２月４日（火）

　午前１１時３０分。嫁と、渋谷の「ブックファースト」へ。
　雪がちらちら降っている。
　まるで京都で毎日舞っていたような冷たい雪だ。
　ストロウ・ドッグスのコイズミリュウジと待ち合わせ。

　そのまま、郷土料理の「宇和島」で、３人揃って、鯛めし。
　このお店は、店員全員が私がまだ左手が不自由なことを知っていて、木のスプ
ーンを持って来てくれる。
　こういう心配りをするお店の味が悪かろうはずがない。
　絶品の鯛めしに加え、椀物がけんちん汁に変わり、これがうまかった。





　午後１時。帰宅。
　読売広告の岩崎誠が来て、現在製作中のＣＭのビデオを持ってくる。
　お正月を過ぎたあたりから、ゲームキューブ版の『桃太郎電鉄11〜ブラックボ
ンビー出現の巻！』がじわじわ売れ始めているので、畳み掛けるために『ボンバ
ーマンジェッターズ』の枠で、ＣＭを流すことになるそうだ。
　速ければ、来週２月１２日（水）１８：３０から流れるらしい。

　Ａパターン、Ｂパターンを見て、どちらがいいか意見をいう。
　ＣＭは、非常にわかりやすくて、主旨がしっかりしていて、今までのどの年齢
層に売りたいＣＭなのかわからなかったＣＭよりは、格段にいい。
　今年はこういう風に、宣伝関係にも参加して、意見を言っていこうと思ってい
る。

　午後１時３０分。石川キンテツが到着。岩崎誠が帰る。
　私、コイズミリュウジ、石川キンテツの３人で、『桃太郎電鉄12（仮）〜地方
編』の『地方編』のテスト・プレイ。

　私が加わるので、ストロウ・ドッグスのコイズミリュウジと石川キンテツはス
タートの前から、戦々恐々として、過剰反応。
　私が、貧乏神の悪行で、サイコロ振って、カードを当てるイベントで、のぞみ
カードを当てただけで「えっ？　何かコントローラのどこかを押すと、当たるよ
うな裏技あるんですか？」と、あわてる。
「裏技なんてないし、そうまでしておまえたちに勝ちたくないよ！」
　だいたい、私のプレイぶりを知っている人なら、『桃太郎電鉄』が下手で有名
なストロウ・ドッグスのふたりを相手に、私が貧乏神を連れていること自体、
「えっ？　どういう理由があって、貧乏神つけてるの？」と言うに違いない。
　いろいろな場面を想定して、テスト・プレイしているのだ。

　午後３時。宝島社の後藤貴功さん、ライターの友清哲くんが来る。
『地方編』の私をＣＯＭキャラにして、出版企画の打ち合わせ。
『桃太郎電鉄１１』をベースにした旅行ガイドだ。

　おおよそのページの台割りが提示されて、いつでも仕事がスタートしそうな雰
囲気。内容的には『おいしい桃鉄』（小学館）の続編になるような内容だ。
　正式にＧＯサインが出ると、またまた短期間で、大量の原稿を執筆することに
なる。うれしい。

　カンタンに打ち合わせは、終了。
　先週土曜日、京都で友清哲くんと打ち合わせた段階で、内容には納得が行って
いる。

「そういえば、友清哲くんは『桃太郎電鉄』、得意だって言ってたよね！」
「ええ！」
「おお〜〜〜！」と、ストロウ・ドッグスのコイズミリュウジと石川キンテツが、
目を輝かせる。
「時間があるなら、ふたりと対決して行く？」
「ええ？　いいんですか？」
「でも、ふたりに負けると、『どっこいズ』の仲間入りという屈辱が待っている
けどいい？」
「どっこいズですかあ…」

『どっこいズ』というのは、井沢どんすけ、すとろう小泉、石川キンテツ、込山
勉くんからなるユニットで、揃って『桃太郎電鉄』が下手という共通点を持つ。
　この日記を読んでいる業界人にとって、『どっこいズ』の汚名を着るというの
は最大の屈辱らしい。

「しかし、友清哲くん！　今まで、『桃太郎電鉄』が得意だっていうので、テス
ト・プレイを頼んだら、ボロボロだったって人が多いんだけど、本当に強いの？」
「学生時代、『桃鉄四天王』と呼ばれてましたから！」
「４人しかいなかったんじゃないだろうなあ！」
「『桃鉄四天王』のなかでも、トップのうまさですよ！」
「おおおおおっ！　そこまでいうなら、やってもらおうじゃないか！」

「言っておきますけど、友清さん、僕たちは強いですよ！」
「石川キンテツ！　うちの日記を読んでいる人全員が、おまえたちを下手だと思
っているよ！」
「でも、本当は強いですよ！　きょうは勝っちゃいますよ！」
「毎回そう言ってるよ！」

　そんなわけで、コイズミ社長、ともきよ社長、きんてつ社長で、『桃鉄公式戦』
が始まる。

　１年目。最初の目的地は、長野。
　わずか７マスの近さ。
　こういうカードいらずで、サイコロの出目だけの勝負になると、石川キンテツ
が強い！　あっというまに、長野に到着。貧乏神が友清哲くんにつく。
「友清哲くん！　ふたりに負けると、どっこいズ入りだよ！」
「うーーーむ！」
　友清哲くんが無口になる。
　けっこう本気で意識している。





　２番目の目的地は、青森。
　友清哲くんが、青森に入り、「ふうっ！」と大きく息を吸う。
　やっぱり、『どっこいズ』入りを相当意識していたんだ。
　なにしろ、コイズミリュウジ、石川キンテツのふたりは「道場破り」ではなく、
「道場破られ」と呼ばれ、数々の人に喜びを与えてきた。
　それだけに、ふたりに負けるのは、屈辱以外の何物でもない。

　ここで、『桃太郎電鉄』が大好きだという人のために、『どっこいズ』の定義
をいくつか披露しておこう。

・１年に一度しか目的地に入らない。
・連続で目的地に入れない。
・他人が何のカードを持っているか、覚えられない。
・☆印カード売り場は、偶然入れたときだけ寄る。
・サイコロで１が出たら、両方赤マスしか行けない場所によく停まる。
・誰かが特急周遊カードを手に入れただけで「負けたあ！」と叫ぶ。
・最後の年は、とにかくぶっとびカードを多用して、一気に逆転を狙う。

　こんなレベルだから、ここから友清哲くんの独走が始まると思いきや…、な、
な、な、なんと、コイズミリュウジが、四国カードで、次の目的地・高知にホー
ルイン・ワン！
　一挙に、コイズミリュウジが優勢になる。

☆１年目の決算
１位・コイズミ社長　１０億１１８０万円
２位・ともきよ社長　　２億６４４０万円
３位・きんてつ社長　　　―３１２０万円

　友清哲くん、かなりあせる。
　コイズミリュウジ、独走態勢に入る！…ようでは、どっこいズではない。
　湯布院あたりから、次の目的地が、３０マスと見るや、何を考えたか、コイズ
ミリュウジは、レッツ５カードをつかう！
　５マス、５マス、５マス、５マス、５マス、５マスで、３０マスで到達しよう
としているのだ。
「ええ？　コイズミ！　レッツ５カードは、６回ももたないぞ！」
「えっ！？」
「しかも、山陽道は『桃鉄』のなかでも、いちばん赤マスが並んでいるところだ
から、コイズミリュウジは赤マスを絶対よけるだろう！　よけたら、レッツ５の
法則も崩れるぞ！」

　案の定、広島駅の先の赤マスにはまり、青マスに退避する。
　というより、レッツ５カード通りに進み、３回連続で、赤マスに停まったので、
しびれを切らしたというう言い方のほうが正しい。

　その間に、友清哲くんが、目的地である伊勢に到着！

☆２年目決算
１位・コイズミ社長　　８億７０５０万円
２位・ともきよ社長　　６億７５４０万円
３位・きんてつ社長　　　―８０００万円

　おっと、まだ友清哲くん、１位に立てず！
「友清さん！　どっこいズ入りが近いですよ！」
「うーーーん！」
　友清哲くんも、総資産マイナスの石川キンテツに言われたくはないだろう。

　いよいよ、３年目の最後の年。
　４月に、コイズミリュウジが、目的地の小樽に入る！

「友清さん！　どっこいズ入りが決定的ですよ！」
「うーーーむ！」
　くりかえすが友清哲くんも、総資産マイナスの石川キンテツに言われたくはな
いだろう。

　６月、コイズミリュウジが目的地に入る！　どっこいズにしては珍しい目的地
に連続到着だ！
「友清さん！　どっこいズ入りが決まりましたね！」
「うわああああ！」
　さすがに徳政令カードで、持ち金０円になったばかりの石川キンテツの意見は、
正しいかもしれない。

　友清哲くん、万事休す！！！！！
　どっこいズ入り、濃厚！
　どっこいズと、仮契約か！？
　どっこいズは、友清哲くん用に、背番号５を用意！

　７月。このまま終わっては、どっこいズの名が廃る。
　何を思ったか、石川キンテツは、とっかえっこカードをつかう！
「おい！　石川！　何をするんだよ！」と、コイズミリュウジ。
　石川キンテツは、とっかえっこカードで、コイズミリュウジから、なんと８億
円を奪ったのである！！！
　もちろん、コイズミリュウジの持ち金は、０円に！

「石川キンテツ！　コイズミリュウジに勝たせてあげないと、どっこいズの負け
になるぞ！」
「やっやっやっや…！　僕がトップになれば…！」
「なれるかよ！」
　一気にやる気をなくす、コイズミリュウジ。

　１２月。自暴自棄になったコイズミリュウジ、長崎駅からサイコロを振れば、
出目は３！　ズガガガアーーーン！　冬の赤マスに入って、撃沈！　自爆テロ！
　１月、友清哲くんが、今度はとっかえっこカードで、石川キンテツから、８億
円を奪う。

☆結果☆
１位・ともきよ社長　１５億０７８０万円
２位・コイズミ社長　　８億６４５０万円
３位・きんてつ社長　　３億８８５０万円

「あ〜〜〜、よかったああああ、負けなくて！」と、友清哲くん。
「石川キンテツ！　おまえがあそこで、とっかえっこカードをつかわなければ、
オレが勝っていたのに！」と、コイズミリュウジ。
「だって、僕にも勝ち目があったんだもん！」と、石川キンテツ。

「いやあ、手が汗でびっしょりでしたよ！　負けたら、さくまサンの日記に書か
れますからねえ！」
「石川キンテツ！　とっかえっこカードお金奪ったら、すぐつかえよ！　つかっ
てれば、友清さんが、そのあととっかえっこカードつかっても、オレに勝ち目が
あったのに！」
「だって、物件買える駅に停まれなかったんだから、仕方ないじゃない！」

　まさに、明暗を分けるというやつですな。

　友清哲くんは、宝島社の後藤貴功さんと、次の仕事に向かう！

「石川キンテツが、あそこで、あんなことをしなければ…」
「やっやっやっや…！　あれは戦略で…」
「あのままオレが８億円持ってたら、友清さんに勝ってたのに！」
「やっやっやっや…！」
「何てことするんだよ〜！」
「やっやっやっや…！」

　いつまでも、傷の舐めあいをするストロウ・ドッグスのコイズミリュウジと石
川キンテツであった。
　しかも、あげくにまだ強がりをいう。

「思ったより、友清さんは、強くないですね！」
「今度やったら、絶対勝ちますよ！」
　どこまでもお目出たき人たちである。

　午後６時。家族３人＋コイズミリュウジで、天現寺の「やきやき三輪」へ。
　石川キンテツは別件の仕事で参加せず。
　代わりに、偶然電話がかかってきた菅沼真理（通称：すがねまチャン）さんが、
青山３丁目からタクシー飛ばして、あっという間に合流。

 



　そばめし、豚キムチ、焼きそば、海鮮焼き、ネギ焼きなど、５人で、ばくばく
食べる！　土地柄、お店にはお笑い芸人、ジャニーズのアイドル歌手とかいて、
庶民的なお店なのに、はなやか。
　
　味もいいし、接客も熱心だから、芸能人も安心して来れるお店なのだろう。
　途中、店員がすがねまチャンの膝に水をこぼしてからの対応もすばやく、必死
さが伝わってきた。お会計のあとにも、お詫びしに来たのは、立派！

　味にうるさいうちのお嬢ちゃんが、このお店の味にはまる。
　相当お気に入りのようだ。
　私は最後の焼きそばが、めちゃくちゃおいしかった。

　午後８時。「やきやき三輪」の並びに、よくすがねまチャンと麻布十番で行く
喫茶店「ピラミデ」があったので、みんなで入る。
　すがねまチャンがお店の人を見て、「あら！」と叫ぶ。
　麻布十番のお店の人が、配置換えで、こっちのお店に来ていたのだ。
　系列店なのだから、ありえるけど、初めて入ったお店で、この偶然は楽しい。





　午後９時。帰宅。
『桃太郎電鉄12（仮）〜地方編』、『桃太郎電鉄Ｕ（仮）』、その他ＳＯＮＹプ
レプレ用の仕事など、あれやこれや！