9月27日(土)

 一夜明けても、腹の虫が収まらないなあ。
 腹の虫だけに、原監督の辞任事件なんだけどね。
 渡辺恒雄オーナーの「読売グループ内の人事異動…」という言い方。
 イヤな言い方だ。
 ちびっこプロ野球ファンには、まったく通じない言葉だ。
「原くんには球団の特別顧問になってもらって…」っていうのも、レコード大賞の特別
賞みたいにいいかげんだ。

 巨人を除く11球団が、大リーグを1球団買って、大リーグ機構に入っちゃうってい
うのがいいと思わない? マリナーズのオーナーは、任天堂なんだから、巨人を残して、
みんなでマリナーズ入りというのもいい。
 日本人が80%の球団がワールド・チャンピオンで優勝するなんて、夢があると思わ
ない? アメリカのみなさんには迷惑かな?

 で、対戦相手いなくなった巨人は、しょぼしょぼと実業団野球のみなさんたちと親善
試合をやっていてもらうの。
 イヤなら巨人も大リーグに入ればいい。
 そうなれば日本の民法放送で、大リーグが見れてしまうのだから、本当にいいと思わ
ない?

 それにしても、松井選手の大リーグ入りが、ここまで事件を発展させちゃうんだから、
松井選手の存在は偉大だったんだよなあ!

 午前8時。『桃太郎電鉄14(仮)』の仕様書作り。
 新作イベントの仕様書作りに、頭が痛い。

 午前11時30分。きょうはけっこう暑いね。
 急に寒くなったと思ったら、また汗ばむような陽気に。
 アロハ・シャツをほとんど仕舞っちゃったよ。
 銀座の「ギャラリーOGATA」へ。
 有田焼きの陶芸工房・古琳庵(こりんあん)さんの「陶板展」が、きょう最終日。な
んとか滑り込みセーフだ。

 実は10年ほど前、ハドソンの工藤会長に連れられて、九州の有田へ行って、古琳庵 さんを紹介していただいた。  古琳庵の館林貞夫さんは、あの有田焼きの名門・柿右衛門家の作品も作られる方で、 日本の首相がアメリカに行くときに、お土産として持って行かれるような、すごい人で ある。  最近でも、椎名林檎さんのCDジャケットにつかわれている。  もともと椎名林檎さんは福岡の人で、昔から古琳庵さんのごひいき客だったそうだ。 人の繋がりというのは、不思議なものだね。  いまでも、私の鎌倉の家には、1枚の大きな絵皿に、私、土居ちゃん、カズ坊(関口 和之)が有田九州で寄せ書きして、、ハドソンの工藤会長がハドソンの蜂のマークを描 き、そのまわりに館林貞夫さんが模様を描いた、すごいんだか、値を下げたんだか『何 でも鑑定団』が困るようなお皿が飾ってある。  このお皿に関して、どっこいズ(井沢どんすけ、すとろう小泉、石川キンテツ)から 一度も質問されたことがないが…。  豚に真…。  とにかく、10年前。九州有田での館林貞夫さんとの出会いは、我が家が焼き物に興 味を持つきっかけになった。  あれ? 病気してから、有田に行っていないはずだから、10年以上前の話なのかも。 私は来年で、脳内出血10周年記念だ。  どうも最近、日記を始める以前のことの記憶が、とんとあやふやだ。  以前、『ジャンプ放送局』のファンだといっていた息子さんは立派になって、妹さん といっしょに家を継いでいるそうだ。  いいねえ。家を継げる職業というのは。

 古琳庵(こりんあん)さんの器は、繊細な線の絵もさることながら、口に当たる部分 が薄くて、非常に口当たりがいい。  デザインも素晴らしいけど、器なんだから使い心地のいいものこそ、本物のような気 がする。  来年の秋も、また東京にいらっしゃるようなので、土居ちゃん、カズ坊(関口和之) を誘おう。  その前に、無性に有田に行きたくなる。  10年もすると、『桃太郎電鉄』のデータとしては古くなっていると自分に、必死に 言い訳を始めている。  午後12時。ギャラリーの近くのどこかで食事をしようと、並木通りを歩いていたら、 「岡半本店」があった。  先日、柴尾英令くんとおいしいすき焼きが食べたいというときに、私が「以前、いま のニッポン放送の社長になった亀淵さんに連れて行ってもらったお店がおいしかった!」 といいながら、とうとうお店の場所とお店の正式な名前が思い出されなかった「岡半本 店」だ。  目印は、ノエビアのビルの隣り。  政治家がよく集まる「金田中ビル」の7階、8階だ。  運のいいことにランチをやっているというので、入る。

 私は、うす焼きランチ 1500円。  嫁は、寿喜焼き丼 1200円。  これがもう、おいしいったらありゃしない!  うす焼きランチには、焼きそばまでついているんだけど、この焼きそばが、焼きそば ランキングを作ったら、ランク入りしそうなくらいのおいしさ。  焼きそばの下品さを微妙に残しつつ、タマネギなどの風味が抜群にいい。  うす切り肉は、松阪牛。  特製のたれにつけて食べるんだけど、このたれがいい。  安物のお肉でも、このたれにつけたら、上等肉に思えてしまうだろう。

 嫁の寿喜焼き丼と書いて、すき焼き丼もおいしいこと、おいしいこと。  ご飯にたれが染み込んでいて、んまい、んまい!  珍しく嫁が、ご飯を残さずたいらげていた。  デザートは、栗のアイスクリーム。  これにも、まいった。  まるで和菓子屋さんの栗のお菓子をそのままアイスクリームにしたようなおいしさだ。  デザートまでついて、銀座で1200円と、1500円のランチって、めちゃくちゃ 安いと思わない?  しかも一流中の一流のお肉屋さんのだよ。  開店時間も、午前11時30分からと、銀座にしては早い。  これは何度も行かねばなるまい店だ。  柴尾英令くん、この間行きかけたお店はここだよ〜〜〜!  今後、登場回数が増えるお店になること、間違いなしだ。  午後1時。帰宅。  けっきょく、来週の北海道取材旅行は、決行!  余震が何回かあったということは、しばらくおとなしくなるでしょう。  1週間の旅行なので、先に洋服をホテルに送っておく。  またヤサカタクシーの宮本さんが登場するので、荷物がたくさんでも車に乗せて移動 できるので実に楽チン。  午後2時。『桃太郎電鉄U(仮)』の音楽資料をまとめる作業。  ちゃんとひとつひとつにイベントごとに、作曲家のみなさんにイメージと意図を伝え ないといけないからね。 『桃太郎電鉄』シリーズは、毎回ほぼ100曲もあるので、大変なんだよ。  おなじ曲でも、何年かつかうと、アレンジを変えてもらうし。  午後3時。『桃太郎電鉄14(仮)』の仕様書作り。  新作のイベントが多いので、1日ひとつのイベントを書き上げるので、精一杯。  昨日作った新イベントも見直すと、仕様書に穴が多いので、ほとんど書き直し。  午後5時。嫁と、新宿2丁目へ。  いつものように「青葉」でラーメンを食べようと思ったら、売り切れ。  近くにいい店がないのと、時間がないので、「小諸そば」という、いわゆる立ち食い そば屋さんへ。  イカ天そば。

 身体を壊してから、立ち食いそばのような、低コストの油をつかった料理は食べては いけないことになっているので、立ち食いそばは、本当にひさしぶりだ。 ひさしぶり に食べると、おいしい。  臓腑に染み渡るような濃い出汁が、たまらんねえ! ゲップ!  午後5時30分。東北新社の「映像テクノアカデミア」へ。  毎月1回の「小池一夫塾」だ。  きょうはまた、ちょっと変わった授業をやる。  そのために、塾生に1時間早く来てもらった。  私の作品のなかで、最も「もったいない」といわれる作品『怪物パラ☆ダイス』をみ んなでプレイして、どこがダメだったから、ビッグ・ヒットにまで至らなかったかとい う授業。  コイズミリュウジに「さくまサンの日記で、『怪物パラ☆ダイス』という題名が出た ことって、まったくないですよね」と言われたが、その通りだ。  まだインターネットを始める前。  脳内出血で倒れた1995年の翌年あたりに作った作品だから、7〜8年前の作品だ。  日記で触れたことはなくても、実は執念深い私は、この7年間ずっと、この『怪物パ ラ☆ダイス』のリメイクを考え続けているのだ。  いまからでもこのゲームを製品化してもいいというメーカーは、ぜひ申し出てほしい と思っている。  そんなわけで、なんと!  きょうは塾生7人で、プレイする。 『怪物パラ☆ダイス』は、最大8人までプレイできるボードゲームなのだ。 「当時の評判はどうだったんですか?」 「過去、私のゲームのなかでは、『ファミ通』のレビューで、いちばん点数がよかった んだ。はっはっは。でも残念ながら『ファミ通』で、点が高いと、売れないんだなあ!」 「当時、どのくらい売れたんですか?」 「大手メーカーではなくて、宣伝費ゼロにもかかわらず、5万枚売れた!」 「すごいじゃないですか!」 「すごいよ。だからリメイクしたいんだ!」 「じゃあ、みんなでプレイしてみるから、どこがダメなのかを、どんどん発言するよう に!」  本当にひどい作品というのは、実は誰も文句をいえない場合が多い。  文句がたくさん出る作品というのは、実は惜しい作品なのだ。

 案の定、文句が出る、出る。 「先生、後半の体力回復の数値、多すぎませんか?」 「実は、このゲーム、テスト・プレイの期間が、2週間もなかったんだ! 敵キャラが ぜんぶ入ったのは、締め切り3日前だったから、チューニングはほぼしていないに近い!」 「何でそんなことになっちゃったんですか?」 「おなじみ、ディレクターの嘘八百だよ!」  塾生のなかには、ゲーム製作経験者が何人かいるので「そうそう! 本当によく嘘を つくんだよ!」「嘘をついている意識がなくて、嘘をつくからなあ!」と同意の声が上 がる。  ゲームを作ったことのない人にとっては、信じられない会話だろうが、ゲーム業界の 病巣の大半は、このディレクターと、プログラマーの嘘つきに尽きる。  本当に、「趣味なの?」と聞きたくなるくらい、嘘をつく。 『桃太郎電鉄X(ばってん)〜九州編もあるばい〜』のときに、このディレクターの嘘 に私がもがき苦しんだことは、この日記でも何回も書いたと思う。  その後、柴尾英令くんの提案により、掲示板システムを導入して、「言った」「言わ ない」の撲滅! 嘘をつけない環境作りをしたら、2年連続で、見違えるくらいちゃん と仕事ができた。  おまけに「えっ? もうこんな時期にテスト・プレイしてるんですか?」と、ゲーム 業界人を呆れかさせれたスピードだ。  午後8時30分。3時間にわたるロング授業、終了。  いつもの2時間授業では、ゲームをやって終わりになってしまうので、午後5時30 分からスタートされたのは、正解だった。  今後、この『怪物パラ☆ダイス』を塾生とリメイクして、1本のゲームとして発売で きるまでに仕上げたいと思う。 『桃太郎電鉄』は、15年間にわたって、改良に改良を重ねてきたゲームだ。  老舗のうなぎ屋さんの何10年間取り替えたことのない甕(かめ)のたれがゲームの よさになっているので、教材には向いていない。 『怪物パラ☆ダイス』は、本当に惜しい作品なので、あと2作作れれば、10数万本単 位のヒット作になるはずである。  ぜひとも、メーカーのみなさん、声をかけてください。  午後9時。帰宅。 『桃太郎電鉄14(仮)』の仕様書作り。

 

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