの取材にあまり行けないのだ。  見に来たいなあ…。  来年の10月10日か。  スーパーの店先で、1個80円の柿を2個買う。

 無造作に「岐阜の甘い柿」とだけ印刷された箱に入っていた野性的な柿だ。  まだ富有柿は出回っていない。  私にとって、岐阜県は富有柿の国。  あとで食べたけど、おいしかったあ。  80円でも、おいしいものは、お金に替えられないおいしさだ。  しかし、私は柿が好きだなあ。  太る成分でも入っているんだろうか。  午後2時。豆腐カフェ「豆木(とーき)」 へ。  この喫茶店もまた、町家(まちや)風なのに、ジャズが流れ、間接照明が壁にある お店。おしゃれだね。

 もっと驚いたのは、このお店のメニュー。  コーヒー、420円を注文。  420円だよ。  この値段で、お豆腐と、バームクーヘンが一切れついて来ちゃうんだよ。  なんたるサービス。

 コーヒーもおいしいし、お豆腐が抜群においしかった。

<私がもう一度行くためのメモ> 「豆木(とーき)」 住所:岐阜県美濃市相生町2209 電話:0575(31)0825 営業時間:10:00〜18:00 定休日:毎月1のつく日(1・11・21・31)

 美濃市の古い町並みがいいのは、若い人たちが経営をしていること。  若者たちが、この古い町並みを保存しようとしているのではなく、古いまま、新し いものにしようとする勢いを感じるところだ。

 間違いなく、飛騨高山並みの観光地になる導火線に火がついている。  惜しいのは、美容室。  この小さな、200×100メートルほどの長方形の町並みのなかに、美容室が何 軒もあるのに、みんな現代建築になっていて、古い町並みの美観を途切れさせている こと。  いま、京都では町家(まちや)風の美容室が流行っているのだから、ここも町家 (まちや)風の美容室にすればすむことだ。  いいねえ。いいねえ。  美濃市は、芸術の町だよ。  でも、よかったのは、ここまで。  この先は、がっくりの連発!  悪いのは、私のせいなんだけどね。  美濃市をあまりにも気に入ったために、文章も長くなっているので、ダイジェスト で伝えていく。  午後3時。美濃市から車で15分ほど走ったところにある「美濃和紙の里会館」へ 行くも、火曜定休。

 そうだ。美濃市は、火曜定休の町だったんだ。  長良川沿いの美しい景色を見ながら、再び、美濃市まで戻り、そこから、関市に向 かう。

 できれば、関(せき)市も取材して行きたい。 「関の孫六」で、有名な刃物の町だ。  午後3時30分。関市へ。  かつて日本刀で栄えた町は、いまはフェザーと、貝印カミソリが、まさに、しのぎ を削る町になっている。  その「フェザーミュージアム」に行こうとしたら、火曜定休。  ならば、「関鍛冶伝承館」に行こうとしたら、ここも火曜定休。 「濃州関所茶屋」も、火曜定休。  関市も、美濃市のように火曜定休かい!  調べてこない、私がいけない。  唯一、やっていた刃物会館へ。

 包丁、ナイフなど売っているけど、あまり私は興味がないからなあ。  お店の人にちょっと聞いてみよう。 「関には、古町並みとかないんですか?」 「このまま車で行って、美濃市というところにですね…」 「いま美濃市から来たんですよー!」 「だったら、関には古い町並みはないですね。はー!」  ますますダメみたい。  仕方が無いので、新関駅まで歩きかける。  でも、さっき通ってきた道を思い出すに、駅まで相当距離があったような気がする。 平和通6の交差点で、駅までのことを聞くと、駅まで歩いて、20分かかるといい、 新関駅から出ている名鉄電車は、ちんちん電車のようなものだから、新岐阜駅まで、 1時間ぐらいかかるといわれた。  それは、せっかちな私には、しんどい。  それにしても、また「名鉄」だよ。  名古屋ー新名古屋。  岐阜ー新岐阜。  安城ー新安城。  関ー新関。  いったいいくつ「新」のつく駅があるんだ。  午後4時30分。タクシーで、あっという間に、JR岐阜駅へ。  10日前に来た岐阜駅に、また来るとはおもわなかった。  午後4時37分。岐阜駅から、豊橋行き特別快速に乗車。  いやあ。歩いた。歩いた。

 午後4時55分。名古屋駅で下車。  あっ。またかい!  雨が降り始めてきたよ。  たしかに、きょうの取材は、名古屋駅についた時点で、終了したけどさあ。  まるで舞台の袖に、幕引き係がいるみたいだよ。  ただそれほど、強い雨ではない。  午後6時。納屋橋の「宮鍵(みやかぎ)」へ。

 明治32年創業で、かしわ料理が有名で、ひつまぶし、うなぎでも有名。  親子丼が安くて、絶品という人が多い。  名古屋で「親子丼といえば?」と聞かれて知らない人はいない!とまで言われてい るそうだ。  私にとっては、歴史小説家の池波正太郎さんが通ったお店のイメージ。  食通でも知られた池波正太郎さんが通ったお店は、わが家では、すぎやまこういち 先生ご夫妻に継ぐ、安心ブランドだ。  池波正太郎の本に書いてあったのを見て、行ってみたお店は多い。  ここで、現在名古屋に転勤中の、ポニーキャニオン勤務のけーむらクンと待ち合わ せ。  けーむらクンは、柴尾英令くんの早稲田ミステリークラブの後輩。  けーむらクンは1965年生まれだから、私より13歳も年下なのに、音楽史にく わしいので、注釈無しで、昔の音楽について会話できるので、たのしいのだ。 ふた りの間で「スマイル」といえば、それはマクドナルドではなく、ザ・ビーチボーイズ のアルバムの名前だ。 「ディープパープルの…」といわずに、『スモーク・オン・ザ・ウォーター』から しゃべることができる。 「はっはっは! やっぱり、けーむらクンと話してると、楽だし、たのしいなあ!  でも、私は、最近、波止場、波止場に女がいるではなく、男がいるといわれている」 「先週は、長野の書店さんですよね」 「そうなんだと。はっはっは! 福岡に行けば、山本耕一、牧野正…」  おっと。料理の話。 「宮鍵」では、かしわ味噌すきと、ひつまぶしを注文。  かしわ味噌すきの味噌は、八丁味噌だ。  鶏肉、豆腐、長ネギ、タマネギ、シラタキといった、すきやきとおなじ内容の鍋に、 コールタールのように、真っ黒なお味噌が入る。  そういえば、最近の道路は、コールタールって、つかっていないのかも。  夏になると、べとべと溶け出して、大変だった。  時代とともに、たとえ話も変えないといけないな。  タバコのタールのように、黒い。  これも、禁煙時代のいま、ふさわしくない。  むしろ、八丁味噌の黒さを知っている人のほうが多いかも。

 八丁味噌を入れると、甘くて、おいしくなるねー!  関東の人は、この八丁味噌とか、みそかつの味噌が苦手という人が多いけど、私は 大好きな味。  これは病みつきになりそうだ。

 ひつまぶしも、おいしい。  ネギといっしょに食べると、なお旨し!  ワサビも混ぜれば、さらに、ゲホッゲホッ、わさび、強し!  ふぃ〜い。ワサビきついなあ。  お店の人に「八丁味噌を、白いご飯にかけて食べると、おいしいですよ」と、いわ れて、体重を気にして、少しだけ悩んだが、けっきょく、半分だけいただく。  うま〜〜〜い!  これは危険な食べ物だ。  このところ、毎日0.2グラムずつ体重が増えている。  イチローの最多安打のように、積み重ねている。  自分から、無安打に終わらないと。

<私がもう一度行くためのメモ> 「宮鍵」 住所:名古屋市中村区名駅南1−2−13 電話:052(541)0760 営業時間 :11:30〜14:00、17:00〜21:00 定休日:土曜休(盆明け、年末年始休) アクセス:地下鉄東山線伏見駅より徒歩7分

 午後7時。けーむらクンもいっしょに名古屋駅へ向かう。  雨がけっこう雨粒の大きさがわかるくらいになってきた。 「みどりの窓口」で、40分後ぐらいの京都行きの新幹線のキップを購入して、駅近 くの喫茶店で、けーむらクンと、さらに懐かし音楽談義。  そういえば、けーむらクンは、今年「おわら風の盆」を見に行ったそうだ。  これは悔しすぎる!  越中八尾(えっちゅうやつお)という人口2万人の小さな町が、9月1日から3日 間の「おわら風の盆」のお祭りの時期には、連日10万人に膨れ上がる。  このときばかりは、富山市内から、高岡市内、宇奈月温泉に至るまでどのホテルも 旅館も満員になるといわれている。 「けーむらクンは、泊まれたの?」 「いえ。午前1時過ぎに出る臨時列車に乗って、富山から、金沢まで戻って、金沢で 泊まったんですよ」 「若いなあ! おわら風の盆、よかったでしょう!」 「よかったですよー!」 「今年、うちも行こうとおもっていたんだけど、土居ちゃん誘ったら、『地味そう じゃない?』って言われて、断られちゃったんだよ」 「地味なところがいいですよね!」 「幻想的だよね〜。う〜、悔しい!」  興味のある人は、昨年の4月24日(木)の日記の最後のほうを見てください。 『桃太郎電鉄』の「地方編」では、絶対取り上げようとおもっていたし、「全国編」 でも、越中八尾町なのに「風の盆」駅という名称で、強引に登場させたいくらい気に 入った町なのだ。 「あっ。8時過ぎた。そろそろ、新幹線の時間だ!」  私と嫁は、けーむらクンに別れを告げて、新幹線へ。  あとは、名古屋駅から、京都までのんびり本を読みながら帰るだけ…。  長くて、密度の濃い1日だった。  …とおもったら、最後の最後で、ビッグ・サプライズなばったり病が待っていた。  名古屋駅新幹線ホームの待合室に腰掛けて、新幹線を待っていたら、なんと、 「さくまサン?」の声が。 「あっ!」  浅草キッドの水道橋博士の奥さんだ。  水道橋博士の奥さんは、こっちの出身なので、名古屋駅にいてもおかしくはないの だが、こんな待合室でばったりとは! 「宮鍵」に行ってきた話をすると、水道橋博士の奥さんも高校生のとき、親子丼を食 べに行ったそうだ。  単発番組だった『ルイおやじ王朝』がおもしろかったという話なども。  それにしても、びっくり。  聞けば、水道橋博士がもうすぐ新幹線で到着するのを迎えに来たというではないか!  その新幹線は、いまから私たちが乗る新幹線だよ。  水道橋博士が降りて、私が乗る。  それじゃ、すれ違いかも?といったら、なんと、水道橋博士が乗ってくるのは、 11号車、私と嫁が乗るのは、12号車。  ならば、驚かせて行くことができるかも!  う、う、うれしい!  こういう冗談、とっても大好き。  午後8時15分。水道橋博士を乗せた、のぞみ65号が、名古屋駅にすべり込んで くる。前のほうのドアにはいない。後ろだ。  いたっ!  私、嫁、水道橋博士の奥さんの3人で並んで、手を振る。  ドアの向こうに立っている水道橋博士の口が、「うそーー! なんでー!」と言っ ている。 「どうもー! 私たちはこの新幹線に乗らないといけないので、事情はあとから奥さ んに聞いてください」とだけ言って、水道橋博士とすれ違うように、のぞみ65号広 島行きに乗り込む。  案の定、ホームに降りた水道橋博士と奥さんが、こっちが座る席を探して、挨拶し てくれる。  いやあ。私の人生のなかで、稀有なばったり病数々あれど、このばったり病は芸術 的だ。  ここまでおもしろい出来事にしなくてもいいくらい。  さすがに、デジカメする余裕なかったよ。  午後8時16分。のぞみ65号広島行きは名古屋駅を発車。  まさに、たった1分間の出来事だ。  しばらく、何で私はこうも、ばったり人に会うことが多いのか?と、結論の出ない 話を嫁と。  なにしろ、昨日も熱海の海岸で、喫茶店「らぴす」サンの常連さんと、ばったり会 ったばかりだからね。  少し落ち着いたところで、西村京太郎さんの『十津川警部「悪夢」通勤快速の罠』 (講談社)の続きを読む。  今回の作品は、十津川警部側ではなく、反対側の犯人? 被害者?の目線から、十 津川警部を描くシーンが多いので、いつもの作品とは違った雰囲気。  そういえば、けーむらクンが行った「おわら風の盆」のお祭りに興味を持ったの も、西村京太郎さんの『おわら風の盆恋唄』とかいう作品だったとおもう。  けーむらクン、最近文庫本になったとおもうから、読むといいよー。読書好きの けーむらクンのことだから、すでに読んでいるのかも。  午後8時53分。京都駅で下車。  まだ午後9時なんだよね。  もっと遅い深夜に駅に到着した気分。  移動距離も長ければ、出来事も多かったからなあ。  午後9時30分。京都の家へ。  ここからが大変。  日記を書きながら、美濃市について、インターネットでもう一度調べて、『地方 編』用の物件資料台帳に、仮の物件名を書き込んでおく。  あっという間に、午前1時過ぎ。  適当なところで、日記を書くのをやめて寝ないと…。

 
さくまNEWS


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携帯着メロ、はじめました!
インデックスさんの携帯向け着信メロディ配信サイト「えらべるJ-POP」で
さくまあきらがお勧めする「お父さんのためのJ-POP」を配信しています。
【i-mode】iメニュー>メニューリスト>着信メロディ/カラオケ>
J-POP/インディーズ>えらべるJ-POP>お父さんのためのJ-POP
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