5月2日(金)

 午前10時。家族3人で、品川駅に向かう。

 午前10時36分。品川駅から、横須賀線に乗車。
 ゴールデン・ウィークなので混雑していると思ったのが、比較的空いていて、
快適な汽車旅。
 西村京太郎さんのトラベル・ミステリー25周年記念作品『新・寝台特急殺人
事件』(光文社)を読みながら。あの『寝台特急殺人事件』から、もう25年が
経つのか。サザンオールスターズも今年25周年。実は私も本格的デビューから
だと25周年になる。
 四半世紀だ。私反省期(しはんせいき)かも。

 午前11時30分。鎌倉駅で下車。

 ひさびさ、半年振りの鎌倉だ。  初めて降りる駅のように新鮮に映る。  天気もいい。  日中22度ぐらいまで上昇するらしい。  そのまま江ノ電側の活魚料理のお店「仲の坂」へ。  どっこいズ(井沢どんすけ、すとろう小泉、石川キンテツ)のテスト・プレイ を見るより、このお店の魚が食べたかった。  あじの刺身、ぶりの刺身、カレイの焼き魚、だるまいかの刺身など。

 半年振りの「仲の坂」の魚は、実においしい。 「ダメだ! ダメだ! これ以上食べてはダメだ!」  自分に言い聞かせるのが、大変。  私はご飯を食べると太る体質なので、ご飯を食べ過ぎてはいけない。  でもこのお店のご飯は、本当に魚に合う。  いつのまにか、ばくばくとご飯完食。  食後、「ヲガタ珈琲店」で、コーヒー。  気温上昇を想定してか、エアコンを効かせている。  ちょっと寒すぎる。  へっくしょい! くしゃみが出た。  困った!  私のくしゃみは、一度出ると停まらなくなる。  へっくしょい! へっくしょい! へっくしょい! あ〜〜〜!  へっくしょい! へっくしょい! へっくしょい! 停まらないよ〜!  へっくしょい! へっくしょい! へっくしょい! 助けてくれ!  駅で配るティシュペーパー2袋を消費して、沈静。  嫁が一足先に鎌倉長谷の家に行って、空気の入れ替えをしてくれる。  私と娘は、鎌倉駅のJR側に移動。  ゴールデン・ウィークの鎌倉は、観光客でいっぱい。  とくに外国人観光客が多い。  午後1時。どっこいズ(井沢どんすけ、すとろう小泉、石川キンテツ)との待 ち合わせ場所であるJR鎌倉駅近くの不二家に向かうと、ちょうどコイズミリュ ウジがいた。  石川キンテツが、マンションの水漏れの工事のせいで、鎌倉の家に遅れて直行 するとの連絡があったようだ。  井沢どんすけも、お昼に仕事の打ち合わせが入っていて、午後3時〜午後4時 くらいにならないと来れない。  何だ。どっこいズ(井沢どんすけ、すとろう小泉、石川キンテツ)は、足並み が揃わないなあ!  とはいえ、彼らはいずれも、『週刊少年ジャンプ』と、『週刊少年サンデー』 の読者ページを担当している売れっ子ライターである。  毎回3人揃って来れることのほうが本当は不思議なのだ。  ところで、私は井沢どんすけ、すとろう小泉、石川キンテツの3人に、思いつ きで、「どっこいズ」というあだ名を付けた。  最初は、「『週刊少年ジャンプ』と、『週刊少年サンデー』の読者ページを担 当する者同士で、『桃太郎電鉄』で対決をしたい!」と、いかにも熱血少年漫画 雑誌の伝統を守るような血気盛んな申し出に心を動かされ、私も一度は乗った。  乗ってみて、驚いた。  下手なのである。  下手なんてものではない。  ここまで作者の意図を無視した戦い方をする人たちは、初めて見た。  先日の上級者対決だと、『桃太郎電鉄』のなかの1年間に、3〜4回ぐらい目 的地に入ってしまう。  ところが、この3人は、下手すると、3年間ぐらい、誰も一度も目的地に入ら ないなんてことは、ざらだ。  そんなわけで、私が思わず命名したのが、「どっこいズ」。  実力が見事に、どっこい、どっこいなので、名づけた。  しかし、この名前にはとてつもない秘密が隠されていたとは、さすがの私も気 がつかなかった。  驚くよ〜〜〜! ・井沢どんすけの「ど」。 ・コイズミリュウジの「こ」。 ・石川キンテツの「い」。  まさに「どっこいズ」だったのだ!  すでに彼らの名前のなかには、どっこいズが入っていた!  この3人が「どっこいズ」を結成するのは、宿命だったのだ。  うらやましくもない宿命であるが…。  追伸:どっこいズに加入しかけた札幌開発チームの込山勉くんは「つ」だ。  どっこいズの「つ」の部分だったのか!  彼もまた宿命?  午後2時。鎌倉長谷の家へ。  井沢どんすけ、石川キンテツの到着が遅いようなので、彼らが到着するまで、 特別に私がゲームに加わって、コイズミリュウジに、私の秘技を見せてあげるこ とにした。  このところ、向上心のないプレイと評されるコイズミリュウジに、禁断の秘技 を披露してあげようという親心である。  しかし、人のいうことを聞かない男・コイズミリュウジにとっては、私の参戦 など、どうでもよく、彼がもっとも念じる「最下位にさえならなければいい!」 が崩れてしまうことを懸念しているのだった。 「ええ〜〜〜! さくまサンとやるんですかあ!」 「ふつう私のプレイは見ることができないから、喜ぶもんだぞ!」 「だって、ボコボコにされるじゃないですか!」 「カードの使い方を教えてあげるよ!」 「そんな! どうせ覚えられないですよ!」 「じゃあ、木っ端微塵に粉砕してやるよ!」  うちの娘も加わって、私、コイズミリュウジ、娘の3人で『桃太郎電鉄12(仮) 〜地方編』の『地方編』をプレイ。  もちろん、コイズミリュウジは木っ端微塵。 「これじゃ、イラクを攻撃するアメリカですよ!」 「はっはっは。ちょっとやりすぎたか?」  その詳細は『地方編』なので、事細かにいえないのがとても残念。  まあ、4年間で、15回くらい(まず到着回数が多いでしょ?)目的地に入っ たけど、そのうち私が10回ほど目的地に入ってあげた。  もちろん貧乏神はくらわず。  午後4時。石川キンテツが到着。  私が参戦した『地方編』のテスト・プレイは終了。  見事私が1位で、娘が2位で、コイズミリュウジがご希望通り、最下位。 『桃太郎電鉄12(仮)〜地方編』のテスト・プレイを開始する。  井沢どんすけが到着するまで、娘が代打ちとして、参加。 「どんすけ一族」の名前を入力して、コイズミリュウジ、石川キンテツと対戦す ることになった。 「ゆりチャン! 井沢どんすけが来るまで、ずっと赤マスに停まるというのはど うだ?」 「貧乏神をもらいに来るっていうのもいいな!」  16歳の娘に対して、会話自体が不毛なやつらだ。  午後5時30分。井沢どんすけが到着。 「井沢どんすけ! 来るの遅いから、まめ鬼で始めておいたよ!」 「ええ〜〜〜!」 「うそ! ほんとはうちの娘がやっていた!」 「ゆりチャンだったら、いま1位だったりして!」 「実はその通り! 16歳に負けるストロウ・ドッグスのふたりだ! レベル低 い〜〜〜!」  負けるなよなあ。  さて、どっこいズの珍プレイを記録して行くのは、はなはだ面倒。  これから明日の午前4時くらいまで続くはずだ。  10時間以上の経過を書く気力はない。  だいたい3年に一度、順位が変わるの何だと思わない?  ふつう誰か独走するものなのに、とにかく順位がしょっちゅう変わる。  そのことから、どっこいズと命名されたんだけどね。    まあ、数ある馬鹿馬鹿しいプレイのうち、いくつかだけ掲載しましょう。

「あ〜〜〜、井沢さん! 入りましたよ! 目的地の長崎に!」 「えっ? そう? 1、2…、3…、あっ、あぶない! あぶない! 赤マスに 入るところだった!」 「おまえら、いま目的地どこなの?」 「伊勢ですよ!」 「私から見ると、伊勢をめざしているとは思えないんだけど…」 「伊勢をめざしているやつが北海道でワープ駅をめざさないよ、ふつう!」 「伊勢は、どこのワープ駅からも遠いですもんね!」  午後5時。柴尾英令くんが到着。  きょうの柴尾英令くんは、見学のみ。  というより、酔っ払いに来た。  午後5時30分。コイズミリュウジについていた貧乏神が、セーブする決算の 3月、キングボンビーに変身したところで、長谷駅の北にあるお好み焼き屋さん 「染太郎」へ。 「えへえへえへっ。家に帰ったら、キングボンビーが待ってるのって、イヤだよ なあ!」と、井沢どんすけはうれしそうだ。パナウェーブ研究所所員みたいな顔 をして!

 石川キンテツは、お好み焼き作りがうまい。  ふだんのちゃらんぽらんの性格とは逆に一生懸命作る。  かつおぶしの振り方、青海苔の乗せ方なども、意外や繊細である。  イカのお好み焼きに、たこのお好み焼きなど…。

 めかぶのもんじゃ焼きがおいしかった。 「うまいな! 石川キンテツ!」 「ありがとうございます!」  石川キンテツ、汗びっしょりで、焼きそばまで作り、大いに株を上げるが最後 のあんこ巻のときに、生地をひっくり返すことに失敗。

 その失敗した生地を修復しようとした井沢どんすけが、あんこ巻をぐちゃぐち ゃにする。 「やるなあ、井沢どんすけ!」 「えへえへえへっ! ジャマしてるだけですよね!」  午後7時。鎌倉長谷の家に戻り、戦いの続きを観戦。 「次の目的地は、松山か! ふーーーん!」 「井沢どんすけ! さっき何で東北カードつかわなかったの?」 「ええ〜〜〜っ? 松山は東北…なわけないじゃないですか! だまされるとこ ろだった!」 「だまされるレベルではない!」 「さくまサン! 帯広が目的地って、初めてじゃないですか?」 「さっきも目的地になっていたよ! 井沢どんすけが入ったじゃないか!」 「ええ…?」 「井沢どんすけ! 入ったおまえが返事をしろよっ!」 「いやあ。どこだったかなあ…とおもって!」 「おまえら本当に目的地わかってなくてやってるだよ!」 「さくまサン! クレジットカードが成立する条件って、何なんすか!」 「ええっ? クレジットカードに条件なんてないよ!」 「でも赤文字になっていてつかえないんすよ!」 「コイズミリュウジ!」 「はい?」 「それはおまえがローン1回分の持ち金がないって表示!」 「はっはっは!」 「さくまサン! 今回のおいどんのチューニング、変だと思いますよ! ちょっ ともらえる金額が多すぎると思いませんか?」 「チューニング変えてないよ!」 「だって、8億円ももらってますよ!」 「もう15年目だろ? ふつうのプレイヤーなら15年目の決算で、20億円ぐ らいもらうのに、おまえらまだ4億円とか5億円なんだもん!」 「ボクらが持っている金額が少ないってことですか?」 「そうだよ。物件買わないんだもんおもえら!」 「買えないんすよ!」 「15年目で、どうせまだ誰も鉄道経営やってないんだろ!」 「そんな余裕ないですよ!」 「だから君たちはお金がなくて、毎年の収益率でもらえる金額が少ないの! 君 たちのレベルに合わせて、チューニングすると、お客さんのほうから、もう少し このイベントでお金もらえてもいいと思いますというメールが来るの!」 「へ〜〜〜!?」  そして、コイズミリュウジが、キングボンビーの新しい悪行をついに喰らう! あの読売広告の岩崎誠を、上級者大会で最下位のどん底に叩き落とした、あの話 題の新悪行だ! 「ええ〜〜〜っ!? これって何すか! 何すか!! 「メッセージの通りだよ!」 「え〜と…。『オレさまは おまえのことを 気に入ったよ!…格別 気に入っ た!』…って、どういう意味だろう?」 「えっ?」 「えっ!」 「ええっ!?」 「ええええええぎゃああああああああああああっ!」 「これって今までのキングボンビーの攻撃とまったく違うじゃないですか!」 「ちょっとね!」 「これは破壊力なんてもんじゃないですよ!」 「立ち直れない! ぜったい立ち直れない…」 「えへえへえへっ! えへえへえへっ!」 「井沢どんすけ、キングボンビーの新悪行を他人事のように見ていて、楽しそう だなあ!」 「えへえへえへっ。もう壮快な気分ですよ!」  どうやら、今回の『桃太郎電鉄12(仮)〜地方編』の話題を独占しそうなのは、 このキングボンビーの理不尽極まりない悪行のようだ。  なにしろ、お金を奪う攻撃ではない。  ちょっと予想がつかないと思う。  どんな攻撃か予想がついた人は、ぜひ『桃鉄研究所』まで!  午後10時。気持ちよく酒に酔い、どっこいズの緩慢プレーにちょっと悪酔い した柴尾英令くんが、東京に帰る。  さあ、この時間から、恒例のコイズミリュウジと、石川キンテツの仲間割れが 始まった! 「キンテツ! オレからばかり、カード交換カードで、のぞみカード奪うなよっ!」 と、コイズミリュウジ。 「これも勝つための作戦で…。こっちからあげるカードは…」 「うっわ〜〜〜、おまえ汚いなあ!」 「やっやっやっや…!」 「いつも交換するカードは、徳政令カードとかワクチンカードじゃないか! そ んなカードいらないよ!」 「キンテツ! オレばかり攻撃しないで、井沢どんすけサンをへこませろよ!」 「やっやっやっや…!」  そして、今夜はこのコイズミリュウジからこんな名セリフが出た! 「オレの貧乏は、ぜんぶ石川キンテツのせいだ!」  このセリフには、みんな腹を抱えて笑い転げた。  とても35歳、30歳。25歳の会話とは思えない。  小学生のケンカだ。  こうして、今宵も鎌倉の家は、学生さんの下宿臭くなって行く。

 

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