5月30日(金)

 午前7時。目が覚めても、必死に二度寝、三度寝を試みる。
 きょうから、鎌倉で2日間、地獄のようなテスト・プレイを見ないといけない
ので、少しでも体力を復活させておかないと。

 午前11時30分。昨日、友清哲くんが行ったハンバーグのおいしいお店を、
柿添尚弘くんに先を越されたことが、悔しくて、行きたくなっている。
 でもきょうは鎌倉で、「ステーキのひとつも食わなきゃあ、長者番付に載るほ
ど忙しい俺様がテスト・プレイをやりたい気分にはならねーなー!」と、井沢ど
んすけがのたまうので(嘘)、お昼にハンバーグ、夜にステーキと、体重を維持
したい私にとっては、モンテカルロ・ラリーのように過酷な1日になってしまう。
 でも、噂のおいしいハンバーグを食べたい気持ちのほうが勝るに決まっている。
 行こうじゃないか!
 …と、決意した瞬間、どこからともなく、娘が現れるのはなぜだ!?
 風車の弥七でも、ここまで偶然に現れないぞ。
 うまいものを食べようとすると、うちの娘はなぜか、現れる。

 午後12時。家族3人で、五反田の「カサローエモ」へ。

 いきなりお店の前に「警告! 大田原牛は“感動”をお買いいただく牛肉です ので、お客様の常識に害があるかもしれません」と書いてある。  こういう風に、お客さんが食べる前に、お店側から口上を述べるのは、あまり 好きではない。いいお店ほど、何も先入観を与えず、お客さんの判断に委ねるも のだ。  ハンバーグ200グラムを注文する。3000円だ。  300グラムになると、4000円になる。  ハンバーグにこの値段は、相当おいしくないと絶賛ができないような気がする。 横浜ベイスターズのコックス選手が、だいぶヒットを打ち出したけど、昨年まで 大リーグの4番で、年棒3億円で獲得して来たと聞くと、もっと働いてくれなき ゃ!とおなじようなものだ。  でもハンバーグは、うまかった。  肉汁たっぷり、ご飯がおいしくなるお肉だ。  まさに「ぺろっ!」とたいらげてしまった。  どんなにおいしいハンバーグを食べても、胃がもたれる感じがするもんだけど、 まったく胃に負担がかからない。  300グラム食べたあとに、カレーライスを追加注文した友清哲くんの気持ち がわかるような気がする。

 とにかく、ふつうのハンバーグとはちょっと違う。  ふつうのハンバーグは、どこかしら、しっとりしているもんだけど、このハン バーグは、カリカリ感が強い!  まるで肉団子を食べているような食感だ。  柿添尚弘くんのときは、ちょっと焼きすぎな感じがしなくもないと言っていた けど、私は焦げ目が多いハンバーグが大好きなので、もっとカリカリでもよかっ た。  サラダのトマトも抜群にうまい。  サラダのレタスの上に、チーズが乗っているのもよかった。  とにかく味は、申し分ない。  ただ、ハンバーグに、ご飯に、サラダだけで、スープがついて来ない編成が気 になった。気になっただけで、ハンバーグのおいしさは、まったく揺らがない。  お水の味がちょっと、海洋深層水っぽいけど、ハンバーグのおいしさは、まっ たく揺らがない。  こと、ハンバーグに関しては、満点である。  あとは、お店の雰囲気と接客の点だけだろう。  このところ、かなりテレビでの露出度が高くなって来ているので、ちょっと大 丈夫かなあ?と心配になった。  いいお店が崩れる場合は、マスコミにちやほやされてダメになることが多いか らだ。ちょっとその兆しが垣間見えた。  こっちが「おいしい!」と叫ぶ前に、お店の人の講釈が多すぎる。  ちなみにこのお店が、いまマスコミにもてはやされているのは、ひとり6万円 のステーキのせいだ。  6万円! はい、しばらく、この値段に驚いてください!  6万円!  6万円!  ふう〜!  ため息はつき終えましたか?  いくら食べるものに関して、値段はいくらでもいいと思っている私でも、さす がにこの値段には、たじろぐ。  6万円出して、おいしくなかったら、6万円がもったいないし、もし、おいし かったら、もっと困る。毎月食べに来ないといけなくなるからだ。しかも、そん なときにかぎって、うちの娘が現れたら、1ヶ月に1回来たとしても、16万円 の出費になる。  16万円出したら、さすがの東京でも、2DKのマンションが借りられる。  iMacだって、1台買える。  伊賀上野とか、十津川なら、一戸建ての家が1年間借りられる。  誰か身近な人に、この6万円のステーキを食べてもらいたいのだが、もはやバ ブルは崩壊したあとだしなあ。でも、毎日1〜2人、この6万円のステーキを食 べに来る人がいるそうだ。  いったい、どんな人たちなのだろう。  とにかく、味はいい。  友清哲くんがおいしいといっていたカレーライスは、1000円だから食べて みたい。あとは立地のみだな。  私の家から品川方面に行く場合、天現寺の交差点に「プティ・ポワン」がある。  我が家の場合、「プティ・ポワン」を横目で見ながら、越えてまで行くお店か? という基準がある。このハードルを越えて、しょっちゅう行くのは至難の技だ。  もしこのお店が西麻布にあったら、1ヶ月に一度は間違いなくお店だろう。  午後1時。このまま品川駅から、鎌倉に向かえるというのが、このお店に来た 理由のひとつだったんだけど、大事なものを家に置き忘れてきたことに気づき、 いったん原宿の家まで戻ることに。  でもおかげで、あれこれ、ほかに忘れていた用事をすますことが出来た。  午後2時11分。嫁と、品川駅へ。  久里浜行き横須賀線に乗車。  どうも横須賀線は横揺れが激しくて、VAIOで仕事ができないし、本を読ん でいても気持ち悪くなる。  もう少し乗り心地のいい車両にならないかなあ。  スピードが速いだけに、無理をして走らせているんだろうけど、私の場合、新 幹線は500系でなく、700系を選んで乗るくらいなので、横須賀線の横揺れ はちょっとつらい。  午後3時20分。鎌倉駅で下車。  午後3時30分。鎌倉長谷の家へ。  しばらく、部屋の空気を入れ替えたり、仕事。  電話で、柴尾英令くんとあれこれ打ち合わせ。  仕事上で、困った問題が起きたときの柴尾英令くんの存在くらい、大きく感じ ることはない。ただでさえ、身体は大きいのだが…。  まるで『愛と誠』の蔵王権太のようである。ちっともホメ言葉になっていない。  午後5時。嫁と鎌倉駅へ。

 嫁と別行動。  小町通りで、雑貨屋さんを覗き、お香の専門店「鬼頭天薫堂」で、お香立てを 買う。  午後5時30分。鎌倉駅前の不二家へ。  きょうの『桃太郎電鉄12(仮)〜地方編』鎌倉決戦の参加者がすでに集まって いた。  メンバーを、紹介しよう。  井沢どんすけ!

 きょうの最年長、いまもお母さんに洋服を選んでもらっているとの噂有り。  集英社ジャンプグループをひとりで背負う原作者(一部、いやだいぶ誇張)。  コイズミリュウジ! 『週刊少年サンデー』の読者ページを担当するも「コイ ズミさんは、日本一『桃鉄』が下手なんですか?」というハガキが届いて、ショ ックを受けている。でも本当に下手。  武田学くん! 元・ハドソンで『桃太郎電鉄』の宣伝担当だっただけに、きょ うのメンバーのなかでは隠れ本命と呼ばれている。アリtoキリギリスの石塚義 之(ヅカッチ)くんに「男前!」というニックネームをちょうだいする。  友清哲くん! きょうの最年少。先日、「桃鉄師範代」と呼ばれる柴尾英令く んを破ったために、吉岡一門を破った宮本武蔵のように急に脚光を浴びている。  きょうは、お子ちゃまの笑顔・石川キンテツが欠場。  現在、北海道を旅行中だ。  どっこいズ(井沢どんすけ、すとろう小泉、石川キンテツ)が勢揃いしていな いことが、どう影響するのかが、楽しみ。  午後6時。「ステーキの1枚も食わなきゃ、テスト・プレイやってやんねーよ ー!」(嘘)と、のたまう井沢どんすけ大師匠のリクエストに答えて、小町通り の「マザーズ・オブ・鎌倉」へ。

 おいしい葉山牛を、ぺろりんちょ!  そういえば、うちのバカ娘が、北から南まで、「○○○牛」と名のついたお肉 を全部食べてみたいと、ふざけたことを言っていた。  白老牛、米沢牛、前沢牛、仙台牛、大田原牛、葉山牛、飛騨牛、近江牛、松阪 牛、伊賀牛、三田牛、讃岐牛、宮崎牛…、けっこうあるもんだな。

 肉を食べながらも、これから始まる「桃鉄鎌倉決戦」に対する豊富を語り合う。  当然、柴尾英令くんを破った友清哲くんVS3人の構図が出来上がっている。  しかし、きょうの演目は『地方編』である。  友清哲くんと、武田学くんは、見るのも初めて。  このハンデは、ふつうなら大きいが、まあ、井沢どんすけ、コイズミリュウジ が相手では、ハンデにもならないだろう。  午後8時。鎌倉長谷の家にて、『桃太郎電鉄12(仮)〜地方編』の『地方編』 をテスト・プレイ!

 のっけから、井沢どんすけ、コイズミリュウジのどっこいズ組が、必要以上に 友清哲くんを意識する。 「さすが、友清哲さん! 夏の間に赤マスが連続する地帯を通り抜けるもんなあ!」 (ふつう、そうするだろう!) 「おお! 友清くんが刀狩りカードがつかってる! もうこっちは負けてる気分 ですよ!」 (見事な負け根性だ!) 「アンチ友清同盟を結成しましょう、井沢どんすけサン!」 (この言葉は聞き飽きたぞ!) 「ああ〜〜〜! 風が吹いている! 友清哲さんに!」 「井沢どんすけさんに逆風が吹いてますよ!」 (おなじみの展開だ!)  しかし、奇跡は起こった!  私は信じられないものを見た!  1年目12月。  必ず、最初の目的地に入る井沢どんすけが不調!  代わりに、あの日本一桃鉄が下手なコイズミリュウジが入ったのだ〜!  しかも! しかも! しかも!  そのまま3月の決算で、コイズミリュウジ、1年目首位。 「記念撮影、取りたいっすよ!」 「いったい、どうしたんだ! コイズミリュウジ!」 「早くこのまま30年が終わってほしいっすよ!」 「まだ29年あるよ!」  しかし、奇跡は再び起こった!  私は信じられないものを見た!  コイズミリュウジが、連続で目的地に到着したのだ!  コイズミリュウジが連続で?  ひょっとして、この光景を見たのは初めてでは? 「どうしたんだよ? コイズミリュウジ! いつもと全然違うじゃないか!」 「足を引っ張るやつ(石川キンテツ)がいないと、やりやすいんですよ!」  確かに、いつも石川キンテツは、期せずして、コイズミリュウジの勝利を潰す 行動が多かった。  図に乗るコイズミリュウジ。  しかし、3つめの目的地で、いよいよ今大会の本命・友清哲くん、到着! 「うわあ! 友清哲さんが出て来た〜〜〜!」 「友清哲さん、すごいなあ! 目的地に入っても冷静だなあ」 「友清哲さん、目的地に入ったのに、ガッツポーズもしないもんなあ!」  井沢どんすけとコイズミリュウジがふだん、どんな戦い方をしているか察する ことができると思う。  しかし、奇跡は三度起こった!  私は信じられないものを見た!  またコイズミリュウジが、ゴールしたのだ!  4つの目的地のうち、3つをコイズミリュウジが到着するなんて!  それでも、どっこいズらしい光景も随所に垣間見える。 「みんな、新しい目的地が表示されると、黙るのやめてくれないか?」 「いやあ、聞いたこともない町ばかりなんで…」 「地方編だからなあ!」  ちなみに、この『地方編』を現時点で、この世でいちばん多くプレイしている のは、コイズミリュウジなのである。  しかし、それが序盤リードの原因になるとは思えないような試合っぷりだ。 「困ったなあ! コイズミリュウジが首位ってことは、『地方編』のゲーム・バ ランスはよくないってことになっちゃうよ!」 「いやあ! 『週刊少年サンデー』の読者にまで『桃鉄が下手』といわれたのが ショックで、きょうに賭けて来たんですよ! 足を引っ張る石川キンテツもいな いし!」  2年目も、コイズミリュウジが首位。  いったい、どういうことなんだ!?  悪夢を見ているようだ。  井沢どんすけ、ついに目的地に到着!  ガッツ・ポーズ!  しかし、すぐさま、またコイズミリュウジが目的地に入る。 「コイズミリュウジが特急周遊カードとか、新幹線カードを持っているのを初め て見たような気がするなあ」  またコイズミリュウジが目的地に入る。 「すごいじゃないか、コイズミリュウジ!」 「今までのオレとはちょっと…」  このあとの言葉をいえないところがビビリな性格らしいところだ。  4年目終了。  まだコイズミリュウジ首位。   しかし収益額では、友清哲くんが首位に。  ジリッジリッと、友清哲くんが追い上げる。  しかし、またコイズミリュウジが目的地に入る。  変だ。まったくカードのつかい方が間違っているのに。 「えへえへえへっ。コイズミリュウジ、死ぬんじゃないか?」 「いやあ、石川キンテツがいないからですよ!」  お笑いコンビの2人組は仲が悪いというが、コイズミリュウジと石川キンテツ のふたりも、そのようだ!?  5年目。  いまだコイズミリュウジ、首位。  これがコイズミリュウジの本当の実力なのか?  いままでのコイズミリュウジは偽物か? 「コイズミリュウジ! いつも柴尾英令くんの前で見せていたおどおどした態度 は、演技だったのか?」 「い、いやあ、そ、そ、そんなことないですよ。ビビりますけど…」  コイズミリュウジの独走に、井沢どんすけのお約束の珍プレイが出ない。  6年目も、コイズミリュウジが首位に。  次第に、2位友清哲くんとの差が開いて行くではないか! 「コイズミリュウジが、物件を買いまくる姿を見るのなんて、初めてだぞ!」 「コイズミリュウジが、都市を独占してるよ!」 「変だなあ、カードのつかい方は、あいかわらず下手なのになあ…」  おお! 井沢どんすけがようやく珍プレイを見せてくれた。  目的地まで、あと1か3が出ればいい位置に来た井沢どんすけ、後ろからひた ひた追いかけてきた武田学くんに、狼狽し、何を思ったか、新幹線カードをつか う! が〜〜〜ん! 入れない! 「そ、そ、そんな…」  それでも次のターン、井沢どんすけはもう一度新幹線カードをつかう!  が〜〜〜ん! 入れない! 「あああああ…」  崩れ落ちる井沢どんすけ! 「井沢どんすけサン、1億円の無駄遣いですよ!」  あげくに、武田学くんに入られた。  コイズミリュウジ、8年目も首位。  持ち金13億円。 「コイズミリュウジが総資産13億円というのは見たことがあるけど、持ち金で、 13億円も持っているところを初めてみたよ!」 「あ〜、あ〜、3億円もする特急周遊カードを買っているよ〜!」  井沢どんすけ、早くも敗北宣言。 「コイズミリュウジには、神が宿ってる!」  このまま、コイズミリュウジは独走してしまうのか?  しかし、まだ一度もキングボンビーが登場していないのだ。  もはや8年目に突入したというのに。  キングボンビーは、あくまで貧乏神が確率で変身するものだから、何億分の1 の確率で、99年間ずっと変身しないことも可能は、可能だ。  それにしても、変身しない。  しかも、貧乏神がコイズミリュウジについても、すぐほかの人に貧乏神が移る。  まさに、まったく見たことのない光景の連続だ!  午前1時だ。  私はもう寝ないといけない。  みんなのように若くない。  しかも、明日は新しいテスト・プレイ参加者が、3人来る。  見続けたいが、身体の疲労を考えないと。  うーーーん。この信じられない試合展開の結果は、明日につづく…。

 

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