9月25日(木) 午前4時。早く目が覚めてしまったので、DVDで勝新太郎さんのほうの『座頭市物 語』を見る。 ビートたけしサンの『座頭市』も早く見たいんだけど、最近、映画館に入ると、閉所 恐怖症になる奇癖が出るようになってしまっているので、見に行けない。 困ったもんだ。 『パイレーツ・オブ・カリビアン』とか、ショーン・コネリーの『リーグ・オブ・レジ ェンド』とか、『マトリックス・リボルーション』とか、見たい映画が目白押しなのに、 困った、困った。 勝新太郎さんのほうの『座頭市物語』は、何だかファミコン時代の名作ゲームみたい だ。CGもなくて、白黒の時代だからね。 古きよき時代の映画業界の勢いのようなものを感じる。 DVDボックスを買ったので、しばらく『座頭市』漬けになりそう。 午前8時。『桃太郎電鉄16(仮)』のMAP作りを昨日から始めたばかりに、やめ られない、とまらない。 午後12時。ハッと気づけば、4時間ぶっ通しで、MAP作りをしていた。 国土地理院とか、ゼンリンに勤めればよかったのかな?と思う。 あわてて、嫁との待ち合わせ場所である表参道に向かって、合流ののち、「DONQ」 で、クラブハウスサンドに、コーヒー。食事中、読者から四谷のパン屋さん「ボンドール」が明日閉店するという通報メール をもらって、うろたえる。 そりゃ、困った。 東京でいちばんおいしいくるみパンが食べられるお店がなくなるのは、つらい。 最近、大好きだった「表参道蕎麦工房」も、筒井康隆さんのエッセイで、閉店を知っ たし、困っちゃうよ。『おいしい桃鉄』(小学館)に書いたお店がどんどん閉店してい く。 午後1時30分。帰宅。 本日、お風呂の工事、最後の仕上げ。 午後2時。蔵人総合研究所の赤根豊くんと、遠山孝司くんが来る。 毎度おなじみ難しい経営のお話。 おかげさまで、昨年の『桃太郎電鉄11〜ブラックボンビー出現の巻!』がけっこう 売れたので、わが社の経営は、順調らしい。 「決算が近いので、けっこう経費をつかえますよ」といわれても、実は私はあまり欲し いものがない。 食い道楽ではあるが、1000万円も、3000万円も、1億円も、お相撲さんでも 食べきれないと思う。 食費というのは、意外とお金がかからない。 これがお酒飲みなら、銀座で一晩で30万円飲んだ、100万円飲んだ、という武勇 伝が作れるんだけど、私はお酒自体が飲めない。 本が好きだけど、1ヶ月に100万円本を買うという人もいないだろう。 こんなときは、ふつう嫁さんが宝石に狂って、ダイヤモンドを買いまくって、自滅す るという芸能人のパターンがあるんだけど、嫁はもともと宝石商なので、宝石がまった く珍しくないし、すでにひと通り持っているので、まったく興味がなくなっているよう だ。 昨年、買った初代シルビアが、最大の無謀な買い物だったんだけど、まだ身体が不自 由なので、買っただけだし、続けてビンテージカーを買いまくると思ったら、シルビア 1台で、満足してしまった。 しかもシルビアの値段は、カローラ程度の値段だ。 仕事が好きだから、仕事に関する無駄遣いをするのが理想的なんだけど、VAIOと、 地図ソフトのプロアトラスがあれば、あとはほとんど何もいらないので、経費の使いよ うがない。 おまけに土居ちゃんも、柴尾英令くんも私の会社の人間ではないので、ふたりともほ とんど自腹で旅行に付き合ってくれるので、よけいな失費がまるでない。 おかげで私は意外と、安上がりな男なのだ。 けっきょく『桃太郎電鉄』のための取材でお金をつかうのが、作品にも帰ってくるの で、いちばんいいという結論になる。 そりゃ、そうだ。 かくてまた取材旅行が増える。 午後4時30分。嫁はお風呂工事の最後を見届けるために、家に残り、私は娘と銀座 三越の2F「Hills(ヒルズ)」へ。 『俺の屍を越えてゆけ!』とか『リンダ・キューブ』のゲーム作家として有名な桝田省 治(ますだしょうじ)と、ひさしぶりに会う。 桝田省治(ますだしょうじ)とは『桃太郎伝説』も、『桃太郎電鉄』もいっしょに 作ったので、私の人生においては、土居ちゃん(土居孝幸)、カズ坊(関口和之)並み に大切な男だ。 お互いのゲーム作りの情報交換など。 本当は、10年ぶりぐらいで、桝田省治(ますだしょうじ)といっしょにゲームを作 りたいね!という話だったんだけど、ちょうど私が来年は、1年に2本『桃太郎電鉄』 シリーズを作ることになってしまったので、ちょっと難しい。 桝田省治(ますだしょうじ)と、柴尾英令くんを従えて作るゲームというのは、とて も魅力的でわくわくしちゃうんだけど、さすがに体力的に難しいような気がする。もっ たいない話だ。 午後6時。我が家イチ押しの天ぷら屋さんに、銀座「天ぷらの近藤」というお店があ る。天ぷらは、カロリーが桁外れに高いので、私は秋から冬にかけて、2〜3回限定で 行くようにしている。 きょうは、その解禁日。 ボージョレ・ヌーボーか? この解禁日に、同行するメンバーを募った。 希望者は多かったものの、きょう行ける人が少なく、悔しい!のメールばかりが溜ま った。何よりサザンオールスターズのベーシスト&ウクレレ伝道師・カズ坊(関口和之) は、『桃太郎電鉄』を印税+ここの天ぷらで引き受けているという冗談をいうくらい、 毎年楽しみにしているんだけど、明日ハワイから帰ってくる。 何しろ、このお店、連日満員で、予約するとき、電話で「いつが空いてますか?」と 聞いて、空いている日に、こっちのスケジュールを合わすしかないというようなお店だ。 そんなわけで、集まったメンバーは、土居ちゃん(土居孝幸)、桝田省治(ますだ しょうじ)、柴尾英令くん、柿添尚弘くん、コイズミリュウジ、私、嫁、娘の8人。
絶品の海老の天ぷらから始まり、小さな玉ねぎ丸ごと天ぷらや、サツマイモ丸ごと天 ぷらに、思わずにっこり笑いながら、驚嘆の面持ち。
ここの天ぷらを食べちゃうと、本当にほかの天ぷらが食べられなくなる。 というより、ほかの天ぷらを食べなくてすむ。 ああ! 食べ終えちゃうのが、淋しい。 午後7時30分。「天ぷらの近藤」の近くの喫茶店で、私と桝田省治がいるので、フ ァミコン・ゲーム黎明期の話など。 イヤだねえ、歴史の教科書の人物みたいになっちゃってるよ、私も桝田省治も。 コイズミリュウジの「ボクは井沢どんすけサンを尊敬してますよ!」に、桝田省治 (ますだしょうじ)が笑い転げる。 あの敵に回すと恐いが、味方にするともっと恐い男・井沢どんすけを、味方にしたば かりにひどい目に会った1位は、私で、2位は、桝田省治と思われるだけに、桝田省治 の爆笑も無理からぬ。 なので、井沢どんすけのかつての武勇伝をオンパレードで披露してあげる。 まあ、たいした話ではないけどね。 電気ポットを、ガスコンロの上に乗せて、火をつけて、私が死に掛けた話とか、ゲー ム制作中に近所の小学生に「へびいちごを食べなよ!」といわれて、断るのが怖くて、 食べてお腹をこわした話とか、桝田省治が「どんちゃん、これおいしいよ!」といって、 手渡した赤唐辛子を何の疑問も持たずに、食べて「すぺぺぺぺぺぺっ!」と叫びながら、 空を飛びそうになったといった話程度である。 午後10時。帰宅。 今夜も、MAP作りで、夜更かしをしてしまいそうで怖い。
-(c)2003/SAKUMA-