10月3日(日) 昨夜、きょうの取材場所で大いに悩む。 どの候補地も電車の本数が少なく、高速バスをつかうにしても、時間に縛られる。 2〜3ヶ所の候補地が、思うような経路が見つからず、断念。 きょう選んだ場所は、若狭の小浜(おばま)。 午前10時。嫁と、京都駅へ。 そんなにいい天気ではない。 午前10時39分。京都駅から、雷鳥13号に乗車。車中、京都駅で買った焼きさば鮨を食べる。
ふーーーん。いつも食べる鯖寿司と違う食べ物のように、おいしいなあ。 私は、ふつうの鯖寿司はあまり好きなほうではない。 鯖特有の臭みが苦手だ。 だから臭みの少ない「ます多」の鯖寿司なら食べたいという中途半端さだ。 でも、焼きさばは、香ばしくて、おいしいねー。 焦げた感じが、しっかり伝わってくる。 しかし、これから焼きさばの名産地である小浜(おばま)に向かうのに、何も鯖街 道の終点・京都で、焼きさば鮨を食べることはなかった。 気持ちがすでに小浜に飛んでいたか。
車中、『桃太郎電鉄16(仮)』のアイデア出し。 『桃鉄研究所』に送られてきた名産怪獣の応募作をプリント・アウトして持って来て いるので、文字をじぃ〜〜〜ッ!と見つめて、頭をひねる。 穴が開くほど、睨みつけていると、ふっとアイデアが出るものだ。 順調に、2〜3個浮かぶ。 午前11時31分。敦賀(つるが)駅で下車。
次の電車まで、30分ほど時間があるので、駅前を散策する。 あれ? 駅前の景色が、以前来たときと、ずいぶん変わったような気がする。 おや〜。何か銅像があるぞ。 都怒我阿羅斯等(つねがあらしと)の像? ダメだ! 日本書紀の時代は、この暴走族のような漢字が苦手で、さっぱりわから ん! 最初に朝鮮から日本にやってきた人のようだ。 こっちの銅像は何だ? ひょっとして、これって『銀河鉄道999』のメーテルと鉄郎じゃないの?
そうだ、間違いない。 あれ〜? 漫画家の松本零士さんといえば、九州小倉出身で、敦賀とは縁がないよ うにおもったけどなあ。 あはっはっは。こっちには、『宇宙戦艦ヤマト』を始め、松本零士さんの数々の作 品に登場して、日本酒ばっか飲んでいる佐渡酒造さんだ。 マニアックだな。
駅の観光課でこの銅像について話を聞いてみた。 別に、松本零士さんの故郷というわけではないようだ。 何でも、「世界とふれあう港まち、魅力あふれる交流都市・敦賀」をめざすために、 4年前くらいに駅から、まっすぐに1.2キロにわたって、道路の片方に『宇宙戦艦 ヤマト』、もう片方に、『銀河鉄道999』の銅像、合計27体設置したのだそうだ。 アナライザーや、スターシャ、エメラルダスといった銅像もあるそうだ。 時間がないので、ぜんぶは見ることができない。 敦賀駅に戻る。 午後12時3分。敦賀駅から、小浜線に乗車。
敦賀駅の売店で売っていた、とろろこんぶのおにぎりを食べる。 『桃太郎電鉄』でも敦賀は、とろろこんぶ工場の物件名が登場する。 敦賀は、とろろ昆布の生産量が、全国の80%を占めるほど、重要な産業なのだ。 だから、とろろこんぶのおにぎりは食べておきたい。
こ、こ、これは、うまい! 赤ちゃんの産毛のようにふわふわのとろろ昆布のおにぎりは、おいしいよ。 とろろ昆布を海苔のかわりに巻いただけなのに、非常に上品な食べ物のように感じ る。 車窓からの景色をを眺めながら、『桃太郎電鉄16(仮)』用の名産怪獣の攻撃方 法を考える。 小浜線というと、若狭湾の海沿いを走るイメージだけど、敦賀を発車してすぐは、 山の中を走っているように、窓からの景色は森林だらけだ。 野坂山地というのが電車の左側にそびえているのか…。 美浜(みはま)が近づくにつれて、チラチラッと海が見えるようになって来た。 原子力発電所で有名な、美浜(みはま)だ。 小浜線には、美浜、小浜、高浜と「浜」の文字がつく地名が多い。 それだけ海沿いの町が続くわけだけど、名前が似ていると、覚えづらい。 上中(かみなか)という不思議な名前の駅に着いた。 広島県には『桃太郎電鉄12〜西日本編もありまっせー!』に登場した、上下 (じょうげ)駅がある。 名古屋本線には、前後(ぜんご)駅というのがある。 上下駅、上中駅、前後駅。 こういう駅の名前を見ると、ほかにも左右駅とかいうのはないのかな?とおもう。 調べてみた。 福井県の越前海岸に、左右という地名はあるようだけど、鉄道の駅はないようだ。 探すとおもしろい地名はあるもんだね〜。 この上中(かみなか)駅から、赤いジャージ姿の中学生たちが、ドドッと20人ぐ らい乗り込んできた。 急に、電車のなかが明るくなった。 女の子がほとんどで、みんなが手にお弁当を持っている。 この光景を見ると、映画『スイングガールズ』の1シーンを思い出す。 ジャズクラブではなく、バレーボール部だったけど。
午後1時3分。小浜駅で下車。 赤いジャージの女の子たちもここで降りた。 「おつかれっした〜!」 駅前で、挨拶をしていた。 いい光景だ。 何だか得した。
駅の観光課に行って、小浜取材の目星をつけようとおもう。 「あの〜! 古い町並みとかって、どの辺にありますか?」 「ぜんぶ古いんです〜! すみませーん!」 「いえいえ! それはいい町じゃないですか!」 パンフレットをもらって、駅からタクシーに乗る。 5分ほどで、観光課の人に教えてもらった三丁(さんちょう)町へ。 このあたりは、京都の祇園のように料亭が多い。 以前よりかなり減ったといえ、いまも千本格子の家々が軒を連ねている。 ガイドブックによれば、町を歩いていると、三味線の音がするとあったけど、この あたりを歩いていたら、本当に三味線の音がした。 最初に耳にしたときは、雰囲気を出すために、三味線の音を流しているのかとおも った。 間違いなく生演奏だ。 練習している音だ。 天然のごちそうを食べた気分。
「町並みと食の館」というところへ。 ここは明治初期に建てられた料亭「酔月」で、昭和の時代、このあたりの中心的な 料亭として活躍したそうだ。
「町並みと食の館」では、小浜の歴史をDVDでプラズマテレビの大きさで見せてく れるので、コーヒーを飲みながら、見ることにした。 このコーヒーが、おいしかった。 小浜は、お寺が多い。 でも私の取材の場合は「寺より団子」なので、お寺を回っている時間がない。 このDVD映像で、行けないお寺の様子が見えるのは、非常に助かる。 さて、ここから観光課の人が言っていた「ぜんぶ古いんです〜!」の町並みを見よ うとおもう。 本当に、古い町並みだらけだ。
日本じゅうで、これだけ古い町並みが、自然に残っているという点では、随一なの ではないだろうか。 この状態を、小浜市はストップさせないといけないね。 放っておけば、老朽化しているわけだから、どんどん取り潰してしまうとおもう。 台風に耐えられないような建物も多い。 小浜市が古い町並みの保存を本格的に力を入れたら、町そのものが、最高のテーマ パークになる可能性を持っている。 上手く行けば、飛騨高山並みの観光都市になれる。 そんな気がした。
白鳥海岸に出た。 中途半端な公園だ。 真ん中に大きな噴水がある。 白い大きな鳥の石像だ。
でも、翼からバシャバシャ水をたれ流す下品なデザインの噴水だ。 おまけに白鳥の首のいちばん目立つところに「この水は飲めません」の大きな文字。 きわめて無粋なり。
再び古い町並みを歩く。
低い町並みを歩いていると、どこからでもひときわ大きな建物が見えて、そこに大 きく「つばき回廊」と書かれている。 どういう意味だろう? とりあえず、「つばき回廊」に向かって、進んでみよう。 どこまでも、どこまでも、古い町並みが続く。 樽(たる)、桶のお店、進物のお店、洋品店…。 いずれも、看板のペンキが薄くなっているお店ばかりで、いまも営業しているの か、もう潰れてしまったのか、判断がつかない。
「つばき回廊」にたどりついた。
えっ!? 「つばき回廊」って、スーパーマーケットの名前だったの? 1Fは、食料品売り場だよ。 この「つばき回廊」は10年前ぐらいに、このあたりの再開発事業のひとつとして オープンしたらしいけど、何でまたこんなに気合の入った名前にしたんだろう? もう足が疲れていて、スーパーを見ている場合ではなくなってきていたので、覗い て行かなかったけど、メインテナントだった西友が、今年の夏に撤退してしまったそ うだ。 日本の経済は、どこまで下降すれば止まるんだろう。 旅をしていると、こういう大型店舗の撤退の話をよく聞く。 淋しいものだ。 「つばき回廊」の近くの「いづみ町商店街」へ。 ここには「鯖街道の起点」のプレートがあるのだ。
「鯖街道」というのは、この小浜から、京都まで、若狭湾で取れた鯖(さば)を運ん だ道だ。 シルクロードみたいなもんだね。
小浜で鯖に塩を入れて、夜も寝ないで1日かけて京都までかついで運ぶと、ちょう ど良い味になったそうだ。 素晴らしいアイデアだよね。 クロネコヤマトの『プロジェクトX』を見ているようだ。 こういう話を聞くと、身震いするほど、感動する。 日本の経済には、こういうひとひねりが足りないのかもしれない。 「いづみ町商店街」を歩く。 小浜の中心地で、アーケード商店街だ。 でも、シャッターが降りたお店が多いなあ。 それでも、何軒か、焼き鯖を売っている鮮魚店があった。
若狭名産のカレイなども売っている。 焼き鯖を炭火で焼いてくれるお店もあったが、売り切れだった。 あとで地元の人に聞いたら、このアーケード商店街は、もっと観光客で賑わうはず の場所なのだそうだ。 「きょうは、小浜を挙げての運動会のせいなんじゃないかな?」といっていたけど、 そうなのかなあ。 でも、たしかに町を歩いているときに、やたらと運動会の花火の音が聞こえた。 この「いづみ町商店街」を抜けたあと、道に迷った。 大いに迷った。 観光課でもらったマップに目印になるものが少ないので、一度迷うと、目印になる 場所にたどり着くことが難しい。
おまけに、日曜日なのに、まったく人に会わない。 本当に、町じゅうの人が、運動会にでかけてしまったのか?とおもうほど、人が歩 いていない。
午後3時。迷いに、迷いに、迷いに、迷いに、迷いに、迷いに迷ったあげく、やっ と「若狭フィシャーマンズワーフ」にたどり着いた。 1時間半ずっと歩き通しだったのか。 疲れた。
ここから、名勝「蘇洞門(そとも)」を巡る遊覧船が出ているようなんだけど、 まったくそんなのに乗る気力なし。乗っても、絶対寝てしまう。 「若狭フィシャーマンズワーフ」で、地モノのイカのお寿司セットと、ボタンエビの お寿司を買う。 入り口の脇の「浜やき亭」で、サザエのつぼ焼きと、焼きさばを焼いてもらう。
お寿司は、京都に持って帰って食べようかともおもったけど、お寿司くらい鮮度が 急激に落ちるものはないから、その場で食べることにした。 昼飯なのか、夕食なのか、よくわからない。 でも、けっこう豪勢な食事だ。
何より、サザエのつぼ焼きと、焼きさばがおいしかった。
とくに焼きさばは、豪快で、香ばしくておいしかった。 小浜の漁港のそばで食べるから、よけいおいしく感じたんだろうなあ。 「若狭フィシャーマンズワーフ」の入り口で売っていた、山栗を2袋買って、帰途に 着く。 国道303号線を通って、琵琶湖の湖畔に出る。 午後4時10分。近江今津(おうみいまづ)駅へ。
なんと! 新快速が発車するまで、あと3分! 1時間に1本しかない電車だから、なんとしても乗りたい! 必死に、階段を駆け上って、電車のなかに飛び込む。 ふう。ぜえぜえ、はあはあ…。 琵琶湖は、夕方の景色がきれいだ。 とこどきオーロラのような光の筋が、空から舞い降りることがある。
小浜(おばま)は、よかったな。 大いに気に入った。 やっぱり伝統のある町は、たのしい。 風雪に耐えた年輪が、家の形に現れている。 『桃太郎電鉄』の『地方編』なら、目的地駅にしてもいいくらいだ。 もう一度来てみたい。 今度は、鯖街道そのものを通って、寝ずに鯖の桶をかついで歩いた人たちの苦労を 想像してみたい。 午後5時。京都駅で下車。 ヤサカタクシーの宮本さんが迎えに来てくれて、京都の家まで戻る。 NHK「新選組!」は、新撰組崩壊へと、ひた走っている。 見ていて、つらいね。 でも史実どおりだから仕方ないよね。 毎週ひとりずつレギュラー陣が消えていく。 新撰組ほど、跡形も無く消えて行く集団も珍しい。 午後9時。サッカーのワールドユースの決着がまだついていなかった。 0−0のまま、PK戦で決定というのは、けっこう残酷だね。 でも、ニッポンが勝ってしまうと、無条件で喜んでしまうのは、仕方ないかなあ。 それにしても、PK戦って、キーパーがファインセーブをすると勝ちがあたりまえだ けど、草サッカーだと、まずゴール内にシュートすることのほうが、大変だった。 今夜は小浜の資料をまとめたり、電車のなかで出たアイデアをまとめる作業が続く。
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