6月20日(金)

 少しでも、睡眠時間を取らないと。
 必死に、二度寝、三度寝。
 もうぶっ通しで、8時間とか、10時間眠れるようなことは、無くなってしま
ったねえ!

 午前9時。『桃太郎電鉄12〜西日本編』の手直し作業。
 ある雑誌に頼まれたエッセイも清書。
 掲載が確定したら、発表するね。

 午前11時30分。嫁と別行動で、渋谷へ。
 乗ったタクシーの運転手さんが、昭和28年から、タクシーの運転をしていて
いるというお婆ちゃん。50年だよ、50年。
 昔は、代々木公園のところから、富士山が見えたというような話をしてくれた
んだけど、まあ元気なお婆ちゃん。

「さっき、青山骨董通りまでお客さんを乗せたんだけどね。すごい大渋滞に巻き
込まれちゃってねえ!」
「へえ…」
「原因は、ベッカムさまですよ。ベッカムさま! ベッカムさまがどこかのお店
に来てたらしいんですよ。警察もいっぱい出ていて、大変やった!」
 70歳以上のお婆ちゃんが、ベッカムさまというのが、すごいよね。
「あたしゃあ、シュンスケのほうがいいけどね?」
 中村俊輔のことだよ〜〜〜!

 老いるというのは、本人の意識次第だってことだね。
 こういうお婆ちゃんがいることは、素晴らしい。

 午後12時。渋谷「ブックファースト」で、本を買ったあと、「マ・メゾン」
で、スープセット。
 ここのスープセットは、あったりなかったりする。
 きょうも一度は「ない」と言われたけど、あとであわてて「すみません。あり
ました」というので、もちろん注文。
 きょうのスープは、冷製のブロッコリーのスープ。

 このスープセットは本当においしい。 「マ・メゾン」で昼食の際には、ぜひスープセットを!  みんなで注文して、いつでもメニューに入るようにしたいものだ。  午後1時30分。帰宅。 『桃太郎電鉄12〜西日本編』の手直し作業。 『桃太郎電鉄12〜西日本編』の未決定原稿の執筆も。未決定原稿というのは、ゲ ーム製作が大詰めになってから書く原稿だ。  かなり大詰めが近づいている証拠。  ところで、『週刊モーニング』連載中の、いとう耐さんの『純喫茶のこりび』 がおもしろい。  単行本で、1巻と2巻を読んだ。  元・漫画評論家である私の観点から見ると、ヒットしない確率のシチュエーシ ョンばかり選んで描いているのではないかと思えるほどだ。  ヒット・パターンを無視してなお、あれだけのおもしろさを連発しているのだ から、尊敬の念を込めた上で、「素晴らしい才能を浪費する天才」と評してみた い。  では、どこがヒット・パターンから逸脱しているかというと…。 ・統一キャラクターがいないので、漫画がヒットしても、ポスターになるメイン  キャラクターがいない。 ・4コマ漫画なのに、劇画調。 ・お客さんにお尻を向けた登場人物が多すぎる。 ・漫画業界の楽屋落ちが多すぎる。 ・漫画家を志したことのある人にしかわからない、スクリーントーンのネタが、  定期的に入る。 ・お約束のギャグが少ない。 ・時事ネタが多いので、単行本が売れづらい。  まあ、これだけ困難に立ち向かってなお、あのボルテージで作品を描くのは、 大変なことだ。  相当、ギャグをたくさん作って、自分でボツにしないかぎり、あれほどの水準 の作品を作れないはずだ。  とくに、ネタが豊富だし、豆知識は多いし、ギャグのパターンも多彩。政治ネ タもいいし、政治家の似顔絵も似ている。  こんな苦しい漫画の描き方をする人は、相原コージくん以来だ。  しかも、ほとんどの読者には、この描き方が大変なことがまったくわからない。  いまさら作風を変えることはできないだろうから、がんばってくださいとしか 言いようが無い。  プロになる前に、「小池一夫塾」に来ていたら、いとう耐さんは、今ごろ大ヒ ットを連発する大先生になっていただろうになあ…。  センスは、最高にいい。  午後4時30分。読売広告の岩崎誠が来る。 「さくまサン! 血圧のほうが大丈夫ですか?」 「大丈夫じゃねえよ! 阪神のせいで! 阪神相手に13連敗だよ!」 「あははは。すみませーーーん!」 「誰のおかげで、今年、阪神は独走していると思っているんだ!」  もはや、言いがかりに過ぎないこともわかっている。  いよいよ、『桃太郎電鉄12〜西日本編』の発売が、見えて来たので、広告関係 を今後、どうして行ったらいいのかを、打ち合わせ。    午後6時。私、嫁、岩崎誠の3人で、神宮球場へ。  負けるとわかっていても、見に行くこのつらさ。  どうせ見に行かなくても、家にいたら、テレビで観てしまうのだから、球場に 来たほうが早い。  なにしろ、球場まで歩いて5分なのだから。  なかよく3人とも、崎陽軒のシウマイ弁当を買って、観戦。  最下位のチームにふさわしく、スタンドはガラガラ。  3席なのに、6席分に3人で座っても、最後まで私たちが奪った席には誰も来 なかったので、快適! 気温もちょうど、暑くもなく、寒くもなく。  寒いのは、横浜ベイスターズの打線だけ!  テケテンテンテン…。おあとがよろしいようで…。  …としか、言いようがない。 「過渡期…」、「過渡期…」と、ひたすらつぶやく。

 説教親父・岩崎誠が、「何であそこでエラーするかな?」、「ええっ? 送り バントしないの? 信じられなーい!」、「ここは、歩かせたほうがいいでしょ う! ええっ!? 勝負しちゃうの!」、「ああ! 何? あの中途半端なバッ ティングは〜!」、「ほかにもう代打いないの?」、「ダメだよ、そこでダブル プレーは!」と必死に、横浜ベイスターズ寄りの声援をしてくれるのだけれど、 ダメなときは、ダメ。

 横浜ベイスターズの浮上は、村田選手の三振の数が減る頃に、開花するはず。  いまは種まきから、やっと芽が出るか出ないかの時期、踏まれて、踏まれて、 それでも大輪の花を咲かせるか?  横浜ベイスターズのファンは、いくらでも待つ。  試合は、3−2で負け。  本当に今シーズンは、1点差の負け試合が多い。  この1点差の負けが、反転すれば、相当違った展開になるはず。  今は、膿をいっぱい出し切る時期だ。  午後9時30分。帰宅。 『桃太郎電鉄12〜西日本編』の未決定原稿を執筆。  明日も、神宮球場に出勤。

 

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