5月31日(土)

 午前7時。昨日の『桃太郎電鉄12(仮)〜地方編』のテスト・プレイで出た問
題点をVAIOにメモる。
 といっても、問題点は少ない。
 それでも例によって、文句言いの井沢どんすけが、まったく仕様を変更しない
といけないような問題点をひとつ、ふたつ、投げかける。
 くそっ。カードのつかい方を覚えられない井沢どんすけのためを思って、仕様
を変更してあげたのに、井沢どんすけに否定されるとは!

 そういえば、台風はどこに行ったんだろう。
 昨日から、テレビ画面から流れるものは、『桃太郎電鉄12(仮)〜地方編』だ
けだから、世間の情報にまったく疎くなっている。

 鎌倉は、雨と風が激しい。

 午前10時。
 今朝、午前4時過ぎまでプレイして、その後『週刊少年ジャンプ』の黄金時代
の話に盛り上がったらしい、いまだ少年時代の大人たちを起こす。

 ええっ!?
 何だって? 友清哲くん、ほんとか?
 もう一度言ってくれ!
 頼むから、嘘だと言ってくれ!

 昨日、あれからもコイズミリュウジが独走して、2位に100億円以上の差を
つけて、優勝したってえええええええっ!?

 ガガ〜〜〜ン! ガガ〜〜〜ン! ガガ〜〜〜ン! ガガ〜〜〜ン!
 ガガ〜〜〜ン! ガガ〜〜〜ン! ガガ〜〜〜ン! ガガ〜〜〜ン!

 あの日本一桃鉄が下手な男・コイズミリュウジが優勝したってことは、戦略性
がゼロ!と判定されたようなものじゃないか!
 やり直しだ! 発売延期だ!

 …というギャグは、おいといて。

 あの桃鉄師範代・柴尾英令くんを破った男として、今年いちばん脚光を浴びた
友清哲くんの名声があっという間に消えた。
 それはまるで昨年暮れ、彗星のようにブラウン管に現れて、ルコ・クロコップ
に負けたボブ・サップのようだ。

 井沢どんすけの敗戦は…、まあ、当然の帰結というやつである。
 もっと、井沢どんすけお得意の自暴自棄劇場が見たかった。

 武田学くんの敗戦も、元ハドソン勤務だったことを考えると、毎年日本プロ野
球界に鳴り物入りで来日して、記者会見の席で「30本塁打、3割で、優勝に貢
献したい」と言いながら、日本の変化球投手のコントロールについていけなかっ
た外国人選手のようだ。
 このままで終わりたくはないだろうが…。

 しかし、コイズミリュウジの勝利をいったい何にたとえればいいのか。

 操縦不能! 垂直落下の飛行機で、たったひとり助かった人のドキュメントと
いうか、いまだに見つからないアフガンのビン・ラディンというか、先日の横浜
ベイスターズの中村捕手の1試合3ホームランというか…。
 実は、面倒なので何にもたとえたくもないのが、本音である。

 コイズミリュウジが勝ったことは、みんなで忘れよう。あっはっはっは!

 午前10時30分。暴風雨のなか、長谷駅から、江ノ電に乗車する。私、嫁、
井沢どんすけ、コイズミリュウジ、武田学くん、友清哲くん。

 午前11時。鎌倉駅前の「ヲガタ珈琲店」へ。  早くも、菅沼真理(通称:すがねまチャン)さんが到着していた。  すがねまチャンは、『桃鉄鎌倉決戦』に参加するのではなく、鎌倉の家のLA Nケーブルを設置してもらうために来ている。  ほどなく、柿添尚弘くんが到着。  しばらくして、読売広告の岩崎誠、鴻池元良くんが到着。  ますます雨は激しくなって来た。 『桃鉄鎌倉決戦』の嵐の前の静けさではない。  すでに嵐の真っ只中である。  午前11時30分。全員揃って、このところ鎌倉ではいちばんお気に入りの魚 料理のお店「仲の坂」へ。  基本的に定食屋さんだから、値段もそんなに高くない。  ただお刺身がめっぽうおいしいですよ。  メンバーは、私、嫁、岩崎誠、井沢どんすけ、柿添尚弘くん、すがねまチャ ン、鴻池元良くん、コイズミリュウジ、武田学くん、友清哲くんの10人。  台風のなか、こんなに人数が揃うか?  まるで草野球チームの宴会みたいだ。  でも外は、豪雨。

 ぶり定食、あじの刺身定食、カレイの焼き魚定食、イカのお刺身などを注文し て、みんなでつつき合うことに。  このお店のイカは、いつも甘くて新鮮。  食後、鎌倉駅前にまったくタクシーがいないので、江ノ電に乗って、長谷駅 へ。 ほんの少し、雨は小降りになって来た。  午後1時。鎌倉長谷の家にて、『桃太郎電鉄12(仮)〜地方編』の『全国編』 のテスト・プレイ開始!  まずは出場メンバーの紹介!  岩崎誠! 「逆転の阪神!」と叫びながら、負けていても、絶対に勝負を捨てない男。  欠点は、『桃鉄』プレイ中に勝とうと努力しないやつがいると、説教する。  いじわる系カードの達人。  井沢どんすけ!  35歳にして、お母さんに洋服を選んでもらっているという噂が一人歩きして いる男。『デジモン』、『ファイヤーエンブレム外伝』の原作者。その印税で、 六本木ヒルズの最上階を購入予定(嘘)。  進行系、便利系カードの素人。  鴻池元良!  そのお坊っちゃま風というか、パタリロ風の風貌から、あの鴻池財閥の御曹司 では?と思いきや、まったく縁がないことが判明。伊賀上野出身から、忍者の末 裔説も出たが、あんな太った忍者はいないと一蹴される。本人曰く「これは、着 ぐるみの変装で、太っているように見せているだけですよ!」  サイコロの出目の悪さには、定評あり。  柿添尚弘!  元・電通マン。現・ソネット勤務。そのエキゾチックな風貌から、誰もが沖縄 出身と信じて疑わないが、実は東京生まれの東京育ち。『桃鉄』の上手さには定 評があるが、さくまあきらに「華のない勝ち方をする男」とレッテルを貼られる。  試合中、「ほうほうほう…。へえへえへえ…、あっ、なるほど!」と言いなが ら、まったく違う行動を取る。  しかし、さすがの鎌倉の部屋も、10人がひしめき合うと、壮観!と思う前に、 ちょっと不気味。  修学旅行の大部屋の夜の枕投げ直前というか…。  江ノ島の夏の海岸の芋洗い状態というか…。  明治維新の池田屋で新撰組に襲われる前の長州の志士たちのようでもある。あ とで死ぬんかい。

 引き続き、試合開始前の各選手の抱負を記しておく。  みなさん、予想通りの答えですけどね。  岩崎誠「当然、このメンバーでは負けられないでしょう! 阪神タイガース快 進撃の勢いのまま優勝しますよ!」  鴻池元良くん「ボク、優勝ですよ!」  柿添尚弘くん「華がないけど、最後は勝ちます!」  井沢どんすけ「昨日の負けが信じられないので、きょうは本当の自分を試して みたいと思います。井沢どんすけとは何なのかを問いたい!?」  井沢どんすけは、本当に受けを狙う発言しかいない。  この男は、自分を落としてでも、笑いを取りたがる。  しかし、井沢どんすけは早くも、名前入力の段階で、自分の名前をあろうこと か「どんけつ社長」と入力する失態を演じて爆笑を得る。 「井沢どんすけ、わざとらしいなあ!」 「えへえへえへっ。わざとじゃないですよ!」 「自分から、ドンケツと入力するようじゃ、すでに負けを認めたようなもんだ」 「えへえへえへっ。そうですよねえ!」  その脇で「いわさき一番」と入力する岩崎誠は、業腹である。  最初の目的地は、四国松山!  昨日の『地方編』対決と違って、きょうは目的地の地名も書ける。  お互いを牽制し、ののしり合いながら、東海道から、中山道から近畿地方に乗 り込む、各選手。  しかし、10月!  悪徳代理店男・岩崎誠が、いきなりとびちりカードをつかった!  今回、とびちりカードは、うんちの数を増量したから、前よりも、強力!  関西地方じゅうに、うんちをばら撒いた!  ぷりぷり ぷりりーーーん!  ぷりぷり ぷりりーーーん!  ぷりぷり ぷりりーーーん!  ほとんどのプレイヤーが関西地方にいたため、全員が大阪を越えることができ なくなっってしまった。  これがほんとの雪隠(せっちん)づめ!  とびちりカードをつかった、岩崎誠も! 「岩崎誠! 自分の位置を考えて、とびちりカードをつかえよな!」 「はっはっは。自分の近くにほかの社長さんがいたら、たしかに自分の近くにも うんちが落ちて来ますよね!」  しかし、平均年齢30数歳の男たちが、「うんち!」、「うんち!」、「うん ちは、いつ消えるんだ!」、「うわあああっ、この先もうんちだよ!」と、大合 唱する様は、観光地でゲハゲハ下品な笑い声を発するおばちゃんたちとたいして 変わらない。  けっきょく誰も松山に到着できないまま、1年目の決算を迎える。  収益額のトップは、井沢どんすけ! 3700万円。  おっと、同額で柿添尚弘くんも、3700万円なのに、井沢どんすけの下の段 に名前を載せられる! 早くも同率1位ながらコンピュータに下位に表示される 華の無い男・柿添尚弘くんであった。  総資産のランキングは、以下の通り!  1位柿添尚弘 1億4350万円  2位井沢どんすけ  3位鴻池元良  4位岩崎誠  おっと、華の無い男・柿添尚弘くんが首位だ。  でもすぐほかの人に首位を奪われ、1年目は柿添尚弘くんが首位だったことを 覚えている人はいなくなってしまうのだろう。  2年目に突入!  最初の目的地・松山には、岩崎誠が到着。  貧乏神は、鴻池元良くんへ。  次の目的地は、新宮!  おお、なんと、井沢どんすけが新宮に到着。 「えへえへえへっ。ボクの時代が来ましたよ!」 「井沢どんすけサン、昨日のボクと、2日続けてどっこいズの時代にしましょ う!」と、コイズミリュウジが声援を送る。 「えへえへえへっ。いやあ、それは難しいなあ」と、早くも井沢どんすけ、弱 気。  2年目の決算!  収益額の1位は、井沢どんすけ。  総資産の1位も、井沢どんすけ!  おいおい、昨日のコイズミリュウジの優勝に続き、井沢どんすけまで優勝した ら、チューニングのやり直し、ゲームの発売延期だぞ!  2位に岩崎誠が浮上。  次の目的地は、北海道の帯広!  冬の日本海を強引に突き進んだ鴻池元良くんが帯広に到着! 「ボクだけまだ目的地に入ってませんね!」と、柿添尚弘くん。  やっぱり華がない…。 3年目の決算。  井沢どんすけが1位。  柿添尚弘くん、2位。  またしても華の無い男・柿添尚弘くんが2位に浮上しているのに、目立たな い。 井沢どんすけという予想外の男が首位に立っているので、話題は井沢どん すけが独占だ!  しかし、おまたせしました!  きょうのハイライトのお時間がやってまいりました!  決算の前の3月、貧乏神は井沢どんすけのもとに。  そして、4月!  いきなり井沢どんすけの貧乏神が、ゲスト・ボンビーに変身!  パチパチパチパチパチッ! 「やったあ!」 「出たあ!」 「やっぱり井沢どんすけさんが、最初にゲスト・ボンビー喰らうんだあ!」 「ひ〜〜〜、カンベンしてくれよ〜〜〜!」 「井沢どんすけサン、早くゲスト・ボンビー見たいって言ってたじゃないですか あ!」 「見たいって言ったけどさあ、自分で見たくないよ〜!」  まだゲスト・ボンビーの曲は、ロムに入っていないので、池毅(いけたけし) さんが作曲してくれたCDを持って来ているので、イベントにあわせて、CDを 鳴らすことにした。 「格好いい曲だあ!」 「格好いい曲じゃないですよ!」と、井沢どんすけ。 「イベントのイメージに合ってるなあ!」 「合ってないよ〜!」 「ベース・ラインと、イベントのメッセージが合ってますよねえ!」 「はああああああぁぁぁぁぁ〜!」  4年目の決算。 1位・井沢どんすけ 2位・鴻池元良  まだ、井沢どんすけが首位だ!  しぶとい、井沢どんすけ。  ここで『桃太郎電鉄12(仮)〜地方編』の早耳情報。    今回のゲスト・ボンビーは、ゲスト・ボンビーを喰らっている人だけでなく、 近くにいたプレイヤーににまで被害が及ぶ。  今回、井沢どんすけのせいで、柿添尚弘くんが、巻き添えをくらった。  以後、ずっと柿添尚弘くんは、「巻き添えクン」と呼ばれるようになってしま った。  そのくらいインパクトのあるやつなのだ。今度のゲスト・ボンビーは!  ああ! ゲスト・ボンビーが貧乏神に戻ってしまった。  ゲスト・ボンビーの攻撃でボロボロになりながらもなお、必死に首位を守る井 沢どんすけ!  まさか、2夜連続で、どっこいズが勝利という人類最大の汚点の日を迎えてし まうのだろうか? 地球最後の日は近し。  しかし6年目も、ダントツで1位なのだ、井沢どんすけが! 『ディープ・インパクト』か、『アルマゲドン』か!?  人類滅亡の日は近い。  5月30日の勝利・コイズミリュウジ。  5月31日の勝利・井沢どんすけ。  そんなスポーツ紙の見出しは見たくない!  少しずつ、ほかの選手にもあせりが見え始める。 「なぜ、オレが井沢どんすけごときに負けなければいけないのだ!?」 「スピードをマッハにすると、間違って冬の赤マスにズボッと入ってしまうよう なへたっぴーな井沢どんすけサンに、オレたちは負けてしまうのか?」 「目的地直前で3進めるカードを持っているのに、一向につかおうとしない井沢 どんすけよりも、自分は弱いのか?」  午後5時。台風のために不通になっていた横須賀線のために、到着が遅れた 「桃鉄師範代」柴尾英令くんが、到着。  この柴尾英令くんの到着をきっかけに、ついに派手なシーンの連続となる。  まるで『桃太郎電鉄12(仮)〜地方編』の演出家が登場するのを待って、花 火の打ち上げが始まったかのようだ。  7年目11月。  ついに、ついに、ついに、ついに、ついに、ついに、ついに、ついに、ついに、  ついに、ついに、ついに、ついに、ついに、ついに、ついに、ついに、ついに、  ついに、ついに、ついに、ついに、ついに、ついに、ついに、ついに、ついに、  ついに、ついに、ついに、来た! 来た! 来た! 来た! 来た! 来た!  来た! 来た! 来た! 来た! 来た! 来た! 来た! 来た! 来た!   来た! 来た! 来た! 来た! 来た! 来た!  井沢どんすけについていたた貧乏神が、キングボンビーに変身!  7年間で初めて変身したキングボンビーが、井沢どんすけに!  グググググッと、巨大化したキングボンビーが、井沢どんすけに!  鴻池元良くんにそっくりなキングボンビーが、井沢どんすけに!  全員で拍手! パチパチパチパチパチッ! ワーーー! ワーーー!  パチパチパチパチパチッ! ワーーー! ワーーー!  パチパチパチパチパチッ! ワーーー! ワーーー!  パチパチパチパチパチッ! ワーーー! ワーーー! 「ひ〜〜〜〜〜〜!」  いつもの井沢どんすけの悲鳴だ。  井沢どんすけのこの負けっぷりは、まさに芸術的だ。  7年目の決算!  井沢どんすけは、何位まで転落するのか!?  注目の総資産、発表!  な、な、なんと、井沢どんすけ、まだ首位。  しぶと〜〜〜い!  しかし20億円の差があった2位との差は、4億円までに縮まっていた。 「ふわあああああぁぁぁ…。もうダメだ。終わった…」  首をうなだれる井沢どんすけ。  この時点でも、まだ貧乏神は井沢どんすけについている。 「もう1回、貧乏神がキングボンビーに変身すれば、井沢どんすけサンも本当に お終いだぞ!」 「ゲスト・ボンビーに変身でもいいぞ!」 「あと少し! あと少し! がんばれ、貧乏神!」  8年目4月。  みんなの期待を一身に集めて、また井沢どんすけの貧乏神が、ゲスト・ボンビ ーに変身!  パチパチパチパチパチッ! ワーーー! ワーーー!  パチパチパチパチパチッ! ワーーー! ワーーー!  パチパチパチパチパチッ! ワーーー! ワーーー!  どういう風に井沢どんすけが転落したのかは、ゲスト・ボンビーは新キャラだ けに、いまの段階では具体的にいえないのだが、とにかく井沢どんすけは、すべ ての物件を失った。  ♪チャ〜〜〜ラーラーララ、チャーラララッ。  倒産したときに流れるおなじみのあの曲『泣き落としのバラード』が響き渡る。  しかし、「友情」「努力」「勝利」の『週刊少年ジャンプ』不動の三原則で幼 年期をすごした井沢どんすけは、最後の力を振り絞って、反撃する。  起死回生とばかりに、☆印カード売り場に入り、残りのお金をすべてつかっ て、急行周遊カード2枚、ブロックカード1枚を買った!  必死だ! 井沢どんすけ!  立ち上がれ! 井沢どんすけ!  漫画の主人公は、つねに最後には勝つ!  しかし、現実の世界では、ヒーローも必ず勝つとはかぎらない。  井沢どんすけにとどめを刺すのはいまだと、悪の軍団が襲い掛かる!  鴻池元良くんが、豪速球カードをつかい、井沢どんすけのブロックカードを割 る! ひどい!  岩崎誠がハッカードをつかい、ウィルスを井沢どんすけに送り込む!  井沢どんすけ、急行周遊カードを食べられる。むごい!  次の月も、ウィルスに最後の急行周遊カードを食べられる…。 「ひ〜〜〜、急行周遊カード、1回しか、つかえなかった…。あれだけお金つか ったのに…」  物件もなく、カードもなく、名もなく、美しく…。  もうどうしていいかわからなくなっている井沢どんすけは、一獲千金カードを 7枚買う。  一獲千金カードは、その名の通り、少ない確率で桁外れのお金がもらえる新登 場のカードだ。どんなに最下位でも持ち金がマイナスでなければ、優勝できるよ うなすさまじいカードだ。  しかも、1ターンで、何枚でもつかえる。  超大型宝くじカードのようなものだ。  井沢どんすけ、一獲千金カードをその場で、7枚つかい切る!  つかい切ったということは、大金は入らなかった…。  完全に運に見放される。  7年目の決算!  1位・岩崎誠  2位・井沢どんすけ  ついに、井沢どんすけ、転落!  鎌倉いざわ幕府は、倒れた。  時代は、応仁の乱に突入する。  あと3年、ここから壮絶なデッドヒートが繰り広げられた。 「岩崎誠さんが、トップなんじゃないの?」 「いまは鴻池元良くんかも! ハワイに入ったからなあ!」 「ひょっとしたら、井沢どんすけサンでは?」 「柿添尚弘くんの首位はないな…」  いくつかの目的地を経て、目的地は、青森。  もはや死んだと思われた井沢どんすけが、最後の力をふりしぼって、青森に入 る! 一度転落すると、自暴自棄な行動を取るはずの井沢どんすけが粘る! ど うした心境か? 再び、首位戦線に復帰。  8年目12月。  1位を走っていた岩崎誠の貧乏神が、ゲスト・ボンビーに変身!  これでもう、まったく1位が誰になるのかわからなくなった!  全員に1位のチャンスが!  あとは、誰が浮上するかではなく、誰が落ちて行くかだ!    持ち金マイナスに転じた柿添尚弘くんが、黄色マスに停まり、すぎやまこうい ち先生がモデルのカードの神様が降りてくる。  カードのもう1枚プレゼントだ!  しかし、もう1枚プレゼントで、キングデビルカードを引いて、轟沈!  華のない男・柿添尚弘くん、ひっそりと戦線離脱…。  この年はまた、スリの銀次の当たり年にぶつかり、全員のお金が次々に奪われ ていく。正直言って、『桃太郎電鉄11〜ブラックボンビー出現の巻!』のときの スリの銀次の当たり年のような手ぬるさではない!  物件駅以外のすべてのマスに登場するので、ご注意を!  9年目の決算! 1位・鴻池元良  9億 2位・岩崎誠   4億 3位・井沢どんすけ2億円 4位・柿添尚弘 ー7億円  9年目で、総資産わずか9億円の選手が1位とは、どういうことなんだ?と疑 問に思うことだろう?  今回のゲスト・ボンビーにその秘密があった。  今度のゲスト・ボンビーは、近くにいるプレイヤーにも、害を及ぼすというこ とは、すでに伝えたと思う。  ところが誰だったか忘れてしまったのだが、ぱろぷんてカードをつかったら、 目的地を取り囲むように集まることになった!という、あのイベントが発生した のだ。 「ぱろぷんてだよ、全員集合〜〜〜!」で、おなじみのあのイベントだ!  その直後、貧乏神がゲスト・ボンビーに変身した!  あとはいうまでもない。  全員が、ゲスト・ボンビーの攻撃を喰らった。  さらに追い討ちをかけるかのように、スリの銀次が襲い掛かる。 「もう、ほとんど持ち金ないんだから、スリの銀次も出てくるなよなあ!」と、 岩崎誠がぼやく。  首位が、わずか9億円。  もはや、次の目的地に到着したプレイヤーが、首位に立てる大混戦。  井沢どんすけにも再び首位の可能性が出て来たのだ。    9年目9月。  首位の鴻池元良くんが、キングボンビーを喰らう。  もうまったく誰が首位なのか、さっぱりわからない。  史上初の全員が、マイナスでフィニッシュ!か。  この緊張感に耐えられなくなっている井沢どんすけは、あいかわらず、☆印カ ード売り場に停まっては、一獲千金カードを買っては、儚(はかない)い夢に賭 ける。  しかし、効果無し。  ついに井沢どんすけ、やけくそゾーンに突入。  井沢どんすけ、自暴自棄劇場の開幕だ〜!  デビル派遣カードを岩崎誠に食らわす。 「ひどいよ〜、井沢さ〜〜〜ん!」 「えへえへえへっ。えへえへえへっ!」  岩崎誠、キングデビルカードで、轟沈寸前!  井沢どんすけの自暴自棄劇場は、まだ続く! 「えへえへえへっ。。もうダメだ。?(はてな)駅勝負だ〜〜〜!」 「何なんだ、その?駅勝負というのは!」 「わからない。えへえへえへっ!」  どうやら、?駅で何か起きないかな?と思っているだけのようだ。  そして、この史上空前の大混戦を制したのは、岩崎誠であった。  新型新車両イベントで、なんと、なんと、なんと、なんと、なんと、なんと、 なんと、なんと、なんと、なんと、なんと、なんと、なんと、なんと、なんと、 なんと、なんと、なんと、奇跡のオール6を達成したのだ! 「阪神パワーだ!」、「阪神パワーだ!」  岩崎誠、ガッツポーズで、興奮して、何度も「阪神パワーだ!」を連呼。  このあと、岩崎誠は、宝くカードでも、1億2000万円も獲得!  ゲーム終了。 1位・岩崎誠   24億3510万円 2位・鴻池元良   9億3440万円 3位・井沢どんすけ 5億4920万円 4位・柿添尚弘   3億7460万円 「いやあ、勝った、勝った!」と、喜ぶ岩崎誠。 「逆転の阪神ですから!」

 当然のように、負けたプレイヤーたちから、非難の声が上がる。 「岩崎さんは、単に新型車両でオール6を出しただけじゃないですか!」 「偶然勝っただけですよ!」 「総資産24億円は、新型車両の23億円と宝くじの1億円なだけじゃないです か!」 「何をいうんだよ。キングデビルカードにも耐えた上で、24億円残ったんだか ら、新型車両だけの収入じゃないんだから!」  ああでもない、こうでもないと、往生際の悪い選手たちの非難轟々は続く。  ただひとり、折れ線グラフを見て、悔やむ井沢どんすけ。 「あの頃はすごかったのになあ…!」  そして、華の無い男・柿添尚弘くんが、じつは総資産黒字で終了したことに気 づいた人は、いない…。  午後6時。鎌倉長谷駅の北側へ。  台風の影響か、ほとんどのお店が閉店している。  駅前のお店は、たしかお昼の段階で開いていたような気がするだけどなあ。  でも、とにかく鎌倉の大仏に向かう道の飲食店のほとんどは、閉まったまま。  駅まで戻り、長谷駅2Fの「麺屋 五徳」へ。  私、岩崎誠、柴尾英令くん、井沢どんすけ、柿添尚弘くん、鴻池元良くん、コ イズミリュウジ、武田学くん、友清哲くん。

 嫁とすがねまチャンは、北鎌倉へお買い物!  それぞれラーメンを注文して、餃子など頼む。  柴尾英令くんと、鉄板餃子は、よく似合う。  巻き添え尚弘くんと、青唐辛子の辛いラーメンもよく似合う。

 私は、こくまろ醤油ラーメン。  麺が太麺で、私の好きなタイプ。  鎌倉でまだお気に入りのラーメン屋さんがなかったので、このお店の出現はう れしい。何より、長谷駅の2Fという立地もいい。  午後7時。夕食をラーメン屋さんにしたのは、早く家に戻って、もう1戦プレ イしたいから!  超多忙、超売れっ子原作者、長者番付男(3年後)・井沢どんすけだけが、東 京に戻り、残る全員が、再び長谷の家へ。  岩崎誠、柿添尚弘くん、鴻池元良くん、友清哲くんの4人が、『地方編』を5 年プレイ。  またしても、1年目は柿添尚弘くんが首位に立ったようだけど、私も2戦連続 でメモを取る気力もないほど、疲れてしまったので、本当に柿添尚弘くんが首位 だったかも、忘れてしまった。  午後8時。嫁とすがねまチャンが帰ってくる。  すがねまチャンのお土産のスターバックス・コーヒーをみんなで飲む。 「井沢どんすけサン以外、全員残っているって、すごいですよね」と、すがねま チャン、あきれ返る。  あきれ返らないほうが、異常だと思う。

 午後9時。『地方編』を制したのが、またしても、岩崎誠だったことは覚えて いる。 「巨人VS阪神」戦の中継で、阪神が大逆転するのと、同時に岩崎誠が、バカづ きを始めて、大逆転したからだ! 「阪神と、おなじだ! 阪神と、おなじだ!」と、うかれまくる岩崎誠。  岩崎誠と、鴻池元良くんだけ、先に帰る。 「いまから帰れば、ちょうどプロ野球ニュースをはしごできる時間に家に着くの で、ここで失礼します」 「うーーーん。その気持ちわかるなあ」  午後10時。残った人たちも帰って、鎌倉の家には、私と、嫁と、すがねまチ ャンだけ。  がら〜〜〜んとしたリビング。  兵どもが、夢のあとだ。  疲れた。  間違いなく、疲れた。  桁外れに、疲れた…。  興奮が冷めなくて、寝付けない…。

 

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