8月25日(水)

 午前8時30分。私、嫁、土居ちゃん(土居孝幸)の3人で、ホテル・ヨーロッパ
のバイキングで朝食。

 ハドソン宣伝部の熊沢太吾くんが到着。
 実は、今回の「ハウステンボスで井沢どんすけを待ち伏せして、驚かす!」企画の
密偵は、この熊沢太吾くん。

 本当は、読売広告の岩崎誠が、『Vジャンプ』編集部と同行して、逐次居場所をメ ールしてもらって、私たちは移動するつもりだったのだが、なんと! 岩崎誠が、ほ かの仕事で、昨日から急にカナダに飛んでしまった。  そんなわけで、熊沢太吾くんが空港に井沢どんすけたちを迎えに行って、『桃太郎 電鉄モバイルラリー』の案内をするというので、綿密に打ち合わせ。  何だか、井沢どんすけごときに、これだけ必死になるのが、アホらしくなってきた。 はっはっは!  前回ハウステンボスに来たとき、いろいろ案内してくれたハウステンボスの福泉さ んとも、ご挨拶。  福泉さんは、「桃太郎電鉄モバイルラリー」期間中、キングボンビーの着ぐるみに 入って、奮闘してくださっているそうだ。  暑いのに、もうしわけない。  午前10時。熊沢太吾くんは、長崎空港に、井沢どんすけと『Vジャンプ』編集部 の金丸尚史くんを迎えに行く。  私、嫁、土居ちゃんの3人は、佐世保市内へ。  この間、時間がなくて、取材できなかった場所に行く。  午前11時。佐世保市内の戸尾市場へ。

 ここは、複数の市場がまとまった市場で、とんねる横丁、通称:ママさん通りと呼 ばれる戸尾市場、エプロン市場、西海市場、共栄市場、戸尾中央など、たくさんの名 前がある。  戸尾市場っていうのは「とお」市場って、読むのかな?  地方に来ると、読み仮名がわからないことが多い。  観光に力を入れたいなら、まず読みかながわかりやすいようにしてほしいものだ。  とんねる横丁というのは、第二次世界大戦のときの防空壕を利用して作った商店街 で、なるほどなかをのぞくと、壁面が岩だ。

 市場を見て歩く。  ウチワエビや、そしてアゴ(トビウオ)が並んでいるのが、佐世保らしくていい な。最近、各地の市場を覗くのが好きだ。

 JR佐世保駅へ。

 観光センターの前に設置された「貧乏神が去る像」を見に行く。  おお! 小さいと聞いていたけど、思いのほか大きい。  高松鬼無駅、谷中妙泉寺に、続き3ヶ所目の「貧乏神が去る像」だ。  さっそく、土居ちゃんと記念撮影。

 午前11時30分。西海パールシーリゾートへ。  前回九十九島の遊覧船巡りをした場所だ。  非常に気持ちのいい場所で、ここ自体がハウステンボスみたいなところだ。

 佐世保バーガーのお店「ラッキーズ」へ。

 佐世保バーガーは、前にも書いたけど、日本におけるハンバーガーの発祥地。 あ のマクドナルドが銀座に1号店を出すより20年以上も前に、佐世保ではアメリカの 海軍さんからハンバーガーの作り方を聞いて、手作りハンバーガーのお店を出してい たわけだ。  そんなわけで、佐世保には、大手ハンバーガー・チェーンは少なく、それぞれ固有 の名前をつけたハンバーガーのお店が市内に、100軒近くある。  ということは、ハンバーガー発祥の地というよりも「ハンバーガー伝来の地」と いったほうが、ふさわさいいかもしれない。  そんなわけで、「ラッキーズ」へ。  平戸(ひらど)牛をつかったステーキバーガーがおいしいというので、食べてみる。 「うーーん。本格的なステーキ肉でおいしいね!」と私。 「バンズがちょこっと焦げ目ができるくらいに焼いてあって、おいしいね!」と、土 居ちゃん。 「レタスもいいよね!」

「エビチリのハンバーガーも食べよっか! ハハハ!」 「土居ちゃん! まだ食べられるの?」 「このお店の名物って書いてあったから、取材! 取材! ハハハ!」 「土居ちゃん、元気だなあ!」 「土居ちゃん! ステーキバーガーとどっちがおいしい?」 「どっちも! ハハハ!」  これだけお店によって、個性の違うハンバーガーが食べられるんだから、讃岐うど んのように、スタンプラリーをやるといいのにね。  市内の30軒のハンバーガーを食べたら表彰って、けっこう大変だけど、ラリー好 きな人なら、燃えるんじゃないかな? 期間1年間なら、かなりの人が達成できると おもう。 「土居ちゃん! そろそろでかけて次に行かないと、井沢どんすけが先にハウステン ボスに到着してしまう!」 「あっ! ぜんざい食べなきゃ! ハハハ!」 「土居ちゃん、うれしそうだね!」

 間違いなく、小豆の入った「ぜんざい」のことである。  実は、軍港華やかなりし頃の佐世保では、軍艦が帰ってくると、水兵さんたちの長 旅の疲れを癒すために、甘いぜんざいを作ってふるまったという話があったそうだ。  この話をもとに、メニューとして最初に取り入れたのが、佐世保の「潮幸の宿・は な一」というところで、その後、市内に、ぜんざいを出すお店が増えて、いつしか 「入港ぜんざい」という名前で定着したそうなのだ。  だから、いまから「入港ぜんざい」を食べに行くのだ。

 午後12時。佐世保駅近くのセントラルホテル2Fの和風料理「四季」へ。  ここでは、夏場は「冷やしぜんざい」にして「入港ぜんざい」を出している。

 もちろん、ぜんざいなので、「夢のようにおいしい!」と絶賛するほどではないん だけど、きょうのように30度を越える暑さの日には、甘いものがうまい!  できることなら、☆の形をした小さなアラレなどを入れて、「入港ぜんざい」の 統一形式にすればいいとおもった。  午後1時。ハウステンボスに戻って、再入国。  おっ! ハドソン熊沢太吾くんから、井沢どんすけたちを乗せて、長崎空港からハ ウステンボスに向かっているとの連絡が入った。  どうやら、井沢どんすけは寝過ごすことなく、長崎空港までは来たようだ。

「桃太郎電鉄モバイルラリー」のスタート地点の喫茶店を探す。  しかし、このあたりはミュージアム地域で、喫茶店がないようだ。  まんべんなく喫茶店があるとうれしいんだけどなあ。  ちょっと離れたハンバーガー屋さんで、コーヒーを飲みながら待機して、熊沢太吾 くんからの通報を待つ。  おっ! 「ハウステンボスの受付を通過!」の報告!  自動車だから、10分ほどで来てしまう。  よし! でかけよう!  移動中のわれわれを見られたくない!  できれば、先に着いて、井沢どんすけを待ちたい!  何でこんなバカバカしいことに、必死になるんだろう!  着いた! 大丈夫だ! まだ来ていない。  アニメーション・ワールドの「土居孝幸イラスト展」の会場で待ち伏せすることに。  最初、キングボンビーの顔出し看板で顔出しをしたまま、じっと待つかとおもった のだが、意外とお客さんが多くて、私たちが長時間顔を出しているわけにはいかない!  熊沢太吾くんから、メール。 「すみません! ホテルにチェックインしてから、向かうことになりました!」  井沢どんすけめ! なかなか手の込んだ肩透かしを喰らわすなあ!  どうせだからと、会場で土居ちゃんと、作戦を練る。  けっきょく、一般客のようになにげなく座っていて、井沢どんすけを待つことにす る。 「でも気づかずに、通り過ぎちゃうかもしれないなあ!」 「まあ、そのときは追いかけていって、首根っこを締め上げてあげればいいだろう!」  まず、嫁が隠れて、井沢どんすけが来たら、声をかけてくれることに。  私と土居ちゃんは、スタンプラリーの説明用紙が置いてあるカウンターに座って、 説明書をじっくり読んでいるい一般客のふりをする。 「熊沢太吾くんが、顔を出したから、井沢どんすけがもうすぐ来るわよ!」と、嫁。 「土居ちゃん! 来たってさ! 向こうを見ないように!」 「はいはい! ハハハ!」 「井沢どんすけ、来たわよ!」と、嫁。 「よし!」 「ん? 話しかけてこないなあ…」 「反応がないですね!」 「気づかないのかなあ…」 「通り過ぎちゃったかも!」  ちょっと井沢どんすけのほうを見てみるか…。

「あ〜〜〜〜〜〜、やっぱり〜! さくまサン、土居さん! 何でこんなところにい るんですかあああああああああああ嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼ああああああ ああああああああああああああああああっ!」

「井沢どんすけ! 8月12日に土居ちゃんと飯を食ったときから、ここでおまえを 待つことにしたのだ! はっはっは!」 「えへえへえへっ! このためだけに来たんですか!」 「その通り〜〜〜! はっはっは!」 「負けた…!」 『Vジャンプ』編集部の金丸尚史くんと、井沢どんすけの弟子ながら、井沢どんすけ よりも態度の大きい山下慎一郎くんの3人がいた。  嫁の目撃談では、井沢どんすけはけっこう早く私たちに気づいたけど、私たちかど うか判断がつかなかったらしく、下を向いている私たちの顔を覗き込もうとしていた そうだ。 「さくまサンたちは、井沢くんを驚かそうとしたんでしょうけど、ぼ、ぼくのほうが、 驚いちゃいました! ああ、ドキドキする!」 「ごめん、金丸くん! 井沢どんすけを騙すために、君たちにもナイショにしていた んだ!」  ん? 山下慎一郎くんが、井沢どんすけの足元を指差している。  あれ? 井沢どんすけが、すね毛丸出しで、半ズボンをはいている。  井沢どんすけは、半ズボンなんてはかないはずなのに…。  しかも、革靴にレンガ色の靴下という奇妙なファッション。

「あ。これですか! えへえへえへっ! 羽田空港で、飛行機に乗る前に、思い切り、 股間にオレンジジュースをこぼしちゃったんで、空港で半ズボン買ったんですよ!  Tシャツにも!」 「井沢どんすけ! やるなあ!」  というところで、私と土居ちゃんのサプライズ・イベント終了。  さすがに井沢どんすけの『Vジャンプ』用の取材のジャマをしてはいけないので、 とっとと別行動することに。

「井沢どんすけ! それじゃね〜!」 「ほんとに、これだけで帰っちゃうんですか?」 「その通りだ!」 「負けた…!」

 午後2時。船着場で、サンバ・カーニバルのダンサーのみなさんのナイス・バディ を見た後、ホテル・ヨーロッパに戻る。

 部屋で、シャワーを浴びて、仮眠。  エアコンの効いた広い部屋で、のんびりテレビで、シンクロナイズド・スイミング を見ながら、寝ちゃうのって、最高の贅沢だなあ。  井沢どんすけへの「どっきりカメラ」も大成功だったし!  けっきょく井沢どんすけと会っていた時間、わずか15分なり。  午後5時30分。「長嶋ジャパンVSカナダ」を見る。  初回から点が入って、危なげない試合展開。  昨日のオーストラリアの投手が、本当に好投手だったことがよくわかる。 「打線は水物」とは、よくいったものだ。  昨日は、勝ちたい気持ちが勝りすぎたんだろうなあ。  人間、100%の力を出し切るより、80%の力を出したときが、いちばんパワー が出るそうだ。  きょうは、80%の力をうまく出せているようにおもう。  午後6時30分。私、嫁、土居ちゃんの3人は、ホテル・ヨーロッパ1Fの 「デ・アドミラル」へ。  ここの総料理長・上柿元勝さんは、フランスの食文化普及に貢献したとして、フラ ンス政府より「フランス共和国農事功労章シュヴァリエ」を受章するようなすごい人 なのだが、またしても「プティ・ポワン」の北岡さんのお知り合い!  もう本当に日本じゅうどこに行っても、北岡さんの知り合いか、お弟子さんのお店 に出くわす!  昨日ちょうどホテル・ヨーロッパの玄関にいらしたので、ご挨拶したところ、きょ う「デ・アドミラル」に予約していただいた上に、特別料理を出していただけること になってしまった。 「プティ・ポワン」の北岡さんの名前は、本当に『水戸黄門』の印籠のようだ。   料理は、地の魚をつかったおいしいものばかり。  とくにあわびのスープがおいしかったなあ!  いや、スズキのバターソースもよかったし、デザートは最高だし、気がつけば、体 重調整のために腹八分目から、腹七分目で料理を残す励行を忘れて、きれいにたいら げてしまった。

 料理を食べていると、外がだんだん暗くなっていって、イルミネーションが浮かび 上がってくるロケーションも最高だ。

 午後8時。食後、井沢どんすけに電話を入れると、いま夕食を食べ始めたばかりだ という。井沢どんすけのほうは「迎賓館」というすごいところで、食事だ。  ジャケット、ネクタイ着用が必須のところだ。  そのためにわざわざ井沢どんすけは、ジャケットを持参しているそうだ。  でも、オレンジジュースを股間にこぼしたズボンはどうなったんだ?  ハウステンボスに着くと同時に、ホテルのクリーニングに出して、間に合わせたそ うだ。ハウステンボスでも、井沢どんすけは、敵に回すと恐いが、味方にするともっ と恐い男であるの〜!  井沢どんすけを待っても、食事が終わるのは10時過ぎになりそうなので、私、嫁、 土居ちゃんの3人で、レーザーショー、花火を見ることに。

 花火は、7分程度のものだけど、広い夜空に打ちあがるさまは、やっぱり気持ちい い。花火は、英語で「ファイヤーワークス」というらしい。  どうも、『桃太郎電鉄USA』を作って以来、英語で何というのかが気になるよう になった。  午後9時30分。部屋に戻る。  長嶋ジャパンの銅メダルを確認。  このチームに参加した24人の大半が、10年後のプロ野球界の指導者になるんだ ろうなあ。アテネ組とか呼ばれて。  あの炎天下のなかを戦い抜いた連帯感は、咸臨丸に乗って、アメリカに行ったおか げで、歴史上のビッグ・ネームになった勝海舟、福沢諭吉のように、燦然と輝いて、 野球界において発言が重くなることだろう。  全勝優勝して金メダルを持ち帰るよりも、負けたことによって得たもののほうが、 はるかに多いとおもう。  角川書店の『ニュータイプ』に載る記事の資料コメントを書いて送る。

 
さくまNEWS


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