10月12日(日)

 午前8時。昨夜激しく窓を叩いた雨も、明け方にはすっかり上がってしまった。 
 午前10時。鎌倉は、初夏のような陽気。
 Tシャツ1枚でも、平気なくらいだ。
 家の近くの海は、ウインド・サーフィンの花が咲いている。

 午前11時。江ノ電で、鎌倉駅に出る。

 駅前の「不二家」で、洋食ダブルスのハンバーグ&チキンライスカレー。

 しばらくして、嫁が東京から到着。  午前11時30分。きょうはこの「不二家」で、どっこいズ(井沢どんすけ、コイズ ミリュウジ、石川キンテツ)と待ち合わせ。  どっこいズのほかに、「小池一夫塾」の塾生のうち、島津徹三くん、前田圭士くん、 大栗久幸くんの3人もここで待ち合わせ。  どっこいズのテスト・プレイを見学する課外授業だ。    午後1時。鎌倉長谷の家で、どっこいズのテスト・プレイ開始!  きょうのテスト・プレイは、『桃太郎電鉄12〜西日本編もありまっせー!』の岩戸 景気が出るまでという変則的な競技方法。 『桃太郎電鉄U(仮)』でも、岩戸景気のイベントが入るので、どっこいズの3人が岩 戸景気に対して、どういう反応を示すか知りたいのだ。  岩戸景気というのは、青マスでもらえる金額が、10倍。目的地到着金も、なんと1 0倍になってしまう凄まじいイベントなのだ。  しかも、岩戸景気はゲーム開始30年目以降に発生するレア・イベント。  いつものどっこいズののろのろテスト・プレイだと、30年がやっとなので、石川キ ンテツ以外、岩戸景気を見ていないのだ。  その原因は、コイズミリュウジのプレイの遅さにある。  今回、コイズミリュウジが、「早くプレイできるように練習したんでやらせてくださ い!」というので、開催の運びとなった。  本当は、1年目から始めて、30年目以降を迎えたいんだけど、「桃鉄の実力どっこ いどっこい、!」とまるでアホの集団のように、この日記では描いているけど、彼らは 売れっ子なのだ。  たまにはちゃんと紹介してあげないと。  コイズミリュウジと石川キンテツは、『週刊少年サンデー』で、読者ページ『青春学 園』を連載して、3年目になる。  井沢どんすけは、『週刊少年ジャンプ』で、読者ページ『じゃんぶる』を連載して、 2年半になる。  また井沢どんすけは、井沢ひろしという演歌歌手のような原作者名義で、『ファイ ヤーエンブレム外伝』を『月刊少年ジャンプ』で連載し、ついこの前まで『Vジャン プ』の看板漫画『デジモン・アドベンチャー』の原作も書いていた。  こんな忙しい連中を、テスト・プレイにつかうのだから、3日も、4日も拘束できな い。  というわけで、きょうは特別に、デバッグ・モードで、25年目からスタートさせ た。このほうが、岩戸景気が出る確率が近くなる。  25年目から始めたのは、30年目でいきなり岩戸景気が出る場合もあるので、その 間ゲームの雰囲気になじんでもらうため。  それにしても、男ばかりの部屋はむさ苦しい。  3人が、コントローラを握り、3人が見学するというのも妙な景色だ。

 午後3時30分。ムサシノ広告の伊東正義、『ポポロクロイス物語』の原作者・田森 庸介さんが相次いで、到着。

「すごいね! さくまの昔の家みたいに、若者がゴロゴロしてる!」と、驚かれる。そ ういえば10年前、20年前の我が家には、つねに5〜6人が住んでいた。  午後4時。井沢どんすけに「岩戸景気が出たら、私の携帯に電話してくれ!」といっ て、私、嫁、伊東正義、田森庸介さんの4人は、近所の喫茶店「みゅう」へ。  午後5時。伊東正義は東京へ。  家に戻ると、いつものように井沢どんすけ、コイズミリュウジ、石川キンテツの3人 が激しく罵り合っている。 「石川キンテツ! おまえおかしいよ!」 「やっやっやっや…!」 「キングボンビーは1位のコイズミリュウジになすりつけろよ! 1位に!」 「やっやっやっや…!」 「2位と3位が争うのはおかしいよ!」 「やっやっやっや…!」 「ゲームが、つまらなくなるだろ!」  いつもこの会話である。  コイズミリュウジのプレイののろさが最近問題になっていたが、コントローラを床に 置いてののしり合う、井沢どんすけと石川キンテツも、大いに原因があることに、きょ う気がついた。 「いいから、早く、岩戸景気を見せてくれよ!」  午後6時。私、嫁、田森庸介さん、井沢どんすけ、コイズミリュウジ、石川キンテツ、 小池一夫塾の塾生たち総勢9人で、鎌倉の「仲の坂」へ。  田森庸介さんは、この「仲の坂」のさんまの刺身定食が大好き。  このさんまのお刺身のために、鎌倉移住を考えているほどだ。

 午後7時。田森庸介さん、小池一夫塾の塾生たち3人は東京に戻り、私、嫁、どっこ いズ(井沢どんすけ、すとろう小泉、石川キンテツ)は、鎌倉長谷の家に戻り、テスト ・プレイの続き。  今回は、岩戸景気がメインなので、こまかいデータは取っていない。  ゲーム観戦記は、書くと非常に疲れるので、お休み。  この後、地方に行くので、どっこいズのせいで、これ以上疲労したくない。  見ているだけで腹をかかえて笑える彼らの珍プレイは、どっぷり疲れる。  その3人の間抜けな会話をダイジェストで…。 「井沢どんすけ! ハワイは、空路だぞ!」 「えっ? は? ひ〜〜〜ッ! 航路じゃなかったあ! 早く言ってくださいよ〜〜!」 「井沢どんすけ! おまえ何10年『桃太郎電鉄』やっているんだよ! 昔からずっと ハワイは空路!」 「えへえへえへっ!」 「井沢どんすけサンがバキュームカードをつかってくれれば、ばちあたりカードが消え て、ボクが目的地に入れて、キングボンビーがトップにいるコイズミさんに行くんすか ら、つかってくださいよ!」 「えへえへえへっ!」 「頼みますよ、井沢どんすけサン!」 「えへえへえへっ!」 「石川キンテツ! もう少し実現の可能性のあるお願いをするように!」 「やっやっやっや…!」 「えへえへえへっ!」 「修善寺(しゅぜんじ)って、目的地になってましたっけ?」 「なってるよ。おまえらなかなか目的地に入らないから、8年ごとにチェンジする次の 目的地セットに変わっちゃって、見ていない目的地が多いんだよ! ふつう1年で、 2〜3回目的地が変わる人たちも多いのに、おまえたちは2年で3回がやっとだ!  いまももう2年以上誰も目的地に入っていない!」   「あっ、サンタさんだ! ネズミーシーをくれるとかってないんすかねえ!」と、持ち 金−180億円の石川キンテツ。 「あれ? 石川キンテツ! ☆印カード売り場に停まって、カードをたくさん売ってい たけど、何でカードを買わなかったの?」 「はっ!」 「理由は?」 「わすれたんすよ〜〜〜〜〜〜〜〜〜! くそ〜〜〜ッ!」 「コイズミリュウジ! 少しはしゃべれよ!」 「う…、も…、も…、も…、オレはふたつのことを同時にできないんで、しゃべれな いっすよ!」 「さくまサン! ダイヤモンドカードの値段が去年より下がってますよ! これってバ グなんじゃないっすか!」 「不景気だよ!」 「あっ、不景気だったんだ!」 「不景気だと、値段下がるんだあ!」 「不景気になってたこと、すっかり忘れてたよ!」 「ああ、オレも忘れてたなあ!」 「忘れますよね〜!」 「おまえたちのほうが、バグだよ!」  午後11時。40年目を過ぎても、岩戸景気が発生しない。  ついに私が痺れを切らして、45年目にデバッグ・モードで、岩戸景気が出るように セット。極力、自然に近い形で出したかったんだけど、井沢どんすけと石川キンテツの 罵り合いによる遅延行為は、年々ひどくなるばかりなので、私のほうが待てない。  寝させてほしい。 「うおおおおおっ! うおおおおおおっ! すっげー! 4月なのに26億円の文字が スロットに見えるぞ!」 「す、す、すごいっすよ! 1か月分の青マスで、キングデビルカードが耐えられる!」 「目的地の到着金が、570億円〜〜〜!!!???」 「570億円は、やめてほしいっすよ!」と、目的地からはるかに遠い位置にいるコイ ズミリュウジ。  井沢どんすけ、銀河鉄道へ!  青マスだらけの銀河鉄道で、徹底的にお金を稼ごうという作戦だ!  しかし、石川キンテツがとびちりカードをつかおうとする。 「やめろよ! 石川キンテツ!」 「やっやっやっや…! これはテスト・プレイなんすから、何でもやってみないと!」 「もうこのバージョンは、99.9%完成の承認直前版なんだから、テスト・プレイは もういらないんだよ!」 「やっやっやっや…! 岩戸景気の場合は、どうなるかわからないすから!」 「岩戸景気でも、とびちりカードはおなじだろ! ほんとに、やめろよ!」 「やっやっやっや…! ちょっと見ていたいじゃないすか!」 ・石川キンテツ 25歳! ・井沢どんすけ 35歳!  けっきょく、石川キンテツが放ったとびちりカードは、井沢どんすけのふたつ先のマ スに、うんちを落とした!  サイコロ振って、1が出ないかぎり、岩戸景気の青マスの影響を受けることができな い。 「やっやっやっや…! す…、す…、すみません! 井沢どんすけサン!」 「いまさら、遅いよ!」 「やっやっやっや…! おわびに、サミットカードつかいますから!」 「つかう、つかうと、いいながら全然つかわないじゃないか!」 「やっやっやっや…! ボクが目的地に入ったら、必ずつかいますから!」 「目的地に入ったら、オレのところに貧乏神が来ちゃうだろ!」  このままずっと見ていても、不毛なので、私は寝る。

 

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