7月29日(火)

 全国的に、さくまあきらの51回目の誕生日。
「51」といえば、イチローの背番号とおなじ。
 これからもホームランを狙わず、こつこつと内野安打を狙い、足で打率を稼ぐ作家で
ありたい。

 たくさんの「誕生日おめでとうございます!メール」ありがとうございます!
 横浜ベイスターズが、中日のギャラード投手を獲得したよ〜〜〜!
 いままでの横浜ベイスターズだったら、考えつかない展開だよ〜!
 今年、元法政大学監督の山中さんが、三顧の礼でフロント入りした成果が出てきたの
かな。
 企業は、どん底まで行かないと、反省しないもんだね。
 中途半端だと、危機管理が芽生えない。

 午前10時。嫁と、東京駅へ。
 誕生日でも、やっぱり足で稼ぐ作家としては、日帰り取材にでかける。
 きょうもまた信州だ。

 午前10時28分。あさま511号に乗車。
 乗車後、すぐにVAIOで、お仕事開始。
『桃太郎電鉄12〜西日本編もありまっせー!』の誤植の訂正。
 膨大すぎる量の原稿なので、思わぬ誤植も多い。
 たとえば「原稿」と打ったと思ったのに、ワープロは「元寇」という文字を選んでい
たみたいなミスがけっこう多い。

 午前11時55分。上田駅で下車。

駅前は再開発中

 今年の4月19日に上田に行って、妙にこの町が気に入った。  まあ、私の場合、お城があって、古い町並みがあって、甘い食べ物でもあれば、簡単 に気に入ってしまう。  上田の場合は、「シルクくるみ」という、くるみの砂糖菓子のようなものを発見した だけで、好感度はギュィーーーン!とアップしている。  きょうは、上田では、焼きそばにあんかけをかけるお店が多いという噂を聞いてやっ てきた。 「あんかけ焼きそば屋」。  いかにも、『桃太郎電鉄』の物件として、つかえそうな名前だ。

 駅のコインロッカーにコンピュータを置いて、徒歩で真田坂を上る。  上田の商店街は、けっこう活気がある。  最近はどの駅前も、郊外の大型スーパーに蹴散らされて、ゴーストタウンのように なっているのに、上田は妙に元気だ。  本来なら火曜日は、定休日が多いのに、淋しさを感じない。

 ただ、ずっと上り坂なので、へばる。  上田中央1丁目の交差点を抜け、上田中央2丁目の交差点を右折。  道路から1本入った道に、「福昇(ふくしょう)亭」を発見。

 午後12時。店構えは、ごくふつうの町の中華そば屋さん。  お店に入ると、「満員なので2階へ!」と言われる。  えっ? 2階はどこ?  外から上がるのかな?  ええっ!? 厨房を通るの? 大胆だなあ。  しかも急で、狭い階段を上らないといけない。  足の不自由な私としては、非常に怖い階段だ。  でもい郷に入っては郷に従えだ。

 2階は、住居っぽい。 「ワンタンと五目焼きそばのセット 850円」を注文する。  五目焼きそばというのが、あんかけ焼きそば。  おお! 来た! 来た!  ふーーーん。焼きそばが、チリチリッに縮れた不思議な麺だ。  この縮れ方は尋常ではない。  漫画で爆発すると、頭が黒焦げになるときの表現みたいな縮れ方だ。  おまけに、焦げ目が多いので、よけいそう感じる。  でもこの焦げた香りが、おいしい。  ちょうど、長崎皿うどんの焼きそば版といった感じ。  コンパクトにおいしい味だ。

 あんかけ焼きそばもおいしかったけど、ワンタンのおいしさにはびっくり。  スープの味わい深さには、ちょっと驚嘆。  ズズズズッとすすって、「うぃーーーー!」と言いたくなる。  ワンタンの皮の食感もいい。  やわらかく、口にやさしい。  このお店は、ラーメンも評判らしいけど、その味が想像できるようなスープの味だ。  行列のできるお店とは聞いていたけど、お店を出る頃には、行列が出来ていた。お客 さんというのは、こういうわかりづらいお店をよく探してくるよなあ。 <メモ> 「福昇亭」 住所:長野県上田市中央2の9の2 電話:0268(24)2086 営業時間:11:30〜15:00 16:30〜19:00 定休日:水曜日。第3火曜日。  食後、前回歩けなかった上田の商店街を歩いてみる。  森鴎外が泊まった旅館跡などというのが、保存してあった。

 この町は、妙に古い町並みと、道路を隔てた側には、近代的な住居がいま建てたばか りという雰囲気で建っている不思議な町だ。  東京でたとえるなら、練馬区の上石神井みたいだ。  道路がやたら舗装されていて、古い農家があったかと思うと、住宅展示場をそのまま 住居にしたようなぴっかぴかの家が並ぶ。  常田(ときだ)というところにも、古い町並みがぽつんぽつんとあったけど、こっち はまったく野放し状態。  いい蔵造りの家などあるのだけれど、土台から腐っちゃっている。  前回見た上田の北国(ほっこく)街道の整備された古い町並みの紺屋町とは、えらい 待遇の違いようだ。  常田(ときだ)のほうも、整備すれば、いい観光地になると思うんだけどなあ…。

 午後1時30分。前山(まえやま)寺へ。  上田近辺の人なら、知らない人がいないくらい有名なお寺だそうだ。  食い意地の張った私たちは、このお寺で「くるみおはぎ」というものを食べさせてく れるというので、わざわざ予約して来てみたのだ。  来てみて、上田駅から遠いことに初めて気がついた。  おまけにお寺までの石段が、短いわりに、きつい。  はあはあ…。ぜえぜえ…。  体力不足を思い知らされる。

 このお寺は、弘法大師がが開基したと伝えられる古刹で、創建は鎌倉時代とか。 室 町時代に建てられた三重の塔が有名らしいけど、出来たばかりの木目模様も鮮やかな梵 鐘のほうが、気に入った。  お寺なので、本堂にお参りして、脇の家へ。  塩田(しおだ)町が一望できる美しい景色が見える大広間に通された。  お客さんはうちのほかに一組しかいなかったのだが、あとから大型観光バスがやって きた。そういう規模のお寺なのかと、改めてびっくり。 「くるみおはぎ」が出てきた。  おはぎのセットは、700円。  お武家様の一汁一菜の食事みたいだな。

 おはぎが黒くない。  ご飯をそのまま丸めただけのようだ。  おお! おはぎをくるみだれとからめて食べると、おいしいこと、おいしいこと。ク ルミをすりつぶして、お醤油と砂糖で味付けしただけというけど、何ともいえない上品 な味だ。  いっしょに添えられた「しそ梅干」もおいしかった。  食べると、甘くて、シャキシャキ音がする。  思わず、帰りにこの「しそ梅干」を買ってしまったほど。  午後2時30分。前山寺から程近い場所の「紬(つむぎ)の藤本」へ。  着物の好きな嫁に言わせると、上田は、紬(つむぎ)の名産地なのだそうだ。  私には、紬(つむぎ)も、絣(かすり)も、ヤスリも、区別がつかないのだが、いい デザインなのだそうだ。  でもこの上田の紬(つむぎ)は、大阪冬の陣、夏の陣で、真田昌幸、雪村父子が徳川 相手に奮戦したことから、有名になったと聞くと、他人事のようには思えなくなった。

 お店では、若い女性が上田の紬を織っていた。  着物って、コンピュータのドット絵とおなじ原理で、作っていくのがおもしろいよな あ。最先端のものが、古いものと原理がまったくおなじというのが、不思議だ。本質は みなおなじということだろう。  嫁は、帯を一本買っていた。  帯じゃない。反物だ。  お店の人が、コーヒーをふるまってくれた。  ということは、嫁は高い買い物をしたのかな。ははは。  そういえば、前山寺に向かう途中に、オルガン針の看板があった。  昔よく見たオルガンを弾く女性のマークだ。  その昔、蓄音機のレコード針を作るので、有名だったメーカーだ。  いまではミシン針の製造メーカーとして全国の80%のシェアを誇る企業になってい るようだ。  こんなところにあったのかあ…。忽然…。  午後2時45分。山の緑がきれいな田園風景を抜けて、上田交通別所線の別所温泉駅 へ。かわいい駅だなあ!

 終点なのに、電車が停まるホームが、ひとつ分しかない。  すごいなあ…。  ふつうは、2本ホームがあって、次の電車が来たら、いま停まっていた電車が発車す るものなのにね。  15分くらいで、上田行きの電車が出るけど、ちょっとくらい町を取材して行きたい。 次の3時36分の電車にすることにした。  別所温泉方面に向かう。

 この別所温泉は、信州の鎌倉と呼ばれるお寺の多い場所だそうだ。  もちろん温泉地でいまも旅館など多いようなのだが、相当寂れているらしい。  ゆるやかにどこまでも続く上り坂だ。

 駅前にお土産屋さんがあったけど、それだけで、行けども、行けども、商店はまった くない。  あっけなく、探索を断念する。  でも次の電車まで、30分以上ある。  とはいえ、見るものがない。  駅まで戻り、駅のホームの隅っこに保存されている昔の電車見に行く。  丸窓電車と呼ばれる古い車両だ。  ドア袋の部分が、楕円形になっているのが特徴。

 この丸窓列車は、「モハ5250形」と呼ばれ、昭和2年に製造されて、昭和61年 まで、50年以上別所線で活躍した花形列車らしい。導入された電車らしい。  当時、上田交通は、別所線を含め、3路線も保有していたらしい。  この「丸窓電車」をいまも走らせたら、大人気間違いなしだろうなあ。

 午後3時30分。電車が来た。  あれは、東京の東急電車ではないか。

 東急電車から払い下げてもらったんだな。  先週の『トリビアの泉』で、地下鉄丸の内線の車両がいまアルゼンチンを走っている ように、けっこう電車は何10年にもわたって、地方で活躍することが多い。いま来た 電車も、昭和43年製の東急電車。  昭和43年ごろ、横浜方面から渋谷まで通学していた人にとっては、なつかしの青春 電車だと思う。  午後3時56分。別所温泉駅を発車。  速度は遅くないものの、加速したとたん、次の駅だ。  もちろん、無人駅。  電車というより、ほとんどバス路線。  そのまま道路に下りるような駅もあれば、ホームの途中から、木の板になっている駅 まである。線路の脇に農道のような舗装道路が続く。  遠くの山の緑が美しい。  どこまでも続く田んぼの緑も美しい。  若い人にはわからないだろうけど、景色がほとんど『週刊新潮』の表紙の谷内六郎さ んの絵の世界。

 雰囲気あるよ、この路線。  別所温泉が、「信州の鎌倉」なら、上田交通別所線は、「信州の江ノ電」だね。  また丸窓の電車を走らせたら、絶対「信州の江ノ電」と呼ばれるようになるなあ。  午後4時8分。15個の駅に停まって、上田駅に到着。  上田交通別所線の上田駅は、とっても近代的なのでびっくり。

 こっちの上田駅から初めて乗って、うたた寝しながら、30分後に別所温泉駅にたど り着いたら、一瞬タイムスリップしたのかと思ってしまうかも。  JR上田駅の売店で、私イチ押しのお菓子「くるみシルク」を買う。  この「くるみシルク」を買うだけのために、上田に来てもいいと思えるくらいおいし いお菓子。でも歯が痛くなるくらい、甘いよ〜〜〜!  午後4時21分。上田駅から、あさま632号に乗車。  午後4時39分。軽井沢駅で、下車。  上田駅→佐久平駅→軽井沢駅まで、わずか18分!?  速い! 新幹線は、やっぱり速い!  しなの鉄道なら、52分のところを、18分!  たいしたもんだ。  うひょ〜〜〜!  軽井沢は、霧がちょうど立ち込め始めたところ。  乳白色の霧が動くさまが目で見える。  きれいだなあ…。

 先週、軽井沢に寄ったときに、実は寄ろうとしていたお店があるのだ。  すでに、今年このお店目当てに行って、2度失敗している。  最初は、場所がわからず、前回は、お昼も営業していると思って行ったら、お昼の営 業をやめていた。  きょう、もしダメなら、縁がないと思ってやめようと思った。  午後5時。鉄板洋食の「NISHIHATA(にしはた)」へ。  お店の人がすまなそうな顔で「午後5時半からなんですよ〜!」というので、駅前の 「茜屋珈琲店」へ。  銀座のよく行く「茜屋珈琲店」とは、おなじ系列のお店。  このお店もきっちり、グラスが並び、清潔。  おいしいコーヒーを入れてくれた。  軽井沢は、完全に霧に包まれてしまっている。  幻想的な風景だ。

 午後5時30分。再び、鉄板洋食の「NISHIHATA(にしはた)」へ。 この お店は、フードライターの坂井淳一くんがお勧めのハンバーグのおいしいお店。まだ夢 のようにおいしいハンバーグを求めて、日本じゅうを旅しているのよ。とうとう軽井沢 まで来ちゃった。

 すごいよ。午後5時31分くらいに来たのに、またたくまにお店がいっぱいになって しまった。私のあと、ふたりは入れたけど、その次からはお断りするような盛況ぶり。 席数12とはいえ、すごい! 「歯ごたえビーフハンバーグ 1400円」という名前が、おいしさを誘うよね。  まずは、鴨のサラダからいただく。  鴨のローストビーフといった感じでおいしい。  続いて、ズッキーニのスープ。  私は本来、緑色の野菜が苦手なのに、これはおいしかった。  これは大いにハンバーグに期待が持てるよ!

「歯ごたえビーフハンバーグ」が来た!  まん丸のハンバーグだ。 「歯ごたえ」に期待していますよ〜〜〜ッ!

 あれ? あれ? あれれれれ?  歯ごたえが、ないよ…。  ど、ど、どうしたの?  ちょっと当てが外れちゃった…?  でも、肉汁がおいしいなあ…。  ふんふん。じわじわ、おいしいと感じて来たぞ。  もぐもぐ…。  やっぱり、おいしいや。  やさしい味だ。  ふっくらしている。  まさにご主人のやさしそうな顔の表情が乗り移ったような味だ。  これは「歯ごたえビーフハンバーグ」のネーミングがいけないね。  表面カリカリッ!のハンバーグを、私は期待して、夢が膨らんでいたよ。  最初から、「ふっくらハンバーグ」というネーミングだったら、間違いなくおいしい!  東京から、無理やり土居ちゃん(土居孝幸)たちを連れて来るほどじゃないけど、軽 井沢では、おそばの「東間(とうま)」の次に選ぶお店だな。

 ほかのお客さんが注文していたオムライスが、おいしそうだ。  たぶん次は、あのオムライスを食べに来そうだ。 <メモ> 「鉄板洋食NISHIHATA」 住所:軽井沢町軽井沢東6の1芦沢ビル103 電話:0267(41)1158 営業時間:17:30〜21:00 定休日:水曜日。第3火曜日。 備考:軽井沢北口降りて、すぐ左。  午後7時7分。軽井沢駅から、あさま528号に乗車。

 まさか上田から、軽井沢に寄ったのは、ハンバーグを食べるためだって?  わっはっはっは。その通り〜〜〜ッ!  51歳になっても、こういうバカなことをしないと、私じゃないでしょう!  午後8時16分。東京駅に着く。  iモードの「横浜ベイスターズ情報」を見ると、6−3で負けている。  阪神タイガース相手だしなあ…。  現在16連敗中だ。  きょうは甲子園だし…。  私の誕生日くらい、連敗が止まっても…。  あれ? あれ? 横浜ベイスターズが先攻?  6−3?  ひょっとして、6点取ってるのは、横浜ベイスターズ!?  負けるのがあたりまえが、染み込み過ぎているなあ。  午後8時45分。帰宅。  荷物を放り投げて、テレビ神奈川のスイッチを入れる。  うわ〜〜〜! 本当だ。  横浜ベイスターズが、甲子園の阪神タイガースをリードしているよ。  えっ? 伊良部投手を打てたの?  信じられないなあ。  もう、ギャラード獲得効果が出たの?  いや、いや。  まだ勝ったわけじゃない。  おお! 9回裏。  お気に入りの加藤武治投手の登板だ。  えっ? 加藤武治投手は、8回裏2死から、登板していたの?  すごい信頼感だなあ。  でも、いくら最近私イチ押しの選手だと言っても、相手は甲子園球場の阪神タイガー スだぞ!  うひょ〜〜〜!  3者でゲーム・セット!  素晴らしい!  ついに、阪神相手に16連敗がストップだ!  最高! うれしい! 言葉が浮かばな〜〜〜い!  えっ? 読売広告の岩崎誠ニコニコが、私の誕生日プレゼントを宅急便で送って来て くれたって!?  何、何!? 「阪神タイガース、ハゲのオーナーより、横浜ベイスターズ、影のオーナーへ、誕生日 プレゼントです!」  何じゃそれは?  ああ〜〜〜ッ! これはおもしろい。  横浜ベイスターズのロゴが入っている。これは手作りだよ!  しかもユニフォームの後ろには、「390 AKIRA」のロゴが。

 こんな手の込んだプレゼントは、ないよ〜〜〜ッ!  ありがとう!  しかもやっと、阪神タイガースに勝てた日に届くなんて、最高!  岩崎誠に免じて、今年は、阪神タイガースに優勝させてあげよう!  はっはっは。すでに今年は阪神タイガースの優勝に、横浜ベイスターズが貢献してい るからね。  きょうは「誕生日おめでとう!のメール」が、たくさん来ていたけど、とくにうれし くなるようなメールが来ていたので紹介します。 世田谷区・tatang さくまさん、お誕生日おめでとうございます。 毎日日記を楽しく読ませてくださって、 さらにその日記から、いろいろと学ばせてくださって ありがとうございます。 日記を拝読しておりますと、少し、 「食べ過ぎ、書き過ぎ、動き過ぎ」でいらっしゃるなぁ、 と思います。でも、日記の中で必ず自戒されるところが、 えらいなぁ、と思って感動しています。 さくまさんが 毎日を楽しく、おいしく過ごしてくださると、 読み手の私も楽しく過ごせます。 ただし、おなかは空きっぱなしですが。 これからの1年も、どうぞおすこやかに過ごされますよう、 お祈りしています。  こういう風に読んでくれる人がいると思うと、なかなか日記をやめることができない なあ…。最近、知り合い関係の日記が、続々停まっちゃっているんで、けっこう孤独な んだ。  まあ、私の場合、『桃太郎電鉄』製作旅日記のようなものだから、『桃太郎電鉄』が 続くかぎりは、日記は続けるかもね。

 

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