5月24日(土)

 午前8時。iモード・ゲームの毎月エッセイ「さくま旅行記」を執筆。
 今月は、広島の上下(じょうげ)を取り上げてみた。
 上下を取材したのは、もう1年前になるんだなあ。

 午後12時。大阪から、読売広告の岩崎誠と、柴尾英令くんが、京都のマンシ
ョンに到着。
「ふひーー! ふひーー!」
 何だ? 迫力のないダーススベーダ―のような呼吸音は?
 柴尾英令くんだ。

「ふひーー! いやあ、昨日あのあと、二次会に行けないくらい酔っ払っちゃっ
て。ふひーー! ふひーー!」
「柴尾英令くん、お肉食べてるときから、ハイテンションだったもんなあ!」
「ふひーー! ホテルで頭痛薬、もらったほどですからね」
「じゃあ、いまから食べるのは、とんかつより、お豆腐のほうがいいよね?」
「ふひーー! とんかつでしょう!」
「無敵だ!」

 予想はしていたけど、昨日、あれだけ牛肉を食べて、きょうもいきなり豚を食
べるか?
「評判のいいとんかつ屋」という言葉に、しっかり反応していた。

 午後12時。そんなわけで、西陣のとんかつ屋「大江戸」へ。

 おや? とんかつ屋さんなのに、のれんをくぐると、通路の両側に、金魚や鯉 が泳いでいるではないか。  料亭かと思えるようなしつらいだ。  名のあるデザイナーの建築なのかもしれない。  でも、お店に入ってみると、ごくふつうにきれいなお店。 「ビール!」 「ビール!」 「ウーロン茶!」  ええっ? 柴尾英令くんが、ウーロン茶? 「いやあ。二日酔いで、水分がほしくて、ほしくて」 「これは異常事態だ!」  でも、柴尾英令くんの注文は、いちばん量の多い「5月のスペシャル定食」。

 私と嫁は、大江戸定食。  岩崎誠は、ミックス弁当。  ヤサカタクシーの宮本さんは、へれかつ定食。

 しかも、昨日あれだけお肉を食べてしまったので、みんなちょっととんかつを 食べては、「柴尾くん!」、「柴尾さん!」と、かつを柴尾英令くんに勧める。 「うまっ!」  断らずに、食べておいしいと感じられる柴尾英令くんは、大胆ステーキ!  鴨ロースが、むちゃくちゃうまかった。  マヨネーズをつけて、からしをまざて、鴨をくるくるっと巻いて食べれば、お いしいなり。  この鴨ロースは、毒だ。  必死にみんなに配り、摂取量を減らす。  昨日、激しく体重が増加しただけに、ここで点を与えてはいけない。

 とんかつもおいしいよ〜!  たれが甘くて、かつの揚がり方も非常にいい。  しかしとんかつのおいしいお店を見つけても、身体のことを思うと、足繁く通 ってはいけないんで、困るんだよなあ。

 でも京都なのに、何で「大江戸」という名前なんだ。  嫁がお店の人に聞いたら、とんかつは東京(江戸)の食べ物のイメージだから だそうだ。  柴尾英令くんもおなじことを言っていた。  北九州から、上京して来て、東京には、とんかつ屋さんが多いなあと感じたそ うだ。この辺のことになると、ずっと東京生まれの東京育ちの人間には、分析力 がない。  とにかく、このお店は、評判どおり、うまいっ! <私がもう一度行くためのメモ> 「大江戸」 場所:京都市上京区千本通笹屋町東 時間:11:30〜21:00 月曜定休 電話:075−441−2022  食後、「大江戸」の斜め前のアイスクリーム屋さんへ。  実は、きょう最初に行こうと思っていたのは、このアイスクリーム屋さんのほ う。お店の名前が「ちべた」!  アイスクリーム屋さんの名前で、「ちべた」って、最高のネーミングだと思わ ない? 「ちべたい!」

 しかも、このお店、さっき食べたとんかつ屋さんが、デザートに出していたア イスクリームがあまりにもおいしいと評判になり、独立させたのだ。  だから、「大江戸」で食べたきなこアイスは、実においしかった。  ヤサカタクシーの宮本さんが食べたのは、トマトアイス。  みんなで、このトマトアイスをつついたけど、本当にトマト寄りの味。  実においしかった。  そんなわけで、「ちべた」。  びわシャーベットとか、ひやしあめアイスとか、いちごミルク味とか、それぞ れ注文して、少しずつ分け合う。

 このお店の定番は「バニラ」「抹茶」「ラムレーズン」らしいけど、ほかにも 変り種のアイスクリームが多い。  冬は、キウイ、みかん、りんご…。  春は、いちご。  夏は、メロン、すもも。  秋は、柿、ざくろ、梨。  みそアイスなんてものも、あるらしい。  秋に、柿か。  忘れれず、来ないとなっ。 <私がもう一度ならず、お百度来るためのメモ> 「ちべた」 場所:京都市上京区千本通笹屋町東北角 時間:11:00〜19:00 月曜日定休 電話:075−414−8688  午後2時。私、岩崎誠、柴尾英令くんは、ヤサカタクシーの宮本さんと北野天 満宮へ。  嫁は、上七軒の雑貨屋さんへ。  ヤサカタクシーの宮本さんが、修学旅行生に解説してあげるのと、おなじ解説 を、岩崎誠と、柴尾英令くんにもしてあげる。

 お賽銭の前に、鈴を鳴らす。  鈴は、玄関のチャイムとおなじだから。  2回、お辞儀をして、2回、拍手…。  岩崎誠、案の定、1回お辞儀で、1回、拍手。  まあ、こういうのは覚えられっこないですな。  北野天満宮は、古くは農耕の神様として親しまれていたので、その名残が 境内にたくさん鎮座する「牛」に象徴される。  絵馬も牛をモチーフにしているし、境内にはやたらと鎮座した牛の像が多い。  昨日、私たちは牛を食べ過ぎたので、牛の像におわびをしようとするのだが、 牛の顔を見たら、ついつい昨日の肉のおいしさを思い出してしまって、顔がにこ にこしてしまった。  午後3時。嫁も合流して、金閣寺の裏のほうの「しょうざん」へ。  ここは桜や紅葉が美しい場所だが、いまの時期は、山の新緑がきれいだ。

「しょうざん」の喫茶室から眺める山は、花札の坊主山のデザインのもとになっ たそうだ。 「しょうざん」は、結婚式場でもあるので、きょうも花嫁、花婿さんが、ロール ス・ロイスのオープンカーに乗って、祝ってもらっていた。  ロールス・ロイスのオープンカーは、ヴィンテージカー・マニアとしては、ち ょっとどころか、うんと、うらやましいなあ。

 午後4時。岩崎誠は、京都駅へ。  私と、嫁と、柴尾英令くんは、京都のマンションに戻り、仕事の打ち合わせを しているうちに、私が熟睡。  連日の取材旅行、来客、打ち合わせ、迎え肉…で、眠いでやんす。  午後6時。再び、ヤサカタクシーの宮本さんに迎えに来てもらって、東山の古 川町商店街のおそば屋さん「なかじん」へ。  この古川町商店街は、錦市場のようなお店の建ち並んでいるところ。  錦市場よりも、レトロな商店街で、新横浜ラーメン博物館のリアル・バージョ ンみたいなもんだ。  スピーカーから大正琴の音色が流れる。

 まだ午後6時を回っていないのに、どのお店も、ガラガラ、ガタピシャと、ど んどん店仕舞いして行く。  ちょっと閉めるの、早過ぎない?

「なかじん」は、午後7時からお客さんで満席になってしまうので、1時間限定。  私たちは食べるのは早いので、1時間あれば、じゅうぶん。  このお店の名物である、塩をふりかけて食べるおそばが、好きだ。  梅の入ったとろみのある蕎麦湯も、おいしかった。  そばがきもいい。  イカのげそ焼き、トマトとアボカドの豆腐サラダ、地鶏の味噌焼きなども、 うまし。

 このお店でも、柴尾英令くんはウーロン茶を注文。  おそば屋さんなのに、お酒を飲まない柴尾英令くんなんて、初めて見た。  1日じゅうお酒を飲まない柴尾英令くんというのも、初めてかも。 「ミスター昼ビール」の名が泣くぞ!  午後7時。柴尾英令くんは、京都駅へ。  気候がほどよく気持ちいいので、三条通りを西へ、歩いて帰る。

 京都は、いまの季節がいちばんいいかもしれない。  もう少し暑くなってくると、風が止まる。  きょうみたいなそよ風の京都がいい。

 午後7時30分。帰宅。  ちょっと距離があったけど、なんとか歩き通せた。  学校下校時間のように、ひとり減り、ふたり減りしたけど、私と嫁は、もうし ばらく、京都にいる予定。

 

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