１１月１５日（土）

　午前７時。きょうから、鎌倉でテスト・プレイ。
　どっこいズ（井沢どんすけ、すとろう小泉、石川キンテツ、込山勉）最初の『桃太郎
電鉄Ｕ（仮）』テスト・プレイなので、体力温存、二度寝、三度寝で、備える。
　何しろ、彼らのテスト・プレイは、見ているだけで、激しく体力を消耗する。
　わずか１泊２日で、北海道１週間旅行以上の疲労度に匹敵する。

　さて、どっこいズとは、『桃太郎電鉄』をプレイしても、下手で、どっこいどっこい
のレベルなので、どっこいズと呼ばれている。
　彼ら３人の名前に、どっこいズが含まれているのを知ったのは、あとのことである。

・井沢[ど]んすけ
・込山[勉]
・[コ]イズミリュウジ
・[石]川キンテツ
　４人揃って、どっこいズ！

　午前１０時３６分。嫁と品川駅から、久里浜行きの横須賀線に乗車。

　午前１１時２０分。鎌倉駅で下車。
　本日、七五三のピークで、鎌倉は家族連れだらけ。

　午前１１時３０分。鎌倉駅前の「不二家」へ。
　銀座不二家ハンバーグセット。
　いつものＢ級なハンバーグの味がしないので、いまいち。
　中途半端なものは、食べ物だろうと、作品だろうと、ダメだ。
　超一流か、超Ｂ級が好ましい。

　井沢どんすけ、石川キンテツがほどなく到着。

 



　２０分ほど遅れて、読売広告の岩崎誠が到着。





　きょうの対戦メンバーは、まずこの３人。
　どう見ても、岩崎誠が、赤子の手をひねりに来ただけである。

　午後１時。鎌倉長谷の家に移動。
　さっそく、『桃太郎電鉄Ｕ（仮）』のテスト・プレイ開始。
　岩崎誠は、自分の子どもにも、『桃太郎電鉄』で真剣勝負を要求するほどだから、井
沢どんすけ、石川キンテツはひとたまりもない。
　といっても、岩崎誠が桁外れに上手いわけではない。
　ふたりが弱すぎるだけだ。

　岩崎誠が、５進めるカードをつかって、目的地に入る！
「そうか、そういう手があったのかあ！」と、井沢どんすけ。
「あっ！　岩崎さん、５進めるカード持ってたんすねー！」と、石川キンテツ。「さっ
き、ボクは☆印カード売り場で、５進めるカードを持っているところを見せていたじゃ
ないか〜！」と岩崎誠。
「そ、そ、そうだったかなあ！」と、井沢どんすけ＆石川キンテツ。

「岩崎さん！　すみませーーーん！　お金いただきまーす！」と、石川キンテツがとっ
かえっこカードをつかって、岩崎誠の持ち金５億円を奪い、石川キンテツ持ち金２００
０万円を押し付ける。
　ここだけ見ていると、石川キンテツはまるで、『桃鉄』上級者のようである。
　しかし、翌月。
　岩崎誠は、とっかえっこカードで、再び奪われたお金を取り戻す。
「ああああ！　岩崎さん！　とっかえっこカード持ってたんですねー！」
「だから、さっきから持っているところを見せていただろー！」

　要するに、井沢どんすけと、石川キンテツは、他人がどんなカードを持っているか、
暗記していないのである。
　それどころか、ふたりとも、自分が持っているカードもよく覚えていない。

　それにしても、ワーーー、ワーーー、ギャーーー、ギャーーー、男のおしゃべりは、
みっともないというくらい、３人の会話はうるさい、うるさい！
　パンクロックのコンサートを見たような疲労が、ずっしりと私の身体に刻まれていく。

「うーーん！　うーーーん！」
「どうした、井沢どんすけ！　何を悩んでいるんだ？」
「うーーん！　うーーーん！」
「おいおい！　オナラカードとダイヤモンドカードのどちらかを捨てるのに、ダイヤモ
ンドカードのほうを捨てるかあ！」
「えへえへえへっ。オナラカード、好きなんですよー！」
　バッファロー吾郎の木村明浩くんも「オナラカード、好きなんですよー！」と言って
いたのを思い出した。

　午後２時。札幌から、ハドソンの企画担当の小坂晃弘くんと、込山勉くんが到着。１
時間ほど遊んでいたバージョンよりも、新しいロムを持ってきてくれた。
　もちろん、みんな新しいロムが見たいので、ロム・チェンジ。
　井沢どんすけは、最初に目的地に着いたっきり、マイナス街道まっしぐらである。渡
りに舟である。

　最新ロムにチェンジして、再戦。
　結果は、またしても岩崎誠の独走である。
　岩崎誠という男は、この世でいちばん嫌いな言葉が「手抜き！」なので、もう情け容
赦ない！
　しかも今年阪神が優勝したものだから、星野監督のように選手に接することが愛情だ
と思い込んでいるので、とことん、井沢どんすけと、石川キンテツを痛めつける、痛め
つける！
　井沢どんすけと、石川キンテツの炒め物が出来てしまうほどだ。
　それは「痛める」ではなく、「炒める」！

「えへえへえへっ！　さくまサン！　ちょっとゲスト・ボンビーと、キングボンビーの
出現確率高くないですかあ！」と、井沢どんすけ。
「テスト・ロムの最初の頃は、ゲスト・ボンビーの調子が見たいから、確率を増やして
るんだよ！」
「えへえへえへっ。そうなんですか！　それにしても多くないですか！」
「井沢どんすけみたいに、ずっと貧乏神をつけっぱなしのプレイヤーが、ゲスト・ボン
ビーに会う確率は、当然高くなるに決まってるだろ！」
　とにかく、ゲスト・ボンビーは、井沢どんすけに付きっぱなし。





「これ、ひどいっすよ！」
「井沢どんすけ、いつもゲスト・ボンビーに初めて会うたびに、おなじ言葉を言ってる
ぞ！」
「でも、これ、ブラックボンビーとか、ハリケーンボンビーともまた違ったひどさだよ！」
「へぇ〜、どんな風に？」
「今回のは、じわじわひどいですよ！」
「お〜〜〜っと、井沢どんすけ！　そこまでだ！　『桃太郎電鉄Ｕ（仮）』のゲスト・
ボンビーのヒントを出すのは早すぎる！」

　午後４時。柴尾英令くんが到着。





　さっそく、私、柴尾英令くん、小坂晃弘くん、込山勉くんの４人で、井沢どんすけが
ほざいている、虫のいい要求を討議する。

　スーパー・テスト・プレイヤーである井沢どんすけは、自分が持っているカードも覚
えないくせに、青森駅のあの入りやすいマップを、入りづらく変更すると、烈火のごと
く怒り、元に戻せ！とうるさいのでる。
　弱者にとって、あの「入りやすい青森駅」は、勝利への希望なのだそうだ。
　井沢どんすけ以外の人にも、等しく勝利への希望だと思うのだが…。

　ところで数日前に、来年の１月くらいには、『桃太郎電鉄Ｕ（仮）』の内容を発表し
てしまうみたいなことを書いたが、井沢どんすけのほうから、少なくとも、春くらいま
で待ったほうがいいといわれる。
　こういう社会状況を読み取る能力は、井沢どんすけの場合、尋常ではない。
　私にとっては、奥歯に物がはさまるうような物言いを続けるのは、非常にストレスが
たまるのだが、まだ『桃太郎電鉄１２』が発売になっていないのに、次回作をバラすの
は、お客さんに失礼！という井沢どんすけの正義感は立派なので、応じるしかない。
　ただし、井沢どんすけという男。
　他人に正義感を要求するが、自分に対しては、蜜のように甘い男であることだけは記
しておきたい。
　３５歳にもなって、まだ洋服をお母さんに選んでもらってるくせ…いや、そういう噂
があるくせに！

　ぶーーーっ！　『桃太郎電鉄Ｕ（仮）』の内容をバラしたい！　ストレスがたまるな
あ！

　午後５時３０分。近所のうどんすきのお店「久霧（ひさぎり）」へ。
「えっ！？　岩崎誠は食べて行けないの？」
「実は、午後４時くらいに帰るつもりだったんで、いまでもけっこうやばい時間なんで
す！」
「そうなのか、残念だね！」
「井沢どんすけも、もう帰らないといけないんだろ？」
「ええ！　でももうちょっと先を見てから…」
「出た、出た、井沢どんすけの帰らない病だ！」
「えへえへえへっ！　でもほんと、やばいんですよ！　『桃太郎電鉄』の攻略本の締め
切りで…」
「そりゃ、ひきとめるわけにいかないなっ！　いまから帰ったほうがいい！」
「もうちょっと、先を見てから…」
　井沢どんすけの場合、うどんすきを食べることよりも、『桃太郎電鉄』の先の画面の
ほうが重要なのだ。

　というわけで、私、嫁、柴尾英令くん、井沢どんすけ、小坂晃弘くん、込山勉くん、
石川キンテツの７人で、うどんすき。

 



「うめ〜〜〜！　出汁がいいなあ！」と、鍋物を食べるために生まれてきた男・柴尾英
令くんが叫ぶ。
　このお店のうどんすきの出汁は、非常に上品で、いい味なのだ。
　惜しむらくは、午後５時３０分入店が、ラストオーダーという点だ。
　鍋物はやっぱり、夜、じっくり食べたいよねえ。
　午後５時３０分はまだ、夕方だ。

　午後６時３０分。再び、鎌倉長谷の家に戻って、テスト・プレイの続き。
　私と柴尾英令くんは、首脳会議。
　井沢どんすけが、首をかしげたり、ノーリアクションだった部分を、検討する
　午後９時３０分。柴尾英令くんが帰京。
「井沢どんすけ！　柴尾英令くんといっしょに帰ったら？」
「もうちょっと様子を見たら…」
「どういう様子なんだよ！」
「もうちょっと先を見たら…」
「本当に帰ったほうがいいぞ！」
「きょうじゅうには帰ります！」
「もうじゅうぶん、ゲスト・ボンビー喰らい飽きただろう！」
「えへえへえへっ！」

　午後１１時。小坂晃弘くん、込山勉くんが藤沢のホテルにチェックインするのをきっ
かけに、ようやく井沢どんすけが帰る。
　石川キンテツのみが、家に残って、『桃太郎電鉄Ｕ（仮）』の続き。
　予定では、明日コイズミリュウジが午前中に来ることになっているので、石川キンテ
ツは、コイズミリュウジを待つために泊まるのである。健気ではないか。
　本当に来るといいのだが…。ははは。

　いやあ、きょうも見ているだけで、ぐったり。
　井沢どんすけが、風邪気味で、ゲホッゲホッいっていたのも怖い。
　井沢どんすけの風邪だと、さぞや悪性であろう。
　疲労しすぎると、風邪を引きやすくなる。
　早めに寝よう。