10月8日(水)

 午前10時30分。嫁と、高円寺の整体さんへ。
 最初に私が治療してもらって、嫁が治療してもらっている間、私はグースカ、グース
カ、いびきをかきながら熟睡。
 自分がいびきをかいているのが、わかるような眠り方だ。
 疲れてるなあ。

 午後12時30分。高円寺の「代一元(だいいちげん)」で、タンメン。
 1週間分の野菜を補給したような野菜たっぷりなタンメンだ。

 午後2時。築地のハドソンへ。  きょうは『桃太郎電鉄12〜西日本編もありまっせー!』の反省会と、次回作以降の ラインナップ会議。  メンバーは、土居ちゃん(土居孝幸)、柴尾英令くん。  札幌開発チームの川田忠之くん、小坂晃弘くん。  ハドソン宣伝部の梶野竜太郎くん、藤原伸介くん。  会議の席上、来年『桃太郎電鉄U(仮)』と、『桃太郎電鉄14(仮)』の2本制作 が、ほぼ決定する。  正式決定は、大里専務が中国から帰ってから。  1本だけでも大変なのに、2本作ることがいかに大変で、ホウレンソウ(報告、連絡、 相談)をちょっとでも怠ると、総崩れになることを再確認する。  この2年間で、かなりホウレンソウ(報告、連絡、相談)は改善されたものの、まだ まだ徹底度が低いので、全員で泥まみれになって、ゴロを捕りに行く高校野球のような ひたむきさが、もう一度必要であることを。猛省しべきという結論に。  さらに2006年12月までの、制作予定を大まかに決める。 「そんなに先まで決めるの?」と思うかもしれないけれど、シリーズ作品というのは、 3年後を見据えて、引き潮と満ち潮を作らないと、世の中の流れに取り残されたり、先 に進みすぎてしまう。  3年後までを決めた上で、微調整して行く。  ちなみに『ジャンプ放送局』の連載は、連載前に、10年続けるつもりで、あらかじ め予定表を作っておいて、14年続いた。  これがいきあたりばったりだったら、さっさと1〜2年で終わってしまったことだろ う。 「世の中、何が起きるかわからないんだから、いま決めたことが、3年後、5年後、通 用するとはかぎりないじゃないか!」という意見も間違いではないが、レールを決めて おいた上で、軌道修正していくのと、そのときになって考えるのでは、あまりに結果に 明暗がかわりすぎる。 「…というようなことになると、このラインをこなせるかどうかは、土居さん次第に なってしまうんですが、よろしいのでしょうか?」と、川田忠之くんが、おそるおそる 発言する。 「むむっ。オレ次第か! ううっ!」と、土居ちゃん。 『桃太郎電鉄12〜西日本編もありまっせー!』で、400枚の絵を描いた土居ちゃん の負担が、とにかくいちばんきついのだ。  私のほうは、『桃太郎電鉄11』から、柴尾英令くんが加わっているので、私が苦手な セーブまわりとか、イベントの演出、オープニング・アニメなど、ずいぶん楽になって いる。  作曲のほうも、贅沢に3人の作曲家さんをつかっているので、昔に比べてかなり楽に なっている。  ただひとり、土居ちゃんだけがサポートメンバーを補充できないのだ。  土居ちゃんの絵がまた、飛騨高山の一位一刀彫り職人の手作りの桶のような絵だから、 後継者もいなければ、アシスタントすらもいない。  世間では『桃太郎電鉄』は、私さくまあきら次第のゲームだと思っているだろうけど、 それは間違いで、土居ちゃん次第なのだ。  しかも、ハイセンスなさくまあきらと、ダンディな関口和之くんが、うんち好きの土 居ちゃんにしぶしぶレベルを合わせていることは、まぎれもない事実である。わっはっ はっは! 言ったもん勝ち。  午後4時。引き続き、川田忠之くんと、小坂晃弘くんが『桃太郎電鉄U(仮)』の最 新ロムを持ってきてくれたので、グラフィックの打ち合わせ。 『桃太郎電鉄U(仮)』は野心作なので、通常の汽車自体も大きさを変えてみたり、デ ザインを変えてみたりしている。  最終的に、元に戻すかもしれないので、お客さんにとっては、発売された頃には、 「いうほど野心作ではないんじゃないの?」という結果になるかもしれないけれど、作 り手である私たちにとっては、何もかも新しい挑戦だらけのゲームになる予定だ。  午後6時30分。私、嫁、土居ちゃん(土居孝幸)、柴尾英令くん、川田忠之くん、 小坂晃弘くんの6人で、広尾の「プティ・ポワン」へ。  フランス料理というだけで、緊張しまくるであろう川田忠之くんの表情を見ようとい うとっても悪趣味な会だ。 「どう?」と聞く間もなく、すでにお店に一歩足を踏み入れた段階で、川田忠之くんは 固まっていた。  その横で、すでに小坂晃弘くんも、石化。 『ファイナルファンタジー』の金の針を打たないとダメな状態。

 誰だって、生まれて初めて、フランス料理屋さんに行ったら、固まるよ。  でも一流料理屋さんから学ぶことは、果てしなく多い。  一流の料理屋さんというと、お金をかけたイメージが強い。  ところが、一流になればなるほど、お金ではない部分に必死に力を入れていることが 多い。  初めて来た人が、たとえば貝類が苦手だったとする。  すると、みんなとおなじ料理でも、貝とは違う食材に変えて、ちゃんと出してくれる のだ。貝類がダメだからといって、みんなとまったく違う料理になったり、料理が出な くなるということがないのだ。  レールが決まっている上での、軌道修正が上手いのだ。  しかも、この貝類が苦手なことを、その人が次に来るまでに、3ヶ月以内だったら、 間違いなく覚えているのが、一流料理店なのだ。  私もそんなの嘘だろうと思っていたけど、京都「M」を始め、「櫻川」などでも、 ずっと覚えている。私のだけではない、嫁のも、娘のもだ。  こういうサービスは、お金でできるものではない。  ひたすらお店の人たちの努力からしか生まれない。

 で、味のほうはというと、これから冬に向かうというのに、梅と羊だらけ! 「梅〜〜〜! 梅〜〜〜! 梅〜〜〜! 梅〜〜〜! 梅〜〜〜!」 「ぅメエ〜〜〜! ぅメエ〜〜〜! ぅメエ〜〜〜! ぅメエ〜〜〜! 「梅〜〜〜! 梅〜〜〜! 梅〜〜〜! 梅〜〜〜! 梅〜〜〜!」 「ぅメエ〜〜〜! ぅメエ〜〜〜! ぅメエ〜〜〜! ぅメエ〜〜〜! 「梅〜〜〜! 梅〜〜〜! 梅〜〜〜! 梅〜〜〜! 梅〜〜〜!」 「ぅメエ〜〜〜! ぅメエ〜〜〜! ぅメエ〜〜〜! ぅメエ〜〜〜!

 しかし、食べ過ぎた。  みんなも食べ過ぎた。  でも、とくに私が食べ過ぎた。  腹痛をおこすまで食べるなっ!  苦しくなって、トイレに駆け込み、顔面蒼白になってしまった。  とにかく、脂汗がたらたら、立っていられなくなってしまったのだ。  そこまで食うな!  でも食べちゃうんだよ!  川田忠之くんが、いちばん驚いたのは、コンソメしゃぶしゃぶのスープ。  常連さんであろうと、川田忠之くんのように始めて来た人でも、おなじ料理で感動で きるところが、また一流料理店の証拠だ。  誰もが絶対打てないウイニング・ショット、野茂のフォークボール、伝家の宝刀と呼 ばれる料理が、一品あるということだ。  そういえば、みなさん! 「プティ・ポワン」の値段がいつのまにか安くなっていますぞ!  そりゃあ、フランス料理だから、定食屋の料理のように安くなるわけではないけど、 私の日記によく登場する「樋口」とおなじ料金ぐらいになって来た。  おいしいなら、比較的値段は気にしないというなら、じゅうぶん来れる金額になった と思う。チャンスですぞ!  誕生日とか、結婚10周年とか、理屈をつけてでも、生涯に一度は来てみたほうがい いですぞ! 人生観が変わる。  きょうもソムリエの岩崎さんが、さくまにあのtatangさんが来たことを報告してくれ る。  一流は、ホウレンソウ(報告、連絡、相談)が、実にうまい。  午後10時。顔面蒼白のまま、タクシーに乗り込んで、命からがら帰宅。  おいしかったけど、苦しい。  明日は、『桃太郎電鉄U(仮)』の音楽会議なので、今夜は参考になるCD音源をど れにするか選ぶ作業。  ついつい、いろんなCDを聞きまくってしまう。  これじゃ、掃除を始めたのに、漫画を読みふけってしまうパターンとおなじではない か!

 

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