8月16日(土)

 東京は、雨。
 梅雨に逆戻りしちゃったみたいだ。
 でも、テレビで高校野球はやっているんだから、関西は雨が降っていないということ
だ。
 その関西にこれから行く。
 またですかい!
 8月は、まだ原宿の自宅に、4泊しかしていない。
 7月は、ちょうど半分しか原宿にいなかった。

 午前11時30分。嫁と、東京駅へ。
 雨の日の旅立ちは嫌なものだ。
 思ったほど、東京駅は混んでいなかった。
 きょうはすでに、Uターン・ラッシュが始まっているそうだ。

 午前12時20分。のぞみ63号に乗車。
 駅弁を食べる。

 私は、あなごめし 1000円。

 嫁は、江戸開府400年記念弁当 1100円。

 あなごめしは、甘いたれが別のチューブに入っていて、お好みで調節できる。  味もいいんだけど、いかんせん、あなごと、たくわん3枚と、お漬物2枚だけの編成 では、味に飽きる。途中、カラフルな嫁のお弁当から、栗とか、豆とか、援軍をもらう。  嫁の江戸開府400年記念弁当は、ていねいに作られたおいしいお弁当のようだ。  おにぎりが、わざわざ粟(あわ)で作ってあったりする。  本当に最近の駅弁の工夫ぶりは、見事だ。  テレビで「東京駅駅弁戦争」という題名のドキュメントでも放送しそうな気がする。  食後、いつものようにVAIOを広げて、お仕事。  いよいよ『桃太郎電鉄12〜西日本編もありまっせー!』の手直しが、確率の数値の みで、メッセージの変更もご法度の時期に入った。  なので、『桃太郎電鉄U(仮)』の仕様書の手直し。  しばしも休まず、次のお仕事だ。  すでに、『桃太郎電鉄U(仮)』は仕様書の第1稿を春の段階で、送ってある。  ところが春の段階で送った仕様書を、『桃太郎電鉄12〜西日本編もありまっせー!』 でチューニングしているうちに、どんどん改稿して行ってしまったので、けっきょくま た新しい仕様書を書き直さないといけなくなった。  さらに『桃太郎電鉄12〜西日本編もありまっせー!』よりも便利なシステムを思い ついたカードなども、原稿を書き直さないといけない。  のんびりカードの仕様書を書いていたら、『桃太郎電鉄14(仮)』に予定している ゲスト・ボンビーに、アイデアが足りないことに気づいて、静岡から名古屋まで、新し いゲスト・ボンビーにかかりっきり。  例によって、『桃太郎電鉄14(仮)』はまだ契約していないゲーム。  次回作は、『桃太郎電鉄U(仮)』だ。  午後2時37分。京都駅で下車。  曇り空だけど、京都はさすがにムッとくる暑さ。  あぢぢ…。あぢぢ…。  歩いているだけで、じっとり汗ばんでくる。  午後3時。京都の仕事場へ。  引き続き、『桃太郎電鉄U(仮)』の仕様書の手直し作業。  たまに、気分転換で、『美味しんぼ』の文庫本を読んだら、お腹が減って仕方がない。  午後5時30分。嫁と、平安神宮の近くのうどん屋さん「K」へ。  ひさしぶりに「K」と、イニシャルで書いた。  味はけっこうよかったのだ。  私は、賀茂なすの茶そば。  嫁は、生ゆばの茶そば。  ふたりで、いなり巻き。

 有名料亭の姉妹店というか、カジュアル版なので、味はしっかりしている。  胡麻豆腐などは、まるでお餅のような食感でおもしろい。  賀茂なすも、夏の涼味を感じて、清々しい。  問題は、接客だ。 「いらっしゃいませ!」の声が小さい。  注文を取りに来たものの「むにゃむにゃは、ありまむにゃむにゃ…」と、何を言って いるかわからない。おまけに、注文を聞かずに、さっさとカウンターの向こうに下がっ てしまう。 「注文を!」と言っても、カウンターから出てこない。  仕方なく、カウンター越しに、こっちが声を張り上げるしかない。  カウンターのなかに、若い男の子がふたりいるのだが、小声のほうは、まったく笑わ ない。もうひとりのほうは、目が悪いのか、ガンを飛ばしているとしか思えない人相な のだ。こっちも笑わない。  とても気まずいお店だ。  私たちだけがそういう態度を取られたなら、こっちにも落ち度があったかな?とも思 えるのだが、あとから来た人に対しても笑顔を見せず、カウンターの向こうから、注文 を取っていた。  圧巻は、ドアの近くに設置された「アンケートにご協力ください」の箱。 「ご自由にお取りください」と書いてあるけど、用紙が入っていない。 「向上心は、ありません!」と宣言しているようなものだ。  もったいないねえ!  笑顔を見せるだけでこれだけおいしい味を、たくさんのお客さんに食べてもらえて、 「おいしいですね!」、「おいしいね!」とうれしい言葉をかけてもらえるのに。  仕事は、技術をとやかくいう前に、絶対笑顔が先だと思う。  今回、『桃太郎電鉄12〜西日本編もありまっせー!』の【西日本編】のゲスト・ キャラにけっこうてこずったけど、最後は笑顔で「こんな感じでどうかな?」と思った 瞬間から、スタッフの受けがよくなった。  心の持ち方が、大切なんだと思う。  午後7時。夕方になって、涼しくなってきたので、御池地下街のの「カスカード」で、 モルトくるみパンを買って、寺町界隈を歩いてから、京都の仕事場に戻る。  京都の喫茶店は、どこも午後5時で終わったりするので、コーヒーが飲めず。  午後7時30分。きょうの京都は、五山の送り火の日。  世間的な言い方をすれば「大文字焼き」の日だ。  京都ではみんなちゃんと「送り火」という。  ちなみに、近鉄にいた外国人選手は「オグリビー」。  プロ野球ファン向けのギャグでした。  嫁がインターネットで、東山の将軍塚が「送り火」を見る穴場だという情報を入手し てきた。  しかも、お寺まで一般車はダメだけど、タクシーはOKというではないか。    いつもの「送り火」の頃は、暑くて、暑くて、とても「送り火」なんて、見たいとも 思わなかったのだが、きょうのこの涼しさなら大丈夫だろうと、でかける。  しかし、将軍塚に向かう途中の道で、おまわりさんがたくさん出ていて、車両規制中。 タクシーはダメだ!というではないか! 情報が違〜〜〜う!  どうやらお寺にあらかじめ、予約した車のみ、通行可能といういかにも京都らしい裏 技だったようだ。  おまわりさんが、展望台まで歩いて10分だと教えてくれたので、車を降りて、そこ から歩く。

 歩くんじゃなかった。  舗装はされているものの、急坂。  両足首が攣りそうなくらい、しんどい。  おまけに街路灯なんて、まったくないので、真っ暗闇。  いかにもお化けが出そうな道を、ひたすら登っていく。  まだまだ私の足は、リハビリ中なので、後ろから来た若い人たちにどんどん抜かれて 行く。  抜かれて行くのは、かまわないのだが、たどりつけないのではないか?  おまわりさんの10分は、私にとって、30分なのでは?と不安になる。  私には登山だ。  午後8時。なんとか、送り火が始まる時間に、展望台にたどり着いた。  京都市内の夜景が一望できる。  100人近くの人が集まっていて、送り火が始まるのをいまかと待っている。  まるで、映画『未知との遭遇』の1シーンのようだ。

 きょうは曇り空で空がけぶっているので、なかなか送り火が見えない。   『五山の送り火』は、毎年8月16日に行われるお盆の行事だ。  右から順番に、「大文字」、「妙・法」、「船形」、金閣寺近くの「左大文字」、嵯 峨仙翁寺山「鳥居形」と点火されていく。  一般的に、送り火そのものは仏教的行事で、迎えた先祖の霊を送るもの。  大文字焼きばかりが有名だけど、帰り道を照らして、先祖の霊を送り出す行事だ。以 前は、ほかの山でもいろいろな文字で送り火をやっていたそうだ。  どうやら、正面に見えるのが、鳥居形のようだけど、小さい。  30分を過ぎたあたりで、ようやく右大文字がくっきり見えた。  やっぱり「送り火」は、2000年の大晦日に特別にやってくれた「送り火」がいち ばんだなあ。  冬なので、空気が澄んでいたし、何より、すぎやまこういち先生ご夫妻のマンション の屋上がちょうど、五山の真ん中で扇形に見える位置で、まるで東京ドームのバック ネット裏みたいな席だったので、あれ以上いい場所などあるはずがない。  送り火は1時間足らずで終わると聞いていたので携帯電話でタクシーを予約しておい て、また山道をとぼとぼと歩いて降りた。  午後9時。京都のマンションに戻る。  足首が痛い。  最近テスト・プレイばかりで、あまり歩いていないことに気づいた。  午後10時。ヤサカタクシーの宮本さんが、嫁がほしがっていたものをわざわざ買っ て来てくれた。  相変わらず、もうしわけない。  きょうは送り火の日なので、宮本さんは大忙しだったようだ。 「さくまサン、送り火のために、きょう京都に来たんと違うの?」 「いや。テスト・プレイの連続で、最近まったく日にちがよくわかっていない! 明日 のサザンオールスターズのコンサートのための先乗りなだけです」  そんなわけで、明日、名古屋のサザンオールスターズのライブを見に行く。  明日の帰りの名古屋→京都間の新幹線はもう取ってあるんだけど、すでに明日の上り の新幹線はすべてキップが売り切れているそうだ。  しまった。買っていない。

 

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