１２月２９日（月）

　午前１１時３０分。嫁と、新宿伊勢丹２Ｆ「アフタヌーンティー」へ。
　クリームボロネーズと、コーヒーのセット。
　唐辛子やにんにくも入っていて、予想したものとちょっと違う味。
　でもまたたく間に食べられたのだから、おいしかったのだろう。

 



　食後、地下の食料品売り場へ。
　年末のデパートの食料品売り場は、さすがにすごい。
　お正月の食材を買い求める人たちで、いっぱい。
　通路で立ち止まっていられないほどだ。





　きょうはこれから、ブリしゃぶの食材を買わないといけない。
　ブッシュ大統領から「悪の枢軸のひとり」と名指しされた井沢どんすけが「今年最
後のテスト・プレイをオレにやってほしけりゃ、ブリしゃぶか、代々木今半のすき焼
きを用意しなっ！」というので、私と嫁は、銀行で定期預金を崩して、お金を工面し
てきたのであった。

 



　寒ブリって、高いんだねえ！
　二つ折りの携帯電話くらいの大きさ程度のブロックで、３０００円近いのだ。
　悪代官・井沢どんすけが要求するわけだ。

　何でも悪の華・井沢どんすけ様は、昨日、代々木今半で食事したようなのだ
　あのお店は、一見（いちげん）さんお断りのお店のはずだ。
　おそらく井沢どんすけは、「うちの若けえ衆（さくま）がよく来てるお店ってのは
ここかい！　オレ様にもちょいとその肉を食わしてくんなっ！」といって、ドアを蹴
破って、短い足をどで〜んとテーブルの上に乗せたに違いない。

　…という冗談はさておき、伊勢丹の水産売り場で、寒ブリをしゃぶしゃぶ用に薄く
切ってもらう。
　うちのは「ルイ・ヴィトンだよっ！　いい色してるだろっ！」と売り場のおじさん
が笑いながら自慢する。
　ほんとに寒ブリがいい色してるよ！
　レジに持って行くまで、お客さんたちがみんな振り返るほどだ。

　午後１時。帰宅。
　きょうのテスト・プレイのメンバーが続々到着。

　柴尾英令くん、友清哲くん、石川キンテツ。
　もちろん、悪の帝王・井沢どんすけは、最後に到着である。
「またせたなあ、チンケな野郎ども…」
　どうも井沢どんすけをこういうキャラで書き続けるのには無理があるので、いつも
のテンポに戻します。

「井沢どんすけ！　遅いぞ！　まめ鬼にしといたぞ！」
「ひ〜〜〜、あめ鬼とは、ひどい！」
「いまのまめ鬼は、まだ『桃太郎電鉄Ｕ（仮）』用のＣＯＭの思考ルーチンが入って
いないから、『桃太郎電鉄１２』のまめ鬼よりも、弱い！」
「えへえへえへっ！　無茶苦茶じゃないですか！」

　そんなわけで、『桃太郎電鉄Ｕ（仮）』のテスト・プレイ開始。
　初めて、すぐ石川キンテツがつぶやく。
「きょうの試合って、井沢どんすけサンと友清哲さんの攻略本を作った同士の対決な
んすよね！」
「えっ？　あっ、ほんとだ。『大金持ちになるための桃太郎電鉄１２西日本編もあり
まっせー！』（集英社）が井沢どんすけ。『桃太郎電鉄負けない戦術』（宝島社）が
友清哲くんだ！」
「…ってことは、きょうの試合で勝ったほうの人が書いた攻略本のほうが、信頼性が
高いってことっすよね！」
「うわあああ、それは厳しいなあ！」
「えへえへえへっ！　これは『桃太郎電鉄１２』じゃないから！」
「井沢どんすけ！　何ですでに言い訳モードに入ってるんだよ！」
「いやあ！　一昨日、Ｖジャンプの忘年会で、『桃太郎電鉄１２』対決やったんだけ
ど、ぼろ負けしちゃったんですよ！」
「ダメじゃん！」

「井沢さん！　ボクは井沢どんすけの本を買って、熟読してきましたよ！」と、石川
キンテツはお追従が上手だ。





『桃太郎電鉄Ｕ（仮）』は、現在まったくどんな内容なのかを教えるわけにいかない
ので、順位だけ伝えていこうと思う。

□１年目
１位・友清哲くん
２位・柴尾英令くん
３位・石川キンテツ
４位・井沢どんすけ

「おっ！　友清哲くんが１位で、井沢どんすけが４位！　ってことは、宝島の本のほ
うがいいってことか！？」
「えへえへえへっ。まだ始まったばかりですよ！」

□２年目
１位・柴尾英令くん
２位・井沢どんすけ
３位・石川キンテツ
４位・友清哲くん

「あれ？　井沢どんすけが２位に浮上している。どうしたんだ？」
「友清哲くん！　やばいんじゃないの？」
「まずいっすよ！　とりかえしカードにやられました！」
「はっはっは。新しいカードだからね！」
「あれ、ひどいですよ！」
「取り返すカードじゃなくて、ずっと持っているととりかえしがつかなくなる、とり
かえしカードだからね！」

　４位に転落した友清哲くん、もはや１位狙いではなく、井沢どんすけを蹴落とす作
戦に替えてきた！
　ふだん比較的温厚なプレイをする友清哲くんが、躊躇することなく、デビル派遣
カードを井沢どんすけに送り込む。
「ひ〜〜〜〜〜〜〜〜〜！」
　きょうも井沢どんすけの悲鳴がこだまする。

□３年目
１位・石川キンテツ
２位・井沢どんすけ
３位・柴尾英令
４位・友清哲くん

　石川キンテツ「ボクは井沢どんすけサンの本を熟読してきました」
　ヨイショに余念のない男だ。
　井沢どんすけをヨイショしても、カード交換カードで、デビルカードをもらえるこ
とはあっても、おいしい仕事ひとつもらえないことに、まだ石川キンテツは気づいて
いない。

　４位に低迷する友清哲くんが、さらになりふりかまわない攻撃を開始する。
　井沢どんすけに、貧乏神がついたと見るや、一生のお願いカードで、井沢どんすけ
の貧乏神をキングボンビーに変身させたのだ！
「ぎゃあああああ〜〜〜！　それだけはやめてくれええええっ！」

　それでも井沢どんすけの目の前、３マス先に柴尾英令くんがいた。
　井沢どんすけも必死だ。
　できることなら、３マスぴったり柴尾英令くんに重なって、キングボンビーの悪行
から逃れたい！
　なんと、井沢どんすけはここで、たらればカードをつかう！
「さすが、井沢サン！　攻略本を作ってから、戦い方が変わりましたね！」と、石川
キンテツは、なおも井沢どんすけをヨイショする。

　井沢どんすけが投じたサイコロの出目は、５！
「う〜〜〜〜〜〜っ！　悩むなあ！」
　井沢どんすけが５ということは、柴尾英令くんにキングボンビーをなすりつけるこ
とが出来ても、２マス先。またなすりつけられるのは、ほぼ間違いない。
　ここで、友清哲くんが「男の子なら、もう１回サイコロを振るな！」と、悪魔の囁
き。
　ふだん根性無しでも、ゲームのなかでは勇敢な井沢どんすけは、きっぱり「もう一
度、サイコロ振ります！」
「おお〜〜〜！」
　歓声が上がる！
　柴尾英令くんだけが、「１が出ろ！　１が出ろ！」と必死だ。
　井沢どんすけが投じた運命のサイコロは…。

　１！

　よりによって、１！
　柴尾英令くんが望んだとおりの、１！
　誰が見ても、１！
　白地に丸い赤の１！

「うわああああああ！」
　井沢どんすけは、ソファーにひっくり返って、ショックのあまり、コントローラを
落としてしまった。
「うわああああああ！　もうダメだああああ！」
　井沢どんすけが、落としたコントローラを拾う。
　しかしその瞬間に…、なんと井沢どんすけはコントローラを握るつもりで、方向
キーを右に押していたのだ！
　方向キーを右に入れたら、柴尾英令くんを追う方向とは逆のマスに進んでしまう！
「井沢どんすけさん！　そっちは赤マスですよ！」
　石川キンテツが、必死に忠告するも、混乱した井沢どんすけの耳には、届かなかっ
た。
「えっ！？　あっ！？　ひいいいいいいいいっ！」
　柴尾英令くんとは、４マス離れることになったあげくに、赤マスに突っ込んで、物
件を売るはめになる井沢どんすけであった…。

□４年目
１位・柴尾英令
２位・石川キンテツ
３位・井沢どんすけ
４位・友清哲くん

「攻略本を作ったふたりが負けてますよ！」
「まずいんじゃないの〜？」
「柴尾英令くんに負けるのは仕方ないけど、どっこいズである石川キンテツに負け
るっていうことは、攻略本になっていないってことになるぞ！」
「ま、まずい！」
「井沢どんすけの本は、もう発売になって、売れているからいいけど、友清哲くんの
本は、１月５日。これからの発売だからね！　売れ行きに響くよ！」
「井沢さんにだけは、勝ちたい…」


□５年目
１位・柴尾英令
２位・井沢どんすけ
３位・友清哲くん
４位・石川キンテツ

「あれ？　井沢どんすけが２位！？」
「柴尾英令さん以外、ほとんど似たり寄ったりですよ！」
「な〜るほど！」


□６年目
１位・柴尾英令
２位・井沢どんすけ
３位・友清哲くん
４位・石川キンテツ

　ついに、貧乏神がハリケーンボンビーに変身！
　いまのところ、『桃太郎電鉄Ｕ（仮）』にも、ハリケーンボンビーは登場する予定
だ。確率は低いけど。

　ハリケーンボンビーに変身した場所が、宿命のライバルである井沢どんすけと、友
清哲くんが重なりあっているマス。
　もちろん壮絶なる井沢どんすけと、友清哲くんが擦り付け合いが始まった。
　必死に逃げる井沢どんすけ！
　友清哲くんが、追いかける。
　井沢どんすけが、目的地まであとちょっとに。
　すると、友清哲くんが指定うんちカードで目的地に、うんちを置く。
「うわあああああっ！」
　井沢どんすけは、戻るしかない！
「はあ、はあ、はあ…」
　肩で息をする井沢どんすけ。
「ターミネーターに追われる心境がわかるような展開ですよ…」と、井沢どんすけが
つぶやく。


□７年目
１位・柴尾英令
２位・石川キンテツ
３位・井沢どんすけ
４位・友清哲くん

　井沢どんすけ、友清哲くん、ハリケーンボンビーの攻防戦でふたりとも疲弊しての
３位、４位だ。。
　この間にも、井沢どんすけ、友清哲くんは、『桃太郎電鉄Ｕ（仮）』のゲスト・ボ
ンビーに苦しめられまくったのだが、いまの段階では、まったく触れるわけにはいか
ない。
「井沢どんすけ！　日記が書きづらいから、早く『Ｖジャンプ』で、『桃太郎電鉄Ｕ
（仮）』の制作発表しちゃってくれよ！」
「えへえへえへっ。ボクにそんな権限ないっすよ！」
「さくまサン！　日記が書くやすくなるためだけに、来年１２月発売のゲームを発表
しないでくださいよ！」
「だってもうほとんど完成してるじゃないか！」
「それはいえてる！」


□８年目
１位・柴尾英令
２位。石川キンテツ
３位・井沢どんすけ
４位・友清哲くん

　この時点で、井沢どんすけ、友清哲くんの収益額は、０円。
　所持金を持っている分だけ、わずかに井沢どんすけがリードしているだけだ。　井
沢どんすけ、友清哲くん、共に「攻略本対決」を意識しすぎて、ぼろぼろになって来
ている。


□９年目
１位・柴尾英令
２位。石川キンテツ
３位・井沢どんすけ
４位・友清哲くん


□１０年目
１位・柴尾英令
２位。石川キンテツ
３位・友清哲くん
４位・井沢どんすけ

　ついに井沢どんすけ、最下位に転落。
　予想通りの展開になって来たか？

　午後６時。ここでちょうど１０年目ときりもいいので、食事をすることに。
　ずっと前からやってみたかったブリしゃぶである。
　あの麻布十番の「かどわき」でも、ひとり３切れか４切れしか食べられないブリ
を、何枚も、何枚も、腹ふくれるままに、心行くまで食べてみたかったのだ。
　寒ブリの登場に、「おおおおおっ！」と一斉に歓声が上がる。

 



　うまいよ、これは。
　いちいちうまい理由を考えるのも、面倒なくらい、おいしいよ！
　鍋には、つき立てのお餅も入れる。
　ブリと、レタスの相性がほんと、抜群だよ。





　本当に、ブリしゃぶだけで、お腹がいっぱいになった。
「石川キンテツ！　もっと食べろよ！」
「やっやっやっや…！　ボクは意外と見かけ倒しなんすよ！」
「そういわれてみれば、石川キンテツは何でも見かけ倒しだからなあ！　太ってるく
せに小食だし、魚の生ものはほとんどダメだし！」
「体力もないしなあ！」
「そうなんすよ！」
「石川キンテツは、ミスター見かけ倒し！」

　柴尾英令くんが、あとのゲーム展開を考えず、焼酎を飲み始める。
「柴尾英令くん！　ゲームしながら寝ちゃうよ！」
「そうかも。でも飲みたいのさ！」

　午後７時３０分。後半戦スタート。
　案の定、柴尾英令くんが、うつら、うつら…、眠り始める。
　しかし、自分の番が来ると、いつのまにか起きていて、コントローラを動かしてい
る。
「酔拳だ！　酔拳だ！」
「この程度のメンバー、酔っ払っていても、勝てますよ。むにゃむにゃ…」

　しかし、酔いどれ素浪人の先生が夢うつつになっているうちに、とんでもない事件
が発生してしまった。

　なんと！　井沢どんすけが、チューニング・エラーのレア・イベントをぶち当てて
しまったのだ！
　このイベントが発生する確率は極めて低い。
　しかも新イベントだから、まだチューニングはしていないに等しい。
　だもんだから、このイベント、毎月、約２０億円ぐらいのお金が井沢どんすけのふ
ところに転がり込んでしまうのだ。
　しかも、数ヶ月間。どひゃあ〜〜〜！

　井沢どんすけ以外から、ブーイングが出る。
　柴尾英令は、いびきをかいて寝ている…。
「これは　ひどいっすよ〜〜〜！」
「そんなこと言ったって、これはまだテスト・ロムだぞ！　チューニングするために
きょう集まったじゃないか！」
「それにしてもひどいですよ〜！」
　来年暮れ発売予定のロムが、ここまで完成していること自体、驚異のはずなのだが、
あまりにも完成品に近いために、みんな、チューニング・エラーと思ってくれない！


□１１年目
１位・井沢どんすけ
２位・柴尾英令
３位・石川キンテツ
４位・友清哲くん

　当然のことながら、単なるチューニング・エラーに乗じて、首位に躍り出た井沢ど
んすけであった。
　いつもテスト・ロムの最初の段階では、よく井沢どんすけが勝って、井沢どんすけ
が負け始めると、発売決定！のセオリーは、今回もまた生きているようである。
　井沢どんすけ、持ち金たくさんながら、物件数少なし。


□１２年目
１位・柴尾英令
２位・井沢どんすけ
３位・石川キンテツ
４位・友清哲くん

　案の定、現金だけを不当に多く手に入れた井沢どんすけは、ありあまるお金の使い
方がわからず、酔っ払いでほとんど満足にコントローラを押せない状態の柴尾英令く
んの後塵を拝してしまうのであった…。

　と、ここで、急に石川キンテツが「あの、ボク、９時になったら、帰ってもいいで
すか！」と言い出す。
　必ず、帰宅時間を申告しないどっこいズ（井沢どんすけ、コイズミリュウジ、石川
キンテツ）の暴挙がまたしても炸裂だ。
　困ったのは、友清哲くん。
　このまま帰ってもらっては、最下位になってしまう。
　しかし、一度言い出したら人の都合など知ったこっちゃないのが、どっこいズ。　
あと１年で終了することになってしまった。


□１３年目
１位・柴尾英令
２位・井沢どんすけ
３位・石川キンテツ
４位・友清哲くん

　けっきょく、こんな結果に。
　まあ、『桃太郎電鉄Ｕ（仮）』はほぼ完成しているとはいえ、チューニング・ミス
はまだ随所にあるので、正しい対決ではないだろう。
　それでも友清哲くんに勝利した井沢どんすけはご満悦。

「あのレア・イベントで現金が増えて勝っただけじゃないか！」
「えへえへえへっ。でも勝ったのは事実ですから。集英社のほうの攻略本のほうが、
いい本ですよ！」
「ううっ！」
　友清哲くんが、絶句する。

　先日、「『桃太郎電鉄１２』だったら、柴尾英令さんに負けないくらいのレベルに
なっていますよ！」と言っていた友清哲くんであるが、彼は声を大にして言いたいと
ころだろう。
「『桃太郎電鉄Ｕ（仮）』は、『桃太郎電鉄１２』の知識が、まったく通用しないで
すよ！」
　しかしいま、『桃太郎電鉄Ｕ（仮）』の内容について触れるわけにはいかない。
　午後９時。友清哲くんと、石川キンテツが退席。
　残った柴尾英令くんと、井沢どんすけで、新着ゲームをお勉強プレイ。
　ほかの人が作ったゲームも見て、お勉強しておかないとね。

　午後１０時。柴尾英令くんと、井沢どんすけが帰る。

　こうして、２００３年もあと少しとなった。

　いまから予告しておくが、嫁が１月２日〜１０日まで、ニュージランドに行くので、
この日記は、その間、お休みである。
　わっはっはっは。私は嫁がいないと、何もできないのだ。
　その間、土居ちゃん（土居孝幸）と旅行することになっている。

　今年も、残すところ、あと２日。
　早いもんだねえ…。