8月10日(日)

 台風一過。
 鎌倉は快晴なり。

 浜辺に日光浴に行こうと思ったけど、いま熱中症で倒れたら、多くの人に迷惑がかか るので、静養に務める。  昨日、スーパーテスト・プレイヤー井沢どんすけ大先生から、お墨付きをちょうだい したので、きょうは、クールダウン。  とはいえ、『桃太郎電鉄12〜西日本編もありまっせー!』の手直しを2〜3書き上 げて、札幌に送る。  午後12時。家族3人で、近所の懐石料理の「懐古(かいこ)亭」へ。

 飛騨高山から移築した、築180年の合掌造りの家の前に、ロールスロイスが置いて ある不思議なお店だ。  お店のなかに入ると、ドイツの外務大臣が来たときの写真が貼ってあって、たしかに 「古都鎌倉にふさわしい風格のあるお店」ということになる。

 懐石料理を注文せずに、割子そばに、天ざるそば。  お汁が、ちょっと薄い。

 真夏の強い日差しを浴びて、庭が真っ白に見える。  すぐ近くを江ノ電が走る。

 午後1時。鎌倉長谷の家に戻る。  実は、最近うれしい仕事がひとつ舞い込んだ。  この日記を長いこと読んでいる人にとっては、私が、『風雲児たち』(みなもと太郎 ・リイド社)の大ファンであることは、よく知っていると思う。  その新装版の最新刊の帯にある「推薦文」の依頼が来たのだ。  SF作家の小松左京さん、脚本家の三谷幸喜さん、ラサール石井さんなんかが書いて いるあの帯のコピーだ。  知り合いの夏目房之介さんが書いているのを見て、うらやましいなあ!とは思ってい たけど、私のところに来るとは思わなかった。  先日「小池一夫塾」の塾生の前田くんが、私を推薦したというメールをくれていたか ら、そのせいもあるのかな。  うれしいねえ。  でも、うれしいだけに、緊張しちゃって、なかなかいい推薦文が浮かばないのだ。そ の「推薦文」というのが、20文字前後だというのだから、よけい難しい。  あそこがいい、こことがいいと、長い文章で語るなら、楽だ。  浮かばないときは、いくつも、いくつも、思い浮かぶ言葉を書くに限る。書いて、書 いて、何も浮かばなくなった頃に、アイデアというものは、ポコッと出てくるものだ。  プロとアマチュアの一番の違いはここだという人が多い。  アマチュアは、浮かばないと投げ出す。  プロは、浮かばなくなってから、必死に粘る。  たしかに、そうだと思う。  途中で、うちの娘に、「推薦文」の出来栄えを聞く。  うちの娘も、私が『風雲児たち』を全巻読んだあとに、ぜんぶ読んで、ファンになっ たほどだから、ダメだしが厳しい。 「ダメ! さくちゃんの推薦文を読んで、この漫画を買ってみようと思う人がいっぱい 出ないといけないんでしょ!」  ご説ごもっともでございます。 「こんなのどうだ!」 「ダメ! 全然おもしろくない!」  こんな日が、3日ほど続いた。 『桃太郎電鉄12〜西日本編もありまっせー!』のテスト・プレイが峠を越えたので、 きょうだったら、浮かぶかなあ!と思って、私が書く予定の17巻を読み返していたら、 ポコッと出た。  やっぱり、いくつも仕事を抱えていると、浮かびづらいねえ。  昔、連載を1ヶ月に16本も抱えていた時期が嘘のようだ。  とりあえず、ひとついいのが浮かんだから、ひと安心。  うちの娘のOKも出た。  締め切りまでに、もっといいのが浮かんだら、そっちにしよう。  午後3時。録画していたビデオをあれこれ見ているうちに、眠くなる。うとうと…。  最近、テレビは録画で駆け足で見てばかりいるので、CMを全然見ていない。  仕事柄、CMをじっくり見る時間くらいは捻出しないといけないなあ…。  午後5時。家族3人で、鎌倉駅へ。  蒸し暑いけど、鎌倉はけっこう風がよく吹くので、歩いている分には、すごしやすい。  江ノ電側の御成(おなり)通りをぶらぶら歩く。  鎌倉は、JR鎌倉駅側の小町通りがあまりにも有名だけど、こっちの御成(おなり) 通りのほうが、風情があっていい。  午後5時。鎌倉駅から、紀伊国屋に向かう道の右側にある「勝烈(かつれつ)庵」へ。

 名前の通り、カツレツのお店。  横浜の老舗らしくて、横浜以外にはお店を出さなかったんだけど、先代のオーナーが、 鎌倉が好きで、ここだけ出店したそうだ。  私と、嫁は、勝烈丼。  娘は、勝烈定食。

 雑誌で見た勝烈丼は、ソースかつ丼っぽかったので、来てみたんだけど、これはドミ グラスソースだな。ずいぶん和風なドミグラスだ。  うまいっ! 実にうまいっ!  何しろ、肉がおいしい! やわらかいっ!  ご飯が、やけにおいしい。  兵庫県加古川のカツめしの味に似ているんだけど、加古川のカツめしは、洋風にしな いで、こういう風に丼物にしたほうが、もっと話題になったように思う。  このまま、このお店の勝烈丼を、加古川に持って行ってら、たちまち名物のお店にな ると思う。 「すごいうまかった! しあわせ!」  味にうるさいうちの娘の「しあわせ」が出た。  こては相当、評価が高いぞ! 「さくちゃん! このお店は、何度も来ることになるね!」 「娘よ! その言葉はすでに、柴尾英令くんを想定しているだろ!」 「柴尾英令さんが、絶対好きそうな味だよね!」  午後6時30分。小町通りを散歩する。  小町通りは、観光地なので、午後6時になると、ガラガラッと、どんどんシャッター が閉まってしまう。世の中の生活時間は遅くなってきているんだから、観光地といえど、 午後8時くらいまでは営業してほしいものだ。  なかば、もう閉店だろうな!とあきらめていた「埜庵(のあん)」が開いてた。  先日見つけたばかりの天然カキ氷のお店だ。  私は、氷あずき。  嫁は、梅酒氷。  娘は、紅茶ミルク氷。

 この間の天然いちごより、氷あずきのほうがおいしかった。  午後7時。鎌倉駅近くの「不二家」で、ネクターとか、アイスクリームを買って帰る。 例の全長60センチの陶器製の「夢見るペコちゃん人形」をゲットするために、スタン プ集めを開始しているのだ。  金額にして、10万円分。  期間は2年後なので、実現できないことはない。  近いうち、仲間内を集めて、この鎌倉の「不二家」でオフ会を開催したいと思う。み なさん私の道楽に、ぜひご協力を!  午後7時30分。鎌倉長谷の家に戻る。  iモードゲームの毎月エッセイの下書きを書き始める。  3年間、『さくま式東海道五十三次』、『さくま式奥の細道』、『さくま式西遊記』 は、本当にお疲れ様だ。参加してくれたみなさん、ありがとうございました。今月で最 後なので、まだ加入している人は、もう1回くらいやってみてね!  しかし、きょうはクールダウンの日なのに、けっきょくいつも通り仕事をしているで はないか。  まあ、いつもより楽に仕事しているという表現のほうが正しい。  テスト・プレイは、やっぱり時間がかかる。  寝不足になるよ、やっぱり。  当然のように、テレビ神奈川で「横浜VS中日」戦を見る。  8回表。2−1とリードしたまま、横浜ベイスターズは継投策。  1点差の場合、必ずボコスカ打たれるのが、今年のパターンなだけに、ひやひやしな がら見ていたんだけど、竹下投手、デニー投手と、繋いで、なんとか0点に抑える。  9回表。当然、締めくくりは加藤武治投手だと思ったいたら、これがなんと先日中日 から獲得したばかりのギャラード投手が登板! ひえ〜〜〜ッ!  1点差で、そんな大胆な起用法を!  しかし、ギャラード投手の球は、かつて横浜ベイスターズをきりきり舞いさせた重い ボールのまんまだ!  スパーーン! スパーーン!と気持ちいい球がミットに吸い込まれる。  あっという間に3人で締めて、2ー1で勝利。  ギャラード投手は、移籍後、初登板、初セーブ!  なんだか、きょうの横浜ベイスターズは、例年の横浜ベイスターズのほうに見えるほ ど頼もしかった。  うーーーん。リリーフエースがいると、いないでは、こんなに違うものなのかあ…。 菅沼真理(通称:すがねまチャン)さんもいい投手をくれたもんだ。いや、中日ドラゴ ンズは、いい投手をくれたものだ。  クールダウンの日に、ふさわしいプレゼントになった。

 

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