1月29日(水)

 寒い! 寒い! 寒い! 寒い! 寒い! 寒い! 寒い! 寒い! 寒い!
 寒い! 寒い! 寒い! 寒い! 寒い! 寒い! 寒い! 寒い! 寒い!
 京都は寒い!
 京都が本気を出すと、北海道よりも寒い。
 比叡おろしの寒風が、耳を痛くする。

 午前11時。土居ちゃん(土居孝幸)と、柴尾英令くんが来る。
 ヤサカタクシーの宮本さんも到着して、4人で、嵐山に向かう。
 外の寒さと、タクシーのなかの暖かさの温度差で、眠くなる。

 午前11時30分。嵐山の老舗和菓子屋「老松(おいまつ)」へ。
 きょうは、ここで「和菓子懐石」というものをいただく。
 間違いではない。
「和菓子懐石」である。
「和菓子解析」でも「和菓子怪石」でもない。
「和菓子懐石」だ。

 前から一度来てみたかったのだが、1週間以上前から予約しないといけないの
がネックで、来る時期を逸していた。
 でも今回のメンバーからして、「和菓子懐石」という名にふさわしい肥満度で
あろう。
 ちなみに、昨日まで柴尾英令くんには、きょうここに来ることを言い忘れてい
た。まあ、柴尾英令くんがこういう変な席に来ることを嫌うはずがないので、事
後承諾である。
 ついでにいうと、私たちはこの「和菓子懐石」がどんなものか、まったく知ら
ない! わっはっはっは!
 事前に何でも調べすぎては、驚きがない。

 お店の奥に通される。
 隣りの部屋から、和服を着た男性が入ってきて、深々とお辞儀をする。
 みんなであわててお辞儀をする。
 やばいぞ、これは本格的だ。

「和菓子懐石は、本来食事を下げたあとに、お菓子ばかりを出して、お茶をさし
あげることから、和菓子のお茶事と呼ばれています」。
 ふーーん。
 えっ? ってことは、まったくご飯が出ないの?

 しまった。「和菓子懐石」といっても、ご飯が出て、そのあとの和菓子がたく
さん食べ放題になるようなコース料理だと思った。
 早くも、サプラ〜〜〜イズ(驚き)!

 しかも、完全にお茶席だ。  床の間のほうから、柴尾英令くん、土居ちゃん、宮本さん、嫁、私の順で並ん でしまったばかりに、和服の男性から、柴尾英令くんが「ご主人様!」と呼ばれ ている。そりゃそうだ。上座に座ってしまったのだから。  亭主席ということになる。 「柴尾くん! ご主人様だから、ついでお金も全部払ってくれ!」 「な、なんてことを!」

 まずは、椀物で、粟麩の白味噌が出る。  うまい! これは実にうまい!  デザートのようなものは、桃の実の紅茶煮だそうだ。  和菓子なのに、紅茶煮とは。  私たちも「コンポートか?」と、横文字を出してしまう。  何であれ、この桃の実もおいしい。

 この料理を食べ終わったら、箸をみんなで揃って、カチャッと落として、食事 が終わったことを、隣りの部屋に控えているお店の人に伝える作法などを聞く。 解説は非常にわかりやすい。  こういう作法は、お偉いさんたちの密談につかわれた場所なので、お店の人が うっかり入らないようにするためらしい。 「じゃあ、私たちも、密談をするか!」 「蜂蜜に、黒蜜に、あんみつに…」 「それは蜜談!」 「ありがとっ!」  三段重ねのお重が出てきた。  下から順に開けて、ひとつずつ和菓子を取って、懐紙の上に乗せて、黒文字 (爪楊枝)をお重に刺して、次の人に渡して行く。  これまた作法なのだそうだ。    三段重ねのお重なんだから、たくさん和菓子が入っていて、食べ放題になって いると思っていたよ! ひとり1個ずつとは! 和菓子なら3個か、5個くらい 平気だぞ!

 和服の男性は、和菓子懐石の由来など、やさしく教えてくれた。  村田珠光(むらたじゅこう)などという歴史の教科書に出て来たような人の名 前が何気なく出てくる。  創業は、明治41年。えっ? あまりにも有名なお店だし、この和菓子のお茶 事は桜田門外の変の井伊大老が好んでいたというから、てっきり江戸時代の創業 だと思っていた。  ちなみに「善哉(ぜんざい)」の創始者は、とんちの一休さんだそうだ。  最後に出てきたのは、わらび餅。  今までいろんなわらび餅を食べてきたけど、これは珍しい。  煮ているので、熱い。  熱いわらび餅なんて、初めてだ。  色が黒いわらび餅も、初めてだ。  しかも、うまい。  出来立てのおいしさだ。

 1時間ほどで、「和菓子懐石」は終了。  おもしろい経験である。  老舗「老松」の和菓子であるからして、味はもちろんいい。  ただ、ご飯無しの懐石であるから、ほかで食事をして来てから、わざわざ1時 間かけて、この和菓子ばかりの懐石を楽しむかといえば、せっかちな私には、と ても無理だ。  ほかで食事してきて、「老松」のお店のほうで、おいしそうな和菓子を3つほ ど口に放り込んで、抹茶でもいただいて、さっさと帰るほうがいいな。  お茶を習っている女性たちがわいわい言いながら向きには楽しそうだ。  少なくとも、土居ちゃん、柴尾英令くん、私が二度来るべき場所ではない。  ちなみに「老松」の名物・みかんゼリーは、4月より発売開始だそうだ。  このゼリーは、絶品ですぞ。  柴尾英令くんは、わらび餅が気に入ったようで、お土産に買っていた。  ついでに月餅まで買っていた。  午後12時30分。そのまま「車折(くるまざき)神社」へ。  今年の元旦に初詣に行った場所だ。  覚えている人もいるだろうが、家族3人で、朱塗りの板(玉垣)に名前を書い てもらったのが、そろそろ完成しているはずだ。  たくさん並んでいるから、すぐ見つかるだろうか。  …と思ったら、神社に入ってすぐのところにあった。  これは目立つ。  わっはっは。これは笑える。  藤間流、花柳流のみなさんの名前に混じって、わが家族の名前が堂々と書いて あるのは、笑えるぞ!  うちの家族の板から、右に5枚目くらいの板には「千宗室」さんの名前がある んだもん! もうちょっと先には、川島なお美さん、細川たかしサンの名前も。

 さくまにあのみなさま、京都嵐山に観光のおりには、ぜひ車折神社にお越しく ださい! 間抜けな家族の名前を見ることができます。  車折神社は、嵐山電鉄嵐山駅から、3つめの駅前です。  ううっ。本当に寒い。  土居ちゃん、柴尾英令くんもこの神社に名前書きなよ!と勧誘する気力も出な いくらい寒い。 「手袋がほしいいよおおおお!」と、柴尾英令くんが震えている。  ちょっとシャレにならない寒さだ。  気温マイナス1度なの?  そりゃ寒いわけだ。  午後1時。やはりわがデブ軍団には、「和菓子懐石」では空腹を満たしきるこ とができなかったようで、北山住宅街の「しみず」へ。  昨年の大晦日に見つけたカレーうどんのおいしいお店だ。  きょうはカレー肉うどんに、ライス(小)。

 外が寒いから、カレーうどんがおいしい。  はふはふ。あぢぢ…。はふはふ。あぢぢ…。  午後2時30分。三条堺町の「イノダコーヒ三条店」で、土居ちゃん、柴尾英 令くん、私の3人で、『桃太郎電鉄U(仮)』の打ち合わせ。  嫁は一足先に、京都のマンションに戻る。  あれこれアイデアが出た。  午後3時。喫茶店をはしご。すぐ近くの「イノダコーヒ本店」へ。 「イノダコーヒ」をはしごするなよな!  でもここがいちばんアイデア出るから、打ち合わせするなら、ここにかぎる。  ここでも、アイデアが出た。  出たどころか、私が前回打ち合わせして、柴尾英令くんといっしょに内容を変 更したことをすっかり忘れていて、ずっと杞憂のままでいたことが判明。  柴尾英令くんに「本当に忘れちゃってるんですか!」と突っ込まれる。  悔しいから「柴尾英令くんが、早く仕様書にまとめないからだ!」と、八つ当 たりしてあげる。  2本同時に作るのは、やはり大変だ。  午後3時30分。土居ちゃん、柴尾英令くんと、京都のマンションに戻る。  札幌開発チームの美術スタッフが作成したデザインの数々のどれがいいかを決 めて、専用掲示板に投稿する。  さらに『桃太郎電鉄U(仮)』の肝となる部分のディスカッション。  ついに出た!  肝となる部分が、ついに出た!  昨年もおなじメンバーで、大阪に取材に行ったおり、いくつかいいアイデアが 出たのだが、本塁打となるようなアイデアが出なかった。二塁打、三塁打のアイ デアは出ていたのだが、『桃太郎電鉄U(仮)』は、ちょっと『桃太郎電鉄』に なれた人たちの度肝を抜くようなことをしでかしたいので、あとひとつ肝となる ようなアイデアがほしかった。  えっへっへ。おっほっほ。  楽しいったら、ありゃしない!  きょうのアイデアは、パッケージ・デザインにつかってもいいくらいのアイデ アだぞ。わっはっはっはのププッピドゥ〜〜〜!。  こういうほくそ笑みができるから、この商売をやっているようなものだ。  午後7時。さて、本日水曜日の京都は、主だった美味しいお店がほとんどお休 み。「三嶋(みしま)亭」も、「特に名を秘すM」も、「はふう」も、近所の 「柳家本店」も、お休み。  すっかり難民状態になる。  ふとグルメの師匠・すぎやまこういち先生ご夫妻ご愛用のすきやきのお店「い ろは」を思い出す。  実は私は、すき焼きが子どもの頃、いちばんのごちそうだった。  ところが、うちの娘がすき焼きよりも、オイル焼きのほうが好きで、娘がいる と、必ず「三嶋(みしま)亭」のオイル焼きになってしまうのだ。  娘はとにかく、「京都M」と「三嶋(みしま)亭」が好き。  子どもの頃に、「もし捨て子にするなら、三嶋(みしま)亭の前に捨てて!」 とわけのわからない要求をしていたほどだ。  きょうは、その娘がいない。  ならば、すき焼きが食べたい。  というわけで、四条先斗町入り口の「いろは」へ。  すぎやまこういち先生ご夫妻が、値段と味のバランスが非常によいお店とおっ しゃっていたが、私は「値段が安いわりにはおいしい」という基準が頭になく、 3000円だろうが、3万円だろうが、おいしいものは、おいしい。まずいもの は、まずいという判断基準しかない。  その上で、おいしかった。  土居ちゃん、柴尾英令くんは、しっかりお肉を追加。  ご飯も、お代わり!  わかりやすい人たちだ。

 午後8時30分。あまりにも寒いので、外を歩いて帰る気にもなれず、ヤサカ タクシーの宮本さんに来てもらって、我が家、土居ちゃんたちのホテルのコース で送ってもらう。  ヤサカタクシーの宮本さんって、ひょいっと来たかと思うと、すぐ消えて、ま た、声をかけると、すぐ来てくれる。まるで忍者のようだ。  今夜は、きょう出たアイデアをまとめる作業。  明日は、高松!

 
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