3月2日(日)

 天気予報どおり、雨は上がった。
 ちょいと、でかけるか。

 午前9時30分。京都駅へ。
 みどりの窓口に、長い行列が出来ていた。
 さすがに日曜日は混むなあと思ったら、発券用の機械の調子が悪いらしく、1
台の機械を3人の駅職員たちが覗き込んでいた。。
 ひとりのお客さんが叫んだ。
「おい! 3人で見ることないやろ! 見てみい! お客さん、並んどるで!」
 おっさん、あんたは正しい!
 ひどいのは言われたほうの、みどりの窓口にいた職員の若造3人たち。
 こそこそ散るだけで「すみません!」のひとこともない。

 午前10時12分。京都駅から、博多行きのぞみ5号に乗車。
 この新幹線に乗って終点まで行けば、12時30分には、博多に行けるなあ…
と思うと、ちょっと悔しい。

 午前10時41分。新神戸駅で下車。
 速いねえ、のぞみは。29分間だよ。
 予定より速く着いてしまったので、のんびり電車を乗り継いで、有馬温泉まで
行くことにする。
 新神戸の新幹線改札口を出たところに、有馬温泉までどの電車に乗って行けば
いいかを書いた観光案内板があったのだ。
 これは親切だ。

 まず、新神戸駅から地下鉄のほうまで歩く。
 北神(ほくしん)急行の新神戸駅だそうだ。

 午前10時55分。北神急行に乗車。
 へ〜、3両目は、女性専用車両か。

 けっこうこの手の列車、増えて来ているのだな。  ありゃ? この列車は地上に出ないのか?  ずっと地下鉄のままだな。  新神戸から、三宮方面に行く地下鉄に間違って、乗ってしまったんじゃないよ なあ。  どうやら、海抜702メートルの摩耶山の裾野をくり貫いて走っているようだ。  午前11時2分。谷上(たにがみ)駅に着く。  ずっと長いトンネルを通っていたわりには、1駅で終点だ。  向かいのホームに来た、神戸電鉄有馬線に乗り換える。

 午前11時15分。有馬口(ありまぐち)駅で、下車。  乗り換えが多くて、面倒だなあ。  やっぱり新神戸駅から、バスにすればよかった。  そんなに時間は変わらない。  おっ。ここの駅の乗り換えは、跨線橋や地下道で乗り換えではなく、地上の踏 み切りで乗り換えか!  最近こういう乗換えが少なくなってきているので、旅情気分が満たされる。  午前11時17分。ふーーん。今、乗ってきたほうの路線は、この有馬口駅か ら先を神戸電鉄三田線と名前を変え、私が乗り換えたほうのホームの路線のほう が、引き続き神戸電鉄有馬線なのかあ。  よくわからないなあ。  それだけ「有馬」という名前はビッグ・ネームなのだろう。  ごとごと重苦しそうに電車は、坂道を登って行く。  まるで登山列車のようだ。  景色も山に分け入って行く感じ満点だ。  午前11時20分。有馬口駅から、たった1駅で、終点の有馬温泉駅に着く。

 まあ、乗り換えの多い路線だった。  でも温泉に来る人は、マイカーか、バスだろうから、関係ないか。  有馬温泉に来たのは、実に30年ぶり。  前に来たときは大学生だ。  当時、高校時代の同級生・川久保くんとどこへでもよく車ででかけていた。  川久保くんは、顔が大きいので「顔久保」くんと呼ばれていた。  ふけ顔だったから、今ごろちょうどいい顔になっているだろうなあ。  有馬温泉にも、東京からわざわざ車まで来た。  まだ石油ショックの前で、3人で車に乗ると、高速道路をつかっても、新幹線 料金よりも安かった。それで自動車で、どこでもでかけて行っていた。  私の自動車狂時代だ。 「なつかしいなあ!」…と、叫びたいところだが、なにしろ前に来たのが30年 前だ。何も覚えていない。  泊まったホテルも覚えていないなあ。  駅前からちょっと歩くと、太閤橋に着く。  あの豊臣秀吉の「太閤」橋だ。

 有馬温泉は、豊臣秀吉が1583年の賤ヶ岳の合戦のあとに、よく有馬温泉を 訪れるようになって、わかっているだけでも、10回くらい湯治に来たようだ。  そんなわけで、有馬温泉は何かと秀吉との関係をことさら強調する。  お湯でもない、ふつうの冷たい水の噴水の脇には、茶人・豊臣秀吉の像。  太閤橋の近くの小さな橋には、ねね橋の名前をつけて、ねね象の石像まで建て ている。いわれも書いていないのが、強引だ。

 こじんまりとした温泉土産街を歩く。  有馬温泉といえば、大阪の奥座敷と呼ばれて、絶大なる人気を誇った温泉保養 地だ。東京における熱海のように、衰退が激しいと聞いていたけど、それほどひ なびた感じではない。  むしろ、いい感じで古くなっている。

 お土産品をチェックして回る。  案の定、炭酸せんべいだらけだ。  炭酸せんべいというのは、有馬温泉にこんこんと湧き出る炭酸水をつかった薄 焼きせんべいのこと。味は、ゴーフルに近い。

 まあ、なつかしい味ではある。  有馬温泉では、8社が、この炭酸せんべいを作っているとか。 「発売95年」と書かれたポスターなども目に付く。

 狭くて、細い道を登って行く。  細い道ばかりなので、有馬温泉には、顔がない。  草津温泉の湯畑に相当するシンボルがない。  長い石段があるわけでもない。  TVの旅行番組でここを特集するときに、どこから写したらいいか悩むだろう なあ。この辺が、有馬温泉が衰退している原因だと思う。 「金の湯」「銀の湯」というのが、日帰り温泉のようだ。  こういうきれいで、値段の安い温泉がもっとあるといいんだろうねえ。  ほら。無料の足湯には、お客さんが集まっている。

 100人が一度に浸かれる足湯のエリアでも作れば、お客さんも増えるだろう に。有馬温泉の山だらけのどこか1ヶ所を崩せば、簡単に作れるように思う。  いいかげん、坂道を登りっぱなしで、疲れてきた。  お昼は、有馬温泉で食べようと思っていたのに、名物は炭酸せんべいと、シイ タケ昆布。これではお腹を膨らせることができない。  午前11時57分。太閤の湯殿跡資料館へ。

 やけに建物が新しいなあと思ったら、1999年にできたばかり。  何でも、1995年の阪神大震災のときに、有馬温泉の極楽寺から、遺跡が発 掘された。  どうもその遺跡が、豊臣秀吉が造らせた「湯山御殿(ゆのやまごてん)」の一 部と見られる湯ぶね庭園の跡であることがわかったらしいのだ。 「蒸し風呂」と「岩風呂」の遺構をそのまま取り込んだ展示物は、けっこう楽し い。  へ〜〜〜、安土桃山時代の1506年・伏見大地震のときに、有馬温泉のお湯 は熱湯になりすぎてしまって、温泉に入ることができなくなってしまったのか。 それで豊臣秀吉は大地震の前に来たのが、最後の有馬温泉になってしまったとい うわけか。  本当に、有馬温泉が好きだったんだね。  太閤の湯殿跡資料館に、こんなものが書いてあったので、メモしてきた。  よほどの歴史好きでなければ、興味のないメモだ。 <有馬温泉に入浴した人々> ・小早川隆景  ・前田利家  ・織田信雄  ・織田長益 ・柴田勝家   ・羽柴秀長  ・石田光成  ・本願寺顕如 ・今井宗久   ・津田宗久  ・蒲生氏郷  ・細川幽斎 ・豊臣秀次   ・徳川秀忠  織田信長は、有馬温泉に興味がなかったのかなあ。  賤ヶ岳の合戦で豊臣秀吉に倒された柴田勝家が来ているのも、おもしろい。  温泉から、織田信長・豊臣秀吉を見る。  有馬温泉の大半を歩いてしまった。  日本旅館は、どこも建物が古い。  たまにホテルのポスターがあるけど、聞いたこともないような演歌歌手や、奇 術師がゲストだったりして、わびしい。  この手をやめないかぎり、若い人は来なくなるようなあ。  午後12時30分。ご飯を食べるところも見つからないので、神戸をめざす。  午後1時。神戸三宮の南京町へ。  有馬温泉でご飯を食べるより、南京町の中華街で、買い食いをしようと思った のだ。  日曜日なので、ものすごい人出だ。  しかし、困った。私はまだ手が不自由で、軽いバッグなら持てるまでに回復は しているのだが、丼を持ったりすることができない。  要するに、立ったままラーメンをすすれない。  それでも、派手な手書きのメニューが立ち並ぶ様は圧巻で、何かひとつでもい いから食べたい。

 揚げシューマイ、やまあらし(おまんじゅうっぽい)、ライチ・ジュース、北 京ダック・バーガーなど食べる。  いずれも、200円。  うまい。どれもうまい。  食べている行為自体にすでに楽しんでいるから、お店でじっくり食べたらおい しくないのかもしれない。  立ち食いには、立ち食いのよさがある。  南京町の中華街は、横浜の中華街とは比べ物にならないくらい小さいんだけ ど、買い食いの屋台の多さは、横浜よりもすごい。  あとはふかひれラーメンのような汁物など食べらたら満足なんだけど、この人 ごみと、私の不自由な左手では、どうにもならない。  南京町の広場に出た。  狭いスペースだけど、やっぱりここが南京町中華街の象徴だ。  有馬温泉にこういう場所がなかった。  おっ! 中華街のはじっこの西口の屋台で、ぼっかけラーメンを売っているお 店を発見。でもラーメンは、立ったまま食べられない。  あっ。このお店は少ないながら、お店のなかに食べられるスペースがある。  ぼっかけラーメンは、今年の1月5日、加古川まで、かつ飯を食べに行った帰 りに、新長田駅の「グルメシティ」で、即席めんとして買ってきて、食べたけど、 あまりおいしくなかった。即席めんだしね。 「神戸の新しい名物に!」という新聞記事は、何度も読んだんだけど、神戸で売 っているのを見たのは、初めてだ。

 ぼっかけラーメン 300円。  発砲スチールの丼なので、量も多くない。  テントのようなところで、食べる。  のっかけラーメンというのは、牛すじ煮込みが乗ったラーメンだ。ネギ焼きな どの上に乗せるトッピングのようなものだ。いかにも関西の味。  うん。うん…。  おいしい。味が濃くて、おいしい。  南京町中華街で作っているだけのことはあるのか、スープの味がいい。即席め んとは比べ物にならないけどね。このお店では、次々にお客さんが、ぼっかけラ ーメンを注文している。  これなら、じゅうぶん『桃太郎電鉄』の物件名として、登場させることができ る味だ。  南京町の広場から、西口に向かう右側のお店だ。  屋台ばかりだから、お店の名前をメモするの忘れちゃったなあ。  また来ることもあるだろう。  午後2時。新神戸駅へ。  淡路屋で、駅弁のひっぱり蛸飯を忘れず買う。  きょうの晩御飯だ。  午後2時18分。ひかり160号に乗車。  車中、ショッカーO野ゲームの新作が浮かぶ。  でも、もうちょっと練りが必要だな。  午後2時49分。京都駅に着く。  のぞみで、29分。ひかりでも、31分。  京都と神戸は近い。  午後3時30分。昨日の日記を見て、連絡をくれたヤサカタクシーの宮本さん に迎えに来てもらって、東寺でお線香を買ったのち、京都の仕事場に戻る。 『桃太郎電鉄U(仮)』の仕様書作り。  きょうの新幹線のなかで浮かんだアイデアを、台帳に書き写す作業なども。  午後7時。TVで『映画スター100』など見ながら、新神戸駅で買ってきた 駅弁「ひっぱり蛸飯」で、夕食。  おお! ああ! ええ! きょうのオープン戦「横浜vs西武」は、7対0 で、横浜ベイスターズの圧勝だったの?  古木克明選手が、またホームラン?  新人・村田修一選手も、ついにホームラン?  行けばよかった、高知まで!  実は、昨日東京から一挙に、高知まで行ってしまおうかと思っていたんだよ。  きょうオープン戦あるの知ってたからね。  西武は松坂が投げる予定が回避になっちゃったんで、ちょっとめげたんだ。  めげたのが、いけなかったあ。  く、く、くそ〜〜〜! 今年の目標は何といっても古木克明選手の生ホームラ ンを見ることだからなあ。きょう行けば、見ることができたのかあ!  まあ、いいや。横浜ベイスターズが溌剌とした動きを見せてくれれば。  昨年の最下位を思えば、明るい材料を見せてくれるだけでも、満足だ。  いやはや、うれしいぞ、楽しいぞ!  今夜はスポーツ・ニュースをはしごだ!

 
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