2月13日(木) 午前3時。夜中に目が覚めたので、iモード・ゲームの毎月エッセイを書き始 める。 今月の旅は、名古屋駅。 名古屋ではなくて、名古屋駅。 名古屋駅から東西南北に旅行するようになって、旅が病みつきになった。 そんな思い出話を書いた。 午前8時。フジ『とくダネ』でも、雇用施設の売却を話題にした。 240億円もかけて建設した保養施設を、市や県に、わずか1万500円で売 却したりしている場所が、日本じゅうに何10件もあるらしい。 この話は本当にひどい。 もっとくわしく具体的に伝えたいんだけど、インターネットのサイトが見つか らない。うーん。グーグルはつい最近の話題はまだ拾えないからなあ。 国民はもっとこういう問題を怒るべきではないのだろうか。 この問題は『ニュースステーション』でも放送していたけど、民放が連日取り 上げて、官僚の天下り人事を明らかにすべきではないだろうか? 官僚たちにやりたい放題にさせている私、国民はちょっと頭が悪すぎる。 午前11時30分。嫁と、渋谷の「上海ヌードル」へ。 特製五目あんかけ焼きそばのランチ・セット。最強杏仁豆腐がついて、780 円だ。 おいしかった。 でもここは撮影禁止。 伝えたいのになあ、このおいしさ。 食後、「ブックファースト」で、本を買いまくる。 鳥山明くんの絵本『てんしのトッチオ』(集英社)も買う。昔から彼は、こういう絵本を描きたいとずっと言っていた。 彼と絵本の話をしていた頃が、何だかなつかしい。 そういえば、長いこと、鳥山明くんに会っていない。 あいかわらず、動物を描く上手さは、天下一品だなあ。 鳥瞰図をちゃんと描けるのは、日本の漫画家では鳥山明くんだけだ。 午後1時。帰宅。 しばらく『桃太郎電鉄12(仮)〜地方編』の仕事。 午後1時30分。嫁に「午後2時になると、柴尾英令くんが来るから、その前 にらぴすサンでコーヒー飲まない?」と誘うと、「それがね。午後2時に、柴尾 英令さんは来ないのよ!」 「な、何だって!? また寝坊かい!」 「きょうは、『キダムのチケットがない!』、『チケットが見当たらない!』、 『やっとあったので、30分ほど遅れます!』という連絡がさっきあったばかり よ!」 「やられたあ!」 きょうはあの「キダムが来ます!」のチケットを柴尾英令くんが手配してくれ たんだけど、それをどこにやったのか、また家の中で大騒ぎしていたそうなの だ。 まったく財布を無くしたり、寝坊したり、忙しい男だ。浅草キッドの水道 橋博士は、柴尾英令くんを「博覧強記」と、その博学ぶりを誉めたが、私に言わ せれば「博覧狂気」だ! 午後2時。けっきょく「らぴす」サンで、コーヒーを飲み、家に戻って、仕事 をしながら、柴尾英令くんの到着を待つ。 午後2時30分。「こんにちわ〜〜〜!」 おおっ。柴尾英令くんの到着だ。 さっそく、柴尾英令くんと、新しい掲示板について打ち合わせする。 昨年、札幌の開発スタッフとやりとりした掲示板は、目に見える形で、成果が 出たので、通常の連絡掲示板のほうを今度は、強化しようということになった。 今度の掲示板は、項目を3つに分ける。 ・通常掲示板。 ・プロモーション掲示板。 ・決定スケジュール。 これで、今後の予定などは、「決定スケジュール」を見れば、井沢どんすけが 次の会議がいつか忘れることがなくなるし、「プロモーション掲示板」のほうで は、今年1年間の宣伝計画や、「ジャパンカップ2004」の計画をみんなで会 議することができる。 ゲーム作家が、宣伝についてまで口を出すのは性に合わないのだが、昨今のよ うにゲームが売れない時代には、『週刊少年ジャンプ』で学んだ豊富な宣伝戦略 を伝授するしかない。 『週刊少年ジャンプ』のお客さん本位の戦略を伝えると、どういうわけかと露骨 に眉をひそめる人がいる。 どうも理解不能のようなのだ。 お客さんのことだけを考えたカンタンな論理なのになあ…。 だからときとして、嫌われることまである。 嫌な役だけど、やるしかない。 さらに、『桃太郎電鉄U(仮)』の打ち合わせ。 いよいよゲームの基本システムがまとまってきた。 きょうはカードの仕様書を私が書いて、イベントのほうの仕様書を柴尾英令く んが書くことが決まった。
はっはっは。『桃太郎電鉄U(仮)』は、従来のシリーズとは、一線を画す内 容なので、もっと具体的に書きたいのだが、珍しく匂わせることも、タブーだ。 午後5時30分。家族3人+柴尾英令くんの4人で、原宿駅前の「九州じゃん がららーめん」へ。 博多発信のラーメン屋さんだけに、柴尾英令くんは、角煮、煮玉子、明太子の 「全部入り」を注文するとばかりおもったのだが、「明太子をラーメンのなかに 入れるのは邪道ですよ!」と主張。 ほう。一丁前に鉄則があるのだなあと思ったのも、つかのま。 「こぼんしゃんに、角煮、煮玉子入り、きくらげも!」とか言っている。 明太子以外、全部入っているやないか! もちろん、替え玉も注文していた。 すごい。もう「キダム」を見た気分だ。
午後6時30分。原宿駅前の喫茶店で、コーヒーを飲んだ後、そのまま家族3 人+柴尾英令くんの4人で、原宿の代々木体育館と、NHKの間の広場に特設さ れた「キダム」の巨大テントへ。
何たって、「キダム」だ。 「キダムに来ます!」の「キダム」だ! モー娘。の加護ちゃんが「象は来ないのかなあ…」とテレビで言っていた「キ ダム」だ。 前回、『サルティンバンコ』を見せてくれたカナダのモントリオールを拠点に するエンタテインメント集団・シルク・ドゥ・ソレイユの新作だ。 とはいっても厳密には、新作ではない。 『アレグリア』、『サルティンバンコ』、『オー』、『ドラリオン』…といった 8つの公演をつねに世界じゅうで演じているらしい。 芝居のロングラン公演みたいなものだな。 大道芸集団と呼ぶには、規模が大きすぎ、サーカスと呼ぶには、動物が出てこ ない。とにかくオリンピックの体操競技で金メダルを取った人が何人もいるよう な集団が人間業とは思えないような離れ業を繰り広げる芸術だ。 結論から先にいうと、入場料の1万1500円より、3倍おもしろい! 直径2メートルの鋼鉄のホイールをたったひとりで自由自在に操るパフォーマ ンスがすごい。舞台の下に落ちる直前でストップさせ、ぐるぐる見ているだけで 目が回るような回転を延々続ける。 中国雑技団のような小さな女の子たちが現れて、ディアブロと呼ばれる木製の 糸巻きのコマをずっと回し続けながら、宙に飛ばしてはキャッチして、いきなり 隣りの子に飛ばして、お互いがキャッチする。 これはもう見事としか言い様がない。 縄跳びを始める。 子どもの頃、二重跳びができなくて、何度も、何度も、練習した。 その二重跳びどころか、三重跳び、後ろ跳びしながら、4人も5人もの人たち が、おなじ長いロープの縄跳びのなかで、いっしょに跳んでしまう。 バック転しながら、縄跳びのなかに入って行くかね、しかし。 圧巻は、女性のアーティストによるソロ・パフォーマンス。 床から細い、細い、ポールが人間の腰ほどの高さまで延びている。ポールの先 には、豆腐一丁ほどの大きなの板があるだけ。 この板を右手で持ち、その上に立ち、倒立し、スタンドの上に片足で立ち、も う片方の足を自分の首の後ろに回す。 この信じられないアクロバットを、ゆっくり、ゆっくり、スロー・モーション のような遅さで、演じる。 こういう筋肉技は、ゆっくり演じることのほうが、圧倒的に難しい。 ほかにも、空中から垂らされた赤い布をつかったパフォーマンスや、ロープを つかったパフォーマンスなど、とにかく観客が「おおおおおおおっ!」と唸る技 の連続だ。 ただ、私はこの「おおおおおおおっ!」と唸る技の連続が気になった。 「お〜〜〜〜〜〜!」と叫ぶ技が少なかった。 もちろん入場料の3倍おもしろいと感じたから、圧倒的なおもしろさなのだ。 でも、その演技の素晴らしさを文章で伝えるのが、非常に難しい。 縄跳びの難しさは、一度でも縄跳びを練習したことのある人なら、その難しさ は想像がつくだろう。しかし、長い縄跳びのなかで、4〜5人のアーティストが 出たり、入ったりする難しさがどのくらいの難しさなのかを連想するのが難しい。 スタンドをつかった筋肉技も、「キダム」を見ていない人に、「こんなすごい 技を見せてくれるんだよ!」と伝えるのが難しい。 要するに、『サルティンバンコ』より、難易度が3倍も、4倍も高いんだけど、 「ケレン味」が、3分の1くらい少ないのだ。 「空中ブランコの連続なんだよ!」 「天井まで延びたポールを何人もの人たちがするすると登って行ってしまうんだ よ!」 「空中に張った1本のロープの上を飛び跳ねて、回転までしちゃうんだよ!」と 言えるパフォーマンスのほうが、他人に説明しやすい。 プロレス・ファン向けにいうと、アントニオ猪木とムハメド・アリの対戦より も、ミル・マスカラスのような空中殺法のほうが、他人に説明しやすいようなも のだ。 狂言回し役のスキンヘッドに刈り残したヘアー・スタイルの人が、スピルバー グ監督の『A.I.』のジゴロに似ていて、「キダム」自体が、あの映画の雰囲 気によく似ている。 あの高尚さと、緻密さと、暗さと、地味が漂っているのだ。 衣装も、明るい色はほとんどつかっていない。 要するに、ライター泣かせのエンタテインメントだ。 異次元の世界に飛び込むきっかけになる主人公の女の子はかわいくて、声がか わいくて、歌が上手い。 …といっても、かわいらしさ、声のよさは、見ていない人に、百万語を費やし ても伝わらない。 だからこそ、『とくダネ』の小倉智昭さんを応援団長にして、モーニング娘。 をCMにつかい、ピーコ、キャイ〜ン、中沢裕子、後藤真希、神田うのといった 人たちをサポーターにした戦略は素晴らしい。 「キダム」は、入場させてしまえば、間違いなくその素晴らしさを味わうことが できるからだ。 午後9時。渋谷のパルコ1Fの「モフ・カフェ」で、柴尾英令くんと「キダム」 の感想を言い合う。 柴尾英令くんは、高田純次さんによく似たピエロ役の人が「ダメじゃ〜〜〜ん!」 といった日本語を連発したのが、「キダム」の芸術性のバランスを狂わせていた というが、至言だ。 よくまあ、あれだけ日本語を覚えたと感心するのだが、外人さんの日本語は、 せっかくの高尚なムードを半減させる。 とはいえ、言っておくけど、すごいのですよ、「キダム」は。 もしあなたが20歳前なら、親を騙して、高い入場料を払わせてでも行くこと だ! こんな素晴らしいエンタテインメントを知らずに死んで行くなんて、もっ たいない。 午後11時。帰宅。 さすがに「キダム」の余韻を噛みしめ、日記は明日にして、寝る。
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