１２月３日（水）

　きょうは午前７時には起きないといけない。
　そう思ったら、午前４時に目が覚めてしまった！
　ぶ〜〜〜、眠いよ〜！
　今度は寝過ごしちゃいけないと思うと、神経が高ぶって、二度寝ができない！
　しかもきょうは朝が早くて、夜が遅い、長い、長い１日が待っている。

　午前９時。嫁と、池袋のコスモポリタンホテルへ。
　眠くて、頭がボ〜〜〜ッとしたままだ。
　しかも朝のラッシュ時を避けようと、早く家を出たら、、家から池袋まで、わずか１
５分で着いてしまった。待ち合わせ時間より３０分も早い。

　さて、嫁の風邪は治らないどころか、まったく声が出なくなってしまった。
　かすかに搾り出す声も、森進一さんよりもかすれていて、か細い。
　あまりにもひどいので、私と携帯筆談で会話することに。

　ビュッフェで朝食。
　バイキングを食べると本当に宿泊客みたいなので、サンドイッチにコーヒーにしよう
としたら、サンドイッチがメニューにない。
　ところがウエイトレスさんは「少々お待ちください」といって、戻ってくると「でき
ます！」といって、わざわざミックスサンドイッチを作ってくれた。





　高級ホテルはこういう融通が利くのが素晴らしい。
　このサンドイッチがまた、薄切りローストビーフが入っていて、おいしいものだった。
　このホテルに対する好感度がぐう〜〜〜ん！と、アップした。

　それより、このビュッフェの雰囲気。
　半数以上が、海外からの旅行客。
　英語が飛び交う。
　学生さんが多いので、まるで『ハリー・ポッター』のボグワーツ魔法学院にいるみた
いだ。





　１５〜５歳の子どもが、必死に箸をつかっているんだけど、下のほうを握っているの
で、お箸が使いづらそう。

　午前９時３０分。コスモポリタンホテルに、蔵人総合研究所の赤根豊くんと、遠山孝
司くんが到着。
　ロビーで、私、嫁といっしょに、新規事業の相手の人と会う。
　先日、赤根豊くんが持ってきたわが社の新規事業の話だ。
　どうやら、この新事業というのは、いちばん近い業種は、共同馬主みたいなものらし
いけど、博打性も、投機性も薄い。

　午前１０時３０分。赤根豊くん、遠山孝司くんと、池袋の何件かの銀行を回っては、
書類に判子を押して行くお仕事。
　漢字だらけの書類の連発で、説明を聞いているうちに、寝不足で眠くなる。
　あくびをかみ殺すのに、必死だ。

　午前１１時３０分。すべての仕事が終了して、赤根豊くんと、遠山孝司くんとは、池
袋駅まで別れる。
　ふい〜〜〜！　甲が乙にどうした、乙が甲にこうしたという文章が並ぶ類の書類は苦
手だ。

　午後１２時。いったん自宅に戻り、嫁は声が出ないままなので、家で休むように勧め
る。井沢どんすけのように多くの人に風邪を伝染させてもいけない。
　私はそのままハドソンに向かう。

　午後１時。築地のハドソンへ。
　えっ！？　きょうは桃太郎新聞の会議で、私は午後３時からの出席でよかったの？　
そうかあ。だったら、家でひと寝入りしてから、来ればよかった！

　メンバーは、ハドソン宣伝部の梶野竜太郎くん、藤原伸介くん、読売広告の岩崎誠、
編集プロダクション社長の江口貴博くん。
　午後３時からの会議に出席予定のハドソン開発スタッフの川田忠之くん、田中俊介く
ん、小坂晃弘くん、込山勉くん、吉見直人くん、笠原圭介くんも同席で待機中。

「あれ？　柴尾英令くん、来てないの？」
「はい。まだ何の連絡も…」
「昨日の午前１時に、うちの娘が病院に救急車で担ぎこまれたことを心配してくれた
メールが来ていたから、寝過ごした可能性は高いぞ！」
「さくまサン！　ゆりは本当に大丈夫なんですか？」
「大丈夫なんてもんじゃないよ。メールで『救急車に乗ったよー！』とか、うれしそう
に書いてくるようなやつだからな！　まあ、検査結果は来週らしいけど」
「ほんとなんだなあ！」
「ほんとどころか、ストレッチャーにも乗ったよ〜！　楽しかったよ〜！というように
何でも一度経験してみたいだけなんだ、あいつは！」

　午後１時３０分。柴尾英令くんがまだ来ない。

「あっ、柴尾英令さんから電話です！」と、梶野竜太郎くん。
「柴尾さん、いまどこですか？」
「えっ？　へ？　それって？」
　どうやらいま起きたようだ。
　ってことは、いま自宅…。
　どんなに早くても、到着は午後２時３０分だ。

「じゃあ、柴尾英令くん抜きで始めよう！」と、私がいうしかなかった。





　業界向けの「桃太郎新聞」は、『桃太郎電鉄』関係の二ユースをマスコミ関係者に広
く知ってもらおうという、いわゆるプレスリリースだ。
　マスコミ関係者の人とは、１回きりの取材で終わってしまう場合が多い。
　かといって、用もないのに、また会いましょう、食事しましょうというのは難しい。
　だから音信普通にならないための「桃太郎電鉄通信」のようなものだ。

　もともと、『桃太郎電鉄』、『桃太郎伝説』の攻略本をずっと取材してきた江口貴博
くんを今回の編集に起用したので、ほとんど企画もお任せで大丈夫だし、２号、３号先
まで考えてくれるので、とても助かる。

　つくづく思うことは、実績のある人の仕事は手堅いし、お任せしても、勝手に暴走せ
ずに、「こんなこと考えているんだけど、どうですか？」と何種類も選択肢を提示して
くれることだ。
　たったひとつしかアイデアを提示しない人にかぎって、つかえないネタのことが多く
て困る。

　午後２時３０分。「すみませーーーーん、寝過ごしましたあああああっ！」と、柴尾
英令くん、到着！
「あっはっはっは！」
「わっはっはっは！」
　遅刻して、笑ってもらえる人は少ない。
　人柄だね。

　江口貴博くんと決めたことを、柴尾英令くんに伝えて、柴尾英令くんがアイデアを加
えたもので、２号、３号と、毎月発行して行こうということで、会議は最初の予定通り
の時間内で、終了。

　午後３時。土居ちゃん（土居孝幸）、「スタジオたくらんけ」の近藤康彦さん、山田
浩之さんが到着。

『桃太郎電鉄Ｕ（仮）』のオープニング・アニメの打ち合わせ。
「スタジオたくらんけ」さんとは、今回で３回目なので、どのくらいのレベルの作品が
出来るのかわかっているので、土居ちゃんの絵コンテを見ながら、あっというまに打ち
合わせは終了。
　今後のスケジュールのほうを綿密に打ち合わせするだけ。

　午後４時。「スタジオたくらんけ」さんと、ハドソン側のアニメ担当・吉見直人くん
が退席。

　ハドソン開発スタッフの川田忠之くん、田中俊介くん、小坂晃弘くん、込山勉くん、
笠原圭介くんと、『桃太郎電鉄Ｕ（仮）』の打ち合わせ。





　笠原圭介くんが、ビデオレターをみんなに見せながら、ＭＡＰに置くパーツや、電車
のデザインをこういう風に変更してみたいと、プレゼンテーションして行く。　でもビ
デオの中味は、貧乏神だったり、乗り物だったりするので、笠原圭介くんがやっている
ことが、陣内智則くんがやってるお笑いに見えてくる。

　引き続き、小坂晃弘くんが、最新ロムをつかって、私と柴尾英令くんが書いた仕様書
に対する質問と、提案。

　冗談ではなく、『桃太郎電鉄Ｕ（仮）』は、５０％以上完成している。
　しかも残りの５０％は、音楽と絵だけである。
　来年暮れ発売を予定しているゲームなのに、この完成度だ。
　しかも先月、鎌倉に持って来てくれたロムより、新しいロムをまた持って来てくれる。
これがうれしい。

　私、さくまあきらという男は、お酒も飲めないので、バーやキャバクラに連れて行か
れて、接待されるよりも、こういう風にいい仕事をしてくれることが、何よりうれしい
のだ。
　そりゃ、私も若いときは、六本木のクラブや、銀座のクラブに行くことが、未知の世
界に踏み込むようで、楽しい時期もあった。
　でも人間、５０年も生きて、他人の２倍も、３倍も、苦楽を味わってきた男にとって、
単純にうれしいのは、早め、早めに、仕事が進んで、余裕のある日程になることだ。
　仕事の遅れを睡眠を削って取り戻すような芸当は、私にはもう無理だ。

　ところが、この私への最大の接待は「いい仕事をしてくれること」と言い続けている
のに「そうはいっても、酒宴やホメ言葉を言われることのほうがうれしいでしょう！」
という態度を取る人がいる。
　残念ながら、私はおべんちゃらしか言わない人とは、次第、次第に、会う機会を減ら
して行って、フェイド・アウトして行くようにしている。
　ホメ言葉を言ってほしい人もいるのだろうが、私には無用だ。
　私は、ゲームを買ってくれた人からのホメ言葉は、うれしいが、業界人のホメ言葉は
儀礼的であるか、このくらいホメておけば喜ぶだろうという読みの浅さが透けて見える
ようなものが多いので、嫌いなのだ。

　柴尾英令くんも、土居ちゃんも、私にとって耳に痛いことも言ってくれるので、スタ
ッフになってもらっている。
　耳に痛い言葉ばかり浴びせて、同室した７人中６人に風邪を伝染させる井沢どんすけ
という男もいるが…。

　とにかく、私を喜ばせたい人は、いい仕事をしてください。
　正しい業界の情報を教えてください！
　私のやり方に苦言を呈してください！
　それが私に対する接待です。
　私も知らないようなおいしいものを教えてくれる人は、それだけで接待です。
　午後５時３０分。とんとん拍子の早いテンポで、『桃太郎電鉄Ｕ（仮）』の会議は進
む。あまりにも調子がいいので、慢心しないようにどこかで締めないといけないなと心
配になるくらいだ。

　ふっふっふっふ。『桃太郎電鉄Ｕ（仮）』はびっくりするような画面の連発だよ。

　午後６時。岩崎誠が再び登場。

　午後６時３０分。私、土居ちゃん、柴尾英令くん、岩崎誠、梶野竜太郎くん、藤原伸
介くんの６人で、東雲（しののめ）のシーフードレストラン「ネプチューン」へ。
　これから、昨日も予告したように、ニッポン放送まで、ネプチューンの堀内健くんに
会いに行くので、食事のお店を岩崎誠の提案で「ネプチューン」にしてみた。

 



　このお店、和洋折衷の不思議なお店。
　ハンバーグがあって、タルタルソースのエビフライがあって、利尻沖の蝦夷馬糞ウニ、
ヒラメといったものが出てくる。
　築地が近いので、お魚が新鮮なのだ。
　私のように、築地と函館の海産物の味になれてしまっている人間がおいしいと感じる
のだから、ふだん本格的なお刺身を食べたことのない人にとっては、感動ものだ。

　午後９時３０分。ニッポン放送へ。
　江口貴博くんが合流。
　なぜ私たちがニッポン放送に来たかというと、「堀内健とビビる大木のオールナイト
ニッポン」で、ネプチューンの堀内健くんが、「昨日も８時間、『桃電』（彼はこの時
点でまだ『桃電』といっている）をやったとか、９９年クリアしたとか、何度も番組の
なかで言ってくれていることを、ハドソンの社員の人が聴いていて、私たちに教えてく
れたのだ。

　それなら、今年から始めた「桃鉄ファンの芸能人に発売前の『桃太郎電鉄１２〜西日
本編もありまっせー！』を遊んでもらおうシリーズ！」の出張に行こうということにな
ったのだ。

　バッファロー吾郎のふたり、野性爆弾の城野克弥くんが第１弾！
　柊瑠美ちゃん、松本みなみチャンの声優コンビが、第２弾！
　テツandトモのふたりが、第３弾！
　陣内智則くん、シャンプーハットの小出水直樹くんが、第４弾！
　きょうの堀内健くんで、第５弾になる！
　もはや来週には、発売なので、このシリーズもきょうで打ち止めになるが、こうやっ
て並べてみても、その後、ＣＭに、毎日放送『桃陣（ももじん）！』にと、うれしい誤
算の連続となった。
　ここまで結果は期待していなかった。

　そんなわけで、ニッポン放送。
　ニッポン放送営業局の後藤隆志さん、河野信濃さん、編成局の小川勇樹さんとご挨拶。

　午後１０時。堀内健くんが、到着。
　挨拶もそこそこに「『桃太郎電鉄１２』がやりたいっ！」というので、柴尾英令くん
と、岩崎誠が出場。

　いきなり堀内健くんが「接待桃鉄はダメですよ〜！」と。
「ほんとですかあ！　よーし！　じゃあ、本気で勝負しますよ！」
「こてんぱんになっても知りませんよ！」

　しまった。人選を間違えた。
　柴尾英令くんと、岩崎誠がふだんの力でやったら、ふつうの人は木っ端微塵になって
しまう。
　とくに、岩崎誠は、無気力プレイをする人を罵倒する説教親父だ。
　いくらなんでも、このふたりを相手に起用するのは間違った。
　実は『桃鉄』が下手な藤原伸介くんを起用しようと思ったのだが、あとで堀内健くん
に、キングボンビーの着ぐるみを見せてあげるサプライズ企画があるので、出場するこ
とができない。
　土居ちゃんは、初対面の人に、豪速球カードをつかいまくるのを喜びとしている男な
ので、はなから起用を考えていない。
　困ったことになった。

『桃鉄公式戦』で、スタート！
　最初の目的地は、名古屋。
　いきなり、柴尾英令くんがリトルデビルカードを喰らう。
「あっ、きょうの柴尾英令くんは、ダメダメの日だ！」
　最近の柴尾英令くんは、本来の桃鉄師範代の力を発揮する場合と、ひどいカードを引
きまくるダメダメの日と、くっきり分かれることが多くなってきている。
　あっとうまに、堀内健くんが、名古屋まで６マス以内になって、サイコロを１回振っ
ただけで、名古屋に到着！
「ええ〜〜〜！　もう入っちゃうの〜！」
　まだ小淵沢近辺にいる柴尾英令くんに、貧乏神がつく。

　しかし、次の目的地は京都。
　あっというまに、堀内健くんが、京都に着く。
　見事な技があるわけではなく、ひたすらラッキー運のかたまり。
　目的地を前にして、「あ〜、入れなかった！」が、皆無。
　
　気がつけば、次の目的地・広島にも堀内健くんが入り、その次のハワイには信じられ
ないことだが、あと６マスになった次の月に、ハワイに入ってしまう。
　４連続で、目的地に到着である。
　さすがの岩崎誠も、柴尾英令くんもなす術が無い。

 



「とほほ…。ホリケンさん、強運にもほどがある…」
　もともと芸能人は、ラッキー運がＣＯＭキャラのさくま鉄人よりも高い。
　サザンオールスターズのカズ坊（関口和之）なんか、正直言って、『桃鉄』はどっこ
いズよりも下手かもしれないのに、ラッキー運で、ぶっとびカードをつかえば目的地に
近づき、目的地まで６マス以内になれば、サイコロを振るだけで入る。陣内智則くん
も、カードの引きが強い。

　そんな人たちを蹴散らすくらい堀内健くんはラッキー運と、カードの引きが強い。あ
んなに黄色のカード駅で、特急系のカードばかり引かない。
　おまけに、物件駅に着くと、物件を見ずに、「まとめ買い」のコマンドをつかって、
バラバラバラッとありったけの物件を買ってしまう。
　ただただあっけに取られるだけだ…。

　次第に、時間がなくなってきた。
　堀内健くんの番組の打ち合わせ時間が迫ってきてしまったのだ。
「オールナイトニッポン」は、生放送だ。
　ついに、２年目で終了のコールが宣言される。
　このままでは、キングボンビーの着ぐるみを見せることができず終いになってしまう
とあわてた藤原伸介くんが、キングボンビーになって、堀内健くんに見てもらおうとす
るが、堀内健くんは『桃太郎電鉄１２』に夢中で「すいませんねー！　驚いてあげるこ
とができなくて！」と言いながら、『桃太郎電鉄１２』の画面に目は釘付け。

 



　けっきょく２年目まで堀内健くんの圧勝で、柴尾英令くんも、岩崎誠も持ち金マイナ
ス状態。
　ふたりともたっぷりキングボンビーを味わってしまった。
　さあ、ここで終了…だが、「あと１５分なら！」の声がかかる。
　堀内健くん、大喜び。

　しかし、このまま終わっては、桃鉄師範代たちの名がすたる。
　岩崎誠、柴尾英令くんがついに捨て身の戦法に入った。
　キングデビルカードを喰らっている岩崎誠が、「ホリケンさんに、ハリケーンボンビー
を見せてあげたーーーい！」と叫びながら、必死に目的地の青森に入り、続いて、仙台
に入る。
　柴尾英令くんも、必死に仙台をめざす。

　今回から、持ち金がマイナス１０億円だろうが、マイナス１００億円だろうが、目的
地に入れば、持ち金を０円にしてくれるシステムが入っている。
　だから岩崎誠はキングデビルカードが消えてから目的地に入りたいのだが、貧乏神を
堀内健くんになすりつかたいだけのために、目的地に入って、持ち金０円になってすぐ、
キングデビルに３億５０００万円ほど奪われた。

　貧乏神が、堀内健くんに移ったとたん…。
「おや？」
「貧乏神の　ようすが…」
「なんか　変だぞ？？？？？」
「ま…　まさか！」

　そして、まさかのハリケーンボンビーに変〜〜〜身〜〜〜ッ！
「うわあああああ！　これか〜〜〜！」
　堀内健くんの叫びがこだましながら、９億円ほどの物件が吹き飛ばされていった。
「ほんとに、キングボンビーよりひどいというのが、わかりました！」

　午後１２時。私は土居ちゃんとタクシーで、自宅へ。
　お風呂に入って、「オールナイトニッポン」を聴く。
　あっはっはっは。堀内健くんが「テツandトモが『桃太郎電鉄１２』のＣＭやってる
でしょ！　『１３』はボクにやらせて！っていったら、ハドソンの人が『はいっ！』っ
て言ってくれたよ！」と番組でしゃべっていた。
　堀内健くん、「はいっ！」と言った人は、梶野竜太郎くんです。
　もし出演してもらうことになったら、出演料は、梶野竜太郎くんのポケットマネーか
ら出してもらいましょう！

　いやあ、怒涛のニッポン放送襲撃だったけど、楽しい『桃鉄』だった。

　それにしても、長い１日だった。
　ふうっ…。
　明日も、ハドソンで会議。