１２月２４日（水）

　昨日、紛失したクレジットカードは、再び私の部屋の小物入れを探索したら、見事
見つかった。
　はたしてクレジットカードをつかう日は来るのだろうか。

　午前１１時３０分。嫁と、銀座のギャラリー「福原画廊」へ。
　赤川次郎さんの本の表紙などでおなじみの洋画家であり、私の高校の同級生である
北見隆の立体造形展だ。

 



　北見隆は私の人生において、芸術の部分で大いに影響を受けた男である。
　どういうわけか、嫁のほうが彼の立体造形を好きになって、ごくふつうに好きな画
家のひとりになってしまった。
　人生はどう転がって、邂逅するのかわからないものだ。

　展覧会の終了が明日までなので、あわてて来た。
　北見隆本人は、夕方現れるそうだ。
　会っていけそうもない。

　午後１２時。「ケテル」で、ハンバーグ・セット。ソーセージなど。
　我が家のハンバーグ・ランキング３位に位置するお店だ。
　ところが、ちょっと味が薄くて、塩・胡椒しないとつらい味になっていた。

 
 



　ランチの味と、夜の味は違うのかもしれないけれど、ちょっとこのままでは３位の
名にふさわしくないお店になってしまうかもしれない。
　それでも、あと２回は様子を見てみる。
　２度までは失敗を許す。
　３度目はダメだ。

　あれ？　ケテルのビルの隣りに、「てんぷら近藤」の文字が。
　あずま通りの仮店舗で営業していたけど、ここに戻って来たのか。





　前の場所に戻ると聞いていたけど、菅沼真理（通称：すがねまチャン）さんがよく
自爆する高級ブランド街に面したビルの９階に入っていた。
　今度ここに来るときは、こっちになるわけだな。
　早く来たいものだ。





　午後１時３８分。新橋駅から、久里浜行きの横須賀線に乗車。
　車中、本を読みながら、熟睡。

　はっ！　目が覚めたら、電車は鎌倉駅に停車していた。
　嫁も寝ていたようで、あわてて起こして、飛び降りる。
　いやあ！　降りたあともドキドキが止まらない。
　起きてからホームに降りるまで、５秒とかからなかっただろう。

　午後２時４０分。不二家で、クリスマスケーキを買う。





　ついでに不二家のクリスマス・グッズも買う。
　スタンプ１０枚ためると、身長５０センチくらいの陶器製のペコちゃんがもらえる
券が、５枚目に入った。来年の１０月までになんとか貯めたいものだ。
　ほかの不二家のお店でもＯＫなら、もっと早く達成できるんだけどなあ…。





　午後３時３０分。鎌倉長谷の家へ。
　クリスマスの日を、鎌倉ですごすのではなく、仕事の資料を探しに来た。
　ｉモードサイト「お父さんのためのＪ−ＰＯＰ」用の第１回目の原稿を書いている
んだけど、どうしても気になることがあったのだ。
　第１回目は、加瀬邦彦とザ・ワイルドワンズの『想い出の渚』を取り上げる予定だ。
　ところがこの原稿の下書きをしていて、イントロのコード進行のＥコードの次が何
だったか思い出せなくなってしまったのだ。
　ｂｍだったか、ｂ♭ｍだったか、ｂ♭７だったか…。
　レコード盤の歌詞カードのところにコード進行まで書かれていたことは覚えている。
　でもこんなときは、何１００回となく弾いた指が覚えているはずだから、ギターを
弾いてみればいいのだが、私は８年前に脳内出血で倒れてしまったせいで、いまだに
左手はスムーズには動かない。
　動かないと思い出せないものだ。

　そのコードが知りたくてやって来た。
　レコード関係は、ぜんぶここに置いてあるので、間違いなくあることはわかってい
る。
　ところが、探してみるとないのだ。
　ほかのなつかしいグループサウンズの名曲はいくらでもあるのに、『想い出の渚』
のシングル盤だけがない。ＬＰに収録された『想い出の渚』もあるけど、シングル盤
じゃないと、コード進行が書いていないのだ。

　ゆっくり探せばいいや！と、不二家のホールケーキを食べる。
　私の日記の熱心な読者は、私がこよなく不二家のケーキが好きなことをよく知って
いることだろう。
　熱心な読者のみなさんの予想通り、私が４分の３食べて、嫁が４分の１食べた。





　やっぱり、不二家のホールケーキよりおいしいものはほかにないね。
「人生最後に食べるとしたら、何を食べますか？」という質問をするテレビ番組があ
ったけど、間違いなく私は不二家のホールケーキだな。
　そして「私の人生は、甘かった」と答えることだろう。

　食後、なつかしのグループ・サウンズのレコードをかたっぱしからかける。
　ＣＤではなく、レコード盤だからね。
　今後も「お父さんのためのＪ−ＰＯＰ」用に、グループサウンズ時代の曲について
エッセイを書く必要があるから、整理をかねて、試聴してみる。





　私はもともと、『亜麻色の髪の乙女』、『銀河のロマンス』、『花の首飾り』と
いった、すぎやまこういち先生の曲で育った男なんだけど、きょうまた昔のレコード
を引っ張り出して、聴いてみたら、驚いたねえ。
　私が好きだった曲の大半が、すぎやまこういち先生の曲だったのだ。
　これはおべんちゃらでも、こびへつらいでもない。
　むしろ、すぎやまこういち先生に洗脳されていたことを再確認したようなものだ。
だって、当時そんなにヒットしていないのに、自分だけが好きだった曲が、ほとんど
先生の曲だったんだもん。驚くよ。

　ヴィレッジ・シンガーズの『落ち葉とくちづけ』、ザ・タイガースの『ジンジン・
バンバン』、レオビーツの『霧の中のマリアンヌ』、ワンダラースの『霧と恋』…。
　相当のグループ・サウンズ・マニアでもあまり知らない曲ばかりだと思う。

　そう思うと、今日、すぎやまこういち先生ご夫妻と親しくしていたいだいている私
は、果報者だねえ。

 



　しかし、レコード盤は、ＣＤに取って代わられたわけだよ。
　１枚ずつ、袋からお皿を出して、ターンテーブルに乗せて、そ〜〜〜っと針を落と
して、ぷちぷち、しゃりしょりいいながら、音が流れる。
　あっというまに３分が過ぎ、針をそ〜〜〜っとあげて、ステレオを停めて、お皿を
取り出して、袋に詰めて、またほかのレコードの袋を開ける。

　この作業のくりかえしが、本当にしんどいよ。

　いやあ、へばった、へばった。
　次々にレコード盤をかけて、次にかけるレコードを探しているときは、中腰。この
中腰状態が、著しく私を疲労させる。
　いわばプロレスのヒンズー・スクワットを繰り返したようなものだ。
　もうぐったり…。
　想い出はずいぶんと疲れるものだった。

　午後５時３０分。ついに足がつった。
　レコード盤を出し入れしていたものだから、手がほこりだらけ。
　きりがないので、また聴きに来よう。

　午後６時。嫁と、鎌倉駅へ。
　クリスマスだから、フランス料理でも食べるべきだけど、せっかく鎌倉に来たのだ
からと、「仲の坂」に寄っていく。
　おめあてのさんまのお刺身はもうなかったけど、寒ブリがあるじゃないの！
　寒ブリと、やりいかのお刺身を作ってもらう。

 



　ご主人に寒ブリを２枚サービスしてもらう。
　料理屋さんで出る寒ブリは、どうも枚数が少ない。
　おかげで、たっぷり寒ブリを食べることが出来て、ご満悦。





　午後６時４８分。ＪＲ鎌倉駅から、君津行きの横須賀線に乗車。
　レコード探しのヒンズー・スクワットが相当疲れたのか、またも熟睡。

　午後７時３０分。品川駅。
　京急の「ウイング・イースト」は、クリスマス用のケーキを買う人で、ごった返し
ていた。
　それぞれの人に、クリスマスのドラマがあるんだろうなあ…。





　午後８時。帰宅。
　鎌倉長谷の家で、不二家のケーキを食べた時点で、我が家のクリスマスは終了。　
テレビを見たり、読書をしたり、仕事をしたり。
　平日とどこも変わらない。