１月２９日（木）

　最近、会う人ごとに、「さくまサン！　佐々木は横浜ベイスターズに入りますかね
え！？」と聞かれる。
　最初、この話を聞いたときは、９９％あり得ない話だったので、笑っていたけど、
ここに来て、実現可能な話になってきたので、大学受験の発表を待つよりも、ドキド
キしている。

　でも、まだ巨人に行く可能性８０％、横浜１９％、中日１％だと思っている。
　巨人が断念宣言せずに、「慎重な姿勢…」と言っているのが怪しい。
　引退後のことを考えたら、巨人に入ったほうがいいのは決まっているからね。
　まあ、佐々木様に、見捨てられたら、横浜ベイスターズはそれだけ魅力も将来性も
乏しい球団だったということだ。
　一昨年、中日に移籍した谷繁捕手に見限られた時点で、けっこう私は横浜ベイスタ
ーズに対する気持ちは相当薄らいでいる。
　球団よりも、谷繁捕手のほうが、正しい判断だとおもっているからだ。
　そしていままた佐々木様に見限られたら、ついに私も横浜ベイスターズ・ファンを
辞めてしまうかも。

　いずれにしても、宙ぶらりんなこの時期が、いちばんつらい。
　１日長引けば、長引くほど、巨人に行くような気がする。
　もっと世論が「まさか巨人には行かないよな！」という話題をしてほしい。
「電撃決定！」といったキャッチフレーズが躍りそうな雰囲気があるぞ、いまのマス
コミには！　くんくん。

　午後１２時。嫁と、銀座のラーメン屋さん「中華三原」へ。
　たんめんが、日本一おいしいお店だ。





　きょうはぽかぽか陽気だから、空いているとおもったけど、しっかり行列が出来て
いた。私はせっかちなので、行列に並んでまでして食べるのは、嫌いなんだけど、こ
こは特別。しかも回転が速いので、待つ時間自体は少ない。

　ここのたんめん、最高においしいけど、食べ終わると口のなかが、味の素臭くなる。

　午後１２時３０分。３日連続で、「茜屋珈琲店」へ。
　コーヒーを飲んでいると、隣りの席にお客さんが座った。

「あれ？　楠くんじゃないの？」
「……………」
「あれ？　違うのかな…」
「はい！　楠です！　すみません！　固まってしまいました！」
「はっはっは！　そうだったのか！　間違ったのかとおもっちゃったよ！」

　恒例のばったり病だ。
　楠くんというのは、その昔「くすひのき」というペンネームで、『ジャンプ放送局』
に投稿していた楠育雄くんだ。
　現在は、ハドソンの関連会社に勤めている。
　私たちが毎日会議している築地のハドソンの会議室とおなじ８Ｆにある会社だ。
　私の日記に「茜屋珈琲店」のコーヒーがおいしいと書いていたので、来てみたのだ
そうだ。話して行くうちに、「プティ・ポワン」にも彼女を連れて行って、喜ばれた
とか。彼女がいたら、「プティ・ポワン」は飛び道具だよなあ。

『桃太郎電鉄１２〜西日本編もありまっせー！』の話になる。
「桃鉄って、見た目よりもむちゃくちゃ、複雑なゲームですよね！」
「そうなんだよ。でも誰も気づかないからね！」
「この業界に入って、その複雑さ、いい意味での煩雑さの塊のようなゲームだという
ことがよくわかるようになりました！」
「でも、お客さんにその面倒な部分を読まれちゃいけないんでね！」
「今回ヘリコプターが、いったん浮上して、ためを作ってから、飛ぶ演出に驚きまし
た。まるで一流レストランに行って、座ろうとすると、スッと椅子を引いてくれるみ
たいです！」
「楠くん、うまいこというね！」

　午後１時。築地のハドソンへ。
　札幌開発チームとの打ち合わせ３日目。

　川田忠之くん、田中俊介くん、込山勉くん、小坂晃弘くん、私、嫁、土居ちゃん
（土居孝幸）、お下劣魔神・柴尾英令くんの８人は、３日間まったく変わらず。
　きょうはまず、「スタジオたくらんけ」の近藤康彦さん、山田浩之さん。ハドソン
の吉見直人くんが加わって、オープニング・アニメの打ち合わせ。





「スタジオたくらんけ」サンとは、もう３度目のお仕事なので、呼吸もぴったりだ。
　私のかわりに身振り手振りで、面倒な演出をいいまくる柴尾英令くんの意見を、
しっかり受け止めてくれる。

　午後２時３０分。あっというまに、「スタジオたくらんけ」サンとの打ち合わせが
終了する。

　引き続き、『桃太郎電鉄Ｕ（仮）』の打ち合わせ。

　午後３時。新しく登場するカードが、カード交換カードがあると、不具合が起きる
というので、その対策をみんなで考える。

　あれ？　会議室のドアが５センチほど開いて、誰か覗いているぞ！

「ジャジャジャーーーーン！」
　ドアを、バーーーン！と開けて入ってきたのは、なんと！

　広井王子くんであった！

「おとーーさーーーん！」と、私に寄ってくる。
「何がお父さんだよ！　千原兄弟の弟みたいな顔して！」

　広井王子くんは、いま『天外魔境』の新作を作っているので、こうしてハドソンの
会議室で会うのは、偶然ではないんだけど、なんだか不思議。
　それと、最近私と広井王子くんの関係を知る人も少なくなってきたけど、実は立教
大学の先輩後輩だ。学年としては、私のほうが１年先輩。

　込山勉くんが、テスト・ロムをいじっていて、黄色マスに停まった。
　すると広井王子くんが「あっ。幸福な王子カードだ！　いい名前のカードだなあ！」
に、みんな大爆笑。
　幸福な王子に、広井王子。
「でも、広井王子くん！　社員に１枚１枚お金を剥ぎ取られていない？」
「取られてる！　取られてる！」
「いまレッドカンパニーは、何人なの？」
「５０人ですよ！」
「たいしたもんだなあ！」
「さくまサンみたいに、ひとりになりたいですよ〜！」
「ひとりで仕事は、楽だよ〜！」
「そういえば人形町のほうに会社移ったんだって？」
「水天宮の駅前です！　一度来てくださいよ！　見世物小屋みたいな内装にしました
から！　社長室は、ストリップ小屋の入り口みたいですよ！」
「あれだけ仕事して、なお馬鹿げたことをするの、えらいね〜！」
「そういうことするの好きなんですよ〜！」





「あれ？　広井王子くん？　ひょっとして会議抜け出して、遊びに来ていない？誰か
呼びに来ているよ！」
「すぐ行くから！」
「はっはっは！　やっぱりそうなんだ！」
「会社のほうに遊びに来てください！　それじゃ失礼します！」
　あっというまに、強制送還されてしまう広井王子くんであった…。

　川田忠之くんの「ビッグ対談を目の前で見てしまいましたね！」にも、みんな大笑
い。
　昔はもっと気軽に広井王子くんと遊べたんだけどねえ。

　引き続き、『桃太郎電鉄Ｕ（仮）』の打ち合わせ。
　膨大な量の検討事項が、恐ろしいほどのスピードで消化されていく。
　今回の３日間の仕事の消化量は、尋常ではない。
「でも、こういう風に調子がいいときは、気をつけないといけないんですよね！」
と、小坂晃弘くん。
「その通りだよ。調子がいいときほど、落とし穴があったりするからね！」

 



　午後５時３０分。なんと本日も、こんなに早い時間に打ち合わせが終了。
　土居ちゃんは、ＦＭマリノの酒井秀樹くんに合うために、新宿へ。
　残ったメンバー、川田忠之くん、田中俊介くん、込山勉くん、小坂晃弘くん、私、
嫁、柴尾英令くんの７人で、新橋演舞場の近くの「越後叶家」へ。
　新潟名物へぎそばのおいしいお店だ。

　午後６時３０分。ハドソンに戻って、「桃鉄公式戦」をテスト・プレイすることに
なった。

　出場者は、柴尾英令くん、込山勉くん、小坂晃弘くん。

「日本一出目の悪い男」と呼ばれる込山勉くんが、試合開始５ヶ月目くらいには、も
う貧乏神がキングボンビーに貶して、みんな腹を抱えて笑い転げる。

　そのあと、込山勉くんが「やったあ！」と叫ぶ。
「えっ？　目的地に入ったの？」
「いえ、キングボンビーが消えたんで！　おほっ。おほっ。」
「その喜び方は、まるで目的地に入ったみたいだぞ！」
「おほっ。おほっ。違うんですねえ！　おほっ。」

　しかし、このとき日本一出目の悪い男・込山勉くんは、まさか次の月、また貧乏神
がキングボンビーに変身するとは、知る由も無かった。

「おほっ。おほっ。何でなんでしょうね！　おほっ。」

　あげくに、ボンビラス星に行った。

「込山勉くん！　本拠地の地名に、ボンビラス星っていうのを入れたほうがいいかな？
　しょっちゅう行くから！」
「おほっ。おほっ。そうかもしれないですねえ！　おほっ。」





　それにしても本当に、出目の悪い男だ。
　今回、たった１回だけ目的地に入れたんだけど、「あっ。はいれちゃった！」と自
分でいうほどだからね。

　午後７時３０分。「桃鉄公式戦」終了。
　テンポ早いなあ。
　あれこれチューニング・ポイントをチェック。

　それにしても、まだグラフィックが入っていないイベントが圧倒的なのに、チュー
ニングするのに、支障がまったくない。
　いまの時期に、違和感なく「桃鉄公式戦」を見て、爆笑できるのは、驚異的だ。
　この調子を崩さずに、今年は、昨年よりもさらに緻密なチューニングになるように
がんばろうと意思統一！

　午後８時３０分。帰宅。
　３日間の会議で出た変更点や、追加メッセージを少しずつ書き始める。

　明日は、鬼より怖い井沢どんすけ大明神の「稽古総見」だ。
　井沢どんすけは、横綱審議委員会の会長みたいなものだからね。

　明日は、明日の井沢どんすけが吹く。ぴゅううう！