８月１６日（金）

　午前１０時３０分。嫁と、銀座へ。
　昨日より少し気温が低くなったように思えたので、数寄屋橋の交差点から、金
春通りを歩いて、「寛文五年堂」へ。
　本格的な、秋田のいなにわうどんのお店だ。
　ところが、開店時間が、午前１１時３０分。
　すでに暑さが、むわわわ〜〜〜っと、熱風状態で、とても開店時間まで、待っ
ていられない。
　よろよろ、金魚のように、口をぱくぱく開けながら、熱風の街を歩く。

　午後１１時。どこも開店時間は、午前１１時３０分。
　もうどこでもいいやと、松坂屋デパートへ転げ込む。
　クーラーが効いているはずなのに、ちっとも涼しく感じられない。
　それどころか、吐き気までしてくる。
　危ない、危ない。

　地下の「万惣（まんそう）」で、フルーツサンドにコーヒー。
　息を吹き返す。

　午後１２時。築地のハドソンへ。
　きょうも『桃太郎電鉄１１（仮）』のテスト・プレイ。

　きょうのメンバーは、私と、土居ちゃん（土居孝幸）と、ハドソン宣伝部の梶
野竜太郎くんである。
　きょうの私の登板のために、客席の入場は禁止してある。
　巨人が、９年連続優勝をしたときに、川上哲治監督が、「哲のカーテン」と呼
ばれる、報道陣取材禁止を敷いたようなものである。
　私独特のやり方を、テスト・プレイヤーたちに覚えてほしくないからだ。

　途中で、プロスペックの江口貴博（えぐち・たかひろ）くんが来たけど、取り
扱い説明書の打ち合わせで来たので、テスト・プレイに参加できず。
　おお！　もう取り扱い説明書の打ち合わせの時期なのかあ。
　締め切りの近さを痛感する。
　とにかくテスト・プレイ開始！

「うわあ、さくまサンと戦うだけで、緊張しちゃうなあ！」と、梶野竜太郎くん。
「きょうは体調悪いから、ベイスタ社長で行こう！」と、私。
　調子がいいときは、私は「つつみ社長」で、調子が悪い日は「ベイスタ社長」
で、プレイするのだ。
　私が、「つつみ社長」と入力するだけで、あの井沢どんすけが、ぶるぶる震え
るという妖刀村正のように、恐ろしい名前である。
　まあ、きょうは、ちゃらんぽらん王の土居ちゃんと、剛球一直線の梶野竜太郎
くんだから、「ベイスタ社長」でも、じゅうぶん圧勝だろう。

　ゲーム・スタート！
　梶野竜太郎くんが、いきなりカード駅で、スペシャルカードを手に入れる。
　すかさず、土居ちゃんが、カード交換カードで、梶野竜太郎くんのスペシャル
カードを奪う。
「土居さん！　何するんですか！」
「ふつう交換するよね！」
「ボクはまだ、スペシャルカードを、１秒しか持っていないじゃないですか！」
「いいじゃない。はい、徳政令カード！」
「そんなカード、いりませんよ！」

　３年目までは、私が順調に目的地に入り、独走態勢に入りかけたときに、梶野
竜太郎くんが、キングボンビー、ゲスト怪獣と並ぶ、第３の隠しキャラを入手！
　へっへっへ。『桃太郎電鉄１１（仮）』には、日記で話題のさらに強くなった
キングボンビーと、悲鳴連続のゲスト怪獣と、まだもうひとつとんでもないやつ
がいるのだ。
　そいつの影響で、梶野竜太郎くんが、一気に波に乗る。
　ってことは、善人キャラか？

　４年目あたりから、私の打つ手、打つ手が、ことごとく失敗する。
　特急カードで、梶野竜太郎くんに貧乏神をなすりつけようとすると、１マス手
前までしか届かない。
　とっかえっこカードで、梶野竜太郎くんの持ち金１０億円と、私の２億円を替
えてあげようとしたら、梶野竜太郎くんが、ブロックカードを持っていた！
　いつもの私なら、誰がどのカードを持っているのか、全部暗記しているはずな
のになあ。
　さすがに、テスト・プレイの連続で、体力が落ちていて、集中力が効かない。
　その後も、３人の決算での収益額と、総資産には、ほとんど差がない。
　１位から３位まで、決算のたびに、めまぐるしく順位が変わる好試合だ。

　それでも、１０年勝負の１０年目の４月！
　最大の見せ場が巡ってきた！

　目的地は、博多。
　私は萩のあたり。博多までは、あと６マス！
　土居ちゃんは、東京近辺。梶野竜太郎くんは、北海道。
　私が博多に入れば、貧乏神は北海道にいる、梶野竜太郎くんにつく。

　しかも、私の後ろには先月、変身したばかりのキングボンビーがいる！
　僅差で首位を行く、梶野竜太郎くんにキングボンビーがつけば、一気に梶野竜
太郎くんは、最下位にまで転落する。

　私のカード・ウィンドウに、光り輝く、特急カード！
　特急カードで、あと６マス！
　しかも、下関、萩のあのぐるぐる回転できるＭＡＰ！

「ふっふっふ。それじゃ、梶野くんに、行きますぞ！」
「うわ〜〜〜、もうダメだあ！　入らないでくれい！」
「梶野くん、ほ〜〜〜れ〜〜〜ッ！」
「うわ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜〜〜！」と、叫んだのは、私だった。
　特急カードの出目は、９！　博多までは６マス。
　し、し、失敗したあ！
　でも、１回キングボンビーのサイコロ１０個振りに耐えれば、今度こそ梶野竜
太郎くんに、キングボンビーが行くッッッ！

「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああ！」と、叫んだのは、私だった。

「キ〜〜〜〜〜ング　ボンビー！」
▽
↓
「グェッヘッヘ！　ベイスタ社長！」
▽
↓
「かわいい子には
　旅を　させろというな？」
▽
↓
「オレさまは　おまえが
　かわいくて　仕方がない！」
▽
↓
「さあ！　旅に
　出ようじゃないか！」
▽
↓
「１０泊１１日
　ボンビラス星ツアーへ！」
▽
↓
「さ〜〜〜〜〜〜よ〜〜〜〜〜〜な〜〜〜〜〜〜ら〜〜〜〜〜〜！」

　そうなのだ。一発目で、私はボンビラス星に行くことになってしまったのだ。
　私がデバッグ・モードでもなく、誰かのプレイを引き継いだケースでもなく、
最初からずっとプレイしていて、ボンビラス星に行くのは、史上初めてである。
　このとき、私の最下位が決定した。

１０年目　総資産
１位・梶野竜太郎　　　６０億６６８０万円
２位・土居孝幸　　　　３４億９１００万円
３位・さくま　　　　　１８億４９３０万円

　うーーーん。最近、ＣＯＭキャラとばかり戦っていて、腕が鈍ったかな。
「ベイスタ社長」という名前が、今年はとくによくないか。




　このあと、土居ちゃん（土居孝幸）と、梶野竜太郎くんで、バラエティゲーム
をふたつテスト・プレイ。
　気になる点を見つけて、あわててメモる。
　まだまだ見落としている部分があるもんだなあ。

　午後７時。土居ちゃん（土居孝幸）、私、嫁の３人で、広尾の「プティ・ポワ
ン」へ。

　本当は、きょうの「プティ・ポワン」のメンバーは、すぎやまこういち先生ご
夫妻に、うちの家族３人の予定だったのだ。
　ところが、すぎやまこういち先生の奥様が夏風邪を引かれ、きょうの「プティ
ポワン」のために、友だちとの約束をキャンセルしてまで、来ようとしたうちの
娘も夏風邪でダウン！

　代打の代打の代打といった感じで、きょうの「プティ・ポワン」のメンバー
は、すぎやまこういち先生、私、嫁、土居ちゃん、柴尾英令くんの５人となった。
　柴尾英令くんは、きょうは別件の打ち合わせで築地のハドソンにも来ることが
できなかったのだが、「プティ・ポワンの代打！」というと、ダッグアウトから、
バットならぬ、お腹を揺らせながら、駆けつけた。

　きょうはもともと「プティ・ポワン」が、納涼特別メニューを出すというので、
それは美味しそうと、来たのだが、よ〜く、話を聞いたら、すぎやまこういち先
生のリクエストを元に、北岡シェフが作った特別メニューだったのだ。
　どおりで、メニューのお肉料理を「鴨か」、「和牛のポトフか」を選ぶときに、
すぎやまこういち先生が「この間の和牛でしょ！」と北岡さんにおっしゃったわ
けだ。
　あわてて「鴨で！」といった私も「ボクも和牛で！」と言い直す。

 
 
 


　はたせるかな、和牛のポトフの天にも昇るような美味しさよ！
　ま〜〜〜ったく、まいってしまいますよ！
　きょうの『桃太郎電鉄１１（仮）』での敗北など、吹っ飛んでしまった。勝ち
誇った梶野竜太郎くんの顔も、すっかり霧の彼方へ！
　へっへっへ。やっぱり「プティ・ポワン」の料理は、美味しいなあ！
　
　きょうの『桃太郎電鉄１１（仮）』のテスト・プレイで勝ったのって、誰だっ
たかなあ。

「おかしいのねん！
　ここ　なんケ月かの
　記憶（きおく）が　ないのねん！」
▽
「…もし　その　なんケ月のあいだに
　何か　あったとしても　ボクは
　しらないのねん！　ボンビー！」

　午後１０時。帰宅。
　きょうのテスト・プレイで出た問題点をまとめて、札幌に送る作業が残ってい
る。