5月20日(火) 午前7時。起床。 少しだけ、『桃太郎電鉄12(仮)〜地方編』の仕事。 午前9時。嫁と、東京駅へ。 予定より、早く家を出られたので、乗る予定だった新幹線より1時間早い のぞみ号に乗れそうだ。 曇り空。そんなにいい天気ではない。 東京駅構内のおにぎり処「ほんのり屋」で、うなぎまぶし、ごまじそ昆布のお にぎりに、お新香、鶏の唐揚げなどを買う。 このお店は、食べるスペースもある。午前9時20分。新大阪行き、のぞみ51号に乗車。 さっそく、「ほんのり屋」で買ったおにぎりで朝食。
駅構内のお店だから、びっくりするほどのおいしさではないが、じゅうぶんす ぎるくらいおいしい。今後も急いでいるときに買うとか、逆に時間が余っている ときに、店内で食べて時間が潰せていいかも。 車中、もちろんVAIOを取り出して、お仕事。 ようやく、『桃鉄研究所』の原稿に着手。 新シリーズに突入したものだから、投稿メールが多くて、2回に分けないと、 きょうまでに届いたメールを掲載できそうにない。 おっと。もう「京都が近い」のアナウンスが! VAIOのバッテリー残量を、過去最低の9%までつかい切ってしまった。危 ない、危ない。車を運転していて、一度もガス欠を経験したことのない小心者の 私にしては、ぎりぎりまで粘ってしまったなあ。 午前11時36分。VAIOを鞄に閉まったとたん、新幹線の速度が落ちた。 アナウンスが流れる。 「この先、線路内に、お客さまが入ったので、停車させていただきます」。 何じゃ、そのお客さまが線路内に入ったというのは? 新幹線の線路見学ツアーでもあるんかい。 新幹線というのは猛スピードで走っているから、視界に人の姿が入ってからブ レーキをかけても、停車するまでに、2キロぐらい走ってしまうそうだ。急ブレ ーキをかけたら、今度は乗客がケガするからね。 そんなわけで、ゆっくり、ゆっくり、減速して行って、本当に停車してしまっ た。ってことは、すでに事故処理後で、この先に列車がつっかえている状態とい うことだな。 それでも、困るよ。 私は、新大阪駅で乗り換える予定なんだ。 現在、午前11時36分。 新大阪発のくろしお15号の発車時間は、午後12時3分だ。 京都駅にまだ着いていないのに、27分で新大阪まで行けるかい! 午前11時42分。新幹線は、のろのろと発車した。 新大阪発のくろしお15号の発車時間まで、あと21分。 京都の東山トンネルを抜けたら、急に大粒の雨が車窓を叩く。 別に雨は不思議ではないが、こういう場面に急に雨が降るのは、ちょっと安っ ぽいドラマの演出のようだ。 午前11時55分。京都駅に、14分遅れで、到着。 すぐ発車したけど、新大阪発のくろしお15号の発車時間まで、あと8分。 いま新大阪の駅に瞬間移動できても、乗り換え時間がほとんどない。 この時点で、間に合わない。 どうすりゃ、いいんだ〜〜〜ッ! オーマイガッ! ガッデム! サノバビッ チ! シット! チキン! エクスクラメント〜〜〜ッ! …と怒るところだけど、実は何とも思っていない。 私としては、こういう場面の処理をJR側がどうするのか楽しみたい。 取材旅行の場合、分刻みで移動しないと、ダメということではないので、時間 が遅れても、さほど気にならない。 むしろ、もっと大事(おおごと)になってほしい願望のほうが強い。 車内アテンダントだったっけかな。 案内係の女性に、このあとどうすればいいのかを聞くと、一生懸命に聞きに行 ってくれた。 「すみません! くろしお15号には間に合いませんので、お時間かかりますが、 次のオーシャンアロー17号に乗っていただくしかないんですけど…」と、言っ て、わざわざ列車番号、発車時刻、何番線乗り場まで書いたメモを持って来てく れた。 次の電車は、1時間後。 ちょっとまいったね。 でも案内係の女性は親切だった。 午後12時7分。新大阪駅に、到着。 すでに、くろしお15号は発車したあと。 案内係の女性に言われたとおり、「みどりの窓口」で、次の列車に振り替えて もらおうとするのだが、「みどりの窓口」がない。 「精算所」はあっても、「みどりの窓口」は、改札を出ないとない。 改札を出てしまったら、こっちがのぞみ51号に乗っていたことを証明するも のが何もなくなってしまう。 「精算所」で聞く。 「これは、こちらで変更することができないので、改札を出て、みどりの窓口で お願いします」 「でも、改札を出たら、券が無くなってしまいますよ!」 「あっ。はい。人のいる改札のところでおっしゃっていただければ…」 危ない、危ない。 いまの機械は、何でも出来るから、改札を通ったときに、「遅延」の判子でも 押してくれるようになっていると思ったよ。 大げさだって? でも、最近のJR東日本の新幹線は、寝ているときに起こされて、検札される ことがないんだよ。 駅の改札を入った時点で、あさま511号の8号車10番A席のお客さんが、 少なくとも改札を通ったという指令を、あさま511号のコンピュータに送って、 乗務員さんはもうチェック出来ているのだ。 だからいままでのように、「新幹線に乗ったら、寝るぞ〜! でも検札が来る から寝られないぞ! いったいいつになったら調べに来るんだよ!」と不満が、 JR東日本では、まったく無くなっている。 さあて。1時間余ってしまった。 早い話、きょう予定通りに家を出ていたら、乗るはずだったオーシャンアロー に乗るだけだ。むしろ、新幹線から、10分で乗り換えて、またずっと電車とい うより、気が楽かも。 しかもこっちは、新大阪駅のお土産品売り場を物色できるから、仕事にもなる。
はっはっは。予想はしていたけど、阪神タイガース・グッズが多い! 多い! 多い! 多い! 多い! 多い! 多い! 多い! …と、まだ書ききれないく らい、多いよ! おまけに、おっさんたちが、買ってるよ! 1個や、2個じゃなくて、3個も、4個も! 本当に、阪神タイガースの独走は、大阪に経済効果をもたらしているのが、よ くわかる。 だって、漫画『巨人の星』のクッキーがあるんで、何で?と思ったら、『巨人 の星』に、阪神の選手として登場する花形満のクッキーだか、サブレなんだもん。 阪神タイガースって、やっぱりおもしろいよねえ。 横浜ベイスターズのグッズも、横浜駅で売ってほしいよなあ。 新大阪駅構内の喫茶店へ。 キャラメル・ラテ。 けっこういける味だ。 おお! 喫茶店でひと息ついたせいか、ショッカーO野ゲームの新作を思いつ いた。ケガの功名だ。うん。これはいいアイデアだぞ! メモ! メモ! ほんとに私は、仕事が好きだ。 午後1時3分。新宮(しんぐう)行きオーシャンアロー17号に乗車。
『桃太郎電鉄』のファンのみなさん、新宮(しんぐう)ですよ、新宮駅! きょうは、新宮駅に行かないけど、私でもやっぱり新宮駅と聞くと、サイコロ 振って、行きたくなっちゃうなあ。 何たって、『桃太郎電鉄』15年ずっと、無名なのに目的地として君臨し続け ている駅だからね。 とく『桃鉄』ファンに、ゲームに出てくるんで、行ってみたけど、何もありま せんでした!といわれる。 まあ、何もないですよ。 JR西日本と、JR東海の境界線に当たる駅だから出しているんだけどね。 京都で夕立のように降って来た雨はあがった。 しかし、VAIOのバッテリー残量がまったくない。 新幹線が途中で停車するなら、充電してくればよかった。 新幹線の場合、入ってすぐの席に、コンセントがあるのだ。 検札の人が来たので聞いてみる。 「あの〜! この車両に掃除用のコンセントとかないですか?」 「はい〜〜〜、無いんですよ〜!」 「あれがあると、パソコンの充電が出来て便利なんですよ!」 「いや、実は、ほかの車両にあることはあるんですが、電流の関係でつかえない んですよ」 「えっ!? 電流?」 「実は、わたくし、携帯電話で試しましたらですね、電池パックが壊れてしまっ たんですよ〜! ヒゲ剃りもダメなようです!」 「はっはっは。やってみたんだ」 「はい〜〜〜。新幹線のコンセントですと、電流が弱いようなんですが、この列 車だと強すぎるようです! すみません!」 「はっはっは。いいですよ!」 楽しい人だ。 仕事ができないので、読書。 ひさしぶりの紀勢本線なので、和歌山を過ぎたあたりから、車窓の景色を眺め る。和歌山を過ぎるあたりから、海が見えるからだ。
日本のお醤油発祥の地・湯浅(ゆあさ)だ。 このあたりは、海が近いせいか、トタン屋根が潮で、錆びてしまっていて、町 全体が寂れた雰囲気になってしまっている。 だんだん畑が増えて来た。 ミカン畑だけど、季節ではないので、山が黄色くなっていない。
しかし、揺れる。 紀勢本線の列車は、振り子式というのをつかっている。 振り子式といっても、イチローの打法ではない。 原理は近いかもしれないけど。 車輪の台車のところなのかな。そこに振り子がつかってあって、急カーブでも 速度を落とさなくても走れるようになっているので、急カーブの多い、この路線 に採用された。 でも車両が、右に左に、まさに振り子のように傾くので、トイレに行こうとす ると、まっすぐに歩けないどころか、あっちにぶつかり、こっちにぶつかりする。 そのうち、「駅に停まったときに、トイレに行くべき!」ということに気づく くらい、振り子式は、酔う。 午後3時10分。白浜駅で、下車。 駅のホームで、いきなり趣味の悪い人形に歓迎される。 樽の温泉に入ったキャラクターだ。 「よしむねくん」というの? 和歌山はたしかに、6代将軍・徳川吉宗の国だけどさあ。 うーーーん。人形の顔も、元テレビ長崎のアナウンサー・山本耕一みたいな顔 してるし。 どうも、日本の古い温泉地の凋落ぶりを象徴するようなモニュメントだ。
白浜駅はひさしぶりだ。 あいかわらず古い町並みのままだなあ。 関東の熱海とおなじ悩みを抱えているような町だ。
午後3時30分。駅前からタクシーで、温泉民族資料館へ。 ほう。ログハウス風の新しい建物だなあ。 温泉の町・白浜のことがわかると聞いてきたんだけど、うむむむむっ。建物は 新しいけど、中身がねえ…。 「究極の露天風呂」という部屋があったので、行ってみたんだけど、部屋の真ん 中に、ぽつん!と、ウォーターベッドが置いてあるだけ。 壁の張り紙には「美しい音楽、快適なイス、休息できるウォーターベッド、森 林の香り、写し出される自然の風景…により、おちついた、壮快な気分にひたる ことができます」とある。 「ひたれません!」 どう見ても、昭和30年代の日本の安っぽいSF映画の宇宙船の内部だ。 がっくり。
2Fの「白浜町のあゆみ」のほうが、土器とか、石器とか陳列してあって、ふ つうの資料館。 すごすごと帰る。 白浜が一望できる丘で、町を眺める。 オレンジ色の不思議な鉄塔が飛び出ているので、何だと思ったら、白浜空港の 誘導灯になっているそうだ。夜になると光るらしい。
まったく、飛行機ってやつは、誘導されないと、何もできないやつだな。 飛べる、飛べると言いながら、飛行機に乗るのに、バスに乗らされるし、いま もこうして、風景を壊すような鉄骨のお世話にならないと、着地すらできない。 えっ? 飛行機が嫌いなやつの偏見だって? その通りですよ、はっはっは。 午後4時。海辺の無料露天風呂「崎(さき)の湯」へ。 露天風呂に入りたいわけではなくて、『桃太郎電鉄』の白浜駅の露天風呂の物 件のモデルはここだから20数年ぶりに来てみただけ。そのときの印象で、物件 にしたんだけど、当時の風景が思い出せない。 もっと、粗末なお風呂で、男女の区別もないよいうな露天風呂だったような気 がする。
海に向かって、男湯、女湯と分かれているので、よく釣り舟のふりをした船が この露天風呂を覗きに来るそうだ。 そのエネルギーをほかのことにつかえばいいのにねえ。 この町営の露天風呂は、日本最古の露店風呂を謳っているようだけど、ほかで も何ヶ所か、「日本最古」の文字を見たことがあるような気がする。 タクシーの運転手さんが、「最古は、いっぱいある!」と笑っていた。 さらに、白浜の中心地・白良浜(しららはま)の海岸へ。 白浜というだけあって、真っ白い砂がとてもきれいだ。 小さな浜だけど、半分は湾のようになっていて、子どもたちが遊ぶのに適して いる。等間隔に植えられた、やしの木もいい雰囲気だ。 まるで外国のリゾート地に来ているみたいだ。 と思ったら、運転手さんが「ここの砂は、オーストラリア産ですがね!」。 「あっこの湾も人工です!」。
よく見れば、たしかに護岸工事のあとが…。 うーーん。怒るよりも、よく出来ているなあ!と感心してしまった。 要するに、ディズニーシーなわけだ、この浜辺は。 何でも、白浜は5月の初旬に、日本一早い海開きをするそうだ。 いま目の前の海は、海開き済みということになる。 「まださすがに寒いから、海開きしても、誰も泳がないでしょ?」 「いや、それが、海で泳いで、そこの無料露天風呂に入って、ぬくうなったら、 また海に入る若者が多いんですわあ」 なるほどねえ。
とにかく、いまでも夏になると、関西方面からの海水浴客で、このあたりは大 渋滞になるそうだ。 観光地もいろいろな生き残り方があるもんだなあ。 人工であろうと、天然だろうと、白い砂の美しい浜のほうが、二度、三度と来 てみたくなるだろうなあ。 何でも天然でなければいけないというのも、ひとつの知識のひけらかしかもし れないね。 白浜の景勝・円月(えんげつ)島も見る。
伊勢の二見浦の夫婦岩のように、ふたつの岩が並んでいるのではなく、ふたつ のくっついた岩のまんなかが、丸くくり抜かれたようになっている。 このまんなかに、夕陽が入る瞬間が、きれいなんだそうだ。 そういえば、紀伊半島というのは、夕陽がきれいなイメージが強い。 私が若い頃に撮った写真の紀伊半島には、夕陽のバックが多い。 きょうは、あいにく薄曇。 白浜に着いて、あちこち取材を始めたら、晴れ始めたのは、いつもの法則。 午後4時30分。きょうの宿「川久ホテル」へ。 「川久ホテル」と書いて、「かわきゅうホテル」と読む。 割烹旅館のような名前だけど、その姿はまるで『ドラゴンクエスト』に登場す の古いお城のような建物だ。 オレンジ色の偉容で、白浜の高台からどこでも目立つ。
バブル全盛期に計画された会員制ホテルだそうで、総工費350億円だったと も、400億円とも言われる、夢のホテルは当時、相当話題になったそうだ。 総工費350億円というのは、東京ドームや、お台場の観覧車よりも高い。 しかも、このホテルが完成したと同時に、バブルが弾けて、このホテルは倒産 して、10分の1以下の30億円ぐらいで、いまの会社に買い取られたそうだ。 30億円なら、安い。 私が買えばよかった。いまなら総資産は1兆円近い。っていうのは、もちろん 『桃太郎電鉄』での話だ。 まあ、すごいですよ。 私の場合、こういう洋風建築に対する造詣が薄いもんだから、バチカン市国の ○○○○天主堂だみたいなたとえ話が書けない。 まあ、私の場合、国内の土地でたとえるしかない。 いちばん近いと思ったのは、上野駅のあの大きなホールのような構内。 たぶんあれより大きいと思う。 10数本建っている円柱は、1本につき2000万円の建築費がかかっている らしい。 とにかく人の声が、エコーがかかったように反響する。 ロビーから、喫茶ルームに行くまでにへばる。 ひょとすると、神宮球場のグランドよりも広いかもしれない。
かといって、成金趣味の建造物ではない。 露悪趣味でもない。 なぜなら調度品が、ぜんぶ本物だからだ。
廊下のすべてに絵タイルが貼ってある。 こういうのは、トルコのビザンチン様式っていうのかな。 壁には、こまかい模様が。決して、無地がない。 部屋には、イタリアのアンティーク家具をつかっているらしい。 そのすべてが本物をつかっているそうだ。 絵画も素晴らしいんだろうけど、わからん。 私の調べ方ではこころもとないので、インターネット使いの達人である嫁に調 べてもらった。 ぬわに〜〜〜! 中国の紫禁城と同じ瑠璃瓦を47万枚もつかっているだと〜〜〜! 紫禁城(しきんじょう)となっ! 紫禁城(しきんじょう)と聞いて、思わず「失禁城!」 一応、だじゃれのひ とつも言っておかないと。しかし、47万枚とは! どしぇ〜〜〜! 英国製の特注煉瓦が、73種類、140万枚! 何も、オリコンのヒットチャートの話をしているわけではない。 ホテルのシンボルマークであるウサギのブロンズ像は、英国バリーフラナガン 作のブロンズ「兎」! 誰だ? バリーフラナガンってのは。 有名なんだろうけど、私には知識がないから、知らん。 ピーター・フラナガンなら知ってる。 外壁の煉瓦は、イギリスイブストック社製。 屋根瓦は、中国産瑠璃瓦。 ステンドグラスはイタリア製。 石はフランス産、 ああ、どうせ覚えられっこない規模だ…。
スタインウェイ&サンズ社のハンブルグ製特注グランドピアノ 豪華…。 とにかく、豪華。 ひたすら、豪華。 とめどなく、豪華。 どこまでも、豪華。 筆舌に尽くしがたい、豪華。 かぎりなく、豪華絢爛。
最初に、9階の部屋に通される。 エレベーターは8階までで、9階へは、階段を登る。 私たちの部屋のためだけの階段だ。 こういうゴージャスな建物をほとんどの人が感動するだろうが、私のように手 足が不自由で、高所恐怖症の人間には、ひたすらしんどく、怖い。 なにしろ、このホテルの最上階で、外から見て、いちばんてっぺんのとんがり 帽子のような塔の部分だ。 古城を模しているので、お城のてっぺんに幽閉されたお姫様が、飛んで来る鳩 と話をしては、さめざめと泣くような部屋だ。 でも幽閉されたにしては、部屋が広い。 クローゼットがいくつもあって、洋服を何10着でも吊るすことができる。 私の場合、横浜ベイスターズのTシャツと、パンツと靴下を吊るしたら、あと は何を吊るせばいいというのだ。
午後5時30分。2Fのレストラン「敷島」で、食事。 古城なのに、つい和食を注文してしまった。 どうも豪華な洋食というのは、カロリーが高いだけの気がするので、それだっ たら、節制して「プティ・ポワン」に行く回数を増やしたい。 しかし、このレストランですら、広い。 広いなんてもんじゃない。 『忠臣蔵』の松の廊下で、浅野内匠頭が吉良上野介を切りつける気がなくなるく らい、廊下が長い。 物好きな嫁が数えたら、畳が38枚敷いてあったそうだ。
38枚! 千畳敷の海岸という言葉は、大きいという意味だけで、実際に千畳 分もない場合が多い。 ならばこのお店の廊下も、千畳廊下と呼んでもいいくらいだ。 実際、私は玄関から上がって、いちばん廊下の突き当たりの部屋に通されて、 息が上がった。 はあはあ…。疲れた。 伊勢エビが出て来た。 最近、白浜は、伊勢エビの養殖が盛んだ。 伊勢エビは、おいしい。 白浜の名物として売り出せばいいと思うのだが、名前が「伊勢」エビだからね え。「白浜エビ」といかいう名前にすればいいのに。 でも、白浜には、「くつエビ」、「せったエビ」という天然物の高級エビがあ るんだそうだ。「くつ」に「せった」というのも、情緒のない名前だなあ。 お店の子が「熊野牛もおいいしんですよ」といって、配膳してくれたのだが、 固い。ははは。悪いけど、固い。 いのしし鍋のように、味噌で煮ると、おいしくなりそうではある。
全体的に、おいしい料理ではあった。 午後7時。最上階の豪華な部屋が気に入らないのではないが、どうも山小屋で 炭焼きしたときに出る木酢酸のような匂いがして、つらい。 1Fの売店で、お香を買って来て、焚いてみたんだけど、匂いが消えない。 フロントに電話して来てもらうと、カーペットを張り替えたばかりで、その匂 いらしい。 けっきょく、部屋を変えてもらうことに。 最上階の部屋だったから、少しはランク落ちするんだろうけど、どうせ高いと ころは嫌いだ。 701号室に、移る。 えっ!? さっきより、広いよ、こっちのほうが! 最上階よりも、広いよ。
何じゃ、こりゃ。 机のようなものがあるので、仕事を始めるが、まるでキーボードを弾いている としか思えない。 4つのイスを並べて、談話するだけの部屋まである。 どの部屋も、近づいていくと、ほわ〜ッと灯りがつく。
大浴場も、まるで王様が入るような大きく豪華。 塩分が強くて、ちょっと入っているだけで、汗が出てくる。 泉質としては、非常に気持ちいい。 とにかく、このホテル、すごいんだけど、凄すぎて、広い部屋が苦手な私には、 ちょっと居心地が悪い。 ただ一生一度は、こんなホテルに泊まって、ハッ!と息を飲むのもいいのかも しれないね。 横浜ベイスターズの試合が雨で中止になったのを知って、なぜかホッとして、 さっさと就寝。
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