2月1日(土)

 京都は、またしても朝から、雪だ。
 粉雪ちらちら。

 午前11時30分。嫁と、祇園の「おかる」へ。

 今年の京都グルメのテーマは、カレーうどん。  高松から帰ってきて、またうどんを食べるのは、いかがなものかなのだが、暴 飲暴食が続き、何を食べていいのかわからなくなってきたので、テーマに沿う。 「おかる」のカレーうどんは、ちょっと辛い。  その辛さも、胡椒の辛さだ。  麺は、京都なので、当然、はんなり、やわらかい。

 昨日まで、筋肉質のさぬきうどんを食べていたので、箸で持ち上げると、カレ ーのルーレットの重さで、ちぎれてしまうような麺は、軟弱者に見えてしまう。  これは、ひさびさに「O」と、イニシャルだけにするかと思っていたのだが、 私も嫁も、いつのまにか,肉カレーうどんを全部食べていた。  おいしかったわけだ。  食べ物の評価って、難しいねえ。  新しいお店で食べるときは、ものさしが過去最高においしいお店を基準にして しまう。カレーうどんでいえば、池袋・古奈屋(こなや)、高松・鶴丸、京都・ しみずだ。  この3つを思い浮かべて食べるから、この3つとも違う味だと、どうしても点 数が辛くなる。でも「おかる」のように食べていくうちに、そのお店の独自性を 把握できると、冷静な判断を下すことができるようになる。  こういう傾向は、ゲームにも当てはまる。  RPGなどとくに、先月買ったゲームと、ボタン操作が違うだけで、ダメなゲ ームと思ってしまうことが多い。そのゲームに責任はないのに。  粉雪が、雹(ひょう)のように硬くなって、当たると痛い。 「寒い!」「寒い!」と言いながら、四条河原町の「高島屋」まで歩く。  読売広告の岩崎誠から、電話が入ったので、京都駅まで行く。  午後1時。昨日、水道橋博士と待ち合わせた「グランジュール」で、岩崎誠に 会う。読売広告の松井梓さんもいっしょ。  松井梓さんは、今朝の午前9時の打ち合わせのために、午前6時の新幹線の始 発に乗って、京都までやってきた。  しかも、盛岡の生まれなので、京都に来たのは、きょうが初めてだという。  なのに、きょうこれから岩崎誠と東京に戻らないといけないのだ。  もったいないね〜、せっかく、京都まで来たのに。 「じゃあ、岩崎誠! きょうの日記には、松井梓さんを東京から呼んで不倫して いたと書いておくから!」 「何で突然こういう展開になるんですか! やめてくださいよ〜! 今朝、東京 から来て、いっしょに仕事して来ただけなんですから!」 「話はおもしろいほうがいいから、捏造してでも!」 「やめてくださいよ〜! ただでさえ、さくまサンが『ジャパンカップ200 3』の運営方法に腹を立てた相手は、ボクだって、噂が立っているんですから!」 「そうらしいねえ!」 「『笑止会』のとき、ボクが失敗したせいで、頭を丸めたの?と何人もの人に聞 かれたんですから! ひどい人なんて、今回大変だったみたいねとまで言われた んですからね! ボクは最初から、頭丸めてるっていうのに!」 「ほかの代理店だもんなあ、あの大会を運営していたのは! でも岩崎誠がヘマ をして、頭を丸めたという話題のほうがおもしろいから、日記には、そういう風 に書いておこうかなあ」 「やめてくださいよ〜!」  岩崎誠は、東京の会社のほうに、仕事のメールがたまりにたまっているので、 そのメールに対処しなければいけないので、このまま帰京して、その足で、読売 広告に戻るそうだ。  仕事の好きな男だ。  しかし、岩崎誠の右手には、いつのまにか伊勢丹デパート地下2階の「はつだ」 の特選和牛弁当がぶら下がっていた。  まったく、みんな私の日記をよく活用しているよ。  午後2時。嫁は伊勢丹デパートへ、ウインドウ・ショッピング。私は、プラッ ツ近鉄の旭屋書店に、物色に。  午後3時。伊勢丹デパート2Fの入り口で、東京からやって来た、ライターの 友清哲くんと待ち合わせ。  はっはっは。めまぐるしいでしょう? 私の日記って!  私も、高松に誰と行って、東京に誰が先に帰ったか、わからなくなりそうにな るよ。 「友清くん! そうせ仕事の打ち合わせするなら、イノダコーヒ本店に行きたく ない?」 「あっ! むちゃくちゃ行きたいです! 実は以前、イノダコーヒ本店まで行っ たんですけど、火事で改装中だったんですよ!」  午後2時。私、嫁、友清哲くんの3人で、「イノダコーヒ本店」へ。  あいかわらず混んでいて、「開店当時のお店を再現した部屋でもよろしいです か?」と聞かれる。ここは一度入ってみたかっただけに、「ぜひ!」と答える。

 友清哲くんは、『桃太郎電鉄』関連の本を企画していて、本当は成沢大輔くん といっしょに作ることになっていた。  でも成沢大輔くんがいま抱えている本だけでもたくさんあって、これ以上仕事 を増やすことができない状態だ。この話は成沢大輔くんからも直接聞いていた。  そこで、友清哲くんが「成沢大輔くん抜きでも、企画してもいいでしょう か?」という打診と、こんな感じの本にしたいという構成案を持って、わざわざ 京都まで来てくれた。  どうせ、『桃太郎電鉄』の名前のついた本なら、変な本にしたいという願望が あるので、友清哲くんの構成案が、私が考えていたアイデアにけっこう近かった ので、承諾する。  何より、私にも原稿を書いてほしいとういうのが、うれしい。  書きまっせ、書きまっせ!  いくらでも書きまっせ〜!  午後4時。せっかくだからと、友清哲くんと私の京都散歩コースをいっしょに 歩く。  錦市場コースだ。  藤野豆腐店で、豆乳ドーナツを買い食い。  ひさびさに食べた豆乳ドーナツは、おいしいなあ。  もちろん、有無を言わせず、友清哲くんにも豆乳ドーナツを食べさせる。  これが本当の「食わせ者」!

 きょうの錦市場は、笹カレイがおいしそうだなあ。 「こんにちわ〜!」 「こんにちわ〜!」 「ええっ? ええっ? さくまサン、市場のおばさんと知り合いなんですか?」 「ここでいつも卵買うから、覚えられちゃってるんだよ!」 「すごいですねえ!」 「函館でも、仙台でも、京都でも、私のことを地元だと思っている人が、何人か いる!」  錦市場で、あれこれ見ていくうちに、お腹が減って来た。  今時分からご飯を食べてしまえば、友清哲くんもきょうじゅうに東京に戻れる ので、食事することに。  ときおり、また雪が降るような寒さなので、京都のマンションの近くの「柳家 本店」へ。

 九絵(くえ)鍋を食べる。  魚のくえは、九絵と書くのか。  九絵(くえ)とは、関東以南の岩礁域に生息し、成魚となれば体長1メートル (30キロ)以上にもなるハタ科の白身魚だそうだ。  大きな口と茶褐色の外見からは想像しがたいけど、脂の乗ったその身はフグに も勝る美味しさといわれているらしい。  月に何本も捕れないことから、幻の高級魚ともいわれる。  この九絵(くえ)えお、白味噌仕立ての出汁で煮る。  水菜、お麩といった京都ならではの食材も入っていて、おいしい。  白味噌と、くえが合うなあ。

 このお店の名物、はもの箱寿司を注文することも忘れない。  甘くて、おいしいんだよ〜。

 午後6時30分。友清哲くんと別れて、仕事場に戻る。  さっそく、友清哲くんとの打ち合わせで出た宿題を検討する。  うひひひ。出版企画ほど楽しいものはない。  午後8時。フジ『めちゃイケ』の「芸人真剣勝負!! 究極笑わせ合い」が滅 法おもしろい。   芸人が柔道着姿で、対峙して、ギャグを言い合い、笑ったほうが負け。  この単純なルールで、トーナメント戦をやる。  中川家、ダチョウ倶楽部、おさる、ナイナイの岡村、ゴルゴ松本、板尾創路と いった人たちが戦う。「M―1グランプリ」のように漫才のおもしろさを競うよ りも、こっちのほうが、本来のお笑いの本道だと思う。  必死に笑いをこらえる芸人。  必死に笑わそうとする芸人。  こういうお笑い番組をもっと見たい。  今夜も『桃太郎電鉄12(仮)〜地方編』の仕様書作り。

 
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