２月２１日（金）

　天気はいいけど、風は冷たい。

　午前１１時３０分。嫁と、ゆりかもめの汐留（しおどめ）駅の複合商業施設
「カレッタ汐留」へ。





　大型ショッピング・モールを想像していたんだけど、どう見てもビルのほとん
どが、日本最大の広告代理店・電通のビル。
　すごいよ。電通の入り口は、警備員がいるんじゃなくて、電車の改札口のよう
だ。思わずＳuica（スイカ）をつかいたくなる。

 



「カレッタ汐留」は、地下１階と２階の思ったより小さな施設。
　マクドナルド、げんこつラーメン、炭焼き車屋、天ぷらのつな八、やぶそば、
崎陽軒、おむすび権米衛、マツモトキヨシ、ローソンなどが入っている。
　要するに、株式会社電通専用の大型食堂。
　ちょっと変わっているのは、京都の「茶寮　都路里（つじり）」と、カレーう
どんのお店「古奈屋（こなや）」が入っていることぐらい。

　ということで、読売広告の岩崎誠と待ち合わて、Ｂ２のカレーうどんの「古奈
屋（こなや）」へ行く。
「古奈屋（こなや）」は、巣鴨が本店で、池袋にも支店があって、この「カレッ
タ汐留」にも出店した。

 



　私は、もちカレーうどん　１１５０円。
　嫁と岩崎誠は、エビもちカレーうどん　１５００円。
　あいかわらず、フランス料理のような上品なスープは健在だけど、巣鴨本店に
比べると、ちょっとスープが濃くて、辛い。
　でも、我が家のカレーうどんランキング第１位の風格は堅持。
　最近ちょっと高松の「鶴丸うどん」と、京都の「しみず」が、「古奈屋（こな
や）」に大接近して来ているけどね。

　午後１２時３０分。そのまま３人で、東銀座の「茜屋珈琲店」へ。
　築地のハドソンに来るときは、必ず１回は寄って行くお店だけど、今回は４連
戦の最終日のきょう、やっと来ることができた。
　やっぱりこのお店のブレンド・コーヒーは、ほっこりするなあ。
　癒される格別のコーヒーだ。

 



　午後１時。岩崎誠もいっしょに、築地のハドソンへ。
　岩崎誠は、昨日札幌開発チームが持って来てくれた新キャラを見ていく。
　この新キャラを今年、商品化しようという動きがあるのだ。
　今回の『桃太郎電鉄12（仮）〜地方編』は、岩崎誠の加入によって、また違っ
た動きを見せることになりそうだ。

　というわけで、きょうはハドソン４連戦会議の最終日。
　札幌開発スタッフのメンバーは、川田忠之くん、込山勉くん、加藤和美さん、
小坂晃弘くん、田中俊介くん。
　ハドソン宣伝部の梶野竜太郎くん、藤原伸介くん。
　私、嫁、土居ちゃん（土居孝幸）、柴尾英令くん。
　そして、ひさびさに登場の井沢どんすけ！　カモ〜ン！

  



　よく「井沢どんすけサンは、桃太郎チームでいったいどんな役割をしているの
ですか？」と聞かれる。
『桃太郎電鉄』は、イベントのアイデアは当然のことながら、私が考える。
　そのイベントの演出を柴尾英令くんが考える。
　仕様書がまとまると、札幌開発スタッフに送る。
　仕様書をもとに、札幌開発スタッフが絵コンテにする。
　絵コンテをもとに、土居ちゃんがイラストを書く。
　この段階で、何回か東京と札幌でキャッチボールが行われ、何回かやりとりし
た上で、ロムに焼き付けて、完成となる。

　この完成寸前で、井沢どんすけのチェックが入るのだ。
　私も、柴尾英令くんも、札幌開発スタッフも、土居ちゃんも、苦労してイベン
トを作っているわけだから、どうしても、欲目で見てしまって、正しい判断がで
きなくなる場合がある。

『桃太郎電鉄11』でたとえれば、キングボンビーが桁外れに大きくなる演出を入
れたけど、あのグラフィックを井沢どんすけに見せて「すげ〜〜〜！　でけ〜〜
〜！」という叫び声がでなければ、失敗なのである。
　そうなのですよ。
　実はこの井沢どんすけという薄い顔の男が『桃太郎電鉄』の最終決定権を握っ
ているのですよ。
　ＳＦ映画などで、巨大なマシーンが大暴れするけど、マシーンを壊したら、運
転席から出て来たのは、メガネをかけた背の低い科学者だったみたいなもんだね
　井沢どんすけの完成は、とにかくお客さんの嗜好に近いのだ。
　過去、何度も井沢どんすけの嗜好を無視して作ったことがあるけど、ことごと
くお客さんの反応は、井沢どんすけ寄りだっだ。
　とにかく井沢どんすけが好むものは、お客さんも好む。
　井沢どんすけが見るＴＶ番組は、必ず視聴率２０％になる。
　井沢どんすけが買うゲームソフトの大半が、１００万本ソフトである。
　井沢どんすけ、最大の異能である。
　
　そんなわけで、本日、井沢どんすけにまずゲスト・ボンビーを見せる。
「うわ〜〜〜〜〜〜！　光ってる！　うわ〜、顔が見えない！　あっ、あっ、あ
っ、顔が見てえ〜〜〜！」
　この井沢どんすけの「顔が見てえ〜〜〜！」が大事なのだ。
　ちょっとキャラを大きく作りすぎてしまったので、実は汽車が動かないと、顔
が見えづらい。
　ということから、最初に顔のどアップを見せて、マップ上では、少し小さく見
せて、悪行のときに巨大化すればいいと私たちは読み取るわけだ。

　すでに、悪行のときには、巨大化する演出は入っている。
「あはははは！　あはははは！　えへえへえへっ！　えへえへえへっ！　えへえ
へえへっ！　ひーーー！　ひーーー！　ひーーー！」

　出た！　井沢どんすけの呼吸困難３連発だ！
　井沢どんすけの場合、まあまあおもしろいと「あはははは！」と笑う。
　もっとおもしろいと「えへえへえへっ！」が始まる。
　で、最上級が、受けすぎて「ひーーー！　ひーーー！　ひーーー！」と、息苦
しくなってしまうのだ。
　きょうは、この最上級が出た。
　実は、この最上級より上が、一度だけ出たことがあった。
　キングボンビーが、『桃太郎電鉄』に初登場したときだ。
　このときは、正真正銘の呼吸困難に陥って、５枚くらい積み上げられた座布団
に顔を突っ込み、ひくひくしていた。
　さすがに、キングボンビー初登場のとき以上の衝撃を、井沢どんすけに与える
のは難しい。
　でも、『桃太郎電鉄12（仮）〜地方編』用のゲスト・ボンビーも、じゅうぶん
息苦しくなっていたので、天下晴れて、ＧＯサイン！
　井沢どんすけのお墨付きで、私たちは心置きなく、イベント完成に向けて、練
りこみ、チューニングを始められるのだ。

　ほかにも、井沢どんすけが笑い転げていたのは、貧乏神の新しい動き。
　シリコプターであれだけ笑いすぎた男が、少々のことでは笑ってくれないと思
っていたのだが、新しい動きのいくつかのうち、ふたつを大爆笑！
　なるほど、こういう動きを気に入るのか…と、全員肝に銘じる。

　ここからは、『桃太郎電鉄Ｕ（仮）』の打ち合わせ。
　いろんなイベントに対して、柴尾英令くんが希望する演出と、札幌開発スタッ
フが希望する演出のすり合わせ。
　こういうときは、映画的手法を知悉している柴尾英令くんの独壇場だ。
「ふ〜ん。柴尾英令くん、よくそんなに格好いい演出浮かぶね〜！」と、私。
「専門用語が多くて、全然わからない！」と、土居ちゃん。
「まったく、あなたたちは他人事のように！」と、柴尾英令くん。
「はっはっは。適材適所！　適材適所！」

　午後４時。さらに、『桃太郎電鉄12（仮）〜地方編』の打ち合わせ。
　ここで、大問題発生！
　あるおもしろいイベントを実現化させたいのだけれど、どうにも、あっちこっ
ちと緩衝しあって、ルール自体を変えるか、何１０種類ものイレギュラー場面ひ
とつひとつに対応する処理を考えたり、いちいちエラー・メッセージを作らない
といけない。しかもお客さんにとってそのイベントのおもしろさが、スムーズに
伝わるかどうか、はなはだ難しくなってきた。

　みんな、おもしろいイベントになることがわかっているので、苦労してでも、
実現させたい。その空気は漲（みなぎ）っている。
　しかし、札幌開発スタッフが見つけてくれた不都合は、困難を極める。
「いや〜、まいったなあ！」
「おもしろいんですけどねえ、このアイデア！」
「どうしよう…」
「ああして、こうして、こうすえばいいんじゃ…、あっ、それじゃ、物件を買う
手順が狂っちゃうなあ！」
「うーーん。惜しい」
　本日、いちばん時間がかかった。

「う〜〜〜ん。さくまサン、どうします？」と、柴尾英令くん。
「う〜む！　そうだなあ…」
「難しい問題が多いですねえ…」
「ということは、いつもの必殺技を出すかなあ…。××××とすべき部分をやめ
てだね。××××のほうのアイデアに、ガラッと変えちゃう！」
「え？」
「へ？」
「あ！」

　柴尾英令くんが、笑い転げる！
「わ〜〜〜はっはっは！　出た！　朝令暮改！」
「はっはっは！　恒例の朝令暮改だ！」
「この親父〜〜〜！」
　柴尾英令くんの「この親父〜〜〜！」は、揶揄ではなく、賞賛だ。

「朝令暮改」
　朝出された命令が夕方には改められる意〕法令などがすぐに変更されて一定せ
ず、あてにならぬこと。…国語辞典より。

　まあ、「朝令暮改」は悪い意味につかわれるけど、ことゲーム作りに関しては、
この「朝令暮改」を連発しなければ、いいものは作れない。
　だいたいにおいて、「せっかくここまで作ったのだから、もったいない！」と
言って残したアイデアほど、その作品をつまらなくするものはない。
　戦さというものは、突撃よりも、撤退のほうが何倍も難しい。

　過去、何本もゲーム作家としてヒット作をつくって来た柴尾英令くんだからこ
そ、ここまで作り上げたイベントを捨てる苦しみと、捨てる大切さを理解できる
のだ。
　いちばん辛いのは、必死になって考えて、考え抜いて、仕様書にしたものを捨
てる私なのだ。でも本当に辛いのは、この複雑なアイデアに固執して、なんとか
作り上げても、お客さんに受けなければ、それまでだ。
　過去に原稿用紙にして１万枚のシナリオを、自分でボツにして、別のシナリオ
を書き上げたことだってある。
　というわけで、「朝令暮改」！

　午後５時。ストロウ・ドッグスのコイズミリュウジと石川キンテツが到着。
　さっきの問題点で、時間をロスしてしまったので、ふたりを待たせておいて、
大急ぎで、あれこれ打ち合わせ。

　午後６時。総勢１２人で、松竹スクエアビル１Ｆのお寿司屋さん「樹太老（き
たろう）」へ。
　きょうはこれから、どっこいズ（井沢どんすけ、すとろう小泉、石川キンテ
ツ）と、込山勉くんとの『桃鉄公式戦』の再戦を予定している。
　どっこいズという名前は、『桃太郎電鉄』が下手で、３人とも実力がどっこい
どっこいから来ている。
　込山勉くんは、おそらく『桃太郎電鉄』の仕様書をいちばん隅から隅まで知り
尽くしている男だ。間違いなく私よりも、圧倒的に詳しい。
　どのマスが何色かも知っているし、カードの確率も覚えている。
　なのに、どういうわけか勝てない。

　今年の１月に、込山勉くんはどっこいズ（井沢どんすけ、すとろう小泉、石川
キンテツ）と戦って、あろうことか、最下位に沈んでしまったのだ。
　このとき、１位になったのが、敵に回すと恐いが、味方にするともっと恐い男・
井沢どんすけ！
　込山勉くんも運が悪い。
　数年ぶりで１位になっていい気になっている井沢どんすけから「込山勉くん
は、どっこいズの２軍だな！」と、屈辱的な宣告を受けてしまった。

　午後７時３０分。築地のハドソンに戻って、どっこいズ（井沢どんすけ、すと
ろう小泉、石川キンテツ、込山勉くん）戦。
　もちろん、対決は『桃鉄公式戦』。

「込山は、とにかくサイコロの出目が悪いからなあ…」
「イベント運も悪いしなあ…」
「本当は強いんだけど、大勢の人が見ていると、弱いからなあ…」
　札幌開発スタッフが心配するなか、スタート！

　最初の目的地は、釧路。
「うわ〜！　遠い〜！」
「わっ！　勝てない！」
　何で「勝てない！」と叫ぶのかわからない。
　条件はみんないっしょだよ。

　いっせいに、房総半島のワープ駅をみんながめざすが、この辺がどっこいズの
どっこいズたる所以。なかなかワープ駅にぴったり止まれない。
　けっきょく何で山手線をうろうろしているのか意味不明な石川キンテツが、よ
うやく航路で釧路をめざして、たまたあ手に入れた新幹線カードをつかって、釧
路までぴったりの１１を出す！
　４億５０００万円獲得！
　早くも、込山勉くんに貧乏神がつく！
「あ〜〜〜！」
「やっぱり〜〜〜！」
　札幌開発スタッフから、落胆と苦笑が洩れる。
「ふふ、ふふ…。まいりましたね…」と、込山勉くん。

　次の目的地は、長崎。
　言っておくが、北海道の釧路の次の目的地は、九州の長崎である。
　なのに、なぜか井沢どんすけ、石川キンテツ、込山勉くんの３人は、関東地方
に集結する。
「ええっ？　目的地は長崎じゃないの？」
「長崎ですよ！」
「何でみんな関東地方にいるの？」
「館山のワープ駅めざしてるんじゃないですか？」
「へ？　石川キンテツは、八丈島の辺の航路にいたよ！　なのにワープ駅めざす
の？」
「そうみたいですよ」
「わからないなあ…」」
　そんなわけで、誰も長崎に入れることなく、１年目の決算を迎える。

１年目
１位・石川キンテツ　　　４億３４００万円
２位・井沢どんすけ　　　　　３０００万円
３位・込山勉　　　　　　　―２９７０万円
４位・コイズミリュウジ　　―５６００万円

　さ、さすが、どっこいズ！
『桃鉄公式戦』は、１億円持ってスタートなのに、３人が１億円以下！
「スタートしたときより、減ってるじゃん！」
「あっ、そういえば！」
「なんだ。やっぱりみんな下手なんだ！」
「そうだよ、だからどっこいズなんだよ！」
「『ジャパンカップ』で優勝する人なんて、『桃鉄公式戦』で５０億円くらい出
して優勝するんですよね。ってことは、１年目の１位は。２０億円ぐらいになっ
てもいいんですよね！」
「そうだよ！」
「２０億円が、４億円って…」
「だから、どっこいズだよ！」

　２年目７月。井沢どんすけ、千両箱カードで、４億４０００万円獲得！
　一気に、首位に踊り出る！
　千両箱カードで、首位に立つなよなあ！

　２年目８月。
　ここから、込山勉くんが豹変した！
　全員が、目的地である長崎に集結するや、冬眠カードをつかう！
「うわあああああああっ！」
「ひで〜〜〜！」
「何てことするんですか！　込山勉さん！」
「ふふ、ふふ。きょうのオレは、手段を選ばないぞ！」

　おお！　込山勉くん、本気で勝ちたいんだ！
　カードのつかい方がまったく下手な…というか、進行系のカード以外つかうこ
とができないどっこいズにとって、カードの特性を熟知している込山勉くんが、
カードを繰り出すと、核の脅威！
「ブッシュだ！　ブッシュ大統領だ！」
「イラクに査察が入ったようなものだ！」
　ほとんど意味不明。

　込山勉くんの目の色が変わっている。
　冬眠カードをつかった翌月、長崎のひとつ手前の赤マスに入る。
「えっ？　込山勉さん、赤に止まっちゃっていいんですか？」
「ふふ、ふふ…」
「きょうの込山勉さん、どこかが違う！」
　出た！　子分体質の石川キンテツ、早くも込山勉くんにおべんちゃらを言い出
す。

　あっ！　そういうことか！
　込山勉くん、翌月、１進めるカードをつかって、長崎に到着！
　きょうの込山勉くん、死に物狂いだ！
　
　次の目的地は、稚内。
　しかし、釧路、長崎の次の目的地が、稚内かい。
　目まぐるしい。
　込山勉くんの死に物狂いはさらに続く！
　石川キンテツが、北海道カードで、札幌まで飛ぶや、みなぶっとびカードをつ
かう！
「うわああああああ！」
「ひで〜〜〜！」
「手段選ばない！」
「きょうの込山勉さんは、『悪』だ！」
「悪の化身だ！」
　すっかり、どっこいズ（井沢どんすけ、すとろう小泉、石川キンテツ）は負け
モードに入る。
　
　込山勉くんの悪の快進撃は続く！
　ばかもんカードも、つかう！
　場所がえカードも、つかう！
「うぎゃあああああ！」
「はぎゃああああああ！」
「ほぎゃああああああ！」
　これほど悪の限りを尽くしているが、思ったほど込山勉くんが独走しているわ
けではない。

 



　２月。井沢どんすけが、稚内に入る。
「ふい〜！　やっときょう初めて目的地に入れたよ！」
　次の目的地は、湯布院。
　釧路→長崎→稚内→湯布院。
　何だか、どっこいズらしい目的地の偏り方だ。
　貧乏神は、込山勉くんへ。
　どうも迫力に欠ける悪の化身だ。

☆２年目。
１位・井沢どんすけ　　　８億９６８０万円
２位・石川キンテツ　　　４億２９８０万円
３位・込山勉　　　　　　３億６７７０万円
４位・コイズミリュウジ　　　８４００万円

　ようやく順位らしくなってきたが、井沢どんすけの約９億円の収益の半分は、
千両箱カードからの収入である。

　そろそろ、功をあせる石川キンテツの愚行が始まってもいい時期だ。
　やっぱり出た！
　石川キンテツは、名古屋駅にいる。
　目的地は、九州の湯布院である。
　名古屋駅から、湯布院に向かって、ぶっとびカードをつかうだろうか？
　つかうのである。
　どっこいズ（井沢どんすけ、すとろう小泉、石川キンテツ）の特徴として、最
終年は、ぶっとびカードで、ホールイン・ワンを狙うのである。
　石川キンテツはぶっとびカードをつかった！
　ポソッ！
「あれ？」
　哀れ、石川キンテツのヘリコプターは、名古屋から近江八幡駅へ。
　わずか４マスである！
　
　湯布院には、必死の込山勉くんが到着。
　やっぱり、きょうの込山勉くん、手段を選ばない。

　次の目的地は、高知！

　ここからが長い。
　ぱったり、誰も高知に入れない。

「お〜〜〜い、眠いぞ！」とギャラリーから声があがる。
「ダメじゃーーん！」と、柴尾英令くんがトイレに行ってしまう。
「あっ、オレも行こ！」と、土居ちゃんまでトイレに。

　みんなが戻って来たところで、決算を迎える。
　とうとう誰も目的地の高知には、入れなかった。
　何てテンポの悪い展開なのだ。
　貧乏神も一度も、キングボンビーにも、ブラックボンビーにも変身せず。

☆決算☆
１位・込山勉　　　　　１３億２２７０万円
２位・井沢どんすけ　　１２億４９６０万円　
３位・石川キンテツ　　　５億２６９０万円
４位・コイズミリュウジ　２億４４６０万円

　６０００万円ほどの僅少差で、込山勉くん、優勝〜〜〜！
　パチパチパチ！　　パチパチパチ！
「おめでとう！　込山勉くん！」
「おめでとう！　込山勉くん！」
「おめでとう！　込山勉くん！」
「よかったね〜、込山勉くん！」

「込山勉くん！　これでどっこいズ入りだね！」と柴尾英令くん。
「えっ？　どっこいズ入り？」
「この間どっこいズの２軍だったんだから、正式にどっこいズ入りでしょう！」
「そうだったのかあ！」

　というわけで、込山勉くんは、晴れてどっこいズの一員になったとさ。
　めでたし、めでたし…。

　午後１０時。『桃鉄公式戦』のあと、『桃太郎電鉄12（仮）〜地方編』の『地
方編』のテスト・プレイ。
「えっ？　もう新しいカード入っているんですか？」
「いくつかはね！」
　早い仕上がりだ。
　さっそく新しいカードのチューニングに入れた。
　むむ。妨害系のカードの被害額に、井沢どんすけが悲鳴を上げないな。ってこ
とは、もうちょっと被害額を増やしたほうがいいってことだな。
　ふっふっふ。『桃太郎電鉄12（仮）〜地方編』発売後、このカードを喰らっ
て、被害甚大になった人は、井沢どんすけを怨んでください。

　午後１０時３０分。帰宅。
　ふい〜〜〜！　ようやく４日間の疲れが出てきた。
『桃太郎電鉄12（仮）〜地方編』の製作は、順調。
　このまま気を緩めずに、１年間乗り切りたい！