１０月３１日（金）

　午前１１時。嫁と、高円寺の整体さんへ。
　ここ３ヶ月くらい整体のお兄ちゃんに、治療してもらったおかげで、ほとんど五十肩
は治ってしまった。
　あいかわらず、名医だ。
　名医を感じさせない風貌だけど…。

　午後１２時３０分。高円寺の「代一元（だいいちげん）」へ。
　このお店で食べるのは、タンメン。
　きょうは目の前でご主人が、チャーシューを薄く、薄く切っていたので、つい牽制球
に刺されるかのように、注文してしまう。タンメンは野菜だらけなので、この食べ方は
さらにタンメンをおいしくさせた。

　午後１時。高円寺駅から、中央線で、東京駅へ。

　午後２時。築地のハドソンへ。
　読売広告の岩崎誠が、ノーアウトで、三塁走者なのに、次打者の打球が外野に飛んだ
のに走らなかったような凡ミスを犯す！
「す、すみません！　本当にすいません！」

　桃太郎チームの場合、すべての仕事のスケジュールは掲示板を通して行う。
　たとえば雑誌の取材が入ると、私や、土居ちゃん、柴尾英令くんがいっせいに、空い
ている日を書き込む。
　その日程を、ハドソンが雑誌に伝えて、日程を決める。
　いちいちひとりずつに電話して、日程を聞いて、じゃあ、ほかの人の都合を聞いてか
ら、もう一度電話しますといった手間が見事に省かれるようになった。

　で、きょうの会議も、午後３時と決まっていた。
　宣伝用のイラストを描いている土居ちゃんの欠席もわかっている。
　ところが、岩崎誠はきょう、ハドソンで、こっちの仕事と、ほかの仕事と２本仕事を
抱えていた。
　そのもうひとつの仕事のほうが、都合で遅れることになったので、「ハドソンの希望
により、１５時からハドソンにて打ち合わせに変更しました」と書いてしまったのだ。
　その書き込みを読んだ柴尾英令くんは、「きわどい！　なんと１５時に変更ですか。
ちょうど出かけるところでした。あぶない。あぶない」と書き込んだのだ。
　そりゃ、そうだ。
　ハッと気づいた岩崎誠は、「誤解を生む書き方をしてしまいました。リリース会議が
時間変更になったのではなく、ポジチェックがハドソン１５時になったのです。すでに
時間切れ？」とあわてて書いたが、時すでに遅し。
　柴尾英令くんは、２時過ぎに銀座に着いて時間潰しをしていたそうだ。

　けっきょく、午後２時からの会議は、柴尾英令くん抜きでスタートすることになった。
　メンバーは、読売広告の岩崎誠、小池玲子さん。編集プロダクション・プロスペック
社長の江口貴博（えぐち・たかひろ）くん。
　ハドソン宣伝部の梶野竜太郎くん、藤原伸介くん。
　私、嫁。

　きょうの会議は、マスコミ用の「桃太郎新聞」を月刊ペースで創刊させる話。
　まだまだマスコミの人のなかで、『桃太郎電鉄』のことを知らない人も多いと思うの
で、もっと、もっと、『桃太郎電鉄』のことをくわしく知ってもらおうという広報新聞。
　芸能界の「桃鉄好き」の人たちなんかは、この新聞でマスコミのみなさんに知っても
らおうと思っている。
　ほかにも、この間の妙泉寺の「貧乏神が去る像」除幕式のようなイベントの告知など
もここで伝えて行くつもり。
　その新聞の編集を、ずっと『桃太郎電鉄』の取り扱い説明書や攻略本を作って来てく
れた江口貴博くんに頼んだわけだ。
　
　午後３時。予定通り？柴尾英令くんが到着！
「いやいやいや！　岩崎さんに、はめられた〜〜〜！」
「柴尾英令さん、ごめんなさーーーい！」
　最近、何だか岩崎誠は、柴尾英令くんに謝ってばかり！

　引き続き、「桃太郎新聞」の企画会議。
　この新聞は、残念ながら業界の人向けなので、みんなは読むことができません。
　午後３時４５分。まだ編集途中の『桃の陣！西日本オニ退治道中記』のビデオテープ
をみんなで見る。
　わずか１５分の番組とは思えない密度で、テンポもいい！
　編集の仕方が実に上手い。
　ムダがまったくないのに、遊びもちゃんと入っている。

 



　第１回目は、私も見に行った四国金毘羅さんの階段での収録だ。
　バッファロー吾郎のふたりがへとへとになっているのが笑える。
　小倉優子ちゃんも、ロケ現場ではふつうの女の子のように思えるんだけど、こうして
画面に映ると、とたんにビカビカ輝き出すのは、やはり選ばれた人なのだろうなあ！
　陣内智則くんは、全国区になれる顔だね。
　清潔感がいい。

　それと、あんなに『桃太郎電鉄』の画面がたくさん出ちゃっていいんだろうか？
　作者としては、うれしいんだけど。
『桃太郎電鉄１２〜西日本編もありまっせー！』の画面だらけ。
　これはたまらんですよ〜！
　本当に、近畿地方以外の人が、この番組を見る方法ってないのかなあ？
　ゲストは豪華だし、この番組、もったいない。

　午後４時。『Ｖジャンプ』の「桃太郎電鉄公式ガイドブック（仮）」の取材をハドソ
ンのほかの会議室で受ける。
『Ｖジャンプ』？
　あっはっはー！
　やっぱり取材記者は、井沢どんすけか〜〜〜ッ！

 



　しかも『桃太郎電鉄』の攻略法？
「井沢どんすけ！　おまえの文章の上手さは認めるが、『桃鉄』が下手な井沢どんすけ
が攻略法を書くのは、許せーーーん！」
「えへえへえへっ。だから、きょうはさくまサンに、絶対勝てる必勝法をしゃべっても
らって、それを袋とじで載せるんですよ！」
「あっ。な〜るほど！」
「えへえへえへっ。じゃあ、取材を始めます！」
「はいよ！」
「えへえへえへっ。では、どうやったら、『桃太郎電鉄』で勝てるようになれるかを教
えてください！」
「おいおい！　きっかけがまったくないじゃないかあ！」
「えへえへえへっ。いつも勝てないボクのような人間でも勝てるような方法って、こと
なんですけど、何から質問していいのかわからないので…」
「そりゃ、そうだな！　いいよ。だったらこっちで全部しゃべる！」

　どうも井沢どんすけは、本格的な必勝法を期待しているようなので、柴尾英令くんを
呼んで、いっしょにしゃべってもらう。
「まず、『桃太郎電鉄』で勝つには、相手がどんなカードを持っているかを、つねに暗
記していないといけない！」
「ええ〜〜〜っ！　４人で対決していたら、最大５２枚もカード暗記しないといけない
じゃないですかあ！」
「井沢どんすけ、ちょっと待て！　５２枚のなかには、自分のカード１３枚も入ってい
るぞ！」
「えへえへえへっ。ボクは自分が持っているカードも覚えられないもんで…」
「それじゃ、勝つわけないよ！」
「えへえへえへっ！　でも、カードを覚えたとして…、その次は？」
「相手のカードを覚えておいて、そのカードを誰が、何ヵ月後につかうかを予測する！」
「ええ〜〜〜っ！　そんな難しいこと！」
「井沢どんすけ！　井沢どんすけは銀河鉄道カードを手に入れたら、すぐつかうだろ？」
「もちろんですよ！」
「私の脇にいる柴尾英令という男は、銀河鉄道カードを手に入れても、何ヶ月もつかわ
ないんだぞ！」
「ええ〜〜〜っ！　何でですか、もったいない！」
「私が目的地に向かったら、つかいますよ！と、銀河鉄道カードをつかわないことで、
私を攻撃してるんだよ！　私が柴尾英令くんは銀河鉄道カードを手に入れたことを知っ
ていることを前提にね！」
「ひえええええっ！」
「で、ほかのたとえばテレポートカードを手に入れてなお、ずっとつかわずに私の動き
を封じようとする！」
「ひ〜〜〜っ！　頭痛くなってきた！」

 



　たぶんそうだと思うので、もっと初心者が勝てる方法に話題を切り替えることにし
た。このところ、陣内智則くん、岩崎ひろみチャン！　少年隊の錦織一清くん、テツ
andトモと、『桃太郎電鉄』にくわしい人とばかり話をしていたので、いきなり高等技
術の話をする癖がついてしまっている。

「東京駅からスタートして、名古屋に向かう場合は、長野のほうから行くのが近いけど、
必ず東海道の青マスだらけのほうから行って、お金を貯める。お金は必ず貯まるので、
大垣の巻き柿屋、名古屋のみそかつ屋を買う！　臨時収入が出やすいからね！」

　こういう初心者向けの必勝法から、上級者向けの、うんちカードと最寄りの駅でカー
ドをつかって、沖縄に一発で入る方法などを伝授する。
「これで井沢どんすけが、上手くなっちゃったら、貴重なテスト・プレイヤーがひとり
いなくなっちゃうから、この必勝法は言いたくなかったなあ！」
「えへえへえへっ。大丈夫ですよ！　テープに録ったから、文章は書けるけど、暗記で
きません。暗記できても、プレイ中は興奮して忘れちゃいます！」
　井沢どんすけという男、本当に頭がいいのか、悪いのか、わからない男だ。

　私と柴尾英令くんのふたりで、カード別に、みんなが知らないような使い方を機関銃
のようにしゃべりまくったから、本当に役に立つ必勝法の本になるはず。
　たとえば、増資カードの正しい使い方。レッツ５カードは、進行系としてつかわない。
最寄りの駅でカードで目的地に入る方法。猪突猛進カードの使い方などなど…。
　魅力的な話題が、満載になるはずだ！
　何たって気がつけば、３時間ぶっ通しで、必勝法をしゃべっていた。

　午後７時。築地の「樹太老（きたろう）」で食事。
　メンバーは、私、嫁、岩崎誠、柴尾英令くん、井沢どんすけ。

　午後９時。帰宅。
　さて、きょうから３連休。
　私はおとなしく身体を休めることにする。
　北海道取材からこっち、ついついあっちに行ったり、こっちに行ったり、気づけば東
京の家に３分の１しかいない状態。
　このところ、血圧がどんどん上昇し始めているのだ。

　仕事も順調で、ストレスも少ないから、むしろ血圧は下がるだろうと思っていたんだ
けど、会う人全員に「あんなにあっちこっち行って、疲れませんか？」、「毎日、芸能
人に会って、大変でしょう！」「さくまサンは、いつどこにいるのかまったくわかりま
せんよ！」といわれる。
　人のいうことは聞くにかぎる。
　しばらく休むことにした。

　明日からの日記は、地味になる…はず。