１１月５日（水）

　午前１０時３０分。朝から、銀行にでかけていた嫁から、「イノダコーヒに行かない？」
の電話が入る。
「イノダコーヒ三条店」へ。
　朝なので、胃にやさしいカフェオレを飲む。

　午前１１時。ヤサカタクシーの宮本さんから電話が入る。
　えっ？　もうホテルで、堀井くんたちを乗せた？
　早すぎるよー！
　こっちに向かう？
　うっひょー！
　あわてて自宅にいる娘を携帯電話で起こす。
　あいつは旅先でよく寝る。

　午前１１時３０分。ヤサカタクシーの宮本さんはジャンボタクシーで、「イノダコー
ヒ三条店」まで迎えに来てくれて、娘を拾って、すぎやま邸へ。
　昨日のメンバーのうち、成沢大輔くんが、園田競馬場というところで、成沢大輔くん
が馬主の馬が走るというので、見に行った。
「大人の修学旅行」の鉄則は、現地集合、自由解散だ。
　楽なお付き合いが、いちばん。

　すぎやまこういち先生ご夫妻、さくま家族、堀井雄二くん、土居ちゃん（土居孝幸）、
柴尾英令くん、ほぼ昨日とおなじメンバー。

　昨日、あれだけすさまじいものを食べたのに、きょうは、イノシシ鍋を食べに行く。
実に私と嫁は、３週連続となる「洛雲荘」だ！
　あれだけ誰もが、「柴尾英令くんによく似合う料理だ！」と言い切る、白味噌のイノ
シシ鍋だ！
「何で、みんなはボクにそこまで、食べさせようとするのですか！」と、柴尾英令くん。
「柴尾英令くん！　私たちは『太らせ組』なんだよ！」と、私。
「何ですか、その『喜び組』のできそこないのような名前は！　どうせなら『喜び組』
のほうが、うれしいですよ！」
「『喜び組』より、おいしいもの食べさせるよー！」

　本当は、今夜イノシシ鍋を行くつもりだったのだが、あそこはお昼に一度行っておか
ないと、道中真っ暗闇で、どこに連れられて行ったかわからなくなってしまう。
『となりのトトロ』の猫バスみたいなものだ。
　しかも、本日、堀井雄二くんは夕方には新幹線に乗って帰るというので、この時間で
の出陣となった。
　もし堀井雄二くんが、夜、イノシシ鍋を食べられたとしても、２日連続で、真っ暗闇
のお店に行くことになってしまう。

　そんなわけで、「洛雲荘」に向かう。

「ええ〜、何これ！　昨日の松茸のお店よりも、険しい道じゃないですか！」
「紅葉が始まってるよ、間違いなく、これは紅葉だよ！」
　京都よりはるかに標高が高いので、京都の市街地では、まったく紅葉の気配がないの
に、ここでは、紅葉が始まっていた。
　かなり紅の色が、鮮やか！

「うひょ〜〜〜！　野猿がいるよ、野猿！」
　ずいぶんきれいな毛並みの野猿が木の上にいた。





「本当に京都なのか？　ここは？」
「何度でもいうけど、ここは京都市北区！」

　午後１２時。「洛雲荘」に到着。
　この１週間で、「洛雲荘」のまわりの紅葉は、さらに広がっていた。
　ついに今年初めての紅葉を味わった気がする。
　さっそく、みんなで記念撮影。

　この間のように、鴨川の源流である川と、滝をみんなで見下ろす。
　空気がひんやりしていて、気持ちいい。

 
 
 



　また、わけもなく、記念撮影。

　きょうは、人数が多いので、二階の部屋に通される。
　あの巨大火鉢が、ふたつだ！
　松茸はもういらないので、焼き栗と、銀杏だけはお願いしておいた。

　ちなみに、この「洛雲荘」のイノシシ鍋を以前にも食べたことがあるのは、すぎやま
こういち先生と宮本さんだけ。
　堀井雄二くん、土居ちゃん、柴尾英令くんは、きょうが初めて。
　まあ、うちの家族だって、３週間前まで、ここの存在すら知らなかった。

 



「あちっ！　あちちちっ！」
「ひ〜〜〜！　あち〜〜〜！」
　熱い銀杏をあちち！と割りながら、手を冷やしながら、食べる。
　銀杏はおいしいけど、早く食べ終えないと、イノシシ鍋が来ない。
　焼き栗は、あいかわらず、ほくほくでおいしい。
　天津甘栗もいいけど、自然な甘みの山栗には、勝てないな。

　いよいよ、イノシシ鍋が登場！
「牡丹（ぼたん）鍋」の何ふさわしい大輪の花を咲かせたイノシシ肉に、一同、
「おお〜〜〜っ！」と感動の声が漏れる。
　イノシシが出てきただけで、またしても記念撮影。
「アイドルの撮影会みたいだなあ！」といいながら、みなさん、イノシシ肉を撮りまく
る。

 



　蒸気機関車の写真を撮りまくるのを、鉄道「鉄っちゃん」という言い方があるけど、
イノシシ肉を撮りまくるこの人たちは、何といえばいいのだろうか？





　仲居さんが手際よく、ネギ、ゴボウ、セリを入れてくれて、いよいよ、イノシシ肉も、
どぼどぼ、どぼどぼ、白味噌の鍋のなかに『ピクミン』が池のなかに溺れて行くよ
うに入っていく。

「な〜〜〜るほどーーーー！」
　柴尾英令くんが語尾が、ぐ−−−−ん！と右肩上がりに上がる口調で、感動の声を上
げる。
　あれだけ「柴尾英令くんに似合う料理！」、「柴尾英令くんが好きに決まっている！」
とみんなに断定されていただけに、そこそこのおいしさのレベルでは納得しないはず！
「よかった！　よかった！」
　なんだかわからないけど、柴尾英令くんが喜んでくれたので、みんなうれしいのだ。

「白味噌の出汁がいいねえ！」
「上品な味ですよね！」
「やわらかい！　お肉がやわらかい！」

 



「脂身のところがおいしいね！」
「はっはっは！　やっぱり、おっちゃん（堀井くん）、脂身、好きだねえ！」
　堀井雄二くんは、すき焼きの脂身も好き！
「黒豚みたいな味だね！」

 
 



「うっひー！　苦しい！」
「いやあ、食った、食った！」
「身体が重い！」
　きょうもまた「苦し〜〜〜い！」の大合唱だ。

　イノシシ鍋を食べ終わって、最後にもう一度、記念撮影。
　このメンバー、よく考えたら、京都にしょっちゅう来ているのに、食べ物の前での記
念写真はあっても、金閣寺や、清水（きよみず）の舞台を前にした記念写真が１枚もな
い。





　午後２時３０分。北区紫野の「丸徳　丹波」へ。
　ここはすぎやまこういち先生ご夫妻と、歌手の沢田研二さんお勧めのお漬物屋さん。
お漬物が苦手な柴尾英令くんと、グースカピーのうちの娘以外が、お漬物を買いに行く。

 



　午後３時。お約束の出町柳のパン屋さん「柳月堂」に寄ってもらう。
　くるみパンを買いまくり。
　土居ちゃんまで買いに来る。
　すぎやまこういち先生ご夫妻まで。

　午後３時３０分。錦市場へ。





　ここで一度、宮本さんとはお別れ。
　堀井雄二くんも、お刺身ゆばを買って、京都駅へ。

　この時点で、みなさん、自由解散。

　うちは「かね松」で、柿を買う。
「えっ？　これが熊本の太秋（たいしゅう）ですか？」
　果肉がやわらかくて、梨のようにさくさくとした歯ざわりで、柿の世界では注目の的
と呼ばれている「太秋（たいしゅう）柿」が売られていた。
　一度、買ってみたかったんだあ！

　午後４時。家族３人は、京都の隠れ家に戻る。
　しばらくして、土居ちゃん、柴尾英令くんが「『マトリックス・レボリューションズ』
のキップが取れなかったあ！」といいながら、戻ってきた。
　きょうの午後１１時から、日本公開という変則的なロードショーだけに、満員だろう
と思ったけど、午前１時過ぎの回の、最前列しか席が空いていなかったそうだ。

　午後４時３０分。嫁と、娘は、寺町へ散歩に。
　私、土居ちゃん、柴尾英令くんは、ヤサカタクシーの宮本さんにもう一度来てもらっ
て、円町のニノミヤ電気へ。

　ふっふっふ。京都用に、ＤＶＤレコーダーを買うのだよ。
　へっへっへ。柴尾英令くんがいるうちに、京都にもＤＶＤレコーダーを設置してもら
おうという魂胆だよ。
　これで、『桃の陣！西日本オニ退治道中記』も録画できるんだよ。
　放映後は、ビデオをもらえるだろうけど、ＣＭ抜きのをもらうと、空気感がわからな
くなるからね。

　午後６時。家にもだったら、娘が着物を着ていた。





　嫁はまんまと、娘に着物を買わされたそうだ。
　
「さくまサン！　一度ここを片づけてしまっていいですか？」と、柴尾英令くん。
「えっ？　何？」
「ここに昔のゲーム機器がたくさんあるんですけど、もうつかわないでしょ？」
　ありゃ、ほんとだ。
　出てくる、出てくる。
　ＮＩＮＴＥＮＤＯ６４に、ツイン・ファミコンに、スーファミに、プレイステーショ
ン１に、プレイステーション１のデバッグ・ステーションだ。
「うん！　一度、これを段ボール箱に入れておこう！」
　京都に隠れ家を構えてから、１０数年になるけど、スーファミから、プレイステー
ション２まで進化したってことなんだね。
　歴史と時代の経過を感じるねー！

　午後７時。私は、長嶋ＪＡＰＡＮの「日本ＶＳ中国」が見たいので、家に残る。
　昨日の松茸ご飯のおにぎりを食べる。

　嫁、娘、土居ちゃん、柴尾英令くんは「牛のほねあなざ」へ。

「日本ＶＳ中国」は、１３−１で、やっと安心の試合内容。
　明日の台湾戦のほうが怖いね。

　午後９時。嫁と、娘が帰って来たので、さっそく「太秋（たいしゅう）柿」を剥いて
もらう。
　大きい！　りんごの品種「世界一」のように大きい！





　な、な、な、何〜〜〜ッ！
　こ、こ、こ、このおいしさは、何〜〜〜！
　とてつもなく、おいしいよ。
　本当に梨のように、さくさくおいしいよ！
　しかも甘い！
　こ、こ、こんなおいしい柿は初めてだよ！
　日本じゅうの柿を食べたことのある私が、興奮する味だよ。
　家族３人、あっというまに、巨大柿を食べつくす。

　この世でいちばん好きな果物は柿の私が、あきらかに動揺しているよ。このおいしさ
にショックを受けているよ。
　たぶん、明日、買って帰るな。

　そう。明日は東京に帰る。