１１月４日（火）

　きょうはこれから、京都に行って、毎年恒例、「秋の紅白松茸歌合戦」だ！
　１年間いっぱい働いた自分をホメたたえ、「来年もまたがんばるぞ！」と、心を引き
詰める前に、きょうだけは、童心に帰る日だ。

　早川ミステリーの登場人物の紹介のように、「松茸ツアー」が始まる前に、今年の出
場選手をご紹介します！

☆すぎやまこういち先生ご夫妻
　いわずと知れた『ドラゴンクエスト』、『亜麻色の髪の乙女』の作曲者。
「松茸ツアー」の大会委員長。
　私のグルメ師匠。

☆私、嫁、娘。
　うちの娘は昨日まで風邪で倒れていたが、松茸を思い浮かべて「食べたい！　食べた
い！」と念じて寝たら、熱が引いてしまったらしい。

☆堀井雄二くん
　ついに「松茸ツアー」初出場！
　もちろん『ドラゴンクエスト』の作者。
　すき焼きの脂身が好き。

☆土居ちゃん（土居孝幸）
『桃太郎電鉄』シリーズのイラスト担当。
　堀井雄二くんの大学時代の２年後輩。
　オナラ、うんちネタが好き。

☆柴尾英令くん
『レガイア伝説』、『レナス』の作者。
　いまは『桃太郎電鉄』シリーズの演出担当。
　アインシュタイン並みの頭脳を持ちながら、酔いどれ怠け者。

☆成沢大輔くん
『ダビスタ』伝道師。遅刻アーティスト。
　２０００年以来、３年ぶりの出場。

　残念ながら、欠場は、「プティ・ポワン」の北岡ご夫妻、カズ坊（関口和之）、眞島
真太郎くん＆杉村幸子さん夫妻。
　カズ坊（関口和之）は、昨日までスケジュール調整しながら、ハワイ本の原稿の締め
切りピ〜〜〜ンチ！で、断念。

　午前８時。原宿の自宅にて、旅行仕度。
　旅に出るときの準備に、新しい動作が加わった。
　ＤＶＤレコーダーで、予約録画を入れておくことだ。
　ふんふんふん。自慢モードだよ。
　ＤＶＤレコーダーがつかえるようになったくらいで、ここまでいい気になるやつもい
ないだろう。
　いまも録画モードのＳＰの意味もわからない。
　でも、ＤＶＤレコーダーのおかげで、関西に行っている間に東京だけでしかやってい
ない番組を録画しておくことができるんだよ。
『名門アサ秘ジャーナル』とかは、関西で放送していないのよ。『ド・ナイト』も。い
かん。例題がふたつとも、浅草キッドさんの番組だ。
　おかげで便利だよー、ＤＶＤレコーダーは。
　長生きはしてみるもんだ。もごもご…。

　午前１０時３０分。家族３人、自宅に「セコムしてますかー！」をかけて、いざ出発
と思いきや、並びの喫茶店「らぴす」サンで、モーニング・セット。
　朝からたくさん食べると、松茸に苦しむので、予防接種ならぬ予防摂取だ。

　午前１１時３０分。東京駅へ。
　今回、初出場の堀井雄二くんが、どうやって集合場所まで来たらいいかわからないだ
ろうと思って、午後１２時に、八重州口の資生堂パーラーに集合にしておいた。
　まだ時間があるので、本屋さんで、ついついあれこれ購入。

　読売広告の岩崎誠から電話が入る。
　なんと！　昨日スタートした毎日放送『桃の陣！西日本オニ退治道中記』の視聴率が、
３．５％を記録したというではないか！
　３．５％というと、たいした数字ではないかと思うかもしれないが、業界的には驚異
的な数字なのだ。だって、午前１時３５分からの深夜放送帯なんだよ。
　この時間帯はほとんど１％行かないのだ。
　この３．５％という数字を、占拠率といって、その時間帯でどのくらいの人が見てい
たかという数字に換算すると、昼間の視聴率２０％に匹敵する。
　もちろん、同時間帯のトップ！
　すげーですよ、これは！
　信じられない数字なんだよ、ほんとに。
　思わず、ギャグで「岩崎誠！　日本テレビみたいに、ビデオリサーチの車を尾行して、
視聴率用の機械を設置している家庭を探し出したんじゃないだろうなあ！」と言ったほ
どだ。

　午後１２時。そろそろ「資生堂パーラー」に行かなきゃ！と思ったら、堀井雄二くん
から電話が入る。
　えっ？　急に来れられなくなちゃったのかな？
「ごめん！　１２時に間に合いそうもないと思って、うっかり新幹線のキップ買っちゃ
ってさ、午後１２時１３分出発ののぞみ号やったよー！　だから京都に先に行ってるー！」
　なんじゃーーーい！
　堀井雄二くんのために、１２時集合にしたのにー！
　集合してから、みんなでキップ買って新幹線乗るつもりだったんだよー！
　午後１２時に乗車じゃないんだよー！
　でもまあ、本当の集合は、午後４時、京都のすぎやま邸前なので、別に間違いではな
いんだけどね。
　ああ見えて、堀井くんは、実はせっかちだ。

　で、「資生堂パーラー」へ。
　土居ちゃん（土居孝幸）、柴尾英令くんと待ち合わせ。
「あれ？　堀井さんは？」
「うっかりキップ買っちゃって、先に行っちゃったよー！」
「ええー！」
「どっちみち堀井くんは喫煙車両なんで、みんなとおなじ車両は無理らしい！」　土居
ちゃんも、喫煙者のはずなのだが、土居ちゃんは禁煙車にいつも乗っている。そういえ
ば、昨年のお正月くらいから、禁煙を始めたけど、ニコレット中毒になってしまった柴
尾英令くんは、最近とうとうニコレットもやめて、正真正銘の禁煙者になってしまった。
　うーーーん。もっとおもしろい幕切れを期待していたのになあ。

　全員揃ったところで、みどりの窓口でキップを買い、ホームへ。
「あれ〜、柴尾英令くん、これから松茸なのに、お弁当食べるの？」
「食べるでしょう！」
「だったら、２１世紀出陣弁当とかおいしいよ！」
「それは、紫蘇（しそ）が入っているから、ちょっと…」
「ひょっとして、焼肉弁当？」
「そうなるかなあ…」
「柴尾英令くんらしい！」

　嫁の携帯が鳴る。
　成沢大輔くんだ！
　えっ？　もう改札口まで来てる？　キップ買って、追いかけてくる？
　ありゃ！　発車まで３分くらいだぞ。

　実は、「遅刻アーティスト」の異名を取る成沢大輔くんは、すでに午後４時の集合時
間に間に合いそうもないという連絡が入っていたので、日記ネタとしては、爆笑ネタに
なるなあ！と楽しみにしていた。
　むーーーん、しぶといなあ、成沢大輔くん！
　しかもおなじ新幹線のキップを買うといっていたけど、私たちとおなじ車両の１３号
車を引き当てている。
　そういえば、「松茸ツアー」の参加者は、みな無類の強運揃いだ。

「はっはっは。おなじ車両でしたあ！」
「ダメじゃん、成沢大輔くん！　おもしろくねーなー！」
「はっはっは。言われると思ったー！」
「遅刻アーティストらしくないぞー！」
　時間通りに来ると、みんなから不満の声がもれるというのも稀有なキャラクターの持
ち主だ。

　午後１２時３３分。のぞみ５３号に乗車。
　きょうは「大人の修学旅行」で童心に帰るつもりだけど、新幹線車内は、桃太郎チー
ムにとっては、貴重な移動オフィスでもある。
　さっそく、お仕事。
　まずは土居ちゃんと、『桃太郎電鉄Ｕ（仮）』のゲスト・ボンビーのデザインの打ち
合わせ。
　すでに何回目かの打ち合わせなので、本日、デザイン決定！
　新幹線のなかで、平然とゲスト・ボンビーの最終決定を下すところがいいでしょ？　
またブラックボンビーとも、ハリケーンボンビーとも、違った雰囲気のゲスト・ボン
ビーでっせー！

　引き続き、私が座席を移して、柴尾英令くんと、『桃太郎電鉄Ｕ（仮）』のゲーム演
出の打ち合わせ。
　札幌開発チームからの質問に、答える。
　時代劇の素浪人のように、腕は立つけど、ほとんど毎日飲んだくれている柴尾英令く
んをつかまえて、その場でイベント別の質問に答えさせると、あら不思議。　私なんか
だと、３日かかるような難問をテキパキと答えて、名古屋に着く頃には、すべての質問
に回答を出していた。
「だから、柴尾英令くん、それだけの頭脳を毎日つかってちょうだいな！」
「あっはっはっはー！」
「宝の持ち腐れだぞー！」

　私のことを、「毎日まじめによく働くなー」といってくれる人もいるけど、処理速度
が遅いから、ふつうの人よりも何倍も時間をかけているから、結果的に速く見えている
だけだ。
　私に、柴尾英令くんの頭脳があったら、『月刊桃太郎電鉄』を発売できる。

　午後２時４５分。京都駅で下車。
　ヤサカタクシーの宮本さんが、いつものようにジャンボタクシーで迎えに来てくれて
いる。
「あれ？　堀井さんは？」
「うっかり、先にホテルに行っちゃいましたー！」

　うちの家族３人を、京都の我が家に落として、土居ちゃん、柴尾英令くん、成沢大輔
くんを堀井くんの待つホテルまで運んで、チェックイン。

　私は、まず京都の家に着いて、ＶＡＩＯのデータを、外付けハードディスクに入れる。
新幹線車内で柴尾英令くんと決めた項目が飛んだら、泣くに泣けなくなる。

　再び、ヤサカタクシーの宮本さんがホテル組４人を乗せて、我が家へ迎えに来てくれ
る。
「あっはっはっは！　堀井くんがいるー！」

　午後４時。予定通り、すぎやまこういち先生ご夫妻のマンションの前へ。
　すぎやまこういち先生ご夫妻がエレベーターを降りてきたときに、門の前で縦に２列
に並んで、トランペットで『ドラクエ』のファンファーレを吹くマネをして待とうと
なったのだが、土居ちゃんが、「まだ来ないかな？」と、オープンハウスのちらしを見
に行った瞬間に、すぎやまこういち先生ご夫妻が降りて来て、まんまと失敗する。





　これできょうのメンバー、すぎやまこういち先生ご夫妻、さくま家族、堀井雄二くん、
土居ちゃん、柴尾英令くん、成沢大輔くんが揃ったことになる。
　うちの娘を除けば、３８歳の成沢大輔くんが最年少という局地的高齢化社会である。

　すぎやまこういち先生の「全員揃ったところで、マツタケのポーズ！」の合図で、記
念撮影。





　ジャンボタクシーは、一路、名神高速道路をめざす。

　めざす前に、ジャンボタクシーの座席をどうするかでひと苦労。
　総勢１０人になったので、ジャンボタクシー１台ですんだんだけど、補助イスも出し
て、ぎっちぎちなのだ。
　結論から、お見せしよう。


　　　　　　　　　↑進行方向。

　　　　　　　娘　　　　宮本さん

　　　　　　すぎやま　　すぎやま　
　　　　　　　奥様　　　　先生

　　　うちの嫁　　さくま　　堀井くん

　　　土居ちゃん　成沢くん　柴尾くん


　問題は、最後列だ！
　見事に太った人たちが、並んで窮屈そう！
『ウォ−ターボーイズ』というよりも、『フトッターボーイズ』。
　ゲームの倉庫番のように、工夫したつもりなんだけどねー！





　京都南インターから、名神高速道路に乗って、吹田ジャンクションから、中国自動車
道へ。いつものように右手に、万博跡地の太陽の塔が見える。
　西宮名塩（にしのみやなしお）のサービスエリアで、トイレ休憩。
　あれだけ「今年こそ、休憩所でサンドイッチを食べずに、松茸を死ぬほど食うんだ！」
と豪語していた成沢大輔くんが、あっさりドライブインのコロッケを買って食べていた。





　その脇で、土居ちゃんが栗まんじゅうを買って、半分に割って、柴尾英令くんに手渡
していた。
　恐るべし、フトッターボーイズ。

　午後６時。今年もやって来ました。
　三田（さんだ）藤の坊山荘！
　毎年、この時間にここに来るので、いまだにこの山荘の全貌がわからないまま。
　今年は、松茸の出来が悪くて、大会直前に今年は中止の声も出ていたんだけど、来て
みれば、例年よりもはるかに大きい松茸！
　みんな興奮して、大きな笠の松茸を持って、記念撮影のラッシュ！
「こ、こんなに大きいんか！？」と、初出場の堀井雄二くんが驚く。

 
 



　あとは笑いっぱなしで、松茸に舌鼓。
「うめー！　うめーーー！　たまらーーーん！」

 
 



「松茸だけで、お腹いっぱいになると思わんかったよ！」と、堀井くん。
「おっちゃん（堀井くん）！　まだデザートにステーキが出るんだよ！」
「ステーキ！？」
「三田牛のステーキが出てくるんだよ！」
「お腹いっぱいなのに、ステーキなんか食えんよ！」
「ところが、食べられちゃうんだよー！」
「そんなバカな！？」
　しかし、ステーキを食べて、松茸ご飯を食べている堀井くんの姿があった。
　しかも、松茸ご飯をお代わりしていた。
「わし、基本的にご飯が好きなんだよー！」
「あっはっはっは！　堀井くんが、まんまとはまっている！」

 
 
 



　午後８時３０分。あっという間に、すべてを食べ終わった。
　あとは「苦しい！　苦しい！」、「身体が重い！」の大合唱！

　午後９時。いつもの宝塚の「サンマルク」で、コーヒー。
　しかし、土居ちゃん、柴尾英令くん、成沢大輔くんのフトッターボーイズは、しっか
りケーキを食べていた。
　密かに、堀井くんも食べていたが…。

　再び、名神高速道路。
　いつしかみなさん、うとうと…。

　年に一度、子どもの気持ちに帰る「大人の修学旅行」も、もうすぐおしまい。
　しかし、２０歳の頃、ずっと毎日のようにいっしょにすごした堀井くんと、こうして
５０歳を越えて再び（堀井くんはまだ４９歳）遊べるとは思わなかったね。
　こんなバカげたことをいっしょにやってくれる人がこんなにいるなんて、恵まれるよ
ね、どう差し引いても、私の人生は。

　午後１１時。京都着。
　ヤサカタクシーの宮本さんが、それぞれのホテル、家で、降ろしてくれる。
「こうやってまったく歩かないと、よけい太っちゃうなあ！」と口々に。
「おつかれさまー！　また明日！」
　そうなのだ。この別名「鯨飲馬食ツアー」は、明日も続いたりする…。