７月２日（水）

　午前１１時。嫁と、銀座の山野楽器へ。
　ゲーム制作上、ヒントとなる音楽ＣＤを買い漁る。
　音楽から、イベントのアイデアを思いつくことも多い。

　このところ、ＤＶＤで、クィーン、スリー・ドッグ・ナイトなどを視聴している。

　午前１１時３０分。銀座「竹葉（ちくよう）亭」へ。
　創業は、江戸末期！
　歌人の齊藤茂吉がこのお店のウナギをこよなく愛したことで有名な銀座を代表する老
舗だ。
　でも、私と嫁は、このお店の「鯛茶漬け」がおいしいという情報を入手したので、確
かめに来た。

　ほう。しゃぶしゃぶの味噌だれみたいなものに、鯛のお刺身が浸かっている。　鯛を
ほぐしたものをつかう松江風鯛茶漬け、鯛のお刺身と溶き卵を混ぜる宇和島風鯛茶漬
け、鯛をお櫃（ひつ）に混ぜご飯のようにしただけの鞆の浦（とものうら）風鯛茶漬け
とも、またちょっと違う。
　鯛茶漬けは、いろんな食べ方があって、おもしろい。

　で、「竹葉（ちくよう）亭」の鯛茶漬けは、味噌だれに浸かった鯛のお刺身をご飯の
上に乗せて、鯛の身が白くなるまで、ほうじ茶をたっぷりかける。
　例によって、お茶漬けにする前に、味噌だれに浸かった鯛の刺身をご飯の上に乗せ
て、ご飯といっしょに食べる。
　うん。ご飯がうまい。
　ははは。お茶を入れないと、やっぱり味噌が濃い。
　そりゃそうだ。お茶漬け用なんだから。

 



　さすがに、老舗の鯛茶漬けだけに、１８００円とお値段も高い。
　でも値段分以上に、おいしい。
　味噌だれの風味が只者ではない。

　午後１時。築地のハドソンへ。
　きょうから、『桃太郎電鉄１２（仮）〜地方編』３連戦。

　初日の出場者は、５月３１日の鎌倉決戦で、圧勝して鼻息の荒い、読売広告の岩崎誠
４１歳。Ｏ型。
　ゲームキューブ版『桃太郎電鉄11』のＣＭディレクター・農本太一（のうもと・たい
ち）さん、倉敷市出身、３８歳。
　ご存知、敵に回すと恐いが、味方にするともっと恐い男、３５歳にしていまだにお母
さんに洋服を選んでもらっていると、あくまで噂なのだが、信憑性の高い濡れ衣と評判
の井沢どんすけ、３５歳、Ａ型。
　そして、ついに初登場！！！
『桃太郎電鉄11』、『桃太郎電鉄１２〜西日本編〜』のメインプログラマー・田中俊介
くん、２９歳、ありゃ、血液型のデータがない。

　当然、田中俊介くんＶＳ３人の戦いである。
　いや。どっこいズ出身の井沢どんすけは、員数外。
　このところ、どっこいズ相手に、けっこういい成績を残しているので、たまにはレベ
ルの高い選手たちとの対戦もさせてあげようという、親心、いや、ちょっとした気まぐ
れ。

 



　観客席は、ハドソン札幌開発スタッフの川田忠之くん、込山勉くん、小坂晃弘くん。
宣伝部の梶野竜太郎くん、藤原伸介くん。
　私、嫁、土居ちゃん（土居孝幸）、柴尾英令くん。





　午後１時３０分。というわけで、本日は「西日本編」対決。
　すっかりこの日記で、『桃太郎電鉄１２（仮）〜地方編』が、「西日本編」であるこ
とをバラしてしまったけど、さすがにゲーム内容とか、西日本編特有のイベントは、微
妙に隠しながら表現しないと、ゲームを買ってもらったときのインパクトが減る。

　１年目、農本太一さんがあっさり、目的地に入る。
　みなさんのお望みどおり、貧乏神は井沢どんすけにつく。
「井沢〜〜〜！　もう貧乏神かよ！」
「井沢さん、きょうは早いですね」
「どうしてだろう？」

　しかも、次の目的地は、ほとんど右端の町。
　井沢どんすけ、裏返るような声で「遠いなあ…」。
　だいたい、この次の目的地、すでに井沢どんすけは、『桃太郎電鉄１２（仮）〜西日
本編』の西日本編ＭＡＰを何度もやっているのだから、遠いことは知っているはずなの
だ。
　なのに、全体ＭＡＰを見て、「遠いなあ…」である。
　どうも、１ヶ月経つと、ＭＡＰを忘れてしまうようである。

　その後も、何度も、コントローラの使い方、カードの使い方を、みんなに教わってい
る。
　くれぐれも言っておくが、井沢どんすけは、１６年前に発売された『桃太郎電鉄』の
頃からのテスト・プレイヤーである。わからん！

　この２番目の目的地、井沢どんすけがいち早く、あと２マスのところまで行く。
　しかし！
　ずっと目的地に入らない。
　本当に入らない。

「井沢さん、こっちはもう目的地入るのあきらめているんだから、早く目的地に入って
くださいよ！」
「あと２マスになってから、もう半年以上になりますよ！」
「早く次の目的地を教えてくださいよー！」
「オレだって、入りたいよ〜！」

　けっきょく、田中俊介くんが、目的地に入った。

　いつもなら、５年目くらいに、井沢どんすけの意味不明プレイが出るのだが、きょう
は早くも２年目に出た！
　目的地到着確実と思われた２番目の目的地を田中俊介くんに入られたのが、悔しいら
しく、腹いせにぱろぷんてカードをつかった！
「ええい、目的地のまわりに全員集合だ〜〜〜ッ！」と、井沢どんすけ。

　しかし、出たイベントは、全員にウィルスカード。
　しかも井沢どんすけ本人が、最大の被害を受ける。
「やるなあ！　井沢どんすけ！」
「負け方が芸術的！」
「真似のできない技だ！」





　その後、予想通り、『桃太郎電鉄１２〜西日本編〜』のメインプログラマー・田中俊
介くんが、独走、また独走！
　本日、阪神タイガースのアロハ・シャツを着て、参戦の岩崎誠は、絶不調！
「逆転の阪神ですから！」の掛け声も、むなしい。。
　小さいどころか、審判のストライクの判定に文句をいう男のように、次第に田中俊介
くんにからむ。

「おかしいなあ！　物件購入１００件目のタイミング知っていて、物件を買ったとしか
思えないなあ！」
「おかしいよ！　ぴったり目的地に着くなんて！　裏コマンドで、右、右、左、左と
か、押しているんじゃないの〜！」
「あれ？　おかしいよねえ。田中俊介くんのときのスリの銀次は、４分の１で、農本さ
んのときは、２分の１だもんなあ！」
　
　午後５時３０分。プレイヤー４人と、私、柴尾英令くん、込山勉くんの７人は、「太
老樹（たろうき）」でお寿司を食べながら、『桃太郎電鉄１２〜西日本編〜』の直すべ
き点を検討する。
　あいかわらず、ビリを独走しているくせに、井沢どんすけの指摘する部分は、さすが
と思わせる。
　なぜこれだけゲームを分析できる男が、下手なのだろか？

　午後６時。おなじメンバーで、後半戦。

　午後７時３０分。井沢どんすけ、総資産ー２億円のまま、未練たらたらの顔で、退
席。ほかの仕事の打ち合わせ場所に向かう。

　井沢どんすけのデータを、途中から現れた読売広告の鴻池元良（こうのいけ・もとよ
し）くんが引き継いで、続行することに。

　負けているせいを、まだ田中俊介くんの裏コマンドにあると信じている岩崎誠は、つ
いに役職名を、田中俊介くんとおなじ「棋士」に変更する！
「この役職名だと、目的地まで６マス以内になると、サイコロ振れば、ぴったり入れる
裏コマンドが入っているんだよ！」
　岩崎誠、製作者がズラリと並んでいるのに、勝手に「裏技はこれだ！」と言い張る不
思議な男だ。
　そんな裏技などあるはずがない。

　その証拠に、役職名を変えたとたん、ぶっとびカードで、２マスしか進めず、すぐあ
とに、キングボンビーを食らって、さらに沈んだ。

　農本太一さん、『西日本編』のゲスト・キャラを食らい、「ええ〜〜〜っ！　こい
つって、＊＊＊＊＊＊を買わせてくれないの〜〜〜！　ひでええええっ！」と、悲鳴を
上げる。
　うーーーん。このキャラに関しての情報は、これが限界かな。
　まだまだこのキャラは強化中だ。
　でも、『全国編』のゲスト・ボンビーほどひどくないよ。
　たまに、いいことも…おっとっと。危ない、危ない。またどんどんバラしてしまいそ
うだ。

　１１年目。とうとう田中俊介くんの総資産が、１１３億円。
　なんとか２位に浮上した岩崎誠の総資産が、８億円と話にならないので、田中俊介く
んのデータを、世紀の出目悪い男・込山勉くんが引き継ぐ。

　田中俊介くんの交代に、俄然、やる気になる岩崎誠！
　阪神タイガースの栄養ドリンク「勝ちたいんや！」を飲み、阪神タイガースの鉢巻を
少ない頭髪の上から、きりきりと結びあげる！

 



「よーーーし！　逆転は、これからだ！」
　１１３億円と、８億円の戦いは、「横浜VS阪神」みたいだぞ。岩崎誠が、横浜ベイス
ターズだ。

　それでも、さっそく世紀の出目悪い男・込山勉くんが、得意技を披露！
　いきなり、スリの銀次の当たり年にぶつかり、お金を奪われまくる。
　あっという間に、１０億円のお金を奪われ、持ち金０円になって、さらにミニボン
ビーに数１００万円程度のお金で、どんどん物件を失っていく。

 



　これは、大逆転もあるか？と、おもわぜたが、さすがに田中俊介くんが残した総資産
１１３億円は、少々減っても、ビクともしないし、３月の決算ともなると、お金をもえ
らえてしまうので、物件を買いまくる。

　午後９時。明日も、テスト・プレイがあるということで、時間切れ！
　田中俊介くんのデータを引き継いだ込山勉くんが、圧勝！
　あとは、ほぼおなじ。

　午後１０時。帰宅。
　さっそく、きょう出たチューニングの直しに着手。
『西日本編』自体には、大きな問題点、まったく無し！
　この時期に、すごいことだよ！
　だいたい、いまの時期に、川田忠之くん、込山勉くん、小坂晃弘くん、田中俊介くん
の４人が、東京に来れること自体が、順調な証拠だ。
　ふつう今頃は、札幌から一歩も動けず、徹夜の連続なはずだ。

　柴尾英令くんが「札幌のスタッフで、土・日も出勤しないといけなくなっているとこ
ろはどこですか？」
「グラフィック班が、土・日も出ていますね！」
「あっ！　オレのせいか！？」と、土居ちゃん。
「あっ、いや、その…」と、川田忠之くんがあわてる。
「川田忠之くん！　土居ちゃんに遅いなら、遅いと、はっきり言っておいたほうがいい
よ！」
　どうやら、今回の『桃太郎電鉄１２〜西日本編〜』で遅れているのは、土居ちゃんの
絵だけのようだ、わっはっはっは！

　そんなわけで、明日、明後日のテスト・プレイには、土居ちゃんは欠席。