11月14日(木)

 午前5時に目が覚めた。
 起きたから、仕事をする。
 きょうから、ようやく『桃太郎電鉄12(仮)〜地方編』の仕様書作りを本格
的に再開だ。
『おいしい桃鉄』(小学館)の執筆期間が,ちょうどいい冷却期間になった。
 完成したカードが、やっぱりイベント扱いのほうがおもしろいとか、目的地は
やっぱり違う場所にしようとか、仕様書を見直すことが出来た。
 人はこの変節を「さくま得意の朝令暮改」と呼ぶのだが、つねに自分の作った
ものを、完成してからも、あやゆる場面を想定して、頭のなかでテスト・プレイ
を始めているのだから、変更はやむをえない。
 そんなにみんな一度考えたアイデアに対して、最後まで自信満々なのだろうか。
 午前9時。荷物をまとめて、京都の仕事場を出る。
 きょうから、また高松だ。
 今年は密かに、鎌倉の家よりも、四国高松に行っているような気がする。

 午前10時12分。嫁と、京都駅から、のぞみ5号に乗車。岡山に向かう。
 500系新幹線だ。
 禁煙車両なのに、車内がタバコ臭い。けむい。
 500系新幹線は、最速なのだが、どうも空調設備などがよくない。

 車中、『おいしい桃鉄』(小学館)の執筆。
「東京で食べられる地方の味」を書き上げる。
 意外と、西の食べ物屋さんばかりだなあ!と思ったら、北海道とか、東北とか
北のほうは鍋物が多く、鍋物だと家でやってしまうから、わざわざ郷土料理のお
店に行かないことが判明。

 午前11時12分。岡山駅で下車。
 いつもならここから、快速マリンライナーに乗って、高松へ向かうのだが、き
ょうは寄り道をする。山陽本線へ移動。

 午前11時27分。山陽本線三原行きに乗車。鈍行列車だ。
 電車はのんびり庭瀬(にわせ)駅、中庄(なかしょう)駅と進み、倉敷駅へ。
 車内アナウンスが流れる。
「ただいま中庄駅では、阪神タイガースの秋季キャンプをやっているので、ぜひ
バッティング練習を一度ごらんになってください!」
 わけのわからないアナウンスだなあ。
 星野監督が倉敷出身だから、こっちで練習しているんだろうなあ。

 午前11時40分。倉敷駅は、岡山からわずか15分、3駅だ。

 午後12時。チボリ公園の真ん前にある「ふるいち」へ。  倉敷は、ぶっかけうどんが名物なんだけど、その元祖がこの「ふるいち」。  倉敷市内に何軒もあるけど、ここがいちばん近いので来てみた。

 倉敷のぶっかけうどんは、讃岐うどんの親戚とも呼ばれているだけに、お店に 入って、注文の仕方まで、讃岐うどんっぽい。  うどんを注文して、トッピングの天ぷらを選ぶ。  おや? 半熟玉子の天ぷらまであるぞ。  ますます讃岐うどんっぽいな。

 嫁が、いちばんオーソドックスなぶっかけうどん、410円を注文。  私が、肉ぶっかけうどん、510円を注文。

 ぶっかけうどんは、冷たいほうで。  うずらの生卵に、天かす、ネギが乗っている。  わさびが付いているのが、讃岐うどんとはちょっと違う。讃岐は生姜の場合が 多い。  ふうむ。やわらかい麺なんだ。  でも、甘くて、やさしい味だなあ。  肉ぶっかけうどんは、温かいのにしてみた。  牛肉、かまぼこ、木くらげなどが乗っている。  これはまさにすき焼きうどんだ。  ぶっかけうどんよりも、甘くて、おいしい。  すき焼きの甘さだ。  こっちの麺もやわらかい。  倉敷のぶっかけうどんと、讃岐うどん。  よく似ているようで、まったく違う。  お汁が、倉敷のほうが、濃いめかな。  というより、男性的なのが、讃岐うどんで、女性的なのが、倉敷のぶっかけう どんと区別したほうが、早いや。  麺のやわらかさ、おつゆの甘いところなど、繊細で女性的なのだ。  麺の食感もやさしい。  ふむ。けっこう、いや、かなり気に入った。  よし! 『桃太郎電鉄12(仮)〜地方編』の倉敷の物件に、ぶっかけうどん屋 さんを登場させるぞ!  25%物件を予定していたけど、50%物件でもいいな。  しかし、我ながら、甘い食べ物には、弱いなあと思う。  食後、せっかくチボリ公園が目の前なので、見て行くことに。

 私は以前、来たことがあるのだが、嫁は初めてだというので、行ってみること に。私は決して乗り気ではないのだが、乗り気ではない気持ちを共有しておいた ほうが、のちのち嫁が、チボリ公園に行かなかったことを悔やむかもしれない。  いっしょに行って、行ったことを悔やんでもらったほうがいいという作戦だ。  ちょっとひどい言い方だとは思うが、さすがの私もチボリ公園はちょっと肯定 しづらい。  入園料・ひとり2000円!  高い! しかもこの2000円のコースでは、アトラクションにはひとつも乗 れない。  この値段じゃ、入園者が少ないわけだ。  園内に入る。    いやあ。前回来たときよりも、さらに日本的な遊園地になってしまっているな あ。まだ前回のほうが、デンマークの人のジャグラーとかいて、音楽が流れ、異 国情緒にあふれていたような気がする。  テーマパークとしての目盛りが、栃木県の「おやま遊園地」のほうに向かって 傾いているような気がする。

「手打ちそば・田舎屋」というお店が、園内に建ってしまった。  これじゃチボリじゃないよ。デンマークじゃないよ〜!

 建物よりも、イチョウと木々の紅葉のほうが、美しい。

 デンマークの文化をメインに伝えたいのか、アトラクションに乗せたいのか、 コンセプトがはっきりしないなあ。  本当は、歴史と伝統の国・デンマークを伝えたかったんだけど、何も動くもの がないと困るから、遊具を置いてみましたって感じなんだろうなあ。  デンマークには、アンデルセンという必殺技があるんだから、童話に出てくる キャラづくしでもやればよかったんだよなあ。  『みにくいアヒルの子』や、『人魚姫』の演劇は、いまだにやっているようだ けど、屋内だから、公園内のムードを作るまでに至らない。  いずれにしても、テーマパークは、ディズニーランドの真似をして、そのほと んどが、ディズニーランドとの差をお客さんに感じ取らせてしまって、ディズニ ーランドの素晴らしさを浮き彫りにしてしまう。  デンマークの国の人は入場無料にして、デンマークの人だらけにするとか、交 換留学生でデンマークの人を雇うとかしか、デンマークの色を濃くする方法だっ て、あると思うんだけどなあ。  ディズニーランドと違う風味のテーマパークが見たい。  わずか、30分で園内を一周してしまった。  もう少し、私たちを引き止めてくれるものがほしかった。  退園する。  午後12時50分。倉敷美観地区へ。  ここには何度か来ている。  25年前くらいかなあ。  最初は、倉も少なく、川もきれいではなかった。  次に来たときは、まるで映画のセットのように、倉の壁を白く塗り、川の護岸 工事をしていた。ちょっとあざとい商業主義が鼻についた。  その次に来たときは、倉は何年も風雨を浴びて、古色になって来た。

 今回、柳は緑の葉を茂らせ、川をおおうまでに伸びていた。  柳が風に揺れて、美しい。  ここまで計画的に保存に力を入れた観光地はほかにない。  この半分、いや、10分の1から始めても、じゅうぶん立派な観光地になる。  ちなみに倉敷のこの美観地区を訪れる観光客は、100万人以上だそうだ。  この計画性をチボリ公園に持ち込めないのだから、観光地作りは難しい。

『おいしい桃鉄』(小学館)用に、銘菓「むらすずめ」を買う。  廣栄堂では、店内で、抹茶とむらすずめを食べる。  以前食べた味とちょっと違う気がした。

 しばらく倉敷川沿いを歩いて行くと、「むらすずめ」は数社発売していること がわかる。  お店の人に聞くと、橘香(きっこう)堂のものが評判がいいといっているので、 こっちのほうも買う。  あとでインターネットで調べたら、橘香(きっこう)堂の「むらすずめ」の評 判がいちばんよかった。  しかし、インターネットっていうのは、食べ物の良し悪しを見事に丸裸にして しまう怖いメディアだねえ。スポンサーがいない人たちの声だけに怖い。  そのうち、企業からお金をもらって、おべんちゃらを書く人が出現するのだろ うか?  倉敷川沿いの裏道も歩いてみる。  こっちは、こっちで、倉とは違った趣のある町並みだ。  骨董品屋とか、酒屋、お土産物屋などが続く。

 アイビースクエアのあたりまで来て、そろそろ私の足が限界に来た。  チボリ公園でちょっと体力を消耗し過ぎたようだ。  そろそろ帰ろう。  駅までゆるやかな上り坂だ。  とても歩けそうもない。タクシーに乗ろう。  倉敷駅へ向かう途中、タクシーの運転手さんに、倉敷でやたら目につく文字、 「イオン倉敷」について聞く。  ジャスコ、ロビンソン、ゆめタウンのような巨大スーパーのことらしくて、や はり商店街のお客さんを根こそぎ持って行ってしまっているそうだ。  それどころか、最近は、観光客まで奪っているそうだ。  えっ? 巨大スーパーと、倉敷の倉が立ち並ぶ美観地区に何の接点もないでは ないかと思うのだが、あった。  観光客だって、夜もどこかで遊びたいのだ。  ところが商店街は全部閉まっている。  イオン倉敷なら、夜10時まで、映画館もやっている。  それどころではない、トイザラすもあれば、スターバックス・コーヒー、病 院、英会話のNOVA、レストラン街まである。  だから観光客は昼間、美観地区を歩き、夜はイオン倉敷で食事して行くそう だ。 運転手さんに言わせれば、商店街が「どうぞイオン倉敷に行ってください!」 と言っているように、お店を早く閉めてしまっているのだから、仕方がないと いう。 「もう少しお客さんの声を聞けばいいのに!」という運転手さんの言葉は、すべ ての商売をしている人に向けられた言葉でもある。  あまりにも運転手さんが、イオン倉敷について語るので、イオン倉敷まで行っ てみることにした。  行ってみると、この間の小田原のロビンソンよりは、はるかに小さい。  でもこの巨大スーパーが、倉敷の商店街を根絶やしにしようとしている。  商店街の活性化については、あれこれ考えるところが多いが、昔の因習に縛ら れた人たちの歩調が揃うわけもない。  一企業なら、命令系統がひとつだから、動きやすい。  日本じゅうのすべての商店街が潰れた頃に、また新しい形の商店街が復興する のだろう。  午後2時25分。倉敷駅から、山陽本線で、岡山へ。  午後2時40分。岡山駅に着く。着くと同時に、ふたつ先のホームから、快速 マリンライナーが発車してしまった。イオン倉敷などに寄り道していなければ、 この列車に乗れたのにと、悔やまれる。  30分、岡山駅で時間を潰す。  またしても、駅弁の「桃太郎電鉄まつりずし」は、見本はあるものの売り切れ だった。  うれしいことだけど、あまりにも毎回売り切れなので、本当は作っていないの ではと心配になる。  桃太郎電鉄さぬきうどんのほうは、いい場所でよく売られている。 「あっ! 桃太郎だ!」と私が声をあげると、売り場のおばちゃんが、にっこり 笑って「ありがとうございます!」と言ってくれた。ありがとうと言いたいのは、 こっちのほうである。  午後3時11分。快速マリンライナー39号に乗車。  きょうの瀬戸内海は、曇っている。  午後4時08分。高松駅着。  少し遅れてしまったなと思ったのだが、読売広告の岩崎誠からの連絡で、「桃 いろ」のロケが押していて、私と嫁が次のロケ地に行っても、誰もいないとのこ と。しばらく、全日空ホテルクレメント高松で、待機することに。  私の場合、「待機していろ!」といわれると、仕事をしてしまうのは、いつも のことだ。 『桃太郎電鉄12(仮)〜地方編』の仕様書作りをちょっと…。  午後6時30分。ホテルに岩崎誠がロケバスで迎えに来てくれて、途中で、桃 娘(momoko)たちをピックアップして、兵庫町の居酒屋「歩(あゆむ)」へ。  本当は、ハドソン宣伝部の梶野竜太郎くんもこのお店に合流することになって いたのだが、こっちはさらにロケが長引いているそうだ。  きょうはここで、私は念願の物を食べるために来た。  もちろん番組企画でもあるのだが。  その食べ物とは…。  あん餅雑煮である。  えっ?  もう一度言いましょうか? 「あん餅雑煮」である。  ピンとこないんでしょ?  もう少し、わかりやすく言いましょう。 「あんこ入りのお雑煮」である。  もうどんな食べ物かは、わかったでしょ?  じっくり驚いてください。  では、解説します。  香川県では、毎年お正月に食べるお雑煮は、白みそで出汁を取る。この辺は、 京風である。  この白みその出汁に、大根、ニンジン、油揚げ、お豆腐などを入れる。  ちょっと、お味噌汁風になって来ました。    さて、ここで、お餅を入れます。  このお餅が、あんこ入りのお餅なのです。  嘘なんて言ってませんよ!  昨年、高松に来たときに、取材済みである。 2001年5月13日(日)の日記より。 ――――――――――――――――――  綾南町に向う。  運転手さんの名前は、倉山明さんといって、字面だけ見てると鳥山明く んみたいだ。にこやかでおもしろい人なので、いろいろ讃岐うどんのこと や、高松のことについて取材する。 「運転手さん、こっちはやっぱりお正月のお雑煮のお餅のなかに、あんこ が入っているんですか?」 「当然ですよ!」  ははははは。大爆笑になる。 ――――――――――――――――――  というわけで、以来、どうしても食べたくて、食べたくて、こんなおもしろい 食べ物、『桃太郎電鉄』シリーズの物件に加えたいに決まっているでしょ?  でも、お雑煮なもんだから、高松で食べさせてくれるお店がまったく無い。  無いのも無理がない。  もともとお雑煮は各家庭で作るものだから、わざわざお店に行ってまで食べる ものではないのだそうだ。  で、前回、この居酒屋「歩(あゆむ)」さんに来たときに、この話をしたら、 このお店で作ってくれることになったのだ。  食べましたよ。  困ったことに、おいしいのですよ!  まったく白みそのお出汁に、違和感がないのですよ!  拍子抜けするくらい、あん餅があるの当然の食べ物なのですよ。

 桃娘(momoko)の鈴木なおチャンなんて、このあん餅雑煮を気に入って 「超おいし〜よ〜、これ〜! お代わりしたい〜!」と叫んでいたけど、特別注 文で作ってもらった食べ物だから、そんなに数がない。

「このあん餅って、高松ではいつぐらいから売り出すんですか?」 「12月の27日ぐらいですかね!」  ぎょえ〜! 本当にお正月限定の食べ物なんだ。  12月に入ったら、どのお店でも売り出すと思ったのに〜〜〜!  讃岐うどんブームの次は、絶対、あん餅雑煮だよ〜!  お雑煮としてでなく、秋から冬にかけて食べる風習を作ろうよ!  午後8時。梶野竜太郎くんたちが合流。  みんなで「お疲れさま〜〜〜!」

 居酒屋「歩(あゆむ)」の名物、麺が長い、長〜い、長〜〜〜い、小豆島の生 そうめんをみんな、立って食べようとして、よろけたり、麺を口に頬ばり過ぎて、 呼吸困難になったり、大騒ぎ。

 もっと、喜んだのは、居酒屋「歩(あゆむ)」のお客さんたち。  おっさんばっか来る居酒屋に、若い子が11人も来たものだから、隣りの席か ら身を乗り出して、覗き込んでは、笑顔。

 岡田茜ちゃんは、おっさんから会社の名刺をもらったそうだ。有名な運輸会社 の次長さんだそうだ。なんだかよくわからん。  午後8時30分。あとは若い人だけでと、私と嫁は、席を立つ。  居酒屋「歩(あゆむ)」はいいお店なので、住所をメモしておこう。 <居酒屋「歩(あゆむ)」> 住所:高松市錦町1-7-13 小川ビル1F 電話:087-821-0873 定休日:日曜、祝日    午後9時。嫁と高松の商店街を歩いて、フェリー通りを、瓦町駅近くの「鶴丸」 へ。カレーうどんのおいしいお店だ。  居酒屋「歩(あゆむ)」の位置がよくわからないまま、道を歩いて行くうちに、 こっちだろう、あっちだろうと、「鶴丸」までホイホイ歩けてしまった自分が、 誇らしいやら、高松生活も長くなったもんだなあと思う。  現地の人より地理に明るくなるのが、趣味なので、えっへんだ!  カレーうどんに、ぶっかけうどん。  私はさほど、ここのカレーうどんが好きなわけではないのだが、嫁がやたら気 に入っている。子どもの頃に食べたかレーの味がするんだそうだ。  子ども頃の味って、絶対肯定しちゃうよね。  私もついつい、嫁が一息入れると、つい丼を奪って、カレーうどんを食べてし まう。この麻薬性がまだ自己分析できない。  もう少し、ここに通うしかないな。  午後9時30分。ホテルに戻り、日記を書いたり、仕事をしたり、本を読んだ り。何だかひさびさに、のんびりした気分。

 
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●『桃momoko娘のホームページ』ができました。
 みんなの日記も読めるよ! 応援してね!

●『桃太郎電鉄11-ブラックボンビー出現!の巻-』のHPです! 

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 ついに『桃太郎電鉄』の美味しい物件をすべて公開する!     

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   平成14年10月5日より毎週土曜日 
   午前10時50分〜午前11時30分放送。岡山・高松地区。

●「桃太郎電鉄ジャパンカップテレビ」スカパー・CSファミリー劇場
   平成14年11月2日より毎週土曜日
   午前0時〜午前0時30分放送。
   詳しくは→http://www.fami-geki.com/

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   平成14年12月5日発売!
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